自動分析装置
【課題】 検体の目標完了時刻と現在時刻に応じて検体の優先度を動的に変更できる自動分析装置を提供する。
【解決手段】 検体投入時に検体の初期の優先度である初期優先度と検体に割付可能な最大の優先度である最高優先度を設定する初期優先度設定手段と、検体が装置に投入された時刻である検体投入時刻と、検体の分析を完了させる目標時刻である目標完了時刻と、時刻の経過とともに検体の優先度を変更する度合い表す優先度遷移モデルとに基づいて検体の優先度を動的に更新する優先度更新手段と、前記目標完了時刻を入力する目標完了時刻入力画面を有する。
【解決手段】 検体投入時に検体の初期の優先度である初期優先度と検体に割付可能な最大の優先度である最高優先度を設定する初期優先度設定手段と、検体が装置に投入された時刻である検体投入時刻と、検体の分析を完了させる目標時刻である目標完了時刻と、時刻の経過とともに検体の優先度を変更する度合い表す優先度遷移モデルとに基づいて検体の優先度を動的に更新する優先度更新手段と、前記目標完了時刻を入力する目標完了時刻入力画面を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の成分を分析する自動分析装置に係り、特に、検体を分注して分析を実施する分析ユニットと、検体を分析ユニットに搬送する前に一時待機させることが可能なランダムアクセスバッファとを有する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の検体を優先的に分析する自動分析装置として、特許文献1、特許文献2、特許文献3がある。特許文献1では、検体の分析を依頼した場所である分析依頼場所に緊急レベルを関連付け、緊急レベルと優先度の関係を定義したテーブルを用いて検体の優先度を設定し、優先度の高い検体を優先的に分析する自動分析装置が示されている。特許文献2では、優先的に分析するべき検体を設置したラックを指定し、レーンチェンジャを用いて通常レーンから優先レーンに移送し、優先レーンのラックを優先的に搬送する自動分析装置が示されている。特許文献3では、予め検査項目毎に分析の緊急性を表す緊急レベルを設定し、緊急レベルの高い順に検査項目の分析を実施する自動分析装置が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−3236号公報
【特許文献2】特開2003−83994号公報
【特許文献3】特開平5−322906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検体を自動分析装置に投入した後、検体の優先度を動的に変更できなかった。このため、緊急検体以外の一般検体がランダムアクセスバッファ内で長時間待機する場合があり、検体蒸発により異常値を示すことがあった。
本発明の目的は、上記課題を解決し、検体を装置に投入した後であっても、目標完了時刻内に分析が完了するように検体の優先度を動的に変更することが可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し、目的を実現するために、本発明の自動分析装置は、検体投入時に検体の初期の優先度である初期優先度と検体に割付可能な最大の優先度である最高優先度を設定する初期優先度設定手段と、検体が装置に投入された時刻である検体投入時刻と、検体の分析を完了させる目標時刻である目標完了時刻と、時刻の経過とともに検体の優先度を変更する度合い表す優先度遷移モデルとに基づいて検体の優先度を動的に更新する優先度更新手段と、前記目標完了時刻を入力する目標完了時刻入力画面を有することを特徴としている。
【0006】
さらに、優先度遷移モデルは、検体の分析が完了する時刻を統計的な計算により予想した予想完了時刻に基づいて優先度遷移モデルを作成する優先度更新手段を有することを特徴としている。
【0007】
さらに、目標完了時刻入力画面は、時間軸グラフに検体毎の投入時刻と目標完了時刻と予想完了時刻とをプロットし、目標完了時刻のプロットをスライド式に変更して目標完了時刻の設定が可能なことを特徴としている。
【0008】
さらに、優先度更新手段により検体の優先度を更新した際に、優先度が高い検体と分析ユニット内で分注している検体とを入れ替える検体入れ替え手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動分析装置は、検体投入時に検体の初期の優先度である初期優先度と検体に割付可能な最大の優先度である最高優先度を設定する初期優先度設定手段と、検体が装置に投入された時刻である検体投入時刻と、検体の分析を完了させる目標時刻である目標完了時刻と、時刻の経過とともに検体の優先度を変更する度合い表す優先度遷移モデルとに基づいて検体の優先度を動的に更新する優先度更新手段と、目標完了時刻を入力する目標完了時刻入力画面を有する。これにより、時間の経過とともに検体の優先度を徐々に上げることができ、検体がランダムアクセスバッファで長時間待機する状況を回避できる効果がある。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、検体の分析が完了する時刻を統計的な計算により予想した予想完了時刻に基づいて優先度遷移モデルを作成する優先度更新手段を有する。これにより、予想完了時刻が目標完了時刻を上回った時点で検体の優先度を最大値に設定でき、目標完了時刻内に検体の分析が完了する可能性を高めることができる。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、時間軸グラフに検体毎の投入時刻と目標完了時刻と予想完了時刻とをプロットし、目標完了時刻のプロットをスライド式に変更して目標完了時刻の設定を可能とする。これにより、予想完了時刻を参照しながら目標完了時刻を設定できると共に、ある検体の優先度の変更が他の検体に与える予想完了時刻の変動を確認できる。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、優先度更新手段により検体の優先度を更新した際に、優先度が高い検体と分析ユニット内で分注している検体とを入れ替える検体入れ替え手段を有する。これにより、高優先度の検体を即座に分注・分析でき、目標完了時刻内に検体の分析が完了する可能性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を、図面を交えながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例である自動分析装置の一構成例を示している。本発明の自動分析装置は、自動分析装置を制御する制御コンピュータ100と自動分析装置のハードウェアである自動分析装置本体105からなる。制御コンピュータ100には、メモリやハードディスクなどの記憶装置104、プログラムを演算・実行するCPU101、ディスプレイなどの表示装置102、マウスやキーボードなどの入力装置103で構成される。記憶装置104には、検体の投入時の優先度を決定する初期優先度決定手段111、検体の優先度を更新する処理である優先度更新手段112、目標完了時刻などの検体毎の情報を記録する検体情報121が格納されており、これらは必要に応じてCPU101に読み出されて実行される。自動分析装置本体105は、装置内のプログラムを演算・実行するCPU106 、装置内の情報を記憶するメモリ等の記憶装置107、自動分析装置のハードウェア108からなる。記憶装置107には、分析ユニットへの搬送待ち検体の情報を格納した検体待機情報122が格納されており、必要に応じてCPU106に読み出される。自動分析装置のハードウェア108は、検体に添付されたバーコードを読み取るバーコードリーダと、検体を分注してその成分を分析する複数の分析ユニットと、検体を分析ユニットへ搬送する前に一時的に待機させることが可能なランダムアクセスバッファとからなる。
【0015】
図4に検体の処理フローを示す。検体が自動分析装置に投入されると、自動分析装置本体105はバーコードリーダにより検体を認識する(ステップ402)。自動分析装置本体105は、検体のバーコードを読み取ると、検体に関する以下の情報を検出する。まず、検体ID201(検体を一意に識別する情報)はバーコード情報そのものである。検体種別202(一般検体/緊急検体のいずれか)は、自動分析装置本体105が緊急ポジションで検体を認識した場合は緊急検体、通常のポジションで認識した場合は一般検体とする。検体投入時刻203(自動分析装置が検体を認識した時刻)は自動分析装置本体105がバーコードを読み取った時刻とする。これらの情報をネットワーク経由で制御コンピュータ100に送信する(ステップ403)。制御コンピュータ100はこれらの情報を検体情報121に記録し、後述する初期優先度決定手段111を用いて、検体の優先度の初期値を表す初期優先度206と、検体に割当可能な最大の優先度を表す最高優先度207を決定する(ステップ404)。検体の優先度は、例えば値が大きいほど優先度が高いと定義する。更新した検体の優先度を制御コンピュータ100からネットワーク経由で自動分析装置本体105に送信する(ステップ405)。自動分析装置本体105が検体の優先度を受信した時、自動分析装置本体105の検体待機情報122の検体の順序を、検体の優先度が高い順序となるようにソートする(ステップ406)。その後、該検体を一時待機可能なランダムアクセスバッファに搬送する(ステップ407)。自動分析装置本体105は、検体待機情報122から分析ユニット毎にキューの先頭の検体(優先度が最も高い検体)を選択し、該検体をランダムアクセスバッファから分析ユニットへ搬送する(ステップ408)。分析ユニットでの分注が完了すれば、検体の残分析項目に基づいて別の分析ユニットで分析する必要があるかどうかを判定する(ステップ409)。別の分析ユニットで分析する必要があれば、ステップ407とステップ408を再度実施する。別の分析ユニットで分析する必要が無くなれば、検体を自動分析装置から搬出する(ステップ410)。
【0016】
図5にステップ404における初期優先度決定手段111の処理の一例を示す。初期優先度決定手段111は、検体情報121の検体種別202を参照し、一般検体であれば、例えば初期優先度206を1、最高優先度207を10と設定する(ステップ502)。緊急検体であれば、例えば初期優先度206を11、最高優先度207を20とする(ステップ503)。検体の初期優先度206と最高優先度207は、検体種別毎にユーザが設定可能な値とする。上記の例のように、一般検体と緊急検体の値域が重複せず、緊急検体の優先度が一般検体の優先度を常に上回るように設定すると、緊急ポジションに設置された緊急検体は必ず一般検体を追い越すことが可能となる。逆に、一般検体と緊急検体の値域を重複させると、一般検体であっても緊急検体を追い越すことが可能となる。優先度の上限値は、ユーザが設定した一般検体と緊急検体の最高優先度のうち、大きい方の値となる。この値が大きいほど検体の優先度のばらつきが大きくなり、優先度の比較が正確になる。
【0017】
検体の優先度は、検体がステップ407からステップ409を繰り返している間に、後述する優先度更新手段112を用いて更新する。検体の優先度を更新するタイミングは以下の2点とする。第一に、検体の優先度を定期的に更新するために、例えば1分毎に起動するタイマを使用し、優先度更新手段112を起動する。タイマの時間間隔は短いほど検体の優先度が正確になるが、優先度更新処理の負荷も上がるため、CPU101 が過負荷にならない程度の時間間隔とするのがよい。第二に、検体の分析を完了する目標の時刻である目標完了時刻204をユーザが変更した際に、優先度更新手段112を起動する。これは、変更内容を即座に反映するためである。
【0018】
検体の優先度更新手段112の処理の一例を図6に示す。まず、検体の投入時刻203と目標完了時刻204に基づいて優先度遷移モデルを作成する(ステップ602)。優先度遷移モデルは、例えば図7に示すように、検体の投入時刻711が初期優先度703の値となる点を始点、目標完了時刻713において最高優先度701の値となる点を終点とする線形関数と、目標完了時刻713以降は最高優先度701の値となる関数を組み合わせたモデルとする。時間と共に単調増加する関数を優先度遷移モデルとすることで、検体の投入時刻711から現在時刻712までの経過時間に応じて検体の優先度を単調に増加できるため、長時間待機している検体ほど検体の優先度を高く設定できる。次に、ステップ602にて作成した優先度遷移モデルを用いて検体の優先度205を決定する。検体の優先度205は、現在時刻712が目標完了時刻713を下回る場合には、検体の投入時刻711が初期優先度703となる点を始点、目標完了時刻713が最高優先度701となる点を終点とする線形関数に現在時刻712を入力し、その出力を検体の優先度205に設定する。出力が整数値とならない場合、小数点以下を切り捨てて整数値とする。現在時刻712が目標完了時刻713を上回る場合には、最高優先度701の値を検体の優先度205に設定する(ステップ603)。優先度更新手段112により更新した検体の優先度205は、制御コンピュータ100からネットワーク経由で自動分析装置本体105に送信する(ステップ604)。自動分析装置本体105が検体の優先度を受信した時、自動分析装置本体105の検体待機情報122の検体の順序を、検体の優先度が高い順序となるようにソートする。(ステップ605)。自動分析装置本体105は、検体待機情報122から分析ユニット毎にキューの先頭の検体(優先度が最も高い検体)を選択し、該検体をランダムアクセスバッファから分析ユニットへ搬送することで、高優先度の検体を優先的に分注する。
【0019】
図2に検体情報121のデータ構造の一例を示す。検体ID201は検体を一意に識別するための情報であり、バーコードリーダで読み取った検体のバーコード情報である。検体種別202は検体の種類を表す情報であり、例えば通常の検体は一般とし、特別に早く分析したい検体は緊急とする。ユーザは、検体投入時に自動分析装置105へ検体を設置するポジションにより検体種別202を指定できる。投入時刻203は検体を自動分析装置に投入した時刻であり、例えば自動分析装置本体105が検体の検出器にて検体を認識した時刻とする。検体ID201、検体種別202、投入時刻203は、ステップ403にて制御コンピュータ100が自動分析装置本体105から検体情報を受信した際に設定する。目標完了時刻204は検体の分析を完了させる目標時刻である。目標完了時刻204は、表示装置102と入力装置103にてユーザが設定可能な値であり、初期値はユーザが検体の一時待機を許容できる程度の時間の長さ、例えば検体の投入時刻203から1時間後の時刻とする。初期優先度206は検体投入時の優先度、最高優先度207は検体毎に設定可能な最大の優先度である。初期優先度206と最高優先度207は、ステップ403にて制御コンピュータ100が自動分析装置本体105から検体情報を受信した際に、初期優先度決定手段111により決定する値である。現在の優先度205は検体の現在の優先度であり、優先度更新手段112のステップ603により更新する。
【0020】
図3に検体待機情報122のデータ構造の一例を示す。分析ユニット毎のキュー301、302は自動分析装置を構成する分析ユニットに対する検体のキューである。ステップ405またはステップ604において、制御コンピュータ100から自動分析装置本体105に検体毎の優先度を送信すると、自動分析装置本体105は検体待機情報122の検体ID311、313から該当する検体を検索し、該検体の優先度312、314を更新する。該当する検体が無ければ、新たに検体IDと優先度の組をキューに追加する。その後、自動分析装置本体105が検体の優先度が高い順に検体待機情報122をソートする。自動分析装置本体105は、検体待機情報122の先頭から順番に検体を選択し、該検体をランダムアクセスバッファから分析ユニットに搬送して分注し、分析を実施する。
【0021】
図8に表示装置102における目標完了時刻入力画面を示す。目標完了時刻入力画面は、メニューボタン801、検体情報表示エリア802、更新ボタン803から成る。メニューボタンは、自動分析装置を操作するメニューを表示するボタンであり、検体優先度の設定に関わるボタン801や他の設定に関するボタンなどを表示する。検体情報表示エリアは検体情報121を表示する部品であり、検体IDや検体種別、検体の優先度、検体投入時刻、目標完了時刻などを表示する。目標完了時刻はユーザ設定とするために、例えば時間をアップダウン可能な部品を使用する。更新ボタン803が押されると、ユーザが設定した目標完了時刻をDBに保存すると共に、優先度遷移モデルに基づいて検体の優先度を設定し直し、検体情報表示エリア802を再表示する。
以上のように、本実施例では、時間の経過とともに検体の優先度を徐々に上げることができ、検体がランダムアクセスバッファで長時間待機する状況を回避できる効果がある。
【0022】
上記実施例では、優先度遷移モデルを線形関数としたが、図9に示すように、検体の分析が完了する予想完了時刻914を統計的に計算し、予想完了時刻914が目標完了時刻913を上回った時点で、現在時刻912における検体の優先度205を最高優先度901と等しくすることも可能である。優先度更新のターゲットである目的検体の予想完了時刻を統計的に計算する式を以下に示す。
予想完了時間 = Σ(目的検体よりも高優先度検体の分注所要時間
+検体の平均搬送コスト(ランダムアクセスバッファ〜分析ユニット間))
+Σ(ランダムアクセスバッファ間平均搬送コスト)
目的検体よりも優先度が高い検体の分注所要時間は、検体待機情報122のキューにおいて、目的検体よりも上位に登録されている検体が必要とする分注所要時間である。分析ユニットでの分注所要時間は、自動分析装置本体105が一回の分注動作に要する時間と、検体が分析するべき項目数を用いて以下の式で計算する。
分注所要時間 = Σ(項目数×装置のサイクル数)
平均搬送コストは、検体の搬送動作の実行に必要な時間であり、自動分析装置本体105のハードウェア108の機構系動作に基づいて統計的に算出した値を用いる。このように、予想完了時刻914が目標完了時刻913を上回った時点で検体の優先度205を最大値に設定することにより、目標完了時刻内に検体の分析が完了する可能性を高めることができる。
【0023】
上記実施例では、予想完了時刻914を優先度遷移モデルにおいて使用したが、表示装置102でも使用できる。予想完了時刻を用いた目標完了時刻設定画面を図10に示す。メニューボタン1001、検体情報表示エリア1002、検体グラフ表示エリア1003、更新ボタン1004から成る。メニューボタンは、自動分析装置を操作するメニューを表示するボタンであり、検体優先度の設定に関わるボタン1001や他の設定に関するボタンなどを表示する。検体情報表示エリアは検体情報121を表示する部品であり、検体IDや検体種別、検体の現在の優先度205、投入時刻203、目標完了時刻204、予想完了時刻914などを表示する。検体グラフ表示エリア1003は、検体の投入時刻203、目標完了時刻204、予想完了時刻914を検体毎に時間軸上に表示し、目標完了時刻のプロットを左右にスライドさせて設定する。更新ボタン1004が押されると、ユーザが設定した目標完了時刻をDBに保存すると共に、優先度遷移モデルに基づいて検体の優先度を設定し直す。また、検体毎の予想完了時刻914も計算し直し、検体情報表示エリア1002と検体グラフ表示エリア1003を再表示する。このように、予想完了時刻を参照しながら目標完了時刻を設定できると共に、ある検体の優先度の変更が他の検体に与える予想完了時刻の変動を確認できる。
【0024】
上記実施例では、ランダムアクセスバッファから分析ユニットへ検体を搬送する際に、高優先度の検体を優先的に選択して搬送したが、ランダムアクセスバッファ内で待機している検体と分析ユニット内で分注している検体を入れ替えても良い。検体を入れ替える処理フローを図11に示す。ステップ406またはステップ605にて検体待機情報122のソート順序を変更したとき、各分析ユニットについて、キューの先頭の検体の優先度205と該分析ユニット内の検体の優先度205をチェックし、検体の入れ替えが必要かどうかを判断する(ステップ1102)。キューの先頭の検体の優先度205が最高優先度207と等しく、かつ、分析ユニット内の検体の優先度205を超えていた場合、入れ替えが必要と判断して次のステップを実施する。超えていなければ、入れ替えは不要と判断して処理を終了する。入れ替えが必要な場合、分析ユニット内の検体の分注を停止し(ステップ1103)、該検体をランダムアクセスバッファに搬送する(ステップ1104)。搬送完了後、該検体を検体待機情報122のキューに登録する(ステップ1105)。最後に、検体待機情報122のキューの先頭の検体をランダムアクセスバッファから分析ユニットに搬送する(ステップ1106)。このように、最高優先度の検体と分析ユニット内の検体とを入れ替えることで、最高優先度の検体を即座に分注・分析できるようになり、目標完了時刻内に検体の分析が完了する可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の自動分析装置の構成を示す図。
【図2】検体情報のデータ構造を示す図。
【図3】検体待機情報のデータ構造を示す図。
【図4】自動分析装置における検体のフローを示すフローチャート。
【図5】初期優先度設定手段の手順を示すフローチャート。
【図6】優先度更新手段の手順を示すフローチャート。
【図7】優先度遷移モデルを示す図。
【図8】目標完了時刻設定画面を示す図。
【図9】予想完了時刻に基づく優先度遷移モデルを示す図。
【図10】予想完了時刻を用いた目標完了時刻設定画面を示す図。
【図11】検体の入れ替え手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0026】
100…制御コンピュータ、101…CPU、102…表示装置、103…入力装置、104…記憶装置、105…自動分析装置本体、106…CPU、107…記憶装置、108…自動分析装置ハードウェア、111…初期優先度決定手段、112…優先度更新手段、113…検体入れ替え手段、121…検体情報、122…検体待機情報、201…検体ID、202…検体種別、203…投入時刻、204…目標完了時刻、205…優先度、206…初期優先度、207…最高優先度、301…分析ユニット1のキュー、302…分析ユニット2のキュー、311…分析ユニット1のキュー内の検体の検体ID、312…分析ユニット1のキュー内の検体の優先度、313…分析ユニット2のキュー内の検体の検体ID、314…分析ユニット2のキュー内の検体の優先度、401…優先度設定開始ステップ、402…検体検出ステップ、403…検体情報送信ステップ、404…優先度設定ステップ、405…検体の優先度送信ステップ、406…検体待機情報更新ステップ、407…ランダムアクセスバッファへの搬送ステップ、408…分析ユニットへの搬送/分注ステップ、409…残分析ユニット判定ステップ、410…検体搬出ステップ、411…優先度設定終了ステップ、501…初期優先度設定開始ステップ、502…一般検体の初期優先度設定ステップ、503…緊急検体の初期優先度更新ステップ、504…初期優先度設定終了ステップ、601…優先度更新開始ステップ、602…優先度遷移モデル作成ステップ、603…現在の優先度計算ステップ、604…検体の優先度送信ステップ、605…検体待機情報更新ステップ、606…優先度更新終了ステップ、701…最高優先度、702…現在の優先度、703…初期優先度、711…検体投入時刻、712…現在時刻、713…目標完了時刻、801…優先度メニューボタン、802…検体情報表示エリア、803…更新ボタン、901…最高優先度、902…初期優先度、911…検体投入時刻、912…現在時刻、913…目標完了時刻、914…予想完了時刻、1001…優先度メニューボタン、1002…検体情報表示エリア、1003…検体グラフ表示エリア、1004…更新ボタン、1101…検体の入れ替え手順開始ステップ、1102…入れ替え可能判定ステップ、1103…分注停止ステップ、1104…ランダムアクセスバッファへの検体搬送ステップ、1105…検体待機情報登録ステップ、1106…分析ユニットへの倦怠搬送ステップ、1107…検体の入れ替え手順終了ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の成分を分析する自動分析装置に係り、特に、検体を分注して分析を実施する分析ユニットと、検体を分析ユニットに搬送する前に一時待機させることが可能なランダムアクセスバッファとを有する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の検体を優先的に分析する自動分析装置として、特許文献1、特許文献2、特許文献3がある。特許文献1では、検体の分析を依頼した場所である分析依頼場所に緊急レベルを関連付け、緊急レベルと優先度の関係を定義したテーブルを用いて検体の優先度を設定し、優先度の高い検体を優先的に分析する自動分析装置が示されている。特許文献2では、優先的に分析するべき検体を設置したラックを指定し、レーンチェンジャを用いて通常レーンから優先レーンに移送し、優先レーンのラックを優先的に搬送する自動分析装置が示されている。特許文献3では、予め検査項目毎に分析の緊急性を表す緊急レベルを設定し、緊急レベルの高い順に検査項目の分析を実施する自動分析装置が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−3236号公報
【特許文献2】特開2003−83994号公報
【特許文献3】特開平5−322906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検体を自動分析装置に投入した後、検体の優先度を動的に変更できなかった。このため、緊急検体以外の一般検体がランダムアクセスバッファ内で長時間待機する場合があり、検体蒸発により異常値を示すことがあった。
本発明の目的は、上記課題を解決し、検体を装置に投入した後であっても、目標完了時刻内に分析が完了するように検体の優先度を動的に変更することが可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し、目的を実現するために、本発明の自動分析装置は、検体投入時に検体の初期の優先度である初期優先度と検体に割付可能な最大の優先度である最高優先度を設定する初期優先度設定手段と、検体が装置に投入された時刻である検体投入時刻と、検体の分析を完了させる目標時刻である目標完了時刻と、時刻の経過とともに検体の優先度を変更する度合い表す優先度遷移モデルとに基づいて検体の優先度を動的に更新する優先度更新手段と、前記目標完了時刻を入力する目標完了時刻入力画面を有することを特徴としている。
【0006】
さらに、優先度遷移モデルは、検体の分析が完了する時刻を統計的な計算により予想した予想完了時刻に基づいて優先度遷移モデルを作成する優先度更新手段を有することを特徴としている。
【0007】
さらに、目標完了時刻入力画面は、時間軸グラフに検体毎の投入時刻と目標完了時刻と予想完了時刻とをプロットし、目標完了時刻のプロットをスライド式に変更して目標完了時刻の設定が可能なことを特徴としている。
【0008】
さらに、優先度更新手段により検体の優先度を更新した際に、優先度が高い検体と分析ユニット内で分注している検体とを入れ替える検体入れ替え手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動分析装置は、検体投入時に検体の初期の優先度である初期優先度と検体に割付可能な最大の優先度である最高優先度を設定する初期優先度設定手段と、検体が装置に投入された時刻である検体投入時刻と、検体の分析を完了させる目標時刻である目標完了時刻と、時刻の経過とともに検体の優先度を変更する度合い表す優先度遷移モデルとに基づいて検体の優先度を動的に更新する優先度更新手段と、目標完了時刻を入力する目標完了時刻入力画面を有する。これにより、時間の経過とともに検体の優先度を徐々に上げることができ、検体がランダムアクセスバッファで長時間待機する状況を回避できる効果がある。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、検体の分析が完了する時刻を統計的な計算により予想した予想完了時刻に基づいて優先度遷移モデルを作成する優先度更新手段を有する。これにより、予想完了時刻が目標完了時刻を上回った時点で検体の優先度を最大値に設定でき、目標完了時刻内に検体の分析が完了する可能性を高めることができる。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、時間軸グラフに検体毎の投入時刻と目標完了時刻と予想完了時刻とをプロットし、目標完了時刻のプロットをスライド式に変更して目標完了時刻の設定を可能とする。これにより、予想完了時刻を参照しながら目標完了時刻を設定できると共に、ある検体の優先度の変更が他の検体に与える予想完了時刻の変動を確認できる。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、優先度更新手段により検体の優先度を更新した際に、優先度が高い検体と分析ユニット内で分注している検体とを入れ替える検体入れ替え手段を有する。これにより、高優先度の検体を即座に分注・分析でき、目標完了時刻内に検体の分析が完了する可能性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を、図面を交えながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例である自動分析装置の一構成例を示している。本発明の自動分析装置は、自動分析装置を制御する制御コンピュータ100と自動分析装置のハードウェアである自動分析装置本体105からなる。制御コンピュータ100には、メモリやハードディスクなどの記憶装置104、プログラムを演算・実行するCPU101、ディスプレイなどの表示装置102、マウスやキーボードなどの入力装置103で構成される。記憶装置104には、検体の投入時の優先度を決定する初期優先度決定手段111、検体の優先度を更新する処理である優先度更新手段112、目標完了時刻などの検体毎の情報を記録する検体情報121が格納されており、これらは必要に応じてCPU101に読み出されて実行される。自動分析装置本体105は、装置内のプログラムを演算・実行するCPU106 、装置内の情報を記憶するメモリ等の記憶装置107、自動分析装置のハードウェア108からなる。記憶装置107には、分析ユニットへの搬送待ち検体の情報を格納した検体待機情報122が格納されており、必要に応じてCPU106に読み出される。自動分析装置のハードウェア108は、検体に添付されたバーコードを読み取るバーコードリーダと、検体を分注してその成分を分析する複数の分析ユニットと、検体を分析ユニットへ搬送する前に一時的に待機させることが可能なランダムアクセスバッファとからなる。
【0015】
図4に検体の処理フローを示す。検体が自動分析装置に投入されると、自動分析装置本体105はバーコードリーダにより検体を認識する(ステップ402)。自動分析装置本体105は、検体のバーコードを読み取ると、検体に関する以下の情報を検出する。まず、検体ID201(検体を一意に識別する情報)はバーコード情報そのものである。検体種別202(一般検体/緊急検体のいずれか)は、自動分析装置本体105が緊急ポジションで検体を認識した場合は緊急検体、通常のポジションで認識した場合は一般検体とする。検体投入時刻203(自動分析装置が検体を認識した時刻)は自動分析装置本体105がバーコードを読み取った時刻とする。これらの情報をネットワーク経由で制御コンピュータ100に送信する(ステップ403)。制御コンピュータ100はこれらの情報を検体情報121に記録し、後述する初期優先度決定手段111を用いて、検体の優先度の初期値を表す初期優先度206と、検体に割当可能な最大の優先度を表す最高優先度207を決定する(ステップ404)。検体の優先度は、例えば値が大きいほど優先度が高いと定義する。更新した検体の優先度を制御コンピュータ100からネットワーク経由で自動分析装置本体105に送信する(ステップ405)。自動分析装置本体105が検体の優先度を受信した時、自動分析装置本体105の検体待機情報122の検体の順序を、検体の優先度が高い順序となるようにソートする(ステップ406)。その後、該検体を一時待機可能なランダムアクセスバッファに搬送する(ステップ407)。自動分析装置本体105は、検体待機情報122から分析ユニット毎にキューの先頭の検体(優先度が最も高い検体)を選択し、該検体をランダムアクセスバッファから分析ユニットへ搬送する(ステップ408)。分析ユニットでの分注が完了すれば、検体の残分析項目に基づいて別の分析ユニットで分析する必要があるかどうかを判定する(ステップ409)。別の分析ユニットで分析する必要があれば、ステップ407とステップ408を再度実施する。別の分析ユニットで分析する必要が無くなれば、検体を自動分析装置から搬出する(ステップ410)。
【0016】
図5にステップ404における初期優先度決定手段111の処理の一例を示す。初期優先度決定手段111は、検体情報121の検体種別202を参照し、一般検体であれば、例えば初期優先度206を1、最高優先度207を10と設定する(ステップ502)。緊急検体であれば、例えば初期優先度206を11、最高優先度207を20とする(ステップ503)。検体の初期優先度206と最高優先度207は、検体種別毎にユーザが設定可能な値とする。上記の例のように、一般検体と緊急検体の値域が重複せず、緊急検体の優先度が一般検体の優先度を常に上回るように設定すると、緊急ポジションに設置された緊急検体は必ず一般検体を追い越すことが可能となる。逆に、一般検体と緊急検体の値域を重複させると、一般検体であっても緊急検体を追い越すことが可能となる。優先度の上限値は、ユーザが設定した一般検体と緊急検体の最高優先度のうち、大きい方の値となる。この値が大きいほど検体の優先度のばらつきが大きくなり、優先度の比較が正確になる。
【0017】
検体の優先度は、検体がステップ407からステップ409を繰り返している間に、後述する優先度更新手段112を用いて更新する。検体の優先度を更新するタイミングは以下の2点とする。第一に、検体の優先度を定期的に更新するために、例えば1分毎に起動するタイマを使用し、優先度更新手段112を起動する。タイマの時間間隔は短いほど検体の優先度が正確になるが、優先度更新処理の負荷も上がるため、CPU101 が過負荷にならない程度の時間間隔とするのがよい。第二に、検体の分析を完了する目標の時刻である目標完了時刻204をユーザが変更した際に、優先度更新手段112を起動する。これは、変更内容を即座に反映するためである。
【0018】
検体の優先度更新手段112の処理の一例を図6に示す。まず、検体の投入時刻203と目標完了時刻204に基づいて優先度遷移モデルを作成する(ステップ602)。優先度遷移モデルは、例えば図7に示すように、検体の投入時刻711が初期優先度703の値となる点を始点、目標完了時刻713において最高優先度701の値となる点を終点とする線形関数と、目標完了時刻713以降は最高優先度701の値となる関数を組み合わせたモデルとする。時間と共に単調増加する関数を優先度遷移モデルとすることで、検体の投入時刻711から現在時刻712までの経過時間に応じて検体の優先度を単調に増加できるため、長時間待機している検体ほど検体の優先度を高く設定できる。次に、ステップ602にて作成した優先度遷移モデルを用いて検体の優先度205を決定する。検体の優先度205は、現在時刻712が目標完了時刻713を下回る場合には、検体の投入時刻711が初期優先度703となる点を始点、目標完了時刻713が最高優先度701となる点を終点とする線形関数に現在時刻712を入力し、その出力を検体の優先度205に設定する。出力が整数値とならない場合、小数点以下を切り捨てて整数値とする。現在時刻712が目標完了時刻713を上回る場合には、最高優先度701の値を検体の優先度205に設定する(ステップ603)。優先度更新手段112により更新した検体の優先度205は、制御コンピュータ100からネットワーク経由で自動分析装置本体105に送信する(ステップ604)。自動分析装置本体105が検体の優先度を受信した時、自動分析装置本体105の検体待機情報122の検体の順序を、検体の優先度が高い順序となるようにソートする。(ステップ605)。自動分析装置本体105は、検体待機情報122から分析ユニット毎にキューの先頭の検体(優先度が最も高い検体)を選択し、該検体をランダムアクセスバッファから分析ユニットへ搬送することで、高優先度の検体を優先的に分注する。
【0019】
図2に検体情報121のデータ構造の一例を示す。検体ID201は検体を一意に識別するための情報であり、バーコードリーダで読み取った検体のバーコード情報である。検体種別202は検体の種類を表す情報であり、例えば通常の検体は一般とし、特別に早く分析したい検体は緊急とする。ユーザは、検体投入時に自動分析装置105へ検体を設置するポジションにより検体種別202を指定できる。投入時刻203は検体を自動分析装置に投入した時刻であり、例えば自動分析装置本体105が検体の検出器にて検体を認識した時刻とする。検体ID201、検体種別202、投入時刻203は、ステップ403にて制御コンピュータ100が自動分析装置本体105から検体情報を受信した際に設定する。目標完了時刻204は検体の分析を完了させる目標時刻である。目標完了時刻204は、表示装置102と入力装置103にてユーザが設定可能な値であり、初期値はユーザが検体の一時待機を許容できる程度の時間の長さ、例えば検体の投入時刻203から1時間後の時刻とする。初期優先度206は検体投入時の優先度、最高優先度207は検体毎に設定可能な最大の優先度である。初期優先度206と最高優先度207は、ステップ403にて制御コンピュータ100が自動分析装置本体105から検体情報を受信した際に、初期優先度決定手段111により決定する値である。現在の優先度205は検体の現在の優先度であり、優先度更新手段112のステップ603により更新する。
【0020】
図3に検体待機情報122のデータ構造の一例を示す。分析ユニット毎のキュー301、302は自動分析装置を構成する分析ユニットに対する検体のキューである。ステップ405またはステップ604において、制御コンピュータ100から自動分析装置本体105に検体毎の優先度を送信すると、自動分析装置本体105は検体待機情報122の検体ID311、313から該当する検体を検索し、該検体の優先度312、314を更新する。該当する検体が無ければ、新たに検体IDと優先度の組をキューに追加する。その後、自動分析装置本体105が検体の優先度が高い順に検体待機情報122をソートする。自動分析装置本体105は、検体待機情報122の先頭から順番に検体を選択し、該検体をランダムアクセスバッファから分析ユニットに搬送して分注し、分析を実施する。
【0021】
図8に表示装置102における目標完了時刻入力画面を示す。目標完了時刻入力画面は、メニューボタン801、検体情報表示エリア802、更新ボタン803から成る。メニューボタンは、自動分析装置を操作するメニューを表示するボタンであり、検体優先度の設定に関わるボタン801や他の設定に関するボタンなどを表示する。検体情報表示エリアは検体情報121を表示する部品であり、検体IDや検体種別、検体の優先度、検体投入時刻、目標完了時刻などを表示する。目標完了時刻はユーザ設定とするために、例えば時間をアップダウン可能な部品を使用する。更新ボタン803が押されると、ユーザが設定した目標完了時刻をDBに保存すると共に、優先度遷移モデルに基づいて検体の優先度を設定し直し、検体情報表示エリア802を再表示する。
以上のように、本実施例では、時間の経過とともに検体の優先度を徐々に上げることができ、検体がランダムアクセスバッファで長時間待機する状況を回避できる効果がある。
【0022】
上記実施例では、優先度遷移モデルを線形関数としたが、図9に示すように、検体の分析が完了する予想完了時刻914を統計的に計算し、予想完了時刻914が目標完了時刻913を上回った時点で、現在時刻912における検体の優先度205を最高優先度901と等しくすることも可能である。優先度更新のターゲットである目的検体の予想完了時刻を統計的に計算する式を以下に示す。
予想完了時間 = Σ(目的検体よりも高優先度検体の分注所要時間
+検体の平均搬送コスト(ランダムアクセスバッファ〜分析ユニット間))
+Σ(ランダムアクセスバッファ間平均搬送コスト)
目的検体よりも優先度が高い検体の分注所要時間は、検体待機情報122のキューにおいて、目的検体よりも上位に登録されている検体が必要とする分注所要時間である。分析ユニットでの分注所要時間は、自動分析装置本体105が一回の分注動作に要する時間と、検体が分析するべき項目数を用いて以下の式で計算する。
分注所要時間 = Σ(項目数×装置のサイクル数)
平均搬送コストは、検体の搬送動作の実行に必要な時間であり、自動分析装置本体105のハードウェア108の機構系動作に基づいて統計的に算出した値を用いる。このように、予想完了時刻914が目標完了時刻913を上回った時点で検体の優先度205を最大値に設定することにより、目標完了時刻内に検体の分析が完了する可能性を高めることができる。
【0023】
上記実施例では、予想完了時刻914を優先度遷移モデルにおいて使用したが、表示装置102でも使用できる。予想完了時刻を用いた目標完了時刻設定画面を図10に示す。メニューボタン1001、検体情報表示エリア1002、検体グラフ表示エリア1003、更新ボタン1004から成る。メニューボタンは、自動分析装置を操作するメニューを表示するボタンであり、検体優先度の設定に関わるボタン1001や他の設定に関するボタンなどを表示する。検体情報表示エリアは検体情報121を表示する部品であり、検体IDや検体種別、検体の現在の優先度205、投入時刻203、目標完了時刻204、予想完了時刻914などを表示する。検体グラフ表示エリア1003は、検体の投入時刻203、目標完了時刻204、予想完了時刻914を検体毎に時間軸上に表示し、目標完了時刻のプロットを左右にスライドさせて設定する。更新ボタン1004が押されると、ユーザが設定した目標完了時刻をDBに保存すると共に、優先度遷移モデルに基づいて検体の優先度を設定し直す。また、検体毎の予想完了時刻914も計算し直し、検体情報表示エリア1002と検体グラフ表示エリア1003を再表示する。このように、予想完了時刻を参照しながら目標完了時刻を設定できると共に、ある検体の優先度の変更が他の検体に与える予想完了時刻の変動を確認できる。
【0024】
上記実施例では、ランダムアクセスバッファから分析ユニットへ検体を搬送する際に、高優先度の検体を優先的に選択して搬送したが、ランダムアクセスバッファ内で待機している検体と分析ユニット内で分注している検体を入れ替えても良い。検体を入れ替える処理フローを図11に示す。ステップ406またはステップ605にて検体待機情報122のソート順序を変更したとき、各分析ユニットについて、キューの先頭の検体の優先度205と該分析ユニット内の検体の優先度205をチェックし、検体の入れ替えが必要かどうかを判断する(ステップ1102)。キューの先頭の検体の優先度205が最高優先度207と等しく、かつ、分析ユニット内の検体の優先度205を超えていた場合、入れ替えが必要と判断して次のステップを実施する。超えていなければ、入れ替えは不要と判断して処理を終了する。入れ替えが必要な場合、分析ユニット内の検体の分注を停止し(ステップ1103)、該検体をランダムアクセスバッファに搬送する(ステップ1104)。搬送完了後、該検体を検体待機情報122のキューに登録する(ステップ1105)。最後に、検体待機情報122のキューの先頭の検体をランダムアクセスバッファから分析ユニットに搬送する(ステップ1106)。このように、最高優先度の検体と分析ユニット内の検体とを入れ替えることで、最高優先度の検体を即座に分注・分析できるようになり、目標完了時刻内に検体の分析が完了する可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の自動分析装置の構成を示す図。
【図2】検体情報のデータ構造を示す図。
【図3】検体待機情報のデータ構造を示す図。
【図4】自動分析装置における検体のフローを示すフローチャート。
【図5】初期優先度設定手段の手順を示すフローチャート。
【図6】優先度更新手段の手順を示すフローチャート。
【図7】優先度遷移モデルを示す図。
【図8】目標完了時刻設定画面を示す図。
【図9】予想完了時刻に基づく優先度遷移モデルを示す図。
【図10】予想完了時刻を用いた目標完了時刻設定画面を示す図。
【図11】検体の入れ替え手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0026】
100…制御コンピュータ、101…CPU、102…表示装置、103…入力装置、104…記憶装置、105…自動分析装置本体、106…CPU、107…記憶装置、108…自動分析装置ハードウェア、111…初期優先度決定手段、112…優先度更新手段、113…検体入れ替え手段、121…検体情報、122…検体待機情報、201…検体ID、202…検体種別、203…投入時刻、204…目標完了時刻、205…優先度、206…初期優先度、207…最高優先度、301…分析ユニット1のキュー、302…分析ユニット2のキュー、311…分析ユニット1のキュー内の検体の検体ID、312…分析ユニット1のキュー内の検体の優先度、313…分析ユニット2のキュー内の検体の検体ID、314…分析ユニット2のキュー内の検体の優先度、401…優先度設定開始ステップ、402…検体検出ステップ、403…検体情報送信ステップ、404…優先度設定ステップ、405…検体の優先度送信ステップ、406…検体待機情報更新ステップ、407…ランダムアクセスバッファへの搬送ステップ、408…分析ユニットへの搬送/分注ステップ、409…残分析ユニット判定ステップ、410…検体搬出ステップ、411…優先度設定終了ステップ、501…初期優先度設定開始ステップ、502…一般検体の初期優先度設定ステップ、503…緊急検体の初期優先度更新ステップ、504…初期優先度設定終了ステップ、601…優先度更新開始ステップ、602…優先度遷移モデル作成ステップ、603…現在の優先度計算ステップ、604…検体の優先度送信ステップ、605…検体待機情報更新ステップ、606…優先度更新終了ステップ、701…最高優先度、702…現在の優先度、703…初期優先度、711…検体投入時刻、712…現在時刻、713…目標完了時刻、801…優先度メニューボタン、802…検体情報表示エリア、803…更新ボタン、901…最高優先度、902…初期優先度、911…検体投入時刻、912…現在時刻、913…目標完了時刻、914…予想完了時刻、1001…優先度メニューボタン、1002…検体情報表示エリア、1003…検体グラフ表示エリア、1004…更新ボタン、1101…検体の入れ替え手順開始ステップ、1102…入れ替え可能判定ステップ、1103…分注停止ステップ、1104…ランダムアクセスバッファへの検体搬送ステップ、1105…検体待機情報登録ステップ、1106…分析ユニットへの倦怠搬送ステップ、1107…検体の入れ替え手順終了ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分注してその成分を分析する分析ユニットと、
前記検体を前記分析ユニットに搬送する前に一時待機させることが可能なランダムアクセスバッファを有する自動分析装置において、
前記検体投入時に前記検体の初期の優先度である初期優先度と前記検体に割付可能な最大の優先度である最高優先度を設定する初期優先度設定手段と、
前記検体が装置に投入された時刻である検体投入時刻と、
前記検体の分析を完了させる目標時刻である目標完了時刻と、時刻の経過とともに前記検体の優先度を変更する度合い表す優先度遷移モデルとに基づいて前記検体の優先度を動的に更新する優先度更新手段と、
前記目標完了時刻を入力する目標完了時刻入力画面を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記優先度遷移モデルは、検体の分析が完了する時刻を統計的な計算により予想した予想完了時刻に基づいて優先度遷移モデルを作成する優先度更新手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記目標完了時刻入力画面は、時間軸グラフに検体毎の投入時刻と目標完了時刻と予想完了時刻とをプロットし、前記目標完了時刻のプロットをスライド式に変更して目標完了時刻の設定が可能なことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の自動分析装置において、
前記優先度更新手段により検体の優先度を更新した際に、優先度が高い検体と前記分析ユニット内で分注している検体とを入れ替える検体入れ替え手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項1】
検体を分注してその成分を分析する分析ユニットと、
前記検体を前記分析ユニットに搬送する前に一時待機させることが可能なランダムアクセスバッファを有する自動分析装置において、
前記検体投入時に前記検体の初期の優先度である初期優先度と前記検体に割付可能な最大の優先度である最高優先度を設定する初期優先度設定手段と、
前記検体が装置に投入された時刻である検体投入時刻と、
前記検体の分析を完了させる目標時刻である目標完了時刻と、時刻の経過とともに前記検体の優先度を変更する度合い表す優先度遷移モデルとに基づいて前記検体の優先度を動的に更新する優先度更新手段と、
前記目標完了時刻を入力する目標完了時刻入力画面を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記優先度遷移モデルは、検体の分析が完了する時刻を統計的な計算により予想した予想完了時刻に基づいて優先度遷移モデルを作成する優先度更新手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記目標完了時刻入力画面は、時間軸グラフに検体毎の投入時刻と目標完了時刻と予想完了時刻とをプロットし、前記目標完了時刻のプロットをスライド式に変更して目標完了時刻の設定が可能なことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の自動分析装置において、
前記優先度更新手段により検体の優先度を更新した際に、優先度が高い検体と前記分析ユニット内で分注している検体とを入れ替える検体入れ替え手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−281752(P2009−281752A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131453(P2008−131453)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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