説明

膨張装置

【課題】ガスボンベが膨張装置に適正に接続されたか否か、及びガスボンベの封板が破断しているか否かを確実に知ることができる膨張装置を提供する。
【解決手段】圧縮ガスが封止部より内部に封入されたガスボンベが接続される筐体21、及び、筐体21に収容され、筐体21におけるガスボンベ側の第1位置と筐体におけるガスボンベ側から離間する第2位置との間を移動する第1部材40と、第1部材と進退自在に連結され、第1部材40を通ってガスボンベの封止部を破断する第2部材50と、第1部材40と第2部材50との間に介設され、第2部材50がガスボンベに接近するように移動するに伴い、少なくとも当該第1部材40を第1位置に位置させるように付勢する付勢部材60と、を有する作動部材30を備え、第1部材40が第1位置にある旨を報知する報知手段をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救命胴衣などに備えられた膨張体にガスを導くための膨張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海難事故の際に使用される救命胴衣として、ガスボンベからのガスを膨張体に注入する構造の救命胴衣が知られている。この救命胴衣は、二酸化炭素が封入されたガスボンベと、ガスボンベから導かれる二酸化炭素により膨張する膨張体とが、ガスボンベの封板を破断するための撃針を備えた膨張装置に接続されており、緊急時に、撃針を作動させてガスボンベ内の二酸化炭素を膨張体に導くことによって、膨張体を膨張させるようにされている。膨張体は、ガスの逆流を防止するための逆流防止弁を有しており、その逆流防止弁を膨張装置の弁取付部に挿通し、ナットで締め付けることで、膨張装置に固定される。一方、ガスボンベは、膨張装置のガスボンベ取付口に、手回しで螺合接続されるので、螺合時の力に個人差が生じ、適正に接続されない場合があった。
【0003】
また、ガスボンベの封板が破断しているか否かは、ガスボンベの封板を見ることで判断することができるが、ガスボンベの取り扱いに慣れていない場合は、封板が破断したガスボンベを膨張装置に接続してしまうおそれがあった。
【0004】
そこで、ガスボンベを接続したとき、適正に接続されているかどうかを確実に知ることができると共に、そのガスボンベの封板が破断しているか否かを確認しうる膨張装置が要望されていた。
【0005】
これに対し、膨張装置と別部品とされたインジケータをガスボンベ取付口近傍に設けた膨張装置が知られている。この装置では、ガスボンベがガスボンベ取付口に接続された場合には、ガスボンベの肩部がインジケータ内の色表示プラグを押し下げることにより、ガスボンベが適正に接続されていることをインジケータに青表示で示す。また、レバーを操作してガスボンベの封板が破断された場合には、レバーと連結された部材がインジケータ内の色表示プラグを押し上げることにより、ガスボンベの封板が破断していることをインジケータに赤表示で示す(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−58971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の膨張装置は、インジケータが大きく膨張装置から張り出しており、装置が全体として大型化していた。また、この膨張装置は、インジケータ内の色表示プラグがガスボンベの肩部により押し下げられると、膨張装置にガスボンベが取り付けられた旨の青表示がされていた。そのため、取付部の接続状態が直接確認されることがなく、ガスボンベが適正に接続されている旨を正しく報知できないおそれがあった。また、特許文献1の膨張装置では、レバーの操作に基づいてインジケータ内の色表示プラグが押し上げられるため、ガスボンベの封板が実際に破断しているか否かを確認することはできなかった。このため、既に封板が破断しているガスボンベを誤って接続した場合でも、インジケータ内の色表示プラグがガスボンベの肩部により押し下げられると、ガスボンベが適正に取り付けられた旨の青表示がされていた。
【0008】
本発明はこれらの問題に着目してなされたもので、ガスボンベが膨張装置に適正に接続されたか否か、及びガスボンベの封板が破断しているか否かを確実に報知する膨張装置を提供することを第1の目的とする。また、小型化された膨張装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る膨張装置は、
圧縮ガスが封止部より内部に封入されたガスボンベが接続される筐体、及び、
前記筐体に収容され、前記筐体における前記ガスボンベ側の第1位置と同筐体における前記ガスボンベ側から離間する第2位置との間を移動する第1部材と、該第1部材と進退自在に連結され、前記第1部材を通って前記ガスボンベの封止部を破断する第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に介設され、前記第2部材が前記ガスボンベに接近するように移動するに伴い、少なくとも当該第1部材を前記第1位置に位置させるように付勢する付勢部材と、を有する作動部材を備え、
前記第1部材が前記第1位置にある旨を報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
上記膨張装置において、前記付勢部材は、前記第2部材が前記第1位置にある前記第1部材から離間するように移動したときにも、当該第1部材を当該第1位置にあるように付勢するようにしてもよい。
【0011】
上記膨張装置において、前記筐体は、さらに前記ガスボンベのガスを外部に導く通路を有し、前記第1部材は、前記ガスボンベの圧縮ガスの気圧によって前記付勢部材の付勢力に抗しつつ前記第1位置から前記第2位置に移動して前記通路を開放する一方、前記ガスボンベからの圧縮ガスの放出が終了したときには、前記付勢部材の付勢力によって前記第1位置に復帰するようにしてもよい。
【0012】
上記膨張装置において、前記第2部材に連結され、前記第2部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記ガスボンベ側に移動させることで当該第2部材によって前記ガスボンベの封止部を破断させるレバー部材をさらに備えるようにしてもよい。
【0013】
上記膨張装置において、前記第1部材は、前記ガスボンベの封止部に当接する検知部を備え、この検知部が前記筐体に接続された前記ガスボンベの封止部に当接したときに、前記第2位置に位置するようにしてもよい。
【0014】
上記膨張装置において、前記報知手段は、前記第1部材に設けられ、少なくとも当該第1部材が前記第1位置にあるときに視認可能な表示部を有するようにしてもよい。
【0015】
上記膨張装置において、前記表示部は、前記第1部材にそれぞれ設けられ、前記第1部材が前記第1位置にあるときには、前記筐体の開口を通して視認可能な第1彩色部と、前記第1部材が前記第2位置にあるときには、前記筐体の開口を通して視認可能な第2彩色部とからなるようにしてもよい。
【0016】
上記膨張装置において、前記表示部は前記第1部材の側面における相対向する2つの領域にそれぞれ設けられ、前記筐体の前面及び背面に設けられた開口を通してそれぞれ視認可能とされているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ガスボンベが膨張装置に適正に接続されたか否か、及びガスボンベの封板が破断しているか否かを確実に報知する膨張装置を提供することができる。また、本発明により、小型化された膨張装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係る膨張装置を示す断面図であり、(b)は、同膨張装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る膨張装置内に収容される摺動部材の分解斜視図である。
【図3】図2に示す摺動部材において、内側摺動部材が外側摺動部材内を摺動し、両部材が離間した状態及び近接した状態を示す摺動部材の斜視図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態に係る膨張装置において、ガスボンベが取り付けられていない状態を示す断面図であり、(b)は、(a)の状態での膨張装置における外側摺動部材の位置を示す図であり、(c)は、(a)のE部のD方向から見た矢視図である。
【図5】(a)は、本発明の実施形態に係る膨張装置において、ガスボンベが取り付けられた状態を示す断面図であり、(b)は、(a)の状態での膨張装置における外側摺動部材の位置を示す図である。
【図6】(a)は、本発明の実施形態に係る膨張装置において、ガスボンベの封板が破断されガスが放出している状態を示す断面図であり、(b)は、(a)の状態での膨張装置における外側摺動部材の位置を示す図である。
【図7】(a)は、本発明の実施形態に係る膨張装置において、ガスボンベの封板が破断されガスの放出が終了した状態を示す断面図であり、(b)は、(a)の状態での膨張装置における外側摺動部材の位置を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係る膨張装置において、内側摺動部材を外側摺動部材内に挿入して摺動部材を組み立てる手順を示す断面図であり、(d)〜(e)は、本発明の実施形態に係る膨張装置において、摺動部材を筐体に取り付ける手順を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。尚、以下に記載する実施形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素又は全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。尚、以下の説明では、図中に矢印で示すとおり、ガスボンベ取付口22側を上方、開口部24側を下方として説明する。
【0020】
図1(a)に示すように、本発明の実施形態に係る膨張装置10は、略筒状の筐体21と、該筐体21の一部に設けられた回動ピン28cで軸支されたレバー28と、筐体21内に収容され、筐体21の内部に設けられた収容部23内を摺動する円柱状の摺動部材30と、を備えている。
【0021】
また、図1(a)に示すように、レバー28は、作用点となる短アーム28bと力点となる長アーム28dとから略L字状に形成されている。長アーム28dには、他端にノブ29bが結束された引き紐29aの一端が結束されている。また、レバー28は、その短アーム28bにて摺動部材30と連結されている。
【0022】
筐体21は、その上面から円形に開口し、内壁面に雌ねじ22aが形成され、炭酸ガス、酸素、空気などが封入されたガスボンベ80が接続されるガスボンベ取付口22と、摺動部材30が通過しうる大きさで筐体21の下面から開口した開口部24と、をさらに備えている。そして、収容部23は、筐体21の内部にて、ガスボンベ取付口22と開口部24とを連通する断面円形の孔部として形成されている。
【0023】
収容部23は、ガスボンベ取付口22と連通する第1収容部23aと、第1収容部23aの下端に連通する第2収容部23bと、第2収容部23bの下端に連通し、開口部24と連通する第3収容部23cと、からなる。第1収容部23a、第2収容部23b、第3収容部23cは、この順に径が大きくなるように形成されているため、収容部23には、ガスボンベ取付口22から開口部24に向けて、拡径するように段差状の空間が形成されている。そして、第2収容部23bから、膨張体(図示せず)が接続される膨張体接続部26に繋がるように、筐体21内に第2収容部23bと膨張体接続部26とを連通し、ガスの通路である貫通孔25が形成されている。
【0024】
図1(a)に示すように、摺動部材30は、収容部23内にて、筐体21におけるガスボンベ80側の第1位置と、第1位置より下方にあり、ガスボンベ80側から離間する第2位置とを上下方向に往復動する。
【0025】
また、図1(b)に示すように、筐体21の前面には、外部から筐体21の収容部23内の摺動部材30の側面を視認しうる矩形状の視認用開口27が形成されている。また、筐体21の背面には、視認用開口27と同形状とされた視認用開口(図示せず)が形成されている。
【0026】
図2に示すように、摺動部材30は、収容部23の内壁面と摺接する円筒状の外側摺動部材40と、外側摺動部材40内に進退自在に挿入される内側摺動部材50と、外側摺動部材40と内側摺動部材50との間に介設されるコイルばね60と、からなる。
【0027】
外側摺動部材40は、例えばABS樹脂で形成され、円筒状の本体部41と、本体部41の上部開口に嵌着されるヘッド部42と、を備えている。
ヘッド部42は、有底円筒状の台座部42aと、台座部42aの中央部から立設され、ガスボンベ80(図1(a)参照)の封板81(図5(a)参照)に当接する検知部としての検知棒42bと、本体部41の上部に嵌合可能な嵌合片42dと、からなる。そして、台座部42aの底部には、検知棒42bを囲むように、略C字状の挿通孔42cが形成されている。
【0028】
本体部41は、上円筒部411と、それより大径の下円筒部412とが上下方向に一体的に接続されてなる。上円筒部411の上部には、その側面を一周する溝46が形成され、この溝46には、Oリング45が嵌合されている。外側摺動部材40が収容部23内を移動するときには、上円筒部411は、Oリング45が第2収容部23bの内壁面に摺接しながら当該第2収容部23b内を移動するとともに、下円筒部412は、第3収容部23c内を移動する。
【0029】
内側摺動部材50は、例えばABS樹脂で形成され、外側摺動部材40の内壁面に摺接する上円筒部511、及び上円筒部511より大径の下円筒部512とが上下方向に一体的に接続されてなる本体部51と、上円筒部511に、上方を向くように固定された撃針52と、からなる。
【0030】
上円筒部511の上部には、その側面を一周する溝56が形成され、この溝56には、Oリング55が嵌合されている。内側摺動部材50が外側摺動部材40の中を移動するときには、上円筒部511は、Oリング55が上円筒部411の内壁面に摺接しながら当該上円筒部411内を移動する。
【0031】
また、撃針52は、先端が斜めに切断された裁頭円筒状の金属部材の側面に、その軸方向に沿ってスリットが形成され、断面略C字状とされた長尺状の部材である。
【0032】
図2及び図3に示すように、外側摺動部材40の本体部41には、軸方向に略沿うようにスリット部47が形成されている。このスリット部47は、下端部が本体部41の下端で開放した第1スリット47aと、第1スリット47aと平行とされ、上下端部が閉じた第3スリット47cと、第1スリット47aの上端部から第3スリット47cの略中央部に上方に傾斜した状態で連通する第2スリット47bと、からなる。内側摺動部材50の本体部51の側面には、円柱状の規制片51bが設けられ、内側摺動部材50は、この規制片51bをスリット47a〜47cに挿通させることにより、外側摺動部材40と連結され、摺動部材30が組み立てられる。
【0033】
このとき、撃針52は、ヘッド部42に形成された検知棒42bを囲繞するように、ヘッド部42をその挿通孔42cにて挿通する。
【0034】
このように組み立てられた摺動部材30の外側摺動部材40と内側摺動部材50は、その間に介設されたコイルばね60の付勢力により互いに離間し、規制片51bがスリット47cの下端に当接するとともに、コイルばね60の付勢力に抗しつつ互いに接近し、規制片51bがスリット47cの上端に当接する(図3の破線部を参照)。
【0035】
また、撃針52の先端は、両部材が離間するに伴って検知棒42bの先端より下方に位置するとともに、両部材が接近するに伴って検知棒42bの先端より上方に位置する(図3の矢印Aを参照)。
【0036】
図4(a)に示すように、摺動部材30が筐体21の収容部23内に収容された状態では、検知棒42bは筐体21に形成された第1収容部23aを挿通する。このとき、検知棒42bと第1収容部23aとの間には略円筒状の空間Sが形成されている。詳しくは、図4(c)に示すように、この空間Sは、検知棒42b及び撃針52を囲むとともに上下方向に延び、ガスボンベ取付口22にてそれぞれ開口する複数の小空間からなる。そのため、ガスボンベ80から放出したガスは、この空間S及び貫通孔25を通り、膨張体(図示せず)内へ流入させることができる。
【0037】
摺動部材30が筐体21の収容部23内に配設されると、外部から、筐体21の視認用開口27を通して外側摺動部材40の側面(表示部)を視認することができる。詳しくは、図2を参照して、外側摺動部材40の上円筒部411の前後の側面において、上側には青色部(第2彩色部)43a、下側には赤色部(第1彩色部)43bが設けられている。 青色部43a及び赤色部43bは、いずれも筐体21の視認用開口27と略同じ又は僅かに大きく形成されている。この表示部43は、摺動部材30が筐体21の収容部23内に収容されたとき、筐体21の視認用開口27に対応する位置に設けられている。
また、外側摺動部材40は、収容部23内で、貫通孔25を遮断するガスボンベ80側の第1位置と、貫通孔25を開放するガスボンベ80から離間した第2位置とを摺動する。これにより、外側摺動部材40が第1位置にあるときには、視認用開口27から、赤色部43bを視認することができ、第2位置にあるときには、視認用開口27から、青色部43aを視認することができる。
【0038】
また、図4(a)に示すように、レバー28は、その短アーム28bが、内側摺動部材50の下方部に設けられた係合凹部51aに係合することで内側摺動部材50と連結している。これにより、レバー28の引き紐29aを把持して下方に引くことにより、長アーム28dが回動ピン28cを回転軸として時計回りに回動し、短アーム28bが内側摺動部材50を押圧し、内側摺動部材50をコイルばね60に抗しつつ外側摺動部材40側(上方)に移動させる。一方、引き紐29aの把持を解除すると、内側摺動部材50がコイルばね60によって外側摺動部材40から押圧され、開口部24側(下方)に移動する。
【0039】
以上のように構成された膨張装置10は、以下の如く作動する。
まず、図4(a)に示すように、膨張装置10のガスボンベ取付口22に、ガスボンベ80を取り付ける前には、外側摺動部材40には、内側摺動部材50側に押圧する力は付与されないため、外側摺動部材40は、コイルばね60の付勢力により内側摺動部材50から上方に押圧され、ガスボンベ80側(ガスボンベ取付口22側)の第1位置にある。そして、貫通孔25は、外側摺動部材40のヘッド部42により中途で遮断され、ガスが通過しない状態とされている。
このとき、外側摺動部材40の検知棒42bは、ガスボンベ取付口22側に突出している。そして、図4(b)に示すように、筐体21の視認用開口27を通して、外側摺動部材40の赤色部43bを視認することができる。これにより、ガスボンベ80が膨張装置10のガスボンベ取付口22に取り付けられていないことが認識される。
【0040】
そしてこの状態から、図5(a)に示すように、膨張装置10のガスボンベ取付口22に、ガスボンベ80を取り付けると、外側摺動部材40の検知棒42bが、ガスボンベ80の封板81により下方に押圧される。これにより、外側摺動部材40は、コイルばね60の付勢力に抗しつつ第1位置から下方に押し下げられ、ガスボンベ80から離間した第2位置に位置するようになる。このとき、図5(b)に示すように、筐体21の視認用開口27を通して青色部43aを視認することができる。これにより、ガスボンベ80が膨張装置10のガスボンベ取付口22に適正に取り付けられていることが認識される。
【0041】
そしてこの状態にて、図6(a)に示すように、膨張装置10のレバー28を操作すると、内側摺動部材50は、レバー28の短アーム28bにより押圧されてガスボンベ80側に移動し、その撃針52がガスボンベ80の封板81を破断する。このとき、撃針52は、外側摺動部材40の検知棒42bより上方に位置している(図3参照)。これにより、ガスボンベ80内の圧縮ガスが、ガスボンベ80の封板81の破断部分(破断孔)から放出される。そして、その気圧で、第1収容部23aと撃針52及び検知棒42bとの間に形成される空間Sを通して(図4(c)参照)、ヘッド部42の台座部42aが押圧され、外側摺動部材40は第2位置に位置する状態が維持される。このとき、筐体21の貫通孔25は開放されたままである。そして、ガスボンベ80からのガスは、貫通孔25、膨張体接続部26を経由して、膨張体(図示せず)内に流入する(矢印B参照)。
このとき、図6(b)に示すように、筐体21の視認用開口27を通して青色部43aが視認される。
【0042】
そして、ガスボンベ80のガスの放出が終了すると、ガスボンベ80の封板81には撃針52と略同径の破断孔が形成されているので、外側摺動部材40は、コイルばね60の付勢力により上方に押され、図7(a)に示すように、その検知棒42bが破断孔を通してガスボンベ80内に進入し、ガスボンベ80側の第1位置に復帰する。このとき、図7(b)に示すように、筐体21の視認用開口27を通して、赤色部43bが視認される。これにより、ガスボンベ80の封板81が破断され、内部の圧縮ガスが消費されていることが認識される。
【0043】
一方、レバー28の操作力が解除されると、内側摺動部材50は、コイルばね60によって外側摺動部材40から押圧され、下方に移動する。このとき、外側摺動部材40は、第1位置にある状態で維持される。即ち、コイルばね60は、内側摺動部材50が第1位置にある外側摺動部材40から離間するように移動したときにも、当該外側摺動部材40を当該第1位置にあるように内側摺動部材50から付勢するものである。
【0044】
なお、本実施形態では、レバー28を操作してガスボンベ80の封板81を破断させた場合だけでなく、膨張装置10のガスボンベ取付口22に、既に封板81が破断し、内部に圧縮ガスがないガスボンベ80を接続した場合でも、図7(a)及び図7(b)に示す状態と同様に、筐体21の視認用開口27を通して赤色部43bが視認される。これにより、ガスボンベ80の封板81が破断され、内部の圧縮ガスが消費されていること、即ち、ガスボンベ80が使用済みであることが認識される。
【0045】
本実施形態の膨張装置10は、以下のようにして容易に組み立てることができる。即ち、まず、図8(a)に示すように、外側摺動部材40の本体部41内にコイルばね60を収容し、コイルばね60内に撃針52を挿通させながら、内側摺動部材50を外側摺動部材40の本体部41内に挿入する。
次に、内側摺動部材50の規制片51bを、外側摺動部材40のスリット47のスリット47aに挿通させ(図2参照)、スリット47b、スリット47cの順に移動させつつ、内側摺動部材50を本体部41内にさらに挿入し、図8(b)に示すように、撃針52を本体部41の上方から突出させる。
次いで、図8(c)に示すように、撃針52をヘッド部42の挿通孔42cに挿通させ、ヘッド部42を本体部41に嵌着する。これにより、摺動部材30の組み立てが終了する。このように、外側摺動部材40と内側摺動部材50とを筐体21に挿入する前に円筒状に組み立てることが出来る。
続いて、図8(d)に示すように、この摺動部材30を開口部24から、筐体21の収容部23内に収容する。
そして、図8(e)に示すように、内側摺動部材50の係合凹部51aにレバー28の短アーム28bを遊嵌しながら、レバー28を回動ピン28cに軸支固定する。以上で、膨張装置10の組み立てが完了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る膨張装置10によれば、ガスボンベ80が膨張装置10に適正に接続されると、視認用開口27を通して青色部43aを視認することができるため、ガスボンベ80が膨張装置10に適正に接続されたことを確実に報知することができる。また、ガスボンベ80の封板81を破断させ、ガスボンベ80のガスの放出が終了すると、視認用開口27を通して赤色部43bを視認することができるため、ガスボンベ80の封板81が破断していることを確実に報知することができる。また、既に封板81が破断しているガスボンベ80を誤って接続した場合にも、視認用開口27を通して赤色部43bを視認することができるため、ガスボンベ80の封板81が破断していることを確実に報知することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る膨張装置10によれば、報知手段を構成する外側摺動部材40が筐体21内に収容されるので、膨張装置が小型化される。
【0048】
また、本実施形態に係る膨張装置10によれば、外側摺動部材40と内側摺動部材50とを筐体21に挿入する前に円筒状に組み立てることが出来るので、筐体21の収容部23内への挿入が容易となる。このため、膨張装置10の組み立てが効率化される。
【0049】
また、本実施形態に係る膨張装置10によれば、報知手段を構成する表示部43が外側摺動部材40に設けられた青色部43a及び赤色部43bによって構成されているので、救命胴衣の整備時や着用時に、色を視認するだけで容易且つ確実にガスボンベの接続状態、使用状態を判別することができる。
【0050】
また、膨張体に膨張装置10を接続したとき、膨張装置10の前後の取付向きによっては、膨張体と膨張装置10のレバー28とが干渉することがあり、この場合、膨張装置10を逆向きに取り付けなければならない。そして、逆向きに取り付けると、表示部43が片面にしか設けられていない場合、表示部43が膨張体側を向くため、表示部43を視認できないことがある。本実施形態に係る膨張装置10によれば、表示部43は外側摺動部材40の側面における相対向する2つの領域にそれぞれ設けられ、筐体21の前後面に設けられた視認用開口27を通してそれぞれ視認可能とされているので、膨張装置10を膨張体に取り付ける際、膨張装置10を前後のいずれの向きに取り付けても表示部を視認することができる。
【0051】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、報知手段は、ガスボンベ80が膨張装置10に適正に取り付けられている場合には、筐体21の開口27を通して青色部43aが視認される一方、ガスボンベ80が取り付けられていない場合には、赤色部43bが視認されるように構成した。しかしこれに限定されず、例えば、報知手段は、外側摺動部材40に筐体21から突き出る突出部を設け、その突出部により外側摺動部材40の位置を報知させるように構成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、報知手段を構成する表示部43は、赤と青の彩色により構成したが、これに限定されず、文字、図形、記号などで構成してもよい。
【0053】
さらに、報知手段は、例えば、電源と、駆動用回路と、スピーカーなどの音響媒体と、駆動用回路を作動させるスイッチとより構成することもできる。このとき、外側摺動部材40が収容部23内を第1位置に移動することによってスイッチがオンされ、スピーカーから音が吹鳴されることで外側摺動部材40が第1位置にある旨が報知される。
【0054】
また、上記実施形態では、レバー28を操作することで、内側摺動部材50を上方へ移動させたが、これに限定されず、レバー28に代えて、弾性部材を介して係合凹部51aに進退自在に係合する押しスイッチを使用してもよい。また、レバー28に代えて、筐体21の側面にスライド移動し、係合凹部51aに係合解除自在とされるスライド片を使用してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、付勢部材を弾性部材であるコイルばね60で構成したが、これに限られず、付勢部材は、弾性部材であるゴムで構成することもできるし、さらにはエアスプリングなどの塑性部材で構成することもできる。
【符号の説明】
【0056】
10 膨張装置
21 筐体
22 ガスボンベ取付口
23 収容部
24 開口部
25 貫通孔
26 膨張体接続部
27 視認用開口
28 レバー
29 引き紐
30 摺動部材
40 外側摺動部材
41 本体部
42 ヘッド部
43 表示部
50 内側摺動部材
51 本体部
52 撃針
60 コイルばね
80 ガスボンベ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスが封止部より内部に封入されたガスボンベが接続される筐体、及び、
前記筐体に収容され、前記筐体における前記ガスボンベ側の第1位置と同筐体における前記ガスボンベ側から離間する第2位置との間を移動する第1部材と、該第1部材と進退自在に連結され、前記第1部材を通って前記ガスボンベの封止部を破断する第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に介設され、前記第2部材が前記ガスボンベに接近するように移動するに伴い、少なくとも当該第1部材を前記第1位置に位置させるように付勢する付勢部材と、を有する作動部材を備え、
前記第1部材が前記第1位置にある旨を報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする膨張装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記第2部材が前記第1位置にある前記第1部材から離間するように移動したときにも、当該第1部材を当該第1位置にあるように付勢することを特徴とする請求項1に記載の膨張装置。
【請求項3】
前記筐体は、さらに前記ガスボンベのガスを外部に導く通路を有し、
前記第1部材は、前記ガスボンベの圧縮ガスの気圧によって前記付勢部材の付勢力に抗しつつ前記第1位置から前記第2位置に移動して前記通路を開放する一方、前記ガスボンベからの圧縮ガスの放出が終了したときには、前記付勢部材の付勢力によって前記第1位置に復帰することを特徴とする請求項1又は2に記載の膨張装置。
【請求項4】
前記第2部材に連結され、前記第2部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記ガスボンベ側に移動させることで当該第2部材によって前記ガスボンベの封止部を破断させるレバー部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の膨張装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記ガスボンベの封止部に当接する検知部を備え、この検知部が前記筐体に接続された前記ガスボンベの封止部に当接したときに、前記第2位置に位置するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の膨張装置。
【請求項6】
前記報知手段は、前記第1部材に設けられ、少なくとも当該第1部材が前記第1位置にあるときに視認可能な表示部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の膨張装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記第1部材にそれぞれ設けられ、前記第1部材が前記第1位置にあるときには、前記筐体の開口を通して視認可能な第1彩色部と、前記第1部材が前記第2位置にあるときには、前記筐体の開口を通して視認可能な第2彩色部とからなることを特徴とする請求項6に記載の膨張装置。
【請求項8】
前記表示部は前記第1部材の側面における相対向する2つの領域にそれぞれ設けられ、前記筐体の前面及び背面に設けられた開口を通してそれぞれ視認可能とされていることを特徴とする請求項6又は7に記載の膨張装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−20698(P2012−20698A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161514(P2010−161514)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(390005393)藤倉航装株式会社 (40)