自動利得制御装置
【課題】従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図る。
【解決手段】利得制御部5は、変動判定フラグが立っているときは増幅部3に利得制御信号を送出し、変動判定フラグが立っていないときは増幅部3に利得制御信号を送出しない。増幅部3は、利得制御信号を受け取っていない場合、利得算出部2で算出される利得Gで入力信号を増幅し、利得制御信号を受け取った場合、利得制御信号で指示された利得(しきい値Gu以下の補正値)で入力信号を増幅する。故に、入力信号が急激に増大した場合に過剰に増幅された出力信号が出力されることが抑制できる。その結果、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることができる。
【解決手段】利得制御部5は、変動判定フラグが立っているときは増幅部3に利得制御信号を送出し、変動判定フラグが立っていないときは増幅部3に利得制御信号を送出しない。増幅部3は、利得制御信号を受け取っていない場合、利得算出部2で算出される利得Gで入力信号を増幅し、利得制御信号を受け取った場合、利得制御信号で指示された利得(しきい値Gu以下の補正値)で入力信号を増幅する。故に、入力信号が急激に増大した場合に過剰に増幅された出力信号が出力されることが抑制できる。その結果、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号のレベルに応じて入力信号を増幅する際の利得を制御する自動利得制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動利得制御装置として、例えば、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1記載の従来例は、入力信号を一時的に記憶するバッファと、入力信号のエネルギ値を計算するエネルギ決定装置と、前記エネルギ値に基づいて利得を計算する利得決定装置と、バッファに記憶された入力信号を前記利得で増幅する利得装置とを有する。
【0003】
この従来例では、エネルギ決定装置により、入力信号の状態がメッセージ(音声)の初め、進行中、終わり、および無信号(または周囲騒音)の何れであるかを決定し、利得決定装置が入力信号の各状態に応じた利得を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平3−502278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例ではエネルギ決定装置が入力信号の状態を決定するに当たり、入力信号のエネルギ値の計算に数十ミリ秒から数百ミリ秒の演算時間を要するため、入力信号の急激な変化に追従することが困難である。例えば、入力信号(音声)が急に増大した場合、エネルギ決定装置及び利得決定装置が入力信号の変化に追従するまでの間、利得装置の利得が変化しないために出力信号が過剰に増幅されてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動利得制御装置は、入力される信号の信号レベルを算出する信号レベル算出部と、前記信号レベル算出部で算出された信号レベルに基づいて前記信号を増幅する際の利得を算出する利得算出部と、前記利得算出部で算出された前記利得で前記信号を増幅する増幅部と、前記利得算出部で算出された前記利得が1より大きい所定のしきい値以上であり且つ前記増幅部で増幅された後の前記信号の信号レベルの絶対値が所定の上限値以上である場合に前記入力される信号に増大傾向の変動有りと判定する変動判定部と、前記変動判定部で増大傾向の変動有りと判定された場合に前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を前記しきい値以下に補正する利得制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この自動利得制御装置において、入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部と、前記信号レベル算出部が信号レベルを算出する時間よりも短い時間で前記音響信号の信号レベルを算出する第2信号レベル算出部とを備え、前記変動判定部は、前記利得算出部で算出された前記利得が1未満の所定の第2しきい値以下であり且つ前記音声区間検出部によって音声区間が検出されており、且つ第2信号レベル算出部で算出された信号レベルが所定のしきい値以下である状態が所定時間以上継続した場合に前記音響信号に減少傾向の変動有りと判定し、前記利得制御部は、前記変動判定部で減少傾向の変動有りと判定された場合に前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を前記第2しきい値以上に補正することが好ましい。
【0009】
この自動利得制御装置において、前記信号レベル算出部は、入力される前記信号の信号レベルの絶対値を時間平均することが好ましい。
【0010】
この自動利得制御装置において、前記信号レベル算出部及び第2信号レベル算出部は、前記音声区間検出部が音声区間を検出しているときの信号レベルと、前記音声区間検出部が音声区間を検出していないときの信号レベルとの差から前記音響信号の信号レベルを算出することが好ましい。
【0011】
この自動利得制御装置において、前記利得制御部は、前記変動判定部で変動有りと判定された場合、前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を、一定時間だけ所定の固定値に維持することが好ましい。
【0012】
この自動利得制御装置において、前記利得制御部は、前記変動判定部で変動有りと判定された場合、前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を、一定時間をかけて漸減させることが好ましい。
【0013】
この自動利得制御装置において、前記信号レベル算出部は、前記変動判定部で増大傾向又は減少傾向の変動有りと判定された場合、前記時間平均する際の時間を短縮することが好ましい。
【0014】
この自動利得制御装置において、入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記信号レベル算出部は、前記音声区間検出部が音声区間を検出し始めてから一定時間が経過するまでの間、前記時間平均する際の時間を短縮することが好ましい。
【0015】
この自動利得制御装置において、入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記信号レベル算出部は、前記音声区間検出部で検出される音声区間においてのみ、前記信号レベルを算出することが好ましい。
【0016】
この自動利得制御装置において、入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記増幅部は、前記音声区間検出部で検出されない非音声区間においては前記利得を1に固定することが好ましい。
【0017】
この自動利得制御装置において、前記利得算出部は、前記利得について複数種類の値を記憶しており、前記信号レベル算出部で算出される信号レベルに応じて、前記複数種類の値の中から選択した値を前記利得とすることが好ましい。
【0018】
この自動利得制御装置において、前記利得算出部は、前記信号レベルの基準値を記憶しており、前記信号レベル算出部で算出される信号レベルで前記基準値を除した値を前記利得とすることが好ましい。
【0019】
この自動利得制御装置において、前記音声区間検出部で音声区間が検出されない状態が所定の上限時間を超えた場合に前記各部が初期化されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動利得制御装置は、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明用の波形図である。
【図3】同上における利得制御部の動作を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施形態2を示すブロック図である。
【図5】同上の動作説明用の波形図である。
【図6】同上における利得制御部の動作を説明するための説明図である。
【図7】同上における利得制御部の動作を説明するための説明図である。
【図8】同上における信号レベル算出部の動作を説明するための波形図である。
【図9】同上における信号レベル算出部の動作を説明するための波形図である。
【図10】同上における信号レベル算出部の動作を説明するための波形図である。
【図11】同上の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、音響信号を扱うシステムや機器(例えば、インターホンシステムや電話機など)に使用される自動利得制御装置に本発明の技術思想を適用した実施形態について詳細に説明する。ただし、入力信号の種類は音響信号に限定されるものではなく、音響信号以外の信号を増幅する自動利得制御装置全般に本発明の技術思想が適用可能である。また、各実施形態ではデジタル信号に変換された入力信号を取り扱っているが、入力信号をアナログ信号のままで取り扱うことも可能である。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態は、図1に示すように入力される音響信号(以下、入力信号という。)を増幅する増幅部3の他に、信号レベル算出部1、利得算出部2、変動判定部4、利得制御部5を備えている。
【0024】
信号レベル算出部1は、入力信号の信号レベルの絶対値を時間平均することで入力信号の信号レベルを算出する。例えば、入力信号を一定のサンプリング周期でサンプリングしたサンプル値をx(n)、サンプル数をMとしたとき、下記の式1又は式2で算出される値を入力信号の信号レベルと定義する(図2における二点破線参照)。なお、このようにして入力信号の信号レベルL(n)を算出すれば、信号レベル算出部1における演算量の削減を図ることができる。
【0025】
【数1】
【0026】
利得算出部2は、信号レベル算出部1で算出される信号レベルに応じて、出力信号を適正な信号レベルに増幅するための利得G(ゲイン)を算出する。例えば、利得算出部2は、利得Gについて複数種類の値(例えば、G1>G2>G3>G4>G5の5種類の値)を記憶しており、信号レベル算出部1で算出される信号レベルに応じて、複数種類の値Gi(i=1,2,3,4,5)の中から適正な値を選択すればよい。このようにすれば、利得算出部2が利得Gを算出するために必要な演算量の削減を図ることができる。
【0027】
あるいは、利得算出部2が信号レベルの基準値Lsを記憶しており、信号レベル算出部1で算出される信号レベルL(n)で基準値Lsを除した値(=Ls/L(n))を利得Gとしてもよい(図3参照)。このようにすれば、予め決められた複数種類の値Giの中から利得Gが選択される場合と比較して、入力信号の信号レベルL(n)に応じて細かく利得Gを算出することができる。
【0028】
増幅部3は、利得算出部2で算出される利得Gを入力信号に乗算することで入力信号を増幅している。つまり、利得Gが1よりも大きい値であれば、出力信号の信号レベルが入力信号の信号レベルよりも高く(音響信号の音量が大きく)なり、利得Gが1よりも小さい値であれば、出力信号の信号レベルが入力信号の信号レベルよりも低く(音響信号の音量が小さく)なる。なお、利得Gが1の場合、入力信号と出力信号の信号レベルは等しい。
【0029】
変動判定部4は、入力信号に急激な変動(信号レベルの急激な増大)が生じているか否かを判定し、その判定結果(変動判定フラグ)を利得制御部5に出力する。変動判定部4は、利得算出部1で算出された利得Gが1より大きい所定のしきい値Gu以上であり且つ出力信号の信号レベルの絶対値が所定の上限値Xu以上であれば、増大傾向の変動有りと判定する。そして、変動判定部4は、入力信号に増大傾向の変動有りと判定すると変動判定フラグを立てる(変動判定フラグの値を1にする)。なお、入力信号に増大傾向の変動が無いと判定した場合、変動判定部4は変動判定フラグを立てない(変動判定フラグの値を0にする)。
【0030】
ここで、利得Gのしきい値Guは、入力信号の信号レベル(音量)が小さいときに所望の信号レベル(音量)まで増幅するのに必要な値と同等の値に設定されることが望ましい。また、出力信号の信号レベルに対する上限値Xuは、出力信号の適切な信号レベル(音量)の最大値よりも高い値に設定されることが望ましい。
【0031】
利得制御部5は、変動判定フラグが立っているときは増幅部3に利得制御信号を送出し、変動判定フラグが立っていないときは増幅部3に利得制御信号を送出しない。この利得制御信号は、増幅部3に対して利得Gをしきい値Gu以下に補正するように指示するものである。
【0032】
増幅部3は、利得制御信号を受け取っていない場合、利得算出部2で算出される利得Gで入力信号を増幅し、利得制御信号を受け取った場合、利得制御信号で指示された利得(しきい値Gu以下の補正値)で入力信号を増幅する。
【0033】
而して、本実施形態によれば、変動判定部4で増大傾向の変動有りと判定された場合、利得制御部5が増幅部3の利得Gをしきい値Gu以下に補正するので、入力信号が急激に増大した場合に過剰に増幅された出力信号が出力されることが抑制できる。その結果、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることができる。
【0034】
(実施形態2)
本実施形態は、図4に示すように第2信号レベル算出部6及び音声区間検出部7を備える点以外は実施形態1と共通の構成を有している。
【0035】
第2信号レベル算出部6は、信号レベル算出部1が信号レベルL(n)を算出する時間よりも短い時間で入力信号の信号レベルを算出する。例えば、実施形態1で説明した式1又は式2におけるサンプル数Mが、信号レベル算出部1に比べて、第2信号レベル算出部6の方が小さい数値であればよい。
【0036】
音声区間検出部7は、入力信号(音響信号)に音声成分が含まれる区間(音声区間)を検出し、音声区間を検出しているときは音声区間判定フラグを立て、音声区間を検出していないとき(非音声区間)は音声区間判定フラグを立てない。この音声区間検出部7では、入力信号の数秒から数十秒程度の長時間平均値と入力信号の数百ミリ秒から数秒程度の短時間平均値の比(短時間平均値/長時間平均値)を求め、当該比が一定以上であれば音声区間と判定する。ただし、このような音声区間の検出方法は従来周知であるから詳細な説明は省略する。また音声区間検出部7が別の検出方法によって音声区間を検出しても構わない。
【0037】
変動判定部4は、実施形態1と同様に入力信号に急激な変動(信号レベルの急激な増大)が生じているか否かを判定し、その判定結果(変動判定フラグ)を利得制御部5に出力する。さらに本実施形態における変動判定部4は、入力信号に信号レベルの急激な減少(急激な変動)が生じているか否かも併せて判定し、その判定結果(変動判定フラグ)を利得制御部5に出力する。例えば、変動判定フラグを2ビットで構成し、下位ビットを増大傾向の変動の有無を示すフラグとし、上位ビットを減少傾向の変動の有無を示すフラグとすればよい。つまり、増大傾向の変動有りと判定された場合の変動判定フラグは「01」、減少傾向の変動有りと判定された場合の変動判定フラグは「10」、変動無しと判定された場合の変動判定フラグは「00」となる。
【0038】
変動判定部4は、利得算出部1で算出された利得Gが1未満の第2しきい値Gd以下であり且つ音声区間判定フラグが立ち、且つ第2信号レベル算出部6で算出された信号レベルが所定のしきい値Lu以下である状態が所定時間T1以上継続すれば、減少傾向の変動有りと判定する。なお、しきい値Luは、入力信号の適切な信号レベル(音量)よりも小さい値に設定されることが望ましく、時間T1は、数百ミリ秒程度に設定されることが望ましい。また第2しきい値Gdは、入力信号の信号レベル(音量)が大きいときに所望の信号レベル(音量)まで増幅(減衰)するのに必要な値と同等の値に設定されることが望ましい。
【0039】
利得制御部5は、変動判定フラグの値が「01」のときは利得Gをしきい値Gu以下に補正させる利得制御信号を、変動判定フラグの値が「10」のときは利得Gを第2しきい値Gd以上に補正させる制御信号を、それぞれ増幅部3に対して送出する。なお、変動判定フラグの値が「00」のときは利得制御信号は送出されない。
【0040】
増幅部3は、利得制御信号を受け取っていない場合、利得算出部2で算出される利得Gで入力信号を増幅し、利得制御信号を受け取った場合、利得制御信号で指示された利得(しきい値Gu以下の補正値又は第2しきい値Gd以上の補正値)で入力信号を増幅する。
【0041】
而して、本実施形態によれば、実施形態1と同様に入力信号が急激に増大した場合に過剰に増幅された出力信号が出力されることが抑制できる。さらに本実施形態では、変動判定部4で減少傾向の変動有りと判定された場合に利得制御部5が増幅部3の利得Gを第2しきい値Gd以上に補正させるので、入力信号が急激に減少した場合に誤って信号レベルを減少(抑圧)することなく、即座に利得Gを増大させて適切に増幅することができる。その結果、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることができる。
【0042】
ここで、信号レベル算出部1及び第2信号レベル算出部6は、音声区間検出部7が音声区間を検出しているときの信号レベルSと、音声区間検出部7が音声区間を検出していないときの信号レベルNとの差(S−N)から入力信号の信号レベルを算出しても構わない(図5参照)。このようにすれば、入力信号に定常的な雑音が重畳した場合でも、出力信号に対する上限値Xuを変化させる必要が無い。
【0043】
また、音声区間検出部7で検出されない非音声区間において、増幅部3が利得Gを1に固定すれば、入力信号に定常的な雑音が重畳している場合に、非音声区間の雑音成分が増幅されることが抑制できる。
【0044】
さらに、音声区間検出部7で音声区間が検出されない状態が所定の上限時間(数十秒から数分)を超えた場合に各部1〜7が初期化されることが好ましい。つまり、上限時間を超えて音声が入力されない場合、自動利得制御装置における処理を一旦初期化することにより、次回の音声区間において不適切な利得で入力信号が増幅されることを回避できる。
【0045】
ところで、利得制御部5は、変動判定部4で変動有りと判定された場合、増幅部3の利得Gを、一定時間T2だけ所定の固定値(補正値)に維持することが好ましい。例えば、変動前の利得GがG1であったとすると、増大傾向の変動有りと判定された時点(時刻t)から一定時間T2が経過する時点(時刻t+T2)までは利得Gが固定値G3(<G1)に固定される。そして、一定時間T2が経過した後(時刻t+T2以降)は、入力信号の信号レベルに応じた値(例えば、G4)に変更される(図6参照)。ただし、このときの固定値G3は1に設定されることが望ましい。また、一定時間T2は、信号レベル算出部1で算出される信号レベルが変動後の入力信号に追従するまでの時間程度に設定されることが好ましい。このようにすれば、入力信号レベル算出部1が変動後の入力信号に追従するまでの間は入力信号の信号レベルと出力信号の信号レベルとが等しくなり、入力信号が増幅部3で過剰に増幅されることが回避できる。なお、利得制御部5は、変動判定部4で増大傾向の変動有りと判定された場合に直ちに利得Gを固定値G3に切り換えるのではなく、図7に示すように一定時間T2をかけて固定値G3まで漸減させてもよい。このように利得Gが漸減されれば、出力信号の信号レベルの急激な変動を緩和し、出力信号の音量変化に対する違和感を軽減することができる。なお、詳しい説明は省略するが、変動判定部4で減少傾向の変動有りと判定された場合にも利得制御部5が増幅部3の利得Gを、一定時間T2だけ所定の固定値(補正値)に維持したり、一定時間T2をかけて固定値G3まで漸減させてもよい。
【0046】
ここで、変動判定部4で増大傾向又は減少傾向の変動有りと判定された場合(図8における時刻t)、信号レベル算出部1が信号レベルを算出するために時間平均する際の時間を短縮(サンプル数Mを減少)させることが好ましい。このようにすれば、入力信号の信号レベルが急激に変動(図8では増加)した時点(時刻t)から、信号レベル算出部1で算出される信号レベル(図8における破線参照)が実際の入力信号に追従するまでの時間が短縮できる。
【0047】
また、音声区間検出部7が音声区間を検出し始めた時点(時刻t)から一定時間T4が経過するまでの間、信号レベル算出部1が信号レベルを算出するために時間平均する際の時間を短縮(サンプル数Mを減少)させることが好ましい(図9参照)。なお、短縮時の時間平均の時間は数ミリ秒未満が望ましく、一定時間T4は数百ミリ秒から数秒程度が望ましい。このようにすれば、音声成分を含む入力信号が入力された時点(時刻t)から、信号レベル算出部1で算出される信号レベル(図9における破線参照)が実際の入力信号(音声成分)に追従するまでの時間が短縮できる。
【0048】
さらに、信号レベル算出部1は、音声区間検出部7で検出される音声区間においてのみ、信号レベルを算出することが好ましい。つまり、図10に二点破線で示すように音声区間では信号レベル算出部1が信号レベルを算出し、非音声区間では信号レベル算出部1が信号レベルを算出せずに音声区間における信号レベルを代用すればよい。これにより、非音声区間で信号レベル算出部1が信号レベルを算出した場合と比較して、非音声区間における信号レベルの低下を抑制することができる。
【0049】
なお、入力信号の減少傾向の変動のみを補正対象とするのであれば、図11に示すように利得制御部5が出力信号の信号レベルを参照せずに増幅部3の利得Gを補正してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 信号レベル算出部
2 利得算出部
3 増幅部
4 変動判定部
5 利得制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号のレベルに応じて入力信号を増幅する際の利得を制御する自動利得制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動利得制御装置として、例えば、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1記載の従来例は、入力信号を一時的に記憶するバッファと、入力信号のエネルギ値を計算するエネルギ決定装置と、前記エネルギ値に基づいて利得を計算する利得決定装置と、バッファに記憶された入力信号を前記利得で増幅する利得装置とを有する。
【0003】
この従来例では、エネルギ決定装置により、入力信号の状態がメッセージ(音声)の初め、進行中、終わり、および無信号(または周囲騒音)の何れであるかを決定し、利得決定装置が入力信号の各状態に応じた利得を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平3−502278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例ではエネルギ決定装置が入力信号の状態を決定するに当たり、入力信号のエネルギ値の計算に数十ミリ秒から数百ミリ秒の演算時間を要するため、入力信号の急激な変化に追従することが困難である。例えば、入力信号(音声)が急に増大した場合、エネルギ決定装置及び利得決定装置が入力信号の変化に追従するまでの間、利得装置の利得が変化しないために出力信号が過剰に増幅されてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動利得制御装置は、入力される信号の信号レベルを算出する信号レベル算出部と、前記信号レベル算出部で算出された信号レベルに基づいて前記信号を増幅する際の利得を算出する利得算出部と、前記利得算出部で算出された前記利得で前記信号を増幅する増幅部と、前記利得算出部で算出された前記利得が1より大きい所定のしきい値以上であり且つ前記増幅部で増幅された後の前記信号の信号レベルの絶対値が所定の上限値以上である場合に前記入力される信号に増大傾向の変動有りと判定する変動判定部と、前記変動判定部で増大傾向の変動有りと判定された場合に前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を前記しきい値以下に補正する利得制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この自動利得制御装置において、入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部と、前記信号レベル算出部が信号レベルを算出する時間よりも短い時間で前記音響信号の信号レベルを算出する第2信号レベル算出部とを備え、前記変動判定部は、前記利得算出部で算出された前記利得が1未満の所定の第2しきい値以下であり且つ前記音声区間検出部によって音声区間が検出されており、且つ第2信号レベル算出部で算出された信号レベルが所定のしきい値以下である状態が所定時間以上継続した場合に前記音響信号に減少傾向の変動有りと判定し、前記利得制御部は、前記変動判定部で減少傾向の変動有りと判定された場合に前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を前記第2しきい値以上に補正することが好ましい。
【0009】
この自動利得制御装置において、前記信号レベル算出部は、入力される前記信号の信号レベルの絶対値を時間平均することが好ましい。
【0010】
この自動利得制御装置において、前記信号レベル算出部及び第2信号レベル算出部は、前記音声区間検出部が音声区間を検出しているときの信号レベルと、前記音声区間検出部が音声区間を検出していないときの信号レベルとの差から前記音響信号の信号レベルを算出することが好ましい。
【0011】
この自動利得制御装置において、前記利得制御部は、前記変動判定部で変動有りと判定された場合、前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を、一定時間だけ所定の固定値に維持することが好ましい。
【0012】
この自動利得制御装置において、前記利得制御部は、前記変動判定部で変動有りと判定された場合、前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を、一定時間をかけて漸減させることが好ましい。
【0013】
この自動利得制御装置において、前記信号レベル算出部は、前記変動判定部で増大傾向又は減少傾向の変動有りと判定された場合、前記時間平均する際の時間を短縮することが好ましい。
【0014】
この自動利得制御装置において、入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記信号レベル算出部は、前記音声区間検出部が音声区間を検出し始めてから一定時間が経過するまでの間、前記時間平均する際の時間を短縮することが好ましい。
【0015】
この自動利得制御装置において、入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記信号レベル算出部は、前記音声区間検出部で検出される音声区間においてのみ、前記信号レベルを算出することが好ましい。
【0016】
この自動利得制御装置において、入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記増幅部は、前記音声区間検出部で検出されない非音声区間においては前記利得を1に固定することが好ましい。
【0017】
この自動利得制御装置において、前記利得算出部は、前記利得について複数種類の値を記憶しており、前記信号レベル算出部で算出される信号レベルに応じて、前記複数種類の値の中から選択した値を前記利得とすることが好ましい。
【0018】
この自動利得制御装置において、前記利得算出部は、前記信号レベルの基準値を記憶しており、前記信号レベル算出部で算出される信号レベルで前記基準値を除した値を前記利得とすることが好ましい。
【0019】
この自動利得制御装置において、前記音声区間検出部で音声区間が検出されない状態が所定の上限時間を超えた場合に前記各部が初期化されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動利得制御装置は、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明用の波形図である。
【図3】同上における利得制御部の動作を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施形態2を示すブロック図である。
【図5】同上の動作説明用の波形図である。
【図6】同上における利得制御部の動作を説明するための説明図である。
【図7】同上における利得制御部の動作を説明するための説明図である。
【図8】同上における信号レベル算出部の動作を説明するための波形図である。
【図9】同上における信号レベル算出部の動作を説明するための波形図である。
【図10】同上における信号レベル算出部の動作を説明するための波形図である。
【図11】同上の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、音響信号を扱うシステムや機器(例えば、インターホンシステムや電話機など)に使用される自動利得制御装置に本発明の技術思想を適用した実施形態について詳細に説明する。ただし、入力信号の種類は音響信号に限定されるものではなく、音響信号以外の信号を増幅する自動利得制御装置全般に本発明の技術思想が適用可能である。また、各実施形態ではデジタル信号に変換された入力信号を取り扱っているが、入力信号をアナログ信号のままで取り扱うことも可能である。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態は、図1に示すように入力される音響信号(以下、入力信号という。)を増幅する増幅部3の他に、信号レベル算出部1、利得算出部2、変動判定部4、利得制御部5を備えている。
【0024】
信号レベル算出部1は、入力信号の信号レベルの絶対値を時間平均することで入力信号の信号レベルを算出する。例えば、入力信号を一定のサンプリング周期でサンプリングしたサンプル値をx(n)、サンプル数をMとしたとき、下記の式1又は式2で算出される値を入力信号の信号レベルと定義する(図2における二点破線参照)。なお、このようにして入力信号の信号レベルL(n)を算出すれば、信号レベル算出部1における演算量の削減を図ることができる。
【0025】
【数1】
【0026】
利得算出部2は、信号レベル算出部1で算出される信号レベルに応じて、出力信号を適正な信号レベルに増幅するための利得G(ゲイン)を算出する。例えば、利得算出部2は、利得Gについて複数種類の値(例えば、G1>G2>G3>G4>G5の5種類の値)を記憶しており、信号レベル算出部1で算出される信号レベルに応じて、複数種類の値Gi(i=1,2,3,4,5)の中から適正な値を選択すればよい。このようにすれば、利得算出部2が利得Gを算出するために必要な演算量の削減を図ることができる。
【0027】
あるいは、利得算出部2が信号レベルの基準値Lsを記憶しており、信号レベル算出部1で算出される信号レベルL(n)で基準値Lsを除した値(=Ls/L(n))を利得Gとしてもよい(図3参照)。このようにすれば、予め決められた複数種類の値Giの中から利得Gが選択される場合と比較して、入力信号の信号レベルL(n)に応じて細かく利得Gを算出することができる。
【0028】
増幅部3は、利得算出部2で算出される利得Gを入力信号に乗算することで入力信号を増幅している。つまり、利得Gが1よりも大きい値であれば、出力信号の信号レベルが入力信号の信号レベルよりも高く(音響信号の音量が大きく)なり、利得Gが1よりも小さい値であれば、出力信号の信号レベルが入力信号の信号レベルよりも低く(音響信号の音量が小さく)なる。なお、利得Gが1の場合、入力信号と出力信号の信号レベルは等しい。
【0029】
変動判定部4は、入力信号に急激な変動(信号レベルの急激な増大)が生じているか否かを判定し、その判定結果(変動判定フラグ)を利得制御部5に出力する。変動判定部4は、利得算出部1で算出された利得Gが1より大きい所定のしきい値Gu以上であり且つ出力信号の信号レベルの絶対値が所定の上限値Xu以上であれば、増大傾向の変動有りと判定する。そして、変動判定部4は、入力信号に増大傾向の変動有りと判定すると変動判定フラグを立てる(変動判定フラグの値を1にする)。なお、入力信号に増大傾向の変動が無いと判定した場合、変動判定部4は変動判定フラグを立てない(変動判定フラグの値を0にする)。
【0030】
ここで、利得Gのしきい値Guは、入力信号の信号レベル(音量)が小さいときに所望の信号レベル(音量)まで増幅するのに必要な値と同等の値に設定されることが望ましい。また、出力信号の信号レベルに対する上限値Xuは、出力信号の適切な信号レベル(音量)の最大値よりも高い値に設定されることが望ましい。
【0031】
利得制御部5は、変動判定フラグが立っているときは増幅部3に利得制御信号を送出し、変動判定フラグが立っていないときは増幅部3に利得制御信号を送出しない。この利得制御信号は、増幅部3に対して利得Gをしきい値Gu以下に補正するように指示するものである。
【0032】
増幅部3は、利得制御信号を受け取っていない場合、利得算出部2で算出される利得Gで入力信号を増幅し、利得制御信号を受け取った場合、利得制御信号で指示された利得(しきい値Gu以下の補正値)で入力信号を増幅する。
【0033】
而して、本実施形態によれば、変動判定部4で増大傾向の変動有りと判定された場合、利得制御部5が増幅部3の利得Gをしきい値Gu以下に補正するので、入力信号が急激に増大した場合に過剰に増幅された出力信号が出力されることが抑制できる。その結果、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることができる。
【0034】
(実施形態2)
本実施形態は、図4に示すように第2信号レベル算出部6及び音声区間検出部7を備える点以外は実施形態1と共通の構成を有している。
【0035】
第2信号レベル算出部6は、信号レベル算出部1が信号レベルL(n)を算出する時間よりも短い時間で入力信号の信号レベルを算出する。例えば、実施形態1で説明した式1又は式2におけるサンプル数Mが、信号レベル算出部1に比べて、第2信号レベル算出部6の方が小さい数値であればよい。
【0036】
音声区間検出部7は、入力信号(音響信号)に音声成分が含まれる区間(音声区間)を検出し、音声区間を検出しているときは音声区間判定フラグを立て、音声区間を検出していないとき(非音声区間)は音声区間判定フラグを立てない。この音声区間検出部7では、入力信号の数秒から数十秒程度の長時間平均値と入力信号の数百ミリ秒から数秒程度の短時間平均値の比(短時間平均値/長時間平均値)を求め、当該比が一定以上であれば音声区間と判定する。ただし、このような音声区間の検出方法は従来周知であるから詳細な説明は省略する。また音声区間検出部7が別の検出方法によって音声区間を検出しても構わない。
【0037】
変動判定部4は、実施形態1と同様に入力信号に急激な変動(信号レベルの急激な増大)が生じているか否かを判定し、その判定結果(変動判定フラグ)を利得制御部5に出力する。さらに本実施形態における変動判定部4は、入力信号に信号レベルの急激な減少(急激な変動)が生じているか否かも併せて判定し、その判定結果(変動判定フラグ)を利得制御部5に出力する。例えば、変動判定フラグを2ビットで構成し、下位ビットを増大傾向の変動の有無を示すフラグとし、上位ビットを減少傾向の変動の有無を示すフラグとすればよい。つまり、増大傾向の変動有りと判定された場合の変動判定フラグは「01」、減少傾向の変動有りと判定された場合の変動判定フラグは「10」、変動無しと判定された場合の変動判定フラグは「00」となる。
【0038】
変動判定部4は、利得算出部1で算出された利得Gが1未満の第2しきい値Gd以下であり且つ音声区間判定フラグが立ち、且つ第2信号レベル算出部6で算出された信号レベルが所定のしきい値Lu以下である状態が所定時間T1以上継続すれば、減少傾向の変動有りと判定する。なお、しきい値Luは、入力信号の適切な信号レベル(音量)よりも小さい値に設定されることが望ましく、時間T1は、数百ミリ秒程度に設定されることが望ましい。また第2しきい値Gdは、入力信号の信号レベル(音量)が大きいときに所望の信号レベル(音量)まで増幅(減衰)するのに必要な値と同等の値に設定されることが望ましい。
【0039】
利得制御部5は、変動判定フラグの値が「01」のときは利得Gをしきい値Gu以下に補正させる利得制御信号を、変動判定フラグの値が「10」のときは利得Gを第2しきい値Gd以上に補正させる制御信号を、それぞれ増幅部3に対して送出する。なお、変動判定フラグの値が「00」のときは利得制御信号は送出されない。
【0040】
増幅部3は、利得制御信号を受け取っていない場合、利得算出部2で算出される利得Gで入力信号を増幅し、利得制御信号を受け取った場合、利得制御信号で指示された利得(しきい値Gu以下の補正値又は第2しきい値Gd以上の補正値)で入力信号を増幅する。
【0041】
而して、本実施形態によれば、実施形態1と同様に入力信号が急激に増大した場合に過剰に増幅された出力信号が出力されることが抑制できる。さらに本実施形態では、変動判定部4で減少傾向の変動有りと判定された場合に利得制御部5が増幅部3の利得Gを第2しきい値Gd以上に補正させるので、入力信号が急激に減少した場合に誤って信号レベルを減少(抑圧)することなく、即座に利得Gを増大させて適切に増幅することができる。その結果、従来例と比較して入力信号の変動が出力信号に及ぼす影響の低減を図ることができる。
【0042】
ここで、信号レベル算出部1及び第2信号レベル算出部6は、音声区間検出部7が音声区間を検出しているときの信号レベルSと、音声区間検出部7が音声区間を検出していないときの信号レベルNとの差(S−N)から入力信号の信号レベルを算出しても構わない(図5参照)。このようにすれば、入力信号に定常的な雑音が重畳した場合でも、出力信号に対する上限値Xuを変化させる必要が無い。
【0043】
また、音声区間検出部7で検出されない非音声区間において、増幅部3が利得Gを1に固定すれば、入力信号に定常的な雑音が重畳している場合に、非音声区間の雑音成分が増幅されることが抑制できる。
【0044】
さらに、音声区間検出部7で音声区間が検出されない状態が所定の上限時間(数十秒から数分)を超えた場合に各部1〜7が初期化されることが好ましい。つまり、上限時間を超えて音声が入力されない場合、自動利得制御装置における処理を一旦初期化することにより、次回の音声区間において不適切な利得で入力信号が増幅されることを回避できる。
【0045】
ところで、利得制御部5は、変動判定部4で変動有りと判定された場合、増幅部3の利得Gを、一定時間T2だけ所定の固定値(補正値)に維持することが好ましい。例えば、変動前の利得GがG1であったとすると、増大傾向の変動有りと判定された時点(時刻t)から一定時間T2が経過する時点(時刻t+T2)までは利得Gが固定値G3(<G1)に固定される。そして、一定時間T2が経過した後(時刻t+T2以降)は、入力信号の信号レベルに応じた値(例えば、G4)に変更される(図6参照)。ただし、このときの固定値G3は1に設定されることが望ましい。また、一定時間T2は、信号レベル算出部1で算出される信号レベルが変動後の入力信号に追従するまでの時間程度に設定されることが好ましい。このようにすれば、入力信号レベル算出部1が変動後の入力信号に追従するまでの間は入力信号の信号レベルと出力信号の信号レベルとが等しくなり、入力信号が増幅部3で過剰に増幅されることが回避できる。なお、利得制御部5は、変動判定部4で増大傾向の変動有りと判定された場合に直ちに利得Gを固定値G3に切り換えるのではなく、図7に示すように一定時間T2をかけて固定値G3まで漸減させてもよい。このように利得Gが漸減されれば、出力信号の信号レベルの急激な変動を緩和し、出力信号の音量変化に対する違和感を軽減することができる。なお、詳しい説明は省略するが、変動判定部4で減少傾向の変動有りと判定された場合にも利得制御部5が増幅部3の利得Gを、一定時間T2だけ所定の固定値(補正値)に維持したり、一定時間T2をかけて固定値G3まで漸減させてもよい。
【0046】
ここで、変動判定部4で増大傾向又は減少傾向の変動有りと判定された場合(図8における時刻t)、信号レベル算出部1が信号レベルを算出するために時間平均する際の時間を短縮(サンプル数Mを減少)させることが好ましい。このようにすれば、入力信号の信号レベルが急激に変動(図8では増加)した時点(時刻t)から、信号レベル算出部1で算出される信号レベル(図8における破線参照)が実際の入力信号に追従するまでの時間が短縮できる。
【0047】
また、音声区間検出部7が音声区間を検出し始めた時点(時刻t)から一定時間T4が経過するまでの間、信号レベル算出部1が信号レベルを算出するために時間平均する際の時間を短縮(サンプル数Mを減少)させることが好ましい(図9参照)。なお、短縮時の時間平均の時間は数ミリ秒未満が望ましく、一定時間T4は数百ミリ秒から数秒程度が望ましい。このようにすれば、音声成分を含む入力信号が入力された時点(時刻t)から、信号レベル算出部1で算出される信号レベル(図9における破線参照)が実際の入力信号(音声成分)に追従するまでの時間が短縮できる。
【0048】
さらに、信号レベル算出部1は、音声区間検出部7で検出される音声区間においてのみ、信号レベルを算出することが好ましい。つまり、図10に二点破線で示すように音声区間では信号レベル算出部1が信号レベルを算出し、非音声区間では信号レベル算出部1が信号レベルを算出せずに音声区間における信号レベルを代用すればよい。これにより、非音声区間で信号レベル算出部1が信号レベルを算出した場合と比較して、非音声区間における信号レベルの低下を抑制することができる。
【0049】
なお、入力信号の減少傾向の変動のみを補正対象とするのであれば、図11に示すように利得制御部5が出力信号の信号レベルを参照せずに増幅部3の利得Gを補正してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 信号レベル算出部
2 利得算出部
3 増幅部
4 変動判定部
5 利得制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される信号の信号レベルを算出する信号レベル算出部と、前記信号レベル算出部で算出された信号レベルに基づいて前記信号を増幅する際の利得を算出する利得算出部と、前記利得算出部で算出された前記利得で前記信号を増幅する増幅部と、前記利得算出部で算出された前記利得が1より大きい所定のしきい値以上であり且つ前記増幅部で増幅された後の前記信号の信号レベルの絶対値が所定の上限値以上である場合に前記入力される信号に増大傾向の変動有りと判定する変動判定部と、前記変動判定部で増大傾向の変動有りと判定された場合に前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を前記しきい値以下に補正する利得制御部とを備えることを特徴とする自動利得制御装置。
【請求項2】
入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部と、前記信号レベル算出部が信号レベルを算出する時間よりも短い時間で前記音響信号の信号レベルを算出する第2信号レベル算出部とを備え、前記変動判定部は、前記利得算出部で算出された前記利得が1未満の所定の第2しきい値以下であり且つ前記音声区間検出部によって音声区間が検出されており、且つ第2信号レベル算出部で算出された信号レベルが所定のしきい値以下である状態が所定時間以上継続した場合に前記音響信号に減少傾向の変動有りと判定し、前記利得制御部は、前記変動判定部で減少傾向の変動有りと判定された場合に前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を前記第2しきい値以上に補正することを特徴とする請求項1記載の自動利得制御装置。
【請求項3】
前記信号レベル算出部は、入力される前記信号の信号レベルの絶対値を時間平均することを特徴とする請求項1又は2記載の自動利得制御装置。
【請求項4】
前記信号レベル算出部及び第2信号レベル算出部は、前記音声区間検出部が音声区間を検出しているときの信号レベルと、前記音声区間検出部が音声区間を検出していないときの信号レベルとの差から前記音響信号の信号レベルを算出することを特徴とする請求項2記載の自動利得制御装置。
【請求項5】
前記利得制御部は、前記変動判定部で変動有りと判定された場合、前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を、一定時間だけ所定の固定値に維持することを特徴とする請求項1又は2記載の自動利得制御装置。
【請求項6】
前記利得制御部は、前記変動判定部で変動有りと判定された場合、前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を、一定時間をかけて漸減させることを特徴とする請求項1又は2記載の自動利得制御装置。
【請求項7】
前記信号レベル算出部は、前記変動判定部で増大傾向又は減少傾向の変動有りと判定された場合、前記時間平均する際の時間を短縮することを特徴とする請求項3記載の自動利得制御装置。
【請求項8】
入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記信号レベル算出部は、前記音声区間検出部が音声区間を検出し始めてから一定時間が経過するまでの間、前記時間平均する際の時間を短縮することを特徴とする請求項3記載の自動利得制御装置。
【請求項9】
入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記信号レベル算出部は、前記音声区間検出部で検出される音声区間においてのみ、前記信号レベルを算出することを特徴とする請求項3又は4記載の自動利得制御装置。
【請求項10】
入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記増幅部は、前記音声区間検出部で検出されない非音声区間においては前記利得を1に固定することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の自動利得制御装置。
【請求項11】
前記利得算出部は、前記利得について複数種類の値を記憶しており、前記信号レベル算出部で算出される信号レベルに応じて、前記複数種類の値の中から選択した値を前記利得とすることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の自動利得制御装置。
【請求項12】
前記利得算出部は、前記信号レベルの基準値を記憶しており、前記信号レベル算出部で算出される信号レベルで前記基準値を除した値を前記利得とすることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の自動利得制御装置。
【請求項13】
前記音声区間検出部で音声区間が検出されない状態が所定の上限時間を超えた場合に前記各部が初期化されることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の自動利得制御装置。
【請求項1】
入力される信号の信号レベルを算出する信号レベル算出部と、前記信号レベル算出部で算出された信号レベルに基づいて前記信号を増幅する際の利得を算出する利得算出部と、前記利得算出部で算出された前記利得で前記信号を増幅する増幅部と、前記利得算出部で算出された前記利得が1より大きい所定のしきい値以上であり且つ前記増幅部で増幅された後の前記信号の信号レベルの絶対値が所定の上限値以上である場合に前記入力される信号に増大傾向の変動有りと判定する変動判定部と、前記変動判定部で増大傾向の変動有りと判定された場合に前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を前記しきい値以下に補正する利得制御部とを備えることを特徴とする自動利得制御装置。
【請求項2】
入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部と、前記信号レベル算出部が信号レベルを算出する時間よりも短い時間で前記音響信号の信号レベルを算出する第2信号レベル算出部とを備え、前記変動判定部は、前記利得算出部で算出された前記利得が1未満の所定の第2しきい値以下であり且つ前記音声区間検出部によって音声区間が検出されており、且つ第2信号レベル算出部で算出された信号レベルが所定のしきい値以下である状態が所定時間以上継続した場合に前記音響信号に減少傾向の変動有りと判定し、前記利得制御部は、前記変動判定部で減少傾向の変動有りと判定された場合に前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を前記第2しきい値以上に補正することを特徴とする請求項1記載の自動利得制御装置。
【請求項3】
前記信号レベル算出部は、入力される前記信号の信号レベルの絶対値を時間平均することを特徴とする請求項1又は2記載の自動利得制御装置。
【請求項4】
前記信号レベル算出部及び第2信号レベル算出部は、前記音声区間検出部が音声区間を検出しているときの信号レベルと、前記音声区間検出部が音声区間を検出していないときの信号レベルとの差から前記音響信号の信号レベルを算出することを特徴とする請求項2記載の自動利得制御装置。
【請求項5】
前記利得制御部は、前記変動判定部で変動有りと判定された場合、前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を、一定時間だけ所定の固定値に維持することを特徴とする請求項1又は2記載の自動利得制御装置。
【請求項6】
前記利得制御部は、前記変動判定部で変動有りと判定された場合、前記増幅部が前記信号を増幅する際の利得を、一定時間をかけて漸減させることを特徴とする請求項1又は2記載の自動利得制御装置。
【請求項7】
前記信号レベル算出部は、前記変動判定部で増大傾向又は減少傾向の変動有りと判定された場合、前記時間平均する際の時間を短縮することを特徴とする請求項3記載の自動利得制御装置。
【請求項8】
入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記信号レベル算出部は、前記音声区間検出部が音声区間を検出し始めてから一定時間が経過するまでの間、前記時間平均する際の時間を短縮することを特徴とする請求項3記載の自動利得制御装置。
【請求項9】
入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記信号レベル算出部は、前記音声区間検出部で検出される音声区間においてのみ、前記信号レベルを算出することを特徴とする請求項3又は4記載の自動利得制御装置。
【請求項10】
入力される前記信号が音響信号であって、前記音響信号に音声成分が含まれる音声区間を検出する音声区間検出部を備え、前記増幅部は、前記音声区間検出部で検出されない非音声区間においては前記利得を1に固定することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の自動利得制御装置。
【請求項11】
前記利得算出部は、前記利得について複数種類の値を記憶しており、前記信号レベル算出部で算出される信号レベルに応じて、前記複数種類の値の中から選択した値を前記利得とすることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の自動利得制御装置。
【請求項12】
前記利得算出部は、前記信号レベルの基準値を記憶しており、前記信号レベル算出部で算出される信号レベルで前記基準値を除した値を前記利得とすることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の自動利得制御装置。
【請求項13】
前記音声区間検出部で音声区間が検出されない状態が所定の上限時間を超えた場合に前記各部が初期化されることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の自動利得制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−90249(P2013−90249A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231069(P2011−231069)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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