説明

自動取引装置

【課題】 これまで金融機関等に設置されている現金自動取引装置(ATM)では、利用者が暗証番号を入力するのに際して、利用者以外の他の人物から暗証番号を盗み見されないように、できるだけ利用者以外の他の人物には画面を見難くする工夫が行われてきた。ところが近年ATMにおいて、利用者がいない時には画面にコマーシャル等を表示して少しでもATMを有効に活用しようとする試みがなされている。コマーシャル等を表示する場合にはできるだけ多くの人に画面を見てもらう方が有効であるが、これは取引画面を利用者以外の他の人物から覗き見されないようにする技術とは相反するものである
【解決手段】 ATMにおいて取引が行われていない時で画面にコマーシャル等を表示する時には、表示装置に最大サイズの画面を表示して多くの人の目に付き易いようにする。ATMの利用者が存在して取引が行われている時には、最大画面サイズよりも小さいサイズの入力エリアを表示することにより、利用者以外の他の人物からは入力エリアを見難いようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関等に設置されていて顧客が利用者として操作して取引する自動取引装置(以下ATMと略す)に関する。特に自動取引装置に表示している画面や利用者の操作の盗み見を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にATMにおいては、タッチパネル式の画面表示入力機構に暗証番号キーを設け、利用者が上記暗証番号キー画像の中の数字キーに触れることで、本人確認を行っている。しかし利用者が暗証番号を入力するのに際して、利用者以外の人物が画面を覗き見することがあり、他の人物に暗証番号を知られてしまう恐れがある。このことを防止する為に、従来から様々な工夫がなされてきた。例えば、暗証番号キー画像の数字キーの配列を順次変更することにより、利用者以外の人物が覗き見しても利用者がどの数字キーに触れたのかを分かり難くする等の方法(特許文献1)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−330888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、数字キーの配列を変更すると利用者の入力に間違いが生じる恐れがある問題がある。また、キーの配列そのものを覗き見することができれば、配列を変更しても利用者が押下した暗証番号が知られてしまう問題がある。
【0005】
また、近年ATMにおいて、利用者がいない時には画面にコマーシャル等を表示して少しでもATMを有効に活用しようとすることがなされており、コマーシャル等を表示する場合にはできるだけ多くの人が画面に注目し、画面に表示した内容を見てもらう方が有効であるが、これは取引画面を利用者以外の他の人物から覗き見されないようにする技術とは相反する目的も生じている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決するため、例えば、利用者が暗証番号キー画像の中の数字キーに触れる操作を行っている時に、正規の利用者以外の人物が近づいた際には、それを検知し、取引の入力エリアを正規の利用者以外の人物とは反対側の位置に移動して表示する。また、例えば、コマーシャル等を表示する時には最大サイズの画面表示エリアを提供し、利用者が取引を行う時には取引に使用する入力エリアを、最大サイズの画面表示エリアよりも小さく表示する。
【発明の効果】
【0007】
ATMにおける取引時のセキュリティを向上する。また、セキュリティを向上しつつ取引時間以外の時間帯におけるコマーシャル表示等の宣伝効果を向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ATMにおいて、装置の周囲にいる利用者以外の人物が、表示入力装置を容易に見ることができる時と、表示入力装置を簡単には見ることができない時を設けるようにする。そのために取引に支障を来たさない範囲で、コマーシャル等を表示している時と利用者が取引をしている時における画面サイズの大小の差を大きく付けるようにする。又は大勢の人の注意を画面に引き付ける時と、利用者ひとりが画面を見る時とで異なる見易さの表示入力エリアを作り出す。
【実施例1】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図2は本実施例におけるATMのブロック図である。ATMは入金部21、出金部22、通帳取扱部23、カード取扱部24、表示入力装置(タッチパネルディスプレイ)11、もの特に利用者の他の者を検知する人物検知センサ25と、それらを制御する制御部26から成り、ホストコンピュータ27に接続されている。タッチパネルディスプレイ11に限られず、入力部と表示部とが分離しているものであってもよいが、入力エリアの移動や縮小にはタッチパネルディスプレイが有利である。
【0011】
図4は本実施例におけるフローチャートである。ATMの周囲に人がいない時には画面は最大サイズ画面表示12を用いてコマーシャル等の広告を流し、できるだけ多くの人にコマーシャル等を見てもらえるようにしている(ステップ41)。
【0012】
コマーシャルモードの時、ATMの正面から人物が近づいた場合には、ATMの正面両側に設置されている人物検知センサ25a及び人物検知センサ25bがこれを検知し、ATMの正面から見易いように、向かって左から右にコマーシャル等の映像を流すようにする。
【0013】
ATMの右側から人物が近づいた場合にはATMの向かって右側に設置されている人物検知センサ25bを用いてこれを検知し、右側を下にしたコマーシャル等の映像をATMに向かって手前から奥に流すようにする。このことによりATMの右側に位置する人物にコマーシャル等の映像を見易くする。
【0014】
ATMの左側から人物が近づいた場合にはATMの向かって左側に設置されている人物検知センサ25aを用いてこれを検知し、左側を下にしたコマーシャル等の映像をATMに向かって奥から手前に流すようにする。このことによりATMの左側に位置する人物にコマーシャル等の映像を見易くする。
【0015】
図1はATMに利用者14が近づいた時に入力エリア13を小さく表示しているところの上面図である。ATMに利用者14が近づいた時には、利用者14が画面に触れるのを検知し、ATMは入力モードに入る(ステップ42)。
【0016】
入力モードでは利用者14から見て画面の中央手前に最大サイズ画面表示12よりも小さく入力エリア13を設定する(ステップ43)。利用者14はこの小さな入力エリア13に表示された暗証番号キー画像の中の数字キーに選択して触れることにより、利用者14の本人確認を行う。このことで利用者14以外の人物31からは、暗証番号の入力等の操作が利用者14の体に隠れるので盗み見されることが少なくなる。最大サイズ画面12のうち入力エリア13ではない箇所にはブランク表示(例えば黒)としておいてもよく、このように周囲がブランクになっている場合を表示エリアが縮小したと表現する。
【0017】
上記実施例のようにATMが入力モードの時に入力エリア13を小さく表示すると、利用者14が年配の方等の場合等には入力エリア13が小さ過ぎて操作が困難になることも考えられる。この場合には利用者14が入力エリア拡大ボタン15を押下するのを検知すると、制御部26は入力エリア13を最大サイズ画面12で表示させることにより、入力がし易くなるようにする(ステップ45)。
【0018】
図3は入力操作を行おうとしている利用者14に利用者14以外の人物31が近づいた時の入力エリア13の位置を移動させることを示す上面図である。
【0019】
例えば、暗証番号等を盗み見しようとする人物31が利用者14に対して右後方から近づいて来た場合について述べる。利用者14以外の人物31が利用者14の右後方に近づいて来た場合には、ATMの向かって右側に取り付けた人物検知センサ25bで人物31を検知する。検知したならば制御部26は、入力エリア13を利用者14から見て左に移動する。このことで入力エリア13は利用者14を挟んで、利用者14以外の人物31から隠れる位置に来るので、利用者14以外の人物31は利用者14が入力エリア13内でどのような順序で数字キーに触れたかを見難くなる。
【0020】
同様に利用者14以外の人物31が利用者14の左後方に近づいて来た場合には、ATMの向かって左側(自動取引装置の利用者側の右)に取り付けた人物検知センサ25bで人物31を検知する。検知したならば制御部26は、入力エリア13を利用者14から見て右(自動取引措置の利用者側の左)に移動する。このことで入力エリア13は利用者14を挟んで、利用者14以外の人物31から隠れる位置に来るので、利用者14以外の人物31は利用者14が入力エリア13内でどのような順序で数字キーに触れたかを見ることができなくなる。
【0021】
このように利用者14以外の人物31が近くに存在する場合には、利用者14を挟んで利用者14以外の人物31とは反対側の位置に入力エリア13を移動し、利用者14以外の人物31の視線を、利用者14の身体によって入力エリア13から遮る様にする(ステップ47)。
【0022】
検知センサ25aとbそのものやその位置に、入力エリアを移動する方向や場所等を対応したテーブルを記憶した記憶部を有し、制御部26は検知センサ25からの信号とこのテーブルに基づいて入力エリアの移動を決定し、表示入力装置11を制御する。センサ自体からものとの距離等を検出できるのであれば、その距離等に基づいて入力エリアの位置を変えても良い。センサは一箇所であってもよく、自動取引装置の左右に設置されている場合に限られない。
【実施例2】
【0023】
図7は利用者14の操作時に利用者14以外の人物31が後方から近づいてきた場合に、入力エリア13を三角形状にして表示したところを示す。利用者14以外の人物31が右後方に近づいて来た場合には、ATMの向かって右側に取り付けた人物検知センサ25bで人物31を検知する。検知したならば制御部26は、入力エリア13を利用者14から見て左側に寄せるだけでなく、入力エリア13の形状をATMに向かって左手前に直角が来るような形の直角三角形の形状に表示する。このことにより利用者14以外の人物31の視線を、利用者14の身体によって入力エリア13が長方形の場合よりも更に遮ることができるようになる。
【0024】
利用者14以外の人物31が左後方に近づいて来た場合には、ATMの向かって左側に取り付けた人物検知センサ25bで人物31を検知する。検知したならば制御部26は、入力エリア13を利用者14から見て右側に寄せるだけでなく、入力エリア13の形状をATMに向かって右手前に直角が来るような形の直角三角形の形状に表示する。このことにより利用者14以外の人物31の視線を、利用者14の身体によって入力エリア13が長方形の場合よりも更に遮ることができるようになる。
【0025】
図8は利用者14の操作時に利用者14以外の人物31が後方から近づいてきた場合に、入力エリア13を直線形状にして表示したところを示す。利用者14以外の人物31が右後方に近づいて来た場合には、ATMの向かって右側に取り付けた人物検知センサ25bで利用者14以外の人物31を検知する。検知したならば制御部26は、入力エリア13を利用者14から見て左側に寄せるだけでなく、入力エリア13の形状をATMに向かって左側に直線状に延びるように表示する。このことにより利用者14以外の人物31の視線を、入力エリア13が長方形の場合よりも更に遮ることができるようになる。
【0026】
利用者14以外の人物31が左後方に近づいて来た場合には、ATMの向かって左側に取り付けた人物検知センサ25bで利用者14以外の人物31を検知する。検知したならば制御部26は、入力エリア13を利用者14から見て右側に寄せるだけでなく、入力エリア13の形状をATMに向かって右側に直線状に延びるように表示する。このことにより利用者14以外の人物31の視線を、入力エリア13が長方形の場合よりも更に遮ることができるようになる。
【0027】
このように入力エリア13の形状は長方形、三角形、直線形状に限らず、例えば番号が円形状に並んでいても良い。このように入力エリア13の形状を変化させることによっても、利用者14の体に隠れるので、利用者14以外の人物31の視線を遮り、暗証番号の入力等の操作が盗み見されることが少なくなるのに効果が上がる。
【実施例3】
【0028】
図9は、利用者14に複数の他の人物31が近づいた場合のフローチャートである。利用者14が操作を行おうとしている時あるいは実際に操作をしている時に、左右から複数の利用者14以外の人物31が近づいて来た場合には、人物検知センサ25でこれを検知し、制御部26は、利用者14以外の人物31に対して音声で「利用中です。離れて下さい」との警告を出す(ステップ94)。警告を出すことにより、暗証番号を盗み見しようとしている利用者14以外の人物31に、自らの行動を検知されていることを知らしめることができる。
【0029】
更に、利用者14に利用者14以外の人物31が近づいたことを「他の人物が近くに居ます」等の音声ガイダンス、あるいは画面上の表示で知らせる(ステップ94)。利用者14はこのガイダンスにより注意を喚起されて、周辺の人物31に注意を払うようになると共に、操作を盗み見されていることを自覚するようになる。
【0030】
利用者14以外の人物31が立ち去らないことも考えられるので、更に利用者14に対して、操作を継続するか、操作を一旦終了させるかの選択ができるように、案内をする(ステップ95)。
【0031】
利用者14が周辺の人物31に気付いて「操作を終了する」を選択した場合には操作は直ぐに終了し(ステップ97)、画面はコマーシャルモードに移る(ステップ91)。周辺の人物31がガイダンス等の警告で立ち去った場合には、利用者14はATM画面への入力操作を継続することもできる。利用者14が「操作を継続する」を選択した場合には入力操作は継続され(ステップ96)、利用者14は入金・出金等の操作を終えた後(ステップ97)、ATM画面はコマーシャルモードに移る(ステップ91)。
【実施例4】
【0032】
図5はATMがコマーシャル表示モードから入力モードに入る時に、画面を隠すように遮蔽板を出す時のフローチャートである。コマーシャル表示モードで最大サイズ画面12に利用者14が触れたのを検知した時(ステップ52)、入力モードに入るのに際して、表示入力装置11の両側に利用者14以外の人物31の視線を遮るように遮蔽板を立てるようにする(ステップ53)。
【0033】
遮蔽板は利用者14以外の人物31の視線を遮ればよいので、表示入力装置11の上部から回転式に出て来るようにしてもよい。あるいは表示入力装置11の左右に立ち上がるようにしてもよい。
【0034】
操作モードが終了したならば遮蔽板は収納し(ステップ56)、コマーシャル表示モードに移り(ステップ51)、最大サイズ画面12で多くの方向からコマーシャル等を見易いようにする。
【0035】
図6はATMがコマーシャル表示モードから入力モードに入る時に、画面表示入力装置11の上に偏光シートを出す時のフローチャートである。コマーシャル表示モードで最大サイズ画面12に利用者14が触れたのを検知した時(ステップ62)、入力モードに入るのに際して、数ミリの厚さの偏光シートを表示入力装置11の上に出すこともできる(ステップ63)。
【0036】
偏光シートは表示入力装置11の上に例えば利用者14から見て左から右へ表面を滑るように挿入してもよい。また表示入力装置11の上部から回転式に降りて来るような構造として、表示入力装置11の上へ被せるようにしてもよい。偏光シートを装着すると画面の視野角が小さくなるので、利用者14以外の人物31からは画面の表示を見ることはほとんどできなくなる。
【0037】
入力モードを終了させてコマーシャルモードに移る時には、偏光シートを引き入れ(ステップ66)、視野角を広くして、多くの方向からコマーシャル等を見ることができるようにする。
【0038】
ATMは現在多くの場所に設置され、利用者も多い。本発明により利用時間以外の時間にもコマーシャル表示等が有効に働き終日有効に活用できるようになると共に、ATMの利用者が暗証番号を入力する時には、利用者以外の人物に暗証番号を覗き見される恐れが少なくなるので、産業上の利用可能性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】入力エリアを表示する上面図
【図2】ブロック図
【図3】利用者以外の人物が存在する場合の入力エリアを表示する上面図(1)
【図4】フローチャート(1)
【図5】フローチャート(2)
【図6】フローチャート(3)
【図7】利用者以外の人物が存在する場合の入力エリアを表示する上面図(2)
【図8】利用者以外の人物が存在する場合の入力エリアを表示する上面図(3)
【図9】フローチャート(4)
【符号の説明】
【0040】
11・・・表示入力装置
12・・・最大サイズ画面
13・・・入力エリア
14・・・利用者
15・・・画面サイズ拡大ボタン
21・・・入金部
22・・・出金部
23・・・通帳取扱部
24・・・カード取扱部
25・・・人物検知センサ
26・・・制御部
27・・・ホスト
31・・・利用者以外の人物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に対する操作案内及び広告を表示する表示部と、
利用者からの入力を受ける入力部と、
前記表示部で広告を表示しているときに前記入力部で入力を受けると前記表示部の表示エリアを縮小する制御部とを有する自動取引装置。
【請求項2】
利用者から入力を受けるキーを含む入力エリアを表示するタッチパネルディスプレイと、
ものを検知する検知部と、
前記検知部でものを検知したとき、前記入力エリアの表示位置を変更する制御部とを有する自動取引装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動取引装置であって、
前記検知部は、複数箇所に設置され、
前記制御部は、ものを検知した前記検知部の箇所に応じて、変更する表示位置を決定する。
【請求項4】
請求項2記載の自動取引装置であって、
前記検知部は、前記利用者側の左右に設置され、
前記制御部は、前記利用者側の左の検知部でものを検知したときには前記入力エリアの表示位置を右に変更し、前記利用者側の右の検知部でものを検知したときには前記入力エリアの表示位置を左に変更する。
【請求項5】
利用者の媒体の情報を読み取る媒体読取部と、
利用者から入力を受けるキーを含む入力エリアを表示するタッチパネルディスプレイと、
前記利用者の他の者を検知する検知部と、
前記検知部で者を検知したとき、前記入力エリアの表示位置を当該者の視界から前記利用者で遮蔽される位置へ移動する制御部とを有する自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−11765(P2006−11765A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187228(P2004−187228)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】