説明

自動培養装置、自動観察方法、培養容器

【課題】定点観察可能な自動培養装置の提供。
【解決手段】培養容器200が載置される観察台101と、培養容器200内の観察位置を観察する観察装置102と、培養容器200と観察装置102との相対的な位置を変位させる変位装置104と、培養容器200に付されたマーク201の観察台101に対する相対的な位置を示す基準位置情報を取得する基準位置取得装置103と、観察位置を示す予定情報であって、マーク201に対する相対的な位置を示す予定情報を取得する予定情報取得部105と、観察装置102が、予定情報の示す観察位置を観察するように、基準位置情報と予定情報とに基づき変位装置104を制御する位置制御部107とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自動培養装置、自動観察方法、培養容器に関し、特に、複数の培養容器において細胞などを培養し、これらの観察をキャビネット内で自動的に行う自動培養装置、自動観察方法、培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞などの観察対象を培養し培養状態を観察する場合、ドラフトチャンバー内で培養処理を手作業で行い、培養容器を取り出して顕微鏡で観察していた。培養容器の所定の部分に着目して、当該部分を定点観察する場合は、目視にて場所を特定せざるを得なかった。
【0003】
そこで、培養装置内に細胞の状態を撮像できる観察装置を備え、培養装置内の培養容器を定期的撮像することで、培養容器内の所定の部分で増殖する細胞の状態を定点観察する方法や装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−218995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、複数の培養容器で複数の細胞を一度に培養する自動培養装置が登場している。この自動培養装置は、複数の培養容器を培養室で培養し、培地交換作業や継代作業を同じキャビネット内でロボットを用いて自動で行うものである。つまり、培養容器が培養室内から取り出され、培地交換作業や継代作業等の処理が施された後、元の場所や異なる場所に培養容器が移載される。
【0005】
従って、自動培養装置において、培養容器内の細胞の様子を定期的に観察したい場合は、保管する培養容器の数だけ観察装置を設けなければならないことになる。また、ロボットにより培養容器が移載された後は、観察装置と培養容器との位置関係が不明となるため、定点観察が不可能である等の問題が発生する。
【0006】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、複数の培養容器に対して定点観察を可能とする自動培養装置の提供を目的とする。また同時に、自動観察方法の提供も目的とする。さらに、前記自動培養装置や自動観察方法に適した培養容器の提供も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる自動培養装置は、培養容器内の培地で培養される観察対象を、無菌環境を維持するキャビネット内で観察する自動培養装置であって、培養容器が載置される観察台と、前記培養容器内の観察位置を観察する観察装置と、前記培養容器と前記観察装置との相対的な位置を変位させる変位装置と、前記培養容器に付されたマークの前記観察台に対する相対的な位置を示す基準位置情報を取得する基準位置取得装置と、観察位置を示す予定情報であって、前記マークに対する相対的な位置を示す予定情報を取得する予定情報取得部と、前記観察装置が、前記予定情報の示す観察位置を観察するように、基準位置情報と予定情報とに基づき前記変位装置を制御する位置制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、基準位置情報と予定情報とに基づき変位装置を制御して、観察装置が観察すべき位置に培養容器を正確に合わせることができるため、培養容器を移載したり、複数ある培養容器を取り替えた場合でも、一つの観察装置を用いて定点観察を正確に行うことが可能となる。
【0009】
さらに、前記観察台と他の場所との間で培養容器を移載する容器移載装置と、前記観察台に載置される培養容器を識別する識別情報を取得する識別装置と、前記観察装置で観察した観察位置の前記マークに対する相対的な位置を示す観察位置情報を特定する観察位置情報特定部と、観察位置情報を予定情報とし、前記識別装置で取得した識別情報と前記予定情報とを関連づけて記憶する位置情報記憶装置とを備え、前記予定情報取得部は、前記位置情報記憶装置から予定情報を取得することが好ましい。
【0010】
これによれば、先に観察装置で観察した観察位置と培養容器とを関連づけて記憶するため、培養容器を移載した後でも同じ培養容器の同じ観察位置を観察装置で観察することが可能となる。従って、例えば、複数の培養容器内の特徴ある部分をそれぞれ見つけ出し、これらの部分について一つの観察装置を用いて定点観察することが可能となる。
【0011】
前記位置情報記憶装置は、一つの識別情報に対し複数の予定情報を関連づけて記憶し、前記位置制御部は、前記複数の予定情報に対応する複数の観察位置を順次観察できるように前記変位装置を制御することが好ましい。
【0012】
これによれば、培養容器の複数の箇所について定点観察を行うことができるようになる。
【0013】
前記識別装置は、培養容器に付される識別子に基づき識別情報を取得することが好ましい。
【0014】
これによれば、培養容器を取り違えること無く、確実に定点観察を行うことが可能となる。
【0015】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる自動観察方法は、培養容器が載置される観察台と、前記培養容器内の観察位置を観察する観察装置と、前記培養容器と前記観察装置との相対的な位置を変位させる変位装置とを無菌環境を維持するキャビネット内に備える自動培養装置に適用する自動観察方法であって、前記培養容器に付されたマークの前記観察台に対する相対的な位置を示す基準位置情報を取得する基準位置取得工程と、観察位置を示す予定情報であって、前記マークに対する相対的な位置を示す予定情報を取得する予定情報取得工程と、前記観察装置が、予定情報の示す観察位置を観察するように、基準位置情報と予定情報とに基づき前記変位装置を制御する制御工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
これによれば、基準位置情報と予定情報とに基づき変位装置を制御して、観察装置が観察すべき位置に培養容器を正確に合わせることができるため、培養容器を移載したり、複数ある培養容器を取り替えた場合でも、一つの観察装置を用いて定点観察を正確に行うことが可能となる。
【0017】
前記自動培養装置はさらに、前記観察台と他の場所との間で培養容器を移載する容器移載装置とを備え、前記観察台に載置される培養容器を識別する識別情報を取得する識別工程と、前記観察装置で観察した観察位置の前記マークに対する相対的な位置を示す観察位置情報を特定する観察位置情報特定工程と、前記観察位置情報を予定情報とし、前記予定情報と前記識別情報とを関連づけて記憶する位置情報記憶工程とを含み、前記予定情報取得工程では、前記位置情報記憶工程で記憶された予定情報を取得することが好ましい。
【0018】
これによれば、先に観察装置で観察した観察位置と培養容器とを関連づけて記憶するため、培養容器を移載した後でも同じ培養容器の同じ観察位置を観察装置で観察することが可能となる。従って、例えば、複数の培養容器内の特徴ある部分をそれぞれ見つけ出し、これらの部分について一つの観察装置を用いて定点観察することが可能となる。
【0019】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる培養容器は、前記基準位置取得装置で基準位置情報を取得することのできるマークを備えることを特徴とする。
【0020】
これによれば、自動培養装置が基準位置情報を取得することが可能となる。
【0021】
前記マークは、前記培養容器の周縁部に備えられることが好ましい。
【0022】
これによれば、培養容器に付されたマークにより、観察が阻害されることを可及的に回避することが可能となる。
【0023】
前記マークは、前記培養容器に複数個備えられることが好ましい。
【0024】
これによれば、予定情報をより正確に特定し、また、観察装置が観察位置を正確に観察するように位置制御部が変位装置を制御することが可能となる。つまり、観察位置を正確に再現し、定点観察をし易くすることができる。
【0025】
前記マークの少なくとも一つは、前記培養容器を識別させる識別子であることが好ましい。
【0026】
これによれば、基準位置情報の取得と識別情報の取得を容易に行うことが可能となる。
【0027】
さらに、当該培養容器を識別させる識別子を備えることが好ましい。
【0028】
これによれば、培養容器を取り違えること無く、確実に定点観察を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
複数の培養容器を処理しうる自動培養装置でありながら、培養容器内の観察対象を定点観察することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に本願発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1は、本願発明にかかる自動培養装置の実施の形態を模式的に透視状体で示す斜視図である。
【0032】
図2は、自動培養装置の内部を模式的に示す上面図である。
【0033】
これらの図に示す自動培養装置100は、培養容器としてのディッシュ200を複数保持し、それぞれのディッシュ200に対して培養に関する作業などを自動で行うことができる装置であり、観察台101と、観察装置102と、基準位置取得装置103と、変位装置104(後述)と、容器移載装置106と、ピペッティング装置193と、アスピレータ装置198とをキャビネット109内に備えている。さらに、自動培養装置100は、受入台194と、分配台195と遠心分離機196と、照明装置197等も備えている。
【0034】
キャビネット109は、上記各装置などを含む作業空間を無菌状態に維持することのできるチャンバーである。本実施の形態の場合、キャビネット109は、HEPAフィルターにより空気を濾過し、クリーン(無菌状)な空気を創り出すことができる装置を備えている。また、創り出されたクリーンな空気は、キャビネット109の天井部から下方に向かうように流される構造を備えており、キャビネット109内に浮遊する菌や塵を空気流に乗せて作業空間の床面から排出することでキャビネット109は、作業空間を無菌状態に維持できるものとなっている。
【0035】
具体的には、キャビネット109とは、クリーンベンチや安全キャビネット等を含む概念であり、一般的には、バイオハザード対策用キャビネットとも呼ばれている。
【0036】
本実施の形態の場合、キャビネット109は、自動培養装置100の作業者への安全を考慮して、自動培養装置100内の空気が作業者の方(外方)にそのまま排気されないものとなっている。つまり、バイオハザード等の危険に対して作業者を保護し、キャビネット109内方の空気がそのまま拡散して周囲環境が悪化することを防止し、かつ、自動培養装置100内で使用される培地や細胞などの試料を保護するため、導入する外気をフィルターで濾過し、循環させる空気や排気する空気もフィルターにより濾過している。
【0037】
なお、本願発明はキャビネット109として、自動培養装置100内の空気が作業者の方(外方)にそのまま排気されるような構成を採用してもかまわない。採用されるキャビネット109の機能は、培養する細胞などの種類によって選択すればよい。
【0038】
アスピレータ装置198は、観察台101に載置されたディッシュ200内方にノズルの先端を移動させ、ディッシュ200内の培地などの流動体を吸入し、外部に廃棄するものである。また、本実施の形態の場合、アスピレータ装置198は、遠沈管に対してもノズルを挿入でき、液体やゲルなどの流動体を吸入し廃棄することが可能となっている。
【0039】
ここで、培地とは、細胞の培養に用いる培養液であり、アミノ酸、ビタミン、ブドウ糖等の栄養素や仔牛血清等の増殖因子などを含んでいる。
【0040】
なお、アスピレータ装置198は、駆動装置を備えている。この駆動装置は、アスピレータ装置198を機械的に駆動させる装置であり、複数の部材が擦れ合う摺動部を備えている。この摺動部は、本実施の形態の場合、観察台101の下方でのみ摺動するものとなっている。
【0041】
ピペッティング装置193は、観察台101に載置されたディッシュ200内方にノズルの先端を移動させ、ディッシュ200や遠沈管内の液体やゲルなどを定量的に吸入し、吸入した液体やゲルなどを定量的に吐出する装置である。ピペッティング装置193は、具体的にはピペッターと、駆動装置とを有している。
【0042】
ピペッターは、具体的には、液体などを吸入し保持しておくことのできるノズルと、液体などを正確な量だけ吸入し、吐出することのできる吸排装置とを備えている。
【0043】
駆動装置は、ノズルをディッシュ200や遠沈管に移動させ、当該ノズルをディッシュ200や遠沈管に挿入するための装置である。ピペッティング装置193が備える駆動装置は、アスピレータ装置198が備える駆動装置と同様の構造を備えており、観察台101より下方にのみ、培地や剥離液や洗浄液を供給する際に摺動する摺動部を備えている。
【0044】
容器移載装置106は、受入台194や、観察台101や、分配台195に載置されるディッシュ200を保持し、持ち上げ、各台にまで移動させ、各台に載置することのできる装置である。容器移載装置106は、XY方向にディッシュ200を移動させるためのXY駆動装置と、ディッシュ200を持ち上げるZ駆動装置と、ディッシュ200を保持する保持力発生装置とを備えている。これらの各装置は、ディッシュ200を所定の場所に移送する際に駆動する装置であり、それぞれ摺動部を備えている。これらの摺動部は、全て観察台101の下方でのみ摺動するものとなっている。
【0045】
図3は、観察台近傍を模式的に示す側面図である。
【0046】
図4は、観察台近傍を模式的に示す上面図である。
【0047】
これらの図に示すように、自動培養装置100は、観察台101の近傍に、観察装置102と、基準位置取得装置103と、変位装置104とを備えている。
【0048】
観察台101は、培養容器としてのディッシュ200やウエルプレートなどが載置される部材である。本実施の形態の場合、観察台101は、ガラスなどの透明な部材で形成される板状の部材であり、ディッシュ200内の観察対象を下方から観察できるものとなっている。観察台101は、接続部材110により変位装置104と接続されている。観察台101には、位置保証を行うための保証マーク116が複数個刻印されている。
【0049】
変位装置104は、観察台101上に載置されるディッシュ200と観察装置102との相対的な位置を変位させる装置であり、Y軸方向に観察台101を往復動させることができるY軸駆動機構111とY軸リニアガイド112と、同様にX軸方向に観察台101を往復動させことができるX軸駆動機構113とX軸リニアガイド114とを備えている。従って変位装置104は、観察台101上に載置されたディッシュ200と基台115に固定されている観察装置102との相対的な位置であって、本実施の形態の場合はXY平面、すなわち水平面内の相対的な位置を変位させることができるものとなっている。また、変位装置104は、ステッピングモータやサーボモーターが駆動源として採用されており、回転数や回転角度を制御することで、観察台101と観察装置102との相対的な位置関係を正確に再現性良く変位させることが可能となっている。また、変位装置104は、駆動源の基準からの回転数や基準からの回転角度を信号として出力することができるものとなっている。
【0050】
なお、変位装置104は、観察台101を変位させるものではなく、観察装置102を観察台101に対して移動させるものでも良い。また、観察台101に載置されたディッシュ200をマニピュレータで直接移動させるものでもよい。
【0051】
また、Y軸駆動機構111とY軸リニアガイド112とX軸駆動機構113とX軸リニアガイド114とは観察対象を観察する際に摺動する摺動部を備えているが、同図に示すように、いずれの摺動部も、観察台101の上面よりも下方に配置されている。
【0052】
観察装置102は、観察台101に載置されたディッシュ200内の観察対象を観察するための装置である。本実施の形態の場合、観察装置102は、光学顕微鏡(光学系)と前記光学顕微鏡で得られる像を電子的に撮像する撮像装置であるカメラ(図示せず)とを備えている。観察装置102は、基台115を介して自動培養装置100に水平方向(XY方向)には固定されている。なお、観察装置102は、焦点を合わせるため垂直方向(Z方向)は可動となっている。また、本実施の形態の場合、観察装置102は、θ方向に回転することが可能となっている。
【0053】
本実施の形態の場合、観察装置102は、ディッシュ200内で培養されている細胞などの観察対象を観察するものであり、0.1mm角以下の視野で観察できるものとなっている。
【0054】
基準位置取得装置103は、ディッシュ200に付されたマーク201の観察台101に対する相対的な位置を示す基準位置情報を取得する装置である。本実施の形態の場合、基準位置取得装置103は、カメラ部132と、基準位置特定部131とを備えている。
【0055】
カメラ部132は、観察装置102と同様、光学顕微鏡(光学系)と前記光学顕微鏡で得られる像を電子的に撮像する撮像装置であるカメラ(図示せず)とを備えている。カメラ部132は、基台115を介して自動培養装置100に水平方向(XY方向)には固定されている、すなわち、基準位置取得装置103のカメラ部132と観察装置102とは水平方向においては位置関係が固定されている。なお、基準位置取得装置103のカメラ部132は、焦点を合わせるため、垂直方向(Z方向)は、観察装置102とは独立して可動となっている。
【0056】
本実施の形態の場合、基準位置取得装置103のカメラ部132は、ディッシュ200に付されたマーク201を撮像するものであり、5mm角以下、1mm角以上の視野で撮像しうる光学系が採用されている。すなわち、カメラ部132の光学系は観察装置102が備える光学系の視野より、1辺が10倍以上(面積としては100倍以上)大きい。
【0057】
本実施の形態の場合、基準位置取得装置103は、保証部(後述)により制御され、観察台101に付された保証マーク116も撮像する。
【0058】
図5は、自動培養装置の機能部を機構部と共に示すブロック図である。
【0059】
同図に示すように、自動培養装置100は、機構部を制御するために機能部として、基準位置取得装置103に含まれる基準位置特定部131と、予定情報取得部105と、位置制御部107と、観察位置情報特定部121と、識別装置133と、保証部134とを備えている。
【0060】
基準位置特定部131は、カメラ部132で撮像されたマーク201の像を解析し、位置制御部107から取得した情報に基づいて基準位置情報を特定する処理部である。ディッシュ200にマーク201が二つ設けられている本実施の形態の場合、基準位置特定部131は、一方のマーク201を撮像して当該マーク201の中心の座標を画像解析にて特定し、位置制御部107から取得した位置情報に基づき観察装置102と当該マーク201との相対的な位置関係を基準位置情報として作成する。また、他方のマーク201も同様にして基準位置情報を作成する。従って、本実施の形態の場合、基準位置情報は二つ存在する。
【0061】
識別装置133は、観察台101に載置されるディッシュ200を識別する識別情報を取得する装置である。本実施の形態の場合、マーク201がディッシュ200を識別する識別情報としても機能している。すなわち、図6に示すような、形態の異なるマーク201をディッシュ200に設けることで、基準位置を示すマーク201自体が、ディッシュ200を識別する識別情報となる。そして、基準位置取得装置103のカメラ部132は、識別装置133の一部としても機能し、撮像したマーク201の像を識別装置133に送信する。識別装置133は、マーク201の画像を解析し、観察台101に載置されているディッシュ200を識別する。
【0062】
なお、識別装置133は、これに限定されるわけではない。例えば、マーク201が1次元バーコードや2次元バーコードであり、識別装置133は、これらのバーコードから情報を取得するものでも良い。
【0063】
また、マーク201を識別情報とする必要はなく、ディッシュ200等の培養容器に電子タグなどを取り付け、基準位置取得装置103とは別の装置で当該電子タグから識別情報を取得するものでもかまわない。
【0064】
位置制御部107は、変位装置104を制御し、観察台101と観察装置102とを所定の位置関係とする処理部である。また、観察台101と基準位置取得装置103とを所定の位置関係とすることもできる。具体的に例えば、観察装置102が、ディッシュ200内の観察対象を観察する場合、位置制御部107は、予定情報を位置情報記憶装置108から取得し、基準位置情報と予定情報とに基づき、ディッシュ200内の所定の部分を観察装置102が観察できるように変位装置104を制御する。
【0065】
観察位置情報特定部121は、観察装置102で観察した際の観察位置情報を特定する処理部である。本実施の形態の場合、観察位置情報特定部121は、観察装置102から観察終了の旨を示す情報を取得すると、マーク201に対する観察位置の相対的な位置関係を示す情報である観察位置情報を位置制御部107から取得し、観察位置情報を特定する。具体的には、変位装置104をマニュアルで動作させながら、観察装置102でディッシュ200内の観察対象を確認し、マニュアルで撮像した場合に、観察位置情報特定部121は、前記撮像した位置を示す観察位置情報を特定する。
【0066】
位置情報記憶装置108は、予定情報や識別情報などを加工し記憶する装置であり、具体的には、ハードディスクドライブやフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体を含む装置である。位置情報記憶装置108は、観察位置情報特定部121で特定された観察位置情報を予定情報として加工し、また、識別装置133で取得した識別情報と予定情報とを関連づくように予定情報を加工する機能も併せ持つ。
【0067】
予定情報取得部105は、位置情報記憶装置108から予定情報を取得する処理部である。本実施の形態の場合、予定情報取得部105は、観察台101に載置されるディッシュ200の識別情報を識別装置133から取得し、当該識別情報に関連づけられた予定情報のみを取得する。
【0068】
保証部134は、観察台101に付された保証マーク116の位置を示す保証情報を基準位置取得装置103で取得させ、前記保証情報に基づき変位装置104の保証を行う処理部である。
【0069】
次に、本願発明にかかる自動培養装置100を用いた自動観察方法を説明する。
【0070】
図7は、自動観察方法を経時的に示す図である。
【0071】
同図(a)に示すように、保証部134は、位置制御部107を介して変位装置104を制御し、観察台101に設けられた保証マーク116の一つを基準位置取得装置103が撮像できるように、基準位置取得装置103と観察台101とを配置させ、保証マーク116をカメラ部132により撮像させる。
【0072】
この動作を観察台101を移動させて複数回(本実施の形態では4回)異なる保証マーク116に対して実行し、保証マーク116の画像解析結果と位置制御部107からの位置情報から保証情報を作成する。保証部134は、当該保証情報に基づき、位置制御部107からの制御の値と実際に動く観察台101との距離との関係を把握する。
【0073】
これにより、基準位置取得装置103のカメラ部132と、観察台101との位置関係が明確となる。また、カメラ部132と観察装置102とは水平方向には固定状態であるため、観察装置102と、観察台101との位置関係も明確となり保証を行うことができる。
【0074】
当該保証部134による保証は、観察台101や変位装置104が温度変化により伸び縮みし、また、歪んだ場合にでも、再現性良く観察するための準備である。
【0075】
同図(b)に示すように、容器移載装置106により、ディッシュ200が観察台101の上に載置される。(載置されたディッシュ200と観察台101との位置的関係は、ある程度の再現性はあるものの、観察装置102の視野と比較すると不正確である。また、θ方向に関しても不正確である。)
【0076】
次に、基準位置取得装置103は、ディッシュ200に付された二つのマーク201をそれぞれ撮像し、それぞれのマーク201の中心位置の観察台101に対する相対的な位置を示す基準位置情報を取得する(基準位置取得工程)。そして、同図(c)に示すように、一方の基準位置情報を原点とし(図中左側)、二つの基準位置情報を結ぶ線をX軸とし、原点を通りX軸と直交する線をY軸とする。以上のようにして決められたXY座標系の位置座標がマークに対する相対的な位置情報となる。
【0077】
一方、識別装置133は、基準位置取得装置103が撮像したマーク201の像を識別情報として取得し、当該識別情報を解析して観察台101に載置されているディッシュ200には、黒い十字のマークが付されていることを把握する(識別工程)。
【0078】
次に、予定情報取得部105は、観察装置102で観察する予定の予定情報を位置情報記憶装置108から取得する(予定情報取得工程)。本実施の形態の場合、ディッシュ200には黒い十字のマーク201が付されているため、黒い十字のマーク201に関連づけられる予定情報が取得される。なお、予定情報は、マーク201から算出されるXY座標系の座標と、観察装置102が観察する方向を示す情報が含まれている(同図(d)中の矢印で示す)。
【0079】
なお、事前にマニュアルにより観察装置102で観察された位置を示す観察位置情報を観察位置情報特定部が特定し、位置情報記憶装置108が前記観察位置情報をXY座標系に変換し、当該変換結果を予定情報として記憶する。
【0080】
次に、同図(e)に示すように、予定情報の示す観察位置を観察装置102が観察するように、基準位置情報と予定情報とに基づき位置制御部107が変位装置104を制御する(制御工程)。観察位置が決まれば観察装置102は当該観察位置を観察する(観察工程)。
【0081】
なお、予定情報が複数ある場合は、当該予定情報に従い複数箇所で順次観察する。
【0082】
また、同図(f)に示すように、予定情報(図中矢印で示す)には事前に観察した際のディッシュ200と観察装置102とのθ方向の関係も含まれており、当該θ方向の関係となるように観察装置102はθ方向に回転する。このようにすることで、矩形の視野を持つ観察装置102を用いても、同じ視野範囲を再現して観察対象を観察することができ、視野範囲全体を有効に利用することが可能となる。
【0083】
観察台101の上に載置されたディッシュ200に付されたマーク201の位置と観察装置102との位置的関係は、基準位置取得装置103を介して、正確に把握される。一方、予定情報が示す観察位置は、マーク201を基準として相対的に定められている。さらに、変位装置104により変位する観察装置102と観察台101との位置関係は保証部134により保証され正確に再現できる。
【0084】
以上から、自動培養装置100は、観察台101に載置されたディッシュ200に対し、取得した予定情報が示すディッシュ200内の位置を正確に観察することが可能となる。つまり、観察台101上にディッシュ200がどのように載置されても、ディッシュ200内の同じ位置を正確に再現して観察することができるため、例えば、培養位置が観察台101から離れた場所に在ったとしても、ディッシュ200を移動させて正確に定点観察をすることが可能となる。
【0085】
また、ディッシュ200を識別することができるため、十字のマーク201が付されたディッシュ200について観察した後、丸のマーク201が付されたディッシュ200と交換すると、丸のマーク201が付されたディッシュ200に対応した観察位置を示す予定情報を取得し、正確に当該予定情報が示す位置で観察することができる。
【0086】
従って、観察台101や観察装置102を1台備えた自動培養装置100であっても、複数のディッシュ200に対して定点観察を行うことが可能となる。
【0087】
なお、本実施の形態の場合、マーク201は、ディッシュ200の底面の周縁に離れて二つ設けられていたが、これに限定されるわけではない。例えば、位置と方向とを同時に表現できる矢印のようなマーク201の場合はディッシュ200に一つ付すものでも良い。
【0088】
また、培養容器は円形のディッシュ200ばかりでなく、図8に示すような、矩形のウエルプレート202など、任意の容器でかまわない。
【0089】
また、識別情報は、培養容器に付すばかりではなく、培養容器の保管場所を記憶しておき、記憶された当該保管場所の情報を識別装置が識別情報として取得してもかまわない。
【0090】
また、観察とは、光学的(視覚的)に対象物を観察する場合ばかりではなく、電気的や磁気的な観察、直接観察対象と接触する物理的観察など、あらゆる観察を含む概念で用いている。
【0091】
また、予定情報は既に観察した位置を示す観察位置情報ばかりでなく、他の情報でもかまわない。例えば、マトリクス状に配置された複数の座標を予定情報とし、当該予定情報に示される観察位置を順次観察するものでもかまわない。
【0092】
本実施の形態においては、基準位置取得装置103のカメラ部132と観察装置102のカメラ部132は、視野の異なる光学系を使用しているが、カメラ部の視野を、作動距離や倍率を変えることで、一つの光学系で大幅に変更できる場合には、基準位置取得装置103のカメラ部と観察装置102のカメラ部132を共用で使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本願発明は、複数の培養容器をキャビネット内に保持し、各種処理を自動的に実行し、増殖状態などを観察する自動観察装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本願発明にかかる自動培養装置の実施の形態を模式的に透視状体で示す斜視図である。
【図2】自動培養装置の内部を模式的に示す上面図である。
【図3】観察台近傍を模式的に示す側面図である。
【図4】観察台近傍を模式的に示す上面図である。
【図5】自動培養装置の機能部を機構部と共に示すブロック図である。
【図6】識別情報としても機能するマークを例示する図である。
【図7】自動観察方法を経時的に示す図である。
【図8】培養容器の別例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0095】
100 自動培養装置
101 観察台
102 観察装置
103 基準位置取得装置
104 変位装置
105 予定情報取得部
106 容器移載装置
107 位置制御部
108 位置情報記憶装置
109 キャビネット
110 接続部材
111 Y軸駆動機構
112 Y軸リニアガイド
113 X軸駆動機構
114 X軸リニアガイド
115 基台
116 保証マーク
121 観察位置情報特定部
131 基準位置特定部
132 カメラ部
133 識別装置
134 保証部
193 ピペッティング装置
194 受入台
195 分配台
196 遠心分離機
197 照明装置
198 アスピレータ装置
200 ディッシュ
201 マーク
202 ウエルプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器内の培地で培養される観察対象を、無菌環境を維持するキャビネット内で観察する自動培養装置であって、
培養容器が載置される観察台と、
前記培養容器内の観察位置を観察する観察装置と、
前記培養容器と前記観察装置との相対的な位置を変位させる変位装置と、
前記培養容器に付されたマークの前記観察台に対する相対的な位置を示す基準位置情報を取得する基準位置取得装置と、
観察位置を示す予定情報であって、前記マークに対する相対的な位置を示す予定情報を取得する予定情報取得部と、
前記観察装置が、前記予定情報の示す観察位置を観察するように、基準位置情報と予定情報とに基づき前記変位装置を制御する位置制御部と
を備える自動培養装置。
【請求項2】
さらに、
前記観察台と他の場所との間で培養容器を移載する容器移載装置と、
前記観察台に載置される培養容器を識別する識別情報を取得する識別装置と、
前記観察装置で観察した観察位置の前記マークに対する相対的な位置を示す観察位置情報を特定する観察位置情報特定部と、
観察位置情報を予定情報とし、前記識別装置で取得した識別情報と前記予定情報とを関連づけて記憶する位置情報記憶装置とを備え、
前記予定情報取得部は、前記位置情報記憶装置から予定情報を取得する
請求項1に記載の自動培養装置。
【請求項3】
前記位置情報記憶装置は、一つの識別情報に対し複数の予定情報を関連づけて記憶し、
前記位置制御部は、前記複数の予定情報に対応する複数の観察位置を順次観察できるように前記変位装置を制御する
請求項2に記載の自動培養装置。
【請求項4】
前記識別装置は、培養容器に付される識別子に基づき識別情報を取得する請求項2に記載の自動培養装置。
【請求項5】
前記観察装置は、観察位置を光学的に観察する光学系と撮像装置とを有し、
前記基準位置取得装置は、
前記観察装置が備える光学系よりも視野の広い光学系と、
培養容器に付されるマークを撮像する撮像装置と、
前記基準位置取得装置が備える撮像装置から得られるマークの像に基づき基準位置情報を取得する
請求項1に記載の自動培養装置。
【請求項6】
さらに、
前記観察台に付された保証マークの位置情報である保証情報を前記基準位置取得装置で取得させ、前記保証情報に基づき前記変位装置の保証を行う保証部
を備える請求項1に記載の自動培養装置。
【請求項7】
前記基準位置取得装置は、前記観察装置により兼用されることを特徴とする請求項1に記載の自動培養装置。
【請求項8】
培養容器が載置される観察台と、前記培養容器内の観察位置を観察する観察装置と、前記培養容器と前記観察装置との相対的な位置を変位させる変位装置とを無菌環境を維持するキャビネット内に備える自動培養装置に適用する自動観察方法であって、
前記培養容器に付されたマークの前記観察台に対する相対的な位置を示す基準位置情報を取得する基準位置取得工程と、
観察位置を示す予定情報であって、前記マークに対する相対的な位置を示す予定情報を取得する予定情報取得工程と、
前記観察装置が、予定情報の示す観察位置を観察するように、基準位置情報と予定情報とに基づき前記変位装置を制御する制御工程と
を含む自動観察方法。
【請求項9】
前記自動培養装置はさらに、前記観察台と他の場所との間で培養容器を移載する容器移載装置とを備え、
前記観察台に載置される培養容器を識別する識別情報を取得する識別工程と、
前記観察装置で観察した観察位置の前記マークに対する相対的な位置を示す観察位置情報を特定する観察位置情報特定工程と、
前記観察位置情報を予定情報とし、前記予定情報と前記識別情報とを関連づけて記憶する位置情報記憶工程とを含み、
前記予定情報取得工程では、前記位置情報記憶工程で記憶された予定情報を取得する
請求項8に記載の自動観察方法。
【請求項10】
請求項1に記載の基準位置取得装置で基準位置情報を取得することのできるマークを備える培養容器。
【請求項11】
前記マークは、前記培養容器の周縁部に備えられる請求項10に記載の培養容器。
【請求項12】
前記マークは、前記培養容器に複数個備えられる請求項11に記載の培養容器。
【請求項13】
前記マークの少なくとも一つは、前記培養容器を識別させる識別子である請求項11に記載の培養容器。
【請求項14】
さらに、当該培養容器を識別させる識別子を備える請求項10に記載の培養容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−158193(P2010−158193A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2016(P2009−2016)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】