説明

自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置

【課題】作業者によるねじ締め作業の操作性を向上させた自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置を得る。
【解決手段】ねじ部品3を保持するチャックユニット10を固定した内筒40と、これに沿い移動自在な外筒30とからなる自動ねじ締め機において、内筒40に外筒30が軸方向に移動するときドグ51を操作する操作部41を形成し、外筒30に作業サイクル毎に供給指令信号を出力する切り替えスイッチ手段を設け、外筒30が前進したときは供給停止状態で、外筒30が後退したときはこれが切り替わってねじ部品3を供給する構成とし、しかも、切り替えスイッチ手段を外筒30に内蔵しているので、作業者の手がスイッチケースに触れることがなく、作業者の操作性が向上する。また、スイッチケースが突出していないので、自動ねじ締め機がふらつくことなく、安定したねじ込み作業が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ、ボルト等のねじ部品を部品供給機から作業サイクル毎に圧空気で圧送し、これをねじ締め機の先端に取り付けられているチャックユニットに保持してドライバをワークに押し付けることでねじ部品をチャックユニットから押し出しながらねじ込む自動ねじ締め機において、作業サイクル毎に部品供給機からねじ部品を圧送する供給指令信号を出力するようにしたねじ部品供給操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ねじ、ボルト等のねじ部品をワークに作業者がねじ込む場合、ドライバビットの先端にねじの頭部十字穴を合致係合させてからドライバビットを回転させるためのモータ作動レバーを操作してねじ込んでいるか、繰り返しねじ込み作業を連続して行う場合は、ねじ部品を部品供給機から作業サイクル毎に圧空気で圧送して自動ねじ締め機の先端に取り付けられているチャックユニットのチャック爪に保持するようにしてねじ込むようになっているのが一般的である。このチャック爪はチャックユニットを構成するチャック本体にその先端が弾力付勢されて相対向して閉塞するように軸支されており、これにより、圧送供給されてきたねじ部品を保持する構成となっている。
【0003】
このような自動ねじ締め機は、図8に示すような構成であり、部品供給機(図示せず)から作業サイクル毎に圧送供給されてくるねじ部品103を内筒140の先端に一体固定されているチャックユニット110のチャック爪111で脚部を先にして保持し、この状態でワークのねじ込み位置に押し付けると同時に内蔵されているドライバビット120に回転を与えてねじ部品103をねじ込むようになっている。このドライバビット120はモータ作動レバー(図示せず)を作業者が握ることで駆動源(図示せず)がON状態となって回転するようになっており、前記チャックユニット110と一体の内筒140に対して相対移動する外筒130が前進することで、チャックユニット110内のねじ部品103の頭部にドライバビット120の先端が係合し、この回転がねじ部品103に伝達されている。
【0004】
一方、この内筒140に対して外筒130の前進あるいは後退動作により前記チャックユニット110には部品供給機からねじ部品103が一個宛作業サイクル毎に圧送供給されるようになっている。この動作は外筒130が後退し、チャックユニット110に設けられてねじ部品103が供給されるホース金具113の延長穴とドライバビット120が貫挿されているガイド穴114とが交叉するY字部(a)からドライバビット120の先端が後退した後、ねじ部品103がチャック爪111まで供給されるタイミングとなっている。このようにして次のねじ部品が供給されてチャック爪がねじ部品を保持すると、ねじ込み開始の待機状態となる。また、このねじ部品供給は外筒に設けたドグ151により前記内筒140に対して外筒130が後退したときにリミットスイッチ150が切り替わることで行われるようになっている。
【特許文献1】実開平03−100078号公報
【特許文献1】実開平05−044468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら作業者がねじ込み作業の都度、ワークのねじ込み位置にこのような自動ねじ締め機を位置させながらねじ込み作業を行う場合、ねじ部品は作業サイクル毎に自動供給されているが、ねじ部品供給状態に切り替えるための信号を出力するリミットスイッチは作業者が把持する外筒の周囲にスイッチケースで覆われて外筒から突出した状態で取り付けられていることから作業者の手がこのスイッチケースに触れて作業者の操作性に支障を来していた。また、このスイッチケースに触れない位置でこの自動ねじ締め機を把持しようとすると、スイッチケースの位置より上を把持しなければならず、作業者によってはねじ込み作業中に自動ねじ締め機がふらつき安定したねじ込み作業が得られにくい。更に、前記スイッチケースの外筒への固定は溶接により行われており、しかも、ケース内のリミットスイッチにはこれからの信号を外部に引き出すための信号線がハンダ付けされており、これらの組立や調整に多くの工数が必要になっている。その上、これらの信号線も露出していることから自動ねじ締め機の操作性の邪魔になったり、外観に悪影響を与えている等の課題がある。
【0006】
本発明の目的は、このような課題を解消するとともに作業者によるねじ締め作業の操作性を向上させた自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、脚部5を先にして作業サイクル毎に圧送供給されるねじ部品3を保持するチャックユニット10を先端に固定した内筒40と、この内筒40に対して回転且つ軸方向に移動自在となっているとともに前記チャックユニット10に保持されたねじ部品3の頭部4に係合してワークにねじ部品3をねじ込むドライバビット20と、このドライバビット20を回転駆動する駆動源を後部に有し、前記内筒40に沿い軸方向に移動自在な外筒30とからなる自動ねじ締め機において、内筒40の外周軸方向に外筒30がこれの軸方向に移動するとき外筒30に取り付けたドグ51を操作する操作部41を形成し、前記外筒30にドグ51により作業サイクル毎に供給指令信号を出力する切り替えスイッチ手段を設け、内筒40に対して外筒30が相対移動して前進したときは供給停止状態で、内筒40に対して外筒30が後退したときはこれが切り替わって供給状態となってねじ部品3をチャックユニット10に供給する構成とし、しかも、この切り替えスイッチ手段を外筒30に内蔵した自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置を提供することで達成される。
【0008】
また、この目的は、前記構成に加えて、切り替えスイッチ手段はドグにより供給停止状態から供給状態への切り替え信号を出力するプランジャ内蔵型スイッチ(50)であって、外筒30の外周軸方向に沿い延設されている収納溝32に位置調整自在に内蔵固定されているとともにこの収納溝32の外側はカバープレート33で覆われている構成とした自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置を提供することによっても達成され、特に、外観の突出部が解消される。更に、これら構成に加えて、外筒はその全長に渡って軸線を横断する断面外周輪郭が一様な略卵形状となった構成とした自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置を提供することでも達成され、作業者は手でこれを把持しやすい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者がねじ込み作業の都度、ワークのねじ込み位置に自動ねじ締め機を位置させながらねじ込み作業を行う場合、ねじ部品を作業サイクル毎に供給するよう切り替える信号を出力する切り替えスイッチ手段は作業者が把持する外筒に内蔵されているので、従来のように作業者の手がスイッチケースに触れることがなく、作業者の操作性が向上する。また、従来のようにスイッチケースが外筒から突出していないので、作業者が外筒のどの位置でもドライバを把持することができるからねじ込み作業中に自動ねじ締め機がふらつくことなく、常時安定したねじ込み作業が得られる。更に、外筒内の溝にドグと切り替えスイッチ手段とこれに接続される信号線とが内蔵され、カバープレートで覆われているので、信号線が邪魔をすることなく自動ねじ締め機の操作性も向上しする。その上、溶接等の工数が不要になり、組立時間の短縮も可能になるとともにその外観も突出個所がなくなっているので美感も向上する。しかも、作業者が把持する外筒は略卵形状であるので、把持したときに手にしっくり馴染むことができるとともに外筒の前後いずれでも把持することができ、作業者の使い勝手も良い等の特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図8に基づき説明する。図1乃至図3において、1は回転駆動源としてのモータ2を内蔵する可搬式の自動ねじ締め機であり、先端には相対向して先端が常時閉塞するよう弾力付勢されたチャック爪11を揺動自在に軸支するチャック本体12が固定されている。このチャック爪11とチャック本体12はチャックユニット10を構成しており、このチャックユニット10には部品供給機(図示せず)から作業サイクル毎に圧送供給されるねじあるいはボルト等のねじ部品3を前記チャック爪11に頭部4を後に、脚部5を先にして案内するホース金具13が設けられている。このホース金具13には前記部品供給機に一端が接続された供給ホース(図示せず)の他端が接続してあり、部品供給機から圧送供給されるねじ部品3はこの供給ホースを介して供給される構成となっている。
【0011】
また、前記チャックユニット10のチャック本体12にはその中心線上にねじ部品3の頭部4に形成されている十字形状の係合溝あるいは四角、六角等の多角形状に係合する先端形状を有するドライバビット20が回転且つ軸方向に移動自在に貫挿されるガイド穴14が形成してあり、このドライバビット20は前記モータ2からの回転が伝達されるように伝達軸21を介して連結されている。そして、前記ホース金具13はこのガイド穴14に一端が常時は侵入し、ドライバビット20がチャック爪11側即ち、先端側に前進すると押し退けられるように弾力付勢された構成となっており、ドライバビット20が後退したとき、このドライバビット20の先端はガイド穴14に侵入しているホース金具13の先端侵入位置より後方に位置するようになっている。
【0012】
更に、チャック本体12は前記モータ2を内蔵するモータカバー22に固定された外筒30を軸方向に移動自在に外挿した内筒40の先端に固定してあり、この内筒40にはドライバビット20がその軸芯線上に内挿されている。また、図4に示すように、この内筒40から外筒30にかけてドライバビット20の周囲には前記チャックユニット20を常時外筒30に対して前方軸方向に弾力付勢する圧縮ばね31が配置されている。この外筒30にはその外周軸方向に沿い、収納溝32が延設してあり、この収納溝32にはプランジャが押し込まれることにより信号を出力する構成のプランジャ内蔵型スイッチ50が位置調整自在に内蔵固定されている。
【0013】
このプランジャ内蔵型スイッチ50は前記内筒40の外周軸方向に形成された操作部41により前記内筒40に対する外筒30の相対移動を受けて操作されるドグ51を介して供給停止状態から供給状態への切り替え信号を出力するようになっており、この操作部41は外筒30が内筒40に対して軸方向に前進移動した状態ではプランジャ内蔵型スイッチ50が供給停止信号を出力した状態で、外筒30が内筒40に対して後退した状態ではプランジャ内蔵型スイッチ50が切り替わって供給状態となるようにその長さが設定されている。このように、内筒40に対する外筒30の相対移動動作により、作業サイクル毎のねじ部品3の供給が操作されるようになっている。一方、ドグ51により供給停止状態から供給状態への切り替え信号を出力するプランジャ内蔵型スイッチ50は作業サイクル毎に供給指令信号を出力する切り替えスイッチ手段を構成しており、この切り替えスイッチ手段は収納溝32に内蔵されて位置調整自在に固定されている。この収納溝32の外側はこの溝32に沿うカバープレート33により覆われており、この収納溝32にはプランジャ内蔵型スイッチ50からの出力信号を部品供給機の部品供給制御部(図示せず)に送る信号線52も内蔵されている。
【0014】
しかも、前記外筒30は図6及び図7に示すように、この可搬式の自動ねじ締め機1を作業者が把持する位置であり、この外筒30はその全長に渡って軸線を横断する断面外周輪郭が一様な形状の握り部を構成しており、この形状において作業者の手の平側に接する部分は大きな半円形状の支え部34となっている。そして、作業者の指が接する部分はその幅が手の平側よりも狭くなった狭幅部35となっており、この狭幅部35と支え部34との間は略直線で結ばれた形状即ち、断面外周輪郭が略卵形状となっている。その上、指が接する側である狭幅部35には前記カバープレート33で軸方向が覆われた前記収納溝32が形成してあり、その位置にはドライバビット20を回転駆動するモータ2をオン・オフ操作するモータ作動レバー6が配置されている。これにより、作業者はこの外筒30での把持が容易になり、安定した状態でねじ締め作業を行うことが可能になる。
【0015】
このような構成において、図1及び図2に示すような自動ねじ締め機1にねじ部品3がチャック爪11に脚部5を先にして保持された状態で、図7に示すように作業者が手で把持してワーク(図示せず)のねじ込み位置にあらかじめあけられている下孔(図示せず)に運び、このねじ締め機1を押し当てながらモータ作動レバー6を握る。これにより、図5に示すように、圧縮ばね31に抗して内筒40に対して外筒30とドライバビット20はともに前方へ移動し、ドライバビット20によりホース金具13の先端はガイド穴14から押し出される。そして、モータ2は回転しているので、チャック爪11に保持されているねじ部品3をチャック爪11から押し出しながらドライバビット20によりワークの下孔にねじ込む。一方、切り替えスイッチ手段のドグ51の先端は内筒40に形成されている操作部41から内筒40の外周に乗り上げてドグ51は時計方向に回転した状態となり、切り替えスイッチ手段は供給停止状態のままとなっているので、次のねじ部品3は部品供給機から圧送供給されない。
【0016】
この後、所定のねじ込みトルクに達すると、ドライバビット20は回転を停止する。続いて、自動ねじ締め機1を作業者がワークから離すと、圧縮ばね31により内筒40に対して外筒30は図4に示すように、所定量だけ後退して元の待機状態に復帰することになり、外筒30が内筒40の後方位置に達して切り替えスイッチ手段のドグ51が操作部41に作用されて反時計方向に動く。このとき、ドライバビット20は後方に後退し、ホース金具13はガイド穴14内に先端が復帰し、ねじ部品3の圧送供給が可能な状態となっており、前記ドグ51によりプランジャ内蔵型スイッチ50が切り替わり、ねじ部品3は部品供給機から供給ホースを介して圧送供給される。
【0017】
これにより、この供給されたねじ部品3は再びホース金具13からガイド穴14を通過してチャック爪11に脚部5を先にして保持される。この後、作業者が再びワークの次の下孔位置にねじ締め機1を運び、これを押し当てながらモータ作動レバー6を握ることでこのねじ部品3のねじ込みが行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部断面正面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す外観斜視図である。
【図3】図1の右側面図である。
【図4】本発明のねじ締め待機状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明のねじ締め作業状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】図1のA−A線拡大断面図である。
【図7】自動ねじ締め機の把持状態を示す拡大正面図である。
【図8】従来例を示す要部断面正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 自動ねじ締め機
2 モータ
3 ねじ部品
4 頭部
5 脚部
6 モータ作動レバー
10 チャックユニット
11 チャック爪
12 チャック本体
13 ホース金具
14 ガイド穴
20 ドライバビット
21 伝達軸
22 モータカバー
30 外筒
31 圧縮ばね
32 収納溝
33 カバープレート
34 支え部
35 狭幅部
40 内筒
41 操作部
50 プランジャ内蔵型スイッチ
51 ドグ
52 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部(5)を先にして作業サイクル毎に圧送供給されるねじ部品(3)を保持するチャックユニット(10)を先端に固定した内筒(40)と、この内筒に対して回転且つ軸方向に移動自在となっているとともに前記チャックユニットに保持されたねじ部品の頭部(4)に係合してワークにねじ部品をねじ込むドライバビット(20)と、このドライバビットを回転駆動する駆動源を後部に有し、前記内筒に沿い軸方向に移動自在な外筒(30)とからなる自動ねじ締め機において、
内筒の外周軸方向に外筒がこれの軸方向に移動するとき外筒に取り付けたドグ(51)を操作する操作部(41)を形成し、前記外筒にドグにより作業サイクル毎に供給指令信号を出力する切り替えスイッチ手段を設け、内筒に対して外筒が相対移動して前進したときは供給停止状態で、内筒に対して外筒が後退したときはこれが切り替わって供給状態となってねじ部品をチャックユニットに供給する構成とし、しかも、この切り替えスイッチ手段を外筒に内蔵したことを特徴とする自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置。
【請求項2】
切り替えスイッチ手段はドグにより供給停止状態から供給状態への切り替え信号を出力するプランジャ内蔵型スイッチ(50)であって、外筒の外周軸方向に沿い延設されている収納溝(32)に位置調整自在に内蔵固定されているとともにこの収納溝の外側はカバープレート(33)で覆われていることを特徴とする請求項1記載の自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置。
【請求項3】
外筒はその全長に渡って軸線を横断する断面外周輪郭が一様な略卵形状となっていることを特徴とする請求項1又は2記載の自動ねじ締め機のねじ部品供給操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−105139(P2010−105139A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282388(P2008−282388)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】