説明

自動販売機

【課題】停電時商品搬出機能を容易且つ低コストに追加することのできる自動販売機を提供する。
【解決手段】商用電源Eによって蓄電される蓄電装置11と、停電時に蓄電装置11からの電力を供給する電源継電部12と、主制御部8とは別体に構成され、商品搬出装置6を蓄電装置11からの電力によって駆動されるように制御する停電時制御部14とを備えているので、停電時の商品搬出機能を追加する場合、主制御部8を停電時用のプログラムを備えたものに交換する必要がなく、自動販売機の製造時のみならず、既設の自動販売機にも停電時商品搬出機能を容易且つ低コストに追加することができ、災害時に飲料や食料の提供が可能な自動販売機の普及に大いに貢献することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビン、缶またはペットボトル入り飲料、各種食料品等を販売する自動販売機を停電時に駆動する自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動販売機としては、前面を開口した自動販売機本体と、自動販売機本体の前面を開閉する外扉と、自動販売機本体内に設けられた商品収納庫と、商品収納庫内に設けられた複数の商品収納コラムと、商品収納庫内を冷却する冷却装置と、商品収納庫内を加熱するヒータと、硬貨または紙幣を処理する金銭処理装置とを備え、金銭処理装置に金銭が投入され、商品選択スイッチにより任意の商品が選択されると、商品収納コラムの商品搬出装置によって商品を商品取出口に搬出するようにしたものが知られている。
【0003】
ところで、大規模な災害が発生して電気、ガス、水道等のライフラインが停止するような非常時には、飲料や食料を被災者に早急に供給する必要があるため、例えば公共施設等に設置されている自動販売機の商品を被災者に無償で提供することが望まれる。
【0004】
しかしながら、従来の自動販売機では、商品搬出装置等の機器が商用電源によって駆動されるため、停電時は商品搬出装置による商品の搬出が不可能である。また、外扉を開放する場合には鍵が必要となるため、自動販売機内に収納された食料や飲料を被災者に早急に供給することは困難である。
【0005】
そこで、停電時に商品搬出装置による商品の搬出を可能にしたものとして、予め商用電源によって蓄電装置に蓄電しておき、商用電源の停電を検知すると、商品搬出装置の駆動源を商用電源から蓄電装置に切り換えるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−116379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように停電時に蓄電装置によって商品搬出装置を駆動するようにした自動販売機では、蓄電装置の電力消費を最小限にするために、冷却装置、ヒータ、照明装置等、商品搬出装置以外の他の電力消費機器には蓄電装置の電力を供給しないようにしている。このため、停電時には、金銭を投入せずとも、商品選択スイッチにより商品を選択すれば商品が搬出されるように制御する必要があるが、このような制御は通常の制御とは異なるため、主制御部に停電時用の制御プログラムを追加する必要がある。また、蓄電装置や電源切換回路等、停電時のみ必要となる機器も備える必要がある。
【0008】
しかしながら、このような停電時用の機器を標準装備として搭載した自動販売機は高価となるため、災害時の商品無償提供を想定していない自動販売機では無用の装備となる。一方、既に設置されている通常の自動販売機において、停電時の商品搬出機能を追加したい場合には、蓄電装置等の停電時用機器を増設するとともに、主制御部を停電時用のプログラムを備えたものに交換する必要がある。しかしながら、主制御部を交換するにはコストが高くつくとともに、交換に伴う新たな配線接続作業も多くなり、既存の自動販売機への停電時商品搬出機能の追加は困難であった。
【0009】
本発明の目的とするところは、停電時の商品搬出機能を容易且つ低コストに追加することのできる自動販売機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するために、商品搬出装置及び他の電力消費機器を非停電時に商用電源によって駆動されるように制御する主制御部を備えた自動販売機おいて、前記商用電源の停電時に電源となる蓄電装置と、停電時に蓄電装置からの電力を供給する電源継電部と、主制御部とは別体に構成され、停電時に蓄電装置の電力によって動作し、商品搬出装置を停電時に蓄電装置の電力によって駆動されるように制御する停電時制御部とを備えている。
【0011】
これにより、停電時に商品搬出装置を制御する停電時制御部が主制御部とは別体に構成されていることから、停電時の商品搬出機能を追加する場合、主制御部を停電時用のプログラムを備えたものに交換する必要がない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、停電時の商品搬出機能を追加する場合、主制御部を停電時用のプログラムを備えたものに交換する必要がないので、自動販売機の製造時のみならず、既設の自動販売機にも停電時の商品搬出機能を容易且つ低コストに追加することができ、災害時に飲料や食料の提供が可能な自動販売機の普及に大いに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す自動販売機の斜視図
【図2】自動販売機の側面断面図
【図3】自動販売機のブロック図
【図4】停電時駆動ユニットのユニットパネルを示す正面図
【図5】本発明の他の実施形態を示す自動販売機のブロック図
【図6】停電時駆動ユニットのユニットパネルを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図4は本発明の一実施形態を示すものである。同図に示す自動販売機は、前面を開口した自動販売機本体1と、自動販売機本体1の前面を開閉する外扉2と、自動販売機本体内に設けられた断熱性の商品収納庫3と、商品収納庫3の前面を開閉する断熱性の内扉4と、商品収納庫3内に設置された複数の商品収納コラム5と、商品収納コラム5内の商品を搬出する商品搬出装置6と、利用者が投入した金銭を処理する金銭処理装置7と、商品搬出装置6及び他の電力消費機器を制御する主制御部8と、外部から電源が入力される電源入力部9と、停電時に商品搬出装置6を駆動する停電時駆動ユニット10とを備えている。
【0015】
自動販売機本体1は、商品収納庫3の下方に機械室1aを有し、機械室1a内には商品収納庫3内を冷却するための冷凍機器等が収容されている。
【0016】
外扉2は、幅方向一端側を自動販売機本体1に回動自在に支持され、その前面には商品サンプル室2a、複数の商品選択スイッチ2b、紙幣投入口2c、硬貨投入口2d、硬貨返却口2e及び商品取出口2fが設けられている。商品サンプル室2a内には、各商品選択スイッチ2bに対応する複数の商品サンプル2gと、商品サンプル室2a内を照明する照明装置2h(図1及び図2では図示省略)が設けられている。また、外扉2の前面の上下方向略中央には、停電時駆動ユニットが設置される開口部2iが設けられ、開口部2iは停電時の商品搬出機能を有しない仕様の自動販売機の場合には広告パネルが設置されるようになっている。即ち、広告パネルが設置される場合は、開口部2iは透明板で覆われ、その内部には商品や商品製造元の広告を表示した広告パネルが配置される。
【0017】
商品収納庫3は、前面を開口した断熱箱3aによって形成され、その内部には冷却器及び送風機からなる冷却ユニット3b及びヒータ3cが設けられている。即ち、冷たい商品を販売する場合は冷却ユニット3bによって商品収納庫3内を冷却し、温かい商品を販売する場合はヒータ3cによって商品収納庫3内を加熱するようになっている。この場合、図示していないが、商品収納庫3内は幅方向複数の収納室に仕切られており、各収納室ごとに冷却または加熱されるようになっている。また、商品収納庫3内には各商品収納コラム5から落下した商品を前方に案内するシュート板3dが設けられている。
【0018】
内扉4は、商品収納庫3の前面開口部を開閉するように幅方向一端側を自動販売機本体1に回動自在に支持され、その下部には複数の商品搬出口4aが設けられている。
【0019】
各商品収納コラム5は、いわゆるサーペンタイン式の周知の構造からなり、商品収納庫3内の前後方向及び幅方向に配列されている。商品収納コラム5は、上部の商品投入口5aから投入された商品を蛇行状の商品通路5bに収納し、商品通路の下端に設けられた商品搬出装置6により、商品通路5b内の商品を一つずつ下方に落下させて搬出するようになっている。
【0020】
各商品搬出装置6は、商品通路5bの下方から2番目の商品をロックレバー6aで保持した状態で、ゲートレバー6bを開放して最下位の商品を商品通路5bから落下させる周知の構造からなり、ロックレバー6a及びゲートレバー6bは図示しないソレノイドで駆動されるようになっている。また、商品搬出装置6には、商品収納コラム5内の商品の売り切れを検知する売切検知装置(図示せず)が設けられており、売切検知装置は、例えば商品収納コラム5内の商品との接触及び非接触により商品の有無を検知する検知部材及びスイッチからなる。
【0021】
金銭処理装置7は、図示しない紙幣識別装置及び硬貨処理装置からなり、外扉2の背面側に設置されている。紙幣識別装置は紙幣投入口2cに投入された紙幣を識別して収納する周知の機器からなり、硬貨処理装置は硬貨投入口2dに投入された硬貨を識別して収納するとともに、釣り銭を硬貨返却口2eに払い出す周知の機器からなる。
【0022】
主制御部8は、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロコンピュータによって構成され、各商品選択スイッチ2b及び金銭処理装置7に接続されている。また、主制御部8は、照明装置2hを制御する照明制御部8a、冷熱機器8b(冷却ユニット3b用の圧縮機、凝縮器用送風機、ヒータ3c等)を制御する冷熱制御部8c、商品搬出装置6を制御する搬出制御部8dに接続され、商品搬出装置6及び他の電力消費機器(照明装置2h及び冷熱機器8b)を制御するようになっている。この場合、主制御部8には、商品搬出装置6の前記売切検知装置(図示せず)が接続されている。
【0023】
電源入力部9は、交流100Vの商用電源Eに接続され、金銭処理装置7、照明装置2h、冷熱機器8b及び商品搬出装置6にそれぞれ電力を供給するようになっている。また、電源入力部9は、交流100Vの電力を直流24Vに変換し、商品選択スイッチ2bの表示灯、主制御部8、照明制御部8a、冷熱制御部8c及び搬出制御部8dにそれぞれ供給するようになっている。
【0024】
停電時駆動ユニット10は、自動販売機の他の機器とは別体に構成され、広告パネルが設置されていない外扉2の開口部2iに設置されている。停電時駆動ユニット10は、商用電源Eによって蓄電される蓄電装置11と、停電時に蓄電装置11の電力を供給する電源継電部12と、停電時に電源継電部12が蓄電装置11からの電力を供給するか否かを設定する継電設定手段としての継電設定スイッチ13と、商品搬出装置6を蓄電装置11からの電力によって駆動されるように制御する停電時制御部14と、商品搬出装置6の制御モードを切り換えるモード切換スイッチ15と、蓄電装置11を蓄電可能な手動式の発電機16と、開口部2iの内側に配置されるユニットパネル17と、開口部2iを開閉するユニット扉18とを備えている。
【0025】
蓄電装置11は、周知の電気二重層キャパシタ(EDLC)からなり、電源入力部9を介して商用電源Eに接続されている。この場合、蓄電装置11は、商用電源Eによって直流24Vの電力を蓄電するようになっている。蓄電装置11には複数のLEDからなるインジケータ11aが接続され、蓄電されている電力の残量をインジケータ11aによって表示するようになっている。
【0026】
電源継電部12は蓄電装置11に接続され、蓄電装置11からの電力を停電時制御部14、商品選択スイッチ2bの表示灯及び搬出制御部8dに供給するようになっている。また、電源継電部12はインバータ12aによって直流24Vの電力を交流100Vに変換し、商品搬出装置6に供給するようになっている。この電源継電部12は、電源入力部9の入力電圧を検出し、停電により電源入力部9の入力電圧が0Vとなった場合、蓄電装置11に蓄電されている電力が24V以上であって、且つ継電設定スイッチ13が停電時に蓄電装置11からの電力を供給するように設定されている場合に、蓄電装置11からの電力を供給するようになっている。
【0027】
継電設定スイッチ13は電源継電部12に接続され、商品搬出装置6に蓄電装置11の電力を供給する場合は「災害」に設定し、蓄電装置11の電力を供給しない場合は「通常」に設定する(図4参照)。
【0028】
停電時制御部14は、主制御部8とは別体に構成されたマイクロコンピュータからなり、各商品選択スイッチ2b及び搬出制御部8dに接続されている。停電時制御部14は、停電時に電源継電部12によって蓄電装置11から電力が供給されると起動し、搬出制御部8dに対して制御信号を出力するようになっている。即ち、停電時制御部14は金銭処理装置7、照明制御部8a及び冷熱制御部8cには接続されておらず、金銭を投入しなくとも、商品選択スイッチ2bにより商品を選択すると、その商品の商品搬出装置6を作動するようになっている。
【0029】
モード切換スイッチ15は停電時制御部14に接続され、第1の制御モードと第2の制御モードとを相互に切り換えるようになっている。第1の制御モードは、商品搬出装置6の売切検知装置によって商品の売り切れが検知された場合は商品選択スイッチ2bの表示灯に売り切れ表示を点灯するとともに、その売り切れ商品に対応する商品選択スイッチ2bを操作しても商品搬出装置6が動作しないようにする制御モードである。また、第2の制御モードは、商品の売り切れが検知された場合でも商品選択スイッチ2bの表示灯に売り切れ表示を点灯させず、その売り切れ商品に対応する商品選択スイッチ2bを操作すると商品搬出装置6が動作する制御モードである。即ち、第1の制御モードにする場合は「売切表示あり」に設定し、第2の制御モードにする場合は「売切表示なし」に設定する(図4参照)。
【0030】
発電機16は蓄電装置11に接続され、手動で回転させることにより発電した電力を蓄電装置11に供給するようになっている。発電機16は着脱自在なハンドル16aを有し、ハンドル16aによって回転するようになっている。
【0031】
ユニットパネル17は、背面側に蓄電装置11、発電機16、電源継電部12の回路基板等が搭載され、その前面にはインジケータ11a、継電設定スイッチ13及びモード切換スイッチ15が配置されている。ユニットパネル17の前面には、発電機16のハンドル16aを着脱自在に保持する保持部17aが設けられ、ハンドル16aは保持部17aに保持されて開口部2i内に格納されている。また、ユニットパネル17の前面には、発電機16のハンドル16aを発電機16に連結する連結孔17bが設けられ、連結孔17bには保持部17aから取り外したハンドル16aの一端が連結される。
【0032】
ユニット扉18は開口部2iを覆うように形成され、開口部2iの幅方向一端側に回動自在に支持されている。ユニット扉18には錠前18aが設けられ、図示しない鍵によりユニット扉18が施錠及び解錠されるようになっている。
【0033】
以上のように構成された自動販売機においては、通常時(商用電源Eから電力の供給を受けている時)には、商品収納庫3の各収納室内が冷却ユニット3bによって冷却され、またはヒータ3cによって加熱される。また、照明装置2hによって商品サンプル室2aが照明される。ここで、利用者が紙幣投入口2cまたは硬貨投入口2dに金銭を投入し、商品選択スイッチ2bによって所望の商品を選択すると、投入金銭が金銭処理装置7によって処理されるとともに、選択された商品の商品収納コラム5の商品が商品搬出装置6によって搬出され、商品取出口2fに払い出される。また、商品収納コラム5の商品が売り切れた場合は、商品搬出装置6の売切検知装置によって商品の売り切れが検知され、商品選択スイッチ2bの表示灯に売り切れ表示が点灯する。
【0034】
ところで、大規模な災害が発生して電気、ガス、水道等のライフラインが停止するような非常時には、飲料や食料を被災者に早急に供給する必要があるため、例えば公共施設等に設置されている自動販売機の商品を被災者に提供することが望まれる。このような場合、継電設定スイッチ13が「災害」に設定されていれば、後述するように停電時でも商品収納コラム5の商品を無償で搬出することが可能となる。
【0035】
即ち、電源継電部12によって商用電源Eの停電が検知されると、継電設定スイッチ13が「災害」に設定されている場合は、商品搬出装置6に蓄電装置11からの電力が供給される。これにより、金銭を投入しなくとも、商品選択スイッチ2bにより所望の商品を選択すると、その商品の商品搬出装置6が作動し、商品取出口2fに商品が搬出される。この場合、蓄電装置11は、金銭処理装置7、照明装置2h及び冷熱機器8bには接続されていないので、これらの他の電力消費機器によって蓄電装置11の電力が消費されることはない。また、前記停電時において、モード切換スイッチ15により第1の制御モードに設定されている場合は、商品搬出装置6の売切検知装置によって商品の有無が検知され、商品収納コラム5の商品が全て搬出された場合は、その商品の商品選択スイッチ2bの表示灯に売り切れ表示が点灯される。一方、モード切換スイッチ15によって第2の制御モードに設定されている場合は、商品収納コラム5の商品が全て搬出された場合でも、その商品の商品選択スイッチ2bの表示灯には売り切れ表示が点灯されない。
【0036】
また、蓄電装置11に蓄電されている電力の残量はインジケータ11aによって確認することができるので、蓄電装置11の電力が消耗した場合は、発電機16によって発電した電力を蓄電装置11に蓄電することができる。その場合は、ユニットパネル17の保持部17aからハンドル16aを取り外すとともに、ハンドル16aの一端を連結孔17bに連結し、ハンドル16aを手動で操作して発電機16を回転させる。
【0037】
前記自動販売機において、停電時駆動ユニット10以外の構成は、通常の自動販売機と同等の構成であり、停電時の商品搬出機能を追加したい場合のみ、自動販売機の製造時に停電時駆動ユニット10が搭載される。この場合、外扉2の開口部2iに、広告パネルの代わりに停電時駆動ユニット10を設置することにより、停電時商品搬出機能を追加することができる。具体的には、停電時駆動ユニット10の機器を搭載したユニットパネル17を外扉2の背面側に取り付けるとともに、開口部2iにユニット扉18を取り付ける。その際、商品選択スイッチ2b、商品搬出装置6、搬出制御部8d及び電源入力部9との配線接続は、これらの接続部にコネクタを設けておくことにより、コネクタによって停電時駆動ユニット10の電気接続が行われる。また、既設の自動販売機においては、外扉2の開口部2iから広告パネルを取り外すことにより、停電時駆動ユニット10を搭載することができる。
【0038】
このように、本実施形態の停電時駆動装置によれば、商用電源Eによって蓄電される蓄電装置11と、停電時に蓄電装置11からの電力を供給する電源継電部12と、主制御部8とは別体に構成され、商品搬出装置6を蓄電装置11からの電力によって駆動されるように制御する停電時制御部14とを備えているので、停電時の商品搬出機能を追加する場合、主制御部8を停電時用のプログラムを備えたものに交換する必要がなく、自動販売機の製造時のみならず、既設の自動販売機にも停電時商品搬出機能を容易且つ低コストに追加することができ、災害時に飲料や食料の提供が可能な自動販売機の普及に大いに貢献することができる。
【0039】
この場合、蓄電装置11、電源継電部12及び停電時制御部14を有する停電時駆動ユニット10を備えているので、停電時駆動ユニット10を自動販売機に搭載して配線接続するだけで停電時の商品搬出機能を追加することができ、追加作業を極めて容易に行うことができる。
【0040】
更に、蓄電装置11に用いた電気二重層キャパシタからなる蓄電装置は、大電流充放電が可能で、長寿命かつ高温安定性に優れるため、停電時駆動ユニット10の蓄電装置として極めて有利である。
【0041】
また、停電時駆動ユニット10を、広告パネルが設置されていない外扉2の開口部2iに設置可能に形成したので、停電時駆動ユニット10を設置するための開口部を別途設ける必要がなく、停電時駆動ユニット10の追加をより容易且つ低コストに行うことができる。
【0042】
更に、災害時の商品無償搬出は自動販売機の管理者(自動販売機が設置されている場所(公共施設等)の管理者)の判断が必要であるが、停電時駆動ユニット10には、停電時に商品搬出装置6に蓄電装置11からの電力を供給するか否かを設定する継電設定スイッチ13が設けられているので、継電設定スイッチ13の設定を管理者が必要に応じて切り換えることができ、一時的な停電など、非災害時の停電では停電時制御部14による商品の搬出を行わないようにすることができる。
【0043】
また、停電時駆動ユニット10に、開口部2iを外部から開閉可能なユニット扉18を設け、停電時駆動ユニット10のユニットパネル17(操作部)をユニット扉18によって開閉するようにしたので、通常時にユニットパネル17が外部に露出することがなく、ユニットパネル17を外部から保護することができる。
【0044】
更に、停電時駆動ユニット10に、ユニット扉18を施錠可能な錠前18aを設けたので、専用の鍵でユニット扉18の錠前18aを解錠し、ユニット扉18を開放しなければ、継電設定スイッチ13を操作することができず、ユニットパネル17の継電設定スイッチ13及びモード切換スイッチ15の設定が第三者によって無断で変更されることがないという利点がある。この場合、錠前18aに代えて、例えば透明板を突き破って扉の開放レバーを操作するようにしたり、或いは開放レバー操作用の孔を塞ぐシールを剥がしてレバーを操作するようにしてもよい。
【0045】
また、電源継電部12が停電を検知した際、蓄電装置11に蓄電されている電力が所定の電圧以上であって、継電設定スイッチ13が商品搬出装置6に蓄電装置11からの電力を供給するように設定されている場合に、商品搬出装置6に蓄電装置11からの電力を供給するようにしたので、停電時に蓄電装置11の電力が十分な場合のみ蓄電装置11への切り換えを行うことができ、停電時に商品搬出装置6を確実に駆動することができる。
【0046】
更に、停電時駆動ユニット10に、商品搬出装置6の売切検知装置によって商品の売り切れが検知された場合は商品選択スイッチ2bの売り切れ表示を点灯する第1の制御モードと、商品の売り切れが検知された場合でも商品選択スイッチ2bの売り切れ表示を点灯しない第2の制御モードとを相互に切り換えるモード切換スイッチ15を設けたので、売り切れ表示を点灯するか否かを任意に選択することができる。これにより、第1の制御モードに設定すれば、売り切れ表示の点灯により商品の有無を確認することができるので、利用者に対する利便性を向上させることができるとともに、売り切れとなった商品の商品搬出装置6は動作することがないので、蓄電装置11の電力を無用に消費することがないという利点がある。また、第2の制御モードに設定すれば、売り切れ表示の点灯によって蓄電装置11の電力が消費されることがないので、その分だけ蓄電装置11の電力を長持ちさせることができる。
【0047】
また、停電時駆動ユニット10に、蓄電装置11を蓄電する手動式の発電機16を設けたので、蓄電装置11の電力が消耗した場合でも、発電機16によって蓄電装置11の蓄電を行うことができ、停電が長時間に及ぶ場合に極めて有利である。
【0048】
更に、停電時駆動ユニット10の停電時制御部14を外扉2の商品選択スイッチ2bに接続し、外扉2の商品選択スイッチ2bにより選択された商品を商品搬出装置6によって搬出するようにしたので、停電時における商品選択手段として外扉2の商品選択スイッチ2bを利用することができ、停電時駆動ユニット10の構造を簡素化することができる。
【0049】
尚、前記実施形態の停電時駆動ユニット10は、外扉2の商品選択スイッチ2bを商品選択手段として用いるようにしているが、図5及び図6に示す他の実施形態のように、停電時駆動ユニット10に専用の商品選択手段としての商品選択スイッチ19を設けるようにしてもよい。
【0050】
即ち、本実施形態の停電時駆動ユニット10では、ユニットパネル17に複数の商品選択スイッチ19が設けられ、各商品選択スイッチ19は停電時制御部14に接続されている。各商品選択スイッチ19には商品収納コラムに対応する番号が付されており、ユニット扉18を開放することにより、外部から操作可能になっている。尚、停電時駆動ユニット10の他の構成は前記実施形態と同様である。
【0051】
本実施形態によれば、停電時駆動ユニット10が専用の商品選択スイッチ19を備えているので、停電時駆動ユニット10を追加する際、外扉2の商品選択スイッチ2bに接続する必要がなく、その分だけ配線接続作業を容易に行うことができる。また、外扉2の商品選択スイッチ2bとの配線接続用コネクタを設ける必要もないので、構造の簡素化を図ることができる。更に、停電時の商品搬出を想定していない自動販売機にも、商品搬出装置6への配線のみで停電時駆動ユニット10を搭載することができるので、汎用性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
2…外扉、2b…商品選択スイッチ、2i…開口部、6…商品搬出装置、8…主制御部、10…停電時駆動ユニット、11…蓄電装置、12…電源継電部、13…継電設定スイッチと、14…停電時制御部、15…モード切換スイッチ、16…発電機と、17…ユニットパネル、18…ユニット扉、19…商品選択スイッチ、E…商用電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品搬出装置及び他の電力消費機器を非停電時に商用電源によって駆動されるように制御する主制御部を備えた自動販売機おいて、
前記商用電源の停電時に電源となる蓄電装置と、
停電時に蓄電装置からの電力を供給する電源継電部と、
主制御部とは別体に構成され、停電時に蓄電装置の電力によって動作し、商品搬出装置を停電時に蓄電装置の電力によって駆動されるように制御する停電時制御部とを備えた
ことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
停電時に電源継電部が蓄電装置から電力を供給するか否かを設定する継電設定手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の自動販売機。
【請求項3】
停電時に、蓄電装置に蓄電されている電力が所定の電圧以上であって、継電設定手段によって電源継電部が蓄電装置からの電力を供給するように設定されている場合に蓄電装置からの電力を供給する
ことを特徴とする請求項2記載の自動販売機。
【請求項4】
前記蓄電装置が商用電源によって蓄電される
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の自動販売機。
【請求項5】
前記蓄電装置を蓄電する手動式発電機を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の自動販売機。
【請求項6】
外扉の前面に広告パネルを設置可能な開口部を有し、
開口部内に広告パネルを設置せずに少なくとも停電時制御部を配置した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の自動販売機。
【請求項7】
前記開口部を開閉する扉を備えた
ことを特徴とする請求項6記載の自動販売機。
【請求項8】
前記扉を施錠可能な錠前を備えた
ことを特徴とする請求項7記載の自動販売機。
【請求項9】
停電時に搬出する商品を選択する商品選択手段を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の自動販売機。
【請求項10】
前記主制御部に接続され、非停電時に搬出する商品を選択するために外扉に設けられた商品選択スイッチを、前記商品選択手段として用いる
ことを特徴とする請求項9記載の自動販売機。
【請求項11】
停電時に搬出する商品を選択する商品選択スイッチを備え、
商品選択スイッチを前記開口部内に配置した
ことを特徴とする請求項6、7または8記載の自動販売機。
【請求項12】
前記商品搬出装置の売切検知装置によって商品の売り切れを検知する第1の制御モードと、商品の売り切れを検知しない第2の制御モードとを相互に切り換えるモード切換手段を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の自動販売機。
【請求項13】
少なくとも前記蓄電装置、電源継電部及び停電時制御部を有する停電時駆動ユニットを備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の自動販売機。
【請求項14】
前記蓄電装置として電気二重層キャパシタを用いた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−59114(P2012−59114A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202973(P2010−202973)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】