説明

自動改札装置

【課題】先客が所定位置を通過した後に正券カウンタに余りが残存した場合でも、無効客である次客の通行を禁止するとともに、降車駅での乗客と駅員とのトラブルの発生を未然に防止する。
【解決手段】投入された乗車媒体が有効と判定された場合に加算動作を行い、乗客が所定位置を通過したことが検知された場合に減算動作を行う正券カウンタを備えた自動改札装置において、乗車媒体が無効と判定され(S2)、かつ、正券カウンタの値が0でない場合は(S5)、出口側の扉付近に乗客がいるかどうかを調べ(S5a)、乗客が検知されなければ、正券カウンタを0とし(S5b)、扉を閉じて無効客の通行を禁止する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の駅などに設置される自動改札装置における通行制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動改札装置では、乗車媒体が有効か否かを判定して、有効であれば扉を開けて乗客の通行を許可し、有効でなければ扉を閉じて乗客の通行を禁止するような制御が行われる。また、乗客の通行を検知するためのセンサが設けられ、このセンサの出力に基づいて乗客の通行が制御されるようになっている。さらに、有効な乗車媒体に対して通行を許可する人数を管理するために、正券カウンタが設けられる。正券カウンタの初期値は「0」であり、乗客の投入した乗車券が有効と判定されると、正券カウンタは+1の加算動作を行い、その値が「1」となる。なお、自動改札装置で連続して受付可能な乗車券の枚数が例えば2枚の場合は、正券カウンタの最大値は「2」となるが、ここでは、説明を簡単にするために、正券カウンタの最大値を「1」とする。
【0003】
正券カウンタが「1」の状態は、乗客1人の通行が許可されていることを意味する。この場合、当該乗客が通路を進んで、所定位置(例えば、通路の出口位置)を通過したことをセンサが検知すると、正券カウンタは−1の減算動作を行い、その値が「0」に戻る。一方、乗客の投入した乗車券が、使用期限徒過や区間外乗車などの理由により無効と判定されると、正券カウンタは加算されず「0」の状態を維持する。正券カウンタが「0」の状態は、通行が許可された乗客がいない、すなわち無効券を投入した乗客の通行が禁止されていることを意味する。
【0004】
図4は、従来の自動改札装置における通行制御の手順を示したフローチャートである。以下では、扉が常時開いていて通行を禁止する場合に扉を閉じる常開タイプの自動改札装置を例にとり、通路の入口側から入場する場合の動作について説明する。また、乗車媒体として乗車券を例にとる。
【0005】
最初に、乗車券が投入されたか否かを監視し(ステップS1)、乗車券が投入されると(ステップS1:YES)、乗車券の有効/無効を判定する(ステップS2)。乗車券が有効であれば(ステップS2:NO)、正券カウンタを+1して(ステップS4)、ステップS1に戻り、次客が乗車券を投入するのを待機する。乗車券投入がなければ(ステップS1:NO)、乗客が所定位置を通過したか否かをみて(ステップS10)、通過がまだであれば(ステップS10:NO)ステップS1へ戻り、通過が完了すれば正券カウンタを−1する(ステップS11)。次に、無効券フラグがONか否かを判定する(ステップS12)。乗車券が有効であれば、無効券フラグはOFFであり(ステップS12:NO)、ステップS1へ戻る。このとき、扉は開状態を維持しているため、乗客は自動改札装置の出口から退出することができる。
【0006】
一方、ステップS2において、乗車券が無効と判定されると(ステップS2:YES)、無効券フラグをONにして(ステップS3)、ステップS5へ進み、正券余りがあるか否かを判定する。正券カウンタの値が「0」であれば、正券余りはなく、正券カウンタの値が「0」でなければ、正券余りがあることになる。すなわち、正券余りとは、正券カウンタにおける「1」以上のカウント値をいう。なお、「正券余り」は、「正券記憶」または「OK記憶」と表現される場合もあるが、意味は同じである。
【0007】
先行の乗客の所定位置通過が完了しておれば、正券カウンタの値は「0」となっているから、正券余りはないと判定される(ステップS5:NO)。この場合は、出口側の扉を閉じて(ステップS6)、無効券を投入した乗客(以下、無効客という)の通行を禁止する。また、投入された無効券は、そのまま返却口へ放出されるので、放出された無効券が抜き取られるのを待つ(ステップS7)。この無効券には、情報記録や印字等の処理は施されていない。そして、無効券が抜き取られると(ステップS7:YES)、無効客が通路を逆方向へ後退したか否かを判定し(ステップS8)、後退が検知されると(ステップS8:YES)、閉じていた出口側の扉を開けて(ステップS9)、ステップS1へ戻る。
【0008】
また、ステップS5において、正券余りがあると判定された場合は(ステップS5:YES)、先客の所定位置通過が完了していないため、ステップS10へ移行して通過完了を待つ。そして、先客が所定位置を通過し終わると(ステップS10:YES)、正券カウンタを−1する(ステップS11)。次のステップS12では無効券フラグの判定をするが、今の場合は、無効券フラグがONであるから(ステップS12:YES)、出口側の扉を閉じて無効客の通行を禁止する(ステップS13)。
【0009】
以上のような自動改札装置において、投入された乗車券が有効な場合は、前述のように、有効券と判定したことにより正券カウンタを+1し(ステップS4)、乗客の所定位置通過完了により正券カウンタを−1している(ステップS11)。したがって、装置が正常に動作しておれば、先客の通過完了により正券カウンタの値は「0」に戻るので、次客の投入した乗車券が無効であれば、正券カウンタは「0」のままであり、扉を閉じて無効客の通過が禁止される(ステップS6またはステップS13)。
【0010】
しかしながら、乗客(先客)が所定位置を通過したにもかかわらず、まれに何らかの原因(例えば、反射型センサの検知特性や、乗客の通行状態等)により、センサが乗客の通過を検知できない場合が発生する。このとき、先客が通過したにもかかわらず、正券カウンタは−1されず、先客の有効券投入により「1」となった状態を一定時間後に自動リセットがかかるまで維持し続ける。このため、出口側の扉は開いたままとなる。したがって、この状態で自動リセットがかかる前に次客が無効券を投入すると、券は無効判定によりそのまま放出されるが、出口側の扉が開いているので、次客(無効客)は無効券で入場できてしまう。すなわち、正券カウンタに残りがあるため自動改札装置は先客の通過を待ち、次客の通過を先客の通過とみなすので、先客の正券カウント分により、次客は無効券を投入したにもかかわらず通行できてしまう。同様のことは、有効な小児券を投入した背の低い小児(先客)をセンサが検知できなかった場合に、次客が無効券を投入した際にも起こりうる。さらに、次客が券を所持しない無札客や、券処理が正常終了しなかった客である場合も、通常は通行阻止されるべきところが、上記の無効券客と同様の状況では通行できてしまう。
【0011】
このことを図4のフローチャートでもう少し詳しく説明すると、先客が有効券を投入した場合、ステップS1、S2を経て、ステップS4で正券カウンタは+1され、カウント値が「1」となる。ところが、先客が所定位置を通過したのに、通過が検出できなかった場合は、ステップS10の判定がYESにならず、待機状態となる。このとき、自動改札装置側では、先客の通過が遅れていると判断する。そして、次客により無効券が投入されると、ステップS1、S2を経て、ステップS3で無効フラグがONになるが、ステップS5で正券余りがあると判定されるため、ステップS6へは進まず(扉を閉じず)、ステップS10へ移行して先客の所定位置通行完了を待つ。
【0012】
次客が所定位置を通過すると、ステップS10の判定はYESとなるが、このとき、自動改札装置側では、先客が遅れて所定位置を通過したものと判定する。すなわち、次客の通過を先客の通過と誤判断する。この時点では出口側の扉が開いたままであるため、所定位置を通過した次客は、無効判定で放出された券を抜き取り、そのまま出口から退出することができる。そして、自動改札装置は、先客が通過したものとして、正券カウンタを−1する(ステップS11)。これにより、正券カウンタの値は「0」になる。
【0013】
その後、ステップS12で無効フラグの判定をするが、次客により無効券が投入されているため、判定はYESとなって、扉が閉じる(ステップS13)。しかし、この時点ではすでに次客は退出した後であるから、結果的に扉を閉めるのが遅かったことになり、無効客である次客の通行(入場)を阻止することはできない。
【0014】
以上のように、従来の自動改札装置では、先客の所定位置通過を検出できなかった場合に、正券カウンタに余りが残存することに基因して、無効券を投入した次客の入場を許容してしまうことが起こりうる。尤も、乗客が意図的に無効券で不正通行をしようとする場合は少なく、実際には、自分の所持している乗車券が期限切れのような無効券であることを乗客がうっかりして忘れていた場合が多い。しかしながら、投入した無効券はそのまま放出され、また、扉が閉まらずに入場もできるため、意図的な不正でない場合は、乗客は乗車券が無効であることには気付かない。ところが、この無効券には、乗車駅の自動改札装置で入場ビット(入場したことを示す情報)が記録されていないので、降車駅の自動改札装置を通って出場する際に、入場ビットの欠落により扉が閉じて出場できなくなり、乗客と駅員との間でトラブルが発生することがある。また、無効券がプリペイドカードの場合は、入場時においてカードの裏側に入場駅も印字されないので、降車駅で出場できなくなった際に、どこから乗車してきたのか不明であり、料金徴収に関して問題が発生する。
【0015】
乗客通過の検知ミスにより正券カウンタが減算されないことに基因する不正通行を防止する技術が、下記の特許文献1に記載されている。本文献の自動改札装置では、出口センサの位置を、中央センサの位置より低くして、小児を検知できる位置とすることにより、小児や不自然な姿勢の乗客が通過した場合に、正券カウンタが正確に減算されるようにし、次客が無札で通過可能となるのを防止している。
【0016】
【特許文献1】特開平10−143687号公報(段落0028〜0029、0041〜0044、図1、図2、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の自動改札装置では、図4のフローチャートのステップS5、S6に示されるように、無効券が投入されたときに、正券カウンタが「0」であることを条件に扉を閉じるようにしている。このため、前述したように、先客が所定位置を通過したことが検知できなかった場合は、正券カウンタに余りが残存することにより扉が閉じないため、無効券を投入した次客の通過が許容されるという問題があり、また、当該無効券に対して入場ビット記録などの処理がされないことにより、降車駅での出場が不可能になって、トラブルが発生するという問題がある。
【0018】
また、上記特許文献1のものは、小児等の通過に対して正券カウンタを正確に減算させるための技術であり、正券カウンタが正しく減算されずに余りが残存した場合の対応について開示したものではない。さらに、この特許文献1の自動改札装置にあっては、出口センサの位置を低くする必要があり、必然的に自動改札装置のハードウェアの構造的な変更を余儀なくされる。
【0019】
本発明は、上記課題を解決するものであって、その目的とするところは、先客が所定位置を通過した後に正券カウンタが正しく減算されずに余りが残存した場合でも、無効客である次客の通行を禁止するとともに、降車駅での乗客と駅員とのトラブルの発生を未然に防止することにある。また、本発明の他の目的は、構造的な変更を伴わずソフトウエアの変更だけで上記機能を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明では、乗車媒体が有効か否かを判定する判定手段と、この判定手段の判定結果に基づいて扉の開閉を制御し、乗客の通行を許可または禁止する制御手段と、乗客の通行を検知する検知手段と、判定手段が乗車媒体を有効と判定した場合に加算動作を行い、乗客が所定位置を通過したことを検知手段が検知した場合に減算動作を行う正券カウンタとを備えた自動改札装置において、判定手段により乗車媒体が無効と判定され、かつ、正券カウンタの値が0でない場合は、検知手段により出口側の扉付近の乗客の有無を検知し、当該乗客が検知されなければ、制御手段は扉を閉じて通行を禁止するようにしている。
【0021】
乗車媒体には、乗車券、回数券、定期券、プリペイドカードなど、各種の媒体が含まれる。また、媒体としては、磁気カード、接触式ICカード、非接触式ICカードなど、種々の記録形態をもった媒体を用いることができる。
【0022】
上記のように、乗車媒体が無効で正券カウンタに余りがある場合に、出口側の扉付近に乗客がいるかどうかを調べ、乗客がいなければ扉を閉じることにより、先客の通過検知ミスにより正券カウンタが「0」にならなかった場合でも、出口側の扉付近に乗客がいない限り、扉は閉状態となるので、無効券を投入した次客の通行を禁止することができる。また、次客は入場ができないため、投入した乗車券が無効券であることが明確に分かり、降車駅で入場未処理の券を投入して出場ができなくなるという事態や、出場時の駅員とのトラブルを未然に回避することができる。さらに、本発明は、センサの位置を変更する必要がなく、ソフトウエアの変更のみで対応できるため、既存の自動改札装置にそのまま適用することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、正券余りが残存した場合でも無効客の通行を禁止できるとともに、出場時にトラブルが発生することもなく、しかも構造的な変更を伴わずに簡単に実施できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る自動改札装置を示した概略側面図である。自動改札装置は、通路を挟んで設置された1対の改札装置から構成されるが、ここでは一方の自動改札装置について図示している。自動改札装置100は、本体1と、本体1の側部に取り付けられたプレート2とを有している。本体1の入口側(図の左側)には開閉可能な扉3が設けられており、本体1の出口側(図の右側)には開閉可能な扉4が設けられている。この自動改札装置100は常開タイプであり、扉3と扉4は常時開いた状態となっている。
【0025】
入口側の扉3の上部には、乗客検知用の2個のセンサ5a、5cが設けられており、扉3の下部には、乗客検知用の1個のセンサ5bが設けられている。また、出口側の扉4の上部には、乗客検知用の2個のセンサ6a、6cが設けられており、扉4の下部には、乗客検知用の1個のセンサ6bが設けられている。自動改札装置100と対をなす他方の自動改札装置にも、上記各センサと対応する位置にセンサが設けられており、対をなす各センサは、例えば透過型のフォトセンサから構成される。
【0026】
プレート2の通路の両端部と中央部には、乗客検知用のセンサ9、10、11が設けられており、これらのセンサは、例えば反射型のフォトセンサから構成される。さらに、プレート2のセンサ11の直下には乗客検知用のセンサ7が、また、本体1の扉3および扉4の間には、乗客検知用のセンサ8a〜8cがそれぞれ2個ずつ設けられている。自動改札装置100と対をなす他方の自動改札装置にも、センサ7、8a〜8cと対応する位置にセンサが設けられており、対をなす各センサは、例えば透過型のフォトセンサから構成される。
【0027】
なお、図示は省略するが、本体1の上面には、乗車券が投入される券投入口、乗車券が返却される券返却口、および、乗客に対するメッセージ等を表示する表示部が設けられている。また、本体1の内部には、後述するCPU、記憶部、券処理部、扉開閉部、電源部などが内蔵されている。
【0028】
乗客が自動改札装置100の券投入口(図示省略)に乗車券を投入して、図1の矢印で示す通行方向へ通行する場合、入口側のセンサ5c、9が同時に遮光されると、乗客が自動改札装置100に進入したことが検知される。乗客が通路を右側へ進むと、入口側のセンサ5c、9は遮光状態から透光状態となる。そして、乗客が中央部に至ると、中央部のセンサ7、8b、11が同時に遮光状態となり、これによって乗客が中央部に到達したことが検知される。その後、乗客が出口に向かって進むと、中央部のセンサ7、8b、11は遮光状態から透光状態となり、出口側のセンサ6c、10が同時に遮光状態となると、乗客が出口に至ったことが検知される。そして、乗客が出口から出ると、出口側のセンサ6c、10は遮光状態から透光状態となり、乗客の退出が検知される。
【0029】
図2は、自動改札装置100の電気的構成を示したブロック図である。21は、自動改札装置100の動作全体を制御するCPUである。22は、RAMやROM等のメモリから構成される記憶部であって、RAMの所定領域には、正券カウンタ23が設けられている。24は券処理部であって、乗車券を搬送する搬送機構や、乗車券に対して情報の読み書きを行うヘッド部などから構成される。25は表示部であって、乗客に対するメッセージなどを表示する。26は警報部であって、乗車券が無効であったような場合に、チャイムを鳴らして異常を報知する。27は通行検知部であって、上述した各センサ5a〜5c、6a〜6c、7、8a〜8c、9、10、11から構成される。28は、扉3および扉4の開閉を行う扉開閉部であって、扉開閉用のモータや、モータの駆動回路などから構成される。29は上位装置通信部であって、上位装置である改札機監視盤(図示省略)やホスト装置(図示省略)との間で通信を行う。30は電源部であって、自動改札装置100の各部へ必要な電源を供給する。
【0030】
以上のような自動改札装置100において、CPU21は、本発明における判定手段および制御手段の一実施形態を構成し、通行検知部27(センサ5a〜5c、6a〜6c、7、8a〜8c、9、10、11)は、本発明における検知手段の一実施形態を構成している。
【0031】
次に、自動改札装置100における通行制御につき、図3のフローチャートを参照しながら説明する。図3の手順は、記憶部22のROMに格納されている制御プログラムに従って、CPU21により実行される。なお、図3において、図4と同じ処理を行うステップには、同じ符号を付してある。また、以下の説明では、図1の入口側(左側)から出口側(右側)へ矢印方向に乗客が通行して入場する場合を想定している。
【0032】
処理が開始されると、まず、乗車券が投入されたか否かを監視し(ステップS1)、乗車券が投入されると(ステップS1:YES)、乗車券の有効/無効を判定する(ステップS2)。乗車券が有効であれば(ステップS2:NO)、正券カウンタ23を+1して(ステップS4)、ステップS1に戻り、次客が乗車券を投入するのを待機する。乗車券投入がなければ(ステップS1:NO)、乗客が所定位置を通過したか否かを判定する(ステップS10)。ここでは、所定位置が通路の出口位置、すなわちセンサ6c、10の位置であるとする。この場合、センサ6c、10が共に遮光状態から透光状態へ変化したときに、当該位置の通過が完了したと判定する。なお、所定位置は出口位置に限らず、例えばセンサ8cの位置であってもよい。この場合は、例えば、センサ8cのそれぞれが遮光状態から透光状態へ変化したときに、当該位置の通過が完了したと判定する。
【0033】
所定位置通過がまだであれば(ステップS10:NO)、ステップS1へ戻り、通過が完了すれば(ステップS10:YES)、正券カウンタ23を−1する(ステップS11)。次に、無効券フラグがONか否かを判定する(ステップS12)。乗車券が有効であれば、無効券フラグはOFFであり(ステップS12:NO)、ステップS1へ戻る。このとき、扉4は開状態を維持しているため、乗客は自動改札装置100の出口から退出することができる。以上の動作は、図4の従来の場合と同じである。
【0034】
一方、ステップS2において、乗車券が無効と判定されると(ステップS2:YES)、無効券フラグをONにして(ステップS3)、ステップS5へ進み、正券余りがあるか否かを判定する。前述のように、正券カウンタ23の値が「0」であれば、正券余りはなく、正券カウンタ23の値が「0」でなければ、正券余りがあることになる。先行の乗客の所定位置通過が完了しておれば、正券カウンタ23の値は「0」となっているから、正券余りはないと判定される(ステップS5:NO)。この場合は、出口側の扉4を閉じて(ステップS6)、無効券を投入した乗客(無効客)の通行を禁止する。また、投入された無効券は、そのまま返却口へ放出されるので、放出された無効券が抜き取られるのを待つ(ステップS7)。この無効券には、情報記録や印字等の処理は施されていない。無効券が抜き取られると(ステップS7:YES)、無効客が通路を逆方向へ後退したか否かを判定する(ステップS8)。この判定は、例えばセンサ8a〜8c、5cの出力に基づいて行われる。そして、後退が検知されると(ステップS8:YES)、閉じていた出口側の扉4を開けて(ステップS9)、ステップS1へ戻る。以上の動作も、図4の従来の場合と同じである。
【0035】
本発明の特徴とするところは、ステップS5において、正券余りがあると判定された場合の処理にある。図4(従来の制御)の場合は、無効券が投入されたときに正券余りがあれば、無条件にステップS10へ進んで、通過待ちの処理に移った。これに対して、本実施形態では、無効券が投入されたときに正券余りがあれば(ステップS5:YES)、次に、出口側の扉4の付近に人(先客)がいるか否かを調べる(ステップS5a)。例えば、センサ6a〜6c、8c、10のいずれかが遮光状態となっているときは、扉4付近に先客がいるものと判断し、センサ6a〜6c、8c、10の全てが透光状態となっているときは、扉4付近に先客がいないものと判断する。そして、先客がいなければ(ステップS5a:NO)、正券カウンタ23の値を「0」にして(ステップS5b)、出口側の扉4を閉じる(ステップS6)。これにより、無効券を投入した次客の通行が禁止される。その後のステップS7〜S9の処理については、上述したとおりであるから、ここでは説明を省略する。
【0036】
なお、上述した実施形態では、扉付近に人(先客)がいるか否かの判断(ステップS5a)をセンサ6a〜6c、8c、10の状態に基づいて判断したが、さらに通路の中央付近も先客の存在可能性の範囲に含め、センサ7、8b、11の状態を先客有無の判断要素に加えてもよい。また、扉付近に人(先客)がいるか否かの判断(ステップS5a)にあたって、通路のどこまでの範囲のセンサを用いるかを保守用の設定部において選択変更できるようにしてもよい。
【0037】
このようにすることで、先客が所定位置(ここでは、通路の出口位置)を通過した際に、何らかの原因でセンサ6c、10が先客の通過を検知できなかったことに基因して、正券カウンタ23が正しく減算されずに正券余り(ここでは「1」)が残っていたとしても、扉4の付近に先客がいないことで扉4が閉じるため、次客は無効券で入場することができなくなる。したがって、次客は、投入した乗車券が無効であることを容易に知ることができるから、この券を降車駅の自動改札装置へ投入することはなく、出場時のトラブルを未然に回避することができる。
【0038】
一方、ステップS5の判定において、扉4の付近に先客がいる場合は(ステップS5a:YES)、従来と同様にステップS10へ進んで、この先客が所定位置を通過するのを待つ。そして、先客が所定位置を通過し終わると(ステップS10:YES)、正券カウンタ23を−1する(ステップS11)。このとき、出口側の扉4は開状態を維持しているので、有効券を投入した先客は、出口から退出することができる。
【0039】
次に、無効券フラグがONか否かを判定する(ステップS12)。今の場合は、無効券フラグがONであるから(ステップS12:YES)、出口側の扉4が閉じられる(ステップS13)。このとき、先客はすでに出口から退出しているが、次客(無効客)は、扉4が閉じることで通行が禁止される。図4(従来の制御)の場合は、先客がすでに出口から退出済み(通過入場済み)で出口付近にいなくても、先客の出口通過を検知できなかったことで、ステップS10で先客の通過完了を待ち続けることから、ステップS12での無効券フラグの判定の前に、次客は退出が可能であったが、本実施形態の場合は、ステップS5aで先客が扉付近にいたために、ステップS12で券が無効と判定された時点では、次客はまだ扉4の付近に達していないので、扉4が閉じることによって次客の退出は不可能となる。
【0040】
以上の実施形態では、扉4が常時開いている常開タイプの自動改札装置100を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、扉4が常時閉じている常閉タイプの自動改札装置にも適用することができる。常閉タイプの場合、有効券を投入した乗客に対し扉4を開けて通行を許可するが、乗客の通行が完了した後、一定時間は扉4が開状態を維持する。したがって、この間に次客により無効券が投入され、かつ、正券カウンタ23に余りがあった場合は、上述した常開タイプの場合と全く同じ要領で、次客の通行を禁止することができる。
【0041】
また、上述した実施形態では、乗客が通路出口のセンサ6c、10の位置を通過したときに、正券カウンタ23を減算するようにしたが、本発明はこれに限らず、例えば、扉4の手前にあるセンサ8cの位置を通過したときに、正券カウンタ23を減算するようにしてもよい。
【0042】
さらに、上述した実施形態では、乗車券を券投入口に投入する接触式の自動改札装置100を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、非接触ICカードとの間で通信を行うアンテナを備えた非接触式の自動改札装置、あるいは、接触式と非接触式の両機能を備えたハイブリッド型の自動改札装置にも適用することができる。
【0043】
なお、以上の実施形態では、「正券カウンタ」という名称の1種類のカウンタで制御を行う場合の例を示したが、本発明はこれに限られたものではない。すなわち、カウンタの名称や種類によって、本発明の技術的範囲が制限を受けるものではない。例えば、自動改札装置においては、通行制御用のカウンタの機能を詳細分担したり、複雑な通行制御を実施するため、複数種類の通行制御用のカウンタが設けられる場合がある。従って、名称の異なるカウンタを利用して本発明を実施することも可能である。また、複数のカウンタを関連付けて利用して本発明を実施することも可能である。よって、カウンタの名称や種類が異なっていても、本発明の正券カウンタの機能を備えているものは、「正券カウンタ」の概念に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る自動改札装置を示した概略側面図である。
【図2】自動改札装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】本発明に係る自動改札装置における通行制御の手順を示したフローチャートである。
【図4】従来の自動改札装置における通行制御の手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
3、4 扉
5a〜5c センサ
6a〜6c センサ
7 センサ
8a〜8c センサ
9、10、11 センサ
21 CPU
23 正券カウンタ
27 通行検知部
28 扉開閉部
100 自動改札装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗車媒体が有効か否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて扉の開閉を制御し、乗客の通行を許可または禁止する制御手段と、前記乗客の通行を検知する検知手段と、前記判定手段が乗車媒体を有効と判定した場合に加算動作を行い、乗客が所定位置を通過したことを前記検知手段が検知した場合に減算動作を行う正券カウンタとを備えた自動改札装置において、
前記判定手段により乗車媒体が無効と判定され、かつ、前記正券カウンタの値が0でない場合は、前記検知手段により出口側の扉付近の乗客の有無を検知し、当該乗客が検知されなければ、前記制御手段は扉を閉じて通行を禁止することを特徴とする自動改札装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−48460(P2006−48460A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230164(P2004−230164)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】