説明

自動培養装置、封止容器、スライド弁及びディスポーザブル容器

【課題】複雑な制御が不要であり、細胞培養コストの低減を可能とする自動培養装置、封止容器、スライド弁及びディスポーザブル容器を提供する。
【解決手段】自動培養装置100は、収容部10と培養容器30との間に配置されるスライド弁20を備える。スライド弁20は、第1蓋部22Aと第2蓋部22Bとの間に形成され、第2溶液S2を封止可能な封止空間SPを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養に用いられる自動培養装置、封止容器、スライド弁及びディスポーザブル容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞の増殖や分化などを目的として、細胞培養が広く行われている。具体的には、細胞を培養する方法は、細胞を培地で培養する工程と、PBS(Phosphate Buffered Salts)によって細胞を洗浄する工程、トリプシンによって細胞を培養容器から剥離する工程、及び多数種の試薬を添加する工程などの複雑な工程を備える。
【0003】
そこで、細胞培養を自動的に行うための自動培養装置が提案されている(特許文献1参照)。具体的には、自動培養装置は、細胞を培養する培養容器と、PBSやトリプシンなどの多数種の試薬を保存する複数の試薬容器と、各試薬容器と培養容器とにつながる複数のチューブと、各試薬を送液するためのポンプとを備える。各試薬は、所定の順序に従って、各試薬容器から培養容器へ供給される。
【特許文献1】特開2007−3126668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自動培養装置によると、次のような問題があった。第1には、各チューブ内に各試薬が無駄に残留すること、及び、細胞培養終了とともに培養容器、各試薬容器及び各チューブを廃棄する必要があることから、細胞培養コストが増大してしまうという問題があった。第2には、細胞培養には多数種の試薬が用いられるので、各試薬を各チューブ内に流すためのポンプの複雑な制御を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、複雑な制御が不要であり、細胞培養コストの低減を可能とする自動培養装置、封止容器、スライド弁及びディスポーザブル容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴に係る自動培養装置は、細胞培養に用いられる第1溶液を保存する保存容器と、保存容器を収容する収容部と、細胞培養が行われる培養容器と、収容部と培養容器との間に配置されるスライド弁と、第1溶液を保存容器から培養容器に向けて押し出す送液機構とを備え、収容部は、保存容器の口につながる第1開口部を有し、培養容器は、第2開口部を有しており、スライド弁は、本体部と、本体部に形成された連通孔であって、第1開口部と第2開口部とにつながる連通孔と、連通孔の収容部側開口部を封止する第1蓋部と、連通孔の培養容器側開口部を封止する第2蓋部と、第1蓋部と第2蓋部との間に形成され、第1溶液とともに細胞培養に用いられる第2溶液を封止可能な封止空間とを有することを要旨とする。
【0007】
本発明の特徴に係る自動培養装置によれば、第2溶液をスライド弁に封入することによって、無駄に残留する第2溶液を極めて少量にすることができる。その結果、細胞培養コストを低減させることができる。特に、第2溶液が血清、増幅因子、刺激因子などの一般的に高価な試薬である場合には、コスト低減効果は大きい。また、スライド弁のみを介して第1及び第2溶液を供給できるので、コンタミネーションを抑制するために廃棄すべき部材点数を少なくすることができる。その結果、細胞培養コストをより低減させることができる。また、スライド弁を一方向に移動させることのみによって、第1溶液及び第2溶液の供給を制御することができる。従って、第1溶液及び第2溶液の供給に際して、ポンプなどの複雑な制御を必要としない。
【0008】
本発明の特徴に係る自動培養装置において、第1蓋部及び第2蓋部は、樹脂薄膜によって構成されていてもよいし、第1開口部及び第2開口部に取り付けられた管が挿入されることによって開かれる剛体や、収容部及び培養容器に形成された突出部がスライド弁のスライドとともに引っ掛かることによって開かれる剛体などであってもよい。
【0009】
本発明の特徴に係る自動培養装置において、培養容器の第2開口部は、培養容器の蓋に形成された孔の開口部であってもよいし、蓋のない培養容器の上面開口部であってもよい。
【0010】
本発明の特徴に係る自動培養装置において、封止空間に第2溶液が封止されていてもよい。
【0011】
本発明の特徴に係る自動培養装置において、スライド弁は、前記連通孔とは別に形成される封止空間まで本体部を貫通する貫通孔を有していてもよい。
【0012】
本発明の特徴に係る封止容器は、細胞培養に用いられる第1溶液を保存する保存容器を収容する収容部の保存容器の口につながる第1開口部と、細胞培養が行われる培養容器の第2開口部とにつなげられる連通孔を有するスライド弁に装填される封止容器であって、連通孔に装填される筒状部材と、筒状部材の一方の開口部を封止する第1蓋部と、筒状部材の他方の開口部を封止する第2蓋部と、第1蓋部と第2蓋部との間に形成され、第1溶液とともに細胞培養に用いられる第2溶液を封止する封止空間とを有することを要旨とする。
【0013】
本発明の特徴に係るスライド弁は、細胞培養に用いられる第1溶液を保存する保存容器を収容する収容部と、細胞培養が行われる培養容器との間に配置されるスライド弁であって、本体部と、本体部に形成された連通孔であって、保存容器の口につながる収容部の第1開口部と培養容器の第2開口部とにつながる連通孔と、連通孔の収容部側開口部を封止する第1蓋部と、連通孔の培養容器側開口部を封止する第2蓋部と、第1蓋部と第2蓋部との間に形成され、第1溶液とともに細胞培養に用いられる第2溶液を封止可能な封止空間とを有することを要旨とする。
【0014】
本発明の特徴に係るディスポーザブル容器は、細胞培養が行われる培養容器に接続されるディスポーザブル容器であって、細胞培養に用いられる第1溶液を保存する保存容器を収容する収容部と、収容部と培養容器との間に配置されるスライド弁とを備え、収容部は、第1溶液を保存容器から培養容器に向けて押し出す外力付加機構と、保存容器の口につながる第1開口部とを有し、スライド弁は、本体部と、本体部に形成された連通孔であって、収容部の第1開口部と培養容器の第2開口部とにつながる連通孔と、連通孔の収容部側開口部を封止する第1蓋部と、連通孔の培養容器側開口部を封止する第2蓋部と、第1蓋部と第2蓋部との間に形成され、第1溶液とともに細胞培養に用いられる第2溶液を封止可能な封止空間とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複雑な制御が不要であり、細胞培養コストの低減を可能とする自動培養装置、封止容器、スライド弁及びディスポーザブル容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0017】
[第1実施形態]
(自動培養装置の構成)
第1実施形態に係る自動培養装置の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る自動培養装置100の構成を示す側面図である。
【0018】
図1に示すように、自動培養装置100は、収容部10、スライド弁20、培養容器30、廃液タンク40、ポンプP1、空気流路Q及びポンプP2を備える。自動培養装置100は、細胞の増殖や分化などを目的とする細胞培養を自動的に行うため装置である。細胞培養とは、人体から採取した細胞を擬似的な組織間液(以下、「培地」という。)中で培養することをいう。自動培養装置100には、自動培養装置100の内部が密閉された容器密閉型と、外界から密閉された筐体内に設置される筐体密閉型とがある。
【0019】
収容部10は、複数の保存容器11、冷却機構12、複数の配管13及び加温機構14を収容する。
【0020】
複数の保存容器11それぞれは、細胞培養に用いられる第1溶液S1(培地、PBSなど)を保存する。複数の保存容器11は、冷却機構12によって、第1溶液S1の保存に適した温度に冷却される。これによって、第1溶液S1は、複数の保存容器11内で良好に保存される。複数の保存容器11それぞれは、複数の配管13につながる口を有する。
【0021】
複数の配管13それぞれは、複数の保存容器11それぞれとスライド弁20とを接続する。複数の配管13それぞれは、複数の保存容器11からスライド弁20まで第1溶液S1を流通させる。複数の配管13は、加温機構14によって、人の体温(約37℃)に加温される。これによって、第1溶液S1は、培養容器30内での細胞培養に適した温度に加温される。ただし、第1溶液S1を昇温する必要がない場合、自動培養装置100は、加温機構14を備えていなくてもよい。
【0022】
また、収容部10は、ポンプP1から送り込まれる空気を通すための空気流路Qが挿通される挿通口15を有する。ここで、空気流路Qは、第1空気流路Q1と第2空気流路Q2とを含む。第1空気流路Q1は、収容部10の外部において、ポンプP1と収容部10とを繋ぐ。第2空気流路Q2は、収容部10の内部において、第1空気流路Q1と各保存容器11とを繋ぐ。第1空気流路Q1と第2空気流路Q2とは、挿通口15において連結されていてもよい。
【0023】
スライド弁20は、複数の保存容器11と培養容器30との間に配置され、両者を仕切っている。スライド弁20は、図1に示すように、栓21、流通孔RH及び連通孔CHを有する。流通孔RHは、第1溶液S1(本実施形態では、「PBS」)を流すための流路である。連通孔CHには、第1溶液S1(本実施形態では、「培地」)とともに細胞培養に用いられる第2溶液S2(血清、増幅因子、刺激因子などの試薬)が封止されている。スライド弁20は、図示するスライド方向に沿ってスライド可能であり、これによって、第1溶液S1及び第2溶液S2の供給が制御される。
【0024】
具体的には、例えば、培地を第2溶液S2とともに培養容器30に供給する場合、収容部10の培地側開口部(培地用の配管13の先端)と栓21との位置が合うように、スライド弁20をスライドさせる。この場合、収容部10のPBS側開口部(PBS用の配管13の先端)には栓21が当接する。また、PBSを培養容器30に供給する場合、収容部10のPBS側開口部と流通孔RHとの位置が合うように、スライド弁20をスライドさせる。この場合、収容部10の培地側開口部には栓21が当接する。
【0025】
このように、本実施形態では、スライド弁20のスライドによって、培地とPBSを別々に供給するとともに、培地と第2溶液を同時に供給することができる。ただし、スライド弁20の構成は、2種以上の第1溶液を同時に供給可能な構成であってもよい。スライド弁20の詳細な構成については後述する。なお、血清、増幅因子、刺激因子などの試薬は、一般的に、培地などに比べて非常に高価である。
【0026】
培養容器30は、細胞培養が行なわれるフィールドを形成する。培養容器30には、スライド弁20を介して、培養容器30の開口部から、第1溶液S1及び第2溶液S2が供給される。培養容器に蓋がある場合、培養容器の開口部とは、蓋に形成された孔の開口部であり、培養容器に蓋がない場合、培養容器の開口部とは、培養容器の上面開口部である。培養容器30の内部は、細胞培養に適した環境(例えば、37℃のCO雰囲気)に管理される。細胞培養が終了した場合、培養容器30に供給された第1溶液S1及び第2溶液S2は、廃液タンク40に排出される。
【0027】
ポンプP1は、第1溶液S1及び第2溶液S2を培養容器30に供給する場合、複数の保存容器11に空気を送り込む。これによって、第1溶液S1は、各保存容器11から各配管13、すなわち培養容器30に向けて押し出される。但し、ポンプP1に代えて、例えばペリスタポンプを使用することによって、第1溶液S1を各保存容器11から各配管13に送り出すこととしてもよい。具体的には、配管13などに取り付けられるローラーによって、第1溶液S1を各保存容器11から培養容器30に向けて押し出すことができる(図示せず)。
【0028】
ポンプP2は、培養容器30から第1溶液S1及び第2溶液S2を排出する場合、廃液タンク40から空気を吸い出す。これによって、培養容器30から廃液タンク40へ第1溶液S1及び第2溶液S2が吸い出される。なお、ポンプP2としては、ポンプP1と同様に、例えばペリスタポンプなどを使用することができる。
【0029】
ここで、各保存容器11、各配管13及びスライド弁20は、細胞培養の終了とともに廃棄処分される。従って、次に細胞培養が行われる場合には、新品の保存容器11、配管13及びスライド弁20が使用される。このように、自動培養装置100のうち収容部10(各保存容器11、各配管13及び第2空気流路Q2を含む)及びスライド弁20は、コンタミネーションの抑制を目的として、ディスポーザブル容器を構成していることに留意すべきである。このようなディスポーザブル容器は、ポリプロピレンなどの樹脂材料によって形成されていることが好ましい。なお、収容部10に含まれる第2空気流路Q2は、図1における第1溶液S1に外力を付加するために用いられる外力付加機構の一例であり、ポンプP1に代えてペリスタポンプを用いる場合には、配管13などに取り付けられるペリスタポンプのローラーが外力付加機構となることに留意すべきである。また、このようなディスポーザブル容器は培養容器30上に配置されるが、ディスポーザブル容器には培養容器30が含まれていてもよい。
【0030】
また、図示しないが、自動培養装置100は、スライド弁20を冷却する冷却機構を備えていてもよい。これによって、スライド弁20に封止された第2溶液S2は、スライド弁20内で良好に保存される。
【0031】
(スライド弁の詳細な構成)
第1実施形態に係るスライド弁20の詳細な構成について、図2を参照しながら説明する。図2(a)は、スライド弁20を収容部10側から見た平面図である。図2(b)は、スライド弁20を培養容器30側から見た平面図である。図2(c)は、図2(a)のA−A線における断面図である。
【0032】
図2に示すように、スライド弁20は、本体部H、栓21、流通孔RH、連通孔CH、第1蓋部22A、第2蓋部22B及び封止空間SPを備える。
【0033】
本体部Hは、収容部10と対向する第1対向面TAと、培養容器30と対向する第2対向面TBとを有する。上述の通り、本体部Hは、樹脂材料によって形成されることが好ましいが、ガラスやセラミクスなどによって形成されていてもよい。
【0034】
栓21は、第1溶液S1が流出しないように、各配管13の下端開口部を閉じるための栓である。栓21は、各保存容器11から第1溶液S1を培養容器30に供給しない場合、各配管13の下端開口部の位置に合わせられる。栓21は、例えばゴム材料などによって形成される。なお、栓21は、第1対向面TAから第2対向面TBまで本体部Hを貫通しているが、栓21は、少なくとも、本体部Hの第1対向面TA側に設けられていればよい。
【0035】
流通孔RHは、本体部Hに形成されており、収容部10のPBS側開口部と培養容器30の開口部とにつながる。流通孔RHは、第1対向面TAから第2対向面TBまで本体部Hを貫通する流路である。
【0036】
連通孔CHは、本体部Hに形成されており、収容部10の培地側開口部と培養容器30の開口部とにつながる。具体的には、連通孔CHは、第1対向面TAから第2対向面TBまで本体部Hを貫通している。
【0037】
第1蓋部22Aは、連通孔CHの収容部側開口部を封止する蓋である。第2蓋部22Bは、連通孔CHの培養容器側開口部を封止する蓋である。第1蓋部22A及び第2蓋部22Bは、薄い樹脂フィルムによって簡便に形成するとともに、加圧によって簡便に破ることができるが、これに限られるものではない。例えば、蓋部は剛体によって構成されており、収容部10の開口部や培養容器30の開口部に取り付けられた管が挿入されることによって開かれてもよいし、収容部10及び培養容器30に形成された突出部(不図示)がスライド弁20のスライドとともに引っ掛かることによって開かれてもよい。
【0038】
封止空間SPは、第1蓋部22Aと第2蓋部22Bとの間において、第2溶液S2を封止可能に形成されている。本実施形態では、封止空間SPには、第2溶液S2が封止されている。
【0039】
(溶液の供給方法)
次に、収容部10及びスライド弁20から培養容器30への溶液の供給方法について説明する。なお、以下の説明では、第1蓋部22A及び第2蓋部22Bは、加圧によって破られる樹脂薄膜によって構成されていることとする。
【0040】
まず、培地を培養容器30に供給する場合、スライド弁20をスライド方向にスライドさせることによって、第1蓋部22Aを培地用の配管13の下端開口部に移動する。
【0041】
次に、ポンプP1を用いて、培地用の配管13の下端開口部から培地を押し出すことによって、第1蓋部22Aを破く。これによって、培地は、封止空間SP内に流入し、培地と第2溶液S2とが混合される。
【0042】
次に、ポンプP1を用いて、培地用の配管13の下端開口部から培地をさらに押し出すことによって、第2蓋部22Bを破く。これによって、培地及び第2溶液S2が培養容器30に供給される。
【0043】
(作用及び効果)
第1実施形態に係る自動培養装置100は、収容部10と培養容器30との間に配置されるスライド弁20を備える。スライド弁20は、第1蓋部22Aと第2蓋部22Bとの間に形成され、第2溶液S2を封止可能な封止空間SPを有する。
【0044】
従って、第2溶液をスライド弁20に封入することによって、無駄に残留する第2溶液を極めて少量にすることができる。その結果、細胞培養コストを低減させることができる。特に、第2溶液は、血清、増幅因子、刺激因子などの一般的に高価な試薬であるため、本実施形態に係る自動培養装置100によるコスト低減効果は大きい。
【0045】
また、スライド弁のみを介して収容部10から培養容器30に第1及び第2溶液を供給できるので、コンタミネーションを抑制するために廃棄すべき部材点数を少なくすることができる。その結果、細胞培養コストをより低減させることができる。
【0046】
また、スライド弁20を一方向にスライドさせることのみによって、第1溶液及び第2溶液を含む多数種の溶液の供給を制御することができる。従って、第1溶液及び第2溶液の供給に際して、ポンプや弁などの複雑な制御による流路の切り替えを必要としない。
【0047】
[第2実施形態]
以下において、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下では、上記第1実施形態との相違点について主に説明する。具体的には、本実施形態に係るスライド弁20は、必要に応じて封止空間SPに第2溶液S2を充填可能な構成を有する。
【0048】
(スライド弁の構成)
第2実施形態に係るスライド弁20の構成について、図3を参照しながら説明する。図3(a)は、スライド弁20を収容部10側から見た平面図である。図3(b)は、図2(a)のB−B線における断面図である。図3(b)は、スライド弁20に装着されるバイアル50の構成を示す図である。
【0049】
図3(a)及び(b)に示すように、スライド弁20は、貫通孔TH及び突出部20aを有する。
【0050】
貫通孔THは、上記連通孔CHとは別に形成されており、本体部Hの側面TCから封止空間SPまで本体部Hを貫通する。突出部20aは、筒状に形成されており、突出部20a内部の中空空間は、貫通孔THに連なっている。突出部20aの外周には、らせん状の溝が形成されており、突出部20aは、雄ネジとして機能する。
【0051】
バイアル50は、第2溶液S2を封止するための封止容器である。図3(c)に示すように、バイアル50の内部には、第2溶液S2を封止する封止空間SQが形成されている。また、バイアル50の内壁には、突出部20aの外周に形成された溝に対応するように、らせん状の溝が形成されており、バイアル50は、突出部20aに対して雌ネジとして機能する。なお、バイアル50の搬送時には、バイアル50は雌ネジを備える蓋(不図示)によって封がされている。
【0052】
(溶液の供給方法)
まず、バイアル50の蓋を外して、突出部20aに回し留める。続いて、スライド弁20を収容部10と培養容器30との間に設置する。
【0053】
次に、培地を培養容器30に供給する場合、スライド弁20をスライド方向にスライドさせることによって、第1蓋部22Aを配管13の下端開口部に移動する。
【0054】
次に、ポンプP1を用いて、培地用の配管13の下端開口部から培地を押し出すことによって、第1蓋部22Aを破く。これによって、封止空間SP及び封止空間SQに培地がに流入し、培地と第2溶液S2とが混合される。
【0055】
次に、ポンプP1を用いて、配管13の下端開口部から培地をさらに押し出すことによって、第1蓋部22Bを破く。これによって、封止空間SPから培地及び第2溶液S2が培養容器30に供給される。
【0056】
(作用及び効果)
第2実施形態に係るスライド弁20は、本体部Hの側面THから封止空間SPまで本体部Hを貫通する貫通孔THを有する。従って、スライド弁20を使用する際に、第2溶液S2を封止空間SPに封止することができる。このように、第2溶液S2をスライド弁20とは別に管理することができるので、第2溶液S2の取り扱い性を向上することができる。
【0057】
[第3実施形態]
以下において、本発明の第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下では、上記第1実施形態との相違点について主に説明する。具体的には、本実施形態に係るスライド弁20には連通孔CHが形成されており、第2溶液S2を封止する封止容器が連通孔CHに装填される。
【0058】
(スライド弁の構成)
第3実施形態に係るスライド弁20の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、スライド弁20を収容部10側から見た平面図である。図4に示すように、スライド弁20は、第1蓋部22A及び第2蓋部22Bが形成されていない。従って、スライド弁20の連通孔CH内には、封止空間SPは形成されない。
【0059】
(封止容器の構成)
第3実施形態に係る封止容器60の構成について、図5を参照しながら説明する。図5は、封止容器60の断面図である。
【0060】
図5に示すように、封止容器60は、筒状部材61、第1蓋部22A、第2蓋部22B及び封止空間SPを有する。
【0061】
筒状部材61は、連通孔CHの形状にフィットする形状に加工されている。筒状部材61の内部には貫通孔が形成されている。
【0062】
第1蓋部22Aは、貫通孔の一の開口部を封止する。第2蓋部22Bは、貫通孔の他の開口部を封止する。これによって、封止空間SPが形成される。封止空間SPには、第2溶液S2が封止される。
【0063】
(溶液の供給方法)
まず、封止容器60をスライド弁20の連通孔CHに装填する。続いて、スライド弁20を収容部10と培養容器30との間に設置する。
【0064】
次に、収容部10及びスライド弁20から培養容器30への溶液の供給方法について説明する。
【0065】
まず、第1溶液S1を培養容器30に供給する場合、スライド弁20をスライド方向にスライドさせることによって、第1蓋部22Aを培地用の配管13の下端開口部に移動する。
【0066】
次に、ポンプP1を用いて、培地用の配管13の下端開口部から培地を押し出すことによって、第1蓋部22Aを破く。これによって、培地は、封止空間SP内に流入し、培地と第2溶液S2とが混合される。
【0067】
次に、ポンプP1を用いて、培地用の配管13の下端開口部から培地をさらに押し出すことによって、第1蓋部22Bを破く。これによって、培地及び第2溶液S2が培養容器30に供給される。
【0068】
(作用及び効果)
第3実施形態に係る封止容器60は、封止空間SPにおいて第2溶液S2を封止している。封止容器60は、スライド弁20の連通孔CHに装填される。
【0069】
従って、第2溶液S2をスライド弁20とは別に管理することができるので、第2溶液S2の取り扱い性を向上することができる。
【0070】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0071】
例えば、上記第2実施形態では、貫通孔THにバイアル50を取り付けることとしたが、貫通孔THはゴム蓋などによって栓をされていてもよい。この場合には、スライド弁20を使用する際に、第2溶液S2を注射器によって封止空間SPに注入することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、スライド弁20は、直線的に一方向にスライド可能であることとしたが、これに限られる物ではない。例えば、図6に示すように、円柱状の本体部Hに栓21、流通孔RH及び連通孔CHを形成してもよい。このようなスライド弁20によれば、円周方向にスライド弁20を回転させることによって、第1溶液S1及び第2溶液S2の供給を制御することができる。このように、スライド弁20は、スライドや回転を含む「移動」によって、溶液の供給を制御可能な弁であればよい。
【0073】
また、上記実施形態では、自動培養装置100は、送液機構の一例として、ポンプP1及びポンプP2を備えることとしたが、これに限られるものではない。例えば、自動培養装置100は、送液機構として、シリンジ送液装置など周知の送液機構を備えていてもよい。
【0074】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動培養装置100の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るスライド弁20の構成を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るスライド弁20の構成を説明するための図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るスライド弁20の構成を説明するための図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る封止容器60の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るスライド弁20の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10…収容部
11…保存容器
12…冷却機構
13…配管
14…加温機構
20…スライド弁
20a…突出部
21…栓
22A…第1蓋部
22B…第2蓋部
30…培養容器
40…廃液タンク
50…バイアル
60…封止容器
61…筒状部材
100…自動培養装置
CH…連通孔
H…本体部
TH…貫通孔
P1…ポンプ
P2…ポンプ
S1…第1溶液
S2…第2溶液
SP,SQ…封止空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養に用いられる第1溶液を保存する保存容器と、
前記保存容器を収容する収容部と、
細胞培養が行われる培養容器と、
前記収容部と前記培養容器との間に配置されるスライド弁と、
前記第1溶液を前記保存容器から前記培養容器に向けて押し出す送液機構と
を備え、
前記収容部は、前記保存容器の口につながる第1開口部を有し、
前記培養容器は、第2開口部を有しており、
前記スライド弁は、
本体部と、
前記本体部に形成された連通孔であって、前記第1開口部と前記第2開口部とにつながる連通孔と、
前記連通孔の前記収容部側開口部を封止する第1蓋部と、
前記連通孔の前記培養容器側開口部を封止する第2蓋部と、
前記第1蓋部と前記第2蓋部との間に形成され、前記第1溶液とともに細胞培養に用いられる第2溶液を封止可能な封止空間と
を有する
ことを特徴とする自動培養装置。
【請求項2】
前記封止空間に前記第2溶液が封止されている
ことを特徴とする請求項1に記載の自動培養装置。
【請求項3】
前記スライド弁は、前記連通孔とは別に形成される前記封止空間まで前記本体部を貫通する貫通孔を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動培養装置。
【請求項4】
細胞培養に用いられる第1溶液を保存する保存容器を収容する収容部の前記保存容器の口につながる第1開口部と、細胞培養が行われる培養容器の第2開口部とにつなげられる連通孔を有するスライド弁に装填される封止容器であって、
前記連通孔に装填される筒状部材と、
前記筒状部材の一方の開口部を封止する第1蓋部と、
前記筒状部材の他方の開口部を封止する第2蓋部と、
前記第1蓋部と前記第2蓋部との間に形成され、前記第1溶液とともに細胞培養に用いられる第2溶液を封止する封止空間と
を有する
ことを特徴とする封止容器。
【請求項5】
細胞培養に用いられる第1溶液を保存する保存容器を収容する収容部と、細胞培養が行われる培養容器との間に配置されるスライド弁であって、
本体部と、
前記本体部に形成された連通孔であって、前記保存容器の口につながる前記収容部の第1開口部と前記培養容器の第2開口部とにつながる連通孔と、
前記連通孔の前記収容部側開口部を封止する第1蓋部と、
前記連通孔の前記培養容器側開口部を封止する第2蓋部と、
前記第1蓋部と前記第2蓋部との間に形成され、前記第1溶液とともに細胞培養に用いられる第2溶液を封止可能な封止空間と
を有する
ことを特徴とするスライド弁。
【請求項6】
細胞培養が行われる培養容器に接続されるディスポーザブル容器であって、
細胞培養に用いられる第1溶液を保存する保存容器を収容する収容部と、
前記収容部と前記培養容器との間に配置されるスライド弁と
を備え、
前記収容部は、
前記第1溶液を前記保存容器から前記培養容器に向けて押し出す外力付加機構と、
前記保存容器の口につながる第1開口部と
を有し、
前記スライド弁は、
本体部と、
前記本体部に形成された連通孔であって、前記収容部の前記第1開口部と前記培養容器の第2開口部とにつながる連通孔と、
前記連通孔の前記収容部側開口部を封止する第1蓋部と、
前記連通孔の前記培養容器側開口部を封止する第2蓋部と、
前記第1蓋部と前記第2蓋部との間に形成され、前記第1溶液とともに細胞培養に用いられる第2溶液を封止可能な封止空間と
を有する
ことを特徴とするディスポーザブル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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