説明

自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法とセット搬送装置

【課題】段取りステーションとストッカの間において効率的にパレット搬送を行える。
【解決手段】セット搬送装置1は、ストッカ11に保管するワークWを搭載した複数のパレットPをマシニングセンター7に搬送して加工を行う。加工後にストッカ11に戻したワークWを段取りステーション9に搬送して次の加工のために別のパレットPに移載する。段取りステーション9への搬送に先立ち、ストッカ11内のワークWを搭載した複数のパレットPに対し、一次〜三次の加工段階の加工済みワークWを搭載した複数種類のパレットPの組合せ群を検出手段で抽出する。1組のパレットの組合わせを選択手段で選択して段取りステーション9に同時に搬送し、治具の異なるパレットP間で加工済みワークWを次の段階の加工のためにそれぞれ別のパレットPに移載する。加工完了したワークを次の処理工程に移し替え、未加工のワークを空のパレットPに移載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械によって多段階に加工するワークを保持した複数のパレットをストッカに保管すると共に、パレットをストッカから段取りステーションに移送して一の段階の加工済みワークを次の段階の未加工ワークとして一のパレットから他のパレットに移し替えてストッカに戻すようにした自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法とセット搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用のマシニングセンター等の工作機械を複数配列して、これらをコンピューターによって総括制御する加工設備としてFMS(Flexible manufacturing System)が知られている。FMSは多品種少量生産を効率的且つ経済的に行うワーク加工の自動化技術である。
FMSによる加工装置では、ワークを複数段階に分割して順次加工する複数のマシニングセンターを備え、各加工段階のワークを特有の治具によって搭載した多数のパレットをストッカに保管しておく。加工時にはストッカからワークを搭載したパレットを搬送手段でマシニングセンターに搬送して加工を施す。加工済みのワークを搭載したパレットはストッカに戻されて保管される。
次に、このパレットを段取りステーションに移送して、段取りステーションで加工済みのワークは次の加工のための治具を有する別のパレットに移載され、空になったパレットには未加工のワークが搭載されてストッカに搬送されて保管される。
【0003】
このようなFMSを用いた工作機械加工システムでは、パレットに搭載させた複数のワークを多段階に分割して複数のマシニングセンターで加工すると共に、中間加工段階でパレットに設けたワーク保持用の治具に応じて段取りステーションで中間加工段階のワークを他のパレットに置き換えて次の加工に供さなければならなかった。
そのため、複数のワークの待ち時間をできるだけ少なくして効率的に加工処理することが要求されている。
このような工作機械加工システムとして、例えば特許文献1、2、3に記載されたものが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載された多工程加工処理装置では、搬送装置の動作手順が最終工程の要求指令を最も優先してパレットを搬送し、順次後工程からの優先順位に基づいてパレット搬送の優先順位を決定することで、次のワークについてできるだけ待ち時間のない状態で加工を行うようにしている。これによって、加工の終了したワークを直ちに外部に搬出することで、次のワークの待ち時間をできるだけ少なくしている。
【0005】
また、特許文献2に記載されたNC工作機械加工システムでは、NC工作機械から出力される加工状態か待機状態かの状態信号及び加工完了時刻情報からNC工作機械の動作状態及び待機時間を管理し、その管理情報から待機時間の一番長いNC工作機械に新たなワークを供給する制御指令を出力し、複数の工作機械の稼働率を均等化することができるようにしている。
【0006】
また、特許文献3に記載されたFMSによる生産ラインシステムでは、段取りステーションにおいて、左右方向に移動可能な複数の移載テーブルを設けた移載装置を配置している。加工済みのワークを搭載した治具付きパレットがパレットキャリアで段取りステーションに移送されると、一方の移載テーブルに加工済みワークを搭載した治具付きパレットを移載し、他方の移載テーブルから未加工のワークを搭載した治具付きパレットをパレットキャリアに置き換える。これによって治具付きパレットが直ちに移し替えられるので段取りステーションでのパレットキャリアの待機時間が短縮される、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−74558号公報
【特許文献2】特開平11−239954号公報
【特許文献3】特開2002−144196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたワークの加工処理装置では、段取りステーションに搬送したパレットに積載されたワークを段取りステーションで他のパレットに移載した後、空のパレットをストッカに戻したり、或いはストッカから空のパレットを段取りステーションに搬送することを極力なくすことで効率的なパレット搬送を行うことは想定されておらず、そのような効果を発揮できなかった。
【0009】
また、特許文献3に記載された生産ラインシステムでは、加工済みワークを搭載したパレットを段取りステーションに搬送した際、複数の移載テーブルのいずれかに未加工ワークを搭載したパレットが搭載されているか否か不明であり、搭載されていない場合には、加工済みワークを搬送したパレットは未加工ワーク付きのパレットを搭載することなく空の状態でスタッカに戻さなければならなかった。そして、未加工ワークを搭載したパレットが段取りステーションのいずれかの移載テーブルに搭載された後、再度、ストッカから段取りステーションにパレットを移送しなければならなかった。
段取りステーションとストッカとの間において、ワークを備えたパレットを搭載することなく空の状態でパレットを搬送することは、マシニングセンターによるワークの生産加工が効率的でないため、ワークの加工処理が煩雑でサイクルタイムが長時間かかるため効率的でないという不具合があった。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みて、段取りステーションとストッカの間において空のパレットを搬送することなく、効率的にワークの加工処理を行えるようにした自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法及びセット搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法は、ストッカに保管されたワークを搭載したパレットをマシニングセンターに搬送して加工を行うと共に、マシニングセンターからストッカに戻したワークを段取りステーションに搬送して次の加工のために別のパレットに移載するようにした自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法において、異なる加工段階の加工済みの複数のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットを同時にまたは連続して段取りステーションにそれぞれ搬送する工程と、段取りステーションにおいて複数種類のパレット間で異なる加工段階のワークを次の段階の加工のためにそれぞれ別のパレットに移載すると共に、加工が完了したワークを次の処理工程に移し替え、未加工のワークを一の前記パレットに移載する工程と、移載されたワークを搭載した複数種類のパレットを段取りステーションからストッカに移送する工程とを備えたことを特徴とする。
本発明によるセット搬送方法では、スタッカに保管されている異なる加工段階の加工済みの複数のワークを搭載した複数種類のパレットを、同時にまたは連続して段取りステーションに搬送し、段取りステーションで加工段階毎にワークを別の種類の治具を設けたパレットに移し替えてそれぞれ搭載させ、加工が完了したワークを次の処理工程に移し替えると共に未加工のワークを一の空のパレットに移載することで、段取りステーションへの搬送時においても、ワークの移し替え後のスタッカへの戻し搬送時においても、空のパレットを生じることなく、無駄なく効率的にスタッカと段取りステーションとの間で往復搬送できる。
【0012】
本発明による複数パレットのセット搬送方法は、ストッカに保管されたワークを搭載したパレットをマシニングセンターに搬送して加工を行うと共に、マシニングセンターからストッカに戻したワークを段取りステーションに搬送して次の加工のために別のパレットに移載するようにした自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法において、ストッカで待機しているワークを搭載した複数のパレットに対し、異なる加工段階の加工済みのワークを搭載した複数種類のパレットの組合せを選択する工程と、異なる加工段階の複数のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせを段取りステーションにそれぞれ搬送する工程と、段取りステーションにおいて複数種類のパレット間で異なる加工段階のワークを次の段階の加工のためにそれぞれ別のパレットに移載すると共に、加工が完了したワークを次の処理工程に移し替え、未加工のワークを一のパレットに移載する工程と、移載されたワークを搭載した複数種類のパレットを段取りステーションからストッカに移送する工程とを備えたことを特徴とする。
本発明によるセット搬送方法では、ストッカで保管されているワークを搭載した複数のパレットに対し、異なる加工段階の加工済みのワークを搭載した複数種類のパレットの組合せを選択しておき、1組の複数種類のパレットの組合せを段取りステーションに搬送し、段取りステーションで加工段階毎にワークを別の種類の治具を設けたパレットに移し替えてそれぞれ搭載させ、加工が完了したワークを次の処理工程に移し替えると共に未加工のワークを一の空のパレットに移載することで、段取りステーションへの搬送時においても、ワークの移し替え後のスタッカへの戻し搬送時においても、空のパレットを生じることなく、無駄なく効率的にスタッカと段取りステーションとの間で往復搬送できる。
【0013】
また、異なる加工段階のワークを保持する複数のパレットを同時または連続してストッカから段取りステーションへ搬送し、移載した異なる加工段階のワークを搭載した複数種類のパレットを同時または連続して段取りステーションからストッカへ搬送することが好ましい。
これによって、スタッカと段取りステーションとの間で、異なる加工段階のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットを往復工程において無駄なく搬送することができ、空のパレットが発生しないので、無駄なパレット搬送を防止して効率的な搬送が行える。
【0014】
また、ストッカに保管された複数種類のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットから異なる加工段階のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせの群を抽出し、複数種類のパレットの組合わせの群から1組を選択するようにしてもよい。
あらかじめ、ストッカに保管された複数種類のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットから異なる加工段階のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせの群を抽出し、それらの組合わせの群から1組を選択することで、異なる加工段階のワークを搭載した複数種類のパレットの組合わせを速く効率的に搬送できる。
【0015】
また、異なる加工段階の複数のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせを段取りステーションにそれぞれ搬送する前に、段取りステーションにパレットが設けられていないことを確認するようにしてもよい。
予め段取りステーションにパレットがないことを確認して、異なる加工段階の複数のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットを段取りステーションに搬送することで、パレットが段取りステーションで他のパレットと干渉したり待機させられたりすることなく、無駄のない効率的な搬送を行える。
【0016】
本発明による自動工作機械における複数パレットのセット搬送装置は、ワークを搭載する複数のパレットを保管するストッカと、パレットに搭載されたワークを複数段階に分けて加工するマシニングセンターと、異なる加工段階のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットにおいてワークを次の加工のために複数種類のパレットの他のパレットに移し替える段取りステーションと、ストッカで待機しているワークを搭載した複数のパレットに対して、異なる加工段階の加工済みワークを搭載した複数種類のパレットの組合わせを選択する選択手段と、選択手段で選択された複数種類のパレットの組合わせをストッカから段取りステーションにそれぞれ移送すると共に、段取りステーションでワークを移し替えた複数種類のパレットをストッカに移送する搬送手段と、を備えたことを特徴とする
本発明によるセット搬送装置では、ストッカで保管されているワークを搭載した複数のパレットに対し、異なる加工段階のワークを搭載した複数種類のパレットの組合せを選択手段で選択しておき、そのうちの1組の複数種類のパレットの組合せを選択して段取りステーションに搬送し、段取りステーションで加工段階毎にワークを別の種類の治具を設けたパレットに移し替えてそれぞれ搭載させ、段取りステーションへの搬送時においても、ワークの移し替え後のスタッカへの戻し搬送時においても、複数種類のパレット間でワークの加工段階に応じて同時にまたは連続して移し替えることができて、無駄なく効率的にスタッカと段取りステーションとの間で往復搬送できる。
なお、段取りステーションで加工段階毎にワークを別の種類の治具を設けたパレットに移し替える際、既に加工が完了したワークは次の処理工程に移し替えると共に未加工のワークを一の空のパレットに移載することで、空のパレットを搬送させることのない効率的なパレット搬送を行える。
【0017】
また、ストッカに保管された複数種類のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットから異なる加工段階のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせの群を抽出する検出手段を備え、検出手段で検出された複数種類のパレットの組合わせの群から1組を選択手段で選択するようにしてもよい。
異なる加工段階のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせの群を検出手段によって予め抽出し、そのなかの1組を選択手段で選択することで効率的なパレット搬送を行える。
【0018】
また、段取りステーションの数は前記パレットの数と同数またはそれ以上であることが好ましい。
この場合、各パレットに搭載されたワークについて、同時にそれぞれ段取りステーションに移した後に次の加工のための治具を備えたパレットに移し替えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法とセット搬送システムによれば、多段階の加工を行うために段取りステーションで異なる加工段階のワークを別のパレットに移載する工程が必要になるが、異なる加工段階の加工済みのワークを搭載した複数種類のパレットの組合せを選択し、この組み合わせを段取りステーションにセットで搬送して複数のパレットに対するワークの載せ替えを行うことができるため、複数種類のパレットを無駄なく効率的にスタッカと段取りステーションとの間で往復搬送できる。
しかも、異なる加工段階の複数のワークを同時または連続してセットで移し替えることで、パレットの空返しをなくすことができて、各加工段階のワークを搭載したパレットが段取りステーションで滞留せず、搬送効率が向上する。そのため、結果的にマシニングセンターに対してワークの加工待ちによる滞留を抑制して効率の良いワークの加工を行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態による自動工作機械における複数パレットのセット搬送装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態による自動工作機械の加工システムで用いるワークの加工工程を説明する図である。
【図3】本実施形態による自動工作機械で用いる複数パレットのセット搬送装置の搬送制御部のブロック図である。
【図4】本実施形態による自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法を説明する図である。
【図5】複数パレットのセット搬送方法を説明するフローチャートである。
【図6】図5で示す複数パレットのセット搬送方法のフローチャートにおいて、セット搬送の選択工程を示すサブルーチンである。
【図7】図6に関連するセット搬送の選択工程を示すサブルーチンである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態による自動工作機械における複数パレットのセット搬送装置とセット搬送方法について添付図面を参照して説明する。
図1に示す自動工作機械1の加工システムは例えばFMSである。この自動工作機械1の加工システムにおいて、ワーク搬送部2にはライン状のガイドレール3が延びており、ガイドレール3にはワークWを図示しない治具によって所定の姿勢で固定して加工するために搭載するパレットPを取り付けて搬送するための搬送手段として搬送台車5が移動可能に支持されている。図では1台の搬送台車5を示すが、複数の搬送台車5が走行可能である。
【0022】
図1において、ガイドレール3の一方の側にはワークWを加工する工作機械としてマシニングセンター7とパレットチェンジャ4が複数台(図では3台を示す)配列されている。ここでは、複数のマシニングセンター7は個別にワークWの異なる部位を加工する複数種類の加工段階で用いられるものとするが、同一のマシニングセンター7で複数種類の加工を行うようにしてもよい。
また、搬送ガイド3の一方の側において、マシニングセンター7に隣接する位置にパレット4に搭載された所定段階の加工済みのワークWを次の段階の加工を行う別のパレット4に移載するための複数、ここでは3つの段取ステーション9が設けられている。段取りステーション9におけるパレットPに搭載されたワークWの移載は例えば自動的にワークWを移動させる移載手段10によって行われるが、手動によって行っても良い。また、段取りステーション9はワークWの加工数に応じた数だけ設定されている。
【0023】
例えば、図2に示すように、未加工のワークWに対して例えば3段階の加工を行って、この処理工程での完成品が形成されるとした場合には、各加工段階で異なる姿勢でワークWを固定保持するための固有の治具(図示せず)を備えた3種類のパレットPが設けられているものとする。
そのため、ワークWについても、未加工のワークW0に対して一次加工段階のワークをW1またはW1i(i=1,2,3,…),二次加工段階のワークをW2またはW2i、三次加工段階である完成品のワークをW3またはW3iとする。ワークWの一次加工工程をOP1、二次加工工程をOP2、三次加工工程をOP3というものとする。
【0024】
そして、未加工から一次加工段階のワークW0、W1を保持するパレットをパレットP1またはP1i(i=1,2,3,…)、一次から二次加工段階のワークW1,W2を保持するパレットをパレットP2またはP2i,二次加工から三次加工段階のワークW2、W3を保持するパレットをパレットP3またはP3iで示すものとする。
また、段取りステーション9についても、3種類の加工段階にあるワークWを一のパレットPから別のパレットPに同時に移載するために3台以上設置されているものとする。ここでは段取りステーション9A,9B,9Cが設置されている。
そのため、ワークWの完成までの加工数が増大すれば、それに応じて各治具を搭載したパレットPの種類や段取りステーション9の台数も増大することになる。
【0025】
また、図1において、ガイドライン3に対してマシニングセンター7と反対側には複数のパレットPを個々に保管するためのパレットストッカ11が例えばライン状に配列されている。
なお、ワーク搬送部2に対してマシニングセンター7,段取りステーション9,パレットストッカ11の配設方向は何れの側にあってもよく、任意である。
本実施形態では、段取りステーション9、パレットストッカ11、ワーク搬送部2、そして段取りテーション9及びパレットストッカ11の間におけるワークWを搭載したパレットPの搬送制御部12と、によってセット搬送装置13を構成する。
【0026】
次に、本実施形態による自動工作機械1のセット搬送装置における搬送制御部12について、図3に示すブロック図により説明する。
搬送制御部12は、ワークWの加工状態を判別して記憶するワークメモリ15と、パレットPの位置や搭載するワークWの加工前後の状態等を判別して記憶するパレットメモリ16と、各段取りステーション9A,9B,9CにパレットPが存在するか否かを判別して記憶する段取りステーション判別手段17とをそれぞれ備えている。
【0027】
即ち、ワークメモリ15は、スタッカ11に収容されている複数のパレットPについて、一次加工段階OP1のワークW1を治具で固定するパレットP1i(i=1,2,3,…)の群と、二次加工段階OP2のワークW2を治具で固定するパレットP2i(i=1,2,3,…)の群と、三次加工段階OP3のワークW3を治具で固定するパレットP3i(i=1,2,3,…)の群とを各群毎に情報として書き換え可能に記憶している。
【0028】
また、パレットメモリ16は、各パレットPに固定されたワークWについて、いずれの加工工程OP1、OP2、OP3にあるか、ワークWを搭載しているか搭載していない空の状態か、搭載したワークWが加工前か加工済みか、パレットPがストッカ11に収容されているかマシニングセンター7に位置するか、をそれぞれ判別したデータを書き換え可能に記憶している。
また、段取りステーション判別手段17は、各段取りステーション9A,9B,9CにパレットPが搬送されているかされていない空の状態かをそれぞれ判別したデータを書き換え可能に記憶している。
【0029】
そして、ワークメモリ15ではマシニングセンター7の位置で図示しない検知手段によって各情報を検知して書き換え情報として入力し、段取りステーション判別手段17では段取りステーション9の位置で図示しない検知手段によって各情報を検知して書き換え情報として入力している。また、パレットメモリ16では、上述したマシニングセンター7の位置と段取りステーション9の位置とにおいて上述した各検知手段で検知した情報を書き換え情報として入力するようにしている。
【0030】
また、搬送制御部12では、ワークメモリ15からのワークWに関する情報とパレットメモリ16からのパレットPに関する情報とに基づいて、一次加工工程OP1のワークW1を治具に搭載したパレットP1iと二次加工工程OP2のワークW2を治具に搭載したパレットP2iと三次加工工程OP3のワークW3を治具に搭載したパレットP3iとを1組として、同時にまたは連続して各段取りステーション9A,9B,9Cへセット搬送できる組合せを選択する検出手段19を有している。
【0031】
また、検出手段19で選択したセット搬送可能な3種のパレットP1i,P2i,P3iの組の群を一覧表として記憶するセット搬送一覧記憶手段20を有しており、セット搬送可能な3種のパレットP1i,P2i,P3iの組の群はディスプレイ23に表示している。
そして、セット搬送一覧記憶手段20で選択されたセット搬送可能な3種のパレットP1i,P2i,P3iの組の群から1組を選択して、段取りステーション判別手段17における各段取りステーション9A,9B,9Cが空であることを確認した上で、各段取りステーション9A,9B,9Cへ搬送する3種のパレットP1i,P2i,P3iの組を1組選択する選択手段21を有している。選択手段21で選択された3種のパレットP1i,P2i,P3iの組は、それぞれ搬送車5に搭載されて搬送手段22によって段取りステーション9に搬送されるようになっている。
【0032】
本実施形態による自動工作機械1における複数パレットPのセット搬送装置13は上述の構成を備えており、次にセット搬送方法について、図4に示す模式図と図5乃至図7に示すフローチャートに沿って説明する。なお、図4に示す自動工作機械加工システム1のセット搬送装置13の模式図は、説明の便宜上、図1に示すものと段取りステーション9の配置が相違するが、同一構成であるものとする。
【0033】
自動工作機械1のセット搬送装置13において、セット搬送方法を含む加工方法の基本的な動作を図4に基づいて説明する。
一次加工工程OP1で加工済みのワークW1を搭載したパレットP1がストッカ11に収容されていて、このパレットP1は搬送台車5に搭載されて段取りステーション9に搬送され、パレットP1の加工済みワークW1は移載手段10により段取りステーション9に移載される。
そして、空になったパレットP1には未加工の無垢のワークW0が搭載され、搬送台車5によりスタッカ11に戻される。段取りステーション9のワークW1は搬送された別のパレットP2が空いていれば段取りステーション9から移載され、二次加工工程OP2の未加工ワークW2としてストッカ11に戻される。
【0034】
そして、ストッカ11に保管された各パレットP1、P2に搭載された未加工ワークW0,W2は、マシニングセンター7が空であればマシニングセンター7にそれぞれ搬送されて一次加工OP1、二次加工OP2として加工される。加工終了後に加工済みワークW1、W2を搭載したパレットP1、P2はストッカ11に戻される。そして、パレットP1,P2は段取りステーション9に搬送され、パレットP2の加工済みワークW2はパレットP3が空で段取りステーション9にあれば移載され、スタッカ11へ戻される。
こうして順次、ワークWはマシニングセンター7で加工されては段取りステーション7で次の加工のために別のパレットPに移載される。三次加工OP3が終了したワークW3を搭載したパレットP3はストッカ11から段取りステーション7に搬送された後、移載手段10によって次の処理工程へ移送させられる。空になったパレットP3に、二次加工済みのワークW2を搭載したパレットP2が段取りステーション7に搬送されると、未加工ワークW3としてパレットP3に移載される。
【0035】
こうして、ストッカ11内のパレットP上のワークWはマシニングセンター7で加工され、ストッカ11を介して段取りステーション7で次の加工のためのパレットPに移載されるようになっている。
このような、加工及び搬送方法では、段取りステーション7でのパレットP間におけるワークW移載のタイミングが合わない場合には、ワークWを外したパレットPを空でストッカ11へ戻したり、空のパレットPを段取りステーションに搬送してワークWを搭載させたりすることになり、動きに無駄があった。
【0036】
これに対し、本実施形態によるセット搬送方法では、図5に示すフローチャートにおいて、まず、個別にストッカ11から加工済みワークWを搭載したパレットPを搬送車5に搭載して段取りステーション9に搬送して、ワークWを次加工のために別のパレットPに移載してストッカ11へ戻すという通常のパレット搬送処理モード(ステップ100)に代えて、搬送制御部12で複数、例えば加工段階の異なる3個のワークWを搭載した3個のパレットPを同時に段取りステーション9へ搬送して3つのパレットP間で同時に移載するというセット搬送モードを選択する(ステップ101)。
【0037】
以下の説明では、それぞれ複数あるワークW1をW1i、W2をW2i、W3をW3iとし、パレットP1をP1i、P2をP2i、P3をP3iとする。
搬送制御部12において、セット搬送モードを選択すると、段取りステーション9へ搬送可能な各加工工程OP1,OP2、OP3の加工前または後のワークW1i、W2i、W3i、…を搭載したパレットP1i、P2i、P3i(i=1,2,3,…)を各加工工程毎にストッカ11からそれぞれ選択して各種毎のリスト作成を指示し(ステップ102)、ワークメモリ15にこれら加工工程OP1,OP2、OP3毎のリストを作成して記憶する(ステップ103)。
【0038】
次に加工済みワークW1,W2,W3のパレットP1i、P2i、P3iの組合せの作成手順について、図6に示すステップ103のサブルーチンで説明する。
まず、ワークWが例えば3段階の加工工程OP1、OP2、OP3によって加工処理が完了するワークWの加工種類(A)を選択する(ステップ201)。そして、ストッカ11内で、3段階の加工工程OP1、OP2、OP3における3種のワークW1i、W2i、W3iを搭載するパレットP1i、P2i、P3iの数をカウントし、それぞれN1個、N2個、N3個収納されているものとしてワークメモリ15に記憶する(ステップ202)。
【0039】
一次加工工程OP1のパレットP1iの数N1が0でない場合(ステップ203)、1つのパレットP1i(例えばi=1とする)を選択し(ステップ204)、N1=N1−1とデクリメントする(ステップ205)。そして、このパレットP1iがストッカ11上にあること(条件1とする)と、ワークW1i(例えばi=1とする)が一次加工済みであること(条件2とする)の2つの条件を満足する場合(YES)には、段取りステーション9へセット搬送するためのパレットP1iがカウントされる(ステップ206)。
一方、パレットP1iが条件1と条件2の少なくともいずれかを満たさない場合(NO)には、パレットP1iが搬送中かマシニングセンター7での一次加工用のものであるとしてセット搬送に不適格と判定する。そして、N1=0でなければ(ステップ207)、次のOP加工用のパレットP1i(例えばi=2)を選択して上記処理を繰り返す。これらの情報をパレットメモリ16で判別して記憶する。
なお、ステップ207でN1=0になった場合には、セット搬送用のパレットP1iがなくなったとして処理を終了し、後述のステップ301へ移行する。
【0040】
ステップ206でセット搬送用のパレットP1iが決定した場合、次に二次加工OP2用のパレットP2i(例えばi=1)を1つ選択して(ステップ208)、N2=N2−1とデクリメントする(ステップ209)。そして、このパレットP2iがストッカ11上にあること(条件1とする)と、ワークW2i(例えばi=1とする)が二次加工済みであること(条件2とする)の2つの条件を満足する場合(YES)には、段取りステーション9へセット搬送するためのパレットP2iがカウントされる(ステップ210)。
一方、パレットP2iが条件1と条件2の少なくともいずれかを満たさない場合(NO)には、パレットP2iが搬送中かマシニングセンター7での二次加工用のものであるとしてセット搬送に不適格と判定する。そして、N2=0でなければ(ステップ211)、次のOP加工用のパレットP22(例えばi=2)を選択して上記処理を繰り返す。これらの情報をパレットメモリ16で判別して記憶する。
なお、ステップ211でN2=0になった場合には、セット搬送用のパレットP2iがなくなったとしてステップ203に戻る。
【0041】
次に、ステップ210でセット搬送用のパレットP2iが決定した場合、次に三次加工OP3用のパレットP3i(例えばi=1)を1つ選択して(ステップ212)、N3=N3−1とデクリメントする(ステップ213)。そして、このパレットP3iがストッカ11上にあること(条件1とする)と、ワークW3i(例えばi=1とする)が三次加工済みであること(条件2とする)の2つの条件を満足する場合(YES)には、段取りステーション9へセット搬送するためのパレットP3iがカウントされる(ステップ214)。
一方、パレットP3iが条件1と条件2の少なくともいずれかを満たさない場合(NO)には、パレットP3iが搬送中かマシニングセンター7での三次加工用のものであるとしてセット搬送に不適格と判定する。そして、N3=0でなければ(ステップ215)、次のOP加工用のパレットP3i(例えばi=2)を選択して上記処理を繰り返す。これらの情報をパレットメモリ16で判別して記憶する。
なお、ステップ215でN3=0になった場合には、セット搬送用のパレットP3iがなくなったとしてステップ203に戻る。
【0042】
こうして設定されたセット搬送用の加工段階の異なるワークW1i、W2i、W3iを搭載したパレットP1i、P2i、P3iをパレットメモリ16のパレットリストに記憶する(ステップ216)。このような処理を一次加工のワークW1iのカウント数がN1になるまで繰り返して続ける。
【0043】
ストッカ11において、一次加工済みのワークW1iのN1個のカウントが終了した場合(ステップ203)、図7に示すステップ301へ移行して、残っている二次加工済みのワークW2iのパレットP2iと三次加工済みのワークW3iのパレットP3iとの組をセット搬送用のリストとして作成する。
二次加工工程OP2のパレットP2iの数N2が0でない場合(ステップ301)、1つのパレットP2iを選択し(ステップ302)、N2=N2−1とデクリメントする(ステップ303)。そして、このパレットP2iがストッカ11上にあること(条件1とする)と、ワークW2iが二次加工済みであること(条件2とする)の2つの条件を満足する場合(YES)には、段取りステーション9へセット搬送するためのパレットP2iがカウントされる(ステップ304)。
一方、パレットP2iが条件1と条件2の少なくともいずれかを満たさない場合(NO)には、パレットP2iが搬送中かマシニングセンター7での二次加工用のものであるとしてセット搬送に不適格と判定する。そして、N2=0でなければ(ステップ305)、次のOP加工用のパレットP2iを選択して上記処理を繰り返す。
なお、ステップ305でN2=0になった場合には、セット搬送用のパレットP2iがなくなったとして後述のステップ400へ移行する。
【0044】
次に、ステップ304においてセット搬送用のパレットP2iが決定した場合、次に三次加工の1つのパレットP3iを選択し(ステップ306)、N3=N3−1とデクリメントする(ステップ307)。そして、このパレットP3iがストッカ11上にあること(条件1とする)と、ワークW3iが三次加工済みであること(条件2とする)の2つの条件を満足する場合(YES)には、段取りステーション9へセット搬送するための残ったパレットP3iがカウントされる(ステップ308)。
【0045】
一方、パレットP3iが条件1と条件2の少なくともいずれかを満たさない場合(NO)には、パレットP3iが搬送中かマシニングセンター7での三次加工用のものであるとしてセット搬送に不適格と判定する。そして、N3=0でなければ(ステップ309)、次の三次加工OP3のパレットP3iを選択して上記処理を繰り返す。
なお、ステップ309でN3=0になった場合には、ステップ301へ戻る。
そして、セット搬送用のパレットP2i、P3iの組が決定すると、パレットメモリ16に追加して(ステップ310)、ステップ301に戻る。このような処理を二次加工のワークW2のカウント数がN2になるまで(N2=0になるまで)繰り返して続ける。
【0046】
ストッカ11において、二次加工のワークW2iのN2個のカウントが終了した(N2=0)場合(ステップ301)、ステップ400へ移行して、残りの三次加工済みのワークW3iのパレットP3iの組をセット搬送用のリストとして作成する。
三次加工工程OP3のパレットP3iの数N3が0でない場合(ステップ400)、ステップ401へ移行して三次加工のワークW3iのパレットP3iをセット搬送用のリストとして作成する。
三次加工工程OP3のパレットP3iの1つのパレットP3iを選択し(ステップ401)、N3=N3−1とデクリメントする(ステップ402)。そして、このパレットP3iがストッカ11上にあること(条件1とする)と、ワークW3iが三次加工済みであること(条件2とする)の2つの条件を満足する場合(YES)には、段取りステーション9へセット搬送するためのパレットP3iがカウントされる(ステップ403)。
そして、これらのパレット3iをパレットメモリ16のセット搬送リストに記憶する(ステップ405)。
【0047】
一方、パレットP3iが条件1と条件2の少なくともいずれかを満たさない場合(NO)には、パレットP3iが搬送中かマシニングセンター7での三次加工用のものであるとしてセット搬送に不適格と判定する。そして、N3=0でなければ(ステップ404)、次のパレットP3iを選択して上記処理を繰り返す。なお、ステップ404でN3=0になった場合には処理を終了する。
また、上述したステップ405において三次加工済みのパレット3iをパレットメモリ16のセット搬送リストに記憶した後は、ステップ400に戻って上述した処理を更に繰り返し、ステップ400でセット搬送用のパレットP3=0になった場合にはステップ400から処理を終了する(ステップ406)。
【0048】
こうして、検出手段19によってセット搬送のためのパレットP1i、P2i、P3iの判別が終了し、セット搬送一覧記憶手段20においてセット搬送用の組合わせのリストができあがる。そして、図5に示すフローチャートにおいて、セット搬送一覧記憶手段20によりセット搬送リストをディスプレイ23に表示し(ステップ104)、選択手段21により、セット搬送リストからいずれか1組を選択して(ステップ105)セット搬送を実行する(ステップ106)。
【0049】
次にセット搬送の手順を図4に示すセット搬送装置13に基づいて説明する。
搬送制御部12において検出手段19で選定されたセット搬送用の加工済みワークW1i、W2i、W3iを搭載したパレットP1i,P2i、P3iの組合せのリストから選択手段21によりセット搬送用の1組が選択されて、搬送手段22によって実行が指示される。すると、段取りステーション9A,9B,9CにパレットPがないことを段取りステーション判別手段17で確認して、加工段階の異なる3種のワークW1i、W2i、W3iをそれぞれ搭載したパレットP1i、P2i、P3iをそれぞれ搬送車5に搭載させて同時に段取りステーション9A,9B,9Cへ搬送する。
【0050】
そして、段取りステーション9Aでは、移載手段10によりパレットP1iから一次加工済みのワークW1iを外し、未加工のワークW0を搭載する。段取りステーション9Bでは、移載手段10によりパレットP2iから二次加工済みのワークW2iを外し、一次加工済みのワークW1iを二次加工用のワークW2iとして搭載する。段取りステーション9Cでは、移載手段10によりパレットP3iから三次加工済みのワークW3iを外して次の処理工程へ移動させ、二次加工済みのワークW2iを三次加工用のワークW3iとして搭載する。
【0051】
次に、3種のパレットP1i、P2i、P3iを同時にストッカ11へ搬送する。ストッカ11では、マシニングセンター7が空になると3種のパレットP1i、P2i、P3iをマシニングセンター7に搬送してワークW1i、W2i、W3iをそれぞれ加工する。
そして、加工後に、これらパレットP1i、P2i、P3iがストッカ11に戻ると、ワークメモリ15とパレットメモリ16が書き換えられ、3種のパレットP1i、P2i、P3iのセット搬送を行う。このような処理を繰り返して行う。
【0052】
また、加工処理が進んで、一次加工用のワークW1iがなくなった場合には、加工段階の異なる2種のワークW2i、W3iをそれぞれ搭載したパレットP2i、P3iのセット搬送を行う。更に、二次加工用のワークW2iがなくなった場合には、三次加工済みのワークW3iを搭載したパレットP3iのみのセット搬送を行う。
なお、セット搬送の工程中において、未加工のワークWを搭載したパレットPは随時マシニングセンター7に搬送されて加工され、加工済みのワークWを搭載したパレットPとしてスタッカ11へ戻ることになる。また、セット搬送されたパレットP1i、P2i、P3iはストッカ11に戻されることによって未加工ワークW1i、W2i、W3iを搭載したパレットP1i、P2i、P3iとしてストッカ11に保持される。これら更新される各パレットPは随時セット搬送用のプログラムを更新することで切り換えられ、更新されたデータを元に上記の処理が繰り返し行われることになる。
特にパレットPの空返しを極力防ぐためには、セット搬送するためのパレットP1i、P2i、P3iを備えた組のセット搬送が終了した時点で、セット搬送用のプログラムを更新することで、ストッカ11で新たに生じたパレットP1i、P2i、P3iを備えた組のセット搬送を行うようにしてもよい。そして、図6及び図7のフローチャートに示すように、全てのパレットP1iがストッカ11になくなった時点でパレットP2i、P3iの組でセット搬送し、全てのパレットP2iがストッカ11になくなった時点でパレットP3iの組で搬送するようにセット搬送用のプログラムを切り換えるようにしてもよい。
【0053】
上述のように、本実施形態による自動工作機械加工システム1におけるワークのセット搬送装置13とセット搬送方法によれば、予めセット搬送できる加工段階の異なる3種のワークW1i、W2i、W3iを搭載したパレットP1i、P2i、P3iの組のリストを作成して1組を選択し、ストッカ11から同時に段取りステーション9A,9B,9Cへ搬送してワークW1i、W2i、W3iを移し替えることで同時にストッカ11へ戻すことができるため、パレットPにワークWを搭載しないで空でストッカ11へ返したり、ワークWを受け取るためにストッカ11から空で段取りステーション9へ搬送させたりすることを極力なくすことができる。
そのため、パレットPの空返しや空送りをなくして搬送車5による効率的な搬送を行える。これによって、段取りステーション9でのワークWの載せ替えに伴う中間加工品である一次加工のワークW1iや二次加工のワークW2iの滞留や搬送遅れを防止できる。その結果として、ワークWの加工待ちのためにマシニングセンター7が空き状態で待機することを改善できる。
【0054】
なお、本発明による自動工作機械加工システム1におけるセット搬送装置13とセット搬送方法は、上述の実施の形態に限定されることなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、3段階の加工工程OP1、OP2、OP3によってワークWの加工が完了するようにしたが、2段階や4段階以上の加工工程を有するようにしてもよい。この場合には、ワークWの加工工程の数に応じてパレットPの種類と段取りステーション9を増減してもよく、その場合には多種類のパレットをセット搬送することで、より効率的なセット搬送が行える。
また、段取りステーション9に設けた移載手段10で自動的にワークWを移載するようにしたが、これに代えて手動で移載するようにしてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、複数種、例えば3種の加工段階のワークW1、W2、W3をそれぞれ搭載した同数の複数種、例えば3種のパレットP1、P2、P3を同時にストッカ11から段取りステーション9へ搬送するようにしたが、必ずしも同時である必要はなく、わずかな時間差で連続して搬送するようにしてもよい。このように異種のパレットP1、P2、P3を連続して搬送する場合でも、同時搬送の場合より劣るが、段取りステーション9でのワークW1、W2、W3の移し替えを効率的に行うことができる。
また、上述の実施形態では、パレットPの種類に応じた数の段取りステーションを設置したが、これに代えて大型の段取りステーションを1台またはパレットPの種類より少ない数だけ設置してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 自動工作機械
5 搬送車
7 マシニングセンター
9、9a,9B,9C 段取りステーション
10 移載手段
11 パレットストッカ
12 搬送制御部
13 セット搬送装置
15 ワークメモリ
16 パレットメモリ
17 段取りステーション判別手段
19 検出手段
21 選択手段
22 搬送手段
W、W1、W2、W3、W1i、W2i、W3i ワーク
P,P1、P2、P3、P1i、P2i、P3i パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストッカに保管されたワークを搭載したパレットをマシニングセンターに搬送して加工を行うと共に、マシニングセンターからストッカに戻したワークを段取りステーションに搬送して次の加工のために別のパレットに移載するようにした自動工作機械における複数パレットのセット搬送方法において、
異なる加工段階の加工済みの複数のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットを同時にまたは連続して前記段取りステーションにそれぞれ搬送する工程と、
前記段取りステーションにおいて複数種類のパレット間で異なる加工段階のワークを次の段階の加工のためにそれぞれ別の前記パレットに移載すると共に、加工が完了したワークを次の処理工程に移し替え、未加工のワークを一の前記パレットに移載する工程と、
移載された前記ワークを搭載した複数種類のパレットを前記段取りステーションから前記ストッカに移送する工程と
を備えたことを特徴とする複数パレットのセット搬送方法。
【請求項2】
ストッカに保管されたワークを搭載したパレットをマシニングセンターに搬送して加工を行うと共に、マシニングセンターからストッカに戻したワークを段取りステーションに搬送して次の加工のために別のパレットに移載するようにした自動工作機械におけるパレット搬送方法において、
前記ストッカで待機しているワークを搭載した複数のパレットに対し、異なる加工段階の加工済みの複数のワークを搭載した複数種類のパレットの組合わせを選択する工程と、
前記複数種類のパレットの組合わせを前記段取りステーションにそれぞれ搬送する工程と、
前記段取りステーションにおいて、前記複数種類のパレット間で異なる加工段階のワークを次の段階の加工のためにそれぞれ別の前記パレットに移載すると共に、加工が完了したワークを次の処理工程に移し替え、未加工のワークを一の前記パレットに移載する工程と、
移載された前記ワークを搭載した複数種類のパレットを前記段取りステーションから前記ストッカに移送する工程と、
を備えたことを特徴とする複数パレットのセット搬送方法。
【請求項3】
異なる加工段階のワークを保持する複数のパレットを同時または連続して前記ストッカから段取りステーションへ搬送し、前記移載した異なる加工段階のワークを搭載した複数種類のパレットを同時または連続して前記段取りステーションからストッカへ搬送するようにした請求項1または請求項2に記載されたパレット搬送方法。
【請求項4】
前記ストッカに保管された複数種類のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットから前記異なる加工段階のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせの群を抽出し、
前記複数種類のパレットの組合わせの群から1組を選択するようにした請求項1乃至3のいずれか1項に記載された複数パレットのセット搬送方法。
【請求項5】
前記異なる加工段階の複数のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせを前記段取りステーションにそれぞれ搬送する前に、前記段取りステーションにパレットが設けられていないことを確認するようにした請求項1乃至4のいずれか1項に記載された複数パレットのセット搬送方法。
【請求項6】
ワークを搭載する複数のパレットを保管するストッカと、
前記パレットに搭載されたワークを複数段階に分けて加工するマシニングセンターと、
異なる加工段階の前記ワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットにおいて前記ワークを次の加工のために前記複数種類のパレットの他のパレットに移し替える段取りステーションと、
前記ストッカで待機している前記ワークを搭載した複数のパレットに対して、異なる加工段階の前記加工済みワークを搭載した複数種類のパレットの組合わせを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された複数種類のパレットの組合わせを前記ストッカから段取りステーションにそれぞれ移送すると共に、前記段取りステーションで前記ワークを移し替えた前記複数種類のパレットをストッカに移送する搬送手段と、
を備えたことを特徴とする複数パレットのセット搬送装置。
【請求項7】
前記ストッカに保管された複数種類のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットから前記異なる加工段階のワークをそれぞれ搭載した複数種類のパレットの組合わせの群を抽出する検出手段を備え、
前記検出手段で検出された前記複数種類のパレットの組合わせの群から1組を前記選択手段で選択するようにした請求項6に記載された複数パレットのセット搬送装置。
【請求項8】
前記段取りステーションの数は前記パレットの数と同数またはそれ以上であることを特徴とする請求項6または7に記載された複数パレットのセット搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43267(P2013−43267A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184567(P2011−184567)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(303024138)株式会社ニイガタマシンテクノ (78)
【Fターム(参考)】