説明

自動取引装置および方法

【課題】カードの挿入により取引を行う自動取引装置において、スキミング機が取り付けられるとすぐに確実に検知することができる自動取引装置を提供する。
【解決手段】自動取引装置100のカード挿入口16から離隔した位置で外光を検知する第1の照度センサ12からの第1の出力電圧V1と、カード挿入口16近傍で外光を検知する第2の照度センサ14からの第2の出力電圧V2とを比較し、自動取引装置100にスキミング機50が仕掛けられていないかを判定し、スキミング機50が仕掛けられている可能性があると判定された時には、警告を出し、一旦カードの取り込みを停止し、さらに警告が所定時間以上続くと自動取引装置100の稼動を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関等に設置される自動取引装置に関し、特にカードの磁気情報を不正に窃取するスキミングを防止する自動取引装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動取引装置の利用拡大に伴い、利用者のカード磁気情報が窃取され同じ磁気情報を持つカードが偽造され、不正に取引が行われることが問題となっている。カードの磁気情報が窃取される方法としては、スキミング機と呼ばれる自動取引装置のカード挿入口の形状に似せたカード挿入口を有する機械がカード挿入口に違法に取り付けられ、利用者が気づかずに取引のためカードを挿入すると、スキミング機でカードの磁気ストライプ上の情報が読み取られ、内蔵する記憶手段に記憶された後に、スキミング機が取り外され、記憶された情報が取り出されることで情報が窃取されることが多い。利用者は、スキミング機がカード挿入口の形状に似ているため、スキミング機が取り付けられていることに気づかず、通常の取引においてカードの磁気情報を窃取されてしまうことになる。
【0003】
このようなスキミング機によってカードの磁気情報が窃取されることを防止する手段として特許文献1には、カードの挿入時または排出時にカードを間欠的に搬送させて磁気情報が不正に読み取られないようにする例が開示されている。また特許文献2には、カード挿入口に所定の点滅で発光するフリッカを設け、表示画面にこのフリッカの発光バターンを表示することにより、利用者にスキミング機が実装されていないことを認識させる例が開示されている。また特許文献3には、カード挿入口にカード搬送を妨げるストッパを設け、このストッパによりカード排出ができなくすることにより、スキミング機の実装を検出する例が開示されている。また特許文献4には、カード挿入口付近の異物を反射センサで検出する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−164459号公報
【特許文献2】特開2007−279877号公報
【特許文献3】特開2009−181251号公報
【特許文献4】特開2007−265189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のカードの磁気情報が窃取されることを防止する自動取引装置においては、スキミング機が自動取引装置に取り付けられた後に、スキミング機を検知する方法もしくは磁気情報が窃取されないようにする方法であり、スキミング機が自動取引装置に取り付けられること自体を抑制するものではなかった。また自動取引装置の構造上スキミング機を検知することが困難な場合もあった。この結果、自動取引装置に対策を講じることができても、さらにその対策を回避する手段を見つけるためにスキミング機が取り付けられ、これが繰り返されるうちに完全に対策を回避するスキミング機か開発されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み、スキミング機が取り付けられるとすぐに確実に検知できる自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
カードが挿入されると、カード挿入検知センサでカードを検知してカード搬送ローラが回転し、このカードをカード処理部に搬送し、カード処理部でカードから情報を読み取り、取り引きを行う自動取引装置は、自動取引装置上においてカード挿入口から少し離れた位置で外光を検知し、検知した照度に基づき第1の出力電圧を出力する第1の照度センサ手段と、カード挿入口近傍で外光を検知し、検知した照度に基づき第2の出力電圧を出力する第2の照度センサ手段と、第1の出力電圧および第2の出力電圧から、自動取引装置に付加物が仕掛けられていないかを判定する電圧判定手段とを含み、電圧判定手段により付加物が仕掛けられていると判定された時には、警告を出し、一旦カードの取り込みを停止し、さらに警告が所定時間以上続くと自動取引装置の稼動を中止することを特徴とする。
【0008】
また、カードが挿入されると、カード挿入検知センサでこのカードを検知してカード搬送ローラが回転し、カードをカード処理部に搬送し、カード処理部でカードから情報を読み取り、取り引きを行う自動取引方法は、自動取引装置上においてカード挿入口から少し離れた位置で外光を検知し、検知した照度に基づき第1の出力電圧を出力する第1の照度センサ電圧出力工程と、カード挿入口近傍で外光を検知し、検知した照度に基づき第2の出力電圧を出力する第2の照度センサ電圧出力工程と、第1の出力電圧および第2の出力電圧から、自動取引装置に付加物が仕掛けられていないかを判定する電圧判定工程とを含み、電圧判定工程により付加物が仕掛けられていると判定された時には、警告を出し、一旦カードの取り込みを停止し、さらに警告が所定時間以上続くと自動取引装置の稼動を中止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カード挿入口から離れた位置に具備された第1の照度センサとカード挿入口付近に具備された第2の照度センサとの2つの照度センサの出力からスキミング機が取り付けられたことを検出するようにしたので、スキミング機内に異物検出用のセンサを誤検知させる手段が講じられても、確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による自動取引装置の実施例における構成を示す断面図である。
【図2】同実施例における自動取引装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同実施例における自動取引装置の動作を示すブロック図である。
【図4】同実施例における第1の照度センサ部における出力判定方法を説明するための模式図である。
【図5】同実施例における第2の照度センサ部における出力判定閾値決定方法を説明するための模式図である。
【図6】同実施例における第2の照度センサ部における出力判定方法の例を説明するための模式図である。
【図7】同実施例における自動取引装置の動作を説明するための構成を示す断面図である。
【図8】同実施例における自動取引装置の動作を説明するための構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に添付図面を参照にして本発明による自動取引装置の実施例として、スキミングを防止する自動取引装置を詳細に説明する。
【0012】
まず、スキミング機が取り付けられていない正常状態の自動取引装置のカード挿入口近辺の構造およびその構成について図1および図2を参照にして説明する。自動取引装置100は、第1の照度センサ12、第2の照度センサ14、カード挿入口16、カード挿入検知センサ18、カード搬送ローラ20、電圧判定部22、カード処理部30、警告部32および装置管理部34を含み、これらは図示のように構成されている。
【0013】
第1の照度センサ12は、自動取引装置100上のカード挿入口16から少し離した位置、たとえば約40〜50cm上方に配置され、自動取引装置100の外光を検知し、外光の照度に基づく出力電圧V1 102を出力し、電圧判定部22へ送る。
【0014】
第2の照度センサ14は、カード挿入口16の近傍に配置され、カード挿入口16の近傍の外光を検知し、外光の照度に基づく出力電圧V2 104を出力し、電圧判定部22へ送る。
【0015】
カード挿入口16は、利用者がカード40をA方向に挿入するために設置され、内部にカード挿入検知センサ18、カード搬送ローラ20およびカード処理部30を含む。
【0016】
カード挿入検知センサ18は、カード挿入口16の入り口近くの内部に設置され、正常状態において挿入されたカード40検知し、検知信号115を装置管理部34に送る。
【0017】
カード搬送ローラ20は、カード挿入検知センサ18から送られる検知信号を受けた装置管理部34からの指示信号116に基づいてカード搬送ローラ20を回転させ、カード挿入口16の奥に設置されたカード処理部30にカード40を搬送する。また装置管理部34からの指示信号116に基づいて、カード40搬送の駆動停止を行う。
【0018】
電圧判定部22は、V1判定部24、V2判定閾値設定部26、V2判定部28を含んでいる。
【0019】
V1判定部24は、第1の照度センサ12から送られる出力電圧V1 102をあらかじめ設定された値と比較して外光が通常状態にあるか否かの判定を行ない、否の場合にはエラー信号106を警告部32および装置管理部34に送る。また正常状態と判定されると、V2判定閾値設定部26に出力電圧V1 102の情報108を送る。
【0020】
V2判定閾値設定部26は、V1判定部24から送られる出力電圧V1 102の情報108と、あらかじめ決められた所定の値とから計算してV2判定閾値110を設定しV2判定部28に送る。
【0021】
V2判定部28は、V2判定閾値設定部26から送られるV2判定閾値110を用いて第2の照度センサ14送られる出力電圧V2 104が正常状態であるか異常状態であるかの判定を行なう。異常状態の場合には警告信号112を警告部32と装置管理部34に送る。また、正常状態の場合には正常情報信号114をカード処理部30に送る。
【0022】
カード処理部30は、カード40を受け付け、利用者の所望の処置を可能にする。
【0023】
警告部32は、スピーカ、警告灯などの警告手段を含み、この警告手段を用いて、V1判定部24からエラー信号106が送られてくるとV1がエラーであることを警告し、またV2判定部28から警告信号112が送られてくるとスキミングの可能性があることを警告する。
【0024】
装置管理部34は、V1判定部24からエラー信号106および2判定部28から警告信号112が送られると、その状況に応じて装置の部分的停止、または自動取引装置100の稼動停止の処置を行う。
【0025】
次に、本実施例におけるスキミングを防止する自動取引装置の動作について図3〜図8を参照して説明する。
【0026】
まず、自動取引装置は待機状態において第1の照度センサ12で受光された外光による出力電圧V1が電圧判定部22に送られる。
【0027】
電圧判定部22のV1判定部24では第1の照度センサ12から送られる出力電圧V1の出力判定が行なわれる(S202)。この出力判定は、まず第1の照度センサ12に外光が受光されているか否かをまた、異常に明るい外光が受光されていないかを判定するものであり、たとえば図4に示すようにあらかじめ下限出力電圧Vaと上限出力電圧Vbを決めておき、出力電圧V1がVa≦V1≦Vbであるか否かが判定される。下限出力電圧Vaは、通常待機状態で外光から得られる第1の照度センサ12の最低出力であり、V1<VaまたはVb<V1であれば第1の照度センサまたは他の部位の故障が考えられるため、電圧判定部22からエラー信号106が警告部32および装置管理部34に送られ、警告されるとともに自動取引装置の稼動が中止される(S204)。
【0028】
第1の照度センサの出力電圧が正常と判断されると、電圧判定部22では第2の照度センサの出力電圧V2の判定を行なうために、出力電圧V1を基準としあらかじめ決められた所定の値からV2判定閾値110が決定される(S206)。たとえば図5に示すように下限出力電圧Vc がVc=V1−Vx に、上限出力電圧Vd がVd=V1+Vx に決定される。ここで、Vx は、第1の照度センサ12と第2の照度センサ14との取り付け位置による差、センサの個体差等の設置状況を考慮してあらかじめ決定される値である。
【0029】
次に第2の照度センサ14で受光された外光による出力電圧V2が電圧判定部22に送られ、電圧判定部22ではあらかじめ決定されたV2判定閾値110を用いて判定される。たとえば下限出力電圧Vcおよび上限出力電圧Vdを基準に、出力電圧V2がVc≦V2≦Vdであるか判定される(S208)。ここで、Vc≦V2≦Vdであれば、第2の照度センサ14は正常に外光を受光しており図1のようにスキミング機50は取り付けられていないと判断される。その結果、自動取引装置100は利用者のカード40を正常に受け付け、利用者所望の機能が実施される(S210)。
【0030】
もし、図6に示すように出力電圧V2aがV2a<Vcであれば、たとえば図7に示すようにスキミング機50がカード挿入り口16に取り付けられ第2の照度センサ14への外光が遮られている可能性があるため電圧判定部22から警告信号112がスピーカ、警告灯等の警告部32に送られ警告が行なわれる(S212)とともに、警告信号112が装置管理部34に送られカード搬送ローラ20の機能を停止する停止信号116が送られカード40の搬送が一旦停止される(S214)。さらに装置管理部34で警告信号112を所定の時間継続して受信すると(S216)、自動取引装置100の稼動を中止させる(S218)。
【0031】
また、スキミング機50を仕掛けようとする者が第2の照度センサ14の存在を認識し、図8に示すようにスキミング機50にあらかじめ発光素子52を取り付け外光の代わりに光を与えようと画策されることも考えられるが、第2の照度センサ14の出力判定値がその時々の第1の照度センサ12の出力値から決定されており、さらに判定閾値は装置外部から知ることはできない上に判定閾値の幅(下限出力電圧Vcと上限出力電圧Vdの差)を小さく設定することにより発光素子34の発光出力を判定閾値内に収めるように調整することは不可能であり、その結果、図6に示すように発光素子34による第2の照度センサ14の出力電圧V2b がVd<V2bとなる。この場合も電圧判定部22から警告信号112が警告部32に送られ警告が行われるとともに、警告信号112が装置管理部34に送られカード搬送ローラ20の機能を停止する停止信号116が送られカード40の搬送が一旦停止される。さらに装置管理部34で警告信号112を所定の時間継続して受信すると、自動取引装置100の稼動を中止させる。
【0032】
ここで外光がスキミング機以外の要因で一時的に遮られた場合等の誤動作を確認するために、警告信号の送信後所定の時間後に自動取引装置の稼動を中止させたが、警告信号の送信と同時に自動取引装置の稼動の中止を行っても構わない。
【0033】
また、外光を遮断しないためにスキミング機50に穴が開けられたり、透明なカバーが用いられたりすれば、利用者または管理者によってスキミング機50が仕掛けてあることを容易に認識することが可能である。
【0034】
また、自然光の代わりに外光として一定の照度の人工光を用いてもよく、さらに人工光の照度を定期的に変動させ照度センサの出力を判定することにより、スキミング機の検出をすることも可能である。
【0035】
上述の実施例は、自動取引装置におけるカードのスキミング機の仕掛け防止に適用した例を説明したが、たとえば発券機における磁気カードでのクレジットカード決済等の記憶媒体を用いて取引を行うすべての装置に対するスキミング防止として適用が可能である。
【符号の説明】
【0036】
12、14 照度センサ
16 カード挿入口
18 カード挿入検知センサ
20 カード搬送ローラ
22 電圧判定部
30 カード処理部
40 カード
50 スキミング機
52 発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されると、カード挿入検知センサで該カードを検知してカード搬送ローラが回転し、該カードをカード処理部に搬送し、該カード処理部で該カードから情報を読み取り、取引を行う自動取引装置において、該装置は、
該自動取引装置上においてカード挿入口から離隔した位置で外光を検知し、検知した照度に基づき第1の出力電圧を出力する第1の照度センサ手段と、
前記カード挿入口近傍で外光を検知し、検知した照度に基づき第2の出力電圧を出力する第2の照度センサ手段と、
前記第1の出力電圧および前記第2の出力電圧から、該自動取引装置に付加物が仕掛けられていないかを判定する電圧判定手段とを含み、
該電圧判定手段により付加物が仕掛けられていると判定された時には、警告を出し、一旦カードの取り込みを停止し、さらに警告が所定時間以上続くと該自動取引装置の稼動を中止することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動取引装置において、前記電圧判定手段は、
前記第1の出力電圧があらかじめ設定された値と比較して前記外光が通常状態であるか否かの判定を行う第1の電圧判定手段と、
前記第1の出力電圧と、あらかじめ決められた所定の値とから計算し前記第2の出力電圧を判定する閾値を設定する閾値設定手段と、
前記第2の出力電圧を前記閾値によって判定する第2の出力電圧判定手段とを含むことを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動取引装置において、前記第1の照度センサ手段は、前記カード挿入口の約40〜50cm上方に設置されていることを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
請求項2に記載の自動取引装置において、前記閾値設定手段は、前記第1の出力電圧に所定の値を加算した値を上限出力電圧とし、前記第1の出力電圧に所定の値を減算した値を下限出力電圧として決定することを特徴とする自動取引装置。
【請求項5】
カードが挿入されると、カード挿入検知センサで該カードを検知してカード搬送ローラが回転し、該カードをカード処理部に搬送し、該カード処理部で該カードから情報を読み取り、取り引きを行う自動取引方法において、該方法は、
自動取引装置上においてカード挿入口から離隔した位置で外光を検知し、検知した照度に基づき第1の出力電圧を出力する第1の照度センサ電圧出力工程と、
前記カード挿入口近傍で外光を検知し、検知した照度に基づき第2の出力電圧を出力する第2の照度センサ電圧出力工程と、
前記第1の出力電圧および前記第2の出力電圧から、前記自動取引装置に付加物が仕掛けられていないかを判定する電圧判定工程とを含み、
該電圧判定工程により付加物が仕掛けられていると判定された時には、警告を出し、一旦カードの取り込みを停止し、さらに警告が所定時間以上続くと前記自動取引装置の稼動を中止することを特徴とする自動取引方法。
【請求項6】
請求項5に記載の自動取引方法において、前記電圧判定工程は、
前記第1の出力電圧があらかじめ設定された値と比較して前記外光が通常状態であるか否かの判定を行う第1の電圧判定工程と、
前記第1の出力電圧と、あらかじめ決められた所定の値とから計算し前記第2の出力電圧を判定する閾値を設定する閾値設定工程と、
前記第2の出力電圧を前記閾値によって判定する第2の出力電圧判定工程とを含むことを特徴とする自動取引方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−43265(P2012−43265A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185037(P2010−185037)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】