説明

自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置

【課題】エンドキャップを軸方向移動可能に貫通するボルトの一端部が、スイングアームの後部内にスライド可能に収容されるアジャスタに固定され、エンドキャップの外面に当接、係合可能なナットがボルトの他端部に螺合される自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置において、スイングアームの軽量化および加工コストの低減を図る。
【解決手段】アジャスタ28が、車軸14を挿通せしめるとともにボルト26Aの一端部が溶接される円筒状のカラー31Aと、ボルト26Aを挿通せしめる挿通孔33ならびにカラー31Aを嵌合せしめる嵌合孔34を有してゴムまたは合成樹脂によって形成されるとともにカラー31Aを保持するホルダ32とから成り、該ホルダ32が、スイングアーム13の少なくとも上壁13aおよび下壁13bに摺接するようにして該スイングアーム13内にスライド可能に嵌合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームもしくは該車体フレームに搭載されるエンジン本体に、横断面四角形の筒状に形成されるスイングアームの前部が揺動可能に支承され、前記スイングアームの後端に固着されるエンドキャップを軸方向移動可能に貫通するボルトの一端部が、ドライブチェーンが巻き掛けられる被動スプロケットが固定される後輪の車軸を支持して前記スイングアームの後部内にスライド可能に収容されるアジャスタに固定され、前記エンドキャップの外面に当接、係合可能なナットが前記ボルトの他端部に螺合される自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
後輪の車軸を挿通せしめる円筒状のカラーが、スイングアーム内にスライド可能に嵌合され、スイングアームの後端に固着されるエンドキャップに挿通されるボルトの一端部が前記カラーに固着され、前記エンドキャップに当接、係合するナットが、前記ボルトの前記エンドキャップからの突出部に螺合されるようにした自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置が、特許文献1によって知られている。
【特許文献1】特開平4−365689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1で開示されたものでは、スイングアームの両側壁の内面に、該スイングアーム内での前記カラーの位置を定めるためにカラーの両端部を嵌合せしめる凹部が、スイングアームの長手方向に沿って延びるように設けられており、両側壁の厚みが前記凹部が設けられる分だけ厚肉となって重量増加を招くだけでなく、凹部を形成する加工が必要となるのでコストの増大を招いている。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、スイングアームの軽量化を図るとともに加工コストの低減を図った自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、車体フレームもしくは該車体フレームに搭載されるエンジン本体に、横断面四角形の筒状に形成されるスイングアームの前部が揺動可能に支承され、前記スイングアームの後端に固着されるエンドキャップを軸方向移動可能に貫通するボルトの一端部が、ドライブチェーンが巻き掛けられる被動スプロケットが固定される後輪の車軸を支持して前記スイングアームの後部内にスライド可能に収容されるアジャスタに固定され、前記エンドキャップの外面に当接、係合可能なナットが前記ボルトの前記エンドキャップからの突出部に螺合される自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置において、前記アジャスタが、前記車軸を挿通せしめるとともに前記ボルトの一端部が溶接される円筒状のカラーと、前記ボルトを挿通せしめる挿通孔ならびに前記カラーを嵌合せしめる嵌合孔を有してゴムまたは合成樹脂によって形成されるとともに前記カラーを保持するホルダとから成り、該ホルダが、前記スイングアームの少なくとも上壁および下壁に摺接するようにして該スイングアーム内にスライド可能に嵌合されることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記ホルダが、前記カラーの端部を嵌合せしめる前記嵌合孔をそれぞれ有して前記車軸の軸方向に間隔をあけて相互に平行に配置されるとともに上部および下部が前記スイングアームの上壁および下壁に摺接するように形成される一対の側板部と、それらの側板部の前部間を連結する前クロス部と、前記両側板部の後部間を連結するとともに前記挿通孔が設けられる後クロス部とを一体に有し、前記車軸を挿通せしめる長孔状の窓が、前記スイングアームの長手方向に延びる該スイングアームの両側壁にそれぞれ設けられ、前記ホルダの前記両側板部の外面に、前記窓に臨むようにして目盛りがそれぞれ設けられることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成に加えて、前記カラーが、前記前クロス部の後面および前記後クロス部の前面に当接、係合するようにして前記ホルダに保持されることを特徴とする。
【0008】
さらに請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記カラーに、前記ボルトの一端に設けられる係合部を係合させるための孔状もしくは溝状の係止部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、後輪の車軸が挿通されるカラーが、ゴムまたは合成樹脂から成るホルダに保持されており、そのホルダがスイングアームの少なくとも上壁および下壁に摺接することでスイングアーム内でのカラーの上下位置が定まるので、スイングアーム側に従来のような凹部を設ける必要がなく、その分だけスイングアームの肉厚を薄くして軽量化を図るとともに、スイングアームに凹部等の加工を施すことを不要として加工コストの低減を図ることができる。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、ホルダの両側壁部にカラーの両端部を嵌合してカラーをホルダで保持しつつ前記両側壁部をスイングアームの上壁および下壁に摺接させるようにして、カラーを保持するとともにスイングアーム内でのカラーの上下位置を定めるようにしたホルダの機能を果たしつつ該ホルダの軽量化を図るとともに、両側板部が相互に平行となるように前および後クロス部で両側板部の姿勢を維持することができ、両側板部の外面に設けられる目盛りによる張力調整量を正確に測ることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、前記ホルダの前クロス部の後面および後クロス部の前面に前記カラーを当接、係合させることで、カラーがホルダに組み立てられて成るアジャスタをより強固に組み立てることができる。
【0012】
さらに請求項4記載の発明によれば、ボルトの一端に設けられる係合部を係合させるための孔もしくは溝状の係止部がカラーに設けられるので、ボルトの一端部をカラーに溶接する際に前記係合部をカラーの係止部に係合することにより、溶接作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図6は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は自動二輪車の後部の左側面図、図2はスイングアームの後部の側面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図2の4−4線断面図、図5は図3の5−5線断面図、図6は相互に固着されたボルトおよびカラーとホルダの分解斜視図である。
【0015】
先ず図1において、この自動二輪車の車体フレームFには、エンジンEのエンジン本体11が懸架されており、エンジン本体11よりも後方で車体フレームFに設けられたピボットプレート12に、後輪WRの左側方に配置されるスイングアーム13の前端部が支軸14を介して上下に揺動可能に支承され、該スイングアーム13の後部に前記後輪WRの車軸15が軸支され、車体フレームFおよび前記スイングアーム13間にリヤクッションユニット16が設けられる。
【0016】
前記エンジン本体11には変速機(図示せず)が内蔵されており、前記変速機から出力される動力は無端状のドライブチェーン19を介して後輪WRに伝達される。而して前記変速機の出力軸20は前記スイングアーム13の前端部よりも前方に配置され、該出力軸20に固定された駆動スプロケット21と、前記後輪WRに固定された被動スプロケット22とに前記ドライブチェーン19が巻き掛けられる。しかもドライブチェーン19のうち被動スプロケット22から駆動スプロケット21に戻るようにしてスイングアーム13の上方に配置される部分を覆うチェーンケース23が前記スイングアーム13の上部に取付けられる。
【0017】
図2〜図5を併せて参照して、前記スイングアーム13は、上壁13aと、該上壁13aの下方に配置される下壁13bと、上壁13aおよび下壁13b間を結ぶ左側壁13cおよび右側壁13dとを有して横断面形状を略直角四角形とした筒状に形成される金属製のものであり、このスイングアーム13の後端には、エンドキャップ24が溶接によって固着される。またスイングアーム13の後部には、前記上壁13a、前記下壁13bおよび右側壁13dの外面に当接する略U字状の補強部材25が固着される。
【0018】
前記エンドキャップ24には、ボルト26Aを移動可能に挿通せしめるボルト挿通孔27が設けられており、このボルト挿通孔27を軸方向移動可能に貫通するボルト26Aの一端部が、前記後輪WRの車軸14を支持して前記スイングアーム13の後部内にスライド可能に収容されるアジャスタ28に固定される。またエンドキャップ24の外面に当接、係合可能なナット29が前記ボルト26Aの前記エンドキャップ24からの突出部に螺合され、ナット29の緩みを防止するための止めナット30が前記ナット29をエンドキャップ24との間に挟むようにしてボルト26Aに螺合される。
【0019】
前記アジャスタ28は、前記車軸14を挿通せしめるとともに前記ボルト26Aの一端部が溶接される円筒状のカラー31Aと、前記ボルト26Aを挿通せしめる挿通孔33ならびに前記カラー31Aの両端部を嵌合せしめる左右一対の嵌合孔34,34を有してゴムまたは合成樹脂によって形成されるとともに前記カラー31Aを保持するホルダ32とから成るものであり、前記ホルダ32は、前記スイングアーム13の少なくとも上壁13aおよび下壁13bの内面、この実施例ではスイングアーム13における上壁13a、下壁13b、左側壁13cおよび右側壁13dに摺接するようにしてスイングアーム13にスライド可能に嵌合される。
【0020】
前記ホルダ32は、車軸14の軸方向に間隔をあけて相互に平行に配置される一対の側板部32a,32bと、それらの側板部32a,32bの前部間を連結する前クロス部32cと、前記両側板部32a,32bの後部間を連結する後クロス部32dとを一体に有する。両側板部32a,32bは略菱形となるように形成されており、両側板部32a,32bの外側面はスイングアーム13における左および右側壁13c,13dの内面に摺接し、両側板部32a,32bの上端部および下端部がスイングアーム13の上壁13aおよび下壁13bに摺接することになる。また後クロス部32dには前記ボルト26Aを挿通せしめる前記挿通孔33が設けられる。
【0021】
図6を併せて参照して、前記ボルト26Aの一端には係合部である拡径頭部26Aaが設けられる。また前記カラー31Aは、前記車軸14を貫通させる貫通孔35を有して円筒状に形成される金属製のものであるが、前記貫通孔35の軸線C1は、カラー31Aの中心C2から距離εだけ前方に偏倚した位置に配置される。またカラー31Aには、前記ボルト26Aの前記拡径頭部26Aaを係合させる溝状の係止部36が設けられており、該係止部36は、前記中心C2に関して前記貫通孔35の軸線C1とは反対側に配置されるものであり、前記軸線C1および前記中心C2を結ぶ直線L1と直交する方向で前記拡径頭部26Aaを挿入することを可能とした第1溝部36aと、前記ボルト26Aのうち前記拡径頭部26Aa寄りの部分を前記拡径頭部26Aaと同一方向から挿入せしめることを可能としてカラー31Aの外周に開口する第2溝部36bとで溝状に形成される。而してボルト26Aの拡径頭部26Aaを前記係止部36に係合した状態で前記ボルト26Aの一端部がカラー31Aに溶接される。
【0022】
而してボルト26Aに溶接されたカラー31Aを前記ホルダ32で保持するにあたっては、図6で示すように、ボルト26Aをその他端側から前記ホルダ32の挿通孔33に挿通し、ホルダ32の両側板部32a,32bをそれらの側板部32a,32b間が広がる方向に撓むように外力を加えた状態でカラー31Aを両側板部32a,32b間に挿入し、カラー31Aの両端部を両側板部32a,32bの嵌合孔34,34に嵌合せしめた後に前記両側板部32a,32bへの外力作用を解除すればよい。
【0023】
そうすれば、両側板部32a,32bの嵌合孔34,34にカラー31Aの両端部を嵌合させるとともに、前クロス部32cの後面および後クロス部32dの前面にカラー31Aを当接、係合するようにして、ホルダ32にカラー31Aが保持されることになる。
【0024】
前記スイングアーム13の左側壁13cには、前記車軸14を挿通せしめる長孔状の窓37がスイングアーム13の長手方向に延びるようにして設けられ、前記スイングアーム13の右側壁13dおよび補強部材25には、前記車軸14を挿通せしめる長孔状の窓38がスイングアーム13の長手方向に延びるようにして設けられ、前記ホルダ32における前記両側板部32a,32bの外面には、前記窓37,38に臨むようにして目盛り39,39がそれぞれ設けられる。
【0025】
ところで後輪WRの前記車軸14は、その一端に拡径頭部14aを有するボルトであり、この車軸14は、スイングアーム13における左右両側壁13c,13dの窓37,38ならびに前記スイングアーム13内のアジャスタ28におけるカラー31Aの貫通孔35に、前記スイングアーム13の左側壁13aおよび前記拡径頭部14a間にワッシャ40を介装せしめるようにして挿通される。またスイングアーム13における右側壁13dの窓38には、車軸14の一部を囲繞する円筒状のスリーブ41の一部がその一端をカラー31Aの当接させるようにして挿通される。
【0026】
次にこの第1実施例の作用について説明すると、スイングアーム13の後部内にスライド可能に収容されるアジャスタ28は、後輪WRの車軸14を挿通せしめるとともにボルト26Aの一端部が溶接される円筒状のカラー31Aと、ボルト26Aを挿通せしめる挿通孔33ならびにカラー31Aを嵌合せしめる嵌合孔34,34を有してゴムまたは合成樹脂によって形成されるとともにカラー31Aを保持するホルダ32とから成るものであり、そのホルダ32が、スイングアーム13の少なくとも上壁13aおよび下壁13bの内面、この実施例では上壁13a、下壁13bおよび両側壁13c,13dの内面に摺接するようにして該スイングアーム13内にスライド可能に嵌合されている。
【0027】
したがってホルダ32がスイングアーム13の少なくとも上壁13aおよび下壁13bに摺接することでスイングアーム13内でのカラー31Aの上下位置が定まることになり、スイングアーム13側に従来のような凹部を設ける必要がなく、その分だけスイングアーム13の肉厚を薄くして軽量化を図るとともに、スイングアーム13に凹部等の加工を施すことを不要として加工コストの低減を図ることができる。
【0028】
またホルダ32は、カラー31Aの両端部を嵌合せしめる嵌合孔34,34をそれぞれ有しつつ車軸14の軸方向に間隔をあけて相互に平行に配置されるとともに上部および下部がスイングアーム13の上壁13aおよび下壁13bに摺接するように形成される一対の側板部32a,32bと、それらの側板部32a,32bの前部間を連結する前クロス部32cと、前記両側板部32a,32bの後部間を連結するとともに前記挿通孔33が設けられる後クロス部32dとを一体に有するものであり、車軸14を挿通せしめる長孔状の窓37,38が、スイングアーム13の長手方向に延びるようにしてスイングアーム13の左および右側壁13c,13dにそれぞれ設けられ、前記両側板部32a,32bの外面に前記窓37,38に臨むようにして目盛り39…がそれぞれ設けられるので、カラー31Aを保持するとともにスイングアーム13内でのカラー31Aの上下位置を定めるようにしたホルダ32の機能を果たしつつ該ホルダ32の軽量化を図るとともに、両側板部32a,32bが相互に平行となるように前および後クロス部32c,32dで両側板部32a,32bの姿勢を維持することができ、両側板部32a,32bの外面に設けられる目盛り39…による張力調整量を正確に測ることができる。
【0029】
またカラー31Aが、ホルダ32の前クロス部32cの後面および後クロス部32dの前面に当接、係合するようにしてホルダ32に保持されるので、カラー31Aがホルダ32に組み立てられて成るアジャスタ28をより強固に組み立てることができる。
【0030】
さらにカラー31Aには、ボルト26Aの一端に設けられる拡径頭部26Aaを係合させるための溝状の係止部36が設けられるので、ボルト26Aの一端部をカラー31Aに溶接する際に拡径頭部26Aaをカラー31Aの係止部36に係合することにより、溶接作業が容易となる。
【0031】
図7は本発明の第2実施例のカラーおよびボルトの側面図である。
【0032】
カラー31Bは、前記車軸14を貫通させる貫通孔35を有して円筒状に形成される金属製のものであるが、貫通孔35の軸線C1は、カラー31の中心C2から距離εだけ偏心した前方位置に配置される。またカラー31Bには、前記ボルト26Aの一端の拡径頭部26Aaを係合させる孔状の係止部42が設けられており、この係止部42は、前記貫通孔35の軸線C1および前記中心C2を結ぶ方向に延びて前記貫通孔35を横切るとともに一端をカラー31Bの外周に開口させる大径孔部42aと、該大径孔部42aよりも小径に形成されて大径孔部42aの他端に一端が同軸に連なるとともに他端がカラー31Bの外周に開口される小径孔部42bと、大径孔部42aの他端および小径孔部42bの一端間に形成される環状の係止段部42cとから成るものであり、係止段部42cは、前記カラー31Bの中心C2に関して前記貫通孔35の軸線C1とは反対側に配置されている。
【0033】
しかも大径孔部42aは、ボルト26Aの一端の拡径頭部26aを挿入し得る内径を有し、小径孔部42bは、前記ボルト26Aのうち拡径頭部26aを除く部分を挿通し得る内径を有するものである。
【0034】
而してボルト26Aをその他端側から大径孔部42aおよび小径孔部42bに挿入し、係止段部42cに拡径頭部26Aaを当接、係合することで拡径頭部26Aaがカラー31Bの係止部42に係合されることになる。
【0035】
この第2実施例によっても上記第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【0036】
図8および図9は本発明の第3実施例を示すものであり、図8はカラーおよびボルトの側面図、図9は図8の9−9線断面図である。
【0037】
カラー31Cは、前記車軸14を貫通させる貫通孔35を有して円筒状に形成される金属製のものであるが、貫通孔35の軸線C1は、カラー31Cの中心C2から距離εだけ偏心した前方位置に配置される。またボルト26Bの一端には略直角に屈曲した係合部26Baが設けられ、カラー31Cには、前記ボルト26Bの一端の係合部26Baを係合させる溝状の係止部43が設けられる。この係止部43は、前記中心C2に関して前記貫通孔35の軸線C1とは反対側に配置されるものであり、前記ボルト26Bのうち前記係合部26Baならびに該係合部26Ba寄りの部分を前記軸線C1および前記中心C2を結ぶ直線L1と直交する方向で挿入せしめることを可能としてカラー31Cの外周に開口する溝部43aと、前記係合部26Baを係合せしめるようにして該溝部43aの内端に連なる凹部43bとで形成され、ボルト26Bの係合部26Baを前記係止部43に係合した状態で前記ボルト26Bの一端部がカラー31Cに溶接される。
【0038】
この第3実施例によっても上記第1および第2実施例と同様の効果を奏することができる。
【0039】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0040】
たとえばスイングアーム13の前部が車体フレームFに搭載されるエンジン本体に上下揺動可能に支承されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施例の自動二輪車の後部の左側面図である。
【図2】スイングアームの後部の側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】相互に固着されたボルトおよびカラーとホルダの分解斜視図である。
【図7】第2実施例のカラーおよびボルトの側面図である。
【図8】第3実施例のカラーおよびボルトの側面図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【符号の説明】
【0042】
11・・・エンジン本体
13・・・スイングアーム
13a・・・上壁
13b・・・下壁
14・・・車軸
19・・・ドライブチェーン
22・・・被動スプロケット
24・・・エンドキャップ
26A,26B・・・ボルト
26Aa,26Ba・・・係合部
28・・・アジャスタ
29・・・ナット
31A,31B,31C・・・カラー
32・・・ホルダ
32a,32b・・・側板部
32c・・・前クロス部
32d・・・後クロス部
33・・・挿通孔
34・・・嵌合孔
36,42,43・・・係止部
37,38・・・窓
39・・・目盛り
F・・・車体フレーム
WR・・・後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(F)もしくは該車体フレーム(F)に搭載されるエンジン本体(11)に、横断面四角形の筒状に形成されるスイングアーム(13)の前部が揺動可能に支承され、前記スイングアーム(13)の後端に固着されるエンドキャップ(24)を軸方向移動可能に貫通するボルト(26A,26B)の一端部が、ドライブチェーン(19)が巻き掛けられる被動スプロケット(22)が固定される後輪(WR)の車軸(14)を支持して前記スイングアーム(13)の後部内にスライド可能に収容されるアジャスタ(28)に固定され、前記エンドキャップ(24)の外面に当接、係合可能なナット(29)が前記ボルト(26A,26B)の前記エンドキャップ(24)からの突出部に螺合される自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置において、前記アジャスタ(28)が、前記車軸(14)を挿通せしめるとともに前記ボルト(26A,26B)の一端部が溶接される円筒状のカラー(31A,31B,31C)と、前記ボルト(26A,26B)を挿通せしめる挿通孔(33)ならびに前記カラー(31A〜31C)を嵌合せしめる嵌合孔(34)を有してゴムまたは合成樹脂によって形成されるとともに前記カラー(31A〜31C)を保持するホルダ(32)とから成り、該ホルダ(32)が、前記スイングアーム(13)の少なくとも上壁(13a)および下壁(13b)に摺接するようにして該スイングアーム(13)内にスライド可能に嵌合されることを特徴とする自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置。
【請求項2】
前記ホルダ(32)が、前記カラー(31A〜31C)の端部を嵌合せしめる前記嵌合孔(34)をそれぞれ有して前記車軸(14)の軸方向に間隔をあけて相互に平行に配置されるとともに上部および下部が前記スイングアーム(13)の上壁(12a)および下壁(12b)に摺接するように形成される一対の側板部(32a,32b)と、それらの側板部(32a,32b)の前部間を連結する前クロス部(32c)と、前記両側板部(32a,32b)の後部間を連結するとともに前記挿通孔(23)が設けられる後クロス部(32d)とを一体に有し、前記車軸(14)を挿通せしめる長孔状の窓(37,38)が前記スイングアーム(13)の長手方向に延びて該スイングアーム(13)の両側壁(13a,13b)にそれぞれ設けられ、前記ホルダ(32)の前記両側板部(32a,32b)の外面に、前記窓(37,38)に臨むようにして目盛り(39)がそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置。
【請求項3】
前記カラー(31A〜31C)が、前記前クロス部(32c)の後面および前記後クロス部(32d)の前面に当接、係合するようにして前記ホルダ(32)に保持されることを特徴とする請求項2記載の自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置。
【請求項4】
前記カラー(31A〜31C)に、前記ボルト(26A,26B)の一端に設けられる係合部(26Aa,26Ba)を係合させるための孔状もしくは溝状の係止部(36,42,43)が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動二輪車のドライブチェーン張力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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