説明

自動販売機

【課題】防盗部材の形状簡素化と併せて防盗部材を安定して保持できるように改良した自動販売機を提供する。
【解決手段】自動販売機の紙幣挿入口7と紙幣識別装置22の紙幣搬送通路との間に、前記紙幣挿入口と紙幣識別装置の紙幣搬送通路とを連通する連通孔が形成された防盗部材13を待機位置に係止、外力により当該係止が解除された際に自重により落下して前記紙幣挿入口から紙幣ガイド口部221へのアクセス通路を閉鎖するようにした自動販売機に係り、板厚の厚い防盗部材の板金曲げ加工をなくすため、前記防盗部材は平らな基板の左右から突出するタブを備えた平板により形成し、前記防盗部材のタブを前記収容ボックス12の左右側壁に形成した係合穴に係合させて自重により落下移動自在に配設するとともに前記防盗部材を収容ボックスに係止(ねじ止め)するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙幣挿入口から挿入された紙幣の真偽を識別する紙幣識別装置を搭載した自動販売機に係り、特に紙幣挿入口の間口を広げて紙幣識別装置に収納された紙幣を盗むという行為を抑制するようにした自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように自動販売機では、本体キャビネットの前面を開閉する外扉の前面には、販売商品を選択するための商品選択ボタン、貨幣を投入するための入金口等、商品を自動販売する際に必要となる構成が配設してあり、その従来構造を図5,図6に示す。図において、1は前面が開口した断熱筐体としてなる本体キャビネット、2は本体キャビネット1の正面視左側壁にヒンジ機構を介して開閉自在に軸支された片開き式の外扉、3は内扉であり、前記外扉2には商品のディスプレイ室4,硬貨投入口5,返却レバー6,紙幣挿入口7,投入金額などを表示する表示器8,硬貨返却口9,商品取出口10,扉開閉用ハンドル11を備えている。前記外扉2の裏面には通貨関連機器として硬貨識別装置21,紙幣識別装置22,コイン回収ボックス23などを装備している。前記ディスプレイ室4は外扉2に設けた透明板41と外扉2の背面に設けた中扉42の間に画成され、前記中扉42には商品見本43を展示するディスプレイ台44が取付けられている。前記ディスプレイ室4の前面を覆う透明板41には各商品見本43に対応して設けられた商品選択ボタンを備えた商品選択ボタンユニット45が配設されている。
【0003】
前記紙幣識別装置22は、紙幣挿入口7に連通する紙幣ガイド口部を有し、当該紙幣ガイド口部を介して挿入された紙幣を紙幣搬送機構部により取り込み、紙幣搬送通路の途上に配置された磁気センサーや光学センサーからなる識別センサーにより紙幣の特徴部分を走査する。取り込んだ紙幣が前記識別センサーの位置を通過(当該識別センサーによる走査が完了)すると紙幣搬送機構部を一旦停止して当該紙幣を一時保留する。前記識別センサーからの検出信号は波形整形されてCPUからなる紙幣識別部に入力される。紙幣識別部は前記識別センサーからの入力信号と基準となる設定値とを比較して真偽の判別を行う。紙幣識別部による真偽判別結果が「真」の場合には紙幣搬送機構部を正転させて当該紙幣を紙幣収納ボックスに導き、当該紙幣収納ボックスに積み重ねて収納する。一方、紙幣識別部による真偽判別結果が「偽」の場合には紙幣搬送機構部を逆転させて当該紙幣を紙幣挿入口7に返却する。また、前記一時保留中に返却レバー6が操作されて返却指令が入力すると紙幣搬送機構部を逆転させて一時保留していた紙幣を紙幣挿入口7に返却する。前記紙幣収納ボックスに積み重ねて収納された紙幣は盗難防止のため自動販売機の所有者により定期的に回収される。
【0004】
このような紙幣識別装置22を搭載した自動販売機にあっては紙幣収納ボックスに収納された紙幣を狙って自動販売機を破壊する行為が後を絶たない。この紙幣を狙った犯罪行為の一つとして外扉の前面に露出した紙幣挿入口7にバールなどを突き刺して紙幣挿入口7の間口を広げ、そこから覗く紙幣識別装置22を破壊して紙幣を盗むというものである。このような紙幣の盗難を抑制する手段の一つとして前記紙幣挿入口7と紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部との間に、前記紙幣挿入口7と紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部とを連通する連通孔が形成された防盗部材を配置し、前記防盗部材を外扉の構造部材にねじにより係止するとともに外力により当該係止が解除(ねじの破断や脱落)された際に自重により落下するように構成し、常時は防盗部材の連通孔を介して紙幣を受けれ、バールなどにより防盗部材に外力が加えられてねじが破断または脱落して係止状態が解除された場合には自重により落下して前記紙幣挿入口7から紙幣識別装置22へのアクセス通路を閉鎖するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−152407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示された防盗部材は、紙幣挿入口7から紙幣識別装置22へのアクセス通路を遮断するために、バールなどの外力によりねじが破断または脱落して自重により落下する際、所定位置(紙幣挿入口7から紙幣識別装置22へのアクセス通路を遮断する位置)に留まって脱落してしまわないようにしなければならない。このため、前記特許文献1に開示された防盗部材は、厚さが3〜6mm程度の鋼板からなる板状部材の一端側をL字状に折り曲げて脚片を形成し、このL字状の脚片が、防盗部材が自重により落下する際に外扉や紙幣識別装置などの構造部材に当接するように構成し、防盗部材を所定の位置に係止して防盗部材の脱落を防止している。このように、前記特許文献1に開示された防盗部材は、板厚の厚い鋼板をL字状に折り曲げて脚片を形成せねばならないので、板金曲げ加工工程が必要で加工コストが増すという課題を有する。しかも、防盗部材はフリーな状態で落下するので、その落下姿勢が不安定となることからその姿勢が変化しないような追加部品を必要とし、調整作業を要して組立工程が煩雑となるという課題を有する。
【0007】
そこで、本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、防盗部材の形状簡素化と併せて防盗部材を安定して保持できるように改良した自動販売機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、本体キャビネットの前面を開閉する外扉に紙幣挿入口が設けられ、前記外扉の背面に前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を識別する紙幣識別装置を備え、箱形に形成されるとともに前記紙幣識別装置の紙幣ガイド口部に対峙して紙幣挿通孔が形成された収容ボックス内部に紙幣識別装置を収容設置してなる自動販売機であって、前記紙幣挿入口と紙幣識別装置の紙幣搬送通路との間に、前記紙幣挿入口と紙幣識別装置の紙幣搬送通路とを連通する連通孔が形成された防盗部材を待機位置に係止して配置し、外力により当該係止が解除された際に自重により落下して前記紙幣挿入口から紙幣ガイド口部へのアクセス通路を閉鎖するようにした自動販売機において、前記防盗部材は平らな基板の左右から突出するタブを備えてなり、前記防盗部材のタブを前記収納ボックスの左右側壁に形成した係合穴に係合させて自重により落下移動自在に配設するとともに前記防盗部材を収容ボックスに係止したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に係る自動販売機によれば、本体キャビネットの前面を開閉する外扉に紙幣挿入口が設けられ、前記外扉の背面に前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を識別する紙幣識別装置を備え、箱形に形成されるとともに前記紙幣識別装置の紙幣ガイド口部に対峙して紙幣挿通孔が形成された収容ボックス内部に紙幣識別装置を収容設置してなる自動販売機であって、前記紙幣挿入口と紙幣識別装置の紙幣搬送通路との間に、前記紙幣挿入口と紙幣識別装置の紙幣搬送通路とを連通する連通孔が形成された防盗部材を待機位置に係止して配置し、外力により当該係止が解除された際に自重により落下して前記紙幣挿入口から紙幣ガイド口部へのアクセス通路を閉鎖するようにした自動販売機において、前記防盗部材は平らな基板の左右から突出するタブを備えてなり、前記防盗部材のタブを前記収納ボックスの左右側壁に形成した係合穴に係合させて自重により落下移動自在に配設するとともに前記防盗部材を収容ボックスに係止したことにより、前記防盗部材は平らな基板の左右から突出するタブを備えた平板として形成され、従来装置のようにL字状に折り曲げる板金曲げ加工を必要としないので、製造コストの低減を図ることができる。しかも、防盗部材は基板の左右から突出するタブを収容ボックスの左右側壁に形成した係合穴に係合させてガイドされるように構成されているので、防盗部材を簡単な構成により確実に落下させて所定位置で保持することができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動販売機の主要部である紙幣識別装置の取付け状態を示し、(a)および(a)はそれぞれ防盗部材が待機位置に係止されている状態および防盗部材が落下した状態の側面図である。
【図2】図1における主要部の分解斜視図である。
【図3】図1の紙幣識別装置が収容設置される収容ボックスおよび防盗部材の分解斜視図である。
【図4】図3の収容ボックスへの防盗部材の取付けを説明する図であり、(a)乃至(d)はそれぞれ防盗部材の取付け過程を示す斜視図である。
【図5】本発明が対象とする自動販売機の一例を示す正面図である。
【図6】図5の外扉開放状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る自動販売機について添付図面を参照して説明する。なお、本発明の実施の形態に係る自動販売機が従来装置と相違する点は紙幣識別装置に配設される防盗部材であり、ここでは従来装置と相違する防盗部材について説明することとし、また、自動販売機の全体構成は図5、図6示したものと同一であるので適宜それぞれの図を参照しつつ説明を行う。なお、以下の説明で「左右」とは自動販売機を正面から見た場合の左側、右側を指している。
【0012】
図1および図2において、2で再び外扉を示し、この外扉2の前面には紙幣挿入口7を備えた紙幣挿入口化粧枠71が露出して設けられている。前記紙幣挿入口化粧枠71はプラスチックなどの合成樹脂からなり、左右両縁から背面側に突出して形成された係止爪(不図示)を、後述する収容ボックス12の鉤部(不図示)に係合させることにより収容ボックス12の前面側に固着され、外扉2に形成した矩形穴(不図示)から外部に露出するように固着されている。前記紙幣挿入口化粧枠71には紙幣挿入口7が形成され、また、前記紙幣挿入口化粧枠71には紙幣挿入口7を覆う紙幣挿入口フラッパ72が設けられている。この紙幣挿入口フラッパ72はその上端に形成した軸が紙幣挿入口化粧枠71に軸支されてなり、常時は紙幣挿入口7を覆うように閉じており、紙幣挿入時にその下端を持って前記軸を中心として手前に回動させることにより紙幣挿入口7が露出するように構成されている。なお、図2において、45は商品選択ボタンユニット、8は表示器であり、前記表示器8は外扉2に固着された取付金具82に表示器ユニット81が装着されてなるものである。
【0013】
図において、22は紙幣識別装置であり、この紙幣識別装置22は紙幣ガイド口部221、紙幣識別部222、紙幣収納部223などからなる。前記紙幣識別装置22は紙幣ガイド口部221が前方を向くように収容ボックス12にねじS1により固着されている。前記紙幣ガイド口部221は一点鎖線で示した紙幣搬送通路の前端を形成するものであり、紙幣挿入口7から挿入された紙幣を検知して取り込む紙幣搬送機構部を備えている。
【0014】
前記紙幣識別装置22が収容設置される収容ボックス12は薄板鋼板からなり、図3に示すように、背面が解放するとともに紙幣識別装置22を収容可能な大きさの箱形に形成されている。この収容ボックス12は外扉2の背面に固着した表示器ユニット81の取付金具82にねじS3により取付けられている。この収容ボックス12の前面壁120には前記紙幣挿入口化粧枠71の紙幣挿入口7と対応する位置に紙幣挿通孔121(図3参照)が形成されるとともに紙幣挿通孔121の上下にそれぞれ左右一対のダボ突起128,128およびねじ穴(雌ねじ)129,129が設けられている。また、収容ボックス12の上面壁122には、前記表示器ユニット81の取付金具82にねじS3により固着される取付片1221が上方向に延在して形成され、左右側壁123,124には上下方向に細長い矩形状の係合穴125,126が形成されている。なお、図3に示す127,127は左右側壁123,124から内側に向けて切り起された係止片であり、図では左右側壁の下部側の係止片127,127が示されているが、左右側壁123,124の上部側にも同様の係止片が設けられてり、これらの係止片127,127は紙幣識別装置22をねじS1により固定するものである。なお、収容ボックス12の前面側には紙幣挿入口化粧枠71がその左右両縁から背面側に突出して形成された係止爪(不図示)を収容ボックス12に形成した不図示の鉤部に係止させることにより固着されている。
【0015】
さて、前記収容ボックス12の前面壁120と紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部221との間には防盗部材13が介在されている。この防盗部材13は厚さが3〜6mm程度の鋼板からなる板状部材であり、図3に示すように、平らな矩形状の基板14の上部側に左右に突出するタブ15,16が形成されている。前記基板14は、前記収容ボックス12の内部に収容可能な大きさに形成され、前記タブ15,16は前記収容ボックス12の左右側壁123,124に形成された係合穴125,126を貫通して収容ボックス12から外部に突出するように形成されている。また、前記防盗部材13の基板14には前記紙幣挿入口化粧枠71の紙幣挿入口7と紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部221とを連通する連通孔141が形成されている。さらに、前記防盗部材13の基板14には収容ボックス12の前面壁120に形成した紙幣挿通孔121の上下に設けたそれぞれ左右一対のダボ突起128,128およびねじ穴129,129(図3参照)に対応して嵌合穴142,142およびねじ挿通穴143,143が形成されている。前記防盗部材13は、収容ボックス12の左右側壁123,124に形成した係合穴125,126にタブ15,16を挿入した上で、前記基板14の嵌合穴142,142を収容ボックス12のダボ突起128,128に嵌め込んだ後、前記基板14のねじ挿通穴143,143を介して収容ボックス12のねじ穴129,129にねじS2(図2参照)を捻じ込むことによりを収容ボックス12に係止される。なお、防盗部材13の連通孔141の幅は収容ボックス12の紙幣挿通孔121の幅よりも小さく形成されており、収容ボックス12の前方側から見たときに連通孔141の上下の縁が紙幣挿通孔121より覗くように取付けられており、バールなどが突き刺された場合にバールが連通孔141に接触するように定められている。なお、収容ボックス12の左側の側壁123には不図示のカバーを開閉自在に軸支するヒンジ1231,1231が設けられている。
【0016】
次に、前記防盗部材13の収容ボックス12への組付けについて、図4を用いて説明する。前記防盗部材13は、収容ボックス12の背面側から当該収容ボックス12内に挿入し、防盗部材13の左右のタブ15,16を収容ボックス12の左右側壁123,124に形成した係合穴125,126に嵌め込むのであるが、前記防盗部材13の左右のタブ15,16が収容ボックス12の左右側壁123,124より外側に突出するように形成されているので、前記防盗部材13の姿勢を収容ボックス12の前面壁120に平行とした姿勢のままでは防盗部材13の左右タブ15,16を収容ボックス12の左右側壁123,124に形成した係合穴125,126に嵌め込むことができない。このため、図4の(a)に示すように、防盗部材13を前面壁120に対して傾斜させた姿勢とし、防盗部材13の一方のタブ、この場合にはタブ15を収容ボックス12の左側の側壁123に形成した係合穴125に差し込む。次いで、図4の(b)に示すように、収容ボックス12の左側の側壁123に形成した係合穴125に差し込んだタブ15を支点に防盗部材13を回動(図4の(b)の場合には紙面に向けて)させる。ここで、防盗部材13のタブ16が収容ボックス12の右側の側壁124に衝突するが、収容ボックス12が薄板鋼板からなることによって可撓性を有するので、側壁124は外方に膨らむ。したがって、防盗部材13を強制的に回動させることにより防盗部材13のタブ16が収容ボックス12の側壁124の内面を摺動しながら係合穴126に近づき、前記タブ16が係合穴126に嵌り込むと側壁124が元の状態に復元する。これにより、防盗部材13の左右のタブ15,16が収容ボックス12の左右側壁123,124に形成した係合穴125,126に係合した状態で収容ボックス12の内部に収納される。
【0017】
次いで、防盗部材13の嵌合穴142,142を収容ボックス12のダボ突起128,128に嵌め込んで位置決めした上で、防盗部材13のねじ挿通穴143,143を介して収容ボックス12のねじ穴129,129にねじS2を捻じ込む。これにより、防盗部材13が収容ボックス12に係止固定され、この状態で防盗部材13は待機位置に位置している。この後、紙幣識別装置22を収容ボックス12の左右側壁123,124に形成した上下の係止片127,127にねじ止めして紙幣識別装置のアセンブリーを形成する。この紙幣識別装置のアセンブリーは自動販売機の組立ラインに投入され、収納ボックス12の前面側に固着した紙幣挿入口化粧枠71を外扉2に形成した矩形穴(不図示)に嵌合させた上で、収容ボックス12の上面壁122に設けた取付片1221を表示器ユニット81の取付金具82にねじS3によりねじ止めすることにより紙幣識別装置22が外扉2の背面に一体的に固着される。
【0018】
前述したように組立られた紙幣識別装置22のアセンブリーを備えた自動販売機に紙幣を挿入、すなわち、外扉2の前面から紙幣挿入口化粧枠71の紙幣挿入口フラッパ72を前方に回動させて紙幣挿入口7に紙幣を挿入すると、当該紙幣は収容ボックス12の紙幣挿通孔121および防盗部材13の連通孔141を介して紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部221に導かれる。紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部221に設けた紙幣検出センサー(不図示)により紙幣が検出されると紙幣搬送機構部が作動して紙幣を取り込む。そして、紙幣を取り込んだ紙幣識別装置22は従来装置と同様に、紙幣搬送通路(図1に一点鎖線で示す)の途上に配置された紙幣識別部222により紙幣の特徴部分を走査する。紙幣が前記紙幣識別部222の位置を通過(紙幣識別センサーによる走査が完了)すると紙幣搬送機構部を停止して当該紙幣を一時保留する。前記紙幣識別部222による真偽判別結果が「真」の場合には紙幣搬送機構部を正転させて当該紙幣を紙幣収納部223に導き、当該紙幣収納部223に積み重ねて収納する。一方、紙幣識別部222による真偽判別結果が「偽」の場合には紙幣搬送機構部を逆転させて当該紙幣を紙幣挿入口7に返却する。また、前記一時保留中に返却レバー6が操作されて返却指令が入力すると紙幣搬送機構部を逆転させて一時保留していた紙幣を紙幣挿入口7に返却する。
【0019】
かかる自動販売機の紙幣挿入口7にバールなどが突き刺されて抉られた場合、防盗部材13の連通孔141の縁にバールが当接して防盗部材13に外力が加えられる。この外力により防盗部材13を収容ボックス12に係止したねじS2が破断または脱落(図1の(b)ではねじS2が脱落した状態を示している)すると防盗部材13はねじによる係止が解かれるので、バールが引き抜かれた際にその自重によって下降する(図1の(b))。この防盗部材13の下降距離は、防盗部材13が待機位置(図1(a)の状態)に保持されている場合におけるタブ15,16の下縁と、収容ボックス12の左右側壁123,124に形成した係合穴125,126の下縁との間の長さ(例えばL寸法)となる。このように防盗部材13が下降すると防盗部材13の連通孔141も下降して紙幣挿入口化粧枠71の紙幣投入口7と紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部221との間の連通位置(アクセス通路)から外れる。ここで、収容ボックス12の紙幣挿通孔121の幅(例えばL1)に対して下降距離(L寸法)がL1<Lを満足する寸法に定められており、これにより防盗部材13が下降すると収容ボックス12の紙幣挿通孔121が閉塞される。つまり、紙幣挿入口化粧枠71の紙幣投入口7から紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部221へのアクセス通路を連通状態に保っていた防盗部材13が下降することにより紙幣挿入口7から紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部221へのアクセス通路を遮断する。これによって、バールを差し込む手掛かりを失わせることが可能となり、紙幣識別装置22を破壊して紙幣を盗むことを防止できる。
【0020】
なお、前記防盗部材13の落下を検出して警報ブザー(警報手段)を作動させることもできる。この場合には、紙幣挿入口7の間口を広げて紙幣を盗むという行為に対し、紙幣挿入口7を防盗部材13で閉鎖、すなわち、紙幣挿入口7から紙幣識別装置22へのアクセス通路を遮断することにより紙幣識別装置22が破壊されることを防止できるとともに警報を発することにより紙幣を盗むという悪意を喪失させることができる。
【0021】
前述したように本発明の実施の形態に係る自動販売機によれば、本体キャビネット1の前面を開閉する外扉2に紙幣挿入口7が設けられ、前記外扉2の背面に前記紙幣挿入口7から挿入された紙幣を識別する紙幣識別装置22を備え、箱形に形成されるとともに前記紙幣識別装置22の紙幣ガイド口部221に対峙して紙幣挿通孔121が形成された収容ボックス12内部に紙幣識別装置22を収容設置してなる自動販売機であって、前記紙幣挿入口7と紙幣識別装置22の紙幣搬送通路との間に、前記紙幣挿入口7と紙幣識別装置22の紙幣搬送通路とを連通する連通孔141が形成された防盗部材13を待機位置に係止して配置し、外力により当該係止が解除された際に自重により落下して前記紙幣挿入口7から紙幣ガイド口部221へのアクセス通路を閉鎖するようにした自動販売機において、前記防盗部材13は平らな基板14の左右から突出するタブ15,16を備えてなり、前記防盗部材13のタブ15,16を前記収容ボックス12の左右側壁123,124に形成した係合穴125,126に係合させて自重により落下移動自在に配設するとともに前記防盗部材13を収容ボックス12に係止(ねじ止め)したことにより、前記防盗部材13は平らな基板14の左右から突出するタブ15,16を備えた平板として形成され、従来装置のようにL字状に折り曲げる板金曲げ加工を必要としないので、製造コストの低減を図ることができる。しかも、防盗部材13は基板14の左右から突出するタブ15,16を収容ボックス12の左右側壁123,124に形成した係合穴125,126に係合させてガイドされるように構成されているので、防盗部材13を簡単な構成により確実に落下させて保持することができるという効果を有するものである。
【0022】
なお、前述した実施の形態では防盗部材13が上下方向にスライド移動するように構成したものについて説明したが、防盗部材13の基板14から左右に突出するタブ15,16の一方を支点として回動(自重により落下移動)するように構成することもできる。したがって、前述した実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
1 本体キャビネット
2 外扉
7 紙幣挿入口
12 収容ボックス
13 防盗部材
14 基板
15,16 タブ
22 紙幣識別装置
121 紙幣挿通孔
123,124 左右側壁
125,126 係合穴
141 連通孔
221 紙幣ガイド口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体キャビネットの前面を開閉する外扉に紙幣挿入口が設けられ、前記外扉の背面に前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を識別する紙幣識別装置を備え、箱形に形成されるとともに前記紙幣識別装置の紙幣ガイド口部に対峙して紙幣挿通孔が形成された収容ボックス内部に紙幣識別装置を収容設置してなる自動販売機であって、前記紙幣挿入口と紙幣識別装置の紙幣搬送通路との間に、前記紙幣挿入口と紙幣識別装置の紙幣搬送通路とを連通する連通孔が形成された防盗部材を待機位置に係止して配置し、外力により当該係止が解除された際に自重により落下して前記紙幣挿入口から紙幣ガイド口部へのアクセス通路を閉鎖するようにした自動販売機において、前記防盗部材は平らな基板の左右から突出するタブを備えてなり、前記防盗部材のタブを前記収納ボックスの左右側壁に形成した係合穴に係合させて自重により落下移動自在に配設するとともに前記防盗部材を収容ボックスに係止したことを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−84100(P2012−84100A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232091(P2010−232091)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】