説明

自動停止手段を備えた機械式リフト装置の架空ロープ案内装置

【課題】ローラシーブの磨耗許容限界の検出および自動停止手段を備えた機械式リフト装置の架空ロープ案内装置を提供する。
【解決手段】架空ロープを案内するためのローラシーブ10bを備え、その外周に環状溝を画成するシーブ本体と、このシーブ本体の溝内に収容される高い摩擦係数のバンドを有し、バンドの予め定められた摩耗の許容限界を自動的に検出する手段21と、許容限界が検出されたときに駆動モータを自動的に停止させる手段と、を備える。自動的に検出する手段21は、シーブ組立体に対して電気的に絶縁されるとともにシーブ組立体に対し固定手段によって横断方向の位置に接続されて、関連付けられているシーブ10bのバンドが予め定められた摩耗許容限界に到達したときに架空ロープが自動的に接触することになる導電性の要素21によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、駆動モータで作動する駆動滑車組によって架空ロープが駆動される機械式リフト装置の架空ロープ案内装置に関する。架空ロープ案内装置は、ロープを案内するための複数のローラシーブを含んでいる。複数のローラシーブは、ロープの方向と平行なシーブ組立体の長手方向(D1)において支持フレームに沿ってずらして配置された回転軸線を中心として回転可能に支持フレームに取り付けられている。各案内ローラシーブは、
−その外周に環状溝を有しているシーブ本体と、
−このシーブ本体の溝に収容されている高い摩擦係数のバンドと、
を有している。
【0002】
この装置は、少なくとも一つのシーブに関連付けられて、シーブのバンドが予め定められた許容限界まで摩耗したことを自動的に検出する手段と、許容限界が検出されたときに駆動モータを自動的に停止させる手段とを備える。
【技術の状況】
【0003】
チェアリフトあるいはゴンドラ搬機タイプの機械式リフト装置の架空ロープは、その経路上を走行するときに、この架空ロープを支持しつつ案内するローラシーブを有した下側シーブ組立体及び/又はこの架空ロープを押圧しつつ案内するローラシーブを有した上側シーブ組立体を有する案内装置によって案内されながら、各パイロン(塔)に取り付けられている。組み合わせシーブ組立体は、下側シーブ組立体および上側シーブ組立体の両方を備える。シーブ組立体の異なる組合せは、架空ロープを押圧しつつ案内するシーブ組立体の様々な変形例から構成される。変形例がどの様なものであれ、本発明は、そのようなシーブ組立体の保守管理に関する。
【0004】
パイロンは、リフト装置の乗車および降車ターミナルの間に配置されている。チェア及び/又は搬機は、固定式あるいは着脱式の把持器具(グリップ)によってロープに固定される。シーブ組立体のローラシーブは、一般的に、一組ずつ関連付けられて1次ビームの両端に取り付けられるともに、この1次ビームの中央部が2次ビームの端部に揺動自在に支持され、かつこの2次ビームが同様に3次ビームに取り付けられ、シーブの数に応じてこの関係が反復する。最後のビームは、パイロンの支持構造のポスト上にその中間部が揺動自在に取り付けられる。これらの基本的な(1次、2次、3次、その他の)シーブ組立体が、シーブ組立体の支持フレームを形成している。
【0005】
シーブは、従来、シーブ組立体の支持フレームに接続された回転スピンドルを嵌挿するための中央穴が設けられたシーブ本体を有している。このシーブ本体は、ロープが経路上を走行するときにこのロープを横方向に案内するように設計された高い摩擦係数のバンドを収容する環状溝をその外周に有している。
【0006】
押圧および案内シーブ組立体においては、実施の形態の変形例(下部、上部、あるいはその組み合わせ)がどの様なものであれ、シーブが回転するときにロープの走行がシーブバンドの摩耗を生じさせ、したがって、ある運転時間の後にそれらを交換する必要がある。バンドの摩耗状態は、管理規則によって強制される予め定められた頻度で検査される。検査の間に、バンドがかなり摩耗した場合には、バンドを交換しなければならならず、そうでなくとも追加の運転時間の後に同じ作業を反復しなければならない。
【0007】
このようなバンドの通常の摩耗と並んで、シーブ組立体を用いている間にローラシーブの少なくとも一つが何かの理由によってその回転がロックするという絶え間ないリスクがある。そのような例外的な状況においては、回転がロックしたシーブに対するロープの走行がシーブ本体の溝に収容されているバンドの非常に速い摩耗を生じさせる。バンドの劣化はロープとの摩擦が生じている部分に局部的に生じ、かつ、バンドの劣化速度は通常使用の場合よりもきわめて速い。したがって、回転がロックしているシーブのバンドについては、次の通常の定期検査作業が整備要員によって実施されるより前に、ロープとの摩擦が生じている場所においてその全体厚み以上に摩耗するという非常に大きなリスクがある。この場合、回転がロックしているシーブ本体にはロープによる損傷が生じ、翻ってロープ自身にも元に戻らない危険な摩耗が生じる。そのようなリスクは、損傷を受けた部分を交換するコストあるいは機械式リフト装置の一般的な安全性のいずれにおいても、運転管理者が満足できるものではない。
【0008】
欧州特許公開EP0771709号公報に記載されている案内装置には、関連付けられたシーブにおけるロープの通常位置に対する変位を自動的に検出する手段が設けられている。この変位は、強い横風あるいはシーブのバンド摩耗の結果として生じ得る。通常位置に対して予め定められた値にまでその変位が達した場合は、検出手段に接続されている停止手段がロープの走行を停止させる。自動的な検出は、コンバータの下に配置されている磁気供給源とロープとの間に生じる磁場内に配置された電磁気コンバータの出力電圧信号を分析することによって実行される。コンバータ出力は、自動停止電気回路に接続されている。したがって、この検出手段は、ロープに向けた磁束を生じさせる磁気供給源がロープの下に実装されている電磁気手段、およびロープと磁気供給源との間に取り付けられている電磁気コンバータによって、ロープあるいは機械的な作動と接触することなしに遠隔的に達成される。
【0009】
しかしながら、この検出は、電磁気コンバータによって連続的に測定される磁束にもっぱら依存している。しかし、磁場、したがってその磁束の値は外的な妨害を受けるし、あるいは磁気供給源のレベルの問題によって変化する。例えば、磁気供給源が永久磁石によって形成されているときに、この永久磁石が消磁した場合には磁束が減少する。このことは、実際にロープが占めている位置の変更に起因する磁束とは無関係に、磁束が変化することに帰着する。したがって、ロープの物理的位置との直接的な相互関係の欠如に起因して、検出の信頼性は最高ではなく、バンドの摩耗が閾値に達している場合に対応する状態にロープが実際にまだ到達していなくとも、摩耗が限界に達していると誤って検出され得るし、これとは反対に、バンドの摩耗が閾値に達している場合に対応する状態置にロープが実際に到達しても摩耗が限界に達していることを検出することができない。
【発明の目的】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の弱点を呈することなく、特に強化された安全性および信頼性をもたらす案内装置を提供することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による装置は、自動検出手段が、シーブ組立体に対して電気的に絶縁されている導電性要素によって形成され、かつ、関連付けられたシーブのバンドが予め定められた摩耗の閾値に到達したときにロープがその要素と自動的に接触する横断方向(縦方向)の位置において固定手段によってシーブ組立体に接続されている点において注目に値する。
【0012】
本発明の目的は、導電性要素とロープとの間の機械的な接触によって直接的に生じる、導電性要素の電気的な電位変化(接地)を用いることにあり、この機械的な接触は、バンドの摩耗が閾値に到達したときに(導電性要素の横断方向(縦方向)の位置のために)自動的に発生する。その手段が電気機械的であるので、このことは検出の絶対的な信頼性に帰着する。
【0013】
ロープとの機械的な接触により回転がロックしたローラシーブに関連付けられている検出手段によって摩耗が予め定められた閾値に達したことが検出されると、同じシーブに関連付けられている停止手段が駆動モータを自動的に停止させる。このことは、回転がロックしたシーブのバンドに対する架空ロープの走行を停止させることに帰着する。したがって、これらの2つのタイプの手段の自動的な作動は、回転がロックしているシーブのシーブ本体および架空ロープそれ自身が損傷するよりかなり前にロープの停止を生じさせる。
【0014】
他の技術的な特徴は、単独であるいは組み合わせて用いることができる。
【0015】
− 導電性要素は、長手方向の端部において開口するとともに、平坦な底部とこの底部の方向に収束する2つのせり出した側縁とを有する、概ね漏斗状の形状を呈している。
− 平坦な底部は長手方向に対して傾斜している。
− 自動的に停止させる手段は、導電性要素に電気的に接続されるとともに導電性ワイヤの一端に固定されたスペードコネクタへの接続を実行する端子を有し、導電性ワイヤの他端は導電性要素にロープが接触したときに駆動モータへの電力供給を遮断するための電気系統に接続される。
− 固定手段は、導電性要素に溶接されるとともにシーブ組立体に固定されている横断方向ビーム(縦方向ビーム)上に取り付けられている支持プレート上に固定された導電性金属製の横断方向(縦方向)の脚部を有し、横断方向(縦方向)の脚部の固定は、ナットを伴うボルトによって実行される。第1の電気絶縁ワッシャが支持プレートと横断方向(縦方向)の脚部との間に取り付けられ、第2の電気絶縁ワッシャが脚部とボルトの頭との間に取り付けられる。
− 導電性要素は関連付けられたシーブ本体の中央面(中心面)内に配置される。
【0016】
他の利点および特徴は、非限定的な実例のみを目的として与えられ、かつ、添付の図面に示されている、本発明の特定の実施の形態の以下の説明からより明らかとなる。
【発明の好ましい実施の形態】
【0017】
図1〜5は、本発明による機械的リフト装置(機械式リフト装置)の架空ロープ(空中に掛け渡されたロープ、空中ロープ)11を案内する装置の一実施の形態を示している。この案内装置は、後述するようにロープ(索)11を押圧して案内するシーブ組立体を備えている。図1は、押圧および案内シーブ組立体の第1ローラシーブ10aの横断面を示している。図2〜図5は、第1ローラシーブ10aと同一な、シーブ組立体の第2ローラシーブ10bを示している。ローラシーブ10a、10bは、一次ビーム12の両端に取り付けられている。第2シーブ10bは、ロープ11の走行方向において第1ローラシーブ10aの上流側に配設されている。一次ビーム12は、二次ビーム(図示せず)の端部にその中間部分が揺動自在に支持されている。一次ビーム12は、ナットおよびボルトシステムのような任意の適切な固定手段により、二次ビームに固定的に固定されている円筒形状の揺動継手ピン13の周り揺動自在に取り付けられている。二次ビームそれ自身も、三次ビーム(図示せず)上に同じ方法で取り付けられており、シーブの数に応じて以下同様である。最後のビームは、パイロンの軸受構造(図示せず)の支柱に、その中間部分が揺動自在に取り付けられている。
【0018】
シーブ組立体の基本的な一組のビーム(一次、二次、三次、その他)が、シーブ組立体の支持フレームを形成している。したがって、図示されている一次ビーム12は、支持フレームの一部分のみを構成している。このようにして、同様なシーブ10a,10bや、シーブ組立体の(基本的なビームの数に応じて数が変化する)一組のローラシーブは、ロープ11の走行方向に平行なシーブ組立体の長手方向D1(図2の矢印を参照)において支持フレームに沿ってずれて位置している互いに平行な回転軸によって、支持フレーム上に回転自在に取り付けられている。
【0019】
機械式リフト装置の従来方法においては、装置の乗客輸送用の搬機(ゴンドラ、腰掛け)がその上に懸架されているロープ11は、ターミナル内に収容されるとともに電気的な駆動モータ(図示せず)によって作動する駆動プーリによって駆動される。
【0020】
図1〜図5に部分的に示されている押圧および案内シーブ組立体は、下部シーブ組立体である。したがって、図示されている2つの案内ローラシーブ10a、10bは、ロープ11を支持し案内するローラシーブである。残りの説明は、ロープを押圧し案内するためのローラシーブを有した上部の押圧および案内シーブ組立体に問題なく当てはまり得る。
【0021】
図1において、シーブ10aを構成しているシーブ本体14は、ナットおよびボルトシステム16によって一次ビーム12に固定的に固定されているシーブ10aの回転スピンドル15をその内部に嵌挿するための中央孔を有している。シーブ本体14は、例えば玉軸受あるいは他のタイプの一組の軸受によって回転スピンドル15の回りを回転自在に取り付けられている。
【0022】
シーブ本体14は、その外周部分に実質的にU字形状17を呈する環状溝を画成している。高い摩擦係数のバンド18が溝17の内側に収容されて、シーブ10aが回転してロープ11が走行するときにロープ11を横方向に案内している。
【0023】
溝17は、シーブ本体14の端部を構成している第1の縁部19aと、パイロンに対向して配置されている第2の縁部19bと、バンド18を交換するためにシーブ10aを分解するときにシーブ本体14に固定されたまま残存する部分とによって、その輪郭が定められている。可撓性のワッシャ34は、溝17の第2の縁部19bとバンド18との間の接続を堅固に固定している。
【0024】
バンド18は、ポリマー材料、好ましくはゴムあるいは他のエラストマ材料から製造されて、シーブ本体14の溝17の幅全体を満たしている。バンド18は、好ましくは、ロープ11それ自身がバンド18上に位置してシーブ10aの周囲を走行するときにロープ11の形状に追従するように設計された、バンド18の全周にわたる接触部20を有している。
【0025】
シーブ10aは、従来通りに、バンド18の中心部に挿入されてバンド18の摩耗を視覚的に示す手段として作用するインジケータリング(図示せず)を有している。これにより、インジケータリングがバンド18の上面にはっきりと見えるようになったときは、ロープとの様々な摩擦によってリング上に位置するバンド18の厚みの全体がすり減ってバンド18及び/又はシーブ10aを交換しなければならないことを意味する。
【0026】
バンド18は、例えば、ゴム製の連続した帯を溝17の内側に巻き付けることによって設けられる。インジケータリングは、2つのゴム製の連続した帯の間に挿入されて、バンド18の中心部に隠される。
【0027】
バンド18の中心部に挿入されたインジケータリングを有するそのようなシーブ10aは、それによって、バンド18の摩耗が許容レベルを上回ったか否かを一瞥しただけで確かめることができるようになっており、バンド18の交換が必要なときにだけシーブ10aの分解が実行される。
【0028】
案内装置は、その一部だけが図2および図4に示されているが、ローラシーブ10bのバンド18が予め定められた摩耗許容限界を自動的に検出するための手段を更に備えている。言い換えると、この自動検出手段は、シーブ10bのバンド18が予め定められた摩耗許容限界に達したことを自動的に検出するためにローラシーブ10bと関連付けられている。そのような手段は、シーブ10bのバンド18に挿入されているインジケータリングとは区別される。インジケータリングは、整備要員が整備作業を実施するときに(バンド18の厚み内にリングを配置することによって)予め定められた摩耗レベルを上回ったか否かを単に目視検査できるようにするだけである。インジケータリングは、いかなる検出機能をも実行しない。これに対して、そのような自動検出手段は、予め定められた摩耗許容限界の検出を実行する。さらに、検出手段が検出するように設計されている摩耗許容限界は、インジケータリングの視覚的な外観に帰着する摩耗レベルとはかなり異なるものとすることができる。より詳しくは、検出手段によって検出されるように設計されている摩耗許容限界は、インジケータリングが視覚的にはっきり見えるようになるときよりもはるかに前のバンド18の摩耗状態に対応している。
【0029】
説明する実施の形態において、この検出手段は、導電性要素21によって形成されている。導電性要素21は、長手方向(長手方向D1)において、ロープ11に沿って配置されている。導電性要素21は、横方向(側方向、横方向D2)において、検出手段に関連付けられたシーブ10bのシーブ本体14の中央平面(中央面、中心面)Pに配置されている。導電性要素21は、横断方向(縦方向D3)において、関連付けられたシーブ10bのバンド18が予め定められた摩耗許容限界に到達したときにロープ11が自動的に接触するようになる横断方向位置(縦方向位置)に配置されている。シーブ組立体の横方向(側方向)D2は、シーブ組立体のローラシーブ組の回転軸線、特にシーブ10a,10bの回転軸線と平行である(図3中の矢印を参照)。長手方向D1および横方向D2に対して垂直な方向は、シーブ組立体の横断方向(縦方向)D3に一致している(図2中の矢印を参照)。そのような導電性要素21は、シーブ組立体が恒久的な固定手段によって組み立てられるときに組み込むことができるし、あるいは任意の適切な着脱自在な固定手段によってシーブ組立体上に追加することもできる。全てのケースにおいて、この固定手段は、シーブ組立体に対する導電性要素21の電気的な絶縁を保証する。
【0030】
図2〜図5において、導電性要素21は、シーブ10bが取り付けられている一次ビーム12の端部においてシーブ組立体上に固定的に取り付けられるU字断面の横断方向ビーム(縦方向ビーム)22から構成された着脱自在な固定手段によって、シーブ組立体の一次ビーム12の上方に固定される追加的な部分である。横断方向ビーム22は、一次ビーム12に対して垂直であり、かつシーブ10bのシーブ本体14の中央面Pに対して平行である。横断方向ビーム22は、回転スピンドル15の固定を実行するナットおよびボルトシステム16によって固定されている。
【0031】
固定手段は、横断方向ビーム22に沿って取り付けられて、方向D1において(ロープ11の走行方向に対して)シーブ10bの上流側に中央面Pに平行な方向に延びる支持プレート23を更に有している。横断方向ビーム22上への支持プレート23の固定は、2つの固定ボルト24およびそれに付随する2つのナット25によって実行される。固定ボルト24は側方向D2に延びるとともに、横断方向ビーム22の両側に配置されている。固定ボルト24に取り付けられているナット25を締め付けると、横断方向ビーム22は支持プレート23とカウンタープレート26との間に固定される(図4および図5を参照)。
【0032】
図面を参照すると、導電性要素21は、その長手方向の端部で開口した概ね漏斗状の形状を呈するとともに、平坦な底部27と、この底部27に向けて間隔が狭まっていく2つのせり出した側縁28a,28bと、を有している。側縁28bは、縦方向ビーム22が位置している側に配置されている。平坦な底部27は、シーブ組立体の長手方向D1に対して傾斜している。言い換えると、平坦な底部27は、関連付けられたローラシーブ10bへ接近するロープ11に接近し、要素21のうちの長手方向D1において回転スピンドル15に最も近い長手方向端部が、縦方向D3において、要素21のうち反対側の長手方向の端部よりもロープ11に接近している。要素21のうち回転スピンドル15に最も近い長手方向の端部とロープ11とを長手方向D1に隔てているスペースEは、予め定められた摩耗許容限界の値を決定する。スペースEの調整は、導電性要素21の縦方向位置(横断方向位置)の調整によってなされる。この縦方向の位置決めは、常に3.50度未満でなければならないロープ11の可能な偏差角(偏角、ふれ角、ずれ角)ψを考慮に入れてなさなければならない(図2を参照)。図3は、ロープ11が最大偏差角ψを呈するときにロープ11から測定されるスペースEを示している。図3はまた、ロープ11がいかなる偏差角ψをも呈さないときのロープ11の横断面を示している。
【0033】
導電性要素21は、その一端が側縁28bに溶接されている横断方向の金属製の脚部29によって支持プレート23に固定されている。支持プレート23に対する横断方向金属製脚部29の固定は、2つのナット31に付随する2つのボルト30によって実行される。図5は、この固定をより詳細に示している。第1の電気絶縁ワッシャ32aが支持プレート23と金属製の横断方向脚部29との間に挿入され、かつ、第2の電気絶縁ワッシャ32bが金属製の横断方向脚部29とボルト30のヘッドとの間に挿入されている。
【0034】
図5は、また、金属製の縦方向脚部29に端子33が設けられていることを示している。この端子33は、共に導電性である金属製の横断方向脚部29と導電性要素21上への脚部29の溶接とによって、導電性要素21に電気的に接続されている。端子33は、導電性ワイヤの一端に固定されたスペードコネクタ(U字状コネクタ、図示せず)への接続を可能にするが、その導電性ワイヤの他端はロープ11が導電性要素21に接触したときに駆動モータの電源を切断するための電気系統に接続されている。モータへの電力供給を遮断するための電気系統は、駆動モータの制御部に配置されるとともに、要素21が接地したときにその動力部分への電力供給を停止する指令を伝達するように設計された、例えば電気機械あるいは電気リレーを有している。接地は、要素21とロープ11との接触によって生じる。そのような電気的システムは、シーブ組立体の近くにあるいは駆動モータの近くに配設することができる。さらに、ある電気系統を、複数の電気伝導要素21に関連付けることができる。
【0035】
したがって、ロープ11が走行している十分に長い期間の間にローラシーブ10bの回転がロックして、そのバンド18に局所的な摩耗が生じ、ロープ11がスペースEよりも大きな値だけ縦方向に変位すると、ロープ11は、導電性要素21のうちの回転スピンドル15に最も近い長手方向の端部に接触する。この場合、摩耗が予め定められた閾値に達したことが導電性要素21によって自動的に検出される。このロープ11との接触により、導電性要素21が接地する。電気系統は(縦方向の金属製の脚部29、溶接、端子33、スペードコネクタ、およびスペードコネクタに接続されている導電性ワイヤによって要素21に接続されているが)、要素21の電位の変化に気付いてその電力供給を遮断することにより自動的に駆動モータの作動を停止させる。このことは、回転がロックしているシーブ10bのバンド18に対するロープ11の走行を阻止することに帰着する。したがって、この自動的な作動は、ロープ11の機械的な接触によって起動する純粋に電気機械的な手段を使用した全体的に信頼できる方法により、回転がロックしているシーブ10bの本体14およびロープ11それ自身に損傷が生じるよりも充分に前にロープ11の停止を生じさせる。
【0036】
前述した押圧および案内シーブ組立体は、導電性要素21とそれが電気的に接続されている電気系統との組み合わせにより、本発明の架空ロープ11を案内する装置、すなわちローラシーブを用いるとともに、少なくとも一つのシーブに関連付けられてその関連付けられたシーブのバンドの予め定められた摩耗許容限界を自動的に検出する手段と、許容限界が検出されたときにロープ11の駆動モータを自動的に停止させる手段とを備えている案内装置の例示としての実施の形態を構成している。この案内装置においては、自動検出手段が導電性要素21によって形成されているが、自動停止手段は駆動モータに対する電力供給の遮断を実行する電気系統と、導電性要素21およびこの電気系統の間の電気的な接続と、によって形成されている。
【0037】
上述した検出手段はローラシーブ10bだけに関連付けられているが、シーブ10a,10bと同時に関連付けられている導電性要素21を提供することも可能である。この場合、導電性要素は、ローラシーブ10a,10bの間に長手方向に配置されて、これらの2つの関連付けられたシーブ10a,10bの一方あるいは他方のバンド18が予め定められた摩耗許容限界に到達したことを独立して検出できるようにする。
【0038】
本発明は、上述した実施の形態には限定されない。特に、他の適切な自動停止手段を用いることができる。より詳しくは、電気系統は、ロープとの接触により導電性要素が電気的に接地したときに電力供給を遮断する機能を果たす限りにおいて、任意のシステムとすることができる。
【0039】
したがって、回転がロックしたシーブ10bの本体14およびロープ11が損傷するよりも十分前に、そのシーブの一つの回転停止がロープ11の走行を停止させる点において、この案内装置の信頼性は良好である。このことは、この装置に伴う安全性を高める結果となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の案内装置の一実施の形態を示す、ローラシーブの高さにおける横断面側面図。
【図2】図1の装置の一部分の正面図。
【図3】図1および図2に示した装置の側面図。
【図4】図2に示した装置の一部の平面図。
【図5】図1〜図4に示した装置の、図2中の破断線A−Aに沿って横断する不連続な断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータで作動する駆動プーリ組によって架空ロープ(11)が駆動される機械式リフト装置の前記ロープ(11)を案内する装置において、
その外周に環状溝(17)を画成しているシーブ本体(14)と前記シーブ本体(14)の前記溝(17)内に収容された高い摩擦係数のバンド(18)とを有する前記ロープ(11)を案内するためのローラシーブ(10a、10b)を複数含むシーブ組立体であって、複数のローラシーブが、前記ロープ(11)の方向に平行なシーブ組立体の長手方向(D1)において支持フレームに沿ってずらされている回転軸線を中心として回転可能に支持フレームに取り付けられている、シーブ組立体と、
前記ローラシーブ(10a、10b)の少なくとも一つ(10b)に関連付けられるとともに、当該関連付けられたシーブ(10b)のバンド(18)の摩耗が予め定められた閾値に達したことを自動的に検出する手段(21)と、
前記閾値に達したことが検出された場合に前記駆動モータを自動的に停止させる手段(29、33)と、を備え、
前記自動的に検出する手段(21)は、前記シーブ組立体に対して電気的に絶縁された導電性要素(21)によって形成され、
前記導電性要素(21)は、固定手段によって前記シーブ組立体に対し連結され、前記関連付けられたシーブ(10b)のバンド(18)の摩耗が予め定められた閾値に達した場合に前記ロープ(11)が前記要素(21)と自動的に接触するようになる横断方向の位置にある
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記導電性要素(21)は、長手方向の端部において開口するとともに、平坦な底部(27)とこの底部(27)の方向に収束する2つのせり出した側縁(28a、28b)とを有する、概ね漏斗状の形状を呈している
ことを特徴とする請求項1に記載した装置。
【請求項3】
前記平坦な底部(27)は、シーブ組立体の長手方向(D1)において傾斜している
ことを特徴とする請求項2に記載した装置。
【請求項4】
前記自動的に停止させる手段(29、33)は、前記導電性要素(21)に電気的に接続された端子(33)であって、導電性ワイヤの一端が固定されたスペードコネクタとの接続を実現させる端子(33)を有し、
前記導電性ワイヤの他端は、前記ロープ(11)が導電性要素(21)に接触するようになった場合に前記駆動モータへの電力供給を遮断する電気系統に接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに一項に記載した装置。
【請求項5】
前記固定手段は、前記導電性要素(21)に溶接された金属製の脚部(29)であって、前記シーブ組立体と固定された横断方向ビーム(22)に取り付けられた支持プレート(23)に固定されている導電性の横断方向の金属製の脚部(29)を有し、
前記横断方向脚部(29)の固定は、ナット(31)およびそれに付随するボルト(30)と、前記支持プレート(23)と前記横断方向の脚部(29)との間に挿入された第1の電気的に絶縁性のワッシャ(32a)と、前記脚部(29)と前記ボルト(30)の頭部との間に挿入された第2の電気的に絶縁性のワッシャ(32b)と、によって実現されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに一項に記載した装置。
【請求項6】
前記導電性要素(21)が、前記関連付けられたシーブ(10b)の本体(14)の中央面(P)に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに一項に記載した装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−78801(P2009−78801A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−205648(P2008−205648)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(591108444)ポマガルスキー (16)
【氏名又は名称原語表記】POMAGALSKI