説明

自動調節式プレストレッシング機能を有するガントリー

本発明は、橋梁及び陸橋を含む各種構造物の建設過程において用いるためのガントリーであって、荷重負荷時に付与される外部作用に応じて前記ガントリーの構造のプレストレッシングを自動的に調節するシステムを装備したガントリーに関する。プレストレッシングの調節は、構造を監視する少なくとも1つのセンサ(2)を用いることによって行われ、このセンサはその測定値を制御装置(6)に伝達し、制御装置(6)は次いで構造の1つ又は複数のプレストレッシング用ケーブルの張力を変更する少なくとも1つのアクチュエータを起動することができる。本発明の多くの利点のうちの1つは、外部荷重が負荷されていない時に主構造(1)において望ましくない変形を伴うことなく大きなプレストレスを加えることができることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設用のガントリーに関し、詳しくは、プレストレッシングを自動的に調節するシステムを装備したガントリーに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の土木工学においては、橋梁及び陸橋の建設における(上架式(overslung)及び懸架式(underslung)の)ガントリーの使用が、地上設置式の足場を大きく上回るようになっている。しかしながら、これらのガントリーのより一般的な使用を妨げている要因は、これらが材料及び建設労力の点から大きな投資となるということである。現在のガントリーは再利用可能なものではあるが、特にプロジェクトにおいて当初の設計目的よりも大きな荷重を支えることが要求される場合に、ガントリーを再び適応させることが必要になることも非常に一般的である。この適応は、それ自体が時間及び費用のかかるプロセスであり、通常、建設のペースを遅らせる。
先行技術のガントリーの使用はかなりの危険性をも伴っている。これは、これらのガントリーが、多大な不変荷重及び変動荷重を支持するように意図された構造であり、構造を脆弱化させ、最終的には崩壊に至らせることがある多大な変形及び応力が生じ得るからである。過去に数件の事故が発生している。
プレストレッシングが調節可能なケーブル及び緊張材の使用は、従来は、特許出願WO00/68508号(インターコンステック社(Interconstec Co. Ltd))、WO02/28168号(インターコンステック社)及びWO01/27406号に記載のように、コンクリート桁を強化及び補強するために採用されている。
【0003】
しかしながら、これらの構造には、ケーブルの張力を増加又は減少させるために外部ツールの導入が必要であった。調節も、常に構造に付与された荷重に応じて行われるのではなく、桁の定期保守の方法に含まれていた。
【0004】
(発明の目的)
本発明の主な目的は、荷重負荷時に付与される外部作用に応じてガントリーの構造のプレストレッシングを調節する自動又は半自動システムを有するガントリーを提供することである。
本発明のさらなる目的は、先行技術のガントリーよりも構造的に高効率なガントリー、より詳細には、ガントリーの構造における変形及び応力を検出すると即座にそれらに対処することができ、それにより十分な構造性能を保証する補償が確実に行われるようにするシステムを有するガントリーを提供することである。
また、本発明のさらなる目的は、同等の大きさ及び構造重量の先行技術のガントリーよりも大きな荷重を支持することができるガントリーを提供することである。
最後に、本発明の付加的な目的は、異なる新旧の手延式ガントリーユニット(launching gantries units)を強化するために用いることができるシステムを提供することである。
【発明の開示】
【0005】
最も広い局面によると、本発明は、橋梁及び陸橋を含む各種構造物の建設過程において用いるためのガントリーであって、前記ガントリーは、主な耐荷重構造と、少なくとも1つのアンボンデッドケーブル(unbonded cable)と、前記アンボンデッドケーブルの一端を前記構造に固定するための第1の固定具と、前記アンボンデッドケーブルの反対端を前記構造に固定するための第2の固定具と、を備え、前記主構造における物理的変化を測定可能な少なくとも1つのセンサと、前記測定値を読取可能なデータに変換するとともに前記データを制御装置に送信する電子インタフェースと、が設けられ、前記制御装置は、前記構造と前記アンボンデッドケーブルとの間に載置され得られた測定値に応じて前記アンボンデッドケーブルの張力を増大又は低減させることが可能なアクチュエータを起動させることが可能であることを特徴とするガントリーを提供する。
前記アンボンデッドケーブルは、前記主構造の輪郭の内側又は外側のいずれにあってもよく、直線又は多重線構成をとり得る。2つ以上のケーブルがある場合には、内側及び外側のケーブルが混在していてもよく、それらのケーブルの端部は、2つ以上の固定具を固定し得る構造部材に連結された特定の固定具によって個々に固定される。それらの構造部材は一般的な補強板である。一般に、制限は、ケーブルの構成が構造と建設過程のいずれとも両立しないものであってはならないということだけである。
上述のように、主構造は、ガントリーの構成要素の近傍、表面若しくは内部に配置されるか又は主構造の外側にあってもよい少なくとも1つのセンサによって監視される。概して、前記1つ又は複数のセンサの位置は、センサが、使用中において主構造上のあらゆる所定の物理的変化を正確に測定できさえすれば、重要ではない。
アクチュエータによって加えられるべき力の強度及び/又は方向の計算に有用な測定値は、例えば、変位、回転、変形、荷重レベル、張力、伸び又は圧力であり得る。ガントリーはまた、温度を測定し、最終的には速度又は加速度を測定するための1つ又は複数の補助センサを装備しているのが好ましい。多種のセンサによって適正な結果が得られるが、一例として、1つ又は複数のセンサは、圧力変換器、伸び計、LVDT、レーザセンサ又は充電セル(charge cell)である。センサは、制御装置に直接接続されてもよく、増幅器フィルタ装置又は変換装置を含み得るインタフェース回路を介して接続されてもよい。いくつかの変換器を標準出力(例えば、4〜20mA)で用いることによりいかなる付加的なインタフェース構成要素も必要としないことが好ましい。
本発明におけるデータ又は信号の送信は、物理的接続又は無線技術のいずれかによって、より詳細には、電気配線、光ファイバー通信、無線周波もしくは赤外線、Wi−Fi又はブルートゥース(登録商標)技術によって達成することができる。データ又は信号を(1つ又は複数の)センサと制御装置との間及び制御装置と(1つ又は複数の)アクチュエータとの間で送信するのに無線技術を用いる場合には、前記のこれらの構成要素に、対応する前記データの送信器及び受信器を設ける必要がある。
前述の本発明の制御装置は、少なくとも1つのソフトウェアプログラム又は処理コードを実行可能な少なくとも1つのコンピュータ又は自動装置を含む。前記ソフトウェアプログラム又は処理コードは、前記又は各センサからデータを受信し、前記又は各センサから受信したデータを処理し、処理されたデータを命令信号として少なくとも1つのアクチュエータに送信することができる。これらの命令信号は、1つ又は複数のアクチュエータを起動して、アクチュエータにアンボンデッドケーブルの張力を正確に増大又は低減させる。好ましくは、前記制御装置の前記ソフトウェア又は処理コードは、少なくとも3つのサブプログラム、すなわち、テストプログラム(Test Program)、荷重負荷プログラム(Loading Program)及び無負荷プログラム(Unloading Program)を有する。テストプログラムには、ケーブルの引っ張り及び弛緩を直接的に促進し、そうすることで較正試験及び保守試験の実施を可能にするのに用いられる基礎アルゴリズムが組み込まれている。荷重負荷プログラムには、荷重負荷段階(例えば、コンクリート充填の際)において当該特定のガントリーのために採用される制御方法を反映するアルゴリズムが組み込まれている。無負荷プログラムには、アクチュエータの(例えば橋梁床板プレストレッシング時に用いられるべき)載置位置への復帰を反映するアルゴリズムが組み込まれている。
上述のように、制御装置から命令信号を受信すると、1つ又は複数のアクチュエータの動きが促進される。前記命令信号は、1つ又は複数のアクチュエータが特定の強度の力及び/又はその方向を加えるのを促進する。従って、1つ又は複数のアクチュエータは、1つ又は複数のアンボンデッドケーブルの張力を変更し、それにより主構造のプレストレッシングを調節する役割を担っている。当業者には明らかなように、ケーブルの張力の増大又は低減は、外部作用によって構造内に生じる内力を抑制する必要性に応じたものである/でなければならない。2つ以上のケーブルがある場合には、前記ケーブルの張力は、互いに一致又は独立して緊張又は弛緩され得る。この特性により、主構造の特定の部分においてプレストレッシングを調節することが可能となる。
本発明の別の多少有利な実施形態においては、制御装置は、1つ又は複数のアクチュエータを起動することができる電子制御盤を管理する人間の操作者であってもよい。この実施形態においては、人間の操作者は、前記1つ又は複数のセンサから送信されたデータを受け取り、解釈する。人間の操作者は、次いで、読み取り値に応じて、主構造上に自己平衡力を導入するために1つ又は複数のアクチュエータの動きを促進する。構造におけるこのようなプレストレッシングの半自動調節は、完全自動制御装置よりも精度が低く、それゆえ安全性及び信頼性に劣る。また、人間の操作者が、橋梁床板のコンクリート充填の際などに数時間に及ぶ期間中、1つ又は複数のアクチュエータを永続的に制御することが求められる。
なお、本発明は、既存のガントリーに自動調節式プレストレッシングシステムを装備することも意図している。この方法は、既存のガントリーに前記の本発明の必須構成要素及びシステムを装備することによって達成される。
本発明の大きな利点は、外部荷重が負荷されていない時に主構造において望ましくない変形を伴うことなく多大なプレストレスを加えることを可能にすることである。外部荷重が負荷されていない状態で先行技術の「固定式」プレストレッシング法を用いてこのような大きさのプレストレスを加えると、主構造は「めちゃくちゃに」壊れてしまう。その他に、本発明は、プレストレス損失を実質的に低減する。
自動調節式プレストレッシング機能を有するガントリーは、調節式プレストレッシングにより主荷重が補償されるため、支間中央のたわみが非常に低減される。プレストレッシングにより圧縮応力が導入されるが、前述と同様の理由により、主構造上の曲げモーメントが実質的に低減され、それにより主構造部材における最大応力が低減される。このため、各構造部材部を著しく縮小化することができ、はるかに軽量で機能的なガントリーが得られる。
さらに、前記ガントリーは、単一のガントリーをはるかに多く再利用することが可能になるため、経済的にも現在の先行技術よりも高効率である。本発明の明細書から明らかになるように、自動調節可能なプレストレッシング機能を有するガントリーは、実質的な付加補強材を必要とすることなく、はるかに多数の荷重レベル範囲(又は支間範囲)に適応可能であるので、先行技術のガントリーよりもさらに多くの状況において用いることができる。
別の大きな利点は、ガントリーの構造挙動が継続的に監視され、外部作用によって生じる危険な変形又は張力が即座に抑制及び解消されることである。冗長性が付与されるので、特に電子部品及びいくつかの機械的装置については、部品の故障が生じた場合でも、ガントリーの安全性が影響を受けることはない。
なお、本明細書中で用いる用語「プレストレッシング」とは、外部作用によって構造内に生じる内力を抑制する一組の自己平衡力を構造上に導入することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、特定の好適な実施形態及び前記の図面を参照しながら、本発明の詳細な説明を記載する。実施形態及び図面の説明は一例にすぎず、添付の請求項によって規定される本発明の範囲を限定するものではない。
図1を参照すると、2つの外側部と1つの中央部によって構成される主構造(1)を含むガントリーが示されている。手延工程(launching process)を容易にするように意図されている2つの外側部は、型枠及び主荷重を支持することを目的とする中央部よりも高さが低い。主構造は、図1に示すものと同様の設計となるようなトラス箱桁である。支点の位置は、典型的な構築工法用に定められており、この工法においては、構造の支間において同一の長さを有する各コンクリート充填セグメントがその前のセグメントの手前側支点から支間の約1/5分の間隔をおいて始まる。
主構造(1)は、該構造の長手方向のそれぞれの側にある2つの外部ケーブル(5)を装備している。ケーブルは、自明の理で、アンボンデッド(unbonded)でなければならず、モノストランドであってもマルチストランドであってもよい。アンボンデッドケーブルは、グリースを充填したプラスチックパイプを用いて作製されていてもよく、その他の先行技術の方法に従って作製されていてもよい。前記各外部ケーブル(5)の偏心は、2つの対応する連結支材(13)によって支持される2つの離間された外部偏向サドル(14)によって得られる。前記各連結支材(13)は、1つの偏向サドル(14)に連結された第1の端部と前記主構造(1)に連結された第2の端部とを有する。前記連結支材(13)は、手延工程を容易にするために、(回転による)引込み式又は伸縮式であるのが好ましい(図10を参照)。
両ケーブル(5)の各端部は、2つの固定具によって前記主構造(1)に固定される。両ケーブル(5)の第1の端部は、固定式又は「受動式」の先行技術の固定具によって主構造に固定される。図3においては、これらの固定具は、主構造(1)に永久的に連結された高強度板(15)に固定された先行技術の固定具ヘッド(16)からなる。前記両ケーブル(5)の反対側の端部は、本発明の可動式固定具に取り付けられる。
図4においては、本実施形態の可動式固定具は、1つの油圧ジャッキ(23)に取り付けられた高強度板(18)に固定された先行技術の固定具ヘッド(16)からなる。前記油圧ジャッキは、主構造(1)に永久的に連結された高強度受圧板(17)に固定される。
なお、その他の種々の実施形態が可能であり、例えば、受圧板(17)が両側に、中央部のケーブル上に設置された2つの油圧ジャッキを有していてもよく、ケーブル数がアクチュエータ数と等しければ、ケーブルがその(先行技術の中空シリンダ)中を通っていてもよい。
板(18)及び固定具ヘッド(16)を主構造(1)から遠ざける基本のストロークによって達成され得る油圧ジャッキ(23)のピストンの運動には、ガントリーの1つ又は複数のケーブルを緊張させ、構造におけるプレストレスのレベルを高める効果がある。逆に、板(18)及び固定具ヘッド(16)を主構造(1)に近づけると、ガントリーの1つ又は複数のケーブルを弛緩させ、それゆえ構造におけるプレストレスのレベルを低下させる効果がある。油圧ジャッキ(23)のピストンの運動は、以下に詳細に述べる油圧回路及びエネルギー供給によって得られる。ピストンの前進ストローク数に関連した、油圧ジャッキ(23)によって板(18)に加えられるべき力の強度は、制御装置から受信した処理済信号に応じたものであり、これらの信号は1つ又は複数のセンサの測定値に基づいている。可動式及び受動式固定具はいずれも、ケーブルの取り替えや構造の移動の際に必要に応じてケーブルを取り外すことができるように設計される。
あるいは、図9を参照すると、前記アンボンデッドケーブル(5)の緊張及び弛緩は、油圧ジャッキ(23)が主構造(1)と偏向サドル(14)との間に配置される場合、伸縮式支材(13)の動きによって達成することもできる。この実施形態によると、油圧ジャッキのピストンの伸びにより、対応する偏向サドル(14)が強制的に主構造(1)から遠ざけられる。この作用によって、偏向サドルに接続されたケーブルが緊張し、構造のプレストレスが高まることになる。この場合、アクチュエータは、力と偏心を同時に増加させる。
アクチュエータの油圧回路は、図7に示すものと同様のものであってよい。該油圧回路は、いくつかの方向弁(22)に連結された油圧ポンプ(20)及びそれに対応するモータ(21)、いくつかの圧力制御弁(25)並びにタンク(24)を含む。方向弁(22)は、いくつかのパイプつまり管(8)を介して1つ又は複数の油圧ジャッキ(23)に連結されている。制御装置からの命令信号は、パイプ(8)中の油又は同様の流体の流れを促進する電気モータ(21)を起動する。命令信号はまた、油又は同様の流体の流れの方向を変えるために方向弁(22)の動きを促進する。油圧システムの設計及び設置は、目的に適った公知の技術を用いて、一般的な方法に従って行われる。アクチュエータが2つ以上(例えば、ジャッキが2つ以上)の場合は、油圧システムの設計をそれに応じて適応させる。構造の完全性を損なうおそれがあるので、油圧回路とジャッキの組合せを過度に急速に作用させないことが重要である。前記モータは、電気モータであるのが好ましいが、その他の選択肢も同様に適している。
油圧システムが有していなければならない要件は以下の通りである。
(i)各油圧ジャッキに加わる最大の力は、各油圧ジャッキが発生させなければならないプレストレス力に等しい。
(ii)各ピストンの最大ストロークは、最大のプレストレス力を発生させるケーブルの引張りと、プレストレス損失を補償するのに必要なストロークと、ケーブルの組み立てを容易にする構築的ストロークと、の総和に対応する。
(iii)各ピストンの最小速度は、システムの応答期間が、対応する荷重負荷期間以下となるような速度である。
(iv)ピストンの最大速度は、動的問題を回避するためにその他の措置がとられるのでない限り、α係数(動的増幅係数)がシステムの不安定性を示さないような速度である(以下の式2を参照)。
(v)各ピストンにおける最小圧力は、各ピストンの寸法が幾何学的にガントリー上での挿入に適合するような圧力である。
前記の調節可能なプレストレッシングシステムの自動性を実現するために、本発明のガントリーは、主構造(1)の構造挙動を監視するための少なくとも1つのセンサも装備している。好適な実施形態においては、主構造(1)に、該構造(1)の下側底面の支間中央付近の領域に配置されるのが好ましいセンサが取り付けられる。このセンサは、例えば、被制御部の外形に接着された伸び計であり、これにより伸縮変化、次いで張力変化の測定が可能になる。主構造(1)は、好ましくは、ガントリーの支間の中間に配置された圧力変換器を装備していてもよく、これにより圧力ひいては高度変化の測定が可能になる。図8においては、これは、固定位置(例えば1つの柱の上)に配置された流体タンク(28)内の液面と、可撓性の流体導管を相互連結線(27)として手延式桁(1)の支間中央に配置された適切な圧力変換器(26)と、の間の静圧力差に基づいた非常に簡単な測定法である。主構造のあらゆる変形は、圧力センサでの圧力変化として測定される。この値は、垂直方向の移動による影響のみを受け、水平方向の移動又は構造上の圧縮現象の影響を受けない。
言うまでもないが、センサ数が多いほど主構造(1)に作用する外力及び内力の感知度が高くなり、それゆえ常に構造挙動がより明瞭になる。例えば、伸び計をいくつかのトラス要素に取り付けて、油圧ジャッキピストンの位置をLVDTセンサによって確認すると有利である。しかしながら、冗長性は無視しないので、主制御アルゴリズムにおいて1つの尺度のみを考慮するとすれば、システムはより簡単になる。ガントリーの構成要素の近傍、表面もしくは内部又は主構造(1)に対して外部に設置することができる1つ又は複数の補完的なセンサは、物理的接続又は無線送信のいずれかを介して制御装置へと送られるデータを生成することができ、冗長性が付与される。各センサの電流出力信号については、特に変換器が制御装置から数十メートル離れて配置される場合には、熱変化及び電磁場の影響を受けないように留意する必要がある。
上述のように、本発明の制御装置(6)は、コンピュータソフトウェアプログラム又は処理コードを含む少なくとも1つのコンピュータ又は自動装置(例えばPLC)を含む。このコンピュータソフトウェアは、前記1つ又は複数のセンサ(2)からのデータの受信段階と、前記1つ又は複数のセンサ(2)から受信したデータを処理するための処理段階と、処理されたデータ又は命令信号を1つ又は複数のアクチュエータに送信するための送信段階とを含む。なお、前記1つ又は複数のセンサ(2)と制御装置(6)との間の距離は、限定的な特徴ではない。
前記コンピュータソフトウェアプログラム又は処理コードは、使用されるコンピュータ又は自動装置に適合した言語で、周知の演算技術に従って開発される。前記プログラム又は処理コードの目的は、調節可能なプレストレッシングシステムの自動制御のための制御方法を提供することである。
概して、以下の制御方法のうちの1つが採用される。
a)支間中間下部(制御部)の張力の制御
b)ガントリー支間中央たわみの制御
開発された制御方法(a)は、古典的な「オン‐オフ」と同様の簡単なアルゴリズムになる。基本的には、アクチュエータを1つだけ有するガントリーの場合、制御部上で牽引力が増加すると、油圧ジャッキのピストンが所定のストローク前進する(主構造(1)から遠ざかる)、すなわち、プレストレス力が増幅される。一方、牽引力が減少すると、油圧ジャッキ(23)は所定のストローク後退する(主構造に近づく)、すなわち、プレストレス力が低減される。
前記のアルゴリズムを図5のグラフに示す。このアルゴリズムは以下の数式で表すこともできる。
【0007】
【数1】


式(1)
式中、
σSci(G)は、死荷重による制御断面i内の該当繊維における応力であり、
【0008】
【数2】


は、時点tにおける活荷重による制御断面i内の該当繊維における応力であり、
【0009】
【数3】


は、1つの油圧ジャッキストロークにおいて生じた制御断面i内の該当繊維における応力増分であり、
【0010】
【数4】


は、時点t及びt+Δtにおける前進ストローク数であり、
【0011】
【数5】


は、時点tにおける自動調節可能なプレストレッシングの作用による制御断面i内の該当繊維における応力であり、
ΔcieΔaiは、調節可能なシステムの圧縮限界及び動作限界である(これらは、センサに信号を発生させる応力レベルである)。
この種のアルゴリズムを採用する場合は、次に、不安定性を回避するために制御の設定を固定する措置をとらなければならない。
典型的に、ガントリーの荷重負荷は非常にゆっくりと行われる。例えば、橋梁床板のような構造のコンクリート充填は数時間かかり得る。このため、動的増幅の影響を回避することは特に容易である。必要なのは、各ストロークの期間が確実に主構造(1)の固有振動周期の数倍の長さになるようにすることだけである。それでもやはり、動的増幅を定量化し、以下の条件を確認しなければならない。
【0012】
【数6】


式(2)
式中、αは、1つのストロークのアクチュエータの排他的作用の際に測定される動的増幅の係数を表し、δjは各不確定要素jを表す。
動的問題は、例えば平均値とは著しく異なるデータを無視するソフトウェアフィルタを用いて回避してもよい。
本発明の一般的な応用例においては、考慮すべき重要な不確定要素は、伸び計の読み取り値の最大誤差に等しい伸びによる制御部上の張力の偏差(δ1)と、基本軌道運動の際の油圧ジャッキ(23)のピストンの位置決めの最大誤差による制御部上の張力の偏差(δ2)(後者は、それ自体がいくつかの不確定要素すなわち主構造(1)及びケーブル(5)の材料特徴、張力損失並びに施工誤差に関連した不確定要素を有する)である。
上述の誤差の定量化(又は材料の特性の最大偏差)が機器及び材料の供給業者によりなされる場合でも、較正工程においてそれぞれの値を実験的に定量化するために試験を行うべきである。
この種の応用例においては、比較的長期にわたる荷重負荷であれば、応答遅延は一般に無視される。
同時に、以下の式を確認しなければならない。
【0013】
【数7】


式(3)
この式を満たすことによって、無荷重の状態においてシステムが元の位置に戻ることが確実になる。
制御設定の固定は以下のように行われる。
・ピストンストローク
【0014】
【数8】


中にアクチュエータによって生じる制御部i上の張力の増加を、油圧ジャッキ(23)が許容可能な精度で達成することができる最短ストロークの関数として規定する(ケーブルの引張りに等しいストロークがわかれば、それによりプレストレスがわかり、次いで、制御部上の対応する張力変化も規定される)。
・前記の値がわかり、不確定要素の和もわかると(選択された機器及び材料の関数)、式3を用いてΔaiを決定することができる。
・αの値は、予め固定され、試験によって確認される。
・最終的に、式2に従ってΔciが固定される。
制御方法(b)は、(a)と同様のアルゴリズムによって決定することができる。その場合、制御変数は支間中央たわみとなり、図8のセンサの実施形態が採用される。基本的に、アクチュエータを1つだけ有するガントリーの場合、支間中央たわみが所定値を超えると、油圧ジャッキのピストンが所定のストローク前進する(主構造(1)から遠ざかる)、すなわち、プレストレス力が増幅される。一方、支間中央たわみが別の所定値を超えると(主桁支間中央部が「高すぎる」と)、油圧ジャッキ(23)は所定のストローク後退する(主構造(1)に近づく)、すなわち、プレストレス力が低減される。この2つ目の方法(b)は、制御方法(a)よりも適用が簡単であり、(センサが配置された位置での)局所的現象に影響されない。この方法は式1と同様の式によって数学的に記述し得る。
この手順は、2つ以上のアクチュエータを有するガントリーに簡単に一般化することができる。より確固とした方法は、コンクリート充填の実施方法、又は橋梁曲線部床板などの非対称荷重の考慮のような要因を考慮して計画される。
制御盤は、その都度、好みやニーズに応じて、一般的な技術によって設計される。制御盤は、引張りボタン又はディジタルインタフェースによって起動し得る。制御盤は、ガントリー(1)内でアクチュエータ及び油圧ポンプ(20)の近くに配置するのが好ましい。
当業者には明らかなように、システムの制御は、半自動式に、人間の操作者が自動制御ユニットに代わって行ってもよい。この場合には、油圧回路及び油圧ジャッキ、すなわち加えられるべき力の強度と方向を制御する簡単な電気基盤が存在する。人間の操作者は、主構造の近傍、表面、内部及び/又は外部に配置されたセンサの読み取り値を受け取り、それらを解釈し、どのジャッキを動作させるのかとともに該動作の方向及びレベルを手動制御する。この半自動システムは、前記の完全自動システムよりもエラーが生じやすいが、本発明の別の実現可能な実施形態を提供している。
本発明のガントリーを、例えば1つの支間から別の支間へと、容易に移動させるには、ある機能要件に注意を払うことが最も重要である。この目的のために、構造の輪郭から大きく突出したガントリーのある構成要素が、移動可能、引込み可能、又はさらには取り外し可能であるように設計される。これは、連結支材(13)、偏向サドル(14)及びケーブル(5)に関して特に重要である。この目的を達成するために、各手延特性(launching characteristics)に応じていくつかの方法が考えられ得る。1つの可能な実施形態は、本発明に、二次的な油圧ジャッキによって位置決めされ、回転ストロークが構造用の固定された装置によって制限される回転支材を設けることである(図10を参照)。
主構造を異なる長さの多くの支間に適応させるために主構造(1)をいくつかのモジュール部分に分割することを可能にすることも考えられる。この特性は、多くの最新の先行技術のガントリーに共通している。
構造設計上の特徴によると、補強材(12)を、固定具の領域及び連結支材(13)の主構造(1)への連結位置の近くに取り付けてもよい。
偏向サドルは、フレッティング疲労を防止するために、ケーブルに接線経路を与え、それにより最終的な高い摩擦力を低減させるいくつかの滑動部品(図示せず)を1つ又は複数のケーブルとの接触部に有するように設計してもよい。その目的のために潤滑化した車輪を用いてもよい。
アクチュエータの近くに安全用機械式保持システムを設けてもよく、2つの固定支材に取り付けられた2つの調整ナットがピストンの運動にわずかに遅れて付随し、それにより、油圧部品の故障の場合にもアクチュエータの吸戻し(retraction)を防止する。
アクチュエータの油圧回路においては、いくつかの付加的な保持弁を方向弁とピストンとの間に設置することができ、それにより、プレストレス損失が回避される。システムはまた、安全上の危険を検知する警報装置を装備しているのが好ましい。警報装置とは別に、緊急信号又はメッセージを、制御室、又は最終的には現場の技術者及び操作者の携帯電話にまで送信することができる。さらに、エネルギー停止が発生した場合に電力の供給を保証するために無停電電源装置(UPS)システムを設計及び設置するのも好ましい。
その都度の重要性及び関連リスクに応じて、大半の電子部品及びいくつかの油圧回路構成部品に冗長性を付与しなければならない。
実際の作業現場においてガントリーに荷重負荷する前に、一連の予備試験及び較正試験の実施のようなある手順をとることも望ましい。これらの試験は、ある機械的・構造的特性及び条件を特定するとともに、接続、ケーブルの弾性、1つ又は複数のセンサの性能並びに1つ又は複数のアクチュエータの機能及び精度を評価するものである。試験はシステム全体が適切に調整されるまで行われるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を構成する主な構成要素が示された、本発明の一実施形態の簡単化された側面図である。
【図2】図1のガントリーの実施形態の概要を表す上面図である。
【図3】受動式/非可動式の固定具を用いて主構造に固定されたアンボンデッドケーブルの一端を示す。
【図4】間に配置された油圧ジャッキによって能動式/可動式となっている固定具を用いて主構造に固定されたアンボンデッドケーブルの一端を示す。
【図5】本発明の可能な自動制御プロセスの概略フローチャートである。
【図6】本発明の制御アルゴリズムの可能な実施例の図を示す。
【図7】油圧回路の簡単図を示す。
【図8】圧力変換器が導入された流体回路の概略図を示す。
【図9】伸縮式連結支材及び偏向サドルの簡単図を示す。
【図10】可動式支材・偏向サドルシステム(回転可動式)の別の実施形態の簡単図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁及び陸橋を含む各種構造物の建設過程において用いるためのガントリーであって、前記ガントリーは、主構造と、少なくとも1つのアンボンデッドケーブル(unbonded cable)と、前記アンボンデッドケーブルの一端を前記構造に固定するための第1の固定具と、前記アンボンデッドケーブルの反対端を前記構造に固定するための第2の固定具と、を備え、
前記主構造の荷重又は内力を示す前記主構造における物理的変化を測定することができる少なくとも1つのセンサユニットと、
前記測定値を読取可能なデータに変換するとともに、前記データを制御装置に提供する電子インタフェースと、
前記構造と前記アンボンデッドケーブルとの間に永久的に載置され、前記制御装置に従って、前記アンボンデッドケーブルの張力を、前記主構造の荷重若しくは内力の増大に応じて増大させるように、又は、前記主構造の荷重若しくは内力の低減に応じて低減させるように、変化させるアクチュエータと、
が設けられていることを特徴とするガントリー。
【請求項2】
前記制御装置は、
少なくとも1つのコンピュータプログラム又は処理コードを実行可能な少なくとも1つのコンピュータ又は自動装置であることを特徴とする請求項1に記載のガントリー。
【請求項3】
前記コンピュータプログラム又は処理コードは、
前記センサにより送信された前記データを読み取るとともに、前記アクチュエータにより前記アンボンデッドケーブルに加えられるべき力の強度及び/又は方向を算出することが可能であることを特徴とする請求項1及び2に記載のガントリー。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記少なくとも1つのアクチュエータに接続されたスイッチボードを手動制御する人間の操作者であることを特徴とする請求項1に記載のガントリー。
【請求項5】
前記アンボンデッドケーブルは、
前記主構造の輪郭の内側又は外側にあり得ることを特徴とする請求項1に記載のガントリー。
【請求項6】
前記アンボンデッドケーブルは、
直線又は多重線構成を有することを特徴とする請求項1及び5に記載のガントリー。
【請求項7】
前記アンボンデッドケーブルの張力は、
前記固定具が前記主構造に対して離れる方向又は近づく方向に移動することにより、前記アクチュエータによって各々増大又は低減されることを特徴とする請求項1に記載のガントリー。
【請求項8】
1つのアクチュエータは、
1つ又は複数の可動式固定具を移動させることが可能であることを特徴とする請求項1及び7に記載のガントリー。
【請求項9】
前記アクチュエータは、
固定具と前記主構造との間に配置された少なくとも1つの油圧ジャッキであることを特徴とする請求項1、3及び4に記載のガントリー。
【請求項10】
前記アクチュエータは、
前記アンボンデッドケーブルを支持するサドルに着脱可能に連結された第1の端部と、前記主構造に着脱可能に連結された第2の端部と、を有する少なくとも1つの伸縮可能な支材であることを特徴とする請求項1に記載のガントリー。
【請求項11】
前記サドルを支持する1つ又は複数の前記支材は、
並進運動又は回転運動により引込可能又は移動可能であることを特徴とする請求項1及び10に記載のガントリー。
【請求項12】
前記センサ又は各センサは、
ガントリーの構成要素の近傍、表面上若しくは内部に配置されるか、又は、前記主構造の外側にあることを特徴とする請求項1に記載のガントリー。
【請求項13】
前記センサは、
伸び計、圧力変換器、LVDT、レーザセンサ、充電セル、傾斜計、圧縮率測定センサ又は同様の装置であることを特徴とする請求項1及び12に記載のガントリー。
【請求項14】
前記アクチュエータによって加えられるべき力の強度及び/又は方向の算出に有用な前記センサ又は各センサによって測定される前記データは、
少なくとも圧力、たわみ、回転、変形、応力又は荷重レベルであることを特徴とする請求項1から13の何れか一項に記載のガントリー。
【請求項15】
前記センサと前記制御装置との間の前記読取可能なデータの送信、及び、前記制御装置と前記アクチュエータ又は各アクチュエータとの間の前記処理されたデータの送信は、
電子回路、光ファイバー通信、無線周波、赤外線、WI−FI又はブルートゥース(登録商標)技術によって行われることを特徴とする請求項1から14の何れか一項に記載のガントリー。
【請求項16】
型枠(場所打ち構造)、プレキャストセグメント、プレキャスト桁又はその他の構成材を支持可能であることを特徴とする請求項1に記載のガントリー。
【請求項17】
既存のガントリーに自動調節式プレストレッシングシステムを設ける方法であって、
前記既存のガントリーに請求項1に記載の構成要素を装備することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−527316(P2006−527316A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508562(P2006−508562)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/PT2004/000011
【国際公開番号】WO2004/109018
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505424527)
【Fターム(参考)】