説明

自動注湯方法およびその設備

【課題】鋳込み重量が大きくなっても溶解炉や注湯機のサイズを小さくすることができ、なお且つ安定した注湯ができる自動注湯方法およびその設備を提供すること。
【解決手段】未注湯の鋳型Mを、鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向および上下方向に移動させ、鋳型に形成された湯口と、注湯機Cの出湯口との位置合わせを鋳型搬送装置Aから送信される鋳型データに基づいて行うとともに、重量測定装置により鋳型へ注湯された注湯量を計測することにより、注湯機からの注湯量の制御を行う注湯方法および注湯設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未注湯の鋳型に溶湯を注湯する自動注湯方法およびその設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温の溶湯を鋳型に注湯する方法としては、注湯の際に、鋳型に形成された湯口の位置に合わせて取鍋を移動させる方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、取り廻し装置が注湯ラインの上部に、XYZの3軸に位置制御可能に設けられており、小取鍋が、鋳型の上方でXYZ方向に位置決め可能にされている。この位置決めは、X方向(鋳型送り方向)については湯口位置検出手段からの位置情報に基づき行い、Y方向(鋳型送り方向と直交する方向)については、対象鋳型固有値によりあらかじめ位置情報をセットしておくことにより行う。このように位置決めを行い、小取鍋の溶湯流出口と鋳型の湯口を連接し、注湯を行う。
【0004】
また、特許文献2は、鋳型に設けられた湯口位置に対応するマークを検出し、マーク検出センサーの取り付け位置を基準として、個々の鋳型マーク位置と鋳型停止時位置を記憶して注湯対象鋳型の湯口位置を算出する。そして、算出された湯口位置制御情報に基づき、鋳型送り方向に対して所定範囲で移動自在に設けられた自動注湯装置を、位置決め制御するものである。
【0005】
また、特許文献3は、鋳型を水平方向(鋳型送り方向)に移動させて鋳型の位置を制御する一方、取鍋を鋳型の移動方向と直角方向に移動制御し、注湯を行う方法を開示している。なお、特許文献3では、湯口位置の検出は、湯口読み取りセンサーにより行っている。
【0006】
上記の特許文献はいずれも、湯口を鋳型の任意の場所に設ける場合には、取鍋を鋳型の移動方向もしくは鋳型の移動方向に直交する方向、またはその両方に移動させることが不可欠である。例えば特許文献3では、鋳型の位置を制御することにより取鍋と鋳型の位置を合わせる旨が開示されているが、鋳型はその移動方向および前後方向(図2のA方向およびE方向)にしか動かすことができないため、湯口の位置が鋳型の移動方向に対して直交方向にずれている場合には、取鍋を動かすことにより取鍋と湯口の位置を合わせることが不可欠である。
【0007】
このように、鋳型や湯口の位置に合わせて溶解炉や注湯機(取鍋)の位置を移動して注湯する場合には、鋳込み重量が大きくなるのに伴い、溶解炉や注湯機も大型にする必要がある。そのため、注湯機等の製作コストが高くなり、また設置スペースも大きくなるという問題があった。また、注湯機を移動させると、取鍋内で溶湯が波打ち、取鍋が侵食され、取鍋の寿命が短くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−174229号公報
【特許文献2】特開平9−164473号公報
【特許文献3】特開平11−342463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、鋳込み重量が大きくなっても溶解炉や注湯機のサイズを小さくすることができ、なお且つ安定した注湯ができる自動注湯方法およびその設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明は、未注湯の鋳型を、鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向に移動させ、鋳型に形成された湯口と、注湯機の出湯口との位置合わせを行う注湯方法を提供する。このような注湯方法とすることにより、注湯機(取鍋)を湯口の位置に合わせて移動させる必要がなくなるため、鋳込み重量が大きくなった場合でも、注湯機や溶解炉のサイズを小さくすることができる。
【0011】
また、本発明の前記注湯方法は、未注湯の鋳型を上下方向にさらに移動させて鋳型に形成された湯口と注湯機の出湯口との位置合わせを行う注湯方法としても良い。このような注湯方法とすることにより、注湯される鋳型の高さが区々であっても、正確に、鋳型の湯口と注湯機の出湯口との位置を合わせることができる。
【0012】
また、本発明の前記注湯方法は、重量測定装置により注湯量を計測することにより、注湯機からの注湯量の制御を行う注湯方法としても良い。このような注湯方法とすることにより、注湯重量を計測しながら注湯を行うことができ、出湯量の無駄をなくすことができる。
【0013】
また、本発明の前記注湯方法は、鋳型に形成された湯口と注湯機の出湯口との位置合わせは、造型された鋳型を搬送する鋳型搬送装置から送信される鋳型データに基づいて行う注湯方法としても良い。このような注湯方法とすることにより、湯口位置や鋳型高さ、鋳込み重量といったデータに基づき、注湯機の出湯流線に合わせて鋳型位置を制御することができ、注湯時に溶湯が湯口からこぼれたり飛散したりすることを防ぐことができる。
【0014】
さらに、上記の目的を達成するために本発明は、造型された鋳型を搬送する鋳型搬送装置と、未注湯の鋳型を鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向に移動させる鋳型位置制御装置と、該鋳型位置制御装置に対向するように設けられ、未注湯の鋳型に溶湯を注湯する注湯機とを備え、前記未注湯の鋳型を、前記鋳型位置制御装置により、鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向に移動させ、鋳型に形成された湯口と前記注湯機の出湯口との位置合わせを行う注湯設備を提供する。これにより、注湯機(取鍋)を湯口の位置に合わせて移動させる必要がなくなるため、鋳込み重量が大きくなった場合でも、取鍋や溶解炉のサイズを小さくすることができる。
【0015】
また、本発明の上記注湯設備は、前記鋳型位置制御装置が、前記未注湯の鋳型を上下方向にさらに移動させることができ、前記未注湯の鋳型を、鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向および上下方向に移動させて、鋳型に形成された湯口と前記注湯機の出湯口との位置合わせを行う注湯設備としても良い。これにより、造型される鋳型の高さが区々であっても、正確に、鋳型の湯口と注湯機の出湯口との位置を合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の注湯設備の平面図である。
【図2】本発明の鋳型位置制御装置の詳細を示す側面断面図である。
【図3】本発明の注湯設備の側面断面図である。
【図4】本発明の注湯設備の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。図1に示すように、本発明の注湯設備は、鋳型搬送装置Aと、鋳型位置制御装置Bと、注湯機Cとを備える。本実施例では、鋳型搬送装置Aとしてローラーコンベヤを使用しており、造型機で造型された鋳型は、プッシャーシリンダ(図示せず)により、図1の左から右方向へ連続的に搬送される。なお、注湯機Cにより注湯が完了した鋳型は、鋳型搬送装置Aによりトラバーサ1に搬送され、鋳型搬出ライン2に移し替えられた後、次工程へと搬送される。
【0018】
鋳型位置制御装置Bは、本実施例では、鋳型搬送装置Aと直交するように設けられ、図2に示すように、鋳型搬送装置Aの下部に固定されたフレーム3と、フレーム3上を鋳型の搬送方向と直交する方向(以下、Y方向という。)に走行可能な前後移動台車4と、前後移動台車4を駆動させる前後駆動装置5と、前後移動台車4の先端に固定され、重量測定装置を備えた計量フレーム6と、計量フレーム6上を、レール7を介して鋳型の搬送方向と平行な方向(以下、X方向という。)に走行可能な左右移動台車8と、左右移動台車8を駆動させる左右駆動装置9で構成されている。なお、左右移動台車8には鋳型走行用レール10が取り付けられており、鋳型走行用レール10上には、定盤11を介して鋳型Mが載置されている。
【0019】
このように構成された鋳型位置制御装置Bは、まず、鋳型搬送装置Aにより搬送されてきた鋳型Mを、前後移動台車4により、鋳型制御装置Bに対向するように設けられた注湯機Cの前に移動させる。なお、図2は、鋳型が注湯機前に移動させられる前の状態を示し、図3は、鋳型が注湯機前に移動させられた後の状態を示している。そして、注湯機前に移動した鋳型Mを、左右移動台車8により、X方向に移動させることにより、鋳型Mの湯口M1を、注湯機Cの出湯位置に合わせる。本実施例では、前後移動台車4によるY方向への移動量および左右移動台車8によるX方向への移動量は、鋳型搬送装置Aから送られてくる鋳型データ(ここでは、湯口位置に関するデータ)に基づいて決定される。
【0020】
また、鋳型位置制御装置Bには、左右移動台車8を上下方向にさらに移動させる機構を備えてもよい。そのような機構としては、左右移動台車8を上下方向に移動させられるものであれば何でもよく、例えば、フレーム3の下方にパンタグラフ式のリフターを備えることができる(この場合、フレーム3はリフターに固定されることになる)。ここで、鋳型の上下方向の移動も、X方向、Y方向への移動と同様、鋳型搬送装置Aから送られてくる鋳型データに基づいて行うことができ、その場合は、鋳型データには鋳型高さに関するデータが含まれる。
【0021】
なお、本実施例では前記重量測定装置としてロードセルを使用している。重量測定装置を備えることにより鋳型に注湯した注湯量を計測しながら注湯機からの注湯量を制御することができ、この場合、前記鋳型データには鋳込み重量に関するデータが含まれる。
【0022】
次に、本実施例における注湯機Cについて説明する。注湯機Cは、図3および図4に示すように、取鍋12と、傾動シリンダー13と、傾動中心軸14とを備えており、傾動シリンダー13を伸長させることにより、取鍋12を傾動中心軸14を中心に傾動させ、注湯を行う。
【0023】
また、注湯機Cは、図1に示すように、鋳型位置制御装置Bに対向するように設けられており、また鋳型位置制御装置Bに対して固定された位置に設けられているため、注湯機Cあるいは取鍋12を鋳型に対して移動させる機構は不要である。なお、本実施例では、注湯機Cの取鍋12は、溶解炉としての機能も備えている。そのため、注湯機Cとは別に溶解炉を設ける必要はなく、また溶解炉から取鍋12に溶湯を補給するための装置(クレーン等によって搬送される溶湯搬送取鍋など)を設ける必要がないため、注湯設備全体を簡素化することが可能である。
【0024】
もちろん、本発明における注湯機はこのような傾動式注湯機に限定されることはなく、例えばストッパ式など、あらゆる注湯機が使用可能である。
【0025】
以上の通り本発明では、鋳型を注湯機に対して移動させることにより、湯口と出湯口との位置合わせを行うため、注湯機を移動させる必要がなく、注湯機をコンパクトにすることができる。また、注湯機を移動させないため、取鍋内で溶湯が波打ち、取鍋が侵食されることもないため、取鍋の寿命を長くすることができる。
【0026】
以上、本発明による代表的実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことは可能である。
【符号の説明】
【0027】
A 鋳型搬送装置
B 鋳型位置制御装置
C 注湯機
M 鋳型
4 前後移動台車
6 計量フレーム
8 左右移動台車
12 取鍋
13 傾動シリンダー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未注湯の鋳型を、鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向に移動させ、鋳型に形成された湯口と、注湯機の出湯口との位置合わせを行う注湯方法。
【請求項2】
請求項1記載の注湯方法において、未注湯の鋳型を上下方向にさらに移動させて鋳型に形成された湯口と注湯機の出湯口との位置合わせを行う注湯方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の注湯方法において、重量測定装置により鋳型へ注湯された注湯量を計測することにより、注湯機からの注湯量の制御を行う注湯方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の注湯方法において、鋳型に形成された湯口と注湯機の出湯口との位置合わせは、造型された鋳型を搬送する鋳型搬送装置から送信される鋳型データに基づいて行う注湯方法。
【請求項5】
造型された鋳型を搬送する鋳型搬送装置と、未注湯の鋳型を鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向に移動させる鋳型位置制御装置と、該鋳型位置制御装置に対向するように設けられ、未注湯の鋳型に溶湯を注湯する注湯機とを備え、前記未注湯の鋳型を、前記鋳型位置制御装置により、鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向に移動させ、鋳型に形成された湯口と前記注湯機の出湯口との位置合わせを行う注湯設備。
【請求項6】
請求項5記載の注湯設備において、前記鋳型位置制御装置は、前記未注湯の鋳型を上下方向にさらに移動させることができ、前記未注湯の鋳型を、鋳型の搬送方向と平行な方向および鋳型の搬送方向に直交する方向および上下方向に移動させて、鋳型に形成された湯口と前記注湯機の出湯口との位置合わせを行う注湯設備
【請求項7】
請求項5または6記載の注湯設備において、重量測定装置により鋳型へ注湯された注湯量を計測することにより、注湯機からの注湯量の制御を行う注湯設備。
【請求項8】
請求項5または6記載の注湯設備において、鋳型に形成された湯口と注湯機の出湯口との位置合わせは、前記鋳型搬送装置から送信される鋳型データに基づいて行う注湯設備。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−16708(P2012−16708A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153609(P2010−153609)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【出願人】(391020492)藤和電気株式会社 (11)
【Fターム(参考)】