説明

臍帯血由来のT調節性細胞を用いるT細胞の増殖の抑制方法

【課題】 T調節性(Treg)細胞を用いるT細胞の増殖の抑制方法を提供すること。
【解決手段】 T細胞を、ヒト臍帯血からのCD45RA表現型を有するT調節性(Treg)細胞と接触させることを含んでなるT細胞の増殖の抑制方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト臍帯血から単離されるT制御性(Treg)細胞を用いるT細胞の増殖の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然発生するCD4CD25T調節性細胞(Treg)は、免疫応答の大部分のタイプを制限するかもしくは改変することができる(非特許文献1)。最初に、Treg細胞は自己免疫の制御にとって重要であることが記述され(非特許文献2;非特許文献3)、そして実験的自己免疫疾患を防ぐことが養子免疫伝達で見出された。さらに最近では、Tregは同種免疫応答を抑制することが示されており、そして移植拒絶を防ぐことができる(非特許文献4;非特許文献5)。さらに、これらの細胞は抗腫瘍(非特許文献6;非特許文献7)および抗微生物免疫応答(非特許文献8)を抑制することができる。従って、CD4CD25regは免疫調節の中心的制御要素であるように思われ、そしてそれらの生物学を理解することは、免疫応答を治療的に操作することを目指す取り組みにとって重要である。
【0003】
reg細胞は、それらがリンパ節および脾臓CD4T細胞集団の5〜10%を構成するマウスにおいて最もよく特性化される。それらは病原体を含まないマウスにおいて中枢胸腺発生機序によって生成され、そしてまたはっきり定義されていない末梢生成もしくは増殖機序によっても生じる(非特許文献9;非特許文献10)。これまで、Treg細胞は新鮮単離でのCD4およびCD25抗原の共発現により主にとして定義されている。CD25ならびにマウスTregの他のマーカー、CTLA4(CD152)およびGITR(グルココルチコイド誘導性TNF様受容体)は全て通常のT細胞上の活性化抗原であり、従って、特異的ではない。転写リプレッサーとして働くと考えられる核タンパク質、FoxP3は、Treg細胞にもっと特異的であると考えられるさらに新しいマーカーである(非特許文献11)。活性化(T細胞受容体に基づく、抗原特異的もしくは抗CD3)後に、Treg細胞はCD4およびCD8T細胞の両方の増殖を非特異的に抑制できることが示された。抑制の機序は不明であり、そしてインビトロにおいて、細胞−細胞接触を必要とするように思われる。抑制の機能的結果は、IL−2の生産障害である(非特許文献12;非特許文献13)。インビボにおいて、抑制機序はさらに論議を呼び、インビトロ抑制には必要とされない、免疫抑制性サイトカインへの依存性を示す研究もある(非特許文献14)。
【0004】
骨髄移植(BMT)のマウスモデルにおける研究により、新鮮なもしくは培養増殖したCD4CD25細胞は疾患を遅らせるかもしくは防ぐことができることが示されている(非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17)。抗CD3に加えてIL−2で10日間エクスビボでポリクローン的に増殖させたTregは、移植片対宿主病(GVHD;非特許文献15)を防ぐことにおいて有効であることができることが以前の研究により示されている。放射線照射した同種APCに加えて外因性IL−2でのTreg細胞のエクスビボ増殖もまた、GVHDを抑制することに有効である(非特許文献17)。いくつかのモデル系において、Treg細胞はGVHDを防ぐことができ、そしてさらに移植片対白血病(GVL)効果を可能にする(非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20)。さらに、自己免疫疾患のマウスモデルにおける研究により、培養増殖した抗原特異的(トランスジェニックTCR)CD4CD25細胞は糖尿病を防ぐかもしくは処置さえできることが示されている(非特許文献21)。その結果として、インビボ注入用に十分な数を生成するためにヒトTreg細胞を単離しそして培養において増殖させることができるならば、Treg細胞は移植における臨床免疫抑制治療において役割を有する

【0005】
マウスデータは非常に有望であるが、ヒト血液から純粋なTregを単離する実際上の問題が依然として残る。幼若マウスにおいて、CD4CD25細胞は適度に豊富であり、そしてCD25サブセットは容易に明らかである。ヒトでは、CD25−dim細胞の大きなそして重複する集団が存在するので、CD25細胞は別個の集団(as discrete of a population)としてあるではない。Tregと通常のT細胞との共精製は、ヒトCD4CD25細胞の研究において認められる控えめなもしくは変わりやすいサプレッサー活性の理由である可能性がある(非特許文献22)。最も高い1.7%のCD25発現体(CD25high細胞)のFACSセルソーティングは、サプレッサー細胞単離を可能にすることが報告されている(非特許文献23)。CD4CD25細胞が強力なサプレッサー細胞系を生成するために十分純粋な成人血液由来のTreg細胞の集団を単離するためにストリンジェントな磁気ビーズに基づく方法が必要とされた。それでも、強力に抑制性の細胞系はドナーのサブセット(約1/3)において生成することしかできず、そして効能は細胞系純度と相関した(非特許文献24)。CD25high細胞のFACS分類(上位2.1%)は、成人血液からのさらに一貫性のあるサプレッサー細胞系生成を可能にすることが報告されている(非特許文献25)。
【0006】
成人血液からのTreg細胞の精製は可能であるが、難しい。一貫性のあるサプレッサー活性のために十分に純粋である成人血液からのTreg細胞を単離するために磁気活性化セルソーティング(MACS)精製を用いる以前の試みは、細胞機能の変動性をもたらしている。この変動性は、Treg細胞と重複するCD25−dimメモリー細胞の存在に主に起因する。セルソーターの使用はTreg細胞の単離を容易にし(非特許文献23)、そして成人血液からのサプレッサー細胞系の生成を可能にしている(非特許文献25)。しかしながら、成人血液由来のCD25細胞の分類された集団(上位2.9%)でさえ、クローニングおよび機能分析で通常のおよび調節性T細胞の混合を含有することが1つの報告において見出された(非特許文献26)。
【0007】
CD4CD25成人血液細胞の約20%は、CD45RAを発現する。サプレッサー細胞はCD45RO陽性であることがいくつかの報告において記述されているので、この抗原はサプレッサー細胞上に発現されると予想されない(ナイーブ細胞の活性化の間に一時的を除いて、一般に相互排他的発現)。しかしながら、これらの細胞の単離は、サプレッサー細胞系を生成することにとってCD45RA細胞よりはるかに優れていた(この方法により単離される12/12細胞系は、強力なサプレッサーであることが見出された)。ナイーブT細胞上で、CD45RAスプライスバリアントはT細胞表面上に発現される。いったんT細胞がメモリー細胞に分化すると、それは通常はCD45ROアイソフォームを発現する(特許文献1)。
【0008】
臍帯血は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によりCD4CD25細胞を含有することが以前に示されている(非特許文献27;非特許文献28;非特許文献29)。しかしながら、これらの細胞の機能に関して報告されるわずかなデータしかない。1つの報告は、LDA頻度分析に基づいて抑制機能を推測している(非特許文献28)。新鮮単離CD4CD25細胞の機能活性を評価する唯一の報告は、抗原特異的応答の抑制を示さなかった。さらに、CD25細胞枯渇後にCD4細胞の増加した抗原特異的反応性はなかった。しかしながら、抗CD3に基づくT細胞共培養アッセイにおいて控えめな抑制が認められた(1/1のレスポンダー細胞(responder)/サプレッサー細胞比で60%)(非特許文献30)。従って、大部分の臍帯血由来のCD25細胞は抑制性であるために十分にまだ成熟していないことが以前の研究により示された(非特許文献30)。
【0009】
従って、本発明までに、Treg細胞の特性および利点は認識されていたが、十分な数の強力なサプレッサー細胞を単離しそして生成する方法は知られていなかった。従って、Treg細胞を単離しそして増殖させる方法の認識された必要性があった。本発明は、この必要性を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国公開第20050196386
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Sakaguchi,2004,Annu.Rev.Immunol.,22:531−562
【非特許文献2】Sakaguchi,et al.,1995,J.Immunol.,155:1151−1164
【非特許文献3】Shevach,2000,Annu.Rev.Immunol.,18:423−449
【非特許文献4】Hall,et al.,1998,J.Immunol.,161:5147−5156
【非特許文献5】Wood,et al.,2003,Nat.Rev.Immunol.,3:199−210
【非特許文献6】Peng L,et al.,2002,J.Immunol.,169:4811−4821
【非特許文献7】Gallimore,et al.,2002,Immunology,107:5−9
【非特許文献8】Belkaid Y,et al.,2002,Nature,420:502−507
【非特許文献9】Apostolou,et al.,2002,Nat.Immunol.,3:756−763
【非特許文献10】Shevach et al.,2002,Nat.Rev.Immunol.,2:389−400
【非特許文献11】Ramsdell,et al.,2003,Curr.Opin.Immunol.,15:718−24
【非特許文献12】Thornton,et al.,1998,J.Exp.Med.,188:287−296
【非特許文献13】Shevach,et al.,2001,Immunol.Rev.,182:58−67
【非特許文献14】Asseman,et al.,1999,J.Exp.Med.,190:995−1004
【非特許文献15】Taylor et al.,2002,Blood,99:3493−3499
【非特許文献16】Hoffmann,et al.,2002,J.Exp.Med.,196:389−399
【非特許文献17】Cohen,et al.,2002,J.Exp.Med.,196:401−406
【非特許文献18】Edinger,et al.,2003,Nat.Med.,9:1144−1150
【非特許文献19】Jones,et al.,2003,Biol.Blood Marrow Transplant,9:243−56
【非特許文献20】Trenado,et al.,2003,J.Clin.Invest.,112:1688−96
【非特許文献21】Tang,et al.,2004,J.Exp.Med.,199:1455−1465
【非特許文献22】Baecher−Allan,et al.,2004,Semin.Immunol.,16:89−98
【非特許文献23】Baecher−Allan,et al.,2001,JImmunol.,167:1245−1253
【非特許文献24】Godfrey,et al.,2004,Blood,104:453−461
【非特許文献25】Hoffmann,et al.,2004,Blood.104:895−903
【非特許文献26】Levings,et al.,2002,J.Exp.Med.,196:1335−1346
【非特許文献27】Paganelli,et al.,1994,Cell Immunol.,155:486−489
【非特許文献28】Ng,et al.,2001,Blood 98:2736−2744
【非特許文献29】Wing,et al.,2002,Immunology 106:190−199
【非特許文献30】Wing K,et al.,2003,Eur.J.Immunol.,33:579−587
【発明の概要】
【0012】
[発明の要約]
本発明には、表現型的にCD45RAの血液細胞の集団から調節性T細胞を単離する方法が包含され、ここで、該Treg細胞はT細胞増殖を抑制する。本発明の方法は、ヒト臍帯血サンプルから単核細胞の集団を単離すること;単核細胞−抗体複合体の形成に適する条件下でCD25に特異的に結合する抗体と単核細胞の集団を接触させること;および単核細胞の該集団から単核細胞−抗体複合体を実質的に分離し、それにより表現型的にCD45RAの血液細胞の集団から調節性T細胞を単離することを含んでなる。本発明の1つの態様において、表現型的にCD45RAの血液細胞の集団は臍帯血、好ましくはヒト臍帯血サンプルからである。
【0013】
本発明には、さらに、CD3に対する抗体およびCD28に対する抗体を含んでなる培地において調節性T細胞を培養することを含んでなる、単離された調節性T細胞を増やす方法が包含される。培地はIL−2をさらに含んでなることができる。
【0014】
本発明は、さらに、T細胞の増殖を抑制する方法を含んでなる。該方法は、本明細書に記載の方法により単離される調節性T細胞とT細胞を接触させることを含んでなる。
【0015】
本発明には、また、ヒト臍帯血サンプルから調節性T細胞を単離するためのキットも包含される。該キットは、物理的支持体に結合したCD25に特異的に結合する抗体、アプリケーター、およびその使用のための説明用資料を含んでなる。
【0016】
本発明には、また、ヒト臍帯血サンプルからTreg細胞を増やすためのキットも包含される。該キットは、物理的支持体に結合したCD3に特異的に結合する抗体、物理的支持体に結合したCD28に特異的に結合する抗体、アプリケーター、およびその使用のための説明用資料を含んでなる。
【0017】
本発明は、さらに、本発明の方法により単離される調節性T細胞を含んでなる。
【0018】
前述の要約、ならびに以下の発明の詳細な記述は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解される。本発明を説明する目的のために、本発明のある種の態様が図面において表される。しかしながら、本発明は、図面において表される態様の正確な配置および手段に限定されない。全てのエラーバーは、平均より上および下の1つの標準偏差を表す。
【0019】
[発明のある種の態様の詳細な記述]
本発明には、CD45RA表現型を有するT調節性細胞(Treg)の増大された集団の単離および増殖のための方法およびキットが包含される。「増大された」という用語は、本明細書において用いる場合、増大されない対象より少なくとも20%多い、より好ましくは30%、好ましくは40%、さらにより好ましくは50%、さらにより好ましくは約60%、さらにより好ましくは70%、さらにより好ましくは約80%、さらにより好ましくは90%、そしてさらにより好ましくは100%多いことをさす。例として、調節性細胞の増大された集団は、増大されない集団より少なくとも20%多い調節性細胞を有する。そのような細胞の好ましい供給源は、ヒト臍帯血であることが見出された。成人ヒト血液のような他の供給源から多数の活性のある強力なサプレッサーTreg細胞を製造する方法は、低〜中程度レベルでCD25を発現するメモリーT細胞(CD25dim細胞)、およびTreg細胞精製を妨げる通常の活性化T細胞(CD25)の存在により複雑にされていた。「Treg」という用語は、CD4(CD4)およびCD25(CD25)の両方を発現する調節性T細胞をさすために本明細書において使用する。しかしながら、本明細書に開示されるデータにより示されるように、T細胞のこれらのタイプは両方とも(メモリーおよび活性化)、一般に臍帯血において欠如しているかもしくはより低い数で存在する。これは、本明細書に開示されるように、臍帯血は保護された環境において発生し、そして免疫学的にナイーブであるからである。従って、本発明は、臍帯血におけるCD25reg細胞がヒト成人末梢血のような他の供給源由来のものより容易に精製されることを示す。
【0020】
「CD25」であるかもしくは「CD25を発現する」細胞は、CD25であるかもしくは検出可能なレベルのCD25を発現しない細胞と本明細書において対比される。「CD25dim」である細胞は、本明細書において用いる場合、CD25細胞もしくは「CD25bright」細胞より低い検出可能なレベルのCD25発現を有する。さらに、Treg細胞集団を増殖させるために支持細胞は必要ないので、これらの細胞を培養することおよび増やすことは容易になり、そして簡易化される。
【0021】
reg細胞は、マウスにおいて自己および同種移植片耐性にとって重要である。ヒトTregの研究は、末梢血に存在する低い数および困難な精製によって妨げられている。本明細書に開示されるデータは、臍帯血が成人血液と比較してTreg単離および細胞系生成の優れた供給源であることを示す。臍帯血CD4CD25細胞を精製し、そして同種MLRの>95%抑制(29/30ドナー)を有する、強力なサプレッサー活性を一貫して示す細胞系を生成した。培養したTreg細胞は、ケモカイン生産の抑制を有して、MLRにおけるサイトカイン蓄積を阻止した。これらの細胞系はCD25、CD62L、CCR7、CD27および細胞内CTLA4を均一に発現した。さらに、FoxP3タンパク質は特異的に発現されたが、mRNAはそうでなかった。抗CD3/CD28ビーズでの再刺激の際に、培養したTregは最小量のサイトカイン(IL−2、IFN−ガンマおよびIL−10)を生産し、そしてTGF−ベータ潜伏関連タンパク質を優先的に発現した。しかしながら、サイトカイン生産は、PMA/イオノマイシンでの再刺激により通常レベルまで回復された。臍帯血由来の培養したサプレッサー細胞機能は、IL−10およびTGF−ベータから顕著に独立していた。本明細書に開示されるデータは、培養活性化後に強力なサプレッサー機能の能力がある、かなりの数のTreg前駆細胞を臍帯血が含有することを示す。バンク貯蔵臍帯血検体は、免疫治療用のTregの容易に入手
可能な供給源として役立ち得る。
【0022】
本発明にはさらに、他の供給源由来のものより強力なサプレッサー活性およびサイトカイン抑制能力を有するヒト臍帯血サンプルから単離されたTreg細胞が包含される。先行技術と大いに異なり、本明細書に開示されるデータは、ヒト臍帯血から単離されたTreg細胞がT細胞増殖を抑制するそしてT細胞活性化依存性サイトカインを抑制する強力な能力を有することを示す。さらに、本発明のデータはさらに、臍帯血CD4CD25細胞が単離および培養後に強力なサプレッサー細胞を形成できることを示す。本発明には、そのようなサプレッサー細胞を単離するために容易な直接抗体に基づく精製系を使用してTreg細胞を精製する方法が包含される。抗CD3/CD28ビーズでの活性化および増殖ならびにIL−2における培養後に、臍帯血由来のCD4CD25細胞は強力なサプレッサー機能を獲得し、それは長期間にわたって維持された。従って、本発明にはさらに、T細胞増殖を抑制する方法およびサイトカイン生産を抑制する方法が包含される。
【0023】
これまで、サプレッサー細胞表現型および機能の全てのアッセイは、臍帯血由来の細胞、および成人由来の細胞の最も純粋なものが同様なプロフィールを有することを示す。フローサイトメトリー分析、サイトカイン生産能力および機能プロファイリングは全て、本質的に同じであった。従って、本明細書に開示されるデータは、両方のタイプの系が、純粋である場合に、同等なサプレッサー機序および効能を発現することを示し、そして臍帯血の利点は主として精製および培養の容易さに関する。
【0024】
多数のサプレッサー細胞を利用できることは、これらの特殊な細胞の生化学的および分子的特性化を可能にしている。本明細書に開示される方法を用いて、3億個より多い均一なそして強力なサプレッサー細胞が、セルソーターなしに1つの平均サイズの研究グレード臍帯血単位(〜3億個の細胞)から生成されることができる。これらの結果は、1%のCD4CD25細胞回収および培養における100倍の増殖を示す。細胞のこの数は、TCRシグナル伝達改変、FoxP3調節および機能、ならびにサプレッサーエフェクター機序のさらなる特性化を可能にする。さらに、これらの細胞の重要な有用性は、免疫治療の新規な形態の臨床試験を可能にすることである。サプレッサー細胞系は、同種移植片耐性誘導を増大するかもしくは自己免疫疾患を抑制的調節するために有用であることができる。
【0025】
本発明は、臍帯血サンプルからTreg細胞を単離する方法を含んでなる。「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、該冠詞の文法的対象の1つをもしくは1つより多くを(すなわち、少なくとも1つを)さすために本明細書において使用する。例として、「Treg細胞」は1個のTreg細胞もしくは1個より多いTreg細胞を意味する。本発明の方法を用いて単離されるTreg細胞は、本明細書に開示されるデータにより示されるように、T細胞増殖を抑制する。本発明の方法は、臍帯血サンプルから臍帯血単核細胞の集団を単離することを含んでなる。「集団」は、単核細胞であることもしくはCD25RAを発現することのような、実質的に同様な表現型特性を有する一群の細胞をさすために本明細書において使用する。臍帯血サンプルのような生物学的サンプルから単核細胞を単離する方法は当該技術分野において周知であり、そして血漿および赤血球のような血液成分が単核細胞から分離されるように密度勾配遠心分離技術を用いることが包含されるがこれに限定されるものではない。血液サンプルから単核細胞を単離する方法には、フィコール−ハイパック(Ficoll−Hypaque)技術が包含される。
【0026】
そのように単離される臍帯血単核細胞をCD34、CD8、CD14、CD19およびCD56が包含されるがこれらに限定されるものではない、ある種の抗原を発現する細胞について枯渇させることができる。これらの細胞の枯渇は、単離された抗体、腹水のよう
な、抗体を含んでなる生物学的サンプル、物理的支持体に結合した抗体および細胞に結合した抗体を用いて成し遂げることができる。「抗体」という用語は、本明細書において用いる場合、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子をさす。抗体は、自然源にもしくは組み換え源に由来する完全な免疫グロブリンであることができ、そして完全な免疫グロブリンの免疫反応性部分であることができる。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子のテトラマーである。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)、ならびに一本鎖抗体およびヒト化抗体を包含する様々な形態で存在することができる(Harlow et al.,1999,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory
Press,NY;Harlow et al.,1989,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;Bird et al.,1988,Science 242:423−426)。「特異的に結合する」という用語は、本明細書において用いる場合、特定の分子を認識しそして結合するが、サンプルにおける他の分子を実質的に認識しないかもしくは結合しない化合物、例えばタンパク質、核酸、抗体などを意味する。
【0027】
本発明の抗体は、磁気ビーズ、ダイナルビーズ(dynal bead)、マイクロビーズ、カラム、吸着カラムおよび吸着膜のような物理的支持体に結合することができる。物理的支持体に抗体を結合することは、当該技術分野において周知である。同文献。あるいはまた、磁気ビーズのような物理的支持体に結合した抗体は、Milteny Biotec(Auburn,CA)のような様々な供給業者から購入することができる。
【0028】
様々な抗体が本発明において有用である。当業者により理解されるように、CD25、CD4、CD34、CD8、CD14、CD19およびCD56のような、興味のあるCD抗原を認識しそして結合することができる任意の抗体は、本発明において有用である。そのような抗体を製造しそして使用する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、本発明において有用なポリクローナル抗体は、当該技術分野において周知である標準的な免疫学的技術に従ってウサギを免疫感作することにより生成される(例えば、Harlow et al.,1988、上記を参照)。そのような技術には、マルトース結合タンパク質もしくはグルタチオン(GSH)タグポリペプチド部分のような別のタンパク質の部分、および/またはマーカータンパク質が免疫原性にされるような部分(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、KLHと結合したマーカータンパク質)およびそれぞれのマーカータンパク質アミノ酸残基を含んでなる部分を含んでなるキメラタンパク質で動物を免疫感作することが包含される。キメラタンパク質は、pMAL−2もしくはpCMXのようなしかしこれらに限定されるものではない、この目的のために適当なプラスミドベクターにマーカータンパク質をコードする適切な核酸をクローニングすることにより製造される。
【0029】
しかしながら、本発明はこれらの抗体を含む方法および組成物にもしくはタンパク質抗原のこれらの部分にのみ限定されると解釈されるべきではない。むしろ、本発明はTreg細胞表面マーカータンパク質に対する、その用語が本明細書において他の所で定義されるように、他の抗体、もしくはその一部を含むと解釈されるべきである。さらに、本発明にはとりわけTregタンパク質に結合する抗体が包含されると解釈されるべきであり、そしてそれらはウェスタンブロット上に、酵素結合免疫測定法において溶液中に、FACSアッセイにおいて、磁気活性化セルソーティング(MACS)アッセイにおいて、そして免疫蛍光顕微鏡検査において存在するタンパク質に結合することができる。
【0030】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づいて、抗体がマーカータンパク質の任意の部分と特異的に結合することができ、そしてそれに特異的な抗体を生成するために全長タンパク質を使用できることを理解する。しかしながら、本発明は免疫原として全長タンパク質を使用することに限定されない。むしろ、本発明には、特定のTreg細胞表面タンパク質と特異的に結合する抗体を製造するためにタンパク質の免疫原性部分を使用することが包含される。すなわち、本発明には、細胞表面マーカータンパク質の免疫原性部分もしくは抗原決定基を使用して動物を免疫感作することが包含される。
【0031】
抗体は、ウサギ、マウスもしくはヤギのようなしかしこれらに限定されるものではない動物を本発明のタンパク質もしくはその一部で免疫感作することにより、Treg細胞表面抗原の少なくとも一部を含んでなるタンパク質、もしくは適切なアミノ酸残基を含んでなる部分と共有結合した、例えばマルトース結合タンパク質タグポリペプチド部分を含んでなるタグポリペプチド部分を含む融合タンパク質を用いて動物を免疫感作することにより製造することができる。当業者は、本明細書に提供される開示に基づいて、これらのタンパク質のさらに小さいフラグメントもまたTreg細胞表面タンパク質に特異的に結合する抗体を製造するために使用できることを理解する。
【0032】
本発明には、ポリクローナル、モノクローナル、合成抗体などが包含される。本発明はさらに、抗体のFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、FvフラグメントおよびscFvフラグメントのような、抗体の生物学的活性フラグメントの使用を含んでなる。本発明の抗体の重要な特徴は、抗体がTreg細胞表面タンパク質と特異的に結合することであることを当業者は本明細書に提供される開示に基づいて理解する。すなわち、本発明の抗体は、ウェスタンブロット上で、細胞の免疫染色においてTreg細胞もしくはそのフラグメント(例えば、その免疫原性部分もしくは抗原決定基)を認識するか、または当該技術分野において周知である標準方法を用いて該タンパク質を免疫沈降させる。
【0033】
これらの抗体は、本明細書において他の所に詳細に記述されるように、そしてさらに当該技術分野において周知である方法を用いることによりそれらのコグネイト抗原を免疫沈降させそして/もしくは免疫親和性精製するために使用できることを当業者は本明細書に提供される開示に基ついて理解する。さらに、抗体は、臍帯血サンプル由来の臍帯血単核細胞の集団においてTregを単離するために使用することができる。従って、CD25のようなTreg細胞表面マーカーに対する抗体を用いることにより、Tregを同定し、濃縮し、もしくは単離することができる。従って、Treg細胞表面上に発現される天然のもしくは遺伝子操作されているいずれかの任意のマーカーは、本発明において有用であることを当業者は本明細書に提供される開示に基づいて理解する。
【0034】
本発明には、単一のTreg抗原を認識する単一の抗体の使用が包含されるが、本発明は単一抗体の使用に限定されないことを当業者は本明細書に提供される開示に基づいて理解する。その代わりに、本発明には少なくとも1つの抗体の使用が包含され、ここで、該抗体は同じもしくは異なるTreg抗原に対してであることができる。
【0035】
ポリクローナル抗体の生成は、例えば、Harlow et al.(1988,上記)に記載のもののような標準的な抗体製造方法を用いて所望の動物に抗原を接種することおよびそれから抗原に特異的に結合する抗体を単離することにより成し遂げられる。
【0036】
タンパク質もしくはペプチドの全長もしくはペプチドフラグメントに対するモノクローナル抗体は、例えば、Harlow et al.(1988,同文献)にそしてTuszynski et al.(1988,Blood,72:109−115)に記載のもののような、任意の周知のモノクローナル抗体製造方法を用いて製造することができる。多量の所望のペプチドはまた、化学合成技術を用いて合成することもできる。あるいは
また、所望のペプチドをコードするDNAをクローン化し、そして大量のペプチドの生成に適当な細胞において適切なプロモーター配列から発現させることができる。ペプチドに対するモノクローナル抗体は、本明細書に参考文献を載せるような標準的な方法を用いてペプチドで免疫感作したマウスから生成される。
【0037】
本明細書に記載の方法を用いて得られるモノクローナル抗体をコードする核酸は、当該技術分野において利用可能でありそして例えばWright et al.(1992,Critical Rev.Immunol.12:125−168)およびそこに引用される参考文献に記述されている技術を用いてクローン化し、そしてシークエンスすることができる。さらに、本発明の抗体は、例えばWright et al.同文献およびそこに引用される参考文献に、そしてGu et al.(1997,Thrombosis and Hematocyst,77:755−759)に記述されている技術、および当該技術分野において周知であるかもしくは開発される抗体をヒト化する他の方法を用いて「ヒト化する」ことができる。
【0038】
いったん発現されると、全抗体、それ由来のダイマー、個々の軽鎖および重鎖、もしくは抗体の他の形態は、当該技術分野において既知である標準的な方法に従って精製することができる。
【0039】
本発明の1つの態様において、ファージ抗体ライブラリーを作製することができる。ファージ抗体ライブラリーを作製するために、ファージ表面上に発現される所望のタンパク質(例えば所望の抗体)を発現する細胞(例えばハイブリドーマ)から単離されるmRNAからcDNAライブラリーを最初に得る。逆転写酵素を用いてmRNAのcDNAコピーを生成する。免疫グロブリンフラグメントを特定するcDNAはPCRによって得られ、そして得られるDNAを適当なバクテリオファージベクターにクローン化して免疫グロブリン遺伝子を特定するDNAを含んでなるバクテリオファージDNAライブラリーを生成せしめる。異種DNAを含んでなるバクテリオファージライブラリーを製造する方法は当該技術分野において周知であり、そして例えばSambrook et al.,上記に記述されている。
【0040】
所望の抗体をコードするバクテリオファージは、例えばTreg細胞表面抗原のようなその対応する結合タンパク質、例えばそれに対して抗体が向けられる抗原への結合に利用可能であるようにタンパク質がその表面上に提示されるように設計することができる。従って、特定の抗体を発現するバクテリオファージが対応する抗原を発現する細胞の存在下でインキュベーションされると、バクテリオファージは細胞に結合する。抗体を発現しないバクテリオファージは、細胞に結合しない。
【0041】
本発明において使用する抗体は、臍帯血単核細胞−抗体複合体の形成に適当な条件下でヒト臍帯血サンプルから単離された臍帯血単核細胞の集団と接触して置かれる。すなわち、本発明の方法は、抗体がTreg細胞上のCD25を包含する抗原に結合するように臍帯血単核細胞の集団においてTreg細胞に特異的に結合する抗体と臍帯血単核細胞の集団を接触させることを含んでなる。「適当な条件」は、そのコグネイト抗原へのもしくはTreg細胞のような細胞への抗体の結合を促進する温度、pH、バッファー、時間および他の因子をさすために本明細書において使用する。抗原へのもしくは細胞への、または細胞上の抗原への抗体結合に適当である条件は当該技術分野において周知であり、そして通常は約2分から約5分まで約30分まで約1時間まで約24時間までの期間にわたって約4℃から約20℃まで約37℃までである。様々なバッファーが当該技術分野において周知であり、そして例えばトリス、リン酸緩衝食塩水などが包含される。臍帯血単核細胞−抗体複合体の形成に適当な条件の様々な例は、例えば、Harlow et al.,1988,上記に記述されている。
【0042】
本発明はさらに、臍帯血単核細胞の集団から臍帯血単核細胞−抗体複合体を実質的に分離する工程を含んでなる。すなわち、本明細書に開示されるデータにより示されるように、臍帯血サンプルからT細胞増殖を抑制するTreg細胞を単離する本発明の方法は、サンプルにおける他の臍帯血単核細胞からそのようなTreg細胞を実質的に分離することを含んでなる。「から実質的に分離される」もしくは「実質的に分離する」は、該用語を本明細書において用いる場合、第二の物質の集団の近くから取り除かれている第一の物質の集団の特性をさし、ここで、第一の物質の集団は第二の物質を必ずしも欠いておらず、そして第二の物質の集団は第一の物質を必ずしも欠いていない。しかしながら、第二の物質の集団「から実質的に分離される」第一の物質の集団は、第一および第二の物質の非分離混合物と比較した場合に第二の物質の測定可能により低い含有量を有する。
【0043】
臍帯血単核細胞の細胞混合物から抗体に結合したTreg細胞を取り除くことにより抗体に結合する細胞表面マーカーを有さない細胞から抗CD25抗体のような抗体に結合したTregを分離するために様々な技術を用いることができる。あるいはまた、抗体により結合されないTregを細胞混合物から取り除くことにより抗体に結合する細胞表面マーカーを有さない細胞から抗体に結合する細胞表面マーカーを含有するTregを分離するために様々な技術を用いることができる。
【0044】
1つの態様において、抗体と結合していないT細胞および他の臍帯血単核細胞から抗体に結合したTregを分離するためにCD25細胞表面マーカーを用いる。本発明の1つの態様において、粗分離を可能にするために抗体を固体支持体に取り付けることができる。用いる分離技術は、集められる画分の生存能力の保持を最大にすべきである。「比較的粗い」分離、すなわち、マーカーを有する存在する全細胞の10%まで、通常は約5%以下、好ましくは約1%以下が、保持される細胞集団で残り得る分離には、異なる効能の様々な技術を用いることができる。用いる特定の技術は、分離の効率、方法論の細胞毒性、実行の容易さおよび速度、ならびに高機能装置および/もしくは技術的熟練の必要性により決まり、これらの全ては当業者の能力の範囲内である。
【0045】
分離の方法には、抗体を被覆した磁気ビーズもしくはダイナルビーズを用いる磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体に連結するかもしくはモノクローナル抗体と併せて使用する細胞毒性薬、例えば補体および細胞毒素、ならびに固体マトリックス、例えばプレートに取り付けた抗体での「パニング」、または他の通常の技術を包含することができる。厳密な分離を与える技術には様々な程度の高度化、例えば複数のカラーチャンネル、小角および鈍角光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネルなどを有することができる蛍光活性化セルソーター、ならびに磁気活性化セルソーターが包含される。
【0046】
都合よく、特定の細胞タイプの分離の容易さを与えるために、直接分離を可能にする磁気ビーズ、支持体に結合したアビジンもしくはストレプトアビジンで取り除くことができるビオチン、蛍光活性化セルソーターで使用することができるFITCのような蛍光色素などのようなマーカーと抗体を結合することができる。残留細胞の生存能力にとって過度に有害でない任意の技術を用いることができる。他の技術には、密度遠心分離用の高密度粒子、吸着カラム、吸着膜などが包含されるがこれらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の1つの態様において、臍帯血由来の細胞表面マーカーに特異的な抗体を磁気ビーズに結合する。抗原を提示するCD25のようなTreg細胞表面抗原への抗体コンジュゲートの結合に適当な条件下で、臍帯血由来の単核細胞の集団を磁気ビーズ−抗体コンジュゲートと接触させる。4℃で20分間のインキュベーションのようなしかしこれに限定されるものではない、結合に適当な条件下でのインキュベーション後に、磁気に基づく
分離装置に全サンプルを通すことにより抗原について陽性のTregが選択される。装置からの自由溶液の排出もしくは溶出の際に、磁気的に保持されるマーカーを含有する細胞のみが残る。次に、抗原を含有するTreg細胞を装置から溶出し、Treg細胞の濃縮された、単離されたもしくは精製された集団がもたらされる。本発明の1つの態様において、TregマーカーはCD25である。
【0048】
一般に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは約80%、さらにより好ましくは約90%もしくは90%より大きい、CD25のようなTreg抗原を含んでなることを欠く細胞の実質的な単離後に、蛍光活性化セルソーターもしくは磁気活性化セルソーティング(MACS)のような高い特異性を有する他の方法論により細胞を分離することができる。多色分析は、特に都合がよいFACSで用いることができる。
【0049】
ヒト臍帯血サンプルからTreg細胞を単離する本発明の方法のストリンジェンシーを上げるために、臍帯血単核細胞の集団から実質的に分離されているTreg細胞を臍帯血単核細胞−抗体複合体の形成に適当な条件下でCD25に特異的に結合する抗体と再び接触させ、続いて臍帯血単核細胞の集団から臍帯血単核細胞−抗体複合体を実質的に分離することができる。この工程は、臍帯血サンプルからヒトTreg細胞を単離するために1回もしくはそれ以上行うことができる。
【0050】
本発明はさらに、本明細書に開示される方法を用いて単離されるTreg細胞を増やすか、増殖させるかもしくはそうでなければ培養する方法を含んでなる。本明細書に開示されるデータにより示されるように、本発明の方法により単離されるTreg細胞を増やすことは、本明細書に開示される方法を用いて約100倍増加することができる。単離後に、Treg細胞をある時間にわたってもしくは別の培養装置に細胞を移す前に細胞が飽和密度に達するまで培養装置において細胞培地中でインキュベーションする。培養装置は、インビトロで細胞を培養することにおいて一般に使用される任意の培養装置のものであることができる。好ましくは、別の培養装置に細胞を移す前に飽和密度のレベルは70%より大きい。より好ましくは、飽和密度のレベルは90%より大きい。ある時間は、インビトロでの細胞の培養に適当な任意の時間であることができる。Treg細胞培地は、任意の時間でTreg細胞の培養中に置換することができる。好ましくは、Treg細胞培地は3〜4日ごとに置換される。次に、培養装置からTreg細胞を採取し、その際にTreg細胞はすぐに使用するかもしくは冷凍保存して後での使用のために保存することができる。Treg細胞はトリプシン処理、EDTA処理、もしくは培養装置から細胞を採取するために用いられる任意の他の方法により採取することができる。
【0051】
培養中の細胞を表すために様々な用語が使用される。細胞培養物は、生体から採取されそして制御条件下で培養された細胞を一般にさす。初代細胞培養物は、生物から直接採取されそして最初の継代培養の前の細胞、組織もしくは器官の培養物である。細胞は、それらが細胞増殖および/もしくは分裂を促進する条件下で増殖培地に置かれると培養において増殖され、細胞のより大きい集団をもたらす。細胞が培養において増殖される場合、細胞増殖の速度は、別名倍加時間として知られている、細胞が数を倍にするために必要な時間の量により典型的に測定される。
【0052】
継代培養の各回は、〜代継代と呼ばれる。細胞が継代培養される場合、それらは継代されていると呼ばれる。細胞の特定の集団、もしくは細胞系は、それが継代されている回数によって呼ばれるかもしくはそれを特徴とすることがある。例えば、10回継代されている培養細胞集団は、P10培養物と呼ぶことができる。初代培養物、すなわち、組織からの細胞の単離後の最初の培養物はP0と指定される。最初の継代培養後に、細胞は二次培養物(P1もしくは1代継代)として表される。第二の継代培養後に、細胞は三次培養物
(P2もしくは2代継代)になるなど。継代の期間中に多数の集団倍加がある可能性があり;従って、培養物の集団倍加の数は継代数より大きいことが当業者により理解される。継代間の期間中の細胞の増殖(すなわち、集団倍加の数)は、播種密度、基質、培地および継代間の時間が包含されるがこれらに限定されるものではない多数の因子により決まる。
【0053】
本発明のTreg細胞を増やすために用いる培地は、CD3に対する抗体およびCD28に対する抗体およびサイトカイン、好ましくはIL−2(しかしこれに限定されるものではない)を含んでなる。これは、本明細書に開示されるデータにより示されるように、本発明の方法により単離される細胞は、CD3に結合する抗体およびCD28に結合する抗体およびIL−2と細胞を培養することにより約100倍増やすことができるからである。さらに、本明細書に同様に開示されるように、本発明の方法を用いて増やした細胞は均一であり、そして強力なサプレッサー細胞である。さらに、本発明のTreg細胞は免疫学的にナイーブであるので、そのような細胞は、糖尿病、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、GVHD、増強(enhancing)同種移植片耐性誘導、移植拒絶などのような自己免疫疾患に共通するもののような免疫反応を抑制するために動物、好ましくは哺乳類、さらにより好ましくはヒトに投与することができる。さらに、本発明の細胞は、減少したもしくはそうでなければ抑制された免疫応答、特に細胞性免疫応答が疾患を処置するかもしくは軽減するために望ましい任意の症状の処置に用いることができる。
【0054】
本発明の方法において使用するCD3抗体およびCD28抗体は、当該技術分野において既知である抗体、本明細書において他の所に開示されるもの、もしくはまだ発見されていないもののいずれかであることができる。さらに、そして好ましくは、本発明の抗体を磁気ビーズもしくはダイナルビーズのようなビーズに結合するかもしくはそうでなければ取り付ける。そのようなビーズは当該技術分野において既知であり、そして本明細書において他の所に記述されている。
【0055】
本発明の培地はさらにサイトカイン、好ましくはIL−2を含んでなる。これは、本明細書に開示されるデータにより示されるように、本発明の方法において使用する培地へのIL−2の添加は、本発明のTreg細胞の約100倍の増殖をもたらすからである。IL−2および他のサイトカインは当該技術分野において周知であり、そして様々な供給業者から市販されている。
【0056】
本発明のTregはさらにある種の抗原性マーカーを含んでなり、それらのあるものはTreg細胞が臍帯血サンプルから単離される時に存在し、それらのあるものはTreg細胞が本発明の方法に従って増やされ、培養され、もしくはそうでなければ増殖される時に存在する。そのような抗原性マーカーは、本発明のTreg細胞の同定において有用であり、そして本発明の方法に従って単離されそして増やされたTreg細胞が本発明のTreg細胞の特性および生物学的活性を有するかどうかを当業者が決定することを可能にする。そのような生物学的活性には、同種免疫応答の抑制、ケモカイン生産のより少ない抑制を伴う免疫応答におけるサイトカイン蓄積の抑制、IL−2、IL−10およびガンマインターフェロンの生産、TGF−ベータ潜伏関連タンパク質(LAP)の発現、ならびにIL−10およびTGF−ベータから独立したサプレッサー活性が包含されるがこれらに限定されるものではない。本発明のTreg細胞上のマーカーには、CD25、CD4、CTLA4、CD27、CD26LおよびFoxP3が包含されるがこれらに限定されるものではない。
【0057】
本発明はさらに、T細胞の増殖を抑制する方法を含んでなる。そのような抑制は、インビトロもしくはインビボで、好ましくは動物において、より好ましくは哺乳類において、さらにより好ましくはヒトにおいて起こることができる。これは、本明細書に開示される
データにより示されるように、本発明の方法に従って単離されそして増やされたTreg細胞の存在下で混合リンパ球反応(MLR)におけるHLA不適合T細胞が約95%より大きい規模で増殖するのを抑制されたからである。さらに、本明細書に開示されるデータにより示されるように、本発明の方法に従って単離されそして/もしくは増やされたTreg細胞は、約1:16〜約1:32(Treg:T細胞)の比率でT細胞増殖の強力なサプレッサーである。さらに、本発明のTreg細胞は、樹状細胞のような抗原提示細胞が成熟しそして活性化される場合に免疫応答を抑制することにおいて有効である。従って、本発明の細胞は、能動免疫応答を抑制するためにもしくは免疫応答を防ぐために用いることができる。
【0058】
本発明の方法は、T細胞の増殖が抑制されるように本発明の方法に従って単離されそして/もしくは増殖されたTreg細胞とT細胞を接触させることを含んでなる。Treg細胞は、TregがT細胞、樹状細胞、形質細胞などのような免疫細胞に接触するかもしくはその近くにあるようにその技術分野において周知である技術を用いて投与することができる。
【0059】
本発明の方法に従って単離されそして/もしくは培養されたTregを用いてT細胞の増殖を抑制する方法には、有効成分として本発明のTregを含んでなる製薬学的組成物の製造および使用が包含される。そのような製薬学的組成物は、被験体への投与に適当な形態において少なくとも1つの有効成分(例えば、有効用量のTreg)の組み合わせとして、有効成分だけからなることができ、または製薬学的組成物は有効成分および1つもしくはそれ以上の製薬学的に許容しうる担体、1つもしくはそれ以上の追加(活性および/もしくは不活性)成分、またはこれらのいくつかの組み合わせを含んでなることができる。
【0060】
本明細書において用いる場合、「製薬学的に許容しうる担体」という用語は、有効成分をそれと組み合わせることができ、そして組み合わせの後に、被験体に有効成分を投与するために使用することができる化学組成物を意味する。
【0061】
本明細書に記載する製薬学的組成物の製剤は、薬理学の当該技術分野において既知であるかもしくは今後開発される任意の方法により製造することができる。一般に、そのような製造方法には、有効成分を担体または1つもしくはそれ以上の副成分と会合させる工程、そして次に必要もしくは所望に応じて、生成物を所望の単回もしくは複数回投与単位に成形するかもしくは包装する工程が包含される。
【0062】
本明細書に提供される製薬学的組成物の記述は、ヒトへの倫理的投与に適当である製薬学的組成物に主に関するが、そのような組成物は一般に全ての種類の動物への投与に適当であることが当業者により理解される。組成物を様々な動物への投与に適当にするためのヒトへの投与に適当な製薬学的組成物の改変は十分に理解されており、そして普通に熟練した獣医薬理学者は、たとえあったとしても、単に通常の実験でそのような改変を考案しそして実施することができる。本発明の製薬学的組成物の投与が意図される被験体には、ヒトおよび他の霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌのような商業的に関連する哺乳類を包含する哺乳類、ニワトリ、カモ、ガチョウおよびシチメンチョウのような商業的に関連する鳥類を包含する鳥類、養殖魚および観賞魚を包含する魚類、ならびに養殖甲殻類のような甲殻類が包含されるがこれらに限定されるものではない。
【0063】
本発明の方法において有用である製薬学的組成物は、経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻腔内、病巣内、口腔、眼球、静脈内、器官内もしくは別の投与経路に適当な製剤において製造し、包装し、もしくは販売することができる。他の意図される製剤には、突き
出た(projected)ナノ粒子、リポソーム製剤、有効成分を含有する再閉赤血球および免疫学的に基づく製剤が包含される。
【0064】
本発明の製薬学的組成物は、バルクで、単一単位用量として、もしくは複数の単一単位用量として製造し、包装し、もしくは販売することができる。本明細書において用いる場合、「単位用量」は、有効成分の既定量を含んでなる製薬学的組成物の別個の量である。有効成分の量は、一般に、被験体に投与する有効成分の投薬量または例えばそのような投薬量の1/2もしくは1/3のようなそのような投薬量の都合のよい割合に等しい。
【0065】
本発明の製薬学的組成物における有効成分、製薬学的に許容しうる担体および任意の追加成分の相対量は、処置する被験体の同一性、サイズおよび症状により、そしてさらに組成物が投与される経路により異なる。例として、組成物は0.1%〜100%(w/w)の間の有効成分を含んでなることができる。
【0066】
有効成分に加えて、本発明の製薬学的組成物はさらに、1つもしくはそれ以上の追加の製薬学的に活性の薬剤を含んでなることができる。特に意図される追加の薬剤には、シアン化物およびシアン酸塩スカベンジャーのような制吐剤およびスカベンジャーならびにサイクロスポリン、ステロイド、前炎症性サイトカインに対する抗体、IL−10のような抑制性サイトカインなどのような他の免疫抑制化合物が包含される。
【0067】
本発明の製薬学的組成物の制御もしくは持続放出製剤は、通常の技術を用いて製造することができる。
【0068】
本明細書において用いる場合、製薬学的組成物の「非経口投与」には、被験体の組織の物理的突破を特徴とする投与および組織における突破口を通した製薬学的組成物の投与の任意の経路が包含される。従って、非経口投与には、組成物の注入による、外科的切開を通した組成物の適用による、組織を貫通する非外科的創傷を通した組成物の適用によるなどの製薬学的組成物の投与が包含されるがこれらに限定されるものではない。特に、非経口投与には皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内注入および腎臓透析注入技術が包含されるがこれらに限定されるものではないことが意図される。
【0069】
非経口投与に適当な製薬学的組成物の製剤は、滅菌水もしくは滅菌等張食塩水のような製薬学的に許容しうる担体と組み合わせた有効成分を含んでなる。そのような製剤は、ボーラス投与にもしくは継続投与に適当な形態において製造し、包装し、もしくは販売することができる。注入可能な製剤は、アンプル剤におけるかもしくは防腐剤を含有する複数回投与容器におけるような単位投与形態物において製造し、包装し、もしくは販売することができる。非経口投与用の製剤には、懸濁剤、液剤、油性もしくは水性賦形剤における乳剤、パスタ剤、および埋め込み可能な持続放出もしくは生物分解性製剤が包含されるがこれらに限定されるものではない。そのような製剤はさらに、沈殿防止剤、安定剤もしくは分散剤が包含されるがこれらに限定されるものではない1つもしくはそれ以上の追加成分を含んでなることができる。
【0070】
製薬学的組成物は、滅菌した注入可能な水性もしくは油性懸濁剤もしくは液剤の形態において製造し、包装し、もしくは販売することができる。この懸濁剤もしくは液剤は既知の技術に従って調合することができ、そして有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤もしくは沈殿防止剤のような追加成分を含んでなることができる。そのような滅菌した注入可能な製剤は、例えば、水もしくは1,3ブタンジオールのような無毒の非経口的に許容しうる希釈剤もしくは溶媒を用いて製造することができる。他の許容しうる希釈剤および溶媒には、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノもしくはジグリセリドのような不揮発性油が包含されるがこれらに限定されるものではない。有用
である他の非経口的に投与可能な製剤には、微晶質形態において、リポソーム製剤において、もしくは生物分解性ポリマー系の成分として有効成分を含んでなるものが包含される。持続放出もしくは埋め込み用の組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマーもしくは難溶性塩のような製薬学的に許容しうるポリマーもしくは疎水性材料を含んでなることができる。
【0071】
本発明のTregおよび/もしくは本発明の方法を用いて増殖させたTregは、動物、好ましくはヒトに投与することができる。本発明のTregが投与される場合、投与する細胞の量は約100,000細胞〜約3000億細胞であることができ、ここで、細胞は動物、好ましくはそれを必要とするヒト患者に注入される。投与する正確な投与量は、処置する動物のタイプおよび病状のタイプ、動物の年齢ならびに投与の経路が包含されるがこれらに限定されるものではない任意の数の因子により異なる。
【0072】
regは毎日数回の頻度で動物に投与することができ、あるいはそれは1日に1回、週に1回、2週ごとに1回、月に1回のようなより少ない頻度で、または数ヶ月ごとに1回もしくはさらに年に1回もしくはそれ未満のようなさらに少ない頻度で投与することができる。投与の頻度は当業者に容易に明らかであり、そして処置する疾患のタイプおよび重症度、動物のタイプおよび年齢などのようなしかしこれらに限定されるものではない任意の数の因子により決まる。
【0073】
regは、様々な他の化合物(多数の他のものの中で、サイトカイン、化学療法薬、免疫抑制剤)と共投与することができる。あるいはまた、該化合物(1つもしくは複数)は、Tregより1時間、1日、1週、1ヶ月もしくはさらにそれ以上前にまたはその任意の変更で投与することができる。さらに、該化合物(1つもしくは複数)は、Tregの投与の1時間、1日、1週もしくはさらにそれ以上後にまたはその任意の変更で投与することができる。頻度および投与処方計画は当業者に容易に明らかであり、そして処置する疾患のタイプおよび重症度、動物の年齢および健康状態、投与する化合物もしくは複数の化合物の同一性、様々な化合物およびTregの投与の経路などのようなしかしこれらに限定されるものではない任意の数の因子により決まる。
【0074】
さらに、Tregが哺乳類に投与される場合、細胞が「増殖のない状態」である、すなわち、哺乳類に投与した場合に細胞が分裂できないようにそれらを処理できることが本明細書に提供される開示に基づいて当業者により理解される。本明細書における他の所に開示されるように、いったん哺乳類に投与すると細胞が増殖もしくは分裂できないようにするためにそれらに放射線照射することができる。特にヒトに投与する細胞を増殖できないようにするためにハプテン化(例えば、ジニトロフェニルおよび他の化合物を用いること)を包含する他の方法が当該技術分野において既知である。
【0075】
本発明には、ヒト臍帯血サンプルからTregを単離するために用いる試薬を含んでなる様々なキットが包含される。キットは、CD25のようなTreg細胞の表面上の分子に特異的に結合する抗体、アプリケーター、および本発明の方法を行うためにキットの使用を記述する説明用資料を含んでなる。典型的なキットが以下に記載されるが、他の有用なキットの内容は本開示に照らしてみると当業者に明らかである。これらのキットの各々は、本発明内に包含される。「アプリケーター」という用語は、該用語を本明細書において用いる場合、本発明の化合物および組成物を投与するための、皮下注射器、ピペットなどが包含されるがこれらに限定されるものではない、任意の装置を意味する。
【0076】
「説明用資料」には、その用語を本明細書において用いる場合、本明細書に列挙する様々な疾患もしくは障害を軽減することもしくは処置することをもたらすためのキットにおいて本発明の組成物および/もしくは化合物の実用性を伝えるために用いることができる
公開、記録、図もしくは任意の他の表現媒体が包含される。場合により、あるいはまた、説明用資料は、本明細書において他の所に開示されるとおりを包含する、細胞もしくは組織もしくは哺乳類における疾患もしくは障害を軽減する1つもしくはそれ以上の方法を記述することができる。
【0077】
本発明にはさらに、ヒト臍帯血サンプルからのTregを増やすためのキットが包含される。キットは、CD3に特異的に結合する抗体およびCD28に特異的に結合する抗体を含んでなる。本発明のキットの抗体は、単離された抗体、磁気ビーズのような物理的支持体に結合した抗体、または本明細書において他の所に記載されるかもしくは当該技術分野において既知である他の抗体であることができる。キットはさらに、本発明のTregを培養し、増やし、もしくはそうでなければ増殖させるためにIL−2のようなサイトカインを含んでなることができる。キットは、本発明に開示される方法に従って使用される。キットはさらに、アプリケーターおよびその使用のための説明用資料を含んでなることができる。
【0078】
本発明は、ここで、以下の実施例に関連して記述される。これらの実施例は説明の目的のためだけに提供され、そして本発明はこれらの実施例に限定されると決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆるバリエーションを包含すると解釈されるべきである。
【0079】
実施例
【実施例1】
【0080】
成人ヒト末梢血からのCD45RA細胞の単離および培養
培養用のCD25およびCD25細胞のMACS精製
健常なボランティアドナー(Memorial Blood Centers,Minneapolis,MN)の全血から得られたバフィコート調製物から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。白血球に富んだバフィコート細胞をフィコール−ハイパック層上で遠心分離してPBMCを集めた。以下の間接抗体に基づくマイクロビーズを用いてCD25細胞を単離した。PBMCを抗CD25−FITC、クローン2A3(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA)で染色し、洗浄し、そして次に抗FITCマルチソートマイクロビーズ(5マイクロリットル/10細胞、Miltenyi Biotec,Auburn,CA)に二次的に結合させ、そして陽性選択した。CD25細胞を第二のカラムに再びかけ、洗浄し、そして再溶出した。カラム精製後に、抗FITCマルチソートビーズを脱離させた。CD25細胞を系統枯渇(lineage depletion)用のmAb被覆マイクロビーズの混合物でCD8、CD14、CD19、CD20およびCD56を発現する細胞についてさらに枯渇させた。次に、これらのCD25系統枯渇細胞(DC−8x−マイナス)を抗CD45RAマイクロビーズ(20マイクロリットル/10細胞、Miltenyi)での直接陽性選択によりCD45RAについて選択した。ある場合には、抗HLA−DR細胞のさらなる精製を抗HLA−DRマイクロビーズ(20マイクロリットル/10細胞、Miltenyi)での陽性選択によりCD45RA細胞から単離した。CD25細胞を直接抗CD25マイクロビーズ(20マイクロリットル/10細胞、Miltenyi)での2回目の枯渇によりCD25についてさらに枯渇させた。CD25枯渇後にこれらの細胞を次に直接抗CD4マイクロビーズ(20マイクロリットル/10細胞、Miltenyi)でCD4について陽性選択した。
【0081】
CD25およびCD25細胞の培養
単離されたCD25細胞、CD25サブセットもしくはCD4CD25コントロール細胞を24ウェルプレートにおいて百万個の総細胞/mlで培養した。等しい数の
放射線照射したCD4CD25支持細胞を培養物に加えた。抗CD3/CD28mAb被覆ダイナビーズ(University of Pennsylvania,Philadelphia,PA)を増殖刺激として3:1のビーズ:細胞比で加え、そして中程度の用量のIL−2を新鮮培地(Chiron,Emeryville,CA)において50IU/mlで3日目に加えた(Godfrey,et al.,2004,Blood,104:453−461;Levine,et al.,1998,J.Hematother.,7:437−48)。臍帯血培養物では、培養もしくはサプレッサー機能の維持に支持細胞が必要とされず、従って、使用しなかった。細胞培養物は、急増殖期中に3日ごとに約1/3、必要に応じて分割した。培養培地は、10%のFCS(Invitrogen−Gibco)、ならびにL−グルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補足したRPMI−1640(Invitrogen−Gibco,Carlsbad,CA)であった。
【0082】
成人血液からTreg細胞系生成用にCD4CD25細胞の単離のためのMACSに基づく戦略を用いて以前に単離された細胞系は変わりやすい効能を示し、それは混入する通常のT細胞により引き起こされると思われた。精製戦略を改善するために、CD25細胞をフローサイトメトリー分析によりサブセットについて分析した。CD4CD25細胞のサブセットはサプレッサー細胞についてさらに濃縮されることができ、もしくは逆に、サブセットは通常のT細胞について濃縮されるかもしれない。本明細書に記載する方法は、サブセットマーカーを特性化し、これらの細胞サブセットを選択的に精製し、そして次に強力なサプレッサー機能を有する細胞系を形成するそれらの能力を評価することであった。
【0083】
分析した第一のマーカーはメモリー細胞のマーカー、CD45ROおよびナイーブT細胞のマーカー、CD45RAであった。新鮮単離CD4CD25CD45RO細胞はCD4CD25細胞のサプレッサー活性の大部分を含有したので、CD4CD25細胞のCD45ROサブセットはサプレッサー細胞を含有することが報告されている(Jonuleit,et al.,2001,J.Exp.Med.,193:1285−1294)。CD4CD25CD45RO−マイナス細胞は、機能アッセイ(二次同種MLR)において最小のサプレッサー活性を有した。CD4CD25CD45RO−マイナス細胞は、通常のT細胞であることが示唆された。通常のT細胞は典型的に培養においてサプレッサー細胞より増殖しすぎる(overgrow)ので、細胞系生成を改善するための手段としてCD4CD25CD45RO−マイナス細胞の枯渇を調べた。
【0084】
精製されたCD4CD25細胞をFACS分析によりCD45RAおよびCD45RO発現について評価した(図1)。CD25細胞は、約80%の細胞上でCD45ROを共発現した(平均80%、範囲62〜89、n=6)。CD25細胞はまた、約20%の細胞上でCD45RAを共発現する細胞のサブセットも含有した(平均24%、範囲15〜38、n=6)。これらの抗原の高レベル発現は相互排他的であるが、少量の両方の抗原を発現するのみのかなりの数の二重陽性細胞があり、そして2色ドットプロットにより発現の全スペクトルが示される。CD45RA細胞は最高レベルでCD25を発現せず、そして真のTreg細胞であると考えられるCD25 bright細胞はCD45RAを発現しないように思われる(図2)。従って、これらのデータは、CD45RAサブセットの枯渇がCD45ROreg細胞についてさらに濃縮することを示唆し、そしてこれらのCD4CD25CD45RA細胞の除去を試みた。
【0085】
切断可能なマイクロビーズでの間接精製系は、CD25細胞の精製、磁気ビーズの除去、そして次にCD45RA細胞の枯渇を可能にした。典型的なバフィコートを用いて、出発物質は約5億個の細胞であり、そして精製によって約1千万個のCD25細胞、
7百万個のCD25系統陰性細胞、5百万個のCD45RA−マイナス細胞および百万個のCD45RA細胞が得られた。2人のドナーからの精製を示す(図1)。これらの様々なCD25集団を抗CD3/28ビーズでの1回の刺激で培養した。3週後に、アロMLRを抑制する能力についてこれらの細胞系を試験した。
【0086】
これらの細胞系のサプレッサー機能を評価するために、HLA不適合アロ−MLRアッセイを機能読み取りとして用いた。CD4応答細胞およびDC刺激MLRアッセイは非常に強力であり、そしてドナー間で一貫性があり、それ故に抑制の標準的測定として役割を果たした。2〜3週の培養後に全ての細胞系をMLRにおいてサプレッサー活性について最初にスクリーニングし、そしてそれから次の3〜4週にわたってさらに分析した。
【0087】
驚くべきことに、強力なサプレッサー活性を示したのはCD45RA由来の細胞系(これらは通常のT細胞でありそして活性を欠くと予想された)であった(図11)。対照的に、CD45RA−マイナス細胞由来の系は、非常に乏しいサプレッサー機能を有した。12の細胞系ドナーを試験し、そして10/12のRA細胞系は強力なサプレッサー活性を示し、そして2/12のRA−マイナス系は同様の活性を示した。これらのデータおよびこれらの細胞系により媒介される抑制パーセントは散布図に示され、それはまた成人血液および臍帯血からのストレートの(straight)CD25選択細胞も含む(図3)。
【0088】
ヒトCD25細胞の2つの主要サブセット、CD45RAおよびHLA−DR
CD25細胞サブセットのさらなる分析により、CD45RA細胞は古典的に記載されているヒトTreg細胞(Baecher−Allan,et al.,2001,J.Immunol.,167:1245−1253;Godfrey,et al.,2004,Blood 104:453−461;Hoffmann,et al.,2004,Blood 104:895−903)、CD25brightと異なることが示された。前の報告は、これらの細胞をCD25hiでありそしてCTLA−4陽性であると記載している(Jonuleit,et al.,2001,J.Exp.Med.,193:1285−1294)。本明細書に開示されるデータは、CD45RA細胞が異なることを示す。2色ドットプロットにおいて、CD45RA細胞は細胞内CTLA−4陰性(図4)、HLADR陰性(図4)であることが示される。HLA−DRに対するCD25の二重染色は、HLA−DR細胞がCD25bright細胞であることを示し(図4)、そしてそれらは細胞内CTLA−4について二重染色する(図4)。これは、2つの異なる細胞サブセットを示す。
【0089】
HLA−DR細胞の精製は、CD45RA(−)細胞集団のさらなる陽性選択により行った。これはCD25細胞の3つのサブセット、CD45RA細胞、HLA−DR細胞および「二重陰性」を残した。3つのサブセット全てを培養し、そしてサプレッサー機能について試験した。CD45RA由来の細胞系は、最も強力なサプレッサー機能を媒介した。二重陰性細胞は中間レベルの抑制を媒介し、そしてHLA−DRは最も悪い抑制活性を媒介した(図5)。
【実施例2】
【0090】
成人ヒトCD45RA細胞はT細胞増殖を抑制する
【0091】
混合リンパ球反応(MLR)アッセイ培養用の応答および刺激細胞
CD4CD25応答T細胞を健常なボランティアドナー(Memorial Blood Centers,Minneapolis,MN)の全血由来のバフィコート調製物から単離した。細胞をフィコール−ハイパック上で遠心分離してPBMCを集めた。CD4T細胞を抗CD4mAb被覆磁気マイクロビーズ(Miltenyi−Biot
ec)で陽性選択により単離する前に、PBMCを抗CD25mAb被覆マイクロビーズ(Miltenyi−Biotec)でCD25細胞について最初に枯渇させた。細胞は、FACS分析により通常96〜98%純粋であった。磁気ビーズに基づく精製(Miltenyi−Biotec)により、PBMCから単離された、CD14単球から未熟樹状細胞(DC)を生成せしめ(Sallusto and Lanzavecchia,1994,J.Exp.Med.,179:1109−1118)、そしてX−vivo−15(BioWhittaker,Walkersville,MD)培地においてGM−CSF(最終50ng/ml)およびIL−4(最終20ng/ml;R&D Systems,Minneapolis,MN)を補足して百万個の細胞/mlで培養した。MLRにおいてスティムレーター(stimulator)として使用する前に細胞を5〜10日間培養した。ある実験では、DCをLPS(Sigma,St.Louis,MO)(100ng/ml)、もしくはTNF−アルファ(最終20ng/ml)およびポリI:C、トル様受容体(TLR)−3アゴニストリガンド(最終20μg/ml)(Sigma)で2日間成熟させた(Godfrey,et al.,2004,Blood 103:1158−1165;Cella,et al.,1999,J.Exp.Med.,189:821−829)。DC刺激細胞に30Gyで放射線照射した。
【0092】
MLRアッセイ培養
5x10の応答CD4CD25T細胞および5x10のDC刺激抗原提示細胞(APC)を96ウェルU底プレートにおいてウェル当たり培養した。培養したサプレッサーもしくは通常のT細胞系を標準アッセイではウェル当たり2.5x10で、もしくは滴定実験では段階的な数において加えた。抗体ブロッキング実験では、10もしくは5x10のサプレッサー細胞を用いた。培地は、10%のFCSを補足したRPMI−1640であった。ウェルを3、5、6および7日目に培養の最後16時間にわたってH−チミジンでパルス標識した。各時間点は、6つの反復実験を有した。結果は分当たりのカウントにおいて表した。データを直接ベータカウンター(液体シンチレーションなし)で集め、従って、結果の大きさはより低いが比例的に正確であった。
【0093】
サイトカイン分析
MLR培養上清を細胞なしに回転させ、そしてアリコートを−80℃で凍結させた。再刺激には、抗CD3/CD28ビーズを1:1のビーズ:細胞比で用いた。上清をラテックスビーズに基づく多検体システム(R&D Systems,Minneapolis,MN)でルミネックスアッセイシステムにより評価した。
【0094】
CD45RA由来の細胞系により媒介される抑制の効能
抑制効能をさらに評価するために滴定実験を実施した。標準的なDC刺激MLR培養物に加えるサプレッサーの数を下げることにより、臍帯血由来のサプレッサーのほぼ完全な抑制活性は1:16もしくは1:32(50,000の応答細胞に対してわずか1500のサプレッサー)の比率まで(out to)維持されることが示された。これは、選択された最も強力な成人由来の細胞系(CD25lineage)よりわずかに強力である(〜2倍)。
【0095】
効能のさらなる評価として、DC刺激細胞が成熟しているMLRにおいてサプレッサー細胞系を評価した。リポ多糖(LPS)、(TLR4リガンド)、もしくはTNF/ポリIC(二本鎖RNAアナログ−TLR3リガンド)の組み合わせでのDCの活性化/成熟は、抑制の回避をもたらさなかった。さらに、MLR培養にLPSもしくはTNF/ポリICを含むこともまた、抑制を回避しなかった。従って、CD45RA由来のTreg細胞は強力で且つ活性化されたDCであり、それらは共刺激分子およびサイトカインを豊富に発現する。さらに、DCおよび発現される共刺激分子は、CD4CD25細胞の抑制効果を回避することができなかった。
【0096】
CD45RA由来のサプレッサー細胞はMLRにおけるサイトカイン生産を損なう
MLRアッセイにおける応答T細胞へのサプレッサー細胞系の効果を決定するために、培養上清を複数のサイトカインの存在および量について評価した。MLRアッセイへのサプレッサー細胞添加は、IL−2、IFN−ガンマ、GM−CSF、TNF−αおよびIL−10を包含する、T細胞活性化依存性サイトカインの蓄積を顕著に減少した。活性化依存性サイトカイン蓄積は、抑制されたMLRの間の全ての時間点で最小であった。これらのデータは、T細胞活性化の顕著な機能障害を示す。
【0097】
サプレッサー細胞系の再活性化は最小のサイトカイン生産を誘導する
通常のT細胞系に対する抑制細胞系の機能的能力を決定するために、再刺激後のサイトカイン生産および細胞表面分子発現のそれらの能力を評価した。細胞系を強力な再活性化のために抗CD3/CD28ビーズで再刺激し、そしてルミネックスビーズに基づくアッセイによるサイトカイン含有量の分析用に特定の時間点で上清を採取した。CD45RA由来の細胞系はIL−2、IFN−γもしくはIL−10を本質的に生産せず、一方、コントロールのCD25由来の細胞系は高レベルのこれらのサイトカインを生産した。TNF、GM−CSFおよびIL−5、ならびにケモカインIL−8の蓄積もまた、コントロール細胞系と比較した場合に著しく減少された。
【実施例3】
【0098】
CD45RA表現型を有するヒト臍帯血の単離および培養
臍帯血免疫学および移植におけるTreg細胞の重要な役割は、一般に理解されていない(Barker,et al.,2003,Crit.Rev.Oncol.Hematol.,48:35−43)。多数の研究者は、免疫学的特性化の目的のために真にナイーブのT細胞の代表的なモデルとして全CD4選択臍帯血集団を使用する(Kaminski,et al.,2003,Blood 102:4608−4617)。しかしながら、本明細書に開示されるデータに照らしてみると、いくつかの前の研究はCD25枯渇CD4細胞で再評価される必要があり得る(Jonuleit,et al.,2000,J.Exp.Med.,192:1213−1222)。これらの細胞は、臍帯血移植(CBT)において経験されるGVHDの低い割合への寄与因子であり得る(Wadlow,et al.,2002,Biol.Blood.Marrow.Transplant.,8:637−647)。
【0099】
CD25およびCD25CD4T細胞のMACS精製
CD25およびCD25CD4T細胞を臍帯血(Red Cross,Saint Paul,MN)から単離した。臍帯血単核細胞を製造業者の使用法に従ってフィコール−ハイパック上で遠心分離により調製した。磁気マイクロビーズ(Miltenyi
Biotec,Auburn,CA)でのCD34枯渇後に、直接結合した抗CD25磁気マイクロビーズ(10の細胞当たり4マイクロリットル;Miltenyi Biotec)での陽性選択によりCD25細胞を単離した。次に、細胞を第二の磁気カラムにかけ、洗浄し、そして再溶出した。二重カラム方法の後に、細胞はFACS分析により通常>90%純粋であった(CD4/CD25について)。次に、抗CD4mAb被覆マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)での陽性選択によるCD4CD25細胞の単離の前に、あらゆる残留するCD25細胞を枯渇させるために非CD25画分を別の磁気カラムにかけた。成人CD25細胞のストリンジェントな精製は、抗CD25−FITCおよび抗FITCマイクロビーズ(10の細胞当たり2マイクロリットル)、ならびに2サイクルにわたる磁気カラム上の通過および溶出を使用した。この後に磁気ビーズを遊離させ、そして続いてGodfrey,et al.(2004,Blood 104:453−461)に記載のとおり抗CD8、CD14、CD19およびCD56直接結合マイクロビーズで系統枯渇させた(CD4CD25++lin

【0100】
臍帯血Treg細胞の培養
単離されたCD4CD25細胞もしくはコントロールCD4CD25細胞を3:1のビーズ:細胞比で抗CD3/CD28mAb被覆ダイナビーズ(University of Pennsylvaniaから入手し、そしてLevine,et al.,1998,Hematother.,7:437−448に記載される)とGodfrey,et al.(2004,Blood 104:453−461)に記載のとおり培養した。細胞は、24ウェルプレートにおいて百万個の総細胞/mlで培養した。IL−2を50IU/ml(Chiron,Emeryville,CA)で3日目に加えた。前の研究とは対照的に、全ての系を支持細胞なしに培養した。臍帯血培養物では、放射線照射した支持細胞(CD4CD25細胞)(Godfrey,et al.,2004,Blood 104:453−461)の添加は増殖にもサプレッサー機能の維持にも役立たず、従って、培養プロトコルを簡素化するために支持細胞を省いた。細胞培養物は、急増殖期の間3日ごとに約1:3、必要に応じて分割した。培養培地は、10%のウシ胎仔血清(FCS;Invitrogen−Gibco)、ならびにL−グルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補足したRPMI−1640(Invitrogen−Gibco,Carlsbad,CA)であった。
【0101】
臍帯血はCD4CD25細胞の異なった集団を含有する
臍帯血単核細胞(CBMC)は、CD25を共発現するCD4T細胞を含有することが示されている。従って、本発明の結果は、サプレッサー機能およびサプレッサー細胞系生成のこれらの細胞の能力の評価を開示する。FACS分析を用いてCBMCはCD25を共発現するCD4T細胞の顕著な集団を含有すること、およびこれは細胞の別個の集団であることが確かめられた(図6A)。対照的に、成人血液は、非抑制性CD25−dim細胞の大きな集団を包含する、広範囲のレベルのCD25を有するCD4T細胞を含有する(図6B)。臍帯血CD4T細胞の約5%は、CD25を明確に発現する(平均5.2%、範囲2.3〜9.5%、n=20)(成人末梢血CD4T細胞に存在する(CD4の平均3.8%)よりわずかに高いパーセンテージ)。精製の直接比較のために、CD25reg細胞を同一のMACSに基づくプロトコル(直接抗CD25に基づく選択)を用いて成人および臍帯血の両方から単離した。臍帯血から精製されたCD25細胞は、CD25bright細胞(MFI320vs130)のより収束した集団、およびより少ないCD25−dimもしくはCD25−陰性細胞を含有した(図6C)、それぞれ平均9%(範囲5〜21%、n=10)および3%(範囲1〜9%、n=10)。比較して、成人血液由来のCD25細胞はより多くのCD25−dimおよびCD25−陰性細胞を含有することが見出された(図6D)、それぞれ平均30%(範囲25〜38%、n=10)および10%(範囲2〜24%、n=10)。
【0102】
臍帯血CD25細胞はCD45RAである
臍帯血CD25細胞を直接選択により精製した。それらをCD25およびCD45RAについて染色した。細胞は主にCD45RAである(図7)。
【0103】
MACS選択した臍帯血CD4CD25由来の細胞系は強力なサプレッサー機能を一貫して有する
IL−2を補足して、抗CD3/CD28被覆ビーズでストリンジェントに精製された成人由来のCD25reg細胞を刺激することは、著しい増殖を誘導する。精製された成人もしくは臍帯血CD4CD25細胞、ならびに比較のための臍帯血CD4CD25細胞から細胞系を生成するためにこの培養戦略を用いた。臍帯血由来のCD4CD25細胞は培養において容易に増殖した;単一の初期刺激で3週にわたって約100倍。3〜4週後に細胞系は数を増殖するのを停止し、そしてIL−2において維持され
た。従って、これらの細胞系の増殖曲線は、成人血液由来のCD4CD25細胞系のものと同様であった。
【実施例4】
【0104】
CD45RA臍帯血細胞はT細胞増殖を抑制する
【0105】
混合リンパ球反応(MLR)培養用の応答および刺激細胞
健常なボランティアドナー(Memorial Blood Centers,Minneapolis,MN)の全血由来のバフィコート調製物からCD4CD25応答T細胞を単離した。細胞をフィコール−ハイパック上で遠心分離してPBMCを集めた。抗CD4mAb被覆磁気マイクロビーズ(Miltenyi−Biotec)での陽性選択によりCD4T細胞を単離する前に、PBMCを抗CD25mAb被覆マイクロビーズ(Miltenyi−Biotec)でCD25細胞について最初に枯渇させた。細胞は、FACS分析により通常96〜98%純粋であった。磁気ビーズに基づく精製(Miltenyi−Biotec)により、PBMCから単離された、CD14単球から未熟樹状細胞(DC)を生成せしめ(Sallusto,et al.,1994,J.Exp.Med.,179:1109−1118)、そしてX−vivo−15(BioWhittaker,Walkersville,MD)培地においてGM−CSF(最終50ng/ml)およびIL−4(最終20ng/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)を補足して百万個の細胞/mlで培養した。MLRにおける刺激細胞としての使用の前に細胞を5〜10日間培養した。ある実験では、DCをLPS(Sigma,St.Louis,MO)(100ng/ml)、もしくはTNF−アルファ(最終20ng/ml)およびポリI:C、トル様受容体(TLR)−3アゴニストリガンド(最終20μg/ml)(Sigma)で2日間成熟させた(Spisek,et al.,2001,Cancer Immunol.Immunother.,50:417−427;Godfrey,et al.,2004,Blood 103:1158−1165)。DC刺激細胞を30Gyで放射線照射した。
【0106】
MLRアッセイ培養
5x10の応答CD4CD25T細胞および5x10のDC刺激APCを96ウェルU底プレートにおいてウェル当たり培養した。培養したサプレッサーもしくは通常のT細胞系を標準アッセイではウェル当たり2.5x10で、もしくは滴定実験では段階的な数において加えた。抗体ブロッキング実験では、10もしくは5x10のサプレッサー細胞を用いた。培地は、10%のFCSを補足したRPMI−1640であった。ウェルを3、5、6および7日目に培養の最後16時間にわたってH−チミジンでパルス標識した。各時間点は、6つの反復実験を有した。結果は、分当たりのカウントで表された。データを直接ベータカウンター(液体シンチレーションなし)で集め、従って、結果の大きさはより低いが比例的に正確であった。
【0107】
MLRアッセイにより決定した場合のTreg細胞のサプレッサー機能
細胞系のサプレッサー機能を評価するために、HLA不適合アロ−MLRアッセイを機能読み取りとして用いた。CD4応答およびDC刺激MLRアッセイは非常に強力であり、そしてドナー間で一貫性があり、従って、抑制の標準的測定として役割を果たした。2〜3週の培養後に全ての細胞系をMLRにおいてサプレッサー活性について最初にスクリーニングし、そしてそれから次の3〜4週にわたってさらに分析した。驚くべきことに、臍帯血CD25細胞由来の細胞系は、一貫してそして強力に抑制性であった(図8A)。強力な抑制性細胞系は30のドナーのうち29から単離され、ここで、増殖の抑制は典型的に>95%であった(図8B)。成人もしくは臍帯血CD25細胞由来のコントロール細胞系は、抑制性ではなかった(図8B)。成人CD25細胞(直接単離された)由来の細胞系は、弱いそして変わりやすい抑制活性を示した(図8Aおよび8B)。成
人ドナーのサブセットにおいて顕著な、強力なサプレッサー細胞系を生成するためにストリンジェントなMACSに基づく選択が必要とされることが以前に報告された。これらの系(CD25++lineage)により媒介される抑制は図8Aおよび8Bに示され、それは臍帯血由来の細胞系の驚くべき一貫性を示す。
【0108】
抑制効能をさらに評価するために、滴定実験を行った。標準的なDC刺激MLR培養物に加えるサプレッサーの数を減らすことにより、臍帯血由来のサプレッサーのほぼ完全な抑制活性は1:16もしくは1:32(50,000の応答細胞に対してわずか1500のサプレッサー)の比率まで維持されることが示された。これは、選択された最も強力な成人由来の細胞系(pCD25lin)よりわずかに強力である(〜2倍)(図2C)。直接選択された成人CD25細胞由来の細胞系は、滴定の際にあまり抑制性ではなかった。
【0109】
効能のさらなる評価として、DC刺激細胞が成熟しているMLRにおいてサプレッサー細胞系を評価した。リポ多糖(LPS)、(TLR4リガンド)、もしくはTNF/ポリIC(二本鎖RNAアナログ−TLR3リガンド)(Cella,et al.,1999,J.Exp.Med.,189;821−829)の組み合わせでのDC活性化/成熟は、抑制を回避しなかった(図2D)。さらに、MLR培養にLPSもしくはTNF/ポリICを含むことは抑制を回避しなかった。従って、臍帯血由来のTreg細胞は最良の選択された成人由来の細胞系と同じくらい強力であり、そして共刺激分子およびサイトカインを豊富に発現する活性化DCはそれらの抑制効果を回避することができなかった。
【0110】
臍帯血サプレッサー細胞は、ケモカイン生産への効果はそれほどでなくサイトカイン生産を損なう
MLRアッセイにおける応答T細胞へのサプレッサー細胞系の効果を決定するために、上清を複数のサイトカインの存在および量について評価した。MLRアッセイへのサプレッサー細胞添加は、IL−2、IFN−ガンマ、GM−CSF、TNF−αおよびIL−10を包含する、T細胞活性化依存性サイトカインの蓄積を顕著に減少した。重要なことには、TGF−ベータ−1蓄積のレベルは改変されないようであった。活性化依存性サイトカイン蓄積は、抑制されたMLRの間の全ての時間点で最小であり、コントロールDC−MLRにおけるピーク検出時での結果を示す(図9A)。これらのデータは、T細胞活性化の顕著な機能障害を示す。選択されたケモカイン発現への抑制の効果を決定するために、MLR上清をIL−8(CXCL8)、MIP−1a(CCL3)およびRANTES(CCL5)、前炎症性ケモカインの発現について評価した。早い時間点で、蓄積への効果は認められなかった(図9B)。しかしながら、MLRにおける遅い時間点で、蓄積は約50〜75%減少された。従って、ケモカイン生産は抑制によりそれほど影響されないようであり、そしてサプレッサー細胞の効果においてある程度の選択性がある。
【0111】
ヒトおよびマウスCD4CD25reg細胞の両方の研究は、インビトロ抑制の明らかな作用機序を示していない(Shevach,2002,Nat.Rev.Immunol.,2:389−400)。以前の研究と一致して、臍帯血由来の培養したサプレッサー細胞は機能に細胞接触を必要とし(半透膜を越えて抑制しなかった)、そして細胞毒性ではなかった。TGFベータはTregに媒介される抑制における主要因子であることが可変的に報告され(Chen,et al.,2003,Cytokine Growth Factor Rev.,14:85−89)、そしてrLAPはサプレッサー機能を損なうことが報告されたので(Nakamura,et al.,2004,J.Immunol.,172:834−842)、TGF−ベータ経路をrLAPを包含する複数の中和試薬で注意深く評価した。TGF−ベータの複数のアンタゴニストは、様々な組み合わせにおいてさえ、抑制に最小限に影響を及ぼすことが見出された。免疫抑制因子IL−10もしくはその受容体に対する中和抗体は、抑制への効果を有さなかった。
これは、非常に強い活性化刺激でさえ臍帯血サプレッサー細胞によるIL−10生産がないことと一致する。従って、現在開示されるインビトロMLR系において、TGF−ベータもIL−10も抑制の主要メディエーターではないように思われ、そして抑制を媒介する分子は特性化されないままである。
【実施例5】
【0112】
ヒト成人CD25RAreg細胞の特性化
【0113】
モノクローナル抗体
精製を評価するために、細胞を抗CD25−PE(クローンM−A251)(BD Pharmingen,San Diego,CA)で染色し、それは抗CD25−マイクロビーズによりブロックされない。フローサイトメトリー用の他の抗体には、(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San
Jose,CA)からの抗CD4−PerCP(クローンSK3);(BD Pharmingen)からの抗CD152−PE(BNI3)、抗CD27−FITC(M−T271)、抗CD62L−APC(Dreg56)、抗CD69−FITC(FN50)、抗CD134(ACT35);および(R&D Systems)からの抗GITR−PE(I10416)が含まれた。抑制を阻止するために考案された機能実験において、中和抗体は10μg/mlで使用した。抗体には、抗CTLA4(BNI3)(BD Pharmingen)、抗PD1(J116)(eBioscience,San Diego,CA)、(Becton Dickinson)からの抗OX40(L106)、および(R&D Systems)からの抗GITR(MAB689)、抗GITR−L(MAB6941)、抗OX40L(MAB10541)、抗IL10(MAB217)、抗IL−10受容体−アルファ(MAB274)、抗TGFベータ−1、2、3(1D11)、抗TGFベータ−1(MAB1835)、ポリクローナルニワトリ抗TGFベータ1/1.2(AF−101−NA)が含まれた。
【0114】
培養したサプレッサー細胞はIL−10およびTGF−ベータから独立して機能する
培養したサプレッサー細胞系は既知の可溶性免疫抑制性もしくは細胞表面の負の調節タンパク質を介して働くかどうかを決定するために、DC−MLRサプレッサーアッセイを中和もしくはブロッキングモノクローナル抗体で処理した。アッセイは、増殖の回復による抑制の取り消しについて評価した。最初に、IL−10、IL10RおよびTGF−ベータ1,2,3に対する抗体を単独でもしくは最小効果を有する様々な組み合わせで試験した。高用量(30μg/ml)で3つの抗体全てを組み合わせることによってのみ、抑制効果のあまり多くないそしておそらく非特異的な取り消しが見られた。3つの抗体全てで処理した処理コントロール培養物はまた、3つの抗体全てで処理したTreg細胞と同様に、増加した増殖を明白に示した。
【0115】
フローサイトメトリー
免疫蛍光染色のために、細胞を4℃で30分間染色した。細胞を洗浄し、そしてFACS Calibur血球計算器(Becton Dickinson)上で実行した。データは、FlowJoソフトウェアバージョン4.5(Treestar,Ashland,OR)により分析した。細胞内染色は2%パラホルムアルデヒド固定細胞を用いて行い、続いて0.1%サポニン含有バッファーにおいて透過化しそして染色した。
【0116】
統計データ
全てのエラーバーは、平均より上および下の1つの標準偏差を表す。
【0117】
CD45RA由来のサプレッサー系の表現型
細胞系をサプレッサー細胞表現型と関連する抗原についてフローサイトメトリーにより
分析した。通常のT細胞コントロールとして役割を果たすCD4CD25由来の細胞系と並行してサプレッサー細胞系を培養した。細胞系は、次の3〜5週にわたって比較的安定な表現型および機能を維持した。CD45RA由来のCD25細胞系は、CD25、細胞内CTLA4、CD27およびCD62Lを包含する複数の抗原の著しく均一な発現を維持する。比較して、CD45RA(−)由来の細胞系は、これらの抗原について不均一であった。
【0118】
CD45RA由来のCD25細胞系は、Treg表現型に典型的と考えられる発現パターン、細胞表面CD25および細胞内CTLA4の高発現を維持した。これは、CD69、CD71およびOX40のような他の活性化抗原がベースライン発現に戻っていることにもかかわらず起こる。CD45RA由来のサプレッサー細胞系はまた、CD62LおよびCD27を両方とも均一に発現する。強力な成人由来のサプレッサー細胞系内で、サプレッサー機能を有する細胞はこの二重陽性サブセット内に存在する(Godfrey,et al.,2004,Blood 104:453−461)。CD25由来の細胞系もまたCD27発現を維持するが、CD25由来の細胞系より低いレベルである。このCD27dim発現パターンはまた、成人由来のCD25由来の細胞系でも認められた(Godfrey,et al.,2004,Blood 104:453−461)。
【実施例6】
【0119】
ヒト臍帯血由来のTreg細胞の特性化
【0120】
リアルタイムPCR
TR1−試薬(Molecular Research Center,Cincinnati,OH)もしくはRNAeasy(Qiagen,Valencia,CA)を用いて全RNAを抽出した。Taqmanユニバーサルマスターミックス(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて1μgの各RNAサンプルからcDNAを合成した。10ngを各qPCR反応において使用した。全てのサンプルを二重反復で行った。FoxP3およびサイクロフィリンAのプライマーおよびプローブは、Applied Biosystemsから購入した。リアルタイムPCRは、ABI Prism 7900(Advanced Biosystems)を用いて行った。FoxP3メッセージレベルは、サイクロフィリンAにデータを正規化した後に決定した。
【0121】
ウェスタンブロッティング
Active Motif(Carlsbad,CA)を用いて製造業者の使用法に従って核抽出物を調製し、そしてレーン当たり70μgのタンパク質を載せた。サンプルをNuPage 10%Bis−Trisミニゲル(Invitrogen)上で泳動した。タンパク質をPVDF膜に移し、そしてヤギ抗FoxP3抗体(AB2481)(Abeam,Cambridge,MA)、続いてウサギ抗ヤギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼとインキュベーションした。ブロットをSuperSignal WestPico化学発光基質(Pierce,Rockford,IL)で発色させた。
【0122】
サイトカイン分析
MLR培養上清を細胞なしに回転させ、そしてアリコートを−80℃で凍結させた。再刺激のために、抗CD3/CD28ビーズを1:1のビーズ:細胞比で用いるか、もしくは2ng/mlのPMAおよび500ng/mlのイオノマイシンを用いた。細胞を24ウェルプレートにおいて百万個の細胞/ml培地で培養した。上清をラテックスビーズに基づく多検体システム(R&D Systems,Minneapolis,MN)でルミネックスアッセイシステムにより評価した。
【0123】
モノクローナル抗体
精製を評価するために、細胞を抗CD25−PE(クローンM−A251)(BD Pharmingen,San Diego,CA)で染色し、それは抗CD25−マイクロビーズによりブロックされない。フローサイトメトリー用の他の抗体には、抗CD4−PerCP(クローンSK3;Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA);(BD Pharmingen)からの抗CD152−PE(BNI3)、抗CD27−FITC(M−T271)、抗CD62L−APC(Dreg56)、抗CD69−FITC(FN50)、抗CD134(ACT35);および(R&D Systems)からの抗GITR−PE(I10416)、ビオチニル化抗LAP(27240)が含まれた。抑制をブロックするために考案された機能実験において、中和抗体は10μg/mlで使用した。抗体には、抗CTLA4(BNI3)(BD Pharmingen)、抗PD1(J116)(eBioscience,San Diego,CA)、抗OX40(L106;Becton Dickinson)、ならびに抗GITR(MAB689)、抗GITR−L(MAB6941)、抗OX40L(MAB10541)、抗IL10(MAB217)、抗IL−10受容体−アルファ(MAB274)、抗TGFベータ−1,2,3(1D11)、抗TGFベータ−1(MAB1835)、ポリクローナルニワトリ抗TGFベータ1/1.2(AF−101−NA)、ポリクローナルヤギ抗TGFベータRII(AF−241−NA)、抗LAP(MAB246)、ポリクローナルヤギ抗LAP(AF−246−NA)、組み換えLAP(246−LP)および組み換えTGF−ベータRII−Ig(1003−RT;R&D Systems)が含まれた。
【0124】
フローサイトメトリー
免疫蛍光染色のために、細胞を4℃で30分間染色した。細胞を洗浄し、そしてFACS Calibur血球計算器(Becton Dickinson)上で実行した。データは、FlowJoソフトウェアバージョン4.5(Treestar,Ashland,OR)により分析した。細胞内染色は2%パラホルムアルデヒド固定細胞を用いて行い、続いて0.1%サポニン含有バッファーにおいて透過化しそして染色した。
【0125】
臍帯血由来のサプレッサー系の表現型およびFoxP3発現
細胞系をサプレッサー細胞表現型と関連する抗原についてフローサイトメトリーにより分析した。通常のT細胞コントロールとして役割を果たすCD4CD25由来の細胞系と並行してサプレッサー細胞系を培養した。3週の培養後に細胞系を評価し、その時点でビーズに基づく活性化はほぼ消失しており、そして細胞はより休止した状態に戻っていた。細胞系は、次の3〜5週にわたって比較的安定な表現型および機能を維持した。臍帯血由来のCD25細胞系は、CD25、細胞内CTLA4、CD27およびCD62Lを包含する複数の抗原の著しく均一な発現を維持する(図10A)。比較して、最もストリンジェントな精製により生成された、最良の成人由来のサプレッサー細胞系は、これらの抗原についてわずかに不均一であった(図10Aおよび10B)。
【0126】
臍帯血由来のCD25細胞系は、Treg表現型に典型的と考えられる発現パターン、細胞表面CD25および細胞内CTLA4の高発現を維持した(図10A)。これは、CD69、CD71およびOX40のような他の活性化抗原がベースライン発現に戻っていることにもかかわらず起こる。臍帯血由来のサプレッサー細胞系はまた、CD62LおよびCD27を両方とも均一に発現する(図10B)。強力な成人由来のサプレッサー細胞系内で、サプレッサー機能を有する細胞はこの二重陽性サブセット内に存在することが以前に示された(Godfrey,et al.,2004,Blood 104:453−461)。CD25由来の細胞系もまたCD27発現を維持するが、CD25由来の細胞系より低いレベルである。このCD27dim発現パターンはまた、成人由来の
CD25由来の細胞系でも認められた(Godfrey,et al.,2004,Blood 104:453−461)。
【0127】
転写因子FoxP3の発現は、マウスにおける調節性細胞の最も特異的なマーカーであることが提示されている(Ramsdell,et al.,2003,Curr.Opin.Immunol.,15:718−24)。本明細書に開示される結果は、FoxP3メッセージがCD25T細胞および系と比較してCD25細胞および系において高いレベルで発現されたことを示す。臍帯血からの新鮮単離CD25細胞は、CD4CD25細胞もしくは新鮮CD8T細胞より約64倍多いメッセージを含有した(図11A)。培養したCD25由来の細胞系は、新鮮単離CD25細胞より2〜4倍多いメッセージを含有した。メッセージレベルは単離時にCD25細胞において低いが、それらは培養時に約25〜30倍増加する。これは、培養の前のCD25dim/陽性細胞の完全な枯渇でさえ起こった(図11A)。抗CD3/CD28ビーズでの3〜6週齢細胞培養物のさらなる再刺激はメッセージ発現を増加せず、むしろ両方のタイプの細胞系においてそれをわずかに減少した。
【0128】
mRNAメッセージレベルでのデータと対照的に、ポリクローナル抗体でのウェスタンブロッティングは、FoxP3タンパク質発現がCD25由来の細胞系において主に発現されることを明らかにした。メッセージを発現することにもかかわらず、CD25由来の細胞系は最小/バックグラウンドレベルのFoxP3タンパク質を発現した(図11B)。重要なことには、CD25細胞系の再刺激はFoxP3タンパク質発現を顕著に増加した。FoxP3タンパク質レベルの増加は、メッセージレベルの最小変化(実際の減少)にもかかわらず起こった。CD25細胞の再刺激は、CD25由来の細胞系においてFoxP3タンパク質を依然として誘導しなかった。
【0129】
本明細書に開示されるデータは、FoxP3 mRNAメッセージおよびタンパク質調節のいくつかの興味深い面を示す。最も重要なことには、FoxP3タンパク質は、CD25由来のサプレッサー細胞に比較的特異的であることが見出され、そしてCD25由来の細胞系に最小限に存在した。また、完全にCD25を枯渇させたCD4T細胞由来の系でも、培養物活性化の際にかなりの量のFoxP3メッセージ(休止CD25細胞に対して約20〜30倍多い)を作り得ることも決定された。FoxP3 mRNAとタンパク質発現との間の不一致は、FoxP3メッセージレベルがサプレッサー細胞を必ずしも同定もしくは定量するとは限らないことを示す。さらに、再刺激したCD25細胞は、減少したメッセージレベルにもかかわらずさらに多くのFoxP3タンパク質を発現した。これらの結果は、FoxP3発現が活性化で増大されることを示唆し、そして転写後の機序がFoxP3タンパク質発現の調節に寄与し得ることを示唆する。
【0130】
サプレッサー細胞系の再活性化は最小のサイトカイン生産および増大した表面TGF−ベータLAP発現を誘導する
通常のT細胞系に対する抑制性細胞系の機能的能力を決定するために、これらの細胞を再刺激後のサイトカイン生産および細胞表面分子発現のそれらの能力について評価した。細胞系を強力な再活性化のために抗CD3/D28ビーズで再刺激し、そしてルミネックスビーズに基づくアッセイによるサイトカイン含有量の分析のために特定の時間点で上清を採取した。CD25由来の細胞系はIL−2、IFN−γもしくはIL−10を本質的に生産せず(図12A)、一方、コントロールのCD25由来の細胞系は高レベルのこれらのサイトカインを生産した。TNF、GM−CSF、IL−5およびケモカインIL−8の蓄積もまた、コントロール細胞系と比較した場合に著しく減少された(図12A)。対照的に、TGF−ベータ、ならびにケモカインMIP1aおよびRANTESの蓄積は、異なる細胞系間で著しく異ならなかった。
【0131】
近位シグナル伝達経路(proximal signaling pathways)を迂回することができる、薬理学的薬剤PMAおよびイオノマイシンでの細胞系の再刺激は、CD25およびCD25由来の細胞系の両方によるほぼ同等レベルのサイトカイン生産をもたらした(図12B)。従って、CD25由来の細胞系は、多数のサイトカインの正常な生産を不可能にする近位TCRおよびCD28シグナル伝達機能障害を有するように思われる。さらに、CD25由来の細胞系は免疫抑制性サイトカインIL−10の生産障害を有し、それはPMA/イオノマイシン刺激により回復されなかった。これは、IL−10の生産がCD25由来の細胞系により影響される抑制の主要機序ではおそらくないことを示唆する。
【0132】
臍帯血由来のCD25細胞系の一般的な活性化が損なわれたかどうかを決定するために、細胞表面活性化抗原の発現をフローサイトメトリー分析により評価した。細胞系を抗CD3/CD28ビーズで再刺激し、そして一晩培養後にCD69、OX40(CD134)およびGITR発現について評価した。3つの抗原は全て、C25およびCD25由来の細胞系の両方の上で再発現された(図12C)。OX40およびGITRの発現は、再活性化されたCD25細胞系に対してCD25由来の細胞系上でわずかに増大されるように思われた(MuHugh,et al.,2002,Immunity 16:311−323)。重要なことには、CD25細胞系の再活性化は、サイトカイン蓄積について示される結果とは対照的に、細胞表面活性化抗原発現分析により決定した場合に、比較的損なわれていなかった。
【0133】
TGFベータ前駆体タンパク質、TGFベータ潜伏関連タンパク質(LAP)の細胞表面発現は、Treg細胞と関連することが報告されている(Nakamura,et al.,2004,J.Immunol.,172:834−842)。さらに、このタンパク質の組み換え型は、サプレッサー機能を部分的に中和することが最近報告されている(Nakamura,et al.,2004,J.Immunol.,172:834−842)。従って、CD25およびCD25由来の細胞系上のLAPの発現を評価した。CD25もしくはCD25系はいずれも3〜6週間の培養後にこのタンパク質を発現せず、しかしながら、抗CD3/CD28ビーズでの再刺激後にCD25由来の細胞系上で細胞表面LAPの明らかな発現があったが(図12D)、CD25由来の細胞系ではなかった。TGF−ベータの細胞表面発現は、検出可能でなかった。
【0134】
サプレッサー細胞は、サイトカイン生産の限られた能力を有することが見出された(再刺激時に)。IL−2、IFN−ガンマおよびIL−10生産の著しい欠如ならびにGM−CSF、TNF、IL−5およびIL−8を生産する著しく減少した能力が存在した。対照的に、CD69、OX40およびGITRのアップレギュレーションされた発現、ならびにMIP−1aおよびRANTESの生産により評価されるような活性化は、一般に損なわれていなかった。興味深いことに、サイトカイン生産能力はPMA/イオノマイシン刺激で回復された。これは、サプレッサー細胞における部分的な近位TCRシグナル伝達遮断を示唆し、そしてTCR刺激へのサプレッサー細胞のアネルギー応答特性と一致する。
【0135】
培養したサプレッサー細胞はIL−10、TGF−ベータおよび複数の共刺激分子から独立した未知の機序により機能する
培養したサプレッサー細胞系は既知の可溶性免疫抑制性もしくは細胞表面の負の調節タンパク質を介して働くかどうかを決定するために、DC−MLRサプレッサーアッセイを中和もしくはブロッキングモノクローナル抗体で処理した。アッセイは、増殖の回復による抑制の取り消しについて評価した。最初に、IL−10、IL10RおよびTGF−ベータ1,2,3に対する抗体を単独でもしくは最小効果を有する様々な組み合わせにおいて試験した。高用量(30μg/ml)で3つの抗体全てを組み合わせることによっての
み、あまり多くないそしておそらく非特異的な効果が見られた(図13A)。処理したコントロール培養物もまた、増加した増殖を明らかに示した。負の共刺激シグナル伝達分子CTLA4およびPD1に対する抗体もまた試験し、そしてそれら自体への効果を本質的に有さないことが見出されたが、この場合も同様に組み合わせにおいてのみ抑制へのわずかな効果が認められた(図13B)。そのシグナル伝達が休止マウスTregのサプレッサー機能を取り消すかもしくは減少することが報告されている受容体、GITR(Ji,et al.,2004,J.Immunol.,172:5823−5827)およびOX40(CD134)(Takeda,et al.,2004,J.Immunol.,172:3580−3589)に対するアゴニスト抗体を試験し、そして培養したサプレッサー細胞への最小効果を有することが見出された。OX40に対するアゴニスト抗体は、他のドナーよりあるドナーにおいてサプレッサー機能を損なうように思われた(平均32%の取り消し、n=6、範囲15〜75%)。しかしながら、OX40に対するアゴニスト抗体はまた、抑制の取り消しの大きさとほぼ相関して、コントロールMLRの大きさも増加した(図13C)。OX40Lに対する抗体はMLRを抑制したが(ドナー変動を有する)、抑制の見かけの大きさも増加した(コントロール培養物の90%に対して、平均96%の抑制、n=5、範囲90〜98%)(図7C)。
【0136】
再活性化し培養したサプレッサー細胞上の特異的な増加した細胞表面LAP発現、およびサプレッサー機能へのTGF−ベータの示唆される重要性のために(Nakamura,et al.,2004,J.Immunol.,172:834−842;Chen,et al.,2003,Cytokine Growth Factor Rev.,14:85−89)、TGFベータ経路の複数のアンタゴニストを評価した。モノクローナルおよびポリクローナルの両方の中和抗体、可溶性受容体、組み換えLAP、ならびにLAPに対する抗体を全てMLR系において試験した。単独でもしくは複数の組み合わせにおいて全ての試薬は、培養したTreg細胞系により媒介される抑制を取り消すことができなかった。実験は、抑制の能力を最小化するために、より少ない数のサプレッサー細胞、特に1:10の応答刺激細胞比で行い、コントロールMLRにおける約50%の抑制をもたらした。これらの条件下でさえ、最小効果が認められた(図13D)。
【0137】
これらの研究は、成人血液と比較した場合に、臍帯血がTreg単離および培養のための改善された供給源であることを示す。強力な抑制性細胞系は実質的にあらゆるドナーから単離され、そしてこれらの結果は容易な直接MACSに基づく精製で得られた。臍帯血Treg細胞系上の抗原発現のフローサイトメトリープロフィールは、驚くほど均一であった。サプレッサー細胞表現型および機能をさらに特性化するためにこの系を用いた。
【0138】
本明細書に引用するありとあらゆる特許、特許出願および公開の開示は、それらの全部が本明細書に引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0139】
本発明は特定の態様に関連して開示されているが、本発明の真の精神および範囲からそれることなしに当業者によって本発明の他の態様およびバリエーションが考案され得ることは明らかである。添付の請求項は、全てのそのような態様および同等なバリエーションを包含すると解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1A〜1Dを含んでなり、CD45RAおよびCD45RO発現ならびにCD45RAおよびCD45RO細胞の最適な精製のFACS分析を示す一連の画像である。
【図2】CD45RA細胞が最高レベルでさえCD25を発現しないこと、およびCD25 bright細胞がCD45RAを検出可能に発現しないことを示す画像である。
【図3】図3Aおよび3Bを含んでなり、混合リンパ球反応により測定した場合のCD45RA細胞における強力なサプレッサー活性を示す一連の画像である。
【図4】図4A〜4Dを含んでなり、CD45RA細胞がCTLA−4陰性(図4A)およびHLA−DR(図4B)であることを示す一連の画像である。CD25 bright細胞はHLA−DRであり(図4C)、そしてそれらは細胞内CTLA−4について二重染色し、従って、2つの異なる細胞サブセットを表す。
【図5】CD45RA細胞(RA+)、HLA−DR細胞(DR+)および二重陰性細胞(DN)のサプレッサー活性を示すグラフである。最も強力なサプレッサー活性はCD45RA細胞において、中程度の効能は二重陰性細胞において、そして最も少ない効能はHLA−DR細胞において明らかである。
【図6】図6A〜6Dを含んでなり、CD4CD25臍帯血細胞が異なった集団であることを示す一連の画像である。図6は末梢血単核細胞(PBMC)、臍帯血単核細胞(CBMC)および両方の供給源からの精製されたCD4CD25細胞の代表的なFACSプロットを含んでなる。図6は、10人のドナーおよび10回の細胞精製実験を代表する。図6Aは、CD25細胞からのCD25細胞の十分に開いた分離を有する臍帯血におけるCD4およびCD25細胞の異なった集団を示す。図6Bは、CD4CD25細胞がPBMCの1〜2%を構成すること、およびこれらの細胞の多数がCD25−dim(矢印)であることを示す画像である。図6Cは、直接抗CD25マイクロビーズにより臍帯血から精製されたCD25細胞がより純粋な集団であることを示す画像である。図6Dは、直接抗CD25マイクロビーズにより成人血液から精製されたCD25細胞を示す画像である。
【図7】臍帯血CD25細胞がCD45RAであることを示し、そして精製されたCD25臍帯血細胞が主にCD45RAであることを示す画像である。
【図8】図8A〜8Dを含んでなり、培養した臍帯血由来のCD4CD25細胞が、増殖抑制により測定した場合に混合リンパ球反応(MLR)を著しく抑制することを示す一連の画像である。図8Aは、1週のMLRにわたる増殖の反応速度曲線を示すグラフである。臍帯血由来の細胞はMLRを本質的に阻止し(●)、MACSにより直接選択された成人細胞系は弱いサプレッサー機能を有し(□)、そしてストリンジェントに選択された成人細胞(CD25++lineage)は中程度の効能を有する(■)。CD25細胞は抑制性ではない()。図8Aは10回の実験を代表する。図8Bは、直接MACS成人細胞系(□)もしくはストリンジェントに精製された成人系(CD25++lineage)(■)に対して、臍帯血由来(●)のMLRの6日目での抑制の一貫性を示す散布図である。図8Cは、強力な抑制に必要とされる最小数を決定するためにMLR反応に加える培養したTreg細胞の段階的な数を示すグラフである。ストリンジェントに精製された成人系(pCD25++lin)(△)の選択された強力なサブセットの1:16に対して、臍帯血由来のサプレッサー細胞系(●)を用いる場合に1:32の希釈(おおよそ1,560のサプレッサー/50,000の反応細胞)までMLRを著しく減じた。2つの系は各々、6つの成人および臍帯血由来のサプレッサー細胞系を代表して示される。図8Dは、リポ多糖(LPS)もしくはTNF/ポリICの組み合わせによる、MLRの前の樹状細胞(DC)の成熟を示すグラフである。MLRにこれらの刺激因子を含むことは、抑制を回避することができない。図8Dは、3回の実験を代表する。
【図9】図9A〜9Bを含んでなり、培養したCD4CD25細胞が、サイトカインレベルの評価により分析した場合に、MLRにおけるサイトカイン蓄積を顕著に抑制することを示す一連の画像である。図9Aは、活性化T細胞により生産されるサイトカイン、特にIL−2、IFN−ガンマ、GM−CSF、TNF−アルファ、IL−5およびIL−10の蓄積の機能障害が認められることを示すグラフである。TGF−ベータ1蓄積の改変は検出可能でない。図9Aは、2日目のIL−2レベルおよび6日目の他のサイトカインを示す(コントロールMLR培養物における蓄積のピークのそれぞれの時間)。図9Bは、Rantes、IL−8およびMIP−1aの早い時間点(2日)でのケモカインレベルの最小の改変、および遅い時間点(7日)でのレベルの適度の減少を示すグラフである。図9は、4回のMLR実験を代表する。
【図10】図10Aおよび10Bを含んでなり、3〜4週の培養増殖後のCD25、CD25およびCD25由来の細胞系のフローサイトメトリー比較の代表的プロットを示す画像である。図10Aは、CD25および細胞内CTLA4発現が臍帯血T細胞上で高いままであり、成人由来のT細胞では発現がより低く、そしてCD25由来の細胞系では発現がベースラインに大体戻ることを示す画像である。図10Bは、CD62LおよびCD27発現が臍帯血T細胞系上で、また成人系のサブセット上でも均一に高いままであり、そしてCD25由来の細胞系上で減少することを示す画像である。図10は、4週の培養で分析した、各々10の細胞系を代表する。
【図11】図11Aおよび11Bを含んでなり、FoxP3 mRNAおよびタンパク質発現を示す画像である。図11Aは、リアルタイムPCR分析により評価したFoxP3 mRNAのレベルを示すグラフである。サンプルは、示されるように、新鮮単離細胞(fresh CD25)、4週の培養後の細胞系(CxCD25)および抗CD3/CD28ビーズでの再刺激後24時間の4週培養した細胞系(Restim CD25)である。データは、新鮮単離CD8T細胞(CD8)に存在するmRNAレベルへの比較倍数としてプロットする。図11Bは、4週間培養しそして抗CD3/CD28ビーズで示される時間にわたって再刺激した細胞におけるFoxP3タンパク質発現のウェスタンブロット分析の一連の画像である。ヒストンH3は、核タンパク質のローディングコントロールとして使用した。図11は、4回の独立した実験を代表する。
【図12】図12A〜12Dを含んでなり、サプレッサー系の再刺激後48時間のサイトカイン生産欠損および細胞表面LAP発現を示す一連の画像である。図12Aは、抗CD3/CD28ビーズで再活性化した細胞系を示すグラフである。図12Bは、PMA/イオノマイシンで再活性化したCD25およびCD25細胞を示すグラフである。図12Cは、CD69、OX40(CD134)およびGITRの発現が損なわれていないことを示す画像である。図12Dは、細胞表面LAP発現がCD25由来の細胞系に特異的であることを示す画像である。休止細胞系は、再刺激の前にこれらの活性化抗原について陰性であった。
【図13】図13A〜13Dを含んでなり、CD4T細胞−DC MLRの抑制への機能的効果についての複数の中和抗体および融合タンパク質のスクリーニングを示す一連の画像である。図13Aは、免疫抑制因子IL−10およびTGFベータに対する抗体、ならびに抗IL10R、もしくは3つ全ての組み合わせが、培養したTreg細胞系により媒介される抑制を取り消すことができないことを示すグラフである。図13Bは、負のシグナル伝達分子、CTLA4およびPD1に対する抗体が抑制を取り消さないことを示すグラフである。図13Cは、GITRもしくはGITR−Lに対する抗体からの抑制の欠如を示す画像である。OX40に対するアゴニスト抗体は抑制を部分的に取り消し、一方、OX40Lに対する抗体は抑制を部分的に増大する。図13Dは、複数のTGF−ベータ中和抗体および可溶性受容体がサプレッサー細胞エフェクター機能を妨げないことを示すグラフである。図13A〜Cは6回の独立した実験を代表し、図13Dは3回の独立した実験を代表する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞をTreg細胞と接触させることを含んでなるT細胞の増殖の抑制方法であって、該Treg細胞が、
表現型的にCD45RAの血液細胞の集団から調節性T細胞(Treg細胞)を単離し、該細胞を培養活性化してTreg細胞の集団を生成せしめ、ここで、該Treg細胞は混合リンパ球反応においてT細胞増殖を95%より多いファクターだけ抑制する方法であって、
a)ヒト臍帯血サンプルから単核細胞の集団を単離すること;
b)単核細胞の該集団を単核細胞−抗体複合体の形成に適する条件下でCD25に特異的に結合する抗体と接触させること;
c)単核細胞の該集団から該単核細胞−抗体複合体を実質的に分離し;それによりCD25細胞の集団を単離すること;
d)該単離されたCD25細胞の集団を抗CD3/CD28抗体被覆ビーズおよびIL−2の存在下で少なくとも3週間増殖および活性化させること;
e)該増殖されたCD25細胞の集団をIL−2の存在下で維持すること;
f)該活性化されたCD25細胞の集団を実質的に分離し;それによってCD25、細胞内CTLA4、CD27およびCD62Lを均一に発現するTreg細胞を生成せしめること
を含んでなる方法により単離されるTreg細胞である
T細胞の増殖の抑制方法。
【請求項2】
該T細胞がCD4 T細胞である請求項1の方法。
【請求項3】
該T細胞がCD8 T細胞である請求項1の方法。
【請求項4】
表現型的にCD45RAの血液細胞の集団から調節性T細胞(Treg細胞)を単離し、該細胞を培養活性化してTreg細胞の集団を生成せしめ、ここで、該Treg細胞は混合リンパ球反応においてT細胞増殖を95%より多いファクターだけ抑制する方法であって、
a)ヒト臍帯血サンプルから単核細胞の集団を単離すること;
b)単核細胞の該集団を単核細胞−抗体複合体の形成に適する条件下でCD25に特異的に結合する抗体と接触させること;
c)単核細胞の該集団から該単核細胞−抗体複合体を実質的に分離し;それによりCD25細胞の集団を単離すること;
d)該単離されたCD25細胞の集団を抗CD3/CD28抗体被覆ビーズおよびIL−2の存在下で少なくとも3週間増殖および活性化させること;
e)該増殖されたCD25細胞の集団をIL−2の存在下で維持すること;
f)該活性化されたCD25細胞の集団を実質的に分離し;それによってCD25、細胞内CTLA4、CD27およびCD62Lを均一に発現するTreg細胞を生成せしめること
を含んでなる方法により単離されるTreg細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【公開番号】特開2012−105664(P2012−105664A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32674(P2012−32674)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【分割の表示】特願2007−532439(P2007−532439)の分割
【原出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(502409813)ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア (37)
【Fターム(参考)】