説明

自動ロック回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、周波数合成位相ロックループを使用する場合に用いられる全てのBiCMOS電圧制御発振器に関する。
【0002】
【従来の技術】電圧制御発振器(以下、VCOと呼ぶ)は、その出力周波数(Fout)が入力制御電圧(Vcnt)の関数となっている装置である。VCOは基準信号を追跡するためにしばしば用いられる。これは、位相ロックループ(以下、PLLと呼ぶ)を用いることによりなされる。位相検出器は、基準信号の周波数(Fref)の位相とVCOの分割周波数(Fvco/N、N=1、2、3、4、…)の位相とを比較する。この位相差によって、VCOの発振周波数が交流になり、VCOの入力部が充電または放電される。位相検出器の2つの入力信号の周波数が所定のエラーマージンの範囲内で等しい時、PLLは基準信号に対して“ロックされた”という。VCOの設計は、PLLの全性能を決定するうえで重要である。入力電圧の小さな変動に対するVCOの安定性は、PLLの安定性およびジッタを決定するうえで重要である。ジッタは、連続する一連のパルスの時間的位置における見かけ変動であると考えられる。
【0003】以下、VCOに特有の性質について述べる。図3(a)に示されているVCOの特性として、簡単に言えば、直流の入力制御電圧Vcntが増加すると、これに応じて出力周波数Foutも上昇すると考えられる。勿論、これとは逆の特性もある。温度および電力供給の変動が、発振周波数の変化を起こす一方(図3(a)においては<−>で示されている)、その特性が最終的に存在する条件により大きな影響を受け、その勾配は製造時の実際のプロセス条件(“bst”、“typ”、および“wst”)となる。“bst”は、結果として最も高い出力速度で得られるプロセス条件(抵抗値、トランジスタのパラメータ値、線材の容量値)を表し、“typ”は平均出力速度で得られる前記条件値を表し、一方、“wst”は最も低い出力速度で得られる前記条件値をあらわす。図3(a)において、一般的な温度および電力供給の条件が想定されている。
【0004】実際必要とされている目標周波数出力範囲を生成する入力電圧範囲(Va、Vb、Vc)は、プロセス条件に大きく依存する。従って、バイアス発生器中を流れる必要な電流範囲(図3(b)に示されているIa、Ib、およびIc)は、あるプロセス条件から他の条件へ急激に変化する。必要とされる電流範囲(Ic)は、最低のプロセス条件において最も広く、最高のプロセス条件では最も狭く(Ia)なる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来、プロセス条件に関係なく、固定された電流範囲(Itrad)は必要な出力周波数Foutを生成するために用いられていた。図3(b)において、大きな電流範囲(Ic)が目標出力時間Tout(target)を生成することを要求されている最低の場合にVCOに同じ電流範囲が与えられるが、反対に、小さな電流範囲(Ia)のみが必要とされる場合は、最高の状態にあるといえる。ここで、この従来の手法を用いて、入力電流における小さな変動が目標出力時間Tout(target)における重要なシフトを生成するので、ジッタを増加し、システムの安定性を低下させてしまう例を示す。
【0006】例えば、以下のごとく設定する。
【0007】(a) Itrad=250μA、Ia=20μA、Ib=40μA、およびIc=90μA。
【0008】(b) 入力電圧を0.8〜3.3ボルトで変化させることにより、120MHz周波数範囲に亘ってVCOが起動する。そして、(c) 入力電圧における50mVの変動で入力電流における(Itrad/50)の変動を生成する。
【0009】入力電流におけるこの5μAの変化は発振周波数において、最良、通常、および最悪の場合のそれぞれのプロセス条件に対して30MHz、15MHz、および6.67MHzの変化を生成する。事実、時間Tout−電流Iの特性の勾配が大きい程、周波数シフトが大きくなる。従って、システムの安定性は、低下し、ジッタが増加する。
【0010】これとは反対に、電流Itradを複数の電流範囲に分割することにより、システムの安定性とジッタを著しく改善することができる。例えば、次の3つの電流範囲がIr1=40μA、Ir2=80μA、およびIr3=160μA、であったとすると、同じ50mVの入力電圧変動は、入力電流においては(40/50)μA、(80/50)μA、(160/50)μAの変化のみを生成する。従って、最良、通常、および最悪の場合のそれぞれのプロセス条件に対して、4.8MHz、4.8MHz、および4.26MHzの周波数シフトが生成される。電流範囲の数値が大きくなる程、周波数シフトが小さくなるので、ジッタがより小さくなる。電流範囲は、プロセス条件、周囲の温度、あるいは電力供給電圧に関係なく、PLLがロックを達成することを確実にするために、明らかにオーバーラップしなければならない。
【0011】この結果、プロセス変動に関係なく低いジッタを得るために、複数の電流範囲を有し、それぞれのプロセスチップに最適の電流範囲を選択することができるVCOが必要となる。手動電流スイッチは、レーザトリミングが非常に高価である以上に、顧客には面倒であり、ピンの数が増加してしまう。このため、最適の電流範囲を持つプロセスチップのそれぞれのタイプを与える自動手段が重要となってくる。また、非常に幅広い動作温度範囲に亘ってロックを維持できることも重要となる。
【0012】本発明は、目標周波数に対してPLLが自動的にロックされることを確実にし、プロセス変動に関係なく低ジッタを示し、非常に幅広い動作温度範囲にわたってこのロックを維持できる自動ロック回路を提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、ほぼ零の電圧温度係数をもつ基準電圧を生成する電圧発生器と、直流入力電圧と接地電圧を切り替えるための2つのスイッチの一方の出力電圧と前記基準電圧とを比較する電圧比較器と、電圧制御発振器の出力とこの出力を受けるプログラマブル分周器内からの内部ノードの出力とからしきい位相値を決定するために使用される高周波信号出力を選択する選択回路であって、前記しきい位相値PLL回路の最大エラー許容値と前記プログラマブル分周器の分周比によって規定される選択回路と、前記高周波信号に応答して、基準周波数信号と前記電圧制御発振器の分周された出力周波数信号との間の位相差を比較するロック検出器であって、前記位相差が前記しきい位相値より小さいとき、該ロック検出器の出力は、前記位相同期ループ回路がロックされたことを示し、前記位相差が前記しきい位相値より大きいとき、前記ロック検出器の出力は前記PLL回路が非同期であることを示す、ロック検出器と、前記基準周波数に応答して、ストローブ点を規定する単一または多数の出力クロック信号を生成するタイマ回路であって、これら出力クロックの1つは前記位相同期ループ回路の必要なロックアップ時間より長いサイクル時間を持つ、タイマ回路と、前記タイマ回路からの前記出力クロック信号と前記基準周波数信号とを使って前記ロック検出器の出力をストローブするストローブ回路であって、該ストローブ回路の出力は現在の周囲の温度でロックが現在の周波数範囲で達成されたか否かを示す、ストローブ回路と、前記電圧比較器の出力と前記ストローブ回路の出力との論理積をとるアンドゲートであって、該アンドゲートの出力値は、前記PLL回路がロックを達成することができたか否かを示し、かつそれは“通常のPLL動作”の下で全ての温度範囲でこのロックを維持できるかを示す、アンドゲートと、前記アンドゲートの出力に応じて前記2つのスイッチのいずれかを任意のある時間でオンにすることを制御するレベルに変換するレベル変換器と、前記アンドゲートの出力を入力制御信号として受け、前記ストローブ回路の出力をクロック信号として受け、2までの唯一出力状態を持つnビットカウンタであって、各唯一の状態は前記電圧制御発振器に含まれるバイアス発生器の唯一の電流範囲を規定し、よって前記位相同期ループ回路の唯一の周波数範囲を規定し、各唯一の状態の値は前記入力制御信号の値によって制御され、該入力制御信号は前記位相同期ループ回路がすべての動作温度範囲におい“ロック”状態を維持できるか否かを示す、nビットカウンタと、前記nビットカウンタの出力に応答して、前記バイアス発生器における電流範囲をセットするバイアススイッチとを含むことを特徴とする自動ロック回路が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について説明する前に、原理及び作用について説明する。ロック検出器は、その名が示すように、しきい値に対する周波数FrefとFvco/Nとの位相差を比較することによって、PLLのロック状態を検出する。検出は、高周波数信号(HFS)により規定される。もし、これら2周波数間の位相差がこのしきい値よりも大きければ、ロック検出器はFLS=“0”を出力する。そうでなければ、FLS=“1”を出力する。ロック検出器の出力は高分解能信号であるので、微細ロック信号(FLS)と呼ばれる。タイマ回路は、ストローブ回路におけるストローブ点を規定する出力クロック信号を発生する。これらクロック信号の1つは、要求されるPLLのロックアップ時間(tlck)よりも長い周期を有する。この同じ信号は、ストローブ回路を作動させる。ひとたび作動すると、ストローブ回路は、時間における多くの点の整数m(m>1)点にて信号FLSをストローブする。
【0015】もし、これらストローブ点全てにおけるFLSの値が“1”ならば、ストローブ回路の出力(CLS)もまた“1”である。CLS=“1”とは、温度TにてPLLが“同期”状態に達したことを示している。もし、これらmストローブ点のいずれか一つの点でFLSの値が“0”ならば、PLLはまだ“非同期”状態、すなわちCLS=“0”であると考えられる。ところが、CLS=“1”は、温度TにてPLLが“同期”状態に達したことを示しているが、全体の動作温度範囲に亘ってPLLがこの状態を維持できるか否かは電圧比較器の出力VCOUTによる。
【0016】電圧比較器は、2つの電圧信号(VcntまたはGND)のいずれか一方を基準電圧Vrefと比較する。基準電圧Vrefは、ほぼゼロの温度係数を有している。一方、PLLは“非同期”状態にある間、電圧比較器はVCOの入力制御電圧VcntをVrefと比較する。もし、所定の温度でVcnt<Vrefであれば、VCOUT=“1”である。そうでない場合は、VCOUT=“0”である。もし、CLS=“1”、かつVCOUT=“1”であれば、全てのロック信号(OLS)は“1”である。OLS=“1”は、PLLが“同期”状態であり、温度に関係なくこの状態を維持できることを示している。もしそうでなければ、OLS=“0”となる。ひとたびOLS=“1”となると、電圧比較器は、基準電圧VrefをGNDと比較する。事実、基準電圧Vrefよりも低いいかなる電圧でも問題はない。
【0017】信号OLSの値は、nビットカウンタの出力状態を制御する。OLS=“0”はnビットカウンタに対してその次の出力状態に変えるように命令するが、OLS=“1”は結局nビットカウンタに対して出力状態を変えないように命令する。nビットカウンタのそれぞれの状態は、バイアス発生器における単一電流範囲を規定するので、VCO内の電流制御発振器における単一周波数範囲も規定される。
【0018】nビットカウンタのそれぞれの出力状態に対するバイアス発生器の単一電流範囲を規定するバイアススイッチを用いることによって、非常に幅広い動作周波数範囲を有するVCOを生成することが可能である。言うまでもなく、これらの周波数範囲は、プロセスあるいは周囲の(温度および電圧の)変動に関係なくロックを保証するためにオーバーラップしなければならない。クロック信号CLKの立上がり端でのnビットカウンタに対する全てのロック信号(OLS)の入力値により、ロックが達成されるまでVCO周波数範囲のフルスペクトラムをスキャンすることが可能である。スイッチ電圧(Vsw)を基準電圧(Vref)と比較することによって、全体の動作温度範囲にわたってロックを維持できないのであれば、周波数範囲の最右端にてPLLがロックしないようにすることが可能である。整数m(m>1)番点にて微細ロック信号(FLS)をストローブすることにより、誤ロックが発生しないようにすることが可能である。
【0019】次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本発明による自動ロック回路を示し、図2は、図1の自動ロック回路を組み込んだ位相ロックループ回路100を示している。図1、図2において、同じ部分には同一番号を付しており、動作説明は図2R>2を参照して行う。
【0020】位相検出器110は、2つの出力信号UPとDNを生成すべく、入力される基準信号の周波数FrefとVCO140の分割周波数Fvco/Nとの間の位相差に応答する。周波数Frefが周波数Fvco/Nよりも高い時は、信号UPは高くなる。そして、基準信号の周波数FrefがVCO140の分割周波数Fvco/Nよりも低い時は、信号DNが高くなる。チャージポンプ回路120は、入力信号UPおよびDNに応じて、差異信号Vcpを発生する。ループフィルタ130は、電圧信号Vcpを濾波し、VCO140の発振周波数を制御するために使用される入力制御電圧Vcntを発生する。
【0021】VCO140は、バイアス発生器142と電流制御発振器144とを含んでいる。プログラマブル分周器150は、出力周波数信号Fvco/Nを生成すべくVCO140の出力周波数信号Fvcoを整数値Nによって分割する。整数値Nは、プログラマブル分周器150への制御入力により設定される。VCO140は、周波数FrefとVCO140の分割周波数Fvco/Nとがエラーマージンの範囲内で整合したときに、同期状態あるいは“ロックされた”状態にあるとされる。反対に、VCO140は、周波数Frefと分割周波数Fvco/Nとが不整合のときには、非同期状態あるいは“ロックされていない”状態にあるとされる。PLL100がロック状態に達するまでに要した時間は、ロックアップタイムtlckと呼ばれる。
【0022】上述された構成要素の全ては、ほとんどの位相ロックループ回路において見受けられる一般的な構成要素である。“通常のPLL動作”は、これらの構成要素のみを伴う。図2に示されているこの他の構成要素の全ては、本発明、即ち、自動ロック回路を構成している。
【0023】本発明による自動ロック回路の基本動作について図4、図5をも参照して説明する。nビットカウンタ250の出力は、初めに、特別な状態(例えば、図4R>4に示す状態1)にセットされる。この単一カウンタ状態は、バイアス発生器142における唯一の電流範囲を規定するので、電流制御発振器144に対する唯一の周波数範囲(FR1と呼ぶ)を規定する。nビットカウンタ250のそれぞれの状態は、VCO140に対する唯一の周波数範囲を規定する。固定時間td>ロックアップタイムtlckの経過後、全てのロック信号OLSの値がチェックされる。もし、OLS=“1”ならば、nビットカウンタ250の出力およびこれによるFvcoの周波数範囲は、依然として同じに維持される(本例では、FR1)。そして、本自動ロック回路は、ロックをチェックすることをやめる(SCFL)。
【0024】もし、これが終わった時OLS=“0”ならば、nビットカウンタ250の出力は、バイアススイッチ260にバイアス発生器142における新しい電流範囲をセットするよう命令する新しい状態(例えば状態2)と、電流制御発振器144に対する新しい周波数範囲(FR2とよぶ)に変化する。このプロセスは、“ロックされた”状態が達成されるまで繰り返される。そして、ロックは、n個の状態の電力に対して可能な2個のうちの1つにおいて発生することを保証される。
【0025】ロックが達成された(即ち、OLS=“1”)後、自動ロック回路は、ロックをチェックすることをやめる(SCFL)。ロックは、温度および供給電力変動に対する信号Vcntのバイアス電圧を調整する“通常のPLL動作”によって維持される。以下、自動ロック回路におけるそれぞれの構成要素について、詳細に説明する。
【0026】ロック検出器160は、入力基準信号の周波数FrefとVCO140の分割周波数信号の周波数Fvco/Nとの位相差と、高周波数信号HFSにより規定されるしきい値とを比較する。もし、周波数FrefとFvco/Nとの位相差がしきい値よりも大きければ、ロック検出器160の出力(FLS)は“0”である。また、周波数FrefとFvco/Nとの位相差がしきい値よりも小さければ、ロック検出器160の出力FLSは“1”である。しきい位相値は、PLLの最大エラー許容値とプログラマブル分周器150の分周比Nにより規定される。例えば、PLL回路が、Fvco=625MHzおよびN=8のとき50psecのジッタ特性を有すると設定する。この場合に、Tref=12.8nsec、かつTvco*N=12.4nsecであった。従って、DELTAT=0.4nsecとなる。これは、最小許容しきい値(DELTATmin)を表している。実際のしきい値は、この最小値よりも大きい値であろう。実際のしきい値がいかなる値をとっても、それは小さい値である。従って、しきい位相値を規定するために、高周波数信号HFSが必要となる。ロック検出器160の出力信号は分解度が高いので、微細ロック信号FLSと呼ばれる。
【0027】本発明の一実施例においては、高周波数信号HFSの立ち上がり端および立ち下がり端がしきい値を規定するために用いられる。上記例においてFvco=625MHzでは、しきい値がDELTAT=0.8nsecであった。それ故、この場合では、PLLはDELTAT<0.8nsecのときに“ロックされた”状態であると考えられ、信号FLS=“1”を出力するであろう。反対に、DELTAT>0.8nsecのときには、“ロックされていない”状態にあると考えられ、信号FLS=“0”を出力するであろう。
【0028】しきい位相値がNの値に依存するので、高周波数信号HFSの周波数は、N依存であることを変える必要がある。従って、セレクタ270は、いくつかの入力信号、即ち周波数Fvco、Fvco/N1、…、Fvco/Nqを必要とする。周波数Fvcoを除いて、これら入力信号全てが、プログラマブル分周器150から取得される。セレクタ270の最上から最下までの入力信号は、下降する順序、即ち、Fvco>Fvco/N1>、…、>Fvco/Nqの周波数を持つ信号を意味している。
【0029】タイマ回路170は、入力基準信号を受信し、互いに異なる周期を持ついくつかのクロック信号、即ち、TM01、TM02、・・・、TM0Pを生成する。信号TM01は最も短い周期を有している一方、信号TM0Pは最も長い周期を有している。信号TM0Pは、PLL100の必要なロックアップ時間よりも長い周期(tcyc)を有している。このクロック信号は、ストローブ回路180を起動させ、ロック検出器160の出力信号FLSをストローブし始めるようストローブ回路180に命令する。従って、信号TM0Pは、第1のストローブ点を規定する。ストローブ回路180の出力はほとんど全ての時間のtcyc(uS〜mSの順序)を変化させることのみ可能であるので、この出力は粗ロック信号CLSと呼ばれる。
【0030】信号CLSを規定するために1つ以上のストローブ点が必要な理由は、実際には“ロックされた”状態に到達できない周波数範囲でPLL100が“ロック”されないようにするためである。
【0031】これを立証するために、以下のように設定した。
【0032】(a) PLL100は、ジッタ50psec未満のときに625MHzでロックされることが必要である。
【0033】(b) VCO140は、Fvco=555.5MHzの周波数範囲の最端(右側)にて機能している。従って、周波数Fvcoは継続して固定される。
【0034】(c) 信号FLSは信号TM0Pにより規定される一点でのみストローブされる。
【0035】(d) N=4。
【0036】図6のケース1およびケース2の場合を検討することで、出力信号CLSの最終値が、ストローブ点を生じることによって純粋に決定されることが証明される。従って、PLLが明らかに“ロックされた”状態にないにも拘らず、CLS=“1”という誤った結果を自動ロック回路が出してしまう可能性がある。このようなエラーが生ずることを防ぐために、信号FLSは少くとも2点でストローブされるべきである。実際には、2つのストローブ点でも、自動ロック回路が絶対に誤った結果を生じないという保証はない。これは、ちょうど2ストローブ点で、CLS=“1”が可能であるからである。従って、2以上のストローブ点を使用し、かつストローブ点の間の時間が異なっていることが好ましい。ただし、明らかに、ストローブ点数が多くなるほど、ストローブ回路が大規模になる。ストローブ点の最適点数は、DELTAT、最大許容ジッタ、およびNの選択値に依存する。
【0037】第1のストローブ点と最後のストローブ点との間の時間は、ストローブ時間と呼ばれる。ストローブ時間(ts)は、以下のアプローチによって決定される。
【0038】(i) PLL100は、ジッタ50psec未満のとき625MHzでロックすることを要求される。
【0039】(ii) 信号TM0Pの立ち上がり端における周波数FrefとFvco/N間の位相差をなくす。
【0040】(iii) PLLの最大エラー許容値がN倍なので、すなわちジッタ特性が、N倍であるので、周波数Fvco/Nは、周波数Frefと異なる。
【0041】(iv) ジッタ特性は50psec、DELTAT=0.8nsec、N=4。
【0042】図7に示す信号FLSは、3つの独立した領域を有している。
【0043】(a) “同期”領域:PLLは、明らかに“同期”状態にある。
【0044】(b) 中間領域:PLLは、“同期”状態か、あるいは“非同期”状態か“区別のつかない”状態にある。
【0045】(c) “非同期”領域:PLLは、明らかに“非同期”状態にある。
【0046】図7におけるtpは、t=0から“非同期”範囲が明らかに始まる時刻までの時間として規定されている。注意すべきことは、tpは、単に正方向のみを表していることである。従って、最小ストローブ時間ts(分)>2*tp出力信号TM01、TM02、・・・、TM0Pは、時間tsにおけるストローブ点を規定する。ストローブ点の数は、タイマ回路170からの出力信号の数と等しくある必要はない。もし、それぞれのストローブ点毎に信号FLSの値が“1”であれば、信号CLSの値は“1”である。そうでなければ、信号CLSの値は“0”である。CLS=“1”は、PLLが、固定温度Tの現在の周波数範囲でロックされることが可能であることを示し、一方、CLS=“0”はロックされることが不可能であることを示す。また、CLS=“1”は、PLL100が、特定の温度Tで現在の動作範囲でロックされることが可能であることを示しているが、動作温度全範囲に亘ってこのロックが維持できるか否かはVCOUTの値による。
【0047】VCOUTは、電圧比較器240の出力信号である。電圧比較器240は、その負入力端子の電圧と正入力端子の電圧とを比較する。正入力端子の電圧は、固定基準電圧Vrefであり、ほぼゼロの温度係数を有している。電圧比較器240の負入力端子の電圧は、GNDあるいは可変の入力制御電圧Vcntに接続されることが可能である。アンドゲート190は、出力信号OLSを生成するべく、2つの信号VCOUTとCLSとの論理積をとる。後者は、信号OLS′を生成するために、レベル変換器220を用いて変換されたレベルである。OLS′=“0”のときは、CMOS補助スイッチ200がオンになり、入力制御電圧Vcntが、電圧比較器240の負入力端子に接続される。OLS′=“1”のとき、CMOS補助スイッチ200がオフ、CMOS補助スイッチ210がオンとなり、電圧比較器240の負入力端子にGNDが接続される。もし、負入力端子の電圧が正入力端子の電圧よりも低ければ、出力信号VCOUTは“1”である。そうでなければ、出力信号VCOUTは“0”である。CLS=“1”、かつVCOUT=“1”であるならば、OLS=“1”である。OLS=“1”とは、PLLが、“通常のPLL動作”下の動作温度全範囲に亘って現在の周波数範囲のロックを維持できることを意味する。そうでなければ、OLS=“0”である。OLS=“0”とは、“通常のPLL動作”下の動作温度全範囲に亘って現在の周波数範囲のロックを維持できないことを意味する。
【0048】ひとたびOLS=“1”になると、“通常のPLL動作”は、入力制御電圧Vcntの値を調整することにより、全ての温度および電力供給電圧変動に亘ってロックを維持する。従ってロックの時は、Vcnt<Vrefである。そして、ロックが達成された後、信号VCOUTが“1”から“0”に変化すること、およびVCO140が作動する周波数範囲が変化することを防ぐために、電圧比較器240の負入力端子に加えられる電圧が,OLS=“1”になった時VcntからGNDに切り換えられる。事実、Vrefよりも低い電圧ならば可能である。
【0049】ストローブ回路180は、OLS=“1”後、すなわちロック後は、実際ロックを検出する必要がないということで、機能しなくなる。図2の点線は、付加的なもので無くても良い。本発明の好ましい実施例においては、ロック後は、ストローブ回路180は機能しない。これは、タイマ回路170の出力信号TM0Pをレベル“0”にセットすることにより達成される。従って、ストローブ回路180は再作動することはなく、信号CLSは値“1”のままである。本発明の自動ロック回路によるロック後は、”通常のPLL動作”が行われる。
【0050】
【0051】
【発明の効果】本発明は、PLLが所望の周波数を自動的にロックすることを保証し、プロセス変動に関係なく極めて低いジッタを示し、このロックを非常に広いプロセス温度範囲に亘って維持することを保証する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態のブロック図を示している。
【図2】図1の回路を組み込んだ位相ロックループを示している。
【図3】従来のVCO特性を示している。
【図4】本発明の動作を説明するためのアルゴリズムを示した図である。
【図5】本発明の動作を説明するために状態概念図であるアルゴリズムを示した図である。
【図6】本発明の動作を説明するための波形図で、たった1つのストローブ点では、信号CLSを規定するためには不十分で、誤ロックが発生するかもしれないことを説明するための図である。
【図7】本発明の動作を説明するための波形図で、最小ストローブ時間を決定するための技術を示している。
【符号の説明】
100 位相同期ループ
190 アンドゲート
200、210 CMOS補助スイッチ
240 電圧比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 PLL回路がプロセス変動に関係なく低ジッタでロックされることを保証し、非常に広い操作温度範囲にわたってこのロックを維持できる自動ロック回路において、ほぼ零の電圧温度係数をもつ基準電圧を生成する電圧発生器と、直流入力電圧と接地電圧を切り替えるための2つのスイッチの一方の出力電圧と前記基準電圧とを比較する電圧比較器と、電圧制御発振器の出力とこの出力を受けるプログラマブル分周器内からの内部ノードの出力とからしきい位相値を決定するために使用される高周波信号出力を選択する選択回路であって、前記しきい位相値PLL回路の最大エラー許容値と前記プログラマブル分周器の分周比によって規定される選択回路と、前記高周波信号に応答して、基準周波数信号と前記電圧制御発振器の分周された出力周波数信号との間の位相差を比較するロック検出器であって、前記位相差が前記しきい位相値より小さいとき、該ロック検出器の出力は、前記位相同期ループ回路がロックされたことを示し、前記位相差が前記しきい位相値より大きいとき、前記ロック検出器の出力は前記PLL回路が非同期であることを示す、ロック検出器と、前記基準周波数に応答して、ストローブ点を規定する単一または多数の出力クロック信号を生成するタイマ回路であって、これら出力クロックの1つは前記位相同期ループ回路の必要なロックアップ時間より長いサイクル時間を持つ、タイマ回路と、前記タイマ回路からの前記出力クロック信号と前記基準周波数信号とを使って前記ロック検出器の出力をストローブするストローブ回路であって、該ストローブ回路の出力は現在の周囲の温度でロックが現在の周波数範囲で達成されたか否かを示す、ストローブ回路と、前記電圧比較器の出力と前記ストローブ回路の出力との論理積をとるアンドゲートであって、該アンドゲートの出力値は、前記PLL回路がロックを達成することができたか否かを示し、かつそれは“通常のPLL動作”の下で全ての温度範囲でこのロックを維持できるかを示す、アンドゲートと、前記アンドゲートの出力に応じて前記2つのスイッチのいずれかを任意のある時間でオンにすることを制御するレベルに変換するレベル変換器と、前記アンドゲートの出力を入力制御信号として受け、前記ストローブ回路の出力をクロック信号として受け、2までの唯一出力状態を持つnビットカウンタであって、各唯一の状態は前記電圧制御発振器に含まれるバイアス発生器の唯一の電流範囲を規定し、よって前記位相同期ループ回路の唯一の周波数範囲を規定し、各唯一の状態の値は前記入力制御信号の値によって制御され、該入力制御信号は前記位相同期ループ回路がすべての動作温度範囲におい“ロック”状態を維持できるか否かを示す、nビットカウンタと、前記nビットカウンタの出力に応答して、前記バイアス発生器における電流範囲をセットするバイアススイッチとを含むことを特徴とする自動ロック回路。
【請求項2】 前記自動ロック回路は、ロックされた後、前記ストローブ回路が無効にされ、そのストローブ回路は再作動しないような請求項1記載の自動ロック回路。
【請求項3】 前記ロック検出回路は、ロックが達成されると以後はロックをチェックするための動作を停止し、“通常のPLL動作”において用いられる位相検出器を用いてロックが維持される請求項1記載の自動ロック回路。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【特許番号】特許第3080146号(P3080146)
【登録日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【発行日】平成12年8月21日(2000.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−223638
【出願日】平成8年8月26日(1996.8.26)
【公開番号】特開平10−70458
【公開日】平成10年3月10日(1998.3.10)
【審査請求日】平成8年8月26日(1996.8.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平3−91320(JP,A)
【文献】特開 平7−303041(JP,A)
【文献】特開 平9−246963(JP,A)
【文献】特開 平3−206726(JP,A)