説明

自動演奏装置用のアクチュエータ駆動制御装置、自動演奏装置

【課題】自動演奏装置のペダルや鍵が適切なタイミングで操作されるようアクチュエータを適切に駆動制御する。
【解決手段】自動演奏イベントが発生すると、ダンパーペダル10を、所定の移動速度Sでイベント発生から総遅れ時間DT後に目標位置nDに移動させるため、どれだけ遅延させて移動開始させればよいかを示す遅延時間dtを計算する。そして、イベント発生から遅延時間dtが経過した後(S330:NO)、所定の移動速度Sで目標位置nDへ移動するようにサーボ制御の目標値を逐次変更(S360)しながらサーボ制御を実行する。総遅れ時間DTは、自動演奏ピアノ1が備える全てのペダル及び鍵をイベント内容に応じてそれぞれの目標位置へ移動させる場合に、最も遅れるものであっても間に合うよう考慮して設定されたタイミングである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動演奏装置用のアクチュエータ駆動制御装置に係り、特にペダルや鍵を操作させるためのアクチュエータを駆動制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動演奏ピアノなどの自動演奏装置においては、演奏データに基づいてペダルや鍵を操作して自動演奏を行わせている。このペダルや鍵の操作を行うソレノイド等のアクチュエータをサーボ制御することで駆動制御する技術が知られている(特許文献1参照)。アクチュエータで操作したペダルや鍵の位置をセンサで検出し、目標位置へ移動させるようにサーボ制御するのである。
【特許文献1】特開平6−214560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ペダルや鍵をソレノイドなどのアクチュエータで駆動させる場合、駆動信号をアクチュエータに与え、アクチュエータに給電を開始してからペダルが目標位置に到達するまで、あるいは実際にハンマが打弦して発音されるまでに時間がかかる。そのため、打弦イベントフレームが読み出されたタイミングに対して実際の発音が遅れることになる。
【0004】
また、アクチュエータに給電を開始してから実際にハンマが打弦して発音されるまでの時間は指示される打弦速度によって異なるため、打弦イベントフレームが記録媒体から読み出された時点にアクチュエータの給電を開始すると、打弦イベントの発生時間の間隔が各打弦イベントの指示する打弦速度に応じて変化してしまう。また、離鍵に関しても同様の問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自動演奏装置のペダルや鍵が適切なタイミングで操作されるようアクチュエータを適切に駆動制御する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る自動演奏装置用のアクチュエータ駆動制御装置は、自動演奏装置のペダルまたは鍵の操作を行うアクチュエータに対する駆動制御を行うものであり、 自動演奏のイベントが発生すると、そのイベントに対応する前記ペダルまたは鍵の目標位置を設定し、その目標位置と、ペダルまたは鍵の位置を検出する位置検出手段から入力した位置とが一致するようにアクチュエータをサーボ制御する制御手段を備えている。
【0007】
この制御手段は、自動演奏イベントが発生すると、ペダルまたは鍵を、所定の移動速度でイベント発生から所定時間後に目標位置に移動させるため、どれだけ遅延させて移動開始させればよいかを示す遅延時間を計算する。そして、イベント発生から遅延時間が経過した後、所定の移動速度で目標位置へ移動するようにサーボ制御の目標値を逐次変更しながらサーボ制御を実行する。
【0008】
ここで、イベント発生から所定時間後とは、自動演奏装置が備える全てのペダル及び鍵をイベント内容に応じてそれぞれの目標位置へ移動させる場合に、最も遅れるものであっても間に合うよう考慮して設定されたタイミングである。
【0009】
上述のように、駆動信号をアクチュエータに与え、アクチュエータに給電を開始してからペダルが目標位置に到達するまで、あるいは実際にハンマが打弦して発音されるまでに時間がかかるため、打弦イベントフレームが記録媒体から読み出されたタイミングに対して実際の発音が遅れる。また、アクチュエータに給電を開始してから実際にハンマが打弦して発音されるまでの時間は指示される打弦速度によって異なるため、打弦イベントの発生時間の間隔が各打弦イベントの指示する打弦速度に応じて変化してしまうなど、ペダルや鍵が適切なタイミングで操作されないおそれがある。
【0010】
これに対して本発明のアクチュエータ駆動制御装置によれば、自動演奏装置が備える全てのペダル及び鍵をイベント内容に応じてそれぞれの目標位置へ移動させる場合に、最も遅れるものであっても間に合うよう考慮して設定されたタイミングである「イベント発生から所定時間後」に目標位置に移動させるため、ペダルまたは鍵をイベント発生からどれだけ遅延させて移動開始させればよいかを示す遅延時間を計算する。そして、イベント発生から遅延時間が経過した後、所定の移動速度で目標位置へ移動するようにサーボ制御の目標値を逐次変更しながらサーボ制御を実行する。
【0011】
そのため、自動演奏装置のペダルや鍵が適切なタイミングで操作されるようアクチュエータを適切に駆動制御することができる。
ところで、自動演奏ピアノなどを想定すると、ペダルに対して適用する意義が相対的に高いと考えられる。つまり、ペダル操作は演奏上、操作範囲(ストローク)の中間位置が重要で、ストロークの一部だけを使用したり、途中で止めたりすることもあるため、ON/OFF操作よりもサーボ制御が向いていると言える。したがって、請求項2に示すように、自動演奏装置のペダルの操作を行うアクチュエータに対する駆動制御を、本発明のアクチュエータ駆動制御装置によって実行するようにするとよい。
【0012】
また、請求項3に示すように、上述のアクチュエータ駆動制御装置を備えた自動演奏装置として実現すれば、自動演奏装置のペダルや鍵が適切なタイミングで操作されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。本実施形態は、本発明の自動演奏装置用のアクチュエータ駆動装置を自動演奏装置としての自動演奏ピアノに適用したものであり、ダンパーペダルの操作を行うアクチュエータとしてのソレノイドを駆動制御する形態である。
【0014】
[自動演奏ピアノの全体構成の説明]
図1(a)は自動演奏ピアノの全体構成を示すブロック図である。
自動演奏ピアノ1は、複数の鍵を有する鍵盤60,各種のキーやスイッチからなる操作パネル70、ダンパーペダル機構を駆動するためのソレノイド30、そのソレノイド30を駆動させるソレノイド駆動回路52、ダンパーペダル10(図1(b)参照)の位置を検出する位置センサ32、上述の鍵盤60,操作パネル70,ソレノイド駆動回路52および位置センサ32との間で各種信号をやりとりするインタフェース部(I/F)40、自動演奏ピアノ1全体の動作を制御するCPU42、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時するタイマ43、制御手段としてのCPU42が実行するプログラムなどを記憶しているROM44、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及びCPU42による処理結果などを一時的に記憶するRAM46、不図示のMIDI機器等からの演奏データをMIDI信号として入力したり、外部機器等へMIDI信号を出力するMIDIインタフェース部(I/F)62、などを備えている。
【0015】
これらのうち、インタフェース部40,CPU42,ROM44,RAM46,MIDIインタフェース部(I/F)62は、バス80を介してそれぞれ通信可能に接続されている。
【0016】
なお、演奏データは、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)コードで構成され、鍵盤60やダンパーペダル10の動作を規定する。
インタフェース部40は、鍵盤10の有する各鍵に対してそれぞれ2以上のキー・スイッチを備えており、これらキー・スイッチの開閉状態に基づいて鍵の押鍵状態を検出すると共に、同一の鍵に対応するキー・スイッチそれぞれが開閉する時間差を押鍵の強さとして検出するように構成されている。
【0017】
[ダンパーペダル機構、ソレノイド駆動回路の説明]
図1(b)は、自動演奏ピアノ1のダンパーペダル機構である。本実施形態の自動演奏ピアノ1は、アップライト型である。
【0018】
ダンパーペダル機構は、ダンパーペダル10に天秤ボルト12を介して一端が固定されたペダル天秤14と、ペダル天秤14の他端に下端が当接載置された突揚棒16と、突揚棒16の上端に一端の延出部を緩やかに連結されたダンパーロッド18と、ダンパーロッド18を回動可能に連結支持したセンターレール20と、センターレール20の上方で回動可能に支持されたダンパーレバー22と、ダンパーレバー22に連結されたダンパー24と、ダンパー24が接する弦26とによって構成されている。
【0019】
そして、このペダル機構を駆動するためのソレノイド30と、ペダル機構の動作状態を検出する位置センサ32が、ペダル天秤14に配設されている。この位置センサ32は、検出した結果を最終的にCPU42へ数値データとして入力できるものであれば形式は問わない。例えば抵抗値、磁気量、光量などを電圧に変換して出力し、そのアナログ量をA/D変換して数値データとするものや、パソコンのマウスなどで採用されているスリット通過量、映像移動量などを計数して出力するものなどが考えられる。
【0020】
次に、このダンパーペダル機構の動作について説明する。ダンパーペダル10が踏み込まれると、天秤ボルト12を介して固定されたペダル天秤14の一端が下方へ引っ張られて揺動し、ペダル天秤14の他端が上方へ動く。このペダル天秤14によって、突揚棒16が持ち上げられ、突揚棒16の上端に連結されたダンパーロッド18を動かす。ダンパーロッド18は、センターレール20との連結点を中心にして回動し、ダンパーレバー22をダンパー24が弦26から離れる方向へ押す。
【0021】
この状態で演奏が行われると、ダンパー24が弦26から離れているため、弦26の振動が減衰せず、演奏音が響き続ける。次に、ダンパーペダル10の踏み込みを開放すると、各部品は逆の動作をしてダンパー24が弦26に接触する。これによって、響いていた演奏音が止まる。
【0022】
以上説明したダンパーペダルの動作は、自動演奏ピアノにおいては、ダンパーペダル10の踏み込み操作の代わりに、ペダル天秤14に配設されたソレノイド30を駆動することによって行われる。このソレノイド30を駆動するソレノイド駆動回路52は、図1(c)に示すように、CPU42からインタフェース部(I/F)40を介して指示された駆動信号を、抵抗R1,R2,コンデンサC1からなる回路を介してトランジスタTr1のベースに入力し、駆動信号のデューティ比に応じた電流をソレノイド30に流してダンパーペダル機構を駆動する。なお、ソレノイド30と並列に、ダイオードD1がカソードを電源電圧(DC100V)側にして接続されている。このダイオードD1は、ソレノイド30に発生した起電力を逃がすためのものである。
【0023】
このCPU42によるダンパーペダル機構に対する駆動制御は、位置センサ32から出力されるダンパーペダル10の位置データを目標値に一致させるようにフィードバック制御するサーボ制御である。この制御内容については後述する。
【0024】
なお、自動演奏ピアノ1の他の構成は公知技術に従っているのでここではその詳細な説明は省略する。
[メイン処理の説明]
次に、自動演奏ピアノ1のCPU42が実行するメイン処理を、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0025】
このメインルーチンが起動すると、まず、各種変数に初期値をセットする。RAM46における記憶領域を解放する、などの初期化処理を経て(S110)、自動演奏ピアノ1に対する操作に基づくイベントが発生したか否かがチェックされる(S120)。
【0026】
このS120でイベントが発生したと判定されたら(S120:YES)、後述するイベント処理が行われる(S130)。こうしてイベント処理が行われた後、または、上記S120でイベントが発生していないと判定された場合(S120:NO)、プロセスがS120へと戻る。
【0027】
[イベント処理の説明]
次に、自動演奏ピアノ1のCPU42が実行するペダル関連のイベント処理を、図3(a)のフローチャートを参照して説明する。このイベント処理は図2のメイン処理のS130に移行した際に実行される処理の一部であり、ダンパーペダル10に関連するイベントの処理のみを示している。
【0028】
まず、演奏データに基づく自動演奏におけるダンパーペダル10に対する目標入力があるか否か判定する(S210)。目標入力がある場合には(S210:YES)、目標位置設定処理を実行し(S250)、本サブルーチンを終了する。なお、S250で実行される目標位置設定処理については後述する。
【0029】
一方、目標入力がない場合には(S210:NO)、開放位置の設定が指示されたか否か判定する(S220)。この開放位置の設定指示は、例えば設定者が操作パネル70を操作して行う。開放位置の設定が指示された場合には(S220:YES)、開放位置の設定処理を実行し(S260)、本サブルーチンを終了する。
【0030】
なお、「開放位置の設定処理」においては、そのときのダンパーペダル10の位置を位置センサ32によって検出し、その検出した位置データをRAM46に記憶させておく。
開放位置の設定が指示されていない場合には(S220:NO)、踏込位置の設定が指示されたか否か判定する(S230)。この踏込位置の設定指示は、例えば設定者がダンパーペダル10を踏み込んだ状態で操作パネル70を操作して行う。踏込位置の設定が指示された場合には(S230:YES)、踏込位置の設定処理を実行し(S270)、本サブルーチンを終了する。
【0031】
なお、「踏込位置の設定処理」においては、そのとき(つまり、ダンパーペダル10を踏み込んだ状態)のダンパーペダル10の位置を位置センサ32によって検出し、その検出した位置データをRAM46に記憶させておく。
【0032】
踏込位置の設定が指示されていない場合には(S230:NO)、テーブル設定の設定が指示されたか否か判定する(S240)。このテーブル設定の指示は、例えば設定者が操作パネル70を操作して行う。テーブル設定が指示された場合には(S240:YES)、ペダルテーブルの設定処理を実行し(S280)、本サブルーチンを終了する。
【0033】
ここで、S280で実行されるペダルテーブル設定処理については説明する。ペダルテーブルは、演奏データ中のダンパーペダル10に対する目標入力値(MIDIデータ、例えば128ステップ)から目標位置(ダンパーペダル10の位置データ(位置センサ32の検出値をA/D変換した値)に相当)へ変換するためのテーブルである。
【0034】
S260で設定した開放位置、S270で設定した踏込位置と、カーブテーブルを用いてペダルテーブルを設定する。カーブテーブルは、位置センサ32の特性補正やダンパーペダル10中間位置(ハーフペダルなどと称される。)の調整のため、ペダルテーブルを作成する際に使用する。複数種類のカーブテーブルを予めROM44内に記憶しておく。
【0035】
作成されたペダルテーブルは、最下限が開放位置、最上限が踏込位置、途中の形状がカーブテーブル中のパラメータcurveNで指定したカーブテーブルの形状となる。このパラメータcurveNは、どのカーブテーブルを使用するかを指定するパラメータで、別途設定するが、自動演奏ピアノ1の機種によって固定に設定してもよい。
【0036】
[目標位置設定処理の説明]
次に、自動演奏ピアノ1のCPU42が実行する目標位置設定処理を、図3(b)のフローチャートを参照して説明する。この目標位置設定処理は、図3(a)のイベント処理のサブルーチンであり、イベント処理のS250へ移行した際に実行される。
【0037】
まず、新規目標位置nDの設定を行う(S251)。具体的には、演奏データに基づく自動演奏におけるダンパーペダル10に対する新規目標入力値nLに対応する新規目標位置nDを、S280にて設定したペダルテーブルを用いて算出し、設定する。
【0038】
次のステップS252では、RAM46内に設けられたFIFO型のイベントバッファへイベントを書き込み、現在時刻cTを前回時刻lTとして書き込み、新規目標位置nDを目標値dLとして書き込み、遅延時間dtを算出した上で、演算実行フラグrunを立てる(run=1)。
【0039】
ここで、遅延時間dtは、総遅れ時間DT−(直前の最終目標位置lD−新規目標位置nD)/移動速度Sという式によって算出される。これらの関係を示したのが図5である。
【0040】
総遅れ時間DTは、予め設定された時間(例えば、500msec)であるが、以下の観点から設定されたものである。
自動演奏ピアノにおいて鍵やペダルをソレノイドで駆動させる場合、駆動信号をソレノイドに与え、ソレノイドに給電を開始してから実際にハンマが打弦して発音されるまで、あるいはペダルが目標位置に到達するまでに時間がかかる。そのため、打弦イベントフレームが記録媒体から読み出されたタイミングに対して実際の発音が遅れることになる。なお、駆動にかかる時間は、強弱、重さ(鍵毎、機種毎)によって変わる。
【0041】
また、ソレノイドに給電を開始してから実際にハンマが打弦して発音されるまでの時間は指示される打弦速度によって異なるため、打弦イベントフレームが記録媒体から読み出された時点にソレノイドの給電を開始すると、打弦イベントの発生時間の間隔が各打弦イベントの指示する打弦速度に応じて変化してしまう。また、離鍵に関しても同様の問題がある。
【0042】
したがって、これらの内で最も遅れるものを考慮しつつ、「このタイミングに合わせれば遅れることがない」という所定の発音タイミングを決定し、イベント情報の読出しタイミングに対して、実際の打弦タイミングおよび実際の離鍵タイミングを所定時間(例えば、500msec)だけ遅延させる。この所定時間を総遅れ時間DTとして設定する。
【0043】
[遅延・スムージング処理の説明]
次に、自動演奏ピアノ1のCPU42が実行する遅延・スムージング処理を、図4のフローチャートを参照して説明する。この遅延・スムージング処理は、上述のメイン処理(図2)とは別に、所定時間(例えば、数msec〜数十msec)毎に実行される。
【0044】
まず、現在のイベントが実行中か否か(つまり、演算実行フラグrun=1か否か)を判定し(S310)、現在のイベント実行中(run=1)の場合には(S310:YES)、続くステップS320にて、差分時間Δを算出する。具体的には、差分時間Δ=現在時刻cT−前回時刻lTという式によって算出する。
【0045】
次に、残り遅延時間dt>0か否か判定し(S330)、残り遅延時間dt>0ならば(S330:YES)、遅延フェーズの処理(S340,S350)を実行して、本ルーチンを終了する。
【0046】
遅延フェーズの処理においては、まずS340にて、遅延時間dtから差分時間Δを減算する。そして、続くS350では、現在時刻cTを前回時刻lTとして書き込む。つまり、図3(b)のS252において設定された遅延時間dt(図5も参照)は、差分時間Δずつ減算されていき、残り遅延時間dt≦0となったら(S330:NO)、スムージングフェーズ処理(S360〜S390)を実行して、本ルーチンを終了する。
【0047】
スムージングフェーズの処理においては、まずS360にて、現在値cLに移動速度S×差分時間Δを加算する。なお、この現在値cLが現在のサーボ制御目標値になり、このサーボ制御目標値に基づいてサーボ制御を実行することとなる。
【0048】
そして、目標値dLに達したか否か判定し(S370)、目標値dLに達していなければ(S370:NO)、S350へ移行し、現在時刻cTを前回時刻lTとして書き込んで本ルーチンを終了する。
【0049】
一方、目標値dLに達した場合には(S370:YES)、S380へ移行し、演算実行フラグrunを降ろす(run=0)。そして、現在値cLを目標値dLに書き換える。これは、現在値cLが目標値dLを飛び越えないようにするリミッタ処理である。
【0050】
現在のイベント実行中(run=1)の場合には(S310:YES)、S320〜S390の処理を繰り返し実行するが、現在のイベントが実行中でない(run=0)場合には(S310:NO)、S400へ移行する。
【0051】
S400では、イベントバッファに次のイベントがあるか否か判定し、イベントバッファに次のイベントがあれば(S400:YES)、次のイベントデータを読み込んで設定し(S410)、S320へ移行する。一方、イベントバッファに次のイベントがなければ(S400:NO)、本ルーチンを終了する。
【0052】
[効果]
(1)このように本実施形態の自動演奏ピアノ1によれば、ダンパーペダル10の操作を行うソレノイド30に対する駆動制御を行うのであるが、自動演奏のイベントが発生すると、そのイベントに対応するダンパーペダル10の目標位置nDを設定し、その目標位置nDと、位置センサ32から入力した位置データとが一致するように、ソレノイド30をサーボ制御する。
【0053】
このサーボ制御においては、自動演奏イベントが発生すると、ダンパーペダル10を、所定の移動速度Sでイベント発生から総遅れ時間DT後に目標位置nDに移動させるため、どれだけ遅延させて移動開始させればよいかを示す遅延時間dtを計算する。そして、イベント発生から遅延時間dtが経過した後、所定の移動速度Sで目標位置nDへ移動するようにサーボ制御の目標値を逐次変更(図4のS360において現在値cLに移動速度S×差分時間Δを加算して逐次変更していることが対応する。)しながらサーボ制御を実行する。
【0054】
ここで、総遅れ時間DTは、自動演奏装置1が備える全てのペダル及び鍵をイベント内容に応じてそれぞれの目標位置へ移動させる場合に、最も遅れるものであっても間に合うよう考慮して設定されたタイミングである。そのため、自動演奏装置1のダンパーペダル10が適切なタイミングで操作されるようソレノイド30を適切に駆動制御することができる。
【0055】
(2)また、図4のS360〜S390にてスムージングフェーズ処理を実行しているが、移動速度Sは、この処理におけるスムージングパラメータ(エンベロープスピード)である。ペダルに関するイベント情報として128段階設定されていても、実際のMIDIの曲データでは、オン(127)とオフ(0)の2値しか記録されていない場合が多く、2値ではサーボ制御であることの効果が薄くなる。そこで、本実施形態のようにスムージング処理すれば滑らかなペダル操作が可能になる。
【0056】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0057】
(1)上記実施形態では、サーボ制御する対象をダンパーペダル10としたが、鍵盤60(の各鍵)としてもよい。
また、アクチュエータとしてソレノイド30を用いたが、ソレノイド30以外のアクチュエータであっても同様に実現できる。
【0058】
(2)上記実施形態では、図3(b)のS251において、ペダルテーブルを用いた変換(つまり、演奏データに基づく自動演奏におけるダンパーペダル10に対する新規目標入力値nLに対応する新規目標位置nDを設定)しており、その後の処理を位置情報で行っているが、MIDIの演奏データに相当する値で処理を行っておき、最後にペダルテーブルを用いて変換することも考えられる。
【0059】
(3)また、 なお、この移動速度Sは、固定値又は機種ごとに設定する値とすることが考えられるが、例えば、「今までの最終目標値−新規目標値」に応じて速度を変更したり(例えば、差が大きかったらゆっくり、など)、あるいは「現在値−目標値」に応じて速度を変更する(例えば、差が大きかったら速く、など)こともできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は自動演奏ピアノの全体構成を示すブロック図、(b)は自動演奏ピアノのダンパーペダル機構の説明図、(c)はソレノイド駆動回路の回路図である。
【図2】はメイン処理を示すフローチャートである。
【図3】(a)はペダル関連のイベント処理を示すフローチャート、(b)は目標位置設定処理を示すフローチャートである。
【図4】遅延・スムージング処理を示すフローチャートである。
【図5】遅延・スムージング処理の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…自動演奏ピアノ、10…ダンパーペダル、24…ダンパー、26…弦、30…ソレノイド、32…位置センサ、40…インタフェース部、42…CPU、43…タイマ、44…ROM、46…RAM、52…ソレノイド駆動回路、62…MIDIインタフェース部、60…鍵盤、70…操作パネル、80…バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動演奏装置のペダルまたは鍵の操作を行うアクチュエータに対する駆動制御を行うアクチュエータ駆動制御装置において、
自動演奏のイベントが発生すると、そのイベントに対応する前記ペダルまたは鍵の目標位置を設定し、その目標位置と、前記ペダルまたは鍵の位置を検出する位置検出手段から入力した位置とが一致するように前記アクチュエータをサーボ制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記自動演奏イベントが発生すると、前記ペダルまたは鍵を、所定の移動速度で前記イベント発生から所定時間後に前記目標位置に移動させるため、どれだけ遅延させて移動開始させればよいかを示す遅延時間を計算し、前記イベント発生から前記遅延時間が経過した後、前記所定の移動速度で前記目標位置へ移動するように前記サーボ制御の目標値を逐次変更しながらサーボ制御を実行し、
前記イベント発生から所定時間後とは、前記自動演奏装置が備える全てのペダル及び鍵をイベント内容に応じてそれぞれの目標位置へ移動させる場合に、最も遅れるものであっても間に合うよう考慮して設定されたタイミングであること
を特徴とするアクチュエータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータ駆動制御装置において、
自動演奏装置のペダルの操作を行うアクチュエータに対する駆動制御を行うことを特徴とするアクチュエータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ駆動制御装置を備えたことを特徴とする
自動演奏装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−244511(P2009−244511A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89792(P2008−89792)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)