説明

自動尿処理装置

【課題】便の存在を広い範囲において検出できる自動尿処理装置の提供。
【解決手段】自動尿処理装置における検出部が尿検出部102bと便検出部102cとを有する。尿検出部102bは一対の第1電極218a,218bを有し、便検出部102cは一対の第2電極143a,143bを有する。一対の第1電極218a,218bと一対の第2電極143a,143bとは互いに離間並行する部位を有し、その部位が尿および便に含まれる水分のいずれかによって濡れることが可能に形成されている部分102d,102eを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自分の意志で尿の排泄時期をコントロールすることが困難な人や排泄した尿を始末することが困難な人が尿を自動的に処理するために使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老人や病人等では、自分の意志で尿の排泄時期をコントロールすることが困難であったり排泄した尿を自力で始末することが困難であったりすることがある。従来、このような人の尿を処理するために、尿道口周辺に吸尿装置を当てがい、吸尿装置の容器部に集められた尿を容器部とは別体の吸引ポンプ等の真空吸引手段によって尿タンクに導くことができる自動尿処理装置が、例えば特開2007−44493号公報(特許文献1)によって提案されている。吸引ポンプは、密閉された尿タンク内の空気を吸引することによって、容器部と尿タンクとの間に圧力差を作り、その圧力差によって容器部内の尿を尿タンクに導くことができる。
【0003】
前記従来の吸尿装置には、尿が排泄されたことを検知して吸引ポンプを作動させる尿センサが含まれている。尿センサは互いに離間並行する一対の電極を有し、尿によってこれらの電極が電気的につながると、尿検知回路に電流が流れて吸引ポンプが作動する。一対の電極は、吸尿装置を着用したときに上下方向へ延びていて、下端部が肛門の近傍にある。
【特許文献1】特開2007−44493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の吸尿装置は、下端部に便の存在を検出する便センサを有している。例えば軟便が肛門から尿道口に向かって流れて尿センサを覆うと、吸尿装置は、正常に作動しなくなるから、そのような事態が生じる前に、換言すると便が尿センサに到達する前に吸尿装置の下端部で便の存在を検出し、その結果を警報ランプの点滅等によって知らせることができる。しかしながら、軟便の流れ方や吸尿装置の着用状態によっては、その便センサで便の存在を検出することができず、吸尿装置が正常に作動しなくなる、ということがある。
【0005】
そこで、この発明は、便の存在を広い範囲において検出することができるような自動尿処理装置の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、尿道口とその周辺の肌とに向かい合うようにして着用する容器部と前記肌と前記容器部との間に介在するように前記容器部に取り付けられた検出部とを含む吸尿装置と、前記吸尿装置が離脱可能に接続されて前記容器部を負圧にすることが可能な真空吸引手段を含む制御部とを有し、前記検出部が尿の存在を検出する尿検出部と便の存在を検出する便検出部とを有し、前記尿検出部からの第1検出信号に基づいて前記真空吸引手段を作動させると前記尿の前記容器部への吸引が可能になり、前記便検出部からの第2検出信号に基づいて前記便の存在を知らせることが可能である自動尿処理装置である。
【0007】
かかる自動尿処理装置において、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記尿検出部は、前記尿で濡れると前記第1検出信号を出すことが可能であって互いに離間並行して一方向へ延びる一対の第1電極を有している。前記便検出部は、前記便に含まれる水分で濡れると前記第2検出信号を出すことが可能であって互いに離間並行して前記一方向へ延びる一対の第2電極を有している。前記一対の第1電極と前記一対の第2電極とは互いに離間並行するそれぞれの部位を有し、前記それぞれの部位が前記尿および前記便に含まれる水分のいずれかによって濡れることが可能に形成されている。
【0008】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記一対の第1電極それぞれと前記一対の第2電極それぞれとが一枚の絶縁性合成樹脂フィルム上に形成されている。
【0009】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記一方向において、前記第2電極が前記第1電極の長さを越えて延びる部位を有し、前記部位においても前記便に含まれる水分によって濡れるように形成されている。
【0010】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記尿検出部における前記一対の第1電極間の電気抵抗が第1規定抵抗値以下になると前記真空吸引手段を作動させ、前記便検出部における前記一対の第2電極間の電気抵抗が前記第1規定抵抗値よりも高く設定されている第2規定抵抗値以下の値で所定の時間以上継続すると前記便の存在を前記制御部を介して前記自動尿処理装置の使用者に知らせることが可能である。
【0011】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記尿検出部と前記制御部とは、前記一対の第1電極間の電気抵抗が前記第1規定抵抗値以下の値から前記第1規定抵抗値を超える値になると、前記真空吸引手段を所定時間作動させた後に停止させるものである。
【0012】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記尿検出部と前記制御部とは、前記一対の第1電極間の電気抵抗が前記第1規定抵抗値以下の値で所定の時間を超えて継続すると前記真空吸引手段を停止させるものである。
【0013】
この発明の実施形態のさらに他の一つにおいて、前記第2電極間における前記第2規定抵抗値以下の値が、前記第2規定抵抗値と前記第1規定抵抗値との間にある。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る自動尿処理装置では、尿を検出するための第1電極と便を検出するための第2電極とが互いに離間並行して一方向へ延びている部位を有するから、吸尿装置を着用しているときに吸尿装置の尿を検出する領域に便が侵入してくると、その便を第2電極で検出して、その領域に便が存在することを介護者等の自動尿処理装置使用者に知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付図面を参照しながら、この発明に係る自動尿処理装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0016】
図1は、この発明に係る自動尿処理装置100の構成図である。自動尿処理装置100は、吸尿装置102と、その吸尿装置102が離脱可能に接続される真空吸引手段100aを含む制御部101とを有する。吸尿装置102は、着用者(図示せず)の肌に向ける内面側とその反対側であって着用者の着衣に向ける外面側とを有するもので、図ではその外面側の部材が部分的に破断した状態で示されている。
【0017】
自動尿処理装置100は、着用者が排泄した尿を吸尿装置102に集めて処理することができる装置である。その吸尿装置102は容器部102aと検出部150とを有する。容器部102aは、着用者の尿道口近傍の肌に当接して排泄された尿を受け容れることができ、検出部150は、尿が排泄されたことを検出する尿検出部102bと便が尿検出部102bに存在することを検出する便検出部102cとを含んでいる(図6参照)。真空吸引手段100aは、容器部102aに接続される継手部材104、導尿チューブ106、尿タンク106a、ポンプユニット108、電気配線116等を含む。
【0018】
ポンプユニット108は、検出部150から配線116を介して送られる電気信号を処理する制御回路108aとその回路108aによって運転が制御される吸引ポンプ108b等を含んでいる。吸尿装置102では、容器部102aの容器112の周壁部に形成された尿排出用開口114に対して継手部材104を介して導尿チューブ106が接続される。ポンプユニット108から延びる配線116の先端には、検出部150のうちの尿検出部102bにおける尿検出用電極218a,218b(図3〜5参照)と便検出部102cにおける便検出用電極143a,143bとを配線116へ電気的に接続するためのクリップ120が取り付けられている。かような自動尿処理装置100では、尿が排泄されると尿検出部102bから検出信号をポンプユニット108に送り、吸引ポンプ108bを作動させて尿タンク106a内の空気を吸引することにより、尿を容器112の内部へ吸引し、その吸引した尿を継手部材104と導尿チューブ106とを介してさらに吸引して、尿タンク106aに集めることができる。また、吸尿装置102に便が存在すると便検出部102cから検出信号をポンプユニット108に送り、ポンプユニット108に含まれる制御回路108aを介して警報ランプ504(図10参照)を点滅させて便の存在を介護者に知らせることができる。
【0019】
図2は、吸尿装置102の着用方法の一例を示す図であって、クリップ120が腹側にある。吸尿装置102は、T字ベルト300の股間ベルト部301の内面側に粘着剤や商品名マジックテープで知られるメカニカルファスナ等を使用して固定されている。吸尿装置102の容器112は、その大部分が着用者身体の前側において上下方向へ延びてその内側が着用者の尿道口とその周辺の肌とに向かい合うとともに、下端部が股間ベルト部301の内面に沿って緩やかに湾曲しながら肛門へ向かうように延びた状態で着用される。T字ベルト300は、胴ベルト部302の両端部がメカニカルファスナ等の連結手段303を介して分離可能に連結されており、股間ベルト部301は、一方の端部が胴ベルト部302に縫合されていて、もう一方の端部がメカニカルファスナ304を介して分離可能に胴ベルト部302に連結されている。なお、吸尿装置102は、図示例の着用手段の他に、開放型のおむつやパンツ型のおむつ、おむつカバー、失禁患者用パンツ等適宜の手段を使用して着用することができる。
【0020】
図3,4,5において、図3は吸尿装置102の内面側を示す平面図であり、図4は図3のIV−IV線に沿う切断面を示す図であり、図5は図3のV−V線に沿う切断面を示す図であって、図4,5では、吸尿装置102の厚さ方向Rにおいて重なり合うべき各部材が一部のものを除いて互いに離間した状態で示されている。厚さ方向Rは、容器部102aの深さ方向でもある。
【0021】
吸尿装置102は、着用者身体の上下方向に一致させる長さ方向Pと、長さ方向Pに直交する幅方向Qとを有し、長さ方向Pの両端部近傍で幅が広く、中央部で幅が狭くなっている。吸尿装置102はまた、厚さ方向Rを有し、容器112の図4における上方には、その厚さ方向Rの下方から順に、透液性の難通気性シート124、拡散シート126、クッションシート128、電極部118、スペーサ130、フィルタ132、透液性肌当てシート134からなる複数のシート状部材が重なり、肌当てシート134には一対の防漏堤136が重なっている。難通気性シート124と拡散シート126とは容器112と一体になって容器部102aを形成している。また、クッションシート128、電極部118、スペーサ130、フィルタ132、肌当てシート134は互いに重なり合って検出部150を形成している。
【0022】
容器112は、トレー形状のものであり、軟質ポリエチレンやシリコンゴム等の軟質弾性材料で形成され、長さ方向Pにも幅方向Qにも湾曲できる可撓性を有しているが、吸引ポンプ108bで尿を吸引するときに作用する負圧による変形には耐えられるように作られている。容器112の周縁フランジ部152には難通気性シート124が部位112aにおいて接着または溶着により接合している。容器112の深さ方向は、厚さ方向Rに同じである。
【0023】
難通気性シート124は、透液性は高いが空気を殆どまたは全く通さないもので、図4に示されるように容器112の頂部の開口を覆っている。難通気性シート124を有する容器112は、ポンプユニット108の吸引ポンプ108bが作動すると容易に負圧となり、尿を速やかに吸引することができる。難通気性シート124は、例えば22g/mのスパンボンド不織布と10g/mのメルトブローン不織布と22g/mのスパンボンド不織布とからなるSMS不織布を、好ましくは界面活性剤で親水化処理して使用することができる。難通気性シート124の通気性は、JIS L 1096のセクション6.27.1に規定される通気性測定方法のA法に従って測定したときに、湿潤状態においては0〜100cc/cm/秒、好ましくは0〜50cc/cm/秒の範囲にある。また、乾燥状態においては20〜200cc/cm/秒、好ましくは20〜100cc/cm/秒、さらに好ましくは20〜50cc/cm/秒の範囲にある。この通気性を測定するときの湿潤状態とは、下記の式(1)で算出される難通気性シート124の含水率が100%以上である状態を意味し、乾燥状態とは、難通気性シート124を20℃、RH50%の室内に24時間以上放置したときの同シート124の状態を意味している。
含水率=(湿潤状態のシート重量−乾燥状態のシート重量)/(乾燥状態のシート重量)・・・式(1)
【0024】
拡散シート126は、レーヨン繊維を一例とする親水性繊維を含む不織布等の透液性シート片で形成され、尿が排泄されたときにその尿を難通気性シート124の上方において速やかに拡散させて難通気性シート124を広い面積にわたって湿潤状態にするために使用される。難通気性シート124が湿潤状態になることによって、容器112の内部を負圧にして尿をその内部に吸引することが容易になる。拡散シート126は、難通気性シート124に対して互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。
【0025】
クッションシート128は、例えば坪量が20〜30g/mのサーマルボンド不織布等の透液性シート片で形成されており、尿を速やかに浸透させることができるもので、拡散シート126や難通気性シート124に存在する尿が電極部118に向かって逆流することを防いでいる。クッションシート128はまた、それに対して電極部118、スペーサ130、フィルタ132等のシート状部材を予め重ねておけば、吸尿装置102の製造過程において、これらシート状部材を吸尿装置102における所定の位置に置くためのキャリヤ部材となる。クッションシート128は、拡散シート126に対して、互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。
【0026】
電極部118は、尿を検出するための所要形状の電極と便を検出するための所要形状の電極とを合成樹脂フィルムに対して導電性インクを使用して印刷することにより形成することができるもので、構造の詳細は後記のとおりである。電極部118は、クッションシート128に対して接合することができる。
【0027】
スペーサ130は、検出部150におけるシート状部材のうちで厚さが最も厚いもので、ネット状の透液性シート片で形成される。吸尿装置102では、尿の吸引後にも尿が肌当てシート134に残り、その尿によって肌当てシート134が湿潤状態にあるということがある。そして、その肌当てシート134が、体圧等の作用を受けて電極部118に直接的または間接的に接触し、自動尿処理装置100を誤動作させるということがある。スペーサ130は、そのような誤動作を防止するために電極部118とフィルタ132とを厚さ方向Rにおいて離間させておく手段であって、吸尿能力がなくて撥水性であり、かつ難通気性シート124よりも高い通気性と透液性とを有し、体圧を受けてもその厚さが変化しないものである。そのようなスペーサ130は、例えばエチレン酢酸ビニル等の柔軟な合成樹脂で形成された厚さ0.5〜1mmのネットで作ることができ、クッションシート128に対して、互いの透液性を阻害することがないように接合していることが好ましい。
【0028】
フィルタ132は、尿に含まれる固形分が電極部118に付着して電極部118が恒久的に通電状態になるというような事態を防止するためのもので、難通気性シート124よりも高い通気性と透液性とを有するシート片、より好ましくは不織布片によって形成される。フィルタ132は、スペーサ130に対して互いの透液性を阻害することがないように接合することができる。
【0029】
肌当てシート134はフィルタ132の上方に設けられるもので、吸尿装置102が着用されたときには、着用者の尿道口とその近傍の肌とに向かい合った状態で肌に接触する。かかる肌当てシート134は、例えば坪量が15〜25g/mのサーマルボンド不織布等の柔軟性と透液性とを有するシート片で形成される。肌当てシート134は、クッションシート128と同様に排尿の初期段階で尿を瞬間的に浸透させることができるもので、フィルタ132に対して、互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。肌当てシート134には、親水性のものである場合と、撥水性のものである場合とがある。
【0030】
防漏堤136は、図3,4に示されるように左右一対を成すもので、尿が肌当てシート134の上を幅方向Qへ流れて吸尿装置102から横漏れすることを防止することができる。図4の防漏堤136は、吸尿装置102の外側寄りに位置する外側縁部136cが肌当てシート134に接合される一方、内側寄りに位置する内側縁部136dは、肌当てシート134に接合されることがなく、そこには糸ゴム等の弾性部材136bが長さ方向Pへ伸長した状態で取り付けられている。一対の防漏堤136を形成しているシート136aは、容器112の底部を覆っている。吸尿装置102は、それが着用されときに図1の如く長さ方向Pにおいて湾曲して弾性部材136bが収縮すると、防漏堤136の内側縁部136dは、肌当てシート134から離間するように起立する。防漏堤136におけるシート136aは好ましくは不透液性のものであり、それには柔軟な熱可塑性合成樹脂フィルムやそのフィルムと不織布との複合シート等を使用することができる。吸尿装置102を平面的に見たときの防漏堤136(図3参照)は、上端部と下端部とのそれぞれが第1、第2エンドシート138,140のそれぞれで被覆されている。
【0031】
図6は、図3,4,5において使用されている電極部118の平面図である。電極部118は、合成樹脂フィルムで形成された絶縁性のフィルム部260と、フィルム部260の片面に形成された一対の尿検出用電極218a,218bと、同じくその片面に形成された一対の便検出用電極143a,143bと、これらの電極218a,218b,143a,143bの大部分を覆っている絶縁性被覆170とを有する。フィルム部260は、長さ方向Pへ延びる短冊状のものであるが、幅方向Qの中央部が長さ方向Pへ長く切り取られることによって形成された矩形の開口171を有する。かようなフィルム部260は、図6における上方にクリップ120で把持するための上端部266を有し、上端部266の下方には電極部118の幅を二等分する中心線L−Lの両側に側部267a,267bを有し、さらに下方には側部267aと側部267bとにつながる下端部268を有する。フィルム部260の上端部266では、電極218a,218bと電極143a,143bとが露出している。また、側部267a,267bには、絶縁性被覆170に対して複数の幅狭い第1非塗装部分169a,169bが形成されている。ここでは一対の尿検出用電極218a,218bが尿で濡れることを可能にするために絶縁性被覆170で覆われることのない露出部102dを形成している。側部267a,267bにはまた、絶縁性被覆170に対して複数の幅広い第2非塗装部分269a,269bが形成されている。ここでは一対の便検出用電極143a,143bが便に含まれる水分で濡れることを可能にするために絶縁性被覆170で覆われることのない露出部102eを形成している。下端部268における露出部102eは、吸尿装置102を着用したときに肛門の近傍に位置するもので、吸尿装置102へ侵入しようとする便を速やかに検出することに役立つ。
【0032】
図7は、図6におけるVII−VII線に沿う断面図であって、尿検出用電極218a,218bの露出部102dを示している。図7では、回路250と便検出用電極143a,143bとが絶縁性被覆170によって覆われている。
【0033】
図8は、図6におけるVIII−VIII線に沿う断面図であって、便検出用電極143a,143bの露出部102eが露出する状態を示している。ここでは、回路250と尿検出用電極218a,218bとが絶縁性被覆170によって覆われている。
【0034】
図9は、絶縁性被覆170が剥離された状態にある電極部118の平面図である。フィルム部260の側部267a,267bには、一対の尿検出用電極218a,218bが互いに離間並行して長さ方向Pへ延びる態様で形成されている。これらの電極218a,218bに形成されている複数の部分175a,175bは、図6の第1非塗装部分169a,169bにおいて露出している。尿検出用電極218aと218bとの間には、断線検出用回路250が形成されている。断線検出用回路250は、尿検出用電極218a,218bそれぞれの下端部分173a,173bに電気的につながるとともに、図示の如く開口171の縁に沿って延びている。フィルム部260の側部267a,267bにはまた、一対の便検出用電極143a,143bが互いに離間並行して長さ方向Pへ延びる態様で形成されている。これらの便検出用電極143a,143bに形成されている複数の部分475a,475bは図6の第2非塗装部分269a,269bにおいて露出している。一対の便検出用電極143a,143bはまた、それらの下端部144a,144bが尿検出用電極218a,218bの長さを越えてさらに下方へ延びており、その下端部分144a,144bにも部分475a,475bが形成されている。
【0035】
電極部118において、フィルム部260には、好ましくは厚さが50〜100μmのポリエステルフィルムが使用される。尿検出用電極218a,218bは、導電性インクや導電性塗料を使用して所要の形状をフィルム部260に印刷することによって得ることができる。導電性インクや導電性塗料には、導電性材料として例えば3〜7重量%のカーボンブラック、10〜30重量%のカーボングラファイト等の人造黒鉛、適宜量の銀粉等が含まれる。尿検出用電極218a,218bのそれぞれは、例えば幅が0.5〜2mm、抵抗が150kΩ以下となるように作られ、部分175a,175bは第1非塗装部分169a,169bにおいての露出が容易となるような適宜の幅に作られる。断線検出用回路250は、例えばカーボンブラックが3〜7重量%、人造黒鉛が5〜10重量%含まれるインクを使用して所要の形状をフィルム部260に印刷することによって得ることができる。この回路250は、その抵抗値が尿検出用電極218a,218bの抵抗値よりもはるかに高いもので、好ましい回路250は幅が0.3〜1mm、抵抗値が2〜10MΩ程度となるように作られる。便検出用電極143a,143bは、尿検出用電極218a,218bと同様なインクや塗料を使用して作られる他に、アルミニゥムを真空蒸着することによって作られることもある。便検出用電極143a,143bもまた幅が例えば0.5〜2mmとなるように作られ、部分475a,475bは第2非塗装部分269a,269bにおいての露出が容易となるような適宜の幅に作られる。互いに離間並行する便検出用電極143aと143bの電気抵抗は無限大である。
【0036】
電極部118と制御部101とがクリップ120を介して電気的につながると、制御部101に含まれている電源116a(図1参照)から微弱な電流が尿検出用電極218a,218bと便検出用電極143a,143bとに供給される。ポンプユニット108の制御回路108aでは、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗またはその電気抵抗に相等する他の物理量と、便検出用電極143aと143bとの間の電気抵抗またはその電気抵抗に相等する他の物理量とが連続的または間欠的に測定される。ただし、尿検出用電極218a,218bは断線検出用回路250を介してつながっており、制御回路108aではこれらを通る微弱な電流を検出する。そして、所定の時間が経過してもその電流を検出することができなくなったときには、尿検出用電極218a,218bに異常があるとみなして自動尿処理装置100の使用者に対して警報を出す。吸尿装置102において尿が排泄されると、尿検出用電極218aと218bとにおける露出部102dどうしが電気的につながり、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗が低下するように変化し、制御回路108aではその変化を尿が尿検出部102bに存在すること、換言すると尿が排泄されたことを検出した信号と判断して吸引ポンプ108bを始動させる。電気抵抗の低下の程度は、吸尿装置102の諸条件、例えば第1非塗装部分169a,169bにおける尿検出用電極218a,218bの露出面積等に依存するから、図示例の吸尿装置102では、例えば尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗が、尿が排泄されると0.4kΩ以下に容易に低下するようにしておいて、0.4kΩまたはそれ以下の電気抵抗が所定の時間、例えば0.2秒間継続することを吸引ポンプ108bを始動させる規定抵抗値、すなわち閾値とすることができる。また、吸引ポンプ108bは、吸尿装置102による尿の吸引を1〜2分以内で完了することができる能力を有することが好ましく、そのような吸引ポンプ108bを使用するときには、吸引ポンプ108の運転が例えば3分間以上継続するときに、自動尿処理装置100に異常があると判断することができる。
【0037】
着用している吸尿装置102に軟便等の便が侵入して、一対の便検出用電極143aと143bとにおける露出部102eどうしが便に含まれる水分によって電気的につながると、便検出用電極143aと143bとの間の電気抵抗が低下する。一般的に、便による電気抵抗の低下は、尿による電気抵抗の低下ほどには顕著ではないが、便による電気抵抗の低下も吸尿装置102の諸条件に依存するから、図示例の吸尿装置102では例えば0.5kΩ程度にまで低下するようにしておいて、ポンプユニット108では、便検出用電極143aと143bとの間の電気抵抗が0.5kΩまたはそれ以下であって0.4kΩよりも高い値で所定の時間、例えば10分間継続することを便が吸尿装置102に存在すると判断するための規定抵抗値、すなわち閾値とし、その判断に基づいて吸尿装置102の交換を促すための警報を出すことができる。
【0038】
このように、検出部150においては、一対の尿検出用電極218a,218bとフィルム260と絶縁性塗料170とによって尿検出部102bが形成されており、一対の便検出用電極143a,143bとフィルム260と絶縁性塗料170とによって便検出部102cが形成されている。尿検出用電極218a,218bのそれぞれと便検出用電極143a,143bのそれぞれとは、図9において互いに離間並行して長さ方向Pへ延びるように形成されているとともに長さ方向Pにおいて間欠的に形成された露出部102d,102eのそれぞれを有するように形成されており、しかも一枚のフィルム260における同一面上に形成されているから、自動尿処理装置100では、検出部150のうちの尿を検出すべき領域に便が存在することを速やかに検出して、自動尿処理装置100が便の存在によって尿を吸引することができなくなるという異常事態の発生を防ぐことができる。
【0039】
図示例の一対の尿検出用電極218a,218bと一対の便検出用電極143a,143bとは、フィルム260を水平にした状態で見ると、同一平面上に形成されていて、図4の厚さ方向Rである容器112の深さ方向においての離間距離が0mmということができるものである。しかし、この発明で使用可能な電極部118は、図示例のものに限らない。例えば、一対の尿検出用電極218a,218bと一対の便検出用電極143a,143bとを二枚のフィルムに別々に印刷し、その二枚のフィルムを重ね合わせて電極部118を作ることができるし、その二枚のフィルムの間に不織布を介在させ、二枚のフィルムそれぞれをその不織布に対して接合して電極部118を作ることもできる。ただし、いずれの電極部118においても、一対の尿検出用電極218a,218bと一対の便検出用電極143a,143bとを容器112の深さ方向において接近させ、好ましくは互いの離間距離が0〜2mmの範囲内となるように接近させて、尿も便もそれらが排泄されると速やかに検出できるようにしてあることが好ましい。
【0040】
制御部101では、尿検出用電極218a,218bが例えば0.4kΩという規定抵抗値を検出するように使用され、便検出用電極143a,143bが例えば0.4kΩよりも高い規定抵抗値を検出するように使用されているから、尿によって便検出用電極143a,143bが電気的につながっても、また便によって尿検出用電極218a,218bが電気的につながっても、自動尿処理装置100には誤動作が生じない。
【0041】
図10は、吸尿装置102が図1の制御部101に接続してあるときの、自動尿処理装置100の制御フロー図である。制御部101は、吸尿装置102に微弱な電流を連続的に供給することができる電源116a(図1参照)を有するもので、制御回路108aでは、尿検出用電極218aと218bとの間における電気抵抗またはそれに代わる電圧等の物理量および便検出用電極143aと143bとの間における電気抵抗またはそれに代わる電圧等の物理量のそれぞれを測定し、例えば電気抵抗の変化に基づいて吸引ポンプ108bを始動させたり停止させたりすることができ、また異常事態を知らせるための警報ランプ503,504を点滅させることができる。図10の制御フロー図には、そのような自動尿処理装置100の運転条件の具体例の一つが記入されている。その具体例では、電源116aからの電流が、尿検出用電極218a,218bと便検出用電極143a,143bとに流れる。ポンプユニット108では、尿検出用電極218a,218b間の電気抵抗を第1抵抗測定器501によって0.1秒毎に計測する。そして、その電気抵抗が規定抵抗値である0.4kΩを超えているときには、尿の排泄が無いとみなして、吸引ポンプ108bを停止させておく。電気抵抗が0.4kΩ以下になって少なくとも0.2秒継続したときには、尿が排泄されたとみなして、吸引ポンプ108bを始動させて吸尿装置102で尿を吸引する。その後、電気抵抗が0.4kΩ以下から0.4kΩを超えるように変化したときには、尿の吸引が終了したとみなし、吸引ポンプ108bを90秒間運転して吸尿装置102の肌当てシート134を乾燥させてから停止させる。ただし、電気抵抗が0.4kΩ以下で3分間継続したときには、吸尿装置102に異常があるとみなして、吸引ポンプ108bを停止させ、警報ランプ503を点滅させて、介護者等に吸尿装置102の点検を促す。
【0042】
ポンプユニット108ではまた、便検出用電極143a,143b間の電気抵抗を第2抵抗測定器502によって0.5秒毎に計測する。その電気抵抗が規定抵抗値である0.5kΩを超えているときには、吸尿装置102に便が存在しないとみなして、計測を続ける。電気抵抗が0.5kΩ以下になって10分間継続したときには、吸尿装置102に便が侵入しているとみなして、警報ランプ504を点滅させて、介護者等に吸尿装置102の交換を促す。なお、警報ランプ504を点滅させる閾値としての電気抵抗は、吸引ポンプ108bを始動させる閾値としての規定抵抗値よりも高く設定されていることが必要である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明によれば、吸尿装置における便の存在を検出することが容易な自動尿処理装置の生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】自動尿処理装置の構成図。
【図2】吸尿装置の着用状態を示す図。
【図3】吸尿装置の平面図。
【図4】図3のIV−IV線切断面を示す図。
【図5】図3のV−V線切断面を示す図。
【図6】電極部の平面図。
【図7】図6のVII−VII線切断面を示す図。
【図8】図6のVIII−VIII線切断面を示す図。
【図9】絶縁性被覆が剥離されている電極部の平面図。
【図10】自動尿処理装置の制御フロー図。
【符号の説明】
【0045】
100 自動尿処理装置
100a 真空吸引手段
101 制御部
102 吸尿装置
102a 容器部
102b 尿検出部
102c 便検出部
143a 第1電極(便検出用電極)
143b 第2電極(便検出用電極)
218a 第1電極(尿検出用電極)
218b 第2電極(尿検出用電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道口とその周辺の肌とに向かい合うようにして着用する容器部と前記肌と前記容器部との間に介在するように前記容器部に取り付けられた検出部とを含む吸尿装置と、前記吸尿装置が離脱可能に接続されて前記容器部を負圧にすることが可能な真空吸引手段を含む制御部とを有し、前記検出部が尿の存在を検出する尿検出部と便の存在を検出する便検出部とを有し、前記尿検出部からの第1検出信号に基づいて前記真空吸引手段を作動させると前記尿の前記容器部への吸引が可能になり、前記便検出部からの第2検出信号に基づいて前記便の存在を知らせることが可能である自動尿処理装置であって、
前記尿検出部は前記尿で濡れると前記第1検出信号を出すことが可能であって互いに離間並行して一方向へ延びる一対の第1電極を有しており、
前記便検出部は前記便に含まれる水分で濡れると前記第2検出信号を出すことが可能であって互いに離間並行して前記一方向へ延びる一対の第2電極を有しており、
前記一対の第1電極と前記一対の第2電極とは互いに離間並行するそれぞれの部位を有し、前記それぞれの部位が前記尿および前記便に含まれる水分のいずれかによって濡れることが可能に形成されていることを特徴とする前記自動尿処理装置。
【請求項2】
前記一対の第1電極それぞれと前記一対の第2電極それぞれとが一枚の絶縁性合成樹脂フィルム上に形成されている請求項1記載の自動尿処理装置。
【請求項3】
前記一方向において、前記第2電極が前記第1電極の長さを越えて延びる部位を有し、前記部位においても前記便に含まれる水分で濡れるように形成されている請求項1または2記載の自動尿処理装置。
【請求項4】
前記尿検出部における前記一対の第1電極間の電気抵抗が第1規定抵抗値以下になると前記真空吸引手段を作動させ、前記便検出部における前記一対の第2電極間の電気抵抗が前記第1規定抵抗値よりも高く設定されている第2規定抵抗値以下の値で所定の時間以上継続すると前記便の存在を前記制御部を介して前記自動尿処理装置の使用者に知らせることが可能である請求項1〜3のいずれかに記載の自動尿処理装置。
【請求項5】
前記尿検出部と前記制御部とは、前記一対の第1電極間の電気抵抗が前記第1規定抵抗値以下の値から前記第1規定抵抗値を超える値になると、前記真空吸引手段を所定時間作動させた後に停止させるものである請求項4記載の自動尿処理装置。
【請求項6】
前記尿検出部と前記制御部とは、前記一対の第1電極間の電気抵抗が前記第1規定抵抗値以下の値で所定の時間を超えて継続すると前記真空吸引手段を停止させるものである請求項4または5記載の自動尿処理装置。
【請求項7】
前記第2電極間における前記第2規定抵抗値以下の値が、前記第2規定抵抗値と前記第1規定抵抗値との間にある請求項4〜6のいずれかに記載の自動尿処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−189579(P2009−189579A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33653(P2008−33653)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】