自動演奏装置及びその制御方法
【課題】 アクチュエータ(ソレノイド)の発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度を実現することができる自動演奏装置を提供することを課題とする。
【解決手段】鍵を有する鍵盤(110)と、鍵を駆動するためのアクチュエータ(109)と、自動演奏データ及び過去の制御に応じてアクチュエータを制御するための制御部(102,105,108)とを有する自動演奏装置が提供される。また、鍵を有する鍵盤(110)と、鍵を駆動するためのアクチュエータ(109)と、アクチュエータによる鍵の駆動速度を検出するタッチ検出部(106)と、自動演奏データに応じてアクチュエータを制御するための制御部(102,105,108)とを有し、制御部は、過去の自動演奏データ及びそれに対応した駆動により検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う自動演奏装置が提供される。
【解決手段】鍵を有する鍵盤(110)と、鍵を駆動するためのアクチュエータ(109)と、自動演奏データ及び過去の制御に応じてアクチュエータを制御するための制御部(102,105,108)とを有する自動演奏装置が提供される。また、鍵を有する鍵盤(110)と、鍵を駆動するためのアクチュエータ(109)と、アクチュエータによる鍵の駆動速度を検出するタッチ検出部(106)と、自動演奏データに応じてアクチュエータを制御するための制御部(102,105,108)とを有し、制御部は、過去の自動演奏データ及びそれに対応した駆動により検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う自動演奏装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動演奏装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動演奏ピアノに代表される自動演奏装置は、ソレノイド(アクチュエータ)で鍵盤を駆動することにより自動演奏を実現している。しかし、ソレノイドは通電によって発熱し、この発熱によって駆動能力が低下してしまう。このことは、特に弱音において影響が大きく、駆動能力の低下によって発音するまでに至らないという場合もある。これを避けるために弱音を強めに設定しておいて駆動能力が低下した場合でも発音できる様にしておくことが考えられる。しかし、その場合は、強弱のダイナミックレンジを狭めてしまう。
【0003】
また、下記の特許文献1には、プランジャの特性誤差を補正するために打鍵強度データを補正するピアノ自動演奏装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−12061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソレノイドが発熱すると、駆動能力が低下してしまう。そのため、自動演奏では、同じ押鍵強度(速度)を指示しても、発熱前では強い押鍵がなされ、発熱後では弱い押鍵がなされてしまう。結果として、自動演奏データに応じた忠実な押鍵強度を実現することができない。
【0006】
本発明の目的は、アクチュエータ(ソレノイド)の発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度を実現することができる自動演奏装置及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動演奏装置は、鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータと、自動演奏データ及び過去の制御に応じて前記アクチュエータを制御するための制御部とを有する。
【0008】
また、本発明の自動演奏装置は、鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータと、前記アクチュエータによる前記鍵の駆動速度を検出するタッチ検出部と、自動演奏データに応じて前記アクチュエータを制御するための制御部とを有し、前記制御部は、過去の前記自動演奏データ及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う。
【0009】
また、本発明の自動演奏装置の制御方法は、鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータとを有する自動演奏装置の制御方法であって、自動演奏データ及び過去の制御に応じて前記アクチュエータを制御する制御ステップを有する。
【0010】
また、本発明の自動演奏装置の制御方法は、鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータとを有する自動演奏装置の制御方法であって、前記アクチュエータによる前記鍵の駆動速度を検出するタッチ検出ステップと、自動演奏データに応じて前記アクチュエータを制御する制御ステップとを有し、前記制御ステップは、過去の前記自動演奏データ及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
アクチュエータの発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による自動演奏装置の構成例を示すブロック図である。自動演奏装置は、例えば自動演奏ピアノである。バス101には、CPU102、ROM103、RAM104、PWM(パルス幅変調)ジェネレータ105、及びタッチ検出部106を有する。CPU102は、ROM103内のコンピュータプログラムに応じて、後に説明する図10〜図13、図15の処理等を行う。鍵盤110は、演奏操作のための複数の鍵を有する。タッチ検出部106は、鍵盤110の鍵の押鍵速度(強度)を検出する。CPU102は、インタフェース(I/F)107を介して、外部に対して自動演奏データ(MIDIデータ)を入出力することができる。また、CPU102は、ROM103から自動演奏データを読み出して入力することができる。次に、CPU102は、入力した自動演奏データに応じて、PWMジェネレータ105にパルスのデューティ比を定期的に指示する。PWMジェネレータ105は、指示されたデューティ比のパルスを生成し、ドライバ108に対してパルス幅変調制御を行う。ドライバ108は、PWMジェネレータ105からパルスを入力し、ソレノイド109を駆動する。ソレノイド(アクチュエータ)109は、鍵盤110の各鍵に設けられ、鍵を機械的に押鍵及び離鍵させるように駆動する。鍵盤110の各鍵の押鍵により、ハンマが弦を叩き、発音する。
【0013】
図2は、鍵盤の鍵201、ソレノイド109、ハンマ203及びアクション204を示す図である。マニュアル演奏では、演奏者が鍵201を矢印211の方向に押鍵すると、点205を支点として、アクション204が動き、ハンマ203が矢印213の方向に動いて弦を叩く。また、自動演奏では、ソレノイド109が矢印212の方向に動くと、アクション204が動き、ハンマ203が矢印213の方向に動いて弦を叩く。
【0014】
図3は、3種類のソレノイド109の吸引特性例を示すグラフである。横軸はソレノイド109のストロークを示し、縦軸はソレノイド109の吸引力(駆動力)を示す。ストロークの0は、ソレノイド109の可動部301が最上端に位置し、押鍵状態を示す。ストロークの最大(max)は、ソレノイド109の可動部302が最下端に位置し、離鍵状態を示す。ソレノイド109は、ストロークに応じて、吸引力が異なる。
【0015】
図4は、図1のドライバ108の回路構成例を示す図である。npnトランジスタ401は、ベースが入力端子403に接続され、コレクタがソレノイド109に接続され、エミッタがグランドに接続される。ソレノイド109は、トランジスタ401のコレクタ及び電源電圧V間に接続される。ダイオード402は、アノードがソレノイド109に接続され、カソードが電源電圧Vに接続される。入力端子403には、PWMジェネレータ105で生成されたパルス信号が入力される。トランジスタ401はパルス信号がローレベルになるとオフし、ソレノイド109には電流が流れず、吸引力が働かない。吸引力が全く働かない状態では、図3において、ソレノイド109の可動部302が最下端に位置する。トランジスタ401はパルス信号がハイレベルになるとオンし、ソレノイド109に電流が流れ、吸引力が働く。吸引力が十分に働く状態では、図3において、ソレノイド109の可動部301が最上端に位置する。
【0016】
図5は、図4の入力端子403に入力されるパルス信号を示す図である。PWMジェネレータ105は、指示されたデューティ比に応じて、例えば、デューティ比が小さいパルス信号A1又はデューティ比の大きいパルス信号A2を生成する。パルス信号A1及びA2は、周期が同じである。
【0017】
図6(A)〜(D)は、時間に対するデューティ比エンベロープ601及びストロークエンベロープ602を示す図である。PWMジェネレータ105がデューティ比エンベロープ601のパルス信号を生成すると、ソレノイド109はストロークエンベロープ602のストロークを実現することができる。ストロークエンベロープ602は、立ち上がりが鍵盤110の押鍵に対応し、立ち下がりが鍵盤110の離鍵に対応する。デューティ比エンベロープ601は、所定時間間隔のエンベロープフェーズ単位で構成される。
【0018】
DCソレノイド109には、指示されたデューティ比のPWM信号が入力される。このデューティ比を変更することにより、電力を制御することができる。図3に示すように、ソレノイド109の吸引力特性は一定電力であってもストロークによって駆動能力が異なる。自動演奏装置では、図6(A)〜(D)に示すように、多段階でデューティ比(電力)を経過時間に応じて変更し、無駄な電力を抑えることができる。しかし、それによっても、ソレノイド109の発熱は免れない。発熱量が多くなると、ソレノイド109の駆動能力が低下する。
【0019】
CPU102は、インタフェース107を介して、外部よりノートオン/オフ、ボリューム等の自動演奏データを入力する。ノートオンは押鍵、ノートオフは離鍵を示す。CPU102は、自動演奏データを基に演算し、ROM103又はRAM104に記憶されたパラメータを選択し、それを修正した結果のデューティ比を示す値をPWMジェネレータ105に書き込む。PWMジェネレータ105は、特定のエリアに値が書き込まれると、その値に応じたPWM信号を生成し、その書き込んだエリアに対応する出カボートから出力する。ドライバ108は、入力されたPWM信号を基にソレノイド109を駆動する。
【0020】
図8は、ROM103の記憶内容を示す図である。ROM103は、デューティ比エンベロープテーブル801、微調整テーブル802、デューティ比−補正係数変換テーブル803、及び演算係数変換テーブル804を記憶する。
【0021】
デューティ比エンベロープテーブル801は、図6(A)〜(D)のように、デューティ比を示す値(デューティ比値)と付与時間が複数組記載されたデューティ比の時間変化パラメータを記憶し、鍵盤のキーナンバ(音高)及び押鍵速度(強さ)を再現できる以上に多数を記憶している。なお、デューティ比エンベロープテーブル801は、数式によって計算してもよい。
【0022】
微調整テーブル802は、キーナンバ毎の微調整係数を記憶し、鍵盤110の鍵毎のばらつきを補正するための値である。デューティ比−補正係数変換テーブル803は、デューティ比毎に補正係数を記憶する。演算係数変換テーブル804は、キーナンバ毎の演算係数を記憶する。
【0023】
図9は、RAM104の記憶内容を示す図である。RAM104は、温度補正テーブル901、発音チャンネル情報902、及びボリューム903を記憶する。温度補正テーブル901は、キーナンバ毎の温度補正係数を記憶する。発音チャンネル情報902は、キーナンバ毎のキーオンフラグ、エンベロープフェーズ、エンベロープ時間カウント値、デューティ比エンベロープ選択番号等を含む。ボリューム903は、自動演奏データにより指定される全キーナンバ共通のボリューム(音量)情報である。
【0024】
図10は、自動演奏装置のノートオン処理を示すフローチャートである。自動演奏データとしてノートオン(キーオン)信号が入力されると、以下の処理を行う。ノートオン信号は、キーナンバ及びベロシティ(押鍵速度)の情報を含む。
【0025】
ステップS1001では、上記のベロシティを基に次式により強さインデックスIndを計算する。
Ind=(Vel+Ka[KN])×Vol×Kb[KN]×Kc
【0026】
ここで、強さインデックスIndは、図8のデューティ比エンベロープテーブル801の強さ(アドレス)を示す。Velは、自動演奏データのベロシティである。Ka[KN]は、図9の温度補正テーブル901内のキーナンバ(自動演奏データ)KNに対応する温度補正係数である。Volは、図9の自動演奏データのボリューム903である。Kbは、図8の微調整テーブル802内のキーナンバ(自動演奏データ)KNに対応する微調整係数である。Kcは、アドレス変換係数であり、補正されたベロシティを図8のデューティ比エンベロープテーブル801のアドレスに変換するための係数である。
【0027】
ソレノイド109の発熱により温度が上昇すると、ソレノイド109の駆動能力が低下する。その結果、自動演奏データのベロシティに比べ、その自動演奏データにより自動演奏された押鍵強さが弱くなる。本実施形態では、その場合、温度補正係数Ka[KN]により強さインデックスIndを強めに補正する。これにより、自動演奏装置は、自動演奏データに忠実な押鍵強さを実現することができる。温度補正係数Ka[KN]の演算方法は、後に図12を参照しながら説明する。
【0028】
次に、ステップS1002では、図8のデューティ比エンベロープテーブル801を参照し、上記で演算された強さインデックスInd及びキーナンバ(自動演奏データ)KNを基に、デューティ比エンベロープを選択する。
【0029】
次に、ステップS1003では、図9の発音チャンネル情報902内のキーオンフラグを1にし、上記の選択されたディーティ比エンベロープを発音チャンネル情報902内に設定する。その結果、デューティ比エンベロープが起動される。以上で、処理が終了する。
【0030】
図11は、自動演奏装置のノートオフ処理を示すフローチャートである。自動演奏データとしてノートオフ(キーオフ)信号が入力されると、以下の処理を行う。ノートオフ信号は、キーナンバの情報を含む。ステップS1101では、ノートオフが指示されたキーナンバについて、デューティ比エンベロープのリリースフェーズに移行する。リリースフェーズは、図6(A)〜(D)において、ストロークエンベロープ602の立ち下がり(ノートオフ)に対応するデューティ比エンベロープのフェーズである。以上で、処理を終了する。
【0031】
図12は、温度補正処理を示すフローチャートである。温度補正処理は、タイマ割り込み処理により、所定時間間隔で行われる。ステップS1201では、鍵毎の温度補正係数Ka[KN]を計算する。その詳細は、後に図7を参照しながら説明する。以上で、処理を終了する。
【0032】
図7は、図12のステップS1201の処理を説明するための図である。入力信号INは、現在のデューティ比である。乗算器701は、デューティ比INに係数Kdを乗算して出力する。加算器702は、乗算器701及び702の出力値を加算して温度補正係数Ka[KN]を出力する。遅延器703は、温度補正係数Ka[KN]を1エンペロープフェーズ分遅延させる。乗算器704は、遅延器703の出力値に係数Kfを乗算して出力する。図7は、ローパルフィルタの機能を有し、デューティ比INをエンベロープフェーズ単位で(一定時間毎に)入力し、温度補正係数Ka[KN]を出力する。
【0033】
具体的には、次式により、温度補正係数Ka[KN]を求めることができる。
Ka[KN]=Kd[IN]+Ke[KN]×Kf[KN]
【0034】
ここで、Kd[IN]は、図7の係数Kdに対応し、図8のディーティ比−補正係数変換テーブル803内の、デューティ比INに応じた補正係数である。Ke[KN]は、図7の遅延器703に対応し、1フェーズ前(前回)の温度補正係数Ka[KN]である。Kf[KN]は、図7の係数Kfに対応し、図8の演算係数変換テーブル804内のキーナンバKNに応じた演算係数である。
【0035】
なお、演算方法はこれに限らす、例えばZ-1の値と現在値の大小に応じて式を変更してもよい。
【0036】
図13は、自動演奏装置のエンベロープ処理を示すフローチャートである。ステップS1301では、所定時間が経過したか否かを判定する。経過していればステップS1302へ進み、経過していなければ処理を終了する。ステップS1302では、次のエンベロープフェーズに移行する。次に、ステップS1303では、エンベロープの終了か否かを判定する。終了でなければステップS1304へ進み、終了であればステップS1305へ進む。
【0037】
ステップS1304では、図10のステップS1002で選択されたデューティ比エンベロープを基に、PWMジェネレータ105へ現在のフェーズのデューティ比を書き込む。その後、処理を終了する。そして、他の処理後、再び、図13の処理が行われる。
【0038】
ステップS1305では、PWMジェネレータ105へデューティ比として0を書き込む。次に、図9の発音チャンネル情報902内のキーオンフラグを0にする。これにより、ソレノイド109は、鍵盤110の鍵駆動を終了する。その後、処理を終了する。そして、他の処理後、再び、図13の処理が行われる。
【0039】
以上のように、発音開始する際にキーオン(発音)フラグをオン(1)にし、エンベロープフェーズに1を書き込み、時間情報、エンベロープパラメータ番号を各々該当するメモリに書き込む。CPU102は、一定時間毎にカウントし、発音開始からデューティ比エンベロープパラメータに記載された時間が過ぎると、エンベロープフェーズの値に1を加算し、パラメータ番号とフェーズ番号から、次のフェーズのパラメータを読み出し、PWMジェネレータ105に書き込み、次のフェーズに移行し、デューティ比を変更する。設定された最大フェーズ数を過ぎる、又はノートオフ信号が入力された場合、CPU102は、PWMジェネレータ105にデューティ比として0を書き込み、キーオンフラグをオフ(0)にして発音を終了する。
【0040】
本実施形態によれば、CPU102は、PWM変調制御によりソレノイド109を制御する際、自動演奏データ及び過去のPWM制御のデューティ比に応じて今回のPWM変調を制御する。また、CPU102は、一定時間(エンベロープフェーズ)毎にデューティ比を指定してPWM制御を行い、かつ過去の一定時間毎のデューティ比に応じて今回の制御を行う。
【0041】
ディーティ比が大きければ、ソレノイド109の消費電力量が多くなり、発熱量が多くなる。その場合は、温度補正係数Ka[KN]を大きくして、押鍵強さが強くなるように補正する。これにより、ソレノイド109の発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度(強さ)を実現することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態による自動演奏装置の基本的構成は、第1の実施形態(図1)と同じである。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。具体的には、本実施形態は、図10のステップS1001の強さインデックスIndの計算方法が異なる。
【0043】
図14は、図1のRAM104の記憶内容を示す図である。RAM104は、図9のものに比べ、さらにタッチ補正テーブル1401を記憶する。タッチ補正テーブル1401は、キーナンバに応じたタッチ補正係数を記憶する。
【0044】
図15は、自動演奏装置のタッチ検出処理を示すフローチャートである。上記の自動演奏により、ソレノイド109は、鍵盤110の鍵を駆動する。タッチ検出部106は、その駆動された鍵のキーナンバの押鍵速度を検出する。押鍵速度が検出されると、以下の処理を行う。ステップS1501では、そのキーナンバKNのタッチ補正を行い、図14のタッチ補正テーブル1401にタッチ補正係数Kg[KN]を書き込む。具体的には、タッチ検出部106が検出した押鍵速度と自動演奏データ内の押鍵速度(ベロシティ)とを比較する。検出された押鍵速度が自動演奏データ内の押鍵速度よりも小さいときには、タッチ補正テーブル1401内のそのキーナンバKNのタッチ補正係数Kg[KN]をインクリメント(1加算)する。逆に、検出された押鍵速度が自動演奏データ内の押鍵速度よりも小さいときには、タッチ補正テーブル1401内のそのキーナンバKNのタッチ補正係数Kg[KN]をデクリメント(1減算)する。また、検出された押鍵速度が自動演奏データ内の押鍵速度と同じときには、タッチ補正テーブル1401内のそのキーナンバKNのタッチ補正係数Kg[KN]を変更しない。
【0045】
図10のステップS1001では、自動演奏データのベロシティVelを基に次式により強さインデックスIndを計算する。
Ind=(Vel+Kg[KN])×Vol×Kb[KN]×Kc
【0046】
ここで、Kg[KN]は、上記のキーナンバKNのタッチ補正係数である。Vol、Kb[KN]及びKcは、第1の実施形態と同じである。
【0047】
また、次式により、強さインデックスIndを求めてもよい。
Ind=(Vel×Vol×Kb[KN]×Kc)+Kg[KN]
【0048】
自動演奏装置は、タッチ検出部106を有する。タッチ検出は、方法に関わらずMIDIのベロシティを検出できる程度であればよい。PWMジェネレータ105は、自動演奏データのノートオン信号に従ってPWM信号を生成し、ソレノイド109を駆動する。この駆動によって、鍵盤110の鍵は押鍵動作する。タッチ検出部106は、その押鍵の押鍵速度を検出する。CPU102は、ノートオン信号のベロシティ情報とタッチ検出部106で検出したベロシティとを比較し、検出した値が小さければ+1を、大きければ−1を、キーナンバ毎又はベロシティ値毎に設けられたタッチ補正テーブル1401の該当するエリアの値に加算する。このテーブル1401は、不揮発性のメモリに記憶され、以降の発音ではパラメータ選択時にこの値を加えてベロシティVelを補正する。タッチ補正係数Kg[KN]は、ノートオン信号のベロシティと検出したベロシティとの差分に係数を乗じた値をテーブル1401の該当エリアに加算して書き込むという方法でもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、ソレノイド109は、鍵盤110の鍵を駆動する。タッチ検出部106は、ソレノイド109による鍵の駆動速度を検出する。CPU102は、自動演奏データに応じてソレノイド109を制御する際、過去の自動演奏データ(押鍵速度データ)及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う。具体的には、CPU102は、過去の押鍵速度データとそれに対応する検出された駆動速度とを比較し、その比較結果に応じて今回の制御を行う。過去の検出された駆動速度が押鍵速度データよりも小さいときには、鍵の駆動速度が大きくなるように補正して制御を行う。過去の検出された駆動速度が押鍵速度データよりも大きいときには、鍵の駆動速度が小さくなるように補正して制御を行う。
【0050】
前回のベロシティの比較結果に応じて、今回のベロシティを決定することにより、適切なベロシティの補正を行うことができる。これにより、ソレノイド109の発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度を実現することができる。
【0051】
第1及び第2の実施形態は、図1のCPU102のコンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びコンピュータプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0052】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態による自動演奏装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】鍵盤の鍵、ソレノイド、ハンマ及びアクションを示す図である。
【図3】3種類のソレノイドの吸引特性例を示すグラフである。
【図4】図1のドライバの回路構成例を示す図である。
【図5】図4の入力端子に入力されるパルス信号を示す図である。
【図6】図6(A)〜(D)は時間に対するデューティ比エンベロープ及びストロークエンベロープを示す図である。
【図7】図12のステップS1201の処理を説明するための図である。
【図8】ROMの記憶内容を示す図である。
【図9】RAMの記憶内容を示す図である。
【図10】自動演奏装置のノートオン処理を示すフローチャートである。
【図11】自動演奏装置のノートオフ処理を示すフローチャートである。
【図12】温度補正処理を示すフローチャートである。
【図13】自動演奏装置のエンベロープ処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態のRAMの記憶内容を示す図である。
【図15】自動演奏装置のタッチ検出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
101 バス
102 CPU
103 ROM
104 RAM
105 PWMジェネレータ
106 タッチ検出部
107 インタフェース
108 ドライバ
109 ソレノイド
110 鍵盤
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動演奏装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動演奏ピアノに代表される自動演奏装置は、ソレノイド(アクチュエータ)で鍵盤を駆動することにより自動演奏を実現している。しかし、ソレノイドは通電によって発熱し、この発熱によって駆動能力が低下してしまう。このことは、特に弱音において影響が大きく、駆動能力の低下によって発音するまでに至らないという場合もある。これを避けるために弱音を強めに設定しておいて駆動能力が低下した場合でも発音できる様にしておくことが考えられる。しかし、その場合は、強弱のダイナミックレンジを狭めてしまう。
【0003】
また、下記の特許文献1には、プランジャの特性誤差を補正するために打鍵強度データを補正するピアノ自動演奏装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−12061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソレノイドが発熱すると、駆動能力が低下してしまう。そのため、自動演奏では、同じ押鍵強度(速度)を指示しても、発熱前では強い押鍵がなされ、発熱後では弱い押鍵がなされてしまう。結果として、自動演奏データに応じた忠実な押鍵強度を実現することができない。
【0006】
本発明の目的は、アクチュエータ(ソレノイド)の発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度を実現することができる自動演奏装置及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動演奏装置は、鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータと、自動演奏データ及び過去の制御に応じて前記アクチュエータを制御するための制御部とを有する。
【0008】
また、本発明の自動演奏装置は、鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータと、前記アクチュエータによる前記鍵の駆動速度を検出するタッチ検出部と、自動演奏データに応じて前記アクチュエータを制御するための制御部とを有し、前記制御部は、過去の前記自動演奏データ及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う。
【0009】
また、本発明の自動演奏装置の制御方法は、鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータとを有する自動演奏装置の制御方法であって、自動演奏データ及び過去の制御に応じて前記アクチュエータを制御する制御ステップを有する。
【0010】
また、本発明の自動演奏装置の制御方法は、鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータとを有する自動演奏装置の制御方法であって、前記アクチュエータによる前記鍵の駆動速度を検出するタッチ検出ステップと、自動演奏データに応じて前記アクチュエータを制御する制御ステップとを有し、前記制御ステップは、過去の前記自動演奏データ及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
アクチュエータの発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による自動演奏装置の構成例を示すブロック図である。自動演奏装置は、例えば自動演奏ピアノである。バス101には、CPU102、ROM103、RAM104、PWM(パルス幅変調)ジェネレータ105、及びタッチ検出部106を有する。CPU102は、ROM103内のコンピュータプログラムに応じて、後に説明する図10〜図13、図15の処理等を行う。鍵盤110は、演奏操作のための複数の鍵を有する。タッチ検出部106は、鍵盤110の鍵の押鍵速度(強度)を検出する。CPU102は、インタフェース(I/F)107を介して、外部に対して自動演奏データ(MIDIデータ)を入出力することができる。また、CPU102は、ROM103から自動演奏データを読み出して入力することができる。次に、CPU102は、入力した自動演奏データに応じて、PWMジェネレータ105にパルスのデューティ比を定期的に指示する。PWMジェネレータ105は、指示されたデューティ比のパルスを生成し、ドライバ108に対してパルス幅変調制御を行う。ドライバ108は、PWMジェネレータ105からパルスを入力し、ソレノイド109を駆動する。ソレノイド(アクチュエータ)109は、鍵盤110の各鍵に設けられ、鍵を機械的に押鍵及び離鍵させるように駆動する。鍵盤110の各鍵の押鍵により、ハンマが弦を叩き、発音する。
【0013】
図2は、鍵盤の鍵201、ソレノイド109、ハンマ203及びアクション204を示す図である。マニュアル演奏では、演奏者が鍵201を矢印211の方向に押鍵すると、点205を支点として、アクション204が動き、ハンマ203が矢印213の方向に動いて弦を叩く。また、自動演奏では、ソレノイド109が矢印212の方向に動くと、アクション204が動き、ハンマ203が矢印213の方向に動いて弦を叩く。
【0014】
図3は、3種類のソレノイド109の吸引特性例を示すグラフである。横軸はソレノイド109のストロークを示し、縦軸はソレノイド109の吸引力(駆動力)を示す。ストロークの0は、ソレノイド109の可動部301が最上端に位置し、押鍵状態を示す。ストロークの最大(max)は、ソレノイド109の可動部302が最下端に位置し、離鍵状態を示す。ソレノイド109は、ストロークに応じて、吸引力が異なる。
【0015】
図4は、図1のドライバ108の回路構成例を示す図である。npnトランジスタ401は、ベースが入力端子403に接続され、コレクタがソレノイド109に接続され、エミッタがグランドに接続される。ソレノイド109は、トランジスタ401のコレクタ及び電源電圧V間に接続される。ダイオード402は、アノードがソレノイド109に接続され、カソードが電源電圧Vに接続される。入力端子403には、PWMジェネレータ105で生成されたパルス信号が入力される。トランジスタ401はパルス信号がローレベルになるとオフし、ソレノイド109には電流が流れず、吸引力が働かない。吸引力が全く働かない状態では、図3において、ソレノイド109の可動部302が最下端に位置する。トランジスタ401はパルス信号がハイレベルになるとオンし、ソレノイド109に電流が流れ、吸引力が働く。吸引力が十分に働く状態では、図3において、ソレノイド109の可動部301が最上端に位置する。
【0016】
図5は、図4の入力端子403に入力されるパルス信号を示す図である。PWMジェネレータ105は、指示されたデューティ比に応じて、例えば、デューティ比が小さいパルス信号A1又はデューティ比の大きいパルス信号A2を生成する。パルス信号A1及びA2は、周期が同じである。
【0017】
図6(A)〜(D)は、時間に対するデューティ比エンベロープ601及びストロークエンベロープ602を示す図である。PWMジェネレータ105がデューティ比エンベロープ601のパルス信号を生成すると、ソレノイド109はストロークエンベロープ602のストロークを実現することができる。ストロークエンベロープ602は、立ち上がりが鍵盤110の押鍵に対応し、立ち下がりが鍵盤110の離鍵に対応する。デューティ比エンベロープ601は、所定時間間隔のエンベロープフェーズ単位で構成される。
【0018】
DCソレノイド109には、指示されたデューティ比のPWM信号が入力される。このデューティ比を変更することにより、電力を制御することができる。図3に示すように、ソレノイド109の吸引力特性は一定電力であってもストロークによって駆動能力が異なる。自動演奏装置では、図6(A)〜(D)に示すように、多段階でデューティ比(電力)を経過時間に応じて変更し、無駄な電力を抑えることができる。しかし、それによっても、ソレノイド109の発熱は免れない。発熱量が多くなると、ソレノイド109の駆動能力が低下する。
【0019】
CPU102は、インタフェース107を介して、外部よりノートオン/オフ、ボリューム等の自動演奏データを入力する。ノートオンは押鍵、ノートオフは離鍵を示す。CPU102は、自動演奏データを基に演算し、ROM103又はRAM104に記憶されたパラメータを選択し、それを修正した結果のデューティ比を示す値をPWMジェネレータ105に書き込む。PWMジェネレータ105は、特定のエリアに値が書き込まれると、その値に応じたPWM信号を生成し、その書き込んだエリアに対応する出カボートから出力する。ドライバ108は、入力されたPWM信号を基にソレノイド109を駆動する。
【0020】
図8は、ROM103の記憶内容を示す図である。ROM103は、デューティ比エンベロープテーブル801、微調整テーブル802、デューティ比−補正係数変換テーブル803、及び演算係数変換テーブル804を記憶する。
【0021】
デューティ比エンベロープテーブル801は、図6(A)〜(D)のように、デューティ比を示す値(デューティ比値)と付与時間が複数組記載されたデューティ比の時間変化パラメータを記憶し、鍵盤のキーナンバ(音高)及び押鍵速度(強さ)を再現できる以上に多数を記憶している。なお、デューティ比エンベロープテーブル801は、数式によって計算してもよい。
【0022】
微調整テーブル802は、キーナンバ毎の微調整係数を記憶し、鍵盤110の鍵毎のばらつきを補正するための値である。デューティ比−補正係数変換テーブル803は、デューティ比毎に補正係数を記憶する。演算係数変換テーブル804は、キーナンバ毎の演算係数を記憶する。
【0023】
図9は、RAM104の記憶内容を示す図である。RAM104は、温度補正テーブル901、発音チャンネル情報902、及びボリューム903を記憶する。温度補正テーブル901は、キーナンバ毎の温度補正係数を記憶する。発音チャンネル情報902は、キーナンバ毎のキーオンフラグ、エンベロープフェーズ、エンベロープ時間カウント値、デューティ比エンベロープ選択番号等を含む。ボリューム903は、自動演奏データにより指定される全キーナンバ共通のボリューム(音量)情報である。
【0024】
図10は、自動演奏装置のノートオン処理を示すフローチャートである。自動演奏データとしてノートオン(キーオン)信号が入力されると、以下の処理を行う。ノートオン信号は、キーナンバ及びベロシティ(押鍵速度)の情報を含む。
【0025】
ステップS1001では、上記のベロシティを基に次式により強さインデックスIndを計算する。
Ind=(Vel+Ka[KN])×Vol×Kb[KN]×Kc
【0026】
ここで、強さインデックスIndは、図8のデューティ比エンベロープテーブル801の強さ(アドレス)を示す。Velは、自動演奏データのベロシティである。Ka[KN]は、図9の温度補正テーブル901内のキーナンバ(自動演奏データ)KNに対応する温度補正係数である。Volは、図9の自動演奏データのボリューム903である。Kbは、図8の微調整テーブル802内のキーナンバ(自動演奏データ)KNに対応する微調整係数である。Kcは、アドレス変換係数であり、補正されたベロシティを図8のデューティ比エンベロープテーブル801のアドレスに変換するための係数である。
【0027】
ソレノイド109の発熱により温度が上昇すると、ソレノイド109の駆動能力が低下する。その結果、自動演奏データのベロシティに比べ、その自動演奏データにより自動演奏された押鍵強さが弱くなる。本実施形態では、その場合、温度補正係数Ka[KN]により強さインデックスIndを強めに補正する。これにより、自動演奏装置は、自動演奏データに忠実な押鍵強さを実現することができる。温度補正係数Ka[KN]の演算方法は、後に図12を参照しながら説明する。
【0028】
次に、ステップS1002では、図8のデューティ比エンベロープテーブル801を参照し、上記で演算された強さインデックスInd及びキーナンバ(自動演奏データ)KNを基に、デューティ比エンベロープを選択する。
【0029】
次に、ステップS1003では、図9の発音チャンネル情報902内のキーオンフラグを1にし、上記の選択されたディーティ比エンベロープを発音チャンネル情報902内に設定する。その結果、デューティ比エンベロープが起動される。以上で、処理が終了する。
【0030】
図11は、自動演奏装置のノートオフ処理を示すフローチャートである。自動演奏データとしてノートオフ(キーオフ)信号が入力されると、以下の処理を行う。ノートオフ信号は、キーナンバの情報を含む。ステップS1101では、ノートオフが指示されたキーナンバについて、デューティ比エンベロープのリリースフェーズに移行する。リリースフェーズは、図6(A)〜(D)において、ストロークエンベロープ602の立ち下がり(ノートオフ)に対応するデューティ比エンベロープのフェーズである。以上で、処理を終了する。
【0031】
図12は、温度補正処理を示すフローチャートである。温度補正処理は、タイマ割り込み処理により、所定時間間隔で行われる。ステップS1201では、鍵毎の温度補正係数Ka[KN]を計算する。その詳細は、後に図7を参照しながら説明する。以上で、処理を終了する。
【0032】
図7は、図12のステップS1201の処理を説明するための図である。入力信号INは、現在のデューティ比である。乗算器701は、デューティ比INに係数Kdを乗算して出力する。加算器702は、乗算器701及び702の出力値を加算して温度補正係数Ka[KN]を出力する。遅延器703は、温度補正係数Ka[KN]を1エンペロープフェーズ分遅延させる。乗算器704は、遅延器703の出力値に係数Kfを乗算して出力する。図7は、ローパルフィルタの機能を有し、デューティ比INをエンベロープフェーズ単位で(一定時間毎に)入力し、温度補正係数Ka[KN]を出力する。
【0033】
具体的には、次式により、温度補正係数Ka[KN]を求めることができる。
Ka[KN]=Kd[IN]+Ke[KN]×Kf[KN]
【0034】
ここで、Kd[IN]は、図7の係数Kdに対応し、図8のディーティ比−補正係数変換テーブル803内の、デューティ比INに応じた補正係数である。Ke[KN]は、図7の遅延器703に対応し、1フェーズ前(前回)の温度補正係数Ka[KN]である。Kf[KN]は、図7の係数Kfに対応し、図8の演算係数変換テーブル804内のキーナンバKNに応じた演算係数である。
【0035】
なお、演算方法はこれに限らす、例えばZ-1の値と現在値の大小に応じて式を変更してもよい。
【0036】
図13は、自動演奏装置のエンベロープ処理を示すフローチャートである。ステップS1301では、所定時間が経過したか否かを判定する。経過していればステップS1302へ進み、経過していなければ処理を終了する。ステップS1302では、次のエンベロープフェーズに移行する。次に、ステップS1303では、エンベロープの終了か否かを判定する。終了でなければステップS1304へ進み、終了であればステップS1305へ進む。
【0037】
ステップS1304では、図10のステップS1002で選択されたデューティ比エンベロープを基に、PWMジェネレータ105へ現在のフェーズのデューティ比を書き込む。その後、処理を終了する。そして、他の処理後、再び、図13の処理が行われる。
【0038】
ステップS1305では、PWMジェネレータ105へデューティ比として0を書き込む。次に、図9の発音チャンネル情報902内のキーオンフラグを0にする。これにより、ソレノイド109は、鍵盤110の鍵駆動を終了する。その後、処理を終了する。そして、他の処理後、再び、図13の処理が行われる。
【0039】
以上のように、発音開始する際にキーオン(発音)フラグをオン(1)にし、エンベロープフェーズに1を書き込み、時間情報、エンベロープパラメータ番号を各々該当するメモリに書き込む。CPU102は、一定時間毎にカウントし、発音開始からデューティ比エンベロープパラメータに記載された時間が過ぎると、エンベロープフェーズの値に1を加算し、パラメータ番号とフェーズ番号から、次のフェーズのパラメータを読み出し、PWMジェネレータ105に書き込み、次のフェーズに移行し、デューティ比を変更する。設定された最大フェーズ数を過ぎる、又はノートオフ信号が入力された場合、CPU102は、PWMジェネレータ105にデューティ比として0を書き込み、キーオンフラグをオフ(0)にして発音を終了する。
【0040】
本実施形態によれば、CPU102は、PWM変調制御によりソレノイド109を制御する際、自動演奏データ及び過去のPWM制御のデューティ比に応じて今回のPWM変調を制御する。また、CPU102は、一定時間(エンベロープフェーズ)毎にデューティ比を指定してPWM制御を行い、かつ過去の一定時間毎のデューティ比に応じて今回の制御を行う。
【0041】
ディーティ比が大きければ、ソレノイド109の消費電力量が多くなり、発熱量が多くなる。その場合は、温度補正係数Ka[KN]を大きくして、押鍵強さが強くなるように補正する。これにより、ソレノイド109の発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度(強さ)を実現することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態による自動演奏装置の基本的構成は、第1の実施形態(図1)と同じである。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。具体的には、本実施形態は、図10のステップS1001の強さインデックスIndの計算方法が異なる。
【0043】
図14は、図1のRAM104の記憶内容を示す図である。RAM104は、図9のものに比べ、さらにタッチ補正テーブル1401を記憶する。タッチ補正テーブル1401は、キーナンバに応じたタッチ補正係数を記憶する。
【0044】
図15は、自動演奏装置のタッチ検出処理を示すフローチャートである。上記の自動演奏により、ソレノイド109は、鍵盤110の鍵を駆動する。タッチ検出部106は、その駆動された鍵のキーナンバの押鍵速度を検出する。押鍵速度が検出されると、以下の処理を行う。ステップS1501では、そのキーナンバKNのタッチ補正を行い、図14のタッチ補正テーブル1401にタッチ補正係数Kg[KN]を書き込む。具体的には、タッチ検出部106が検出した押鍵速度と自動演奏データ内の押鍵速度(ベロシティ)とを比較する。検出された押鍵速度が自動演奏データ内の押鍵速度よりも小さいときには、タッチ補正テーブル1401内のそのキーナンバKNのタッチ補正係数Kg[KN]をインクリメント(1加算)する。逆に、検出された押鍵速度が自動演奏データ内の押鍵速度よりも小さいときには、タッチ補正テーブル1401内のそのキーナンバKNのタッチ補正係数Kg[KN]をデクリメント(1減算)する。また、検出された押鍵速度が自動演奏データ内の押鍵速度と同じときには、タッチ補正テーブル1401内のそのキーナンバKNのタッチ補正係数Kg[KN]を変更しない。
【0045】
図10のステップS1001では、自動演奏データのベロシティVelを基に次式により強さインデックスIndを計算する。
Ind=(Vel+Kg[KN])×Vol×Kb[KN]×Kc
【0046】
ここで、Kg[KN]は、上記のキーナンバKNのタッチ補正係数である。Vol、Kb[KN]及びKcは、第1の実施形態と同じである。
【0047】
また、次式により、強さインデックスIndを求めてもよい。
Ind=(Vel×Vol×Kb[KN]×Kc)+Kg[KN]
【0048】
自動演奏装置は、タッチ検出部106を有する。タッチ検出は、方法に関わらずMIDIのベロシティを検出できる程度であればよい。PWMジェネレータ105は、自動演奏データのノートオン信号に従ってPWM信号を生成し、ソレノイド109を駆動する。この駆動によって、鍵盤110の鍵は押鍵動作する。タッチ検出部106は、その押鍵の押鍵速度を検出する。CPU102は、ノートオン信号のベロシティ情報とタッチ検出部106で検出したベロシティとを比較し、検出した値が小さければ+1を、大きければ−1を、キーナンバ毎又はベロシティ値毎に設けられたタッチ補正テーブル1401の該当するエリアの値に加算する。このテーブル1401は、不揮発性のメモリに記憶され、以降の発音ではパラメータ選択時にこの値を加えてベロシティVelを補正する。タッチ補正係数Kg[KN]は、ノートオン信号のベロシティと検出したベロシティとの差分に係数を乗じた値をテーブル1401の該当エリアに加算して書き込むという方法でもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、ソレノイド109は、鍵盤110の鍵を駆動する。タッチ検出部106は、ソレノイド109による鍵の駆動速度を検出する。CPU102は、自動演奏データに応じてソレノイド109を制御する際、過去の自動演奏データ(押鍵速度データ)及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う。具体的には、CPU102は、過去の押鍵速度データとそれに対応する検出された駆動速度とを比較し、その比較結果に応じて今回の制御を行う。過去の検出された駆動速度が押鍵速度データよりも小さいときには、鍵の駆動速度が大きくなるように補正して制御を行う。過去の検出された駆動速度が押鍵速度データよりも大きいときには、鍵の駆動速度が小さくなるように補正して制御を行う。
【0050】
前回のベロシティの比較結果に応じて、今回のベロシティを決定することにより、適切なベロシティの補正を行うことができる。これにより、ソレノイド109の発熱が生じても、自動演奏データに応じた忠実な押鍵速度を実現することができる。
【0051】
第1及び第2の実施形態は、図1のCPU102のコンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びコンピュータプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0052】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態による自動演奏装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】鍵盤の鍵、ソレノイド、ハンマ及びアクションを示す図である。
【図3】3種類のソレノイドの吸引特性例を示すグラフである。
【図4】図1のドライバの回路構成例を示す図である。
【図5】図4の入力端子に入力されるパルス信号を示す図である。
【図6】図6(A)〜(D)は時間に対するデューティ比エンベロープ及びストロークエンベロープを示す図である。
【図7】図12のステップS1201の処理を説明するための図である。
【図8】ROMの記憶内容を示す図である。
【図9】RAMの記憶内容を示す図である。
【図10】自動演奏装置のノートオン処理を示すフローチャートである。
【図11】自動演奏装置のノートオフ処理を示すフローチャートである。
【図12】温度補正処理を示すフローチャートである。
【図13】自動演奏装置のエンベロープ処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態のRAMの記憶内容を示す図である。
【図15】自動演奏装置のタッチ検出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
101 バス
102 CPU
103 ROM
104 RAM
105 PWMジェネレータ
106 タッチ検出部
107 インタフェース
108 ドライバ
109 ソレノイド
110 鍵盤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵を有する鍵盤と、
前記鍵を駆動するためのアクチュエータと、
自動演奏データ及び過去の制御に応じて前記アクチュエータを制御するための制御部と
を有する自動演奏装置。
【請求項2】
前記制御部は、パルス幅変調制御により前記アクチュエータを制御し、かつ過去のパルス幅変調制御に応じて今回の制御を行う請求項1記載の自動演奏装置。
【請求項3】
前記制御部は、過去の前記パルス幅変調のデューティ比に応じて今回の制御を行う請求項2記載の自動演奏装置。
【請求項4】
前記制御部は、一定時間毎にデューティ比を指定してパルス幅変調制御を行い、かつ過去の前記一定時間毎のデューティ比に応じて今回の制御を行う請求項3記載の自動演奏装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、ソレノイドである請求項1記載の自動演奏装置。
【請求項6】
鍵を有する鍵盤と、
前記鍵を駆動するためのアクチュエータと、
前記アクチュエータによる前記鍵の駆動速度を検出するタッチ検出部と、
自動演奏データに応じて前記アクチュエータを制御するための制御部とを有し、
前記制御部は、過去の前記自動演奏データ及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う自動演奏装置。
【請求項7】
前記自動演奏データは、押鍵速度データを含む請求項6記載の自動演奏装置。
【請求項8】
前記制御部は、過去の前記押鍵速度データとそれに対応する前記検出された駆動速度とを比較し、その比較結果に応じて今回の制御を行う請求項7記載の自動演奏装置。
【請求項9】
前記制御部は、過去の前記検出された駆動速度が前記押鍵速度データよりも小さいときには、前記鍵の駆動速度が大きくなるように補正して制御を行う請求項8記載の自動演奏装置。
【請求項10】
前記制御部は、過去の前記検出された駆動速度が前記押鍵速度データよりも大きいときには、前記鍵の駆動速度が小さくなるように補正して制御を行う請求項8記載の自動演奏装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、ソレノイドである請求項6記載の自動演奏装置。
【請求項12】
鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータとを有する自動演奏装置の制御方法であって、
自動演奏データ及び過去の制御に応じて前記アクチュエータを制御する制御ステップを有する自動演奏装置の制御方法。
【請求項13】
鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータとを有する自動演奏装置の制御方法であって、
前記アクチュエータによる前記鍵の駆動速度を検出するタッチ検出ステップと、
自動演奏データに応じて前記アクチュエータを制御する制御ステップとを有し、
前記制御ステップは、過去の前記自動演奏データ及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う自動演奏装置の制御方法。
【請求項1】
鍵を有する鍵盤と、
前記鍵を駆動するためのアクチュエータと、
自動演奏データ及び過去の制御に応じて前記アクチュエータを制御するための制御部と
を有する自動演奏装置。
【請求項2】
前記制御部は、パルス幅変調制御により前記アクチュエータを制御し、かつ過去のパルス幅変調制御に応じて今回の制御を行う請求項1記載の自動演奏装置。
【請求項3】
前記制御部は、過去の前記パルス幅変調のデューティ比に応じて今回の制御を行う請求項2記載の自動演奏装置。
【請求項4】
前記制御部は、一定時間毎にデューティ比を指定してパルス幅変調制御を行い、かつ過去の前記一定時間毎のデューティ比に応じて今回の制御を行う請求項3記載の自動演奏装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、ソレノイドである請求項1記載の自動演奏装置。
【請求項6】
鍵を有する鍵盤と、
前記鍵を駆動するためのアクチュエータと、
前記アクチュエータによる前記鍵の駆動速度を検出するタッチ検出部と、
自動演奏データに応じて前記アクチュエータを制御するための制御部とを有し、
前記制御部は、過去の前記自動演奏データ及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う自動演奏装置。
【請求項7】
前記自動演奏データは、押鍵速度データを含む請求項6記載の自動演奏装置。
【請求項8】
前記制御部は、過去の前記押鍵速度データとそれに対応する前記検出された駆動速度とを比較し、その比較結果に応じて今回の制御を行う請求項7記載の自動演奏装置。
【請求項9】
前記制御部は、過去の前記検出された駆動速度が前記押鍵速度データよりも小さいときには、前記鍵の駆動速度が大きくなるように補正して制御を行う請求項8記載の自動演奏装置。
【請求項10】
前記制御部は、過去の前記検出された駆動速度が前記押鍵速度データよりも大きいときには、前記鍵の駆動速度が小さくなるように補正して制御を行う請求項8記載の自動演奏装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、ソレノイドである請求項6記載の自動演奏装置。
【請求項12】
鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータとを有する自動演奏装置の制御方法であって、
自動演奏データ及び過去の制御に応じて前記アクチュエータを制御する制御ステップを有する自動演奏装置の制御方法。
【請求項13】
鍵を有する鍵盤と、前記鍵を駆動するためのアクチュエータとを有する自動演奏装置の制御方法であって、
前記アクチュエータによる前記鍵の駆動速度を検出するタッチ検出ステップと、
自動演奏データに応じて前記アクチュエータを制御する制御ステップとを有し、
前記制御ステップは、過去の前記自動演奏データ及びそれに対応した駆動により前記検出された駆動速度に応じて今回の制御を行う自動演奏装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−34045(P2007−34045A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219123(P2005−219123)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
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