説明

自動二輪車用盗難防止機構

【課題】小型化することができる自動二輪車用盗難防止機構を提供する。
【解決手段】自動二輪車1の車輪23を回転自在に支持するアクスル22と、前記アクスル22を保持するフォーク部21と、前記自動二輪車1の側面視において、前記車輪23の空隙部41に合わせて前記フォーク部21に設けられた挿入部52と、前記挿入部52に一端56aから挿入され、前記車輪23の空隙部41を貫通した状態で保持される回転阻止部材56と、前記回転阻止部材56の他端56bに設けられ、当該回転阻止部材56を前記挿入部52に施錠する施錠部59とを備え、前記施錠部59は、前記挿入部52内に収容されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用盗難防止機構に関し、特に車輪を固定する盗難防止機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の自動二輪車用盗難防止機構としては、ロック用アームが保持部内の該ロック用アームの中心軸に実質的に直角な軸の周りに揺動するブッシュに固定され、当該ロック用アームがその中心軸の周りに回転自在に、かつ、軸方向に移動可能に保持された自転車用施錠装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、二輪自動車の固定部に固着されるケーシング内にホイール空間部に対して出入り自在のロック棒と、当該ロック棒をホイール空間部に進入する方向に付勢するばねと、ケーシング内におけるロック棒の収納状態とケーシング外へのロック棒の突出状態においてロック棒に対し係脱自在なストッパーを有する軸と、当該軸の一端に設けられたエンジンキーの差込孔とを備え、エンジンキーの操作により軸を回転させるように構成した二輪自動車の盗難防止装置が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表昭59−500921号公報
【特許文献2】実公平−500921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1,2では、いずれも装置が大型化してしまい施錠箇所が目立ってしまう、という問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、小型化することができる自動二輪車用盗難防止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、車両の車輪を回転自在に支持するアクスルと、前記アクスルを保持するフォーク部と、前記車両の側面視において、前記車輪の空隙部に合わせて前記フォーク部に設けられた挿入部と、前記挿入部に一端から挿入され、前記車輪の空隙部を貫通した状態で保持され前記車輪の回転を阻止する回転阻止部材と、前記回転阻止部材の他端に設けられ、当該回転阻止部材を前記挿入部に施錠する施錠部とを備え、前記施錠部は、前記挿入部内に収容されることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、前記挿入部は、前記フォーク部に形成された貫通穴を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、前記回転阻止部材の一端を保持する当接部が前記フォーク部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、前記回転阻止部材が挿入されていない前記挿入部を閉塞する栓部を備え、前記栓部は、前記自動二輪車を始動させる車両用キーを挿入する保持穴が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1によれば、施錠部が挿入部に収容されるので、全体として小型化することができる。
【0012】
本発明の請求項2によれば、挿入部がアーム部に設けられた貫通穴を有する構成としたことにより、挿入部を設けたことによるアーム部の強度低下を抑えることができる。
【0013】
本発明の請求項3によれば、回転阻止部材の両端を保持する構成としたことにより、回転阻止部材をより確実に保持することができるので、車輪の回転をより確実に阻止することができる。
【0014】
本発明の請求項4によれば、車両用キーと一体化することにより、栓部の紛失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る盗難防止機構を備えた自動二輪車の全体構成を示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る盗難防止機構の全体構成を示す部分断面図である。
【図3】本実施形態に係る回転阻止部材の構成を示す正面図である。
【図4】図3におけるIV-IV部分断面図である。
【図5】本実施形態に係る栓部の構成を示す図であり、(A)正面図、(B)底面図である。
【図6】本実施形態に係る盗難防止機構の使用状態(1)を示す部分断面図である。
【図7】本実施形態に係る盗難防止機構の使用状態(2)を示す部分断面図である。
【図8】本実施形態に係る盗難防止機構の使用状態(3)を示す部分断面図である。
【図9】本実施形態に係る栓部と車両用キーを一体化した正面図である。
【図10】本実施形態に係る盗難防止機構の変形例(1)を示す部分正面図である。
【図11】本実施形態に係る盗難防止機構の変形例(2)を示す部分正面図である。
【図12】本実施形態に係る盗難防止機構の変形例(3)を示す部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(全体構成)
図1に示す自動二輪車1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車用盗難防止機構(以下、「盗難防止機構」という。)50Aを備えており、使用状態において車輪としての後車輪23の回転を阻止し得るように構成されている。
【0018】
自動二輪車1は左右一対のパイプフレームからなるフレームボディ2を備える。フレームボディ2の前部に接合されたヘッドパイプ3によって、図示しないステアリングステムが回転自在に支持される。ステアリングステムの上下部分は、フロントフォーク4のトップブリッジ5とボトムブリッジ6とにそれぞれ連結される。フロントフォーク4は下方に延長され、下端近傍に設けられた前アクスル7によって前車輪8を支持している。
【0019】
トップブリッジ5には、ハンドルパイプ9が連結される。ハンドルパイプ9にはグリップ10およびミラー11が取り付けられている。フロントフォーク4には、ブラケット12が接合され、このブラケット12には、前照灯13、前部方向指示灯14、およびメータ15が取り付けられている。ボトムブリッジ6には、ホーン16が取り付けられている。
【0020】
フレームボディ2には、エンジン17が搭載され、エンジン17の下方には変速機18が、前方にはラジエータ19が設けられている。フレームボディ2のほぼ中央部に設けられたピボット軸20によってフォーク部としてのリアフォーク21が揺動自在に支持される。リアフォーク21の端部にはアクスルとしての後アクスル22によって後車輪23が回転自在に支持されている。
【0021】
後車輪23は、タイヤ37と、ホイール38とで構成されている。ホイール38は、リム39と、リム39とホイール38の中心とを繋ぐ複数のスポーク40とからなり、スポーク40同士の間に空隙部41が形成されている。
【0022】
変速機18の出力軸(図示せず)と後アクスル22との間には駆動チェーン24が掛けられている。フレームボディ2の後部には、リアサスペンション25の上端部が連結され、リアサスペンション25の下端部はリアフォーク21の後端部に連結されている。エンジン17の前部に一端が連通された排気管26は車体後方に延長され、他端においてマフラ27に連通されている。
【0023】
フレームボディ2の上部には、燃料タンクが設けられ、燃料タンク28の後方には、乗員用のシート29が設けられている。フレームボディ2の最後部には、泥よけ30並びにテール/ブレーキライト31および後部方向指示灯32が設けられる。
【0024】
リアフォーク21のピボット軸20の後方には、ブラケット33が接合されており、このブラケット33には、車体幅方向外側に張り出したステップ(乗員の足置き)34が取り付けられている。フレームボディ2の下部には、メインスタンド35およびサイドスタンド36が取り付けられている。
【0025】
図2に示すように、リアフォーク21は、後車輪23を挟んで自動二輪車1の左右にそれぞれ配置されたアーム部51a,51bを有する。一方のアーム部51a、本図では、自動二輪車1の左側のアーム部51aには挿入部52が設けられており、他方のアーム部51b、本図では自動二輪車1の右側のアーム部51bには保持部53が設けられている。
【0026】
挿入部52は、アーム部51aの厚さ方向に貫通する貫通穴54と、貫通穴54内に形成されたキー溝55とを有する。保持部53は、有底の穴で構成されている。このように構成された挿入部52と保持部53の間であって、後車輪23の空隙部41を貫通するように回転阻止部材56が架け渡され、保持されている。
【0027】
図3及び図4に示すように、回転阻止部材56は、円柱状の部材で構成され、一端56aを保持部53に遊挿した状態で、他端56bが挿入部52に収容される。回転阻止部材56の一端56aには、半径方向に突出した第1の突部57が設けられている。回転阻止部材56の他端56bには、第2の突部58と、施錠部59とが設けられている。第2の突部58は、他端56bが挿入部52に収容されたときに、挿入部52に形成された貫通穴54の軸方向に延びる図示しない係合溝に係合する。施錠部59は、開口部62と、当該開口部62の底面に形成された車両用キー(本図には図示しない)を挿入するキー穴60と、車両用キーの回転操作により出入する係止片61とが設けられている。
【0028】
前記挿入部52の開口部62には、回転阻止部材56が挿入されていない間、すなわち自動二輪車1が走行可能な状態におかれている間、図5に示す栓部65が挿入される。
【0029】
栓部65は、筒部66と、当該筒部66の一端に一体に形成された円板部67とで構成されている。筒部66は、他端側に形成された小径部68と、一端側に形成された太径部69とが形成されている。太径部69には、車両用キーを挿入する保持穴70が形成されている。保持穴70は、筒部66を直径方向に貫通する穴で構成される。筒部66の外面には、軸方向に伸びる水抜き溝71が1個形成されている。
【0030】
(作用および効果)
次に、上記のように構成された盗難防止機構50Aの各部の作用および効果について説明する。
【0031】
まず、盗難防止機構50Aを使用する前、すなわち、自動二輪車1が走行可能な状態において、図6に示すように、挿入部52の開口部62には栓部65が取り付けられている。これにより、キー穴60にゴミなどが付着したり詰まるのを防ぐことができる。
【0032】
次いで、自動二輪車1を停止し、ロックする場合について説明する。まず、挿入部52から栓部65を取り外す(図7)。次いで、回転阻止部材56を一端56aから挿入部52に挿入し(図8)、当該一端56aを保持部53に遊挿する。そして、施錠部59のキー穴60に車両用キーを挿入し、回転操作することにより、係止片61をキー溝55に係合させ、施錠する(図2)。この回転操作の際、回転阻止部材56の他端56bに形成された第2の突部58が挿入部52内に設けられた係合溝(図示しない)に係合することにより、回転阻止部材56が車両用キーの回転操作と共に回転するのを防ぐ。
【0033】
このように、本実施形態に係る盗難防止機構50Aは、回転阻止部材56を取り付けた際に、回転阻止部材56の他端56bが挿入部52に収容されるので、全体として小型化することができる。しかも、キー穴60を除いた施錠部59の全体が外部に露出しないので、盗難防止効果を向上することができる。
【0034】
盗難防止機構50Aは、挿入部52を一方のアーム部51aに設けられた貫通穴54で構成したから、挿入部52を設けたことによるアーム部51aの強度低下を抑えることができる。
【0035】
盗難防止機構50Aは、他方のアーム部51bに保持部53を設け、回転阻止部材56の両端56a, 56bを保持する構成としたことにより、回転阻止部材56をより確実に保持することができるので、後車輪23の回転をより確実に阻止することができる。
【0036】
また、挿入部52から取り外した栓部65は、図9に示すように、車両用キー75が保持穴70に挿入され、車両用キー75と一体化される。したがって、車両用キー75と一体化することにより、栓部65の紛失を防止することができる。
【0037】
また、車両用キー75に一体化された栓部65は、自動二輪車1を始動させるためのキーシリンダー(図示しない)に車両用キー75が挿入されることを防止する。このように、車両用キー75に一体化された栓部65は、回転阻止部材56が取り付けられていることをユーザーに気付かせることができる。したがって、車両用キー75に一体化された栓部65は、回転阻止部材56を取り外す前に、誤って自動二輪車1を走行させてしまうことを防止することができる。
【0038】
また、栓部65には筒部66の外面に水抜き溝71が形成されているので、キー穴60内に雨水等が滞留することを防いで、キー穴60内の錆びを防止し得る。
【0039】
さらに、盗難防止機構50Aは、回転阻止部材56の一端56aに第1の突部57が設けられていることにより、回転阻止部材56を取り付けた状態で、ユーザーが誤って自動二輪車1を走行させようとした場合、第1の突部57が保持部53の内周面に触突し、衝撃音を発する。このようにして、生じた衝撃音により、盗難防止機構50Aは、ユーザーに回転阻止部材56を取り付けたままの状態であることを報知することができる。
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0040】
上記実施形態の場合、挿入部52はアーム部51aに設けた貫通穴54を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、図10に示す盗難防止機構50Bは、アーム部81aの下面に突出部85を設け、当該突出部85に挿入部52Bが形成されている。図示しないが、他方のアーム部にも対応する位置に突出部および当接部が形成されている。このように、アーム部81aに貫通穴を設けずに挿入部を形成することとしてもよい。
【0041】
同様に、図11に示す盗難防止機構50Cは、アーム部82aの後端面に突出部86を設け、当該突出部86に挿入部52Cが形成されている。図示しないが、他方のアーム部にも対応する位置に突出部および当接部が形成されている。
【0042】
さらに、図12に示す盗難防止機構50Dは、アーム部83aの上面に突出部87を設け、当該突出部87に挿入部52Dが形成されている。図示しないが、他方のアーム部にも対応する位置に突出部および当接部が形成されている。
【0043】
また、上記実施形態の場合、盗難防止機構50Aはリアフォーク21に設ける場合について説明したが、本発明はこれに限らず、フロントフォーク4をフォーク部として用い、当該フロントフォーク4に設けられ車輪として前車輪8をロックすることとしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態の場合、回転阻止部材56は、円柱状部材で構成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、角柱状の部材や、チェーン、板状部材などで構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 自動二輪車
23 後車輪(車輪)
22 後アクスル(アクスル)
21 リアフォーク(フォーク部)
41 空隙部
50A 盗難防止機構(自動二輪車用盗難防止機構)
52 挿入部
56 回転阻止部材
56a 一端
56b 他端
59 施錠部
54 貫通穴
53 当接部
65 栓部
70 保持穴
75 車両用キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の車輪を回転自在に支持するアクスルと、
前記アクスルを保持するフォーク部と、
前記自動二輪車の側面視において、前記車輪の空隙部に合わせて前記フォーク部に設けられた挿入部と、
前記挿入部に一端から挿入され、前記車輪の空隙部を貫通した状態で保持され前記車輪の回転を阻止する回転阻止部材と、
前記回転阻止部材の他端に設けられ、当該回転阻止部材を前記挿入部に施錠する施錠部と
を備え、
前記施錠部は、前記挿入部内に収容されることを特徴とする自動二輪車用盗難防止機構。
【請求項2】
前記挿入部は、前記フォーク部に形成された貫通穴を有することを特徴とする請求項1記載の自動二輪車用盗難防止機構。
【請求項3】
前記回転阻止部材の一端を保持する当接部が前記フォーク部に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の自動二輪車用盗難防止機構。
【請求項4】
前記回転阻止部材が挿入されていない前記挿入部を閉塞する栓部を備え、前記栓部は、前記自動二輪車を始動させる車両用キーを挿入する保持穴が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動二輪車用盗難防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−206620(P2012−206620A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74118(P2011−74118)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)