説明

自動分析装置

【課題】試薬を交換する際の、装置の損傷防止及び操作者への危害防止と、被検試料の測定遅延を低減とを両立させた自動分析装置を提供する。
【解決手段】自動分析装置は、被検試料を収容した容器を搬送する搬送手段と、試薬を収納する試薬庫とを少なくともステージ上に配し、このステージの全体を開閉可能に覆う全体カバーが取り付けられる。搬送手段は、全体カバーの前部の間近に設けられ、試薬庫は、搬送手段を越えて全体カバーの前部よりも奥に設けられる。この自動分析装置は、全体カバーに形成され、前部から搬送手段を越えて試薬庫に至る方向と略直交する方向に開口して試薬庫に至る小窓と、小窓を開閉可能に覆うサイドカバーとを有する。そして、自動分析装置の制御手段は、全体カバーが開かれたときには搬送手段の駆動を停止させる一方、サイドカバーが開かれたときには搬送手段の駆動を停止させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検試料と試薬とを分注して撹拌し、混合液を測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、被検試料と試薬とを分注して混合液を測定する装置である。反応管に血液や尿等の被検試料と試薬とを分注してこれらを反応させた後、反応によって生じる色調の変化を光測定することにより検体中の被測定物質または酵素の濃度や活性を測定する。または、被検試料の電位を検出することで被検試料中に存在するNaイオン、Kイオン、Clイオン等の各種イオンの濃度を測定する。
【0003】
この自動分析装置には、筐体の上面にステージが設定される。そして、ステージ上には、被検試料を収納した試料容器を搬送するディスクサンプラ、試薬を収納した試薬容器が収容される試薬庫、反応管を搬送する反応ディスク、試料容器から被検試料を吸引して反応管に吐出するために回転及び伸縮するアーム、試薬容器から試薬を吸引して反応管に吐出するために回転及び伸縮するアーム、反応管内を撹拌する撹拌ユニット、混合液を測定する測定ユニット、各アームに支持されているプローブや反応管を洗浄する各洗浄ユニットが配置される。
【0004】
そのため、自動分析装置には、ステージの全体を覆う全体カバーが開閉可能に取り付けられている(例えば、「特許文献1」参照。)。ステージ上のこれら駆動ユニットを保護するためである。また、被検試料や試薬の温度を保つためである。また、操作者に対する安全のためである。
【0005】
ステージ上の被検試料や試薬を交換する際、操作者は、全体カバーを開いてステージを開放した状態とする。そして、操作者は、ステージ上に手を伸ばして試料容器や試薬容器を交換する。
【0006】
一般的に、全体カバーの開閉口の間近には、ディスクサンプラが存在し、ディスクサンプラが試料容器の搬送のために駆動している。そのため、駆動ユニットが駆動したままの状態で操作者が手を突っ込むと、操作者の手とディスクサンプラが干渉してしまい、自動分析装置に損傷を与えてしまうおそれ、又は操作者に危害を加えてしまうおそれがある。特に、試薬庫は、全体カバーの開閉口からディスクサンプラを越えて奥にあることが多い。従って、試薬の交換の際には、ディスクサンプラと操作者の手が干渉してしまう可能性が高くなる。
【0007】
そこで、従来は、全体カバーの開きを検知するセンサを取り付けておき、カバーが開かれると、装置の測定動作を停止するようにしていた。具体的には、ディスクサンプラ、試薬庫、反応ディスク及び各アームの駆動を止める。移動する部材がなくなることで、少なくとも操作者に対する安全を確保し、自動分析装置の損傷を防ぐことができる。但し、装置を停止させるので、自動分析装置の損傷防止や操作者への危害防止を実現できる一方で、被検試料の測定遅延に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−82930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、試薬を交換する際の、装置の損傷防止及び操作者への危害防止と、被検試料の測定遅延の低減とを両立させた自動分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動分析装置の第1の態様は、ステージの全体を覆うカバーであって前部を後方に持ち上げることで開閉可能な全体カバーと、前記全体カバーの前記前部の間近に設けられ、前記ステージ上で被検試料を収容した容器を搬送する搬送手段と、前記搬送手段を越えて前記全体カバーの前記前部よりも奥に設けられ、前記ステージ上で試薬を収納する試薬庫と、前記ステージ上で前記被検試料と前記試薬を分注してその混合液を測定する分析手段と、前記全体カバーに形成され、前記前部から前記搬送手段を越えて前記試薬庫に至る方向と略直交する方向に開口して前記試薬庫に臨む小窓と、前記小窓を開閉可能に覆うサイドカバーと、少なくとも前記搬送手段の駆動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記全体カバーが開かれたときには前記搬送手段の駆動を停止させる一方、前記サイドカバーの開閉に関わらず前記搬送手段の駆動を維持すること、を特徴とする。
【0011】
前記ステージ上には、前記搬送手段と前記試薬庫とが隣接して設けられ、前記搬送手段と前記試薬庫との境界に障壁を立設するようにしてもよい。
【0012】
前記全体カバーが開いたときに、前記障壁を前記境界から待避させる待避手段を更に備えるようにしてもよい。
【0013】
前記待避手段として、前記障壁の上端辺が前記全体カバーの裏面に取り付けられている構造を有するようにしてもよい。
【0014】
前記待避手段として、前記障壁の上端辺が前記全体カバーの裏面に軸支して吊り下げられている構造を有するようにしてもよい。
【0015】
前記障壁の下端と前記ステージ側とを連結して設けられ、前記障壁の姿勢を保持する連結バーを更に備えるようにしてもよい。
【0016】
前記全体カバーは、前記ステージの上方に覆い被さる天井壁と前記ステージの方向へ折れ曲がる側壁とを有し、前記小窓は、前記天井壁の一領域とこの領域に隣接する前記側壁の一領域とをL字状に切り欠いて形成されるようにしてもよい。
【0017】
前記試薬庫は、開閉可能な蓋を有し、前記小窓の直下に設けられ、前記試薬庫の前記蓋を開閉するための開閉ボタンを更に備え、前記制御手段は、前記開閉ボタンの押下に応答して前記蓋を開閉させるようにしてもよい。
【0018】
前記容器が載置されるとともに試薬庫内で回転可能な試薬ラックと、前記小窓の直下に設けられ、前記試薬ラックを回転させるための回転ボタンと、を更に備え、前記制御手段は、前記回転ボタンの押下に応答して前記試薬ラックを回転させるようにしてもよい。
【0019】
前記制御手段は、前記蓋の開閉中は前記回転ボタンの押下に応答せず、前記試薬ラックの回転中は前記開閉ボタンの押下に応答しないようにしてもよい。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動分析装置の第2の態様は、ステージの全体を開閉可能に覆う全体カバーと、前記全体カバーの開閉口の間近に設けられ、前記ステージ上で被検試料を収容した容器を搬送する搬送手段と、前記搬送手段を越えて前記全体カバーの開閉口よりも奥に設けられ、前記ステージ上で試薬を収納する試薬庫と、前記ステージ上で前記被検試料と前記試薬を分注してその混合液を測定する分析手段と、前記全体カバーに形成され、前記試薬庫から前記試薬を出し入れ可能な小窓と、前記小窓を開閉可能に覆うサイドカバーと、前記全体カバー又は前記サイドカバーが開かれたときには前記搬送手段の駆動を停止させる制御手段と、を備えること、を特徴とする。
【0021】
報知手段を更に備え、前記制御手段は、前記サイドカバーが開かれると、前記報知手段に搬送手段が駆動されていることを報知させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、小窓から試薬庫へアクセスすることができる構成であるから、搬送手段を操作者の手が横切ることがなく安全を確保することができ、そのため搬送手段を停止させる必要がないために被検試料の測定遅延も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】自動分析装置のステージ上の構成を示す。
【図2】自動分析装置が備える全体カバーを示す
【図3】自動分析装置が備えるサイドカバーを示す。
【図4】自動分析装置が備えるバリアカバーを側面側から見た様子を示す。
【図5】自動分析装置が備える断熱蓋の詳細構成を示す。
【図6】自動分析装置が備える断熱蓋の斜視図である。
【図7】自動分析装置が備える可動蓋を裏面から見た様子を示す。
【図8】自動分析装置が備える閉じ検知センサの構成を示す。
【図9】自動分析装置が備える制御部の試薬ラックの回転制御を示すフローチャートである。
【図10】自動分析装置が備える制御部の可動蓋の回転制御を示すフローチャートである。
【図11】自動分析装置の変形例を示す。
【図12】変形例にかかる自動分析装置の制御部の構成を示す。
【図13】変形例にかかる自動分析装置の制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る自動分析装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
図1に示す自動分析装置100は、被検試料と試薬とを分注してその混合液の反応を分析することにより、被検試料に含まれる化学成分を測定する装置である。被検試料は、血液や尿等である。試薬は、被検試料の測定項目に応じて採用される。これら被検試料と試薬とを反応管31に移して反応させた後、光測定や電解質測定を行う。光測定では、反応によって生じる色調の変化を捉えて検体中の被測定成分または酵素の濃度や活性を測定する。電解質測定では、被検試料の電位を検出することで被検試料中に存在するNaイオン、Kイオン、Clイオン等の各種イオンの濃度を測定する。
【0026】
この自動分析装置100は、筐体の上面に一つのステージ110を有する。このステージ110上に分注、撹拌、測定、及び洗浄を行う各種ユニットが配置される。具体的には、自動分析装置100は、反応ディスク3、ディスクサンプラ4、試料分注アーム5、試薬庫1、第1試薬分注アーム6、第2試薬分注アーム7、撹拌ユニット8、測定ユニット9、及び洗浄ユニット10をステージ110上に配する。また、自動分析装置100は、CPUやROMやスイッチ等を含む制御部101を有し、各ユニットの駆動を制御する。
【0027】
反応ディスク3は、複数の反応管31を搬送する円形の搬送路である。反応管31は、中空の直方体形状を有し上面が開口したセルである。反応ディスク3は、この反応管31を周方向に一列に並べて1サイクル毎に所定角度回転する。反応ディスク3の1サイクル毎の角度は、例えば、1周−1セル分である。即ち、反応ディスク3は、1サイクル毎に反応管31の載置位置を1セル分変位させる。
【0028】
ディスクサンプラ4は、ステージ110の一端辺の縁に沿って面して設けられている。このディスクサンプラ4は、試料ラック4aとハンドル4bとを有し、被検試料を収容した試料容器41を搬送する。
【0029】
ここで、このディスクサンプラ4が面している側をステージ110の正面として定義しておく。試料ラック4aは、試料容器41がセットされる所謂棚である。この試料ラック4aは、正面側の端辺に面して端辺が延びる方向に複数に区画されている。試料ラック4aには、この各区画に試料容器41がセットされる。試料容器41は、カードリッジに複数載置されており、試料ラック4aには、このカードリッジを各区画に奥行き方向に入れ込むようにセットされる。
【0030】
ハンドル4bは、試料容器41を被検試料の吸引位置5aに搬送する。このハンドル4bは、ステージ110の正面側の一端辺よりも奥行き側に配され、試料ラック4aと隣接している。このハンドル4bは、例えば3つのモータを有し、2軸方向の移動及び回転が可能となっている。具体的には、ハンドル4bは、試料ラック4aの各区画に沿ってステージ110の左右方向へ移動可能となっている。また、ハンドル4bは、ステージ110が拡がる面と直交する上下方向に移動可能となっている。また、ハンドル4bは、ステージ110が拡がる面と平行な面上を一端を軸として軸回転可能となっている。
【0031】
このようなディスクサンプラ4は、ハンドル4bを左右方向に移動させることで試料ラック4aにセットされた試料容器41の前に位置させ、ハンドル4bを上方に移動させることで試料容器41をすくい上げて試料ラック4aから取り出させ、ハンドル4bを回転及び下方に移動させることで試料容器41を吸引位置5aにセットする。
【0032】
試料分注アーム5は、反応ディスク3とディスクサンプラ4との間に介在して設置される。この試料分注アーム5は、ディスクサンプラ4で吸引位置5aに搬送された試料容器41から被検試料を吸引し、反応ディスク3上の反応管31に吐出する。
【0033】
試料分注アーム5は、ステージ110上に立設する支柱とその支柱上部から水平方向に延びた保持部を有する逆L字形状を有し、保持部先端には、図示しないプローブを下方に垂れ下げて支持している。試料分注アーム5の支柱は軸回転可能に保持され、また2重筒構造を有して伸縮自在となっている。
【0034】
試料分注アーム5の回転可動領域の両端は、それぞれ吸引位置5aと吐出位置5bに位置する。吐出位置5bは、反応ディスク3上の一箇所に設定される。試料分注アーム5は、吸引位置5aの試料容器41上にプローブを位置させて下降させ、試料容器41内にプローブを差し込む。また、試料分注アーム5は、被検試料の吸引後、吐出位置5bの反応管31上にプローブを位置させて下降させ、反応管31内にプローブを差し込む。
【0035】
試料分注アーム5の回転可動領域の途中には、洗浄ユニット10が配されている。試料分注アーム5は、洗浄ユニット10の洗浄位置5cにプローブを位置させて、被検試料が付着したプローブを洗浄する。
【0036】
プローブは、所謂ストローであり、筒内に負圧がかけられることで被検試料を吸引位置5aの試料容器41から吸引し、筒内に正圧がかけられることで被検試料を吐出位置5bの反応管31に吐出する。
【0037】
試薬庫1は、ディスクサンプラ4の奥及びステージ110の正面から見て左側面側にその高さの大部分をステージ110に埋没させて配置される。この試薬庫1は、有底及び上面が開口した円筒形状を有し、内部に試薬容器11がセットされる。
【0038】
この試薬庫1には、複数の試薬ラック12が半径方向に2段及び周方向に一列に並べて収容されている。各試薬ラック12には、第1試薬を収容した複数の試薬容器11又は第2試薬を収容した複数の試薬容器11が収納される。第1試薬を収容した試薬容器11は、試薬庫1の最外部に周方向に沿って並べられた試薬ラック12に収容される。第2試薬を収容した試薬容器11は、試薬庫1の内周部に周方向に沿って並べられた試薬ラック12に収容される。
【0039】
試薬庫1は、円筒中心を中心軸1aとしてこれら試薬ラック12を周方向に軸回転させる。試薬ラック12は、試薬庫1の中心を中心軸1aとして回転するディスク上に載置されており、この軸を回転させるモータやギアを含む駆動機構の駆動に従動して軸回転する。試薬ラック12を回転させることで、測定項目に応じた第1試薬の試薬容器11を吸引位置6aに移動させ、測定項目に応じた第2試薬の試薬容器11を吸引位置7aに移動させ、又は第1試薬や第2試薬の試薬容器11を交換可能位置に移動させる。
【0040】
試薬庫1は、第1試薬及び第2試薬の温度を調整する恒温槽となっている。そのため、試薬庫1の上面は、断熱蓋13で覆われている。断熱蓋13は、発泡ポリエチレン等を素材とする。この断熱蓋13は、固定蓋14と可動蓋16とで構成されている。
【0041】
固定蓋14は、一部が扇形状に切り欠かれることで試薬庫1内に連通する一つの開口15を有する。開口15の位置は、ステージ110の左縁且つ中段寄りである。即ち、開口15の位置は、ステージ110の正面からディスクサンプラ4のハンドル4bの可動範囲を越えるルート上にあり、ディスクサンプラ4と隣接する。この開口15が試薬の交換可能位置である。
【0042】
開口15は、試薬庫1の円筒中心から周縁まで所定の角度の範囲で拡がっている。開口15の拡がり範囲は、例えば、試薬庫1の内周に載置された試薬ラック12の拡がり角度と同一かそれよりも広い。この場合、試薬ラック12ごと試薬を交換することが可能となる。
【0043】
可動蓋16は、その裏面が固定蓋14の上面よりも高くなるように位置し、少なくとも試薬庫1の中心軸1aから外周縁まで拡がる天井壁と固定蓋14の外周よりも外側でステージ110へ向けて折れ曲がった側壁とで一体的に形成されている。可動蓋16の大きさは、開口15の拡がり範囲と同一かそれよりも大きい。
【0044】
この可動蓋16は、試薬庫1の中心軸1aに軸支されており、この中心軸1aを中心に固定蓋14の上面に沿って試薬庫1の周方向にスライド可能となっている。従って、可動蓋16をスライドさせて開口15を露出させ、試薬ラック12を回転させることにより、所望の第1試薬又は第2試薬が交換可能となる。
【0045】
第1試薬分注アーム6は、反応ディスク3と試薬庫1との間に介在して設置される。この第1試薬分注アーム6は、試薬庫1内の最外部に並ぶ試料容器41から第1試薬を吸引し、反応ディスク3上の反応管31に吐出する。第2試薬分注アーム7は、反応ディスク3と試薬庫1との間に介在して設置される。この第2試薬分注アーム7は、試薬庫1内の内周部に並ぶ試薬容器11から第2試薬を吸引し、反応ディスク3上の反応管31に吐出する。
【0046】
これら第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7も逆L字形状を有し、プローブを下方に垂れ下げて支持している。また、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7もそれぞれ軸回転可能及び伸縮自在となっている。
【0047】
これら第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7の回転可動領域の両端も、それぞれ試薬庫1上の吸引位置6a,7a、反応ディスク3上の吐出位置6b,7bとなり、図示しないポンプによって第1試薬及び第2試薬をそれぞれ吸引及び吐出する。固定蓋14の吸引位置6a及び7aに該当する位置には、孔14aが穿設されており、この孔14aにプローブが出し入れされる。
【0048】
尚、第1試薬分注アーム6の吐出位置6bは、試料分注アーム5の吐出位置5bよりも反応ディスク3の搬送方向奥側に設定される。また、第2試薬分注アーム7の吐出位置7bは、第1試薬分注アーム6の吐出位置6bよりも反応ディスク3の搬送方向奥側に設定される。そのため、試料分注アーム5、第1試薬分注アーム6、第2試薬分注アーム7は、正面から見てこの順に奥側に設けられている。
【0049】
第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7の回転可動領域の途中には、洗浄ユニット10が配され、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7は、モータやギア等の駆動装置の駆動に従動して洗浄ユニット10の洗浄位置6c,7cにプローブを位置させて、第1試薬又は第2試薬が付着したプローブを洗浄させる。
【0050】
撹拌ユニット8は、反応ディスク3上に位置し、第2試薬分注アーム7の吐出位置7bよりも反応ディスク3の搬送方向奥側に設けられる。この撹拌ユニット8は、1サイクル毎に、撹拌位置に停止した反応管31内における被検試料+第1試薬や被検試料+第1試薬+第2試薬などの混合液を撹拌する。具体的には、撹拌ユニット8は、圧電素子と当接してこの圧電素子の弾性変化等で揺動される撹拌棒を有しており、該撹拌棒を反応管31内に挿入させて揺動させることで混合液を撹拌する。
【0051】
測定ユニット9は、反応ディスク3上に位置し、反応管31内の混合液を測定する。測定ユニット9が測光ユニットの場合は、反応管31を挟んで配置される光源と受光部を有し、例えば、混合液の吸光度を測光した後、その測定結果データを出力する。測定ユニット9が電解質測定ユニットの場合は、各電解質に選択的に応答するイオン選択性電極と一定の電位を発生する参照電極の間を計測することにより、混合液中における電解質の濃度を測定した後、その測定結果データを出力する。
【0052】
洗浄ユニット10は、反応ディスク3上、試料分注アーム5、第1試薬分注アーム6、及び第2試薬分注アーム7の洗浄位置5c,6c,7cに配置され、反応管31と各プローブを洗浄及び乾燥する。
【0053】
この自動分析装置100は、図2及び図3に示すように、運転時の安全及び被検試料や試薬や混合液の汚染防止等の観点からステージ110を覆うカバーを有している。
【0054】
図2に示すように、自動分析装置100には、ステージ110の全体を覆う全体カバー21が取り付けられている。この全体カバー21は、ステージ110の奥側に立設されている奥壁111の上部に設置されるヒンジにより一端辺がステージ110の左右方向に沿った軸で軸支されており、ヒンジを中心に回転することで筐体に対して開閉可能となっている。つまり、全体カバー21の前部は正面側となり、この全体カバー21の前部を後方である奥側へ持ち上げることで、全体カバー21が開閉可能となっている。
【0055】
この全体カバー21は、天井壁と左右及び正面の三方向へ折れ曲がった側壁とで構成され、閉められた際に奥壁111とともにステージ110上を閉空間とする。ステージ110上の各ユニットに対するメンテナンス時には、この全体カバー21が開けられる。
【0056】
全体カバー21が開かれると、その全体カバー21の前部の間近にはディスクサンプラ4が設けられ、そのディスクサンプラ4を越えて奥側に試薬庫1の開口15が存在することとなる。そのため、制御部101は、少なくともディスクサンプラ4に対する電力供給を遮断して停止させる。ディスクサンプラ4の他、試料分注アーム5、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7等の移動体の全てを停止させてもよい。
【0057】
全体カバー21には、全体カバー21の開閉を検知するセンサが取り付けられている。このセンサが全体カバー21の開きを検知すると、制御部101は、ディスクサンプラ4を停止させる。
【0058】
また、図3に示すように、全体カバー21には、L字状の小窓23が穿設されている。この小窓23は、全体カバー21の左方側の一部が切り欠かれることで形成されている。
【0059】
小窓23は、第1試薬又は第2試薬の交換の際に使用される。従って、小窓23は、全体カバー21が閉じられたときに試薬庫1の開口15の上方に該当する天井壁の一部領域とその領域に隣接する側壁の一部領域が一体に切り欠かれることで形成されている。換言すると、小窓23は、全体カバー21の開閉口からディスクサンプラ4を越えて試薬庫1に至るルートと略直交し、試薬庫1を臨む方向に開口する。
【0060】
小窓23の開口は、試薬を出し入れ可能な面積を有する。具体的には、小窓23は、試薬を収容した試薬容器11又は試薬容器11が載置された試薬ラック12の大きさよりも広く開口している。全体カバー21の天井壁と側壁の一部を一体に切り欠くことで、即ちL字状に切り欠くことで、小窓23は、その開口面積が広く採られる。
【0061】
この小窓23は、L字状のサイドカバー24で開閉可能に覆われている。全体カバー21には、小窓23の縁にヒンジが設置されており、サイドカバー24は、このヒンジの軸で軸支されることで、開閉可能となっている。サイドカバー24を開くことにより、小窓23から試薬庫1内の第1試薬及び第2試薬の交換が可能となる。
【0062】
自動分析装置100は、このサイドカバー24が開かれても、ディスクサンプラ4、試料分注アーム5、及び反応ディスク3の駆動を停止させない。小窓23の開口方向には試薬庫1に至るまでにディスクサンプラ4等の移動体が存在しないためである。
【0063】
但し、試薬庫1の開口15とディスクサンプラ4とは隣接している。また、サイドカバー24が開かれてもディスクサンプラ4は停止させない。そのため、試薬庫1の開口15が存在する小窓23の直下の領域と、その領域に隣接するディスクサンプラ4側の領域との境界には、バリアカバー25が立設されている。
【0064】
このバリアカバー25は、サイドカバー24が開かれることで、試薬交換のために小窓23からステージ110上に手を伸ばすことが可能となった場合に、操作者の手がディスクサンプラ4側に侵入することを遮断する障壁である。
【0065】
図4は、このバリアカバー25の取り付け状態を示す図である。図2及び図4に示すように、バリアカバー25の高さは、全体カバー21の裏面からステージ110に到達する。ステージ110の左右方向に延びるバリアカバー25の幅は、小窓23から差し入れた手が届く範囲である。
【0066】
このバリアカバー25は、上端辺で全体カバー21の裏面に吊り下がっている。この吊り下げ態様は、全体カバー21が開いたときに、試薬庫1とディスクサンプラ4との境界からバリアカバー25を待避させる機構となる。
【0067】
具体的には、バリアカバー25は、全体カバー21が閉じたときに試薬庫1の開口15とディスクサンプラ4との境界の直上に該当する全体カバー21の裏面の箇所にこの境界に沿った方向に延びるように軸支されている。全体カバー21の裏面には、試薬庫1の開口15とディスクサンプラ4との境界の直上箇所にこの境界に沿った軸を有するヒンジ22が設置されている。バリアカバー25は、このヒンジ22の軸で軸支されている。軸支により、バリアカバー25は、上端辺を回転軸として全体カバー21に対して回転可能となっている。
【0068】
また、このバリアカバー25は、L字バー26を介してステージ110側と連結されている。L字バー26は、L字形状に曲がった連結バーである。L字バー26は、短腕側の一端が奥壁111の側面に設けられた第一軸26aに回転自在に軸支されている。また、L字バー26は、長腕側がバリアカバー25の下端辺側に設けられた第二軸26bに軸支されている。
【0069】
第一軸26aは、ステージ110の左右方向に延設されており、L字バー26は、ステージ110の奥行き方向に沿った平面上をその長腕を立ち上げたり下げたりする方向に回転する。第二軸26bは、L字バー26の長腕と直交し、且つステージ110の左右方向に延びるバリアカバー25の幅方向に沿う。
【0070】
このL字バー26は、バリアカバー25の立設角度を固定することでその姿勢を保持する重りとなり、全体カバー21が閉じられていても開かれていても、バリアカバー25がステージ110に対して直立するようにバリアカバー25の下端辺を引き下げる。
【0071】
このようなバリアカバー25は、全体カバー21が閉じられているときには、試薬庫1の開口15とディスクサンプラ4との境界にステージ110から全体カバー21の天井裏まで直立に立設し、小窓23からディスクサンプラ4側への操作者の手の侵入を遮断している。
【0072】
一方、バリアカバー25は、全体カバー21が開かれたときには、全体カバー21と共に持ち上がり、且つ全体カバー21の回転に合わせてステージ110の奥側に移動する。更に、バリアカバー25が全体カバー21に軸支されているため、バリアカバー25の下端は全体カバー21が閉じているときが正面側に最も近い位置とし、自重により直立を続けるため、全体カバー21が開くに従って迫り上がることはない。また、L字バー26がその連結構造によって重しとして働くため、バリアカバー25の迫り上がりはより確実に防止される。
【0073】
即ち、全体カバー21は閉じられてサイドカバー24のみが開かれるときには、バリアカバー25は、試薬庫1の開口15とディスクサンプラ4との境界に立設して小窓23からディスクサンプラ4の領域へ操作者の手が侵入することを妨げるが、全体カバー21が開けられたときには、ステージ110の正面から試薬庫1の開口15へ操作者の手が延びることを邪魔しない。
【0074】
また、L字バー26が重しとして働くことで、全体カバー21の開閉中にバリアカバー25が揺動することがなく、安全性が保たれる。
【0075】
図3に示すように、小窓23の直下の領域には、試薬庫1の開口15の他、ステージ110上に2つのボタンが配置されている。開閉ボタン27は、可動蓋16をスライドさせて開口15を開閉するスイッチである。ラック回転ボタン28は、試薬ラック12を回転させるボタンである。試薬の交換の際には、サイドカバー24を開いて、小窓23から開閉ボタン27を押下することにより断熱蓋13を開き、ラック回転ボタン28を押下することにより所望の試薬容器11を開口15に位置させる。
【0076】
この開閉ボタン27及びラック回転ボタン28の押下に対応した試薬庫1の挙動について、図5乃至図8に基づき断熱蓋13の詳細構成とともに説明する。
【0077】
図5は、断熱蓋13の詳細構成を示す図であり、(a)は可動蓋16を閉じた状態、(b)は、可動蓋16を開いて開口15を露出させた状態を示す。
【0078】
可動蓋16は、モータ17の駆動に従動して試薬庫1の周方向にスライドする。モータ17は、試薬庫1の縁、可動蓋16の上方、且つ開口15の邪魔にならないように開口15とは離れた位置に配される。
【0079】
図6に示すように、このモータ17は、モータ軸に歯車17aが取り付けられている。一方、可動蓋16は、その外周が試薬庫1の中心軸1aを中心とする円弧形状を有しており、周方向に歯切りがされることによりラック16cが穿設されている。この歯車17aとラック16cとは噛み合わされている。この可動蓋16は、モータ17の駆動によって歯車17aが回転し、この回転する歯車17aとラック16cとの噛み合うことによって試薬庫1の中心軸1aを中心に周方向にスライドする。
【0080】
開閉ボタン27は、例えば、電源とモータ17とを繋ぐHブリッジのような信号線に介在する切替スイッチである。開閉ボタン27が押下されると、可動蓋16が開口15から離れるようにモータ17に電流が流され、再び開閉ボタン27が押下されると、可動蓋16が開口15に向けて移動するようにモータ17に電流が逆に流される。
【0081】
図7は、可動蓋16を裏面から見た図である。また、図8は、閉じ検知センサ29bの構成を示す図である。尚、開き検知センサ29aについては閉じ検知センサ29bと同一につき詳細を省略する。
【0082】
可動蓋16のスライド可能範囲は、開口15の一方の半径方向に沿った縁から他方の縁までの距離である。可動蓋16は、開口15を覆う蓋部16aにスライド範囲を規制する突出片16bを一体に成型した形状を有する。スライド可能範囲は、この突出片16bと開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bとによって規制される。
【0083】
蓋部16aは、開口15と同一かそれよりも周方向に拡がった扇形状を有する。突出片16bは、可動蓋16の外周面から突出し、ステージ110の方向に折り曲げられている。この突出片16bは、モータ17の歯車17aと干渉しないように、可動蓋16の開き方向にモータ17よりも奥側に設けられている。従って、可動蓋16は、蓋部16aの外周一端から可動蓋16の開き方向に周に沿って板が延設され、突出片16bは、その先端から突出している。
【0084】
開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bは、突出片16bを検出するセンサである。図5に示すように、開き検知センサ29aは、可動蓋16の蓋部16aが開口15から完全に離れることで開口15が完全に開かれたときに突出片16bが位置する箇所に配されている。閉じ検知センサ29bは、可動蓋16の蓋部16aが開口15を完全に覆うことで開口15が完全に閉じられたときに突出片16bが位置する箇所に配されている。
【0085】
図8に示すように、この開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bは、LED等の発光素子29cと光を電気信号に変換する受光素子29dとを有する。発光素子29cと受光素子29dとは、突出片16bの軌跡を挟んで対向して配される。
【0086】
この開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bは、発光素子29cが発光した光の受光素子29dへの到達が遮られることで突出片16bを検出する。モータ17は、開き検知センサ29a又は閉じ検知センサ29bが突出片16bを検知すると、その駆動を停止する。
【0087】
即ち、可動蓋16は、蓋部16aが完全に開口15の上空を離れることで開口15を完全に露出させたとき、及び蓋部16aが完全に開口15の上空に覆い被さったときにスライドを停止する。
【0088】
また、図5に示すように、開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bの故障に対する備えとして、断熱蓋13は、メカストッパ機構を有する。固定蓋14は、その外周面の2箇所がメカストッパ14bとして、可動蓋16の側壁の軌跡の延長線上に突出するように膨らんでいる。このメカストッパ14bは、開き検知センサ29aよりも開き方向奥側、及び閉じられるときに最後に可動蓋16に覆われる開口15の縁よりも閉じ方向奥側に形成される。
【0089】
メカストッパ14bは、開き検知センサ29aや閉じ検知センサ29bが故障によって突出片16bを検知できなかったときに、可動蓋16の側壁と当接することで可動蓋16のスライドを物理的に止める。そして、モータ17には、開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bが突出片16bを検知しない限りは、開口15の開閉が十分に可能な一定時間だけ電力を供給するようにすればよい。
【0090】
このような断熱蓋13の機構によって開閉ボタン27が押下されると、図5(a)に示すように、開口15が露出する。そして、図5(b)に示すように、ラック回転ボタン28が押下すると試薬ラック12が試薬庫1内で回転し、所望の試薬容器11を開口15に移動させることができる。このラック回転ボタン28は、例えば電源と試薬ラック12の駆動機構とを繋ぐ信号線に介在するスイッチである。ラック回転ボタン28が押下されている間、スイッチがオンとなって試薬ラック12が回転する。
【0091】
開閉ボタン27とラック回転ボタン28の押下に対する可動蓋16の開閉と試薬ラック12の移動とは、そのタイミングにおいて自動分析装置100の制御部101により制御されている。制御部101は、可動蓋16のモータ17及び試薬ラック12を回転させるモータに対する電源の供給路をオンオフするスイッチを含む。
【0092】
図9は、この制御部101による試薬ラック12の回転制御を示すフローチャートである。
【0093】
まず、開閉ボタン27が押下されて(S01)、可動蓋16をスライドさせるモータ17に電力が供給されると(S02,Yes)、電源と試薬ラック12を回転させるモータとの間を遮断する(S03)。即ち、制御部101は、可動蓋16がスライドしている間は、試薬ラック12の回転を不可にする。
【0094】
そして、モータ17への電力の供給が終了すると(S04,Yes)、電源と試薬ラック12を回転させるモータとの間の遮断を解除する(S05)。即ち、制御部101は、可動蓋16がスライドしていなければ、試薬ラック12の回転を許可する。スイッチがオンにされることで、ラック回転ボタン28が押下されると電源と試薬ラック12のモータが接続されて試薬ラック12が回転する。
【0095】
図10は、制御部101による可動蓋16の開閉制御を示すフローチャートである。
【0096】
まず、ラック回転ボタン28が押下されて(S11)、試薬ラック12を回転させるモータに電力が供給されると(S12,Yes)、電源と可動蓋16をスライドさせるモータ17との間を遮断する(S13)。即ち、制御部101は、試薬ラック12が回転している間は、可動蓋16のスライドを不可にする。
【0097】
そして、試薬ラック12を回転させるモータへの電力の供給が終了すると(S14,Yes)、電源とモータ17との間の遮断を解除する(S15)。即ち、制御部101は、試薬ラック12が回転していなければ、可動蓋16のスライドを許可する。スイッチがオンにされることで、開閉ボタン27が押下されると電源とモータ17が接続されて可動蓋16がスライドする。
【0098】
以上のように、各ユニットが設けられたステージ110を開閉可能な全体カバー21で覆い、この全体カバー21の前部の間近にディスクサンプラ4を設け、ディスクサンプラ4を越えて全体カバー21の前部よりも奥に試薬庫1を設けた自動分析装置100では、全体カバー21の前部からディスクサンプラ4を越えて試薬庫1に至る方向と略直交する方向に開口して試薬庫1に至る小窓23を全体カバー21に形成し、また、この小窓23を開閉可能に覆うサイドカバー24とを形成し、全体カバー21が開かれたときにはディスクサンプラ4の駆動を停止させる一方、サイドカバー24が開かれたときにはディスクサンプラ4の駆動を停止させないようにした。
【0099】
これにより、小窓23から試薬庫1へアクセスする際には、ディスクサンプラ4を操作者の手が横切ることがなく安全を確保することができ、そのためディスクサンプラ4を停止させる必要がないために被検試料の測定遅延も低減することができる。
【0100】
また、ステージ110上には、ディスクサンプラ4と試薬庫1とが隣接して設けられ、このディスクサンプラ4と試薬庫1との境界には、障壁であるバリアカバー25を立設するようにした。これにより、操作者が仮に試薬庫1の方向以外に手を侵入させてもディスクサンプラ4に干渉することがなく、安全性は更に向上する。
【0101】
また、全体カバー21が開いたときに、バリアカバー25をディスクサンプラ4と試薬庫1との境界から待避させる待避手段を更に備えるようにした。例えば、待避手段として、バリアカバー25の上端辺を全体カバー21の裏面に取り付けた構造を有する。これにより、全体カバー21を開いて試薬庫1内の試薬を交換する場合でもバリアカバー25が邪魔になることはなく、利便性が向上する。また、待避手段として、バリアカバー25の上端辺を全体カバー21の裏面に軸支して吊り下げた構造を有する。これにより、全体カバー21を開いてもバリアカバー25の下端が迫り上がることはなく、バリアカバー25は更に邪魔にならず利便性がより向上する。
【0102】
この他、待避手段としては、ステージ110からバリアカバー25を埋没可能に立設させ、全体カバー21が開かれると、バリアカバー25をステージ110に埋没させるようにしてもよい。また、バリアカバー25を蛇腹や短冊状にし、全体カバー21が開かれると、バリアカバー25を高さ方向に縮めるようにしてもよい。
【0103】
また、バリアカバー25を、L字バー26でバリアカバー25の下端とステージ110側とを連結することでその姿勢が保持されることで、全体カバー21を開いたり閉じたりするときにバリアカバー25が揺動することはなく、操作者の頭にぶつかる等の危険性を低減させることができる。
【0104】
また、全体カバー21は、ステージ110の上方に覆い被さる天井壁とステージ110の方向へ折れ曲がる側壁とを有し、小窓23は、天井壁の一領域とこの領域に隣接する側壁の一領域とをL字状に切り欠いて形成されるようにした。これにより、小窓23の開口面積を広く採ることができ、作業性を向上させることができる。
【0105】
また、試薬庫1は、小窓23の直下には、断熱蓋13を開閉するための開閉ボタン27を設け、制御部101は、開閉ボタン27の押下に応答して断熱蓋13を開閉させるようにした。これにより、断熱蓋13を開閉するために不用意に手を突っ込むことがなくなり、安全性は更に向上する。
【0106】
また、小窓23の直下には、試薬ラック12を回転させるためのラック回転ボタン28を設け、制御部101は、ラック回転ボタン28の押下に応答して試薬ラック12を回転させるようにした。これによっても、試薬交換のために不用意に手を突っ込むことがなくなり、安全性は更に向上する。
【0107】
また、制御部101は、断熱蓋13の開閉中はラック回転ボタン28の押下に反応せず、試薬ラック12の回転中は開閉ボタン27の押下に反応しないようにした。これにより、試薬交換のために試薬庫1内に手を伸ばしている際に断熱蓋13が閉まることはなく、安全性が更に向上する。
【0108】
また、バリアカバー25で物理的に操作者の手とディスクサンプラ4との干渉を避けるほか、サイドカバー24が開けられると、ディスクサンプラ4の危険性の報知や、ディスクサンプラ4の駆動制限を行うようにしてもよい。
【0109】
図11は、このディスクサンプラ4の危険性の報知やディスクサンプラ4の駆動制限の態様におけるサイドカバー24を示す図である。
【0110】
図11に示すように、サイドカバー24には、その開閉を検知する磁気センサ24aとこれと対になった磁性体24bが設けられている。具体的には、サイドカバー24の裏面及びこのサイドカバー24が閉じられたときのステージ110上の対向位置には、一方に磁性体24bが取り付けられ、他方に磁気を検出する磁気センサ24aが取り付けられている。この磁気センサ24aは、サイドカバー24が閉じられたときに磁性体24bの磁気を検知し、サイドカバー24が開けられたときに磁気の消失を検知する。
【0111】
図12は、ディスクサンプラ4の危険性の報知やディスクサンプラ4の駆動制限の態様における制御部101の詳細構成を示す図である。制御部101は、磁気センサ24aとスピーカ102とディスクサンプラ4のハンドル4bを駆動させるモータ103とに信号線により接続されている。
【0112】
制御部101は、磁気センサ24aが磁気の消失を検知すると、スピーカ102を報知手段として音声を出力させる。音声は、ディスクサンプラ4が近傍に存在することを示す警告音又は音声である。また、制御部101は、磁気センサ24aが磁気の消失を検知すると、モータ103の駆動を停止させる。
【0113】
図13は、この制御部101の動作を示すフローチャートである。図13に示すように、分注のための駆動制御の途中で、サイドカバー24が開かれると(S21)、磁気センサ24aがサイドカバー24の開きを検知し(S22)、制御部101に開きを示す信号が入力される(S23)。制御部101は、開きを示す信号が入力されると、ディスクサンプラ4のハンドル4bに対する電力の供給を遮断してハンドル4bを停止させる(S24)。
【0114】
このように、バリアカバー25の代わりに、又はバリアカバー25の立設に加えて、サイドカバー24には、開閉を検知するセンサを取り付けておき、制御部101は、サイドカバー24の開きが検知されると、ディスクサンプラ4の駆動を停止させるようにするようにしてもよい。これにより、操作者が手を不用意に小窓23に突っ込んでもディスクサンプラ4と干渉することがなくなり、安全性が向上する。
【0115】
また、バリアカバー25の代わりに、又はバリアカバー25の立設に加えて、サイドカバー24には、開閉を検知するセンサを取り付けておき、制御部101は、サイドカバー24の開きが検知されると、スピーカ102等の報知手段にディスクサンプラ4の駆動を報知させるようにしてもよい。これにより、操作者が不用意に小窓23に手を突っ込むことを防止でき、安全性が向上する。
【符号の説明】
【0116】
1 試薬庫
1a 中心軸
11 試薬容器
12 試薬ラック
13 断熱蓋
14 固定蓋
14a 孔
14b メカストッパ
15 開口
16 可動蓋
16a 蓋部
16b 突出片
16c ラック
17 モータ
17a 歯車
21 全体カバー
22 ヒンジ
23 小窓
24 サイドカバー
24a 磁気センサ
24b 磁性体
25 バリアカバー
26 L字バー
26a 第一軸
26b 第二軸
27 開閉ボタン
28 ラック回転ボタン
29a 開き検知センサ
29b 閉じ検知センサ
29c 発光素子
29d 受光素子
3 反応ディスク
31 反応管
4 ディスクサンプラ
4a 試料ラック
4b ハンドル
41 試料容器
5 試料分注アーム
5a 吸引位置
5b 吐出位置
5c 洗浄位置
6 第1試薬分注アーム
6a 吸引位置
6b 吐出位置
6c 洗浄位置
7 第2試薬分注アーム
7a 吸引位置
7b 吐出位置
7c 洗浄位置
8 撹拌ユニット
9 測定ユニット
10 洗浄ユニット
100 自動分析装置
101 制御部
102 スピーカ
103 モータ
110 ステージ
111 奥壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージの全体を覆うカバーであって前部を後方に持ち上げることで開閉可能な全体カバーと、
前記全体カバーの前記前部の間近に設けられ、前記ステージ上で被検試料を収容した容器を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段を越えて前記全体カバーの前記前部よりも奥に設けられ、前記ステージ上で試薬を収納する試薬庫と、
前記ステージ上で前記被検試料と前記試薬を分注してその混合液を測定する分析手段と、
前記全体カバーに形成され、前記前部から前記搬送手段を越えて前記試薬庫に至る方向と略直交する方向に開口して前記試薬庫に臨む小窓と、
前記小窓を開閉可能に覆うサイドカバーと、
少なくとも前記搬送手段の駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記全体カバーが開かれたときには前記搬送手段の駆動を停止させる一方、前記サイドカバーの開閉に関わらず前記搬送手段の駆動を維持すること、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記ステージ上には、前記搬送手段と前記試薬庫とが隣接して設けられ、
前記搬送手段と前記試薬庫との境界に障壁を立設すること、
を特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記全体カバーが開いたときに、前記障壁を前記境界から待避させる待避手段を更に備えること、
を特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記待避手段として、前記障壁の上端辺が前記全体カバーの裏面に取り付けられている構造を有すること、
を特徴とする請求項3記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記待避手段として、前記障壁の上端辺が前記全体カバーの裏面に軸支して吊り下げられている構造を有すること、
を特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記障壁の下端と前記ステージ側とを連結して設けられ、前記障壁の姿勢を保持する連結バーを更に備えること、
を特徴とする請求項5記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記全体カバーは、前記ステージの上方に覆い被さる天井壁と前記ステージの方向へ折れ曲がる側壁とを有し、
前記小窓は、前記天井壁の一領域とこの領域に隣接する前記側壁の一領域とをL字状に切り欠いて形成されること、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記試薬庫は、開閉可能な蓋を有し、
前記小窓の直下に設けられ、前記試薬庫の前記蓋を開閉するための開閉ボタンを更に備え、
前記制御手段は、前記開閉ボタンの押下に応答して前記蓋を開閉させること、
を特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記容器が載置されるとともに試薬庫内で回転可能な試薬ラックと、
前記小窓の直下に設けられ、前記試薬ラックを回転させるための回転ボタンと、
を更に備え、
前記制御手段は、前記回転ボタンの押下に応答して前記試薬ラックを回転させること、
を特徴とする請求項8記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記蓋の開閉中は前記回転ボタンの押下に応答せず、前記試薬ラックの回転中は前記開閉ボタンの押下に応答しないこと、
を特徴とする請求項9記載の自動分析装置。
【請求項11】
ステージの全体を開閉可能に覆う全体カバーと、
前記全体カバーの開閉口の間近に設けられ、前記ステージ上で被検試料を収容した容器を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段を越えて前記全体カバーの開閉口よりも奥に設けられ、前記ステージ上で試薬を収納する試薬庫と、
前記ステージ上で前記被検試料と前記試薬を分注してその混合液を測定する分析手段と、
前記全体カバーに形成され、前記試薬庫から前記試薬を出し入れ可能な小窓と、
前記小窓を開閉可能に覆うサイドカバーと、
前記全体カバー又は前記サイドカバーが開かれたときには前記搬送手段の駆動を停止させる制御手段と、
を備えること、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
報知手段を更に備え、
前記制御手段は、前記サイドカバーが開かれると、前記報知手段に搬送手段が駆動されていることを報知させること、
を特徴とする請求項1又は11記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−243191(P2010−243191A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89053(P2009−89053)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】