説明

臀部拭き取り装置並びにそれを用いた温水洗浄便座及び温水洗浄便器

【課題】便座に座ったままの状態で、水滴や汚れの拭き取り作業を行うことができる臀部拭き取り装置を提供すること。
【解決手段】臀部拭き取り装置100は、温水洗浄装置6を収容する外筐体2内に収容されており、紙を取り付け可能な拭き取りアーム部5と、拭き取りアーム部5を露出させることができる大きさを有しており、外筐体に設けられた露出口2aと、紙が取り付けられた状態で、拭き取りアーム部5を露出口の内側にまで移動させる拭き取りアーム移動部8と、拭き取りアーム部5が露出口2aの内側にまで移動した状態で、拭き取りアーム部5を露出口2aから露出するまで押進させるアーム駆動部101とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器周辺の機器に関し、より特定的には、臀部の汚れや水滴を拭き取ることができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水洗浄便器は、温水を臀部に噴射して、臀部を自動的に洗浄することができる。温水洗浄便器を用いれば、腰を上げずに、臀部を洗浄することができるので、高齢者や体が不自由な者などにとっては、非常に有用である。ところが、温水洗浄便器を用いた場合、臀部に水滴が残ってしまう。そのため、腰を上げて、臀部と便座との間に間隙を設け、手に持ったトイレットペーパーで、水滴を拭き取る必要がある。しかし、腰を上げて、臀部と便座との間に間隙を設ける作業は、高齢者や体が不自由な者などにとっては、困難である。
【0003】
水滴の拭き取り作業を容易にするための装置として、下記のような装置が提案されている。
【0004】
特許文献1には、和式トイレで使用する装置であるが、肛門についた水滴を筒状操作杆の先端に取り付けられた花弁型拭取紙で拭き取るための装置が提案されている。
【0005】
特許文献2には、洋式トイレで使用する装置が提案されている。特許文献1と同様、特許文献2には、肛門についた水滴を筒状操作杵の先端に取り付けた花弁型拭取紙で拭き取るための装置が提案されている。特許文献2に記載の装置を用いれば、臀部と便座との間にできた狭い空間に、棒状の当該装置を挿入して、臀部に付いた水滴を拭き取ることができる。狭い空間に棒状の当該装置を挿入すれば良いだけであるので、水滴の拭き取り作業が容易となる。
【特許文献1】登録実用新案第2546962号公報
【特許文献2】登録実用新案第3024055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置は、和式トイレに用いるものであり、洋式トイレに使うことはできない。無理に、洋式トイレに使ったとしても、臀部を便座から上げなければならず、高齢者や体が不自由な者などにとっては、依然、水滴や汚れの拭き取り作業が困難である。
【0007】
特許文献2に記載の装置であったとしても、ある程度は、臀部を便座から上げなければならず、やはり、高齢者や体が不自由な者などにとっては困難である。
【0008】
温風によって、水滴を乾かすという温水洗浄便器も存在する。しかし、トイレットペーパーで、しっかり水滴や汚れを拭き取りたいというニーズが存在することは否定できない。さらに、温風による乾燥には、時間がかかるという問題も存在する。また、肛門を乾燥させることは、常在菌を死滅させるおそれがあり、健康上、好ましくない場合がある。
【0009】
このように、従来の装置は、いずれも、高齢者や体が不自由な者などにとって、完全に、水滴や汚れの拭き取り作業を容易にしていたとは言い難い。便座に座ったままの状態で、すなわち、臀部と便座とが接したままの状態で、水滴や汚れを拭き取ることができれば、従来に比べ、格段と、水滴や汚れの拭き取り作業が楽になる。
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、便座に座ったままの状態で、水滴や汚れの拭き取り作業を行うことができる臀部拭き取り装置及びそれを用いた温水洗浄装置及び温水洗浄便器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、便座に座っている人の臀部を紙で拭く臀部拭き取り装置であって、温水洗浄装置を収容する外筐体内に収容されており、紙を取り付け可能な拭き取りアーム部と、拭き取りアーム部を露出させることができる大きさを有しており、外筐体に設けられた露出口と、紙が取り付けられた状態で、拭き取りアーム部を露出口の内側にまで移動させる拭き取りアーム移動部と、拭き取りアーム部が露出口の内側にまで移動した状態で、拭き取りアーム部を露出口から露出するまで押進させるアーム駆動部とを備える。
【0012】
これにより、紙が取り付けられた状態で、拭き取りアーム部が露出口から露出されるので、臀部に付着した水滴や汚れを拭き取ることができる。拭き取りアーム部の露出位置がユーザにとって適切な位置であれば、水滴や汚れは、座ったままの状態で拭き取られる。たとえ、拭き取りアーム部の露出位置が最適な位置からずれていたとしても、ユーザは、臀部を少し動かして紙を肛門付近にあてることによって、水滴や汚れを拭き取ることができる。このように、本発明によれば、便座に座ったままの状態で、水滴や汚れの拭き取り作業を行うことができる臀部拭き取り装置が提供されることとなる。また、便座の昇降などを行わずとも、紙を取り付けた拭き取りアーム部が露出されるので、臀部の拭き取りが安全に行われる。
【0013】
好ましくは、臀部拭き取り装置は、温水洗浄装置及び拭き取りアーム部を外筐体内で共に保持するための内筐体をさらに備える。拭き取りアーム移動部は、拭き取りアーム部が露出口の内側にまで移動するように、内筐体を回動させるとよい。
【0014】
これにより、温水洗浄装置によって臀部の洗浄が行われた後、紙を取り付けた拭き取りアーム部が露出口の内側にまで移動させることができる。よって、温水洗浄装置と紙による拭き取りとを共存させることが可能な臀部拭き取り装置が提供されることとなる。
【0015】
好ましくは、アーム駆動部は、少なくとも二つの回転部と、回転部間に架けられており、拭き取りアーム部に連結されたベルトと、少なくとも二つの回転部の内、少なくとも一つを回転させる第1のモータとを含み、第1のモータが回転することによって、ベルトに連結された拭き取りアーム部が前後進するとよい。
【0016】
このような簡易的な構成によって、拭き取りアーム部の露出を実現することができ、低コストに臀部拭き取り装置を提供することが可能となる。
【0017】
好ましくは、少なくとも二つの回転部の内、露出口側の回転部は、少なくとも上下動可能なように取り付けられており、露出口側の回転部に対して上下運動する力を加えるアーム上下駆動部をさらに備えるとよい。
【0018】
これにより、適切な位置に拭き取りアーム部が露出しなかったとしても、ユーザは臀部を自ら動かすことなく、水滴や汚れを拭き取ってもらうことができる。
【0019】
好ましくは、アーム上下駆動部は、変芯プーリーと、変芯プーリーの回転軸に取り付けられた第2のモータと、変芯プーリーの変芯軸と露出側の回転部とを両端で回動可能に連結する連結杆とを含み、第2のモータが回転することによって、連結杆が露出側の回転部に対して上下運動する力を加えるとよい。
【0020】
このように、簡易的で、かつ、メンテナンスがしやすい構造で、拭き取りアーム部の上下運動を実現することができる。
【0021】
好ましくは、紙は、所定の厚さを有する専用紙であるとよい。その場合、臀部拭き取り装置は、専用紙を収容する紙収容部をさらに備える。また、拭き取りアーム部は、専用紙を取り付ける取付部を含む。さらに、紙収容部は、専用紙を押し出す押出部を含むとよい。押出部によって押し出された専用紙は、前記取付部に取り付けられる。
【0022】
これにより、押出部によって押し出された専用紙は、拭き取りアーム部に取り付けられることとなる。このような簡易的な構造で、拭き取りアーム部に紙を取り付けることが可能となり、本発明の臀部拭き取り装置を低コストで提供することが可能となる。
【0023】
好ましくは、専用紙は、少なくとも一枚の台紙と、台紙の上に重ねられた少なくとも一枚の吸水性紙とを含むとよい。
【0024】
これにより、台紙部分を容易に押し出すことができる。
【0025】
好ましくは、取付部は、拭き取りアーム部の先端に設けられており、専用紙内の空隙に挿入され得る形状を有するとよい。また、台紙は、矩形に折れ曲がることによって空隙を形成しているとよい。
【0026】
このように、簡易的に専用紙の取り付けを実現することが可能である。
【0027】
好ましくは、押出部は、紙収容部に上下に重ねられた複数の専用紙の内、最下部の専用紙をスライドさせて押し出すためのスライド機構を含むとよい。
【0028】
これにより、簡易的な構造で、専用紙の押し出しが実現される。
【0029】
好ましくは、スライド機構は、前進する際に突出して専用紙を押し出し、後進する際に専用紙の重みによって押し下がるストッパーを含むとよい。
【0030】
これにより、簡易的な構造で、専用紙の押し出しが実現される。
【0031】
好ましくは、臀部拭き取り装置は、拭き取りアーム部が露出口から露出している状態で、拭き取りアーム部を上下に微動させるアーム上下駆動部をさらに備えるとよい。
【0032】
これにより、拭き取りアーム部が露出した際、最適な位置になかったとしても、拭き取りアーム部が上下するので、ユーザが臀部を動かさなくても、水滴や汚れが拭き取られることが期待できる。
【0033】
一実施形態として、アーム上下駆動部は、外筐体内から、拭き取りアーム部を押す押動部を含む。アーム上下駆動部は、押動部によって拭き取りアーム部を押すことによって、拭き取りアーム部を上方向に移動させ、押動部による押しを解除することによって、拭き取りアーム部を下方向に移動させるとよい。
【0034】
これにより、簡易的な構造で、拭き取りアーム部の上下微動を実現することができる。
【0035】
好ましくは、紙は、拭き取りアーム部に取り付けるための専用紙であるとよい。臀部拭き取り装置は、専用紙を収容する紙収容部をさらに備えるとよい。
【0036】
このように、紙を専用紙とすれば、拭き取りアーム部の構造を可能な限り簡易的なものとすることができ、低コストで本発明の臀部拭き取り装置を提供することが可能となる。
【0037】
好ましくは、拭き取りアーム部は、紙を取り付けるための取付部を含むとよい。
【0038】
このように、拭き取りアーム部が把持部を含むことによって、紙の取り付けが実現される。
【0039】
一実施形態として、取付部は、拭き取りアーム部に設けられたクリップ部材であるとよい。
【0040】
このように、非常に簡易的なクリップ部材であっても、紙を取り付けることができ、臀部拭き取り装置の低コスト化に貢献できる。
【0041】
好ましくは、アーム駆動部は、拭き取りアーム部を便器方向に向けて下方に傾斜させながら、押進させる押進部を含むとよい。
【0042】
これにより、ユーザの臀部を便器の下方からやさしく拭き取ることができる。
【0043】
好ましくは、アーム駆動部は、臀部の拭き取りが終了した後、拭き取りアームを引き戻すとよい。
【0044】
これにより、拭き取りアーム部が収容される。
【0045】
好ましくは、臀部拭き取り装置は、臀部の拭き取りが終了した後、拭き取りアーム部に取り付けられている紙を取り外す紙取り外し部をさらに備えるとよい。
【0046】
これにより、紙の取り外しが可能となる。
【0047】
好ましくは、臀部拭き取り装置は、拭き取りアーム部を外筐体内で保持するための内筐体をさらに備えるとよい。紙取り外し部は、内筐体又は外筐体に設けられた引っ掛け部であるとよい。アーム駆動部が拭き取りアーム部を引き戻す際に、紙は、引っ掛け部に引っ掛かって、拭き取りアーム部から取り外されるとよい。
【0048】
このように、紙を引っ掛けるだけで、紙が取り外されるので、非常に簡易な構造で紙の取り外しが可能となり、臀部拭き取り装置の低コスト化に貢献できる。
【0049】
好ましくは、臀部拭き取り装置は、アーム駆動部が拭き取りアーム部を引き戻す際、外筐体内から、拭き取りアーム部を上方向に押すアーム上下駆動部をさらに備えるとよい。アーム上下駆動部によって拭き取りアーム部が上方向に押されている状態で、紙は、引っ掛け部に引っ掛かるとよい。
【0050】
このように、アーム上下駆動部を利用して、紙を取り外すことができるので、簡易な構成による紙の取り外しが実現される。加えて、紙の取り外しと拭き取りアーム部の上下微動とを同一の機構で実現することができるので、臀部拭き取り装置の低コスト化に貢献できる。
【0051】
また、本発明の他の局面は、上記に記載の臀部拭き取り装置を備える温水洗浄便座であってもよい。さらに、本発明の他の局面は、上記に記載の臀部拭き取り装置を備える温水洗浄便器であってもよい。
【0052】
また、本発明の他の局面は、臀部拭き取り装置に設けられた拭き取りアームの先端に取り付けられる専用紙であって、少なくとも一枚の台紙と、台紙の上に重ねられた少なくとも一枚の吸水性紙とを含む。好ましくは、台紙は、矩形に折れ曲がっているとよい。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、紙が取り付けられた状態で、拭き取りアーム部が露出口から露出されるので、臀部に付着した水滴や汚れを拭き取ることができる。拭き取りアーム部の露出位置がユーザにとって適切な位置であれば、水滴や汚れは、座ったままの状態で拭き取られる。たとえ、拭き取りアーム部の露出位置が最適な位置からずれていたとしても、ユーザは、臀部を少し動かして紙を肛門付近にあてることによって、水滴や汚れを拭き取ることができる。このように、本発明によれば、便座に座ったままの状態で、水滴や汚れの拭き取り作業を行うことができる臀部拭き取り装置並びにそれを用いた温水洗浄便座及び温水洗浄便器が提供されることとなる。また、便座の昇降などを行わずとも、紙を取り付けた拭き取りアーム部が露出されるので、臀部の拭き取りが安全に行われる。
【0054】
また、温水洗浄装置によって臀部の洗浄が行われた後、紙を取り付けた拭き取りアーム部が露出口の内側にまで移動させることができる。よって、温水洗浄装置と紙による拭き取りとを共存させることが可能な臀部拭き取り装置が提供されることとなる。
【0055】
さらに、押出部によって押し出された専用紙は、拭き取りアーム部に取り付けられることとなる。このような簡易的な構造で、拭き取りアーム部に紙を取り付けることが可能となり、本発明の臀部拭き取り装置を低コストで提供することが可能となる。
【0056】
また、拭き取りアーム部が露出した際、最適な位置になかったとしても、拭き取りアーム部が上下するので、ユーザが臀部を動かさなくても、水滴や汚れが拭き取られることが期待できる。
【0057】
また、拭き取りアーム部を引き戻す際に、紙が引っかかり落とされることとなり、簡易な構造で紙を落とすことができる。
【0058】
また、アーム上下駆動部を利用して、紙を取り外すことができるので、簡易な構成による紙の取り外しが実現される。加えて、紙の取り外しと拭き取りアーム部の上下微動とを同一の機構で実現することができるので、臀部拭き取り装置の低コスト化に貢献できる。
【0059】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る臀部拭き取り装置100を示す斜視図である。臀部拭き取り装置100は、便器1と、外筐体2と、内筐体3と、紙収容部4と、拭き取りアーム部5と、温水洗浄装置6と、拭き取りアーム移動部8とを備える。図1において、便器1の上に設置される便座の記載は、省略されている。便座は、外筐体2の形状に則して、開け閉め可能な形状を有しており、外筐体2に回動可能に取り付けられる。
【0061】
便器1は、陶器製等である。外筐体2は、温水洗浄装置6と、拭き取りアーム部5とを保持している。外筐体2は、便器1の端部に取り付けられている。内筐体3は、外筐体2内に設置されており、温水洗浄装置6と、拭き取りアーム部5とを共に保持する。内筐体3は、軸9を中心に、ステッピングモータを含む拭き取りアーム移動部8によって回動可能である。紙収容部4は、蓋10を含む。蓋10を開けると、紙収容部4に、臀部拭き取り用の専用紙を収容することができる。拭き取りアーム部5は、紙収容部4に収容されている専用紙を取り付けることが可能な機構を有する。温水洗浄装置6は、温水を臀部に吹き付けることによって、臀部の汚れを落とす。温水洗浄装置6として、あらゆる周知の機構を適用することができ、本明細書では、温水洗浄装置6の機構についての説明は省略する。ノズル用口7は、内筐体3に設けられている。温水洗浄装置6の噴射ノズルがノズル用口7から突出して、温水が臀部に吹き付けられる。外筐体2は、温水洗浄装置6の噴射ノズル及び拭き取りアーム部5を露出させることができる大きさの露出口2aを含む。
【0062】
図2は、拭き取りアーム部5が露出口2aにまで移動したときの状態を示す図である。拭き取りアーム移動部8は、拭き取りアーム部5に専用紙が取り付けられた状態で、軸9を中心に内筐体3を回動させる。拭き取りアーム部5の先頭部分が露出口2aの内側にまで到達した段階で、内筐体3の回動は停止する。その後、アーム駆動部101(図4参照)は、拭き取りアーム部5を露出口から露出するまで押進させる。これにより、専用紙が取り付けられた拭き取りアーム部5が、露出口2aから露出し、臀部の水滴や汚れが拭き取られる。なお、拭き取りアーム部5の位置が最適な位置でなければ、ユーザは、臀部を動かして、水滴や汚れを紙に専用紙に拭き取らせると良い。
【0063】
外筐体2は、内筐体2及び紙収容部4を収容している。内筐体2は、軸9を中心に回動可能に外筐体2内で保持されている。内筐体3の形状や外筐体2が内筐体3を保持する機構は特に限定されない。たとえば、内筐体3は、底面略弧状の錐体である。当該錐体の底面及び対応する外筐体2の内底面に弧状のガイドレールを設け、内筐体3が、軸9を中心に回動可能である。
【0064】
図3は、外筐体2内の内筐体3及び紙収容部4を示す平面図である。図3では、温水洗浄装置6が露出口2aから露出可能な場所に位置している状況が示されている。図4は、図3におけるA−A断面図である。以下、図3及び図4を参照しながら、各部材の位置関係について説明する。
【0065】
紙収容部4は、拭き取りアーム部5側に、専用紙18を縦に重ねて収容することができる四角柱体102を含む。紙収容部4は、四角柱体102に隣接して、専用紙18を押し出すための機構を有する押出部103を含む。押出部103は、押出スライダ17と、クランク16と、ステッピングモータ15とを含む。ステッピングモータ15の軸15aに、クランク16の一端が回動可能に取り付けられている。クランク16の他端は、押出スライダ17の一端に回動可能に取り付けられている。ステッピングモータ15が所定角回転することによって、クランク16が押出スライダ17を平行移動させる。これにより、専用紙18が紙収容部4から押し出される。
【0066】
アーム駆動部101は、ステッピングモータ14と、板バネガイド部材12と、板バネ13とを含む。板バネガイド部材12の中には、回転ドラム19が含まれている。回転ドラム19の中心は、ステッピングモータ14の軸20と連結されている。板バネ13の先端には、拭き取りアーム部5の一端が連結されている。拭き取りアーム部5の下には、拭き取りアーム部5をスライド可能に支持する支持部21が配置されている。拭き取りアーム部5は、クリップ部材11(取付部)を含む。ステッピングモータ12が回転することによって、板バネ13は、伸び進む。これにより、拭き取りアーム部5が、斜め下方に押進することとなる。板バネ13及び支持部21は、拭き取りアーム部5を便器方向に向けて下方に傾斜させながら押進させる押進部である。
【0067】
支持部21の下には、拭き取りアーム部5が露出口2aから露出している状態で、拭き取りアーム部5を上下に微動させるためのアーム上下駆動部104が設置されている。アーム上下駆動部104は、ステッピングモータ25と、ステッピングモータ25の軸25aに取り付けられた円板26と、クランク24と、スライド板23とを含む。スライド板23は、外筐体3と、支持部21から延伸しているスライド孔形成部材22との間の間隙をスライド可能である。スライド板23は、外筐体2内から、拭き取りアーム部5を押す押動部である。クランク24の一端は、円板26の中心からずれた位置に回動可能に取り付けられている。クランク24の他端は、スライド板23の他端に回動可能に取り付けられている。ステッピングモータ25が回転することによって、スライド板23は、外筐体3とスライド孔形成部材22との間を左右にスライド可能である。
【0068】
内筐体3の回動中心に設けられた軸9は、ステッピングモータを含む拭き取りアーム駆動部8と連結されている。拭き取りアーム駆動部8のステッピングモータを回転させることよって、内筐体3全体を回動させることができる。
【0069】
図5は、専用紙18の構成を示す斜視図である。専用紙18は、硬めの台紙18aと、台紙18aの上に重ねられた少なくとも一枚の吸水性紙18bとを含む。台紙18aの上面には、接着剤や粘着剤、摩擦力の大きい樹脂等が塗布されている。吸水性紙18bは、直方形の一枚のトイレットペーパーを折り重ねることによって、台紙18aの上に取り付けられている。台紙18aは、水溶性であり、水洗トイレに流すことができる素材で形成されている。台紙18aとして、たとえば、日本製紙パピリア株式会社製の水溶紙「MDP」などを用いるとよい。専用紙18は、予め工場で製造されても良いし、ユーザが手作りで製造してもよい。専用紙18は、図4に示すように、紙収容部4の四角柱体102に積み重ねられている。
【0070】
以下、図6〜図10を参照しながら、臀部拭き取り装置100の動作について説明する。図6は、専用紙18が拭き取りアーム部5に取り付けられたときの様子を示す図である。図6に示すように、押出スライダ17がスライドすることによって、四角柱体102に設けられた専用紙排出口102aから、専用紙18が押し出される。専用紙排出口102aと拭き取りアーム部5の先端とは対向しており、押し出された専用紙18は、拭き取りアーム部5の傾斜を登っていく。クリップ部材11は、拭き取りアーム部5の先端から、専用紙18の幅だけの位置に設けられている。押し出された専用紙18の一辺は、クリップ部材11に挟み込まれる。これにより、専用紙18は、拭き取りアーム部5に取り付けられることとなる。
【0071】
専用紙18が拭き取りアーム部5に取り付けられた後、拭き取りアーム部5の先端が露出口2aの内側に到達するまで、拭き取りアーム移動部8が内筐体3を回動させる。図7は、拭き取りアーム部5が露出口2aから露出される様子を示す図である。拭き取りアーム部5の先端が露出口2aの内側に到達すると、ステッピングモータ14が所定角だけ回動して、板バネ13が拭き取りアーム部5を斜め下方に押進させる。これにより、図7に示すように、専用紙18が取り付けられた状態で、拭き取りアーム部5が露出口2aから露出する。
【0072】
拭き取りアーム部5が露出口2aから露出した後、拭き取りアーム部5の上下運動が開始される。図8は、拭き取りアーム部5を上下方向に微動させるときの様子を示す図である。拭き取りアーム部5が露出口2aから露出した後、ステッピングモータ25は、たとえば、90度回転する。これにより、スライド板23は、最大押進量の半分だけ押進する。これにより、拭き取りアーム部5は、上方向に微動することとなる。拭き取りアーム部5を上方向に微動させた後、ステッピングモータ25は、たとえば、逆方向に90度回転する。これにより、スライド板23は、最大押進量の半分だけ後進する。これにより、拭き取りアーム部5は、下方向に微動することとなる。上方向の微動、下方向の微動を繰り返すことによって、拭き取りアーム部5は、上下運動することとなる。そして、臀部に付着した水滴や汚れが専用紙18に拭き取られることとなる。このような上下微動によって、最適な位置に拭き取りアーム部5が露出しなかったとしても、水滴や汚れの拭き取りが可能となる。
【0073】
図9及び図10は、専用紙18が取り外されるときの様子を示す図である。図9に示すように、拭き取りアーム部5の上下運動が終了すると、アーム駆動部101は、ステッピングモータ14を逆方向に回転させて板バネ13を巻き取り、拭き取りアーム部5を後進させる。内筐体3の開口部分に設けられた引っ掛け部27の内側にクリップ部材11が入ったところで、アーム駆動部101は、拭き取りアーム部5の後進を停止する。その後、図10に示すように、ステッピングモータ25は、たとえば、180度回転する。これにより、スライド板23は、最大押進量だけ押進する。スライド板23の最大押進量は、スライド板23が最大押進量だけ押進した際、拭き取りアーム部5が引っ掛け部27に当接する程度の値である。最大押進量が得られるように、円板26、クランク24、及びスライド板23のサイズや取り付け位置が決められる。スライド板23が押進して、拭き取りアーム部5が引っ掛け部27に当接している状況で、アーム駆動部101は、拭き取りアーム部5を後進させる。これにより、専用紙18が引っ掛け部27に引っ掛かって、拭き取りアーム部5から外れることとなる。すなわち、引っ掛け部27は、臀部の拭き取りが終了した後、拭き取りアーム部に取り付けられている専用紙18を取り外すための紙取り外し部として機能する。その後、ステッピングモータ25が逆方向に回転してスライド板23を後進させる。そして、アーム駆動部10は、拭き取りアーム部5を後進させて、拭き取りアーム部5が元の位置に戻る。その後、拭き取りアーム移動部8は、逆方向に回転して、温水洗浄装置6を露出口2a側に露出可能にする。
【0074】
図11は、臀部拭き取り装置100の電気的制御の機能ブロック図である。図11において、臀部拭き取り装置100は、入力部28と、記憶部29と、制御部30と、第1のドライバ31と、第2のドライバ32と、第3のドライバ33と、第4のドライバ34と、第1のステッピングモータ35と、第2のステッピングモータ36と、第3のステッピングモータ37と、第4のステッピングモータ38とを備える。第1のステッピングモータ35は、拭き取りアーム移動部8に含まれる。第2のステッピングモータ36は、押出部103に含まれるステッピングモータ15に対応する。第3のステッピングモータ37は、アーム駆動部101に含まれるステッピングモータ14に対応する。第4のステッピングモータ38は、アーム上下駆動部104に含まれるステッピングモータ25に対応する。
【0075】
入力部28は、ユーザの指示に応じて、動作の開始や停止を制御部30に伝える。制御部30は、予めプログラムされている順序に従って、記憶部29に格納されている所定量に基づく電気信号を、第1〜第4のドライバ31〜34に送る。第1のステッピングモータ35、第2のステッピングモータ36、第3のステッピングモータ37、及び第4のステッピングモータ38は、それぞれ、第1のドライバ31、第2のドライバ32、第3のドライバ33、及び第4のドライバ34からの電気信号に従った角度だけ回転する。
【0076】
図12は、制御部30の動作を示すフローチャートである。以下、図12を参照しながら、臀部拭き取り装置100の動作について説明する。まず、入力部28において、臀部拭き取りスタートボタンが押下されたら、制御部30は、第2のステッピング36を所定角だけ回転させる(ステップS101)。当該所定角は、押出スライダ17が専用紙18を押し出して、専用紙18をクリップ部材11に取り付けることができる角度である(図6参照)。当該所定角に関する情報は、記憶部29に格納されている(以下同様)。
【0077】
次に、制御部30は、第2のステッピングモータ36を逆方向に所定角だけ回転させる(ステップS102)。当該所定角は、ステップS101における所定角と同一である。これにより、押出スライダ17が初期位置に戻る。
【0078】
次に、制御部30は、第1のステッピングモータ35を所定角だけ回転させる(ステップ103)。当該所定角は、拭き取りアーム部5が露出口2aの内側にまで到達するだけの角度である(図2参照)。
【0079】
次に、制御部30は、第3のステッピングモータ37を所定角だけ回転させる(ステップS104)。当該所定角は、板バネ13が押進することによって、拭き取りアーム部5が露出口2aから露出するだけの角度である(図7参照)。
【0080】
次に、制御部30は、第4のステッピングモータ38を所定角だけ回転させる(ステップS105)。当該所定角は、スライド板23が押進することによって、拭き取りアーム部5を上方向に動かすだけの角度である(図8参照)。
【0081】
次に、制御部30は、入力部28において、ストップボタンが押下されたか否かを判断する(ステップS106)。
【0082】
ストップボタンが押下されていない場合、制御部30は、第4のステッピングモータ38を逆方向に所定角だけ回転させる(ステップS107)。当該所定角は、ステップS105における所定角と同一である。これにより、スライド板23が後進し、拭き取りアーム部5が下方向に動く(図7の状態)。
【0083】
一方、ストップボタンが押下された場合、制御部30は、ステップ107と同様、第4のステッピングモータ38を逆方向に所定角だけ回転させる(ステップS108)。
【0084】
ステップS108の後、制御部30は、第3のステッピングモータ37を逆方向に所定角だけ回転させる(ステップS109)。当該所定角は、拭き取りアーム部5のクリップ部材11が引っ掛け部27の内側まで入り込むだけの角度である。これにより、板バネ13が後進し、クリップ部材11が引っ掛け部27の内側まで入り込む(図9参照)。
【0085】
次に、制御部30は、第4のステッピングモータ38を所定角だけ回転させる(ステップS110)。当該所定角は、スライド板23が押進し、引っ掛け部27に拭き取りアーム部5が当接するだけの角度である(図10参照)。
【0086】
次に、制御部30は、第3のステッピングモータ37を所定角だけ回転させる(ステップS111)。当該所定角は、板バネ13が後退し、専用紙18がクリップ部材11から取り外されるだけの角度である。
【0087】
次に、制御部30は、第4のステッピングモータ38を所定角だけ回転させる(ステップS112)。当該所定角は、スライド板23が後進して、初期状態に戻るだけの角度である。これにより、拭き取りアーム部5が支持部21の傾斜角に沿った角度で傾斜することとなる。
【0088】
次に、制御部30は、第3のステッピングモータ37を所定角だけ回転させる(ステップS113)。当該所定角は、板バネ13が後進して、初期状態に戻るだけの角度である。これにより、拭き取りアーム部5が初期状態に戻る。
【0089】
最後に、制御部30は、第1のステッピングモータ35を逆方向に所定角だけ回転させる(ステップS114)。当該所定角は、ステップS103における所定角と同一である。これにより、拭き取りアーム部5は、外筐体2内に収容され、温水洗浄装置6が使用可能な状態に戻る。
【0090】
なお、上記動作において、適宜、入力部28に含まれる一時停止ボタンが押下されれば、制御部30は、押下されたときの状態で各ステッピングモータを停止させる。これにより、ユーザは好きな位置で拭き取りアーム部5を固定して、臀部を自ら動かして、水や汚れを拭き取ることができる。
【0091】
なお、各ステッピングモータが停止中に回転してしまわないように、あらゆる周知の回転防止機構が用いられている。
【0092】
このように、第1の実施形態によれば、紙が取り付けられた状態で、拭き取りアーム部5が露出口2aから露出されるので、臀部に付着した水滴や汚れを拭き取ることができる。拭き取りアーム部5の露出位置がユーザにとって適切な位置であれば、水滴や汚れは、座ったままの状態で拭き取られる。たとえ、拭き取りアーム部5の露出位置が最適な位置からずれていたとしても、ユーザは、臀部を少し動かして紙を肛門付近にあてることによって、水滴や汚れを拭き取ることができる。したがって、便座に座ったままの状態で、水滴や汚れの拭き取り作業を行うことができる臀部拭き取り装置100並びにそれを用いた温水洗浄便座及び温水洗浄便器が提供されることとなる。また、便座の昇降などを行わずとも、紙を取り付けた拭き取りアーム部5が露出されるので、臀部の拭き取りが安全に行われる。
【0093】
また、温水洗浄装置6によって臀部の洗浄が行われた後、紙を取り付けた拭き取りアーム部5が露出口2aの内側にまで移動させることができる。よって、温水洗浄装置6と紙による拭き取りとを共存させることが可能な臀部拭き取り装置100が提供されることとなる。
【0094】
さらに、押出スライダ17によって押し出された専用紙18は、拭き取りアーム部5のクリップ部材11に把持されることとなる。このような簡易的な構造で、拭き取りアーム部5に紙を取り付けることが可能となり、臀部拭き取り装置100を低コストで提供することが可能となる。
【0095】
また、拭き取りアーム部5が露出した際、最適な位置になかったとしても、アーム上下駆動部104によって、拭き取りアーム部5が上下するので、ユーザが臀部を動かさなくても、水滴や汚れが拭き取られることが期待できる。
【0096】
また、アーム上下駆動部104を利用して、紙を取り外すことができるので、簡易な構成による紙の取り外しが実現される。加えて、紙の取り外しと拭き取りアーム部5の上下微動とを同一の機構で実現することができるので、臀部拭き取り装置100の低コスト化に貢献できる。
【0097】
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態における臀部拭き取り装置100aの内部構造を示す一部断面図である。図13は、第1の実施形態において図3で示したA−A線の断面図に相当する。ただし、図13では、理解を容易にするために、ハッチングされていない拭き取りアーム部43の一部、アーム駆動部101a、及びアーム上下駆動部104aについては、側面図となっている。図13において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分は、同一の参照符号を付し、説明を省略する。なお、第2の実施形態においても、内筐体3aに温水洗浄装置が保持されており、図1〜図3を第2の実施形態においても援用することとする。
【0098】
図13において、臀部拭き取り装置100aは、拭き取りアーム部43と、アーム駆動部101aと、四角柱体102bと、押出部103aと、アーム上下駆動部104aと、拭き取りアーム移動部8とを備える。
【0099】
拭き取りアーム移動部8は、内筐体3aの底面に取り付けられて、拭き取りアーム部43を露出口2aの内側にまで移動させることができる。四角柱体102bは、専用紙18fを収容することができる。
【0100】
図14は、専用紙18fの構造を示す図である。専用紙18fは、矩形に折れ曲がった台紙18cと、台紙18cに重ねて取り付けられる吸水性紙18dとを含む。台紙18cと吸水性紙18dとは、のりしろ18eに塗布された接着剤や粘着剤等によって接着又は摩擦力強く密着する。矩形に折れ曲がった部分によって、専用紙18fには、台紙18cと吸水性紙18dとの間に空隙が形成される。
【0101】
押出部103aは、押出スライダ17aを含む。押出スライダ17aは、押出スライダ17aに形成された凹部に軸40を中心に回動可能に取り付けられたストッパー39と、ストッパー39の一端に取り付けられたバネ41と、専用紙18fを載せるための台42とを含む。台42の先端は、尖っている。
【0102】
拭き取りアーム部43は、専用紙18fが取り付けられる先端に、断面コの字状の切欠部45を含む。
【0103】
アーム駆動部101aは、内筐体3aに立脚する軸受49、52と、回転体47、50と、回転体47と回転体50との間に架けられたベルト46とを含む。回転体47の軸48は、軸受49に挿入されている。回転体47は、軸48を中心に回動可能である。回転体47は、図示しないモータとベルトなどで連結することによって、軸48を中心に回動し、ベルト46を動かす。なお、軸受49は回転体47を固定しており、回転体47自体が内蔵のモータの駆動によって回転して(たとえば、回転体47がモータープーリーである)、ベルト46が動かされても良い。回転体50は、軸51を中心に回動可能である。回転体50は、ベルト46に加えられた力によって、回転する。軸受52には、軸51を上下動可能に保持するスライド孔52aが穿孔されている。ベルト46は、拭き取りアーム部43の後端を回動可能に取り付ける連結部44を含む。
【0104】
アーム上下駆動部104aは、モータ56と、変芯プーリー55aと、連結杆53とを含む。モータ56は、内筐体3aに設けられた台座57に取り付けられている。変芯プーリー55aは、モータ56の軸55に取り付けられている。変芯プーリー55aは、軸55からずれた位置に、変芯軸54を含む。連結杆53の一端は、変芯軸54に回動可能に取り付けられている。連結杆53の他端は、軸51に回動可能に取り付けられている。モータ56の軸55が回転することによって、変芯プーリー55aが回転し、連結杆53が回転体50を押し上げることができる。これにより、回転体50が、スライド孔52に沿って、上下運動を繰り返すことができる。
【0105】
以下、図15〜図20を参照しながら、第2の実施形態における臀部拭き取り装置100aの動作について説明する。なお、第2の実施形態における臀部拭き取り装置100aの電気的機構については、第1の実施形態と類似であるので、説明を省略する。
【0106】
図15に示すように、ステッピングモータ15が所定角回転することによって、押出スライダ17aが押進する。このとき、ストッパー39は、専用紙18fの台紙18cに当接する。したがって、ストッパー39は、突出した状態のまま、専用紙18fを押し出すことになる。これにより、専用紙18fに形成された空隙に、拭き取りアーム部43の先端が入り込み、専用紙18fが拭き取りアーム部43に取り付けられる。このとき、ストッパー39は、専用紙18fの重みによって、押し下がっている。
【0107】
次に、図16に示すように、ステッピングモータ15が逆方向に所定角回転することによって、押出スライダ17aが後進する。このとき、ストッパー39が押し下がったまま、押出スライダ17aが後進する。押出スライダ17aの後進が終わると、バネ41にストッパー39の一端が引っ張られて、ストッパー39が突出することとなる。
【0108】
拭き取りアーム部43に専用紙18fが取り付けられた状態で、拭き取りアーム移動部8に含まれるステッピングモータが回転して、拭き取りアーム部43の先端が露出口2aの内側にまで移動する(図17参照)。図17に示すように、外筐体2bには、引っ掛け部58が取り付けられている。引っ掛け部58の一端は、外筐体2bの一端で、回動可能に取り付けられている。
【0109】
次に、図18に示すように、回転体47が所定角回転する。これにより、ベルト46は、回転体47と回転体50との間を回転する。回転体47は、拭き取りアーム部43の先端が露出口2aから露出する位置で停止する。このとき、拭き取りアーム部43の先端は、引っ掛け部58を押し上げるようにして、押進する。切欠部45はコの字状に形成されているので、専用紙18fは、切欠部45の底端で引っかかり、落ちることはない。
【0110】
次に、図19に示すように、モータ56が回転する。これによって、回転体50を上下させる力が連結杆53によって軸51に加えられる。図19に示すように、専用紙18fを取り付けた拭き取りアーム部43は上下運動を繰り返す。したがって、臀部に付着した水滴や汚れが拭き取られることとなる。
【0111】
最後に、図20に示すように、モータ47が逆方向に回転して、拭き取りアーム部43を初期位置に戻す。その際、専用紙18fは、引っ掛け部58に引っかかって、下に落とされる。
【0112】
このように、第2の実施形態によれば、紙が取り付けられた状態で、拭き取りアーム部43が露出口2aから露出されるので、臀部に付着した水滴や汚れを拭き取ることができる。拭き取りアーム部43の露出位置がユーザにとって適切な位置であれば、水滴や汚れは、座ったままの状態で拭き取られる。たとえ、拭き取りアーム部43の露出位置が最適な位置からずれていたとしても、ユーザは、臀部を少し動かして紙を肛門付近にあてることによって、水滴や汚れを拭き取ることができる。したがって、便座に座ったままの状態で、水滴や汚れの拭き取り作業を行うことができる臀部拭き取り装置100a並びにそれを用いた温水洗浄便座及び温水洗浄便器が提供されることとなる。また、便座の昇降などを行わずとも、紙を取り付けた拭き取りアーム部43が露出されるので、臀部の拭き取りが安全に行われる。
【0113】
また、温水洗浄装置6によって臀部の洗浄が行われた後、紙を取り付けた拭き取りアーム部43が露出口2aの内側にまで移動させることができる。よって、温水洗浄装置6と紙による拭き取りとを共存させることが可能な臀部拭き取り装置100aが提供されることとなる。
【0114】
さらに、押出スライダ17aによって押し出された専用紙18fは、拭き取りアーム部43の先端に取り付けられることとなる。このような簡易的な構造で、拭き取りアーム部43に紙を取り付けることが可能となり、臀部拭き取り装置100aを低コストで提供することが可能となる。
【0115】
また、拭き取りアーム部43が露出した際、最適な位置になかったとしても、アーム上下駆動部104aによって、拭き取りアーム部43が上下するので、ユーザが臀部を動かさなくても、水滴や汚れが拭き取られることが期待できる。
【0116】
また、回転体47,50及びベルト46を用いるという簡易な構造によって、拭き取りアーム部43を押進することができる。したがって、臀部拭き取り装置100aを低コストで提供することが可能となる。
【0117】
なお、第2の実施形態も、第1の実施形態と同様、上方から下方に向けて拭き取りアーム部43が駆動するようになっていてもよい。
【0118】
(変形例)
上記実施形態において、拭き取りアーム駆動部は、内筐体の端に取り付けられていたが、内筐体の中心部分やその他の位置に取り付けられ、拭き取りアーム部及び温水洗浄装置を移動させるようにしてもよい。
【0119】
上記実施形態において、拭き取りアーム部の先端形状は、板状であったが、これに限られるものではない。拭き取りアーム部の先端形状として、円筒状や、楕円筒状など、肛門にフィットしやすい様々な形状を採用しうる。また、拭き取りアーム部の先端に用いられる素材は、快適感を高めるために、軟質性の樹脂など、様々な素材を採用しうる。
【0120】
上記実施形態において、専用紙は、台紙の上に重ねられ吸水性の紙であるとしたが、専用紙はこれに限られるものではない。たとえば、専用紙は、筒状であってよい。筒状の専用紙を用いる場合、拭き取りアーム部に当該筒状の専用紙が挿入されることとなる。また、専用紙は、折り畳まれて重ねられていなくても良い。吸水性を考慮して、専用紙は、ある所定の厚さを有していれば良い。
【0121】
上記実施形態において、専用紙を用いることとしたが、汎用のトイレットペーパーを用いても良い。汎用のトイレットペーパーを用いる場合、周知のトイレットペーパー巻き取り機構によって巻き取られたトイレットペーパーを拭き取りアーム部が把持するようにするとよい。また、構成をより簡単にするのであれば、トイレットペーパーをユーザが手作業で巻き取り、拭き取りアーム部に取り付けて、使用するようにしてもよい。
【0122】
上記実施形態において、紙を把持するための機構として、拭き取りアーム部は、クリップ部材を用いることとしたが、紙を把持することが可能なあらゆる周知の把持部を拭き取りアーム部に設けることによって、紙を把持しても良い。たとえば、駆動する二以上の杆部材によって紙が挟まれることによって、紙が把持されても良い。また、人の指の形状をしたロボットアームによって、紙が把持されても良い。
【0123】
上記実施形態において、専用紙の取り外しは、引っ掛け部に専用紙を引っ掛けることによって行われたがこれに限られるものではない。たとえば、拭き取りアーム部側から、押し出し棒が押し出されて、専用紙が取り外されても良い。また、拭き取りアーム部が上方に移動せずとも、引っ掛け部が、カム機構等によって、拭き取りアーム部が後進している際に下方に突出することによって、専用紙が取り外されても良い。
【0124】
拭き取りアーム部内には、水又は温水が噴出するノズルが取り付けられており、紙が取り外された後、当該ノズルから水又は温水が噴出して、拭き取りアーム部を洗浄してもよい。
【0125】
内筐体内には、ドライヤーや紫外線照射装置が設けられており、拭き取りアーム部を乾燥させたり、殺菌させたりしてもよい。
【0126】
温水洗浄装置で用いられたあらゆる技術を、本発明の臀部拭き取り装置に採用することができる。本実施形態で示した臀部拭き取り装置の機構や構成、形状は、あくまでも一例に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0127】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、便座に座ったままの状態で、水滴や汚れの拭き取り作業を行うことができる臀部拭き取り装置及びそれを用いた温水洗浄装置及び温水洗浄便器であり、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の実施形態に係る臀部拭き取り装置100を示す斜視図
【図2】拭き取りアーム部5が露出口2aにまで移動したときの状態を示す図
【図3】外筐体2内の内筐体3及び紙収容部4を示す平面図
【図4】図3におけるA−A断面図
【図5】専用紙18の構成を示す斜視図
【図6】専用紙18が拭き取りアーム部5に取り付けられたときの様子を示す図
【図7】拭き取りアーム部5が露出口2aから露出される様子を示す図
【図8】拭き取りアーム部5を上下方向に微動させるときの様子を示す図
【図9】専用紙18が取り外されるときの様子を示す図
【図10】専用紙18が取り外されるときの様子を示す図
【図11】臀部拭き取り装置100の電気的制御の機能ブロック図
【図12】制御部30の動作を示すフローチャート
【図13】本発明の第2の実施形態における臀部拭き取り装置100aの内部構造を示す一部断面図
【図14】専用紙18fの構造を示す図
【図15】押出スライダ17aが押進する様子を示す図
【図16】押出スライダ17aが後進する様子を示す図
【図17】拭き取りアーム部43の先端が露出口2aの内側にまで移動する様子を示す図
【図18】拭き取りアーム部43の先端が露出口2aから露出する様子を示す図
【図19】拭き取りアーム部43が上下運動する様子を示す図
【図20】専用紙18fが取り外される様子を示す図
【符号の説明】
【0130】
100 臀部拭き取り装置
101,101a アーム駆動部
102,102b 四角柱体
102a 専用紙排出口
103,103a 押出部
104,104a アーム上下駆動部
1 便器
2 外筐体
2a 露出口
3,3a 内筐体
4 紙収容部
5,43 拭き取りアーム部
6 温水洗浄装置
7 ノズル用口
8 拭き取りアーム移動部
9 軸
10 蓋
11 クリップ部材
12 板バネガイド部材
13 板バネ
14 ステッピングモータ
15 ステッピングモータ
15a 軸
16 クランク
17,17a 押出スライダ
18,18f 専用紙
18a,18c 台紙
18b,18d 吸水性紙
18e のりしろ
19 回転ドラム
20 軸
21 支持部
22 スライド孔形成部材
23 スライド板
24 クランク
25 ステッピングモータ
25a 軸
26 円板
27 引っ掛け部
28 入力部
29 記憶部
30 制御部
31 第1のドライバ
32 第2のドライバ
33 第3のドライバ
34 第4のドライバ
35 第1のステッピングモータ
36 第2のステッピングモータ
37 第3のステッピングモータ
38 第4のステッピングモータ
39 ストッパー
40,48,51,55 軸
41 バネ
42 台
44 連結部
45 切欠部
46 ベルト
47,50 回転体
49,52 軸受
53 連結杆
54 変芯軸
55a 変芯プーリー
56 モータ
57 台座
58 引っ掛け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座に座っている人の臀部を紙で拭く臀部拭き取り装置であって、
温水洗浄装置を収容する外筐体内に収容されており、前記紙を取り付け可能な拭き取りアーム部と、
前記拭き取りアーム部を露出させることができる大きさを有しており、前記外筐体に設けられた露出口と、
前記紙が取り付けられた状態で、前記拭き取りアーム部を前記露出口の内側にまで移動させる拭き取りアーム移動部と、
前記拭き取りアーム部が前記露出口の内側にまで移動した状態で、前記拭き取りアーム部を前記露出口から露出するまで押進させるアーム駆動部とを備える、臀部拭き取り装置。
【請求項2】
前記温水洗浄装置及び前記拭き取りアーム部を前記外筐体内で共に保持するための内筐体をさらに備え、
前記拭き取りアーム移動部は、前記拭き取りアーム部が前記露出口の内側にまで移動するように、前記内筐体を回動させることを特徴とする、請求項1に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項3】
前記アーム駆動部は、
少なくとも二つの回転部と、
前記回転部間に架けられており、前記拭き取りアーム部に連結されたベルトと、
前記少なくとも二つの回転部の内、少なくとも一つを回転させる第1のモータとを含み、
前記第1のモータが回転することによって、前記ベルトに連結された拭き取りアーム部が前後進することを特徴とする、請求項1又は2に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項4】
前記少なくとも二つの回転部の内、前記露出口側の回転部は、少なくとも上下動可能なように取り付けられており、
前記露出口側の回転部に対して上下運動する力を加えるアーム上下駆動部をさらに備える、請求項3に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項5】
前記アーム上下駆動部は、
変芯プーリーと、
前記変芯プーリーの回転軸に取り付けられた第2のモータと、
前記変芯プーリーの変芯軸と前記露出側の回転部とを両端で回動可能に連結する連結杆とを含み、
前記第2のモータが回転することによって、前記連結杆が前記露出側の回転部に対して上下運動する力を加えることを特徴とする、請求項4に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項6】
前記紙は、所定の厚さを有する専用紙であり、
前記専用紙を収容する紙収容部をさらに備え、
前記拭き取りアーム部は、前記専用紙を取り付ける取付部を含み、
前記紙収容部は、前記専用紙を押し出す押出部を含み、
前記押出部によって押し出された前記専用紙は、前記取付部に取り付けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項7】
前記専用紙は、
少なくとも一枚の台紙と、
前記台紙の上に重ねられた少なくとも一枚の吸水性紙とを含むことを特徴とする、請求項6に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項8】
前記取付部は、前記拭き取りアーム部の先端に設けられており、前記専用紙内の空隙に挿入され得る形状を有することを特徴とする、請求項7に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項9】
前記台紙は、矩形に折れ曲がることによって前記空隙を形成していることを特徴とする、請求項8に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項10】
前記押出部は、前記紙収容部に上下に重ねられた複数の前記専用紙の内、最下部の前記専用紙をスライドさせて押し出すためのスライド機構を含むことを特徴とする、請求項6に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項11】
前記スライド機構は、前進する際に突出して前記専用紙を押し出し、後進する際に前記専用紙の重みによって押し下がるストッパーを含むことを特徴とする、請求項10に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項12】
前記拭き取りアーム部が前記露出口から露出している状態で、前記拭き取りアーム部を上下に微動させるアーム上下駆動部をさらに備える、請求項1又は2に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項13】
前記アーム上下駆動部は、前記外筐体内から、前記拭き取りアーム部を押す押動部を含み、
前記アーム上下駆動部は、前記押動部によって前記拭き取りアーム部を押すことによって、前記拭き取りアーム部を上方向に移動させ、前記押動部による押しを解除することによって、前記拭き取りアーム部を下方向に移動させることを特徴とする、請求項12に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項14】
前記紙は、前記拭き取りアーム部に取り付けるための専用紙であり、
前記専用紙を収容する紙収容部をさらに備える、請求項1又は2に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項15】
前記拭き取りアーム部は、前記紙を取り付けるための取付部を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項16】
前記取付部は、前記拭き取りアーム部に設けられたクリップ部材であることを特徴とする、請求項15に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項17】
前記アーム駆動部は、前記拭き取りアーム部を便器方向に向けて下方に傾斜させながら、押進させる押進部を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項18】
前記アーム駆動部は、前記臀部の拭き取りが終了した後、前記拭き取りアーム部を引き戻すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項19】
前記臀部の拭き取りが終了した後、前記拭き取りアーム部に取り付けられている前記紙を取り外す紙取り外し部をさらに備える、請求項1又は2に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項20】
前記拭き取りアーム部を前記外筐体内で保持するための内筐体をさらに備え、
前記紙取り外し部は、前記内筐体又は前記外筐体に設けられた引っ掛け部であり、
前記アーム駆動部が前記拭き取りアーム部を引き戻す際に、前記紙は、前記引っ掛け部に引っ掛かって、前記拭き取りアーム部から取り外されることを特徴とする、請求項19に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項21】
前記アーム駆動部が前記拭き取りアーム部を引き戻す際、前記外筐体内から、前記拭き取りアーム部を上方向に押すアーム上下駆動部をさらに備え、
前記アーム上下駆動部によって前記拭き取りアーム部が上方向に押されている状態で、前記紙は、前記引っ掛け部に引っ掛かることを特徴とする、請求項20に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項22】
請求項1に記載の臀部拭き取り装置を備える、温水洗浄便座。
【請求項23】
請求項1に記載の臀部拭き取り装置を備える、温水洗浄便器。
【請求項24】
臀部拭き取り装置に設けられた拭き取りアームの先端に取り付けられる専用紙であって、
少なくとも一枚の台紙と、
前記台紙の上に重ねられた少なくとも一枚の吸水性紙とを含む、専用紙。
【請求項25】
前記台紙は、矩形に折れ曲がっていることを特徴とする、請求項24に記載の専用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−263859(P2009−263859A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96321(P2008−96321)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【特許番号】特許第4195076号(P4195076)
【特許公報発行日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ホームページのアドレス http://okada−ss.co.jp/ http://www.okada−ss.co.jp/fukusi/index.html http://www.okada−ss.co.jp/fukusi/6430001.html 掲載日 平成19年10月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名 第34回国際福祉機器展H.C.R.2007 主催者名 社会福祉法人全国社会福祉協議会 財団法人保健福祉広報協会 開設日 平成19年10月3日から10月5日
【出願人】(598025555)株式会社岡田製作所 (11)
【Fターム(参考)】