説明

自動ドア開閉装置

【目的】 低出力の駆動手段によっても、重量の大きなドアを迅速に開かせることができるようにする。
【構成】 ドア10が閉じている状態から、駆動手段13と補助駆動手段16とをほぼ同時に作動させると、ドア10はその両方の駆動力により、迅速に移動を開始し、短時間で所望の移動速度まで達することができ、それ以後は、補助駆動手段16の作動を停止して、駆動手段13のみの駆動力によっても、ドア10の移動を持続させることができる。したがって、駆動手段13として、低出力のものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、駆動手段によりドアを自動的に開閉させるようにした自動ドア開閉装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の装置として、例えば、天井に固着したレールに、ドアを走行自在に吊支し、レールとドアとの間に設けたリニアモータにより、ドアをレールに沿って移動させて開閉するようにした引戸式のものがある。また、ドアの一側部を支柱に蝶番をもって枢着し、モータ等の駆動手段によりドアを回動させて開閉するようにしたものもある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のような従来のいずれの型式の自動ドア開閉装置においても、ドアが停止している状態から、ある一定速度で移動を始めるまでの間は、モータ等の駆動手段にドアの重量に比例した大きな慣性が作用するので、ドアを迅速に開閉させたい場合は、駆動力の大きな駆動手段を用いなければならず、装置全体が大型化したり高価となる等の問題点がある。
【0004】特に、駆動手段として、リニアモータを用いる場合は、ドアの開扉初期の迅速性に欠けるという傾向がある。本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、低出力の駆動手段によっても、重量の大きなドアを迅速に開かせることができるようにした自動ドア開閉装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、駆動手段によりドアを自動的に開閉させるようにした自動ドア開閉装置において、ドアの開扉初期に、ドアを開く方向に押動する補助駆動手段をドアと固定部との間に設けたことを特徴としている。
【0006】補助駆動手段は、ドアと固定体とのいずれか一方に他方に向かって進退自在に設けられ、かつ進出することにより、ドアを開く方向に押動する押圧杆と、押圧杆を進出する方向に付勢するばねと、押圧杆と一体的に設けられた押圧杆の進退方向を向くラックと、ラックと噛合するピニオンと、ピニオン駆動用の減速比の大きい減速モータと、減速モータの出力軸と前記ピニオンとを連結したり、切り離したりするクラッチとを備えるものとするのがよい。
【0007】
【作用】ドアが閉じている状態から、駆動手段と補助駆動手段とをほぼ同時に作動させると、ドアはその両方の駆動力により、迅速に移動を開始し、短時間で所望の移動速度まで達することができ、それ以後は、補助駆動手段の作動を停止して、駆動手段のみの駆動力によっても、ドアの移動を持続させることができる。したがって、駆動手段として、低出力のものを用いることができる。
【0008】
【実施例】図面は本発明の一実施例を示すもので、図2において、(1)は部屋の天井、(2)は床、(3)は壁、(4)は部屋の出入口、(5)は戸当たり支柱、(6)は両支柱(5)の上端間に架設した吊支杆、(7)は両支柱(5)間の上部の前後両面を覆う欄間パネル、(8)は戸袋である。
【0009】吊支杆(6)の下面には、それとほぼ等長のレール(9)が固着されており、レール(9)には、引戸式のドア(10)の上端に固着した左右1対の軸受(11)に枢着された吊支ローラ(12)が転動自在に嵌合され、吊支ローラ(12)がレール(9)に沿って転動することにより、ドア(10)はレール(9)の長手方向に移動しうるようになっている。
【0010】(13)は駆動手段である公知のリニアモータで、レール(9)に極性を揃えて列設した多数の永久磁石(図示略)と、永久磁石に対向するようにしてドア(10)の上端中央に固着した可動子(14)に配設されたコイル群(図示略)からなり、コイルに一方向又は逆方向に通電することにより、ドア(10)をレール(9)に沿って右方又は左方に移動し、ドア(10)を開閉しうるようになっている。
【0011】(15)は、戸袋(8)の中位部に設けれらた公知のタッチセンサで、これに触れることにより、上述のリニアモータ(13)と、次に説明する補助駆動手段(16)とを作動させるようになっている。
【0012】補助駆動手段(16)は、図2の左方の壁(3)の上部に設けられ、図1に示すような構造を有している。すなわち、壁(3)内に固着した取付金具(17)に、減速比を大とした減速機構(18a)を内蔵した減速モータ(18)が固着され、減速モータ(18)の出力軸(18b)には、電磁クラッチ(クラッチ)(19)を介してピニオン(20)が取り付けられ、ピニオン(20)は左右方向を向くラック(21)に噛合している。
【0013】ラック(21)の右端には、右方を向く押圧杆(22)が連設され、押圧杆(22)はその基部に巻装した圧縮ばね(ばね)(23)により、右方すなわちドア(10)を開く方向に向けて付勢され、左方の支柱(5)を遊通して、前後両欄間パネル(7)内に突入している。
【0014】壁(3)内におけるラック(21)の上方には、ピニオン(20)の回転により側方移動する、ラック(21)の右限と左限をそれぞれ検知する第1リミットスイッチ(24)と第2リミットスイッチ(25)が設けられている。
【0015】上述の補助駆動手段(16)は、常時は、圧縮ばね(23)が圧縮させられた状態で、押圧杆(22)及びラック(21)が左限に位置し、この状態で減速モータ(18)が回転を停止し、かつ電磁クラッチ(19)が減速モータ(18)の出力軸(18b)とピニオン(20)とを結合していることにより、また減速機構(18a)の減速比が大きいことにより、押圧杆(22)及びラック(21)は、圧縮ばね(23)の付勢力に抗して、左限の位置に保持されている。
【0016】このとき、押圧杆(22)の右端は、図2に示すように、出入口(4)を閉じたドア(10)の一部をなす左方の軸受(11)に近接して対向している。
【0017】この状態で、タッチセンサ(15)に手を触れると、リニアモータ(13)と補助駆動手段(16)とが、ほぼ同時に作動させられ、まず補助駆動手だ(16)の電磁クラッチ(19)が「断」状態となって、減速モータ(18)の出力軸(18b)とピニオン(20)との連係が断たれる。
【0018】すると、左限に位置していた押圧杆(22)とラック(21)とが、圧縮ばね(23)の付勢力により、右方に押し出されて、押圧杆(22)の右端で左方の軸受(11)を右方に押動し、リニアモータ(13)により右進しようとするドア(10)を急速に加速する。
【0019】ドア(10)が若干右進して圧縮ばね(23)が延び切ると、加速されたドア(10)は、以後はリニアモータ(13)のみにより右進する。一方、押圧杆(22)及びラック(21)が右限に達すると、第1リミットスイッチ(24)が作動させられ、電磁クラッチ(19)が「続」状態となって、減速モータ(18)の出力軸(18b)とピニオン(20)とが結合されるとともに、減速モータ(18)が作動させられて、ラック(21)及び押圧杆(22)を、圧縮ばね(23)を圧縮しつつ左方に移動させる。
【0020】ラック(21)及び押圧杆(22)が左限の位置に達すると、第2リミットスイッチ(25)が作動させられ、減速モータ(18)の回転が停止させられて、元の状態に復帰し、次の作動に備える。
【0021】リニアモータ(13)の作動により、ドア(10)が全開させられると、そのことを適宜のリミットスイッチ(図示略)が検知して、リニアモータ(13)のコイルに、上述の場合と逆方向の電流が流され、ドア(10)は閉じる方向に移動させられる。
【0022】ドア(10)が全閉させられると、そのことを上記と別の適宜のリミットスイッチ(図示略)が検知して、リニアモータ(13)の作動が停止させられ、元の閉止状態に復帰する。
【0023】なお、補助駆動手段(16)と同様のものを、図2の右方の壁(3)内に左右対称に設け、ドア(10)が全開してから、閉じ始める際に、これを作動させて、ドア(10)の閉作動を助力するようにしてもよい。
【0024】また、補助駆動手段(16)をドア(13)側に設け、押圧杆(22)の先端で、支柱(5)を押すことにより、その反作用でドア(13)を開く方向に押動させてもよい。
【0025】
【発明の効果】本発明によると、駆動手段に最も大きいトルクが要求されるドアの走行開始時に、駆動手段に協力してドアを加速する補助駆動手段を設けたことにより、ドアの開閉が著しく迅速になり、駆動手段として、小型の低出力のものを使用することができる。特に、駆動手段として、初期の駆動トルクの小さいリニアモータを用いる場合に、その効果が大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の補助駆動手段の正面図である。
【図2】本発明の一実施例の一部切欠正面図である。
【符号の説明】
(1)天井 (2)床
(3)壁 (4)出入口
(5)支柱 (6)吊支杆
(7)欄間パネル (8)戸袋
(9)レール (10)ドア
(11)軸受 (12)ローラ
(13)リニアモータ(駆動手段) (14)可動子
(15)タッチセンサ (16)補助駆動手段
(17)取付金具 (18)減速モータ
(18a)減速機構 (18b)出力軸
(19)電磁クラッチ(クラッチ) (20)ピニオン
(21)ラック (22)押圧杆
(23)圧縮ばね(ばね) (24)第1リミットスイッチ
(25)第2リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動手段によりドアを自動的に開閉させるようにした自動ドア開閉装置において、ドアの開扉初期に、ドアを開く方向に押動する補助駆動手段をドアと固定部との間に設けたことを特徴とする自動ドア開閉装置。
【請求項2】 補助駆動手段が、ドアと固定体とのいずれか一方に他方に向かって進退自在に設けられ、かつ進出することにより、ドアを開く方向に押動する押圧杆と、押圧杆を進出する方向に付勢するばねと、押圧杆と一体的に設けられた押圧杆の進退方向を向くラックと、ラックと噛合するピニオンと、ピニオン駆動用の減速比の大きい減速モータと、減速モータの出力軸と前記ピニオンとを連結したり、切り離したりするクラッチとを備えることを特徴とする請求項1記載の自動ドア開閉装置。
【請求項3】 ドアが引戸式ドアであり、かつ駆動手段がリニアモータである請求項1又は2記載の自動ドア開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−332066
【公開日】平成5年(1993)12月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−165495
【出願日】平成4年(1992)6月2日
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)