説明

自動分析装置および再検方法

【課題】オペレータを煩わせることなく、適正な希釈倍率により自動的に1度で再検を行なうことができる自動分析装置、および再検方法を提供する。
【解決手段】本発明は、検体と試薬との反応により生じる発光量または吸光度を測定して、測定対象物を定量する自動分析装置1において、発光量または吸光度を測定する測光部31と、測定値が、前記測定値を測定する際の測定上限値および測定下限値の範囲内であるか否か判定し、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出し、または、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満であると判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出する算出部48と、前記適正希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御する再検制御部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬との反応により生じる発光量または吸光度を測定して、測定対象物を定量する自動分析装置および再検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体中の特定成分を定量分析するために、検体と試薬との反応により生じる反応物を光学的に分析する装置が知られており、特定成分濃度が高すぎるような場合には、分析結果の信頼性が担保されないため、検体を希釈して再検が行なわれている。
【0003】
再検を行う希釈倍率の設定方法として、測定した吸光度に基づき希釈倍率を設定する方法、装置等が開示されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
また、第1希釈倍率で検体を分析し、測定値と、閾値である上下限値とを比較して、前記測定値が上限値より大きい場合は第1希釈倍率より大きい第2希釈倍率を次回希釈倍率として再検し、測定値が下限値より小さい場合は第1希釈倍率より小さい第3希釈倍率を次回倍率として再検する分析システムが開示されている。(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−37384号公報
【特許文献2】特許第3607336号公報
【特許文献3】特開平10−213546号公報
【特許文献4】特開平10−282112号公報
【特許文献5】特開2007−33132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4に記載のものでは、希釈倍率は決定しうるものの、当該倍率への希釈はユーザーがマニュアルで行なうか、装置側で希釈させる場合は再検前に装置側の希釈条件を登録する必要があり、オペレータの作業を大幅に軽減するまでには至らない。
【0007】
また、特許文献5に記載のものは、所定の希釈倍率での測定値の上下限値を閾値として測定値と対比することにより、測定値が上限値より大きい場合には希釈倍率を1段階高くし、下限値より小さい場合には希釈倍率を1段階低くするよう決定し再検することで、オペレータの判断および希釈にかかる作業を軽減しうるものであるが、検体濃度が非常に高い場合等には、適正な希釈倍率を設定できないため、1度で再検が終了しない場合がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オペレータを煩わせることなく、適正な希釈倍率により自動的に1度で再検を行なうことができる自動分析装置、および再検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬との反応により生じる発光量または吸光度を測定して、測定対象物を定量する自動分析装置において、所定の測定条件により発光量または吸光度を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された測定値が、前記測定値を測定する際の測定上限値および測定下限値の範囲内であるか否か判定し、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出し、または、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満であると判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出する算出手段と、前記適正希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御する再検制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、再検希釈倍率決定テーブルを記憶する記憶手段と、前記算出手段が算出した適性希釈倍率と前記再検希釈倍率決定テーブルとに基づき、希釈倍率を決定する希釈倍率決定手段と、を備え、前記再検制御手段は、前記希釈倍率決定手段が決定した希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記記憶手段は、前記測定手段の測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数を記憶し、前記算出手段は、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定上限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記記憶手段は、前記測定手段の測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数を記憶し、前記算出手段は、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満と判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定下限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記希釈倍率決定手段は、前記算出手段が算出した適性希釈倍率が最大設定希釈倍率を超える場合、希釈倍率を決定しないことを特徴とする。
【0014】
前記測定手段が測定した測定値に基づき算出した分析結果を出力する出力手段を備え、
前記希釈倍率決定手段により希釈倍率が決定されず、前記再検制御手段が再検を行なわない場合に、前記分析結果の出力に再検不要である旨のフラグを添付することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記希釈倍率決定手段により再検希釈倍率を決定する自動希釈倍率設定モードと、上記設定希釈倍率のうちオペレータが指定するいずれか1の希釈倍率を再検希釈倍率として決定する固定希釈倍率設定モードとを選択する選択手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の自動分析装置の再検方法は、検体と試薬との反応により生じる発光量または吸光度を測定して、測定対象物を定量する自動分析装置の再検方法において、所定の測定条件により発光量または吸光度を測定する測定ステップと、前記測定ステップにより測定された測定値が、前記測定値を測定する際の測定上限値および測定下限値の範囲内であるか否か判定し、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出し、または、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満であると判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出する算出ステップと、前記適正希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御する再検制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の自動分析装置の再検方法は、上記発明において、記憶手段から再検希釈倍率決定テーブルを抽出する抽出ステップと、前記算出ステップが算出した適性希釈倍率と前記再検希釈倍率決定テーブルとに基づき、希釈倍率を決定する希釈倍率決定ステップと、を含み、前記再検制御ステップは、前記希釈倍率決定ステップが決定した希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の自動分析装置の再検方法は、上記発明において、前記抽出ステップは、前記測定ステップの測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数を抽出し、前記算出ステップは、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定上限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の自動分析装置の再検方法は、上記発明において、前記抽出ステップは、前記測定手段の測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数を抽出し、前記算出ステップは、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満と判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定下限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の自動分析装置の再検方法は、上記発明において、前記希釈倍率決定ステップは、前記算出ステップが算出した適性希釈倍率が最大設定希釈倍率を超える場合、希釈倍率を決定しないことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の自動分析装置の再検方法は、上記発明において、前記測定ステップが測定した測定値に基づき算出した分析結果を出力する出力ステップを含み、前記希釈倍率決定ステップにより希釈倍率が決定されず、前記再検制御ステップが再検を行なわない場合に、前記分析結果の出力に再検不要である旨のフラグを添付することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、測定手段が測定した測定結果と測定範囲の上限値および下限値に基づき再検時の適正希釈倍率を算出し、算出された適正希釈倍率に基づき装置側で対応可能な希釈倍率を決定して、自動的に検体を希釈、および再検するよう制御することにより、再再検となる確率を低減して、分析に使用する試薬、洗浄水等の消費量の低減および時間を節約するとともに、オペレータの作業も低減しうるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる再検処理のフローチャートである。
【図3】図3は、分析項目別の測定条件パラメータ画面の一例である。
【図4】図4は、希釈倍率決定処理のフローチャートである。
【図5】図5は、再検希釈倍率決定テーブルの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明にかかる自動分析装置、および再検方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる自動分析装置1は、検体と試薬との間の反応物の作用による発光基質の発光量を測定する測定機構20と、測定機構20を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構20における測定結果の分析を行なう制御機構40とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の免疫学的な分析を自動的に行なう。
【0026】
まず、測定機構20について説明する。測定機構20は、大別して検体移送部21、チップ格納部22、検体分注部23、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、第1試薬庫26、第2試薬庫27、第1試薬分注部28、第2試薬分注部29、酵素反応テーブル30、測光部31、第1反応容器移送部32および第2反応容器移送部33を備える。測定機構2の各構成部位は、所定の動作処理を行なう単数または複数のユニットを備える。
【0027】
検体移送部21は、検体を収容した複数の検体容器21aを保持し、図中の矢印方向に順次移送される複数の検体ラック21bを備える。検体容器21aに収容された検体は、検体の提供者から採取した血液または尿などである。
【0028】
チップ格納部22は、複数のチップを整列したチップケースを設置しており、このケースからチップを供給される。このチップは、感染症項目測定時のキャリーオーバー防止のため、検体分注部23のノズル先端に装着され、検体分注ごとに交換されるディスポーザブルのサンプルチップである。
【0029】
検体分注部23は、検体の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注部23は、検体移送部21によって所定位置に移動された検体容器21a内の検体をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送された反応容器10に分注して検体を所定タイミングでBFテーブル25上の反応容器10内に移送する。
【0030】
免疫反応テーブル24は、それぞれ配置された反応容器10内で検体と分析項目に対応する所定の試薬とを反応させるための反応ラインを有する。免疫反応テーブル24は、免疫反応テーブル24の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、免疫反応テーブル24に配置された反応容器10を所定タイミングで所定位置に移送する。免疫反応テーブル24においては、図1に示すように、前処理、前希釈用の外周ライン24a、検体と固相担体試薬との免疫反応用の中周ライン24bおよび検体と標識試薬との免疫反応用の内周ライン24cを有する3重の反応ライン構造を形成してもよい。
【0031】
BFテーブル25は、所定の洗浄液を吸引吐出して検体または試薬における未反応物質を分離するBF(bound−free)分離を実施するBF洗浄処理を行なう。BFテーブル25は、BFテーブル25の中心を通る鉛直線を回転軸として図1の矢印の方向に回動自在であり、BFテーブル25に配置された反応容器10を所定タイミングで所定位置に移送する。BFテーブル25は、BF分離に必要な磁性粒子を集磁する集磁機構と、BF液を反応容器内に吐出・吸引してBF分離を実施するBF洗浄プローブを有するBF洗浄部251と、集磁された磁性粒子を分散させる攪拌機構とを有する。このBFテーブル25におけるBF洗浄処理として、第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理が行われる。なお、BF洗浄部251は、複数のBF液吐出プローブと、各BF液吐出プローブに対応する複数のBF液吸引プローブとを有する。
【0032】
第1試薬庫26は、BFテーブル25に配置された反応容器10内に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器26aを複数収納できる。第2試薬庫27は、BFテーブル25に配置された反応容器10内に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器27aを複数収納できる。第1試薬庫26および第2試薬庫27は、図示しない駆動機構が駆動することによって、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器を第1試薬分注部28または第2試薬分注部29による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬は、分析対象である検体内の抗原または抗体と特異的に結合する反応物質を固相した不溶性担体である磁性粒子を含む試薬である。第2試薬は、磁性粒子と結合した抗原または抗体と特異的に結合する標識物質(たとえば酵素)を含む試薬である。また、第2試薬庫27は、標識物質との酵素反応によって発光する基質を含む基質液が収容された基質液容器27bを収納し、時計回りまたは反時計回りに回動して所定の基質液容器27bを第1試薬分注部28による基質液吸引位置まで搬送する。
【0033】
第1試薬分注部28は、第1試薬の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。第1試薬分注部28は、第1試薬庫26によって所定位置に移動された第1試薬容器26a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって第1試薬吐出位置に搬送された反応容器10に分注する。また、第1試薬分注部28は、第2試薬庫27によって所定位置に移動された基質液容器27b内の基質液をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって基質液吐出位置に搬送された反応容器10に分注する。
【0034】
第2試薬分注部29は、第1試薬分注部と同様の構成を有し、第2試薬庫27によって所定位置に移動された試薬容器内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送された反応容器10に分注する。
【0035】
酵素反応テーブル30は、反応容器10内に注入された基質液内の基質が発光可能となる酵素反応処理を行なうための反応ラインである。
【0036】
測光部31は、反応容器10内の反応液内の基質から発する発光を測定する。測光部31は、たとえば、化学発光で生じた微弱な発光を検出する光電子倍増管を有し、カウント法を用いて発光量を測定する。また、測光部31は、光学フィルターを保持し、発光強度に応じて光学フィルターにより減光された測定値によって真の発光強度を算出する。
【0037】
第1反応容器移送部32は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容した反応容器10を所定タイミングで、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、酵素反応テーブル30、図示しない反応容器供給部および図示しない反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。また、第2反応容器移送部33は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容した反応容器10を所定タイミングで、酵素反応テーブル30、測光部31、図示しない反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。
【0038】
つぎに、制御機構40について説明する。制御機構40は、制御部41、入力部42、分析部43、記憶部44、出力部45および送受信部47を備える。測定機構20および制御機構40が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。制御機構40は、一または複数のコンピュータシステムを用いて実現され、測定機構20に接続する。制御機構40は、分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、測定機構20の動作処理の制御を行なうとともに測定機構20における測定結果の分析を行なう。
【0039】
制御部41は、制御機能を有するCPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各構成部位の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。制御部41は、記憶部44が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより分析装置1の制御を実行する。
【0040】
制御部41は、算出部48、希釈率決定部49、再検制御部50を備える。算出部48は、測光部31により測定された測定値が、該測定値を測定する際の測定上限値および測定下限値の範囲内であるか否か判定し、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値以上と判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定上限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出し、または前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満と判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定下限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出する。測定上限値および測定下限値の補正係数は、後述する記憶部44から抽出する。前記補正係数は、分析項目毎に設定される。希釈倍率決定部49は、適正希釈倍率から自動分析装置1で選択可能な設定希釈倍率を決定するための再検希釈倍率決定テーブルに基づき、希釈倍率を決定する。再検希釈倍率決定テーブルも、記憶部44に記憶される。再検制御部50は、希釈倍率決定部49が決定した希釈倍率により、検体を希釈した後、再検を行なうよう制御する。
【0041】
入力部42は、種々の情報を入力するためのキーボード、出力部45を構成するディスプレイの表示画面上における任意の位置を指定するためのマウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部43は、測定機構20から取得した測定結果に基づいて検体に対する分析処理等を行なう。
【0042】
記憶部44は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部45は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。また、記憶部44は、測光部31の測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数、ならびに再検希釈倍率決定テーブルを記憶する。
【0043】
出力部45は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、制御部41の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。出力部45は、ディスプレイ等を用いて構成された表示部46を備える。送受信部47は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0044】
この免疫検査を行なう自動分析装置1においては、この反応容器10内に磁性粒子を含む第1試薬が第1試薬分注部28によって分注される第1試薬分注処理、チップ格納部22から供給されたチップを装着した検体分注部23によってBFテーブル25上の反応容器10内に検体が分注される検体分注処理、BFテーブル25において反応物を集磁させた状態で反応容器10内から未反応物質を除去する第1BF洗浄処理、第2試薬分注部29によって反応容器10内に標識試薬が分注される第2試薬分注処理、BFテーブル25において免疫複合体を集磁させた状態で反応容器10内から未結合である標識抗体を除去する第2BF洗浄処理、反応容器10内に基質液が分注される基質液分注処理、基質からの発光を測定する測定処理および測定された光量をもとに検出対象である抗原量を求める分析処理が行われる。
【0045】
次に、本発明の実施の形態にかかる再検処理について、図2〜図5を参照して説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかる再検処理のフローチャートである。図3は、分析項目別の測定条件パラメータ画面の一例である。図4は、希釈倍率決定処理のフローチャートである。図5は、再検希釈倍率決定テーブルの一例を示す。
【0046】
図2に示すように、まず、再検処理の判定を行う分析項目の測定値Nおよび該分析を行った際の測定条件、付加情報、ならびに分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数a、bを取得する(ステップS101)。ここで、取得する測定条件は、検体の希釈倍率Dおよび測定ダイナミックレンジの測定上限値R・測定下限値Rであり、検体の希釈倍率Dは、初検分析では通常1であるが、同一の被験者から定期的に分析を行うような場合には、分析結果とともに設定希釈倍率Dが記憶されており、希釈倍率Dが1より大きい場合もあるためである。また、付加情報とは、分析の際に装置側から付加されたトラブル情報である。測定ダイナミックレンジの測定上限値R・測定下限値Rは、再検の適正希釈倍率の算出に使用する。希釈倍率の補正係数a、bは、分析項目毎に設定されて記憶部44に記憶され、適正希釈倍率の算出に際し記憶部44から抽出される。
【0047】
続いて、付加情報および測定値Nに基づき、再検の必要があるか否か判定される(ステップS102)。測定値Nが測定下限値R以上、測定上限値R以下で、かつ付加情報がない場合は再検が不要と判定され(ステップS102、No)、再検処理は終了する。一方、測定値Nが測定下限値R未満または測定上限値Rを超える場合、または付加情報がある場合は、再検が必要と判定される(ステップS102、Yes)。
【0048】
再検が必要と判定された場合には(ステップS102、Yes)、希釈倍率を変更して再検する必要があるか否かを判定する(ステップS103)。測定値Nが、測定下限値R以上で測定上限値R以下の場合は、希釈倍率を変更して再検する必要がないと判定され(ステップS103、No)、同じ希釈倍率、即ち希釈倍率Dで再検分析を行う(ステップS104)。一方、測定値Nが、測定下限値R未満または測定上限値Rを超える場合は、希釈倍率を変更して再検する必要があると判定される(ステップS103、Yes)。
【0049】
希釈倍率を変更して再検する場合(ステップS103、Yes)、希釈倍率設定モードが自動に設定されているか否かを確認する(ステップS105)。希釈倍率設定モードは、希釈倍率決定部50により再検希釈倍率を自動的に決定する自動希釈倍率設定モードと、再検希釈倍率を、自動分析装置1が希釈倍率として採用しうる設定希釈倍率のうち、オペレータにより指定されたいずれか1の希釈倍率とする固定希釈倍率設定モードとがあり、図3に示す分析項目別の測定条件パラメータ画面により、自動希釈倍率設定モードまたは固定希釈倍率設定モードに設定する。
【0050】
図3は、分析項目TSHの測定条件パラメータ画面を例として示すものであるが、再検希釈倍率を表示する表示欄103は、自動に設定されている。これは、自動希釈倍率設定モードが選択されていることを表示するものであり、固定希釈倍率設定モードを選択する場合には、表示欄103に示される希釈倍率の×1、×10、×100、×200、×1000のいずれかを選択する。
【0051】
希釈倍率設定モードが自動に設定されている場合は(ステップS105、Yes)、希釈倍率決定処理を行う(ステップS106)。一方、希釈倍率設定モードが固定希釈倍率に設定されている場合は(ステップS105、No)、オペレータが設定した固定希釈倍率で再検分析を行う(ステップS109)。
【0052】
希釈倍率決定処理は、まず、図4に示すように、測定値Nと測定上限値Rとを対比し(ステップS201)、測定値Nが測定上限値Rを超える場合は(ステップS201、Yes)、算出部48は、測定値Nと測定上限値Rとの比N/Rを求め(ステップS202)、希釈倍率Dおよび測定上限値Rの補正係数a、bにより適正希釈倍率Dを算出する(ステップS204)。算出式は、下記式(1)のようになる。
D=N/R×D×a+b ・・・・(1)
【0053】
また、測定値Nが測定下限値R未満である場合は(ステップS201、No)、算出部48は、測定値Nと測定下限値Rとの比N/Rを求め(ステップS203)、希釈倍率Dより1段階希釈倍率の低いDn−1と測定下限値Rの補正係数a、bにより適正希釈倍率Dを算出する(ステップS204)。算出式は、下記式(2)のようになる。なお、希釈倍率Dが1の場合は測定下限値Rを使用した適性希釈倍率Dの算出は行なわない。
D=N/R×Dn−1×a+b ・・・(2)
【0054】
算出部48により適性希釈倍率D算出後、希釈倍率決定部49は、適正希釈倍率Dが自動分析装置1の最大設定希釈倍率以下であるか否かを判定後(ステップS205)、再検における希釈倍率を決定する(ステップS206)。適正希釈倍率Dが最大設定希釈倍率を超える場合、および適正希釈倍率Dが1未満の場合(ステップS205、No)、希釈倍率決定部49は当該分析項目の再検は不要と決定し、希釈倍率は設定しない(ステップS207)。なお、適正な希釈倍率の算出のためには、補正係数a、bおよびa、bを個別に設定することが好ましいが、a=a=1、b=b=0としても希釈倍率の算出は可能である。
【0055】
一方、適正希釈倍率Dが最大設定希釈倍率以下の場合(ステップS205、Yes)、適正希釈倍率Dが1の最大設定希釈倍率以下であるか否かを判定後(ステップS205)希釈倍率決定部49は、図5に示す再検希釈倍率決定テーブルに基づき希釈倍率を決定する(ステップS206)。算出部48が算出した適正希釈倍率Dで検体を希釈し再検を行なうことが最適であるが、自動分析装置1の希釈倍率を算出した適性希釈倍率に設定するのはオペレータの負担となり、自動的に適正希釈倍率Dに希釈させるには装置コストの点で好ましくない。したがって、希釈倍率決定部49は、図5の再検希釈倍率決定テーブルを使用して、適正希釈倍率Dに基づき自動分析装置1において選択可能な設定希釈倍率を決定する。
【0056】
例えば、図5に示すように、適正希釈倍率Dが14と算出された場合、設定希釈倍率は×100となり、適正希釈倍率Dが1000を超える場合は、自動分析装置1の設定希釈倍率の最大を超えるため希釈再検は行なわない。
【0057】
ステップS206およびステップS207により希釈倍率決定処理は終了し(ステップS106)、希釈制御部50は、希釈倍率決定処理により希釈倍率が決定されたか否かを判定する(ステップS107)。希釈倍率が決定された場合は(ステップS107、Yes)、希釈制御部50は、決定した希釈倍率で再検分析を行うよう制御する(ステップS109)。希釈倍率が決定されず、再検不要の場合は(ステップS107、No)、分析結果に再検不要のフラグを付加して出力部45または表示部46を介して出力して、再検処理を終了する(ステップS108)。
【0058】
上述のように、本発明は、適切な希釈倍率で自動的に再検を行なうことを可能とし、再再検を行なう確率を低減することができる。また、これにより分析に使用する試薬、洗浄水等の消費量を低減するとともに、分析に要する時間の節約も可能とする。さらに、希釈倍率の設定ならびに再検も自動的に行なうため、オペレータの作業を大幅に低減できるものである。
【0059】
上記した実施の形態は、免疫分析項目を主として分析対象とする自動分析装置および再検方法を例として説明しているが、生化学分析項目を対象とする自動分析装置および再検方法にも本発明は適用可能である。生化学項目用の自動分析装置においては、測定により得られた吸光度と測定上限値および測定下限値とに基づき適正希釈倍率を算出する。算出の手法は、上記の免疫分析項目で求めた適正希釈倍率と同様にして行なう。生化学項目用の自動分析装置では、適正希釈倍率Dが1未満の場合、検体濃縮(増量)して再検を行なうこともできる。たとえば、適正希釈倍率Dが0.1≦D<0.5の場合には検体量を2倍に濃縮(増量)、D<0.1である場合には検体量を10倍に濃縮(増量)して再検を行なうことにより、精度のよい分析結果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる自動分析装置、および再検方法は、高速かつ大量での分析処理が要求される分析装置に有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 自動分析装置
20 測定機構
10 反応容器
21 検体移送部
21a 検体容器
21b 検体ラック
22 チップ格納部
23 検体分注部
24 免疫反応テーブル
24a 外周ライン
24b 中周ライン
24c 内周ライン
25 BFテーブル
26 第1試薬庫
26a 第1試薬容器
27 第2試薬庫
27a 第2試薬容器
27b 基質液容器
28 第1試薬分注部
29 第2試薬分注部
30 酵素反応テーブル
31 測光部
32 第1反応容器移送部
33 第2反応容器移送部
40 制御機構
41 制御部
42 入力部
43 分析部
44 記憶部
45 出力部
46 表示部
47 送受信部
48 算出部
49 希釈倍率決定部
50 再検制御部
251 BF洗浄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬との反応により生じる発光量または吸光度を測定して、測定対象物を定量する自動分析装置において、
所定の測定条件により発光量または吸光度を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された測定値が、前記測定値を測定する際の測定上限値および測定下限値の範囲内であるか否か判定し、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出し、または、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満であると判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出する算出手段と、
前記適正希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御する再検制御手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
再検希釈倍率決定テーブルを記憶する記憶手段と、
前記算出手段が算出した適性希釈倍率と前記再検希釈倍率決定テーブルとに基づき、希釈倍率を決定する希釈倍率決定手段と、を備え、
前記再検制御手段は、前記希釈倍率決定手段が決定した希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記測定手段の測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数を記憶し、
前記算出手段は、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定上限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記測定手段の測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数を記憶し、
前記算出手段は、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満と判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定下限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記希釈倍率決定手段は、前記算出手段が算出した適性希釈倍率が最大設定希釈倍率を超える場合、希釈倍率を決定しないことを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記測定手段が測定した測定値に基づき算出した分析結果を出力する出力手段を備え、
前記希釈倍率決定手段により希釈倍率が決定されず、前記再検制御手段が再検を行なわない場合に、前記分析結果の出力に再検不要である旨のフラグを添付することを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記希釈倍率決定手段により再検希釈倍率を決定する自動希釈倍率設定モードと、上記設定希釈倍率のうちオペレータが指定するいずれか1の希釈倍率を再検希釈倍率として決定する固定希釈倍率設定モードとを選択する選択手段を備えることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項8】
検体と試薬との反応により生じる発光量または吸光度を測定して、測定対象物を定量する自動分析装置の再検方法において、
所定の測定条件により発光量または吸光度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにより測定された測定値が、前記測定値を測定する際の測定上限値および測定下限値の範囲内であるか否か判定し、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出し、または、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満であると判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比に基づき適正希釈倍率を算出する算出ステップと、
前記適正希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御する再検制御ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置の再検方法。
【請求項9】
記憶手段から再検希釈倍率決定テーブルを抽出する抽出ステップと、
前記算出ステップが算出した適性希釈倍率と前記再検希釈倍率決定テーブルとに基づき、希釈倍率を決定する希釈倍率決定ステップと、を含み、
前記再検制御ステップは、前記希釈倍率決定ステップが決定した希釈倍率に基づき前記検体を希釈した後、再検を行なうよう制御することを特徴とする請求項8に記載の自動分析装置の再検方法。
【請求項10】
前記抽出ステップは、前記測定ステップの測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数を抽出し、
前記算出ステップは、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定上限値を超えると判定した場合、前記測定値と測定上限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定上限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出することを特徴とする請求項8または9に記載の自動分析装置の再検方法。
【請求項11】
前記抽出ステップは、前記測定手段の測定条件、および分析項目毎に設定される希釈倍率の補正係数を抽出し、
前記算出ステップは、前記測定値が前記測定値を測定する際の測定下限未満と判定した場合、前記測定値と測定下限値との比を求め、該比と測定時の希釈倍率および測定下限値の補正係数とから再検時の適正希釈倍率を算出することを特徴とする請求項8または9に記載の自動分析装置の再検方法。
【請求項12】
前記希釈倍率決定ステップは、前記算出ステップが算出した適性希釈倍率が最大設定希釈倍率を超える場合、希釈倍率を決定しないことを特徴とする請求項9に記載の自動分析装置の再検方法。
【請求項13】
前記測定ステップが測定した測定値に基づき算出した分析結果を出力する出力ステップを含み、
前記希釈倍率決定ステップにより希釈倍率が決定されず、前記再検制御ステップが再検を行なわない場合に、前記分析結果の出力に再検不要である旨のフラグを添付することを特徴とする請求項12に記載の自動分析装置の再検方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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