説明

自動車のモール及びそのモールを取付けた側部窓ガラスの取付方法

【課題】側部窓ガラスの側面と底面のみを覆うモールであって、車体組立時の作業工数を増やすことなく取付けることができ、前記モールが前記側部窓ガラスから脱落することを防止できるモールを提供する。
【解決手段】自動車の側部窓ガラス2の前部側辺部に取付けられ、側部窓ガラス2の下面のみ、又は下面と側面のみを覆うモール1であり、側部窓ガラス2が取付けられる自動車の車体3のガラス取付面32と自動車のドア4が取付けられる車体開口部31の平坦部312との間の車体開口部31の傾斜部311を覆うドアリップ11が設けられているモール1であって、前記モール1のドアリップ11の先端部を車体開口部31の傾斜部311側に折り曲げて、車体当接部112を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の側部窓ガラス装着部に固定される側部窓ガラスの前部側辺に取付られるモールと、その自動車の車体への取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の側部窓ガラス装着部に固定されている側部窓ガラスには、その周縁部にモールが取付けられている場合がある。前記側部窓ガラスの前部側辺にモールを取付けた場合、美観の向上を目的として、前記自動車の車体のガラス取付面と、前記車体の内側に位置する車体開口部との間の段差に形成されている傾斜部を覆うドアリップを設けたモールが提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のモールは、前記側部ガラス板の側辺部の下面、側面、上面を覆う構造となっており、さらに、前記モールに、車体に仮止めするためのクリップが設けられている。
【0004】
特許文献1に記載の側部窓ガラスの前部側辺部に取付けられるモールのように、前記車体のガラス取付面と前記車体開口部との間の前記傾斜部を覆うドアリップが設けられているモールにおいては、ドアを閉じているときに、前記ドアのドアパネルの周縁部に取付けられているウェザーストリップが前記ドアリップに当接し、前記ドアリップを押圧し、前記モールの前記側部窓ガラスを覆っているガラス支持部材を車外側に跳ね上げようとする力が発生する。しかしながら、前記モールには車体に仮止めするためのクリップが設けられているため、前記モールが、前記力によって、車体から剥がされることはない。さらに、前記モールは、前記側部窓ガラスの前部側辺部の裏面と表面を覆う構造となっているため、前記力が働いたときには、前記モールは、前記側部窓ガラスに引っ掛かることになるため、それによって、車体から剥がされることを防止することができる。
【0005】
また、近年、外側から側部窓ガラス周辺を見たときに、モールを細く見せることによって、さらに美観の向上を図りたいとの要望があり、特許文献1に記載のモールのように側部窓ガラスの側辺部の下面、側面、上面の3面を覆うモールではなくて、図4に示すモールの断面図のように、前記側部窓ガラスの側辺部の側面と下面の2面のみを覆うモールも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のモールを用いる場合、前記モールと前記モールに取付けられる側部窓ガラスの両方に車体への位置決めと仮止めをするためのクリップが設けられているため、前記モールと前記側部窓ガラスとを車体に取付けた際に、取付けた後での前記モールと前記側部窓ガラスのそれぞれの取付位置の微調整が必要となり、車体組立時の作業工数の増大につながっていた。
【0008】
そこで、図4に示す前記側部窓ガラスの前部側辺部に取付けられるモールのように、前記モールと前記側部窓ガラスとを車体への取付け前に予め両面テープ又は接着剤によって接着させておき、前記モールを予め接着された前記側部窓ガラスを車体に取付ける方法を用いると、車体組立時の作業工数を減らすことができる。
【0009】
しかしながら、前記モールが、図4に示すように、前記側部窓ガラスの前部側辺部の下面と側面だけを覆うモールである場合、次のような問題が発生しうる。すなわち、ドアを閉めたときに前記モールに設けられているドアリップが、前記ドアの前記ドアパネルに取付けられている前記ウェザーストリップに当接し、押圧されたときに、その力によって、前記モールの前記ガラス支持部材を車内側へ曲げこもうとする力が発生し、前記モールが、前記側部窓ガラスの前部側辺部から剥がれて、前記側部窓ガラスから脱落してしまう可能性があるという問題である。また、もう一つの問題として、前記モールが脱落しない場合においても、前記力によって、前記モールと前記側部窓ガラスの側面との間に隙間が生じてしまい、それが美観を損ねてしまうという可能性も問題点として挙げられる。
【0010】
本発明は、これらの問題点の解決を図る。すなわち、自動車の側部窓ガラスの前部側辺部に取付けられるモールについて、前記側部窓ガラスの側面と下面のみを覆うモールであって、車体組立時の作業工数を増やすことなく取付けることができ、前記モールが前記側部窓ガラスから脱落することを防止できるモールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、自動車の側部窓ガラスの前部側辺部に取付けられ、前記側部窓ガラスの下面と側面のみを覆うモールであり、前記側部窓ガラスが取付けられる前記自動車の車体のガラス取付面と前記自動車のドアが取付けられる車体開口部の平坦部との間の車体開口部の傾斜部を覆うドアリップが設けられているモールである。そして、前記モールの前記ドアリップの先端部が前記車体開口部の傾斜部側に折り曲げられ、車体当接部を形成していることを特徴としている。
【0012】
そして、前記モールの前記車体当接部の先端部を、前記側部窓ガラスの位置する方向に折り曲げて、車体当接部の折曲部としてやるとよい。
【0013】
また、前記側部窓ガラスの前部側辺部の裏面を接着させる前記モールのガラス支持部材の裏面に、前記モールの長さ方向に溝を設けてもよい。
【0014】
さらに、上記のように前記ガラス支持部材に溝を設けたモールを取付けた前記側部窓ガラスを、前記車体のガラス取付面に取付けるときに、前記側部窓ガラスの裏面に塗布した接着剤が、前記側部窓ガラスと前記ガラス取付面とで押されて広がり、前記接着剤の一部が、前記モールの前記ガラス支持部材に設けた前記溝に入り込むようにしてやるとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動車のモールは、自動車の車体の側部窓ガラスの前部側辺部に取付けられるモールであり、自動車のドアを閉めたときに、前記ドアのドアパネルの周縁部に取付けられているウェザーストリップが当接するドアリップが設けられているモールである。本発明のモールは、前記ドアリップの先端部を折り曲げ、前記車体開口部の傾斜部に当接される車体当接部が形成されていることによって、前記ウェザーストリップが前記ドアリップに当接したときに、前記ドアリップの前記車体当接部が、前記車体開口部の傾斜部に力を加えるため、その反力により、前記モールの前記ガラス支持部材に、前記車体の前記ガラス取付面の方向の力が働くことになるため、前記側部窓ガラスと前記モールとが剥がれ、前記モールが前記側部窓ガラスから脱落することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1に係わるモールを側部窓ガラスの前部側辺部に取付けたときの側部窓ガラスを裏側から見た様子を示した図。
【図2】実施例1に係わるモールを取付けた側部窓ガラスを車体のガラス取付面に取付けたときの、前記モール付近を示した断面図。
【図3】実施例1に係わるモールを取付けた側部窓ガラスを車体のガラス取付面に取付けるときの、前記モール付近を示した断面図。
【図4】従来例に係わるモールを取付けた側部窓ガラスを車体のガラス取付面に取付けるときの、前記モール付近を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明のモールの構成>
本発明のモールは、例えば図1のモール1のように側部窓ガラス2の前部側辺部に取付けられている。図1は、側部窓ガラス2の車体取付面側を見た図であるが、側部窓ガラス2を車体に取付けるときに位置決めがしやすいように、図1に示すようにロケートピン21とファスナー22を取付けている場合がある。また、側部窓ガラスの側辺部だけでなく、下辺にも図1に示すように下辺モール9を取付けている場合がある。図1そして、図1のモール1付近での断面を示したものが、図2及び図3である。
【0018】
図2に示されるように、本発明のモール1は、側部窓ガラス2の前部側辺部に取付けられている。このとき、本発明のモール1を取付けた側部窓ガラス2が取付けられる車体3のガラス取付面32は、自動車のドア4と隣接した位置となっている。さらに、ドア4が取付けられている車体開口部31は、ガラス取付面32に対して、車体3の車幅の内側に形成されており、車体開口部の平坦部312と車体開口部の平坦部312とガラス取付面32との間は傾斜状の段差となっており、前記段差を車体開口部の傾斜部311と呼ぶこととする。また、ここで、モール1及び側部窓ガラス2に対して、車体3のガラス取付面32側を裏面と呼び、反対側を表面と呼ぶことにする。
【0019】
本発明のモール1は、PVCなどの樹脂を押出成形することによって製造される。モール1は、側部窓ガラス2の前部側辺部の裏面を支持するガラス支持部材12と、側部窓ガラス2の前部側辺の側面が当接されるトリム13と、トリム13から、車体開口部の平坦部312の方向に延ばされるドアリップ11とから構成されている。
【0020】
ドアリップ11は、図2に示すようにドア4を閉じたときに、ドア4のドアパネル41の周縁部に取付けられているウェザーストリップ42が当接するウェザーストリップ当接部111と、ウェザーストリップ当接部111から、車体開口部の傾斜部311の方向に折り曲げられた車体当接部112とから構成されている。そして、さらに、車体当接部112の先端部をガラス支持部材12の方向に折り曲げて、車体当接部の折曲部112aを形成してもよい。そして、車体当接部112は、パラフィンを含有した樹脂で構成すると、車体との滑りがよくなるため好ましい。
【0021】
また、ドアリップ11の車体当接部112は、ウェザーストリップ当接部111よりも薄く形成してもよいし、ウェザーストリップ当接部111よりも柔らかい材料で形成するのもよい。
【0022】
また、ガラス支持部材12は、通常は平坦な板状体であるが、その裏面に、モール1の長さ方向に溝14を設けてもよい。また、ガラス支持部材12の裏面は、パラフィンを含有した樹脂で構成しておくと、仮に、ガラス支持部材12の裏面がガラス取付面32に当接し、ガラス取付面32上で擦れることがあっても、滑りがよいため異音を発することがなく、好ましい。
【0023】
<本発明のモールを側部窓ガラスの前部側辺部に取付けるとき>
図2に示すように、モール1のガラス支持部材12の表面に、両面テープ8を貼り付けて、側部窓ガラス2の前部側辺の側面が、モール1のトリム13に当接するように、側部窓ガラス2を両面テープ8に載置する。ただし、ガラス支持部材12と側部窓ガラス2との接着は、必ずしも両面テープ8を用いる必要はなく、ガラス支持部材12の表面と側部窓ガラス2の前部側辺部の裏面にプライマーを塗り、両者を接着剤で接着させてもよい。
【0024】
<本発明のモールを取付けた側部窓ガラスの車体への取付方法>
図3は、本発明のモール1を取付けた側部窓ガラス2を車体3のガラス取付面32に取付けるときの様子を示した断面図である。
【0025】
側部窓ガラス2を車体のガラス取付面32に取付けるときには、予め、側部窓ガラスの周縁部にダムラバー5を両面テープ8で貼り付け、側部窓ガラス2のダムラバー5の外側の周縁部にプライマーを塗り、ガラス側プライマー塗布層71を形成し、ガラス側プライマー塗布層71上にウレタン接着剤6を側部窓ガラス2の周縁部に沿って塗布する。側部窓ガラス2の前部側辺部のモール1が取付けられている領域においては、ガラス側プライマー塗布層71をモール1とダムラバー5とに挟まれる領域に設けている。また、車体3のガラス取付面32にも、側部窓ガラス2の周縁部に合うようにプライマーを塗布し、車体側プライマー塗布層72を形成する。
【0026】
側部窓ガラス2を、車体3のガラス取付面32に取付ける際には、側部窓ガラス2を、なるべく左右に動かさず、真っ直ぐにガラス取付面32に取付ける。そのため、モール1のドアリップ11の車体当接部112が、車体開口部の傾斜部311に当接することになる。
【0027】
そのため、ドアリップ11の車体当接部112の先端部を、側部窓ガラス2の位置する方向に折り曲げて、車体当接部の折曲部112aを形成しておくと、車体当接部の折曲部112aが、車体開口部の傾斜部311に当接したときに、側部窓ガラス2の位置する方向に折り曲がりやすくなるため、側部窓ガラス2をガラス取付面32に取付ける際に、車体開口部の傾斜部311から受ける力が、モール1のガラス支持部材12と側部窓ガラス2とを剥がすような力を生じさせることがなくなる。
【0028】
さらに、車体当接部112を、その厚さを薄くしたり、柔らかい材料で形成したりすると、車両開口部の傾斜部311に当接したときに、より折れ曲がりやすくなるため、側部窓ガラス2のガラス取付面32への取付を円滑に行えるようになる。しかしながら、車体当接部112には、後述するようにある程度の押圧力に耐えられるだけの厚さと硬さが必要であるため、設計条件に関しては慎重に詰める必要がある。
【0029】
また、車体当接部112がパラフィンを含む樹脂で形成されると、車両開口部の傾斜部311に当接したときに、車体当接部112と車両開口部の傾斜部311との間の滑りがよくなるため、側部窓ガラス2のガラス取付面32への取付けをより円滑に行えるようになる。
【0030】
また、図2から、側部窓ガラス2を車体3のガラス取付面32に取付けたとき、ウレタン接着剤6が、側部窓ガラス2とガラス取付面32とで挟まれるため、左右に広がり、その一部が、モール1のガラス支持部材12の裏側に設けられた溝14に入り込み、溝に入り込んだ接着剤部61を形成する。溝に入り込んだ接着剤部61が固まると、モール1は、溝14で溝に入り込んだ接着剤部61に引っ掛かるため、モール1に、矢印dの方向に力が加わったとしても、側部窓ガラス2から外れることを防止することができる。
【0031】
<モールのドアリップに設けられた車体当接部の効果>
図2に示すように、モール1を取付けた側部窓ガラス2を取付けると、ドア4を閉めたときに、ドア4のドアパネル41の周縁部に取付けられたウェザーストリップ42が、モール1のドアリップ11のウェザーストリップ当接部111に当接し、ウェザーストリップ当接部111に対して矢印aの方向に力を加えることとなる。
【0032】
ウェザーストリップ当接部111に矢印aの方向に力が加わると、モール1には、矢印cのような回転を生じる力が働くため、モール1のガラス支持部材12には、車内側に曲げこまれる力が生じ、ガラス支持部材12が、側部窓ガラス2の前部側辺部の下面から剥がれようとする。また、ドアリップ11も車内側に曲げこまれようとするため、それに伴って、トリム13と側部窓ガラス2の間に隙間が生じようとする。
【0033】
しかしながら、ドアリップ11の車体当接部112が、車体開口部の傾斜部311に当接し、矢印bの方向に力を加えるため、矢印b’の方向に反力が生じる。この反力によって、矢印cとは逆方向の矢印c’の方向の回転が生じるため、ガラス支持部材12が、側部窓ガラス2の前部側辺部の下面から剥がれようとするのを抑えるとともに、トリム13と側部窓ガラス2の前部側辺部の側面との間に隙間が生じようとするのを抑えることとなる。
【0034】
この一方で、図4に示す従来例のようにモール1のドアリップ11に車体当接部112が設けられていない場合、ウェザーストリップ当接部111に矢印aの方向に力が加わると、モール1には、矢印cのような回転を生じる力が働くため、モール1のガラス支持部材12には、車内側に曲げこまれる力が生じ、ガラス支持部材12が、側部窓ガラス2の前部側辺部の下面から剥がれようとする。また、ドアリップ11も車内側に曲げこまれようとするため、それに伴って、トリム13と側部窓ガラス2の前部側辺部の側辺との間に隙間が生じようとする。
【0035】
そのため、ドアの開閉を繰り返すうちに、モール1のガラス支持部材12と側部窓ガラス2との間に力が加わったり、力が加わらなくなったりすることを繰り返すため、ガラス支持部材12と側部窓ガラス2との間の接着力が弱くなってしまい、次第に前記接着力が失われ、モール1が側部窓ガラス2から外れてしまい、脱落してしまう可能性が生じる。また、トリム13は、矢印cの回転を生じる力によって側部窓ガラス2の前部側辺とトリム13との間に隙間を生じさせ、美観を損ねてしまうという問題も生じさせる可能性がある。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例について説明する。
【0037】
<実施例1>
[実施例1のモールの構成]
図3は、本発明の実施例1のモールを取付けた側部窓ガラス2を車体3のガラス取付面32に取付けようとしている様子を示したモール1付近の断面図である。
【0038】
図3に示されるように、実施例1のモール1は、側部窓ガラス2の前部側辺部に取付けられている。このとき、実施例1のモール1を取付けた側部窓ガラス2が取付けられる車体3のガラス取付面32は、自動車のドア4と隣接した位置となっている。さらに、ドア4が取付けられている車体開口部31は、ガラス取付面32に対して、車体3の車幅の内側に形成されており、車体開口部の平坦部312と車体開口部の平坦部312とガラス取付面32との間は傾斜状の段差となっており、前記段差を車体開口部の傾斜部311と呼ぶこととする。
【0039】
実施例1のモール1は、PVCを押出成形することによって製造されている。モール1は、側部窓ガラス2の前部側辺部の裏面に、その表面を接着させるガラス支持部材12と、側部窓ガラス2の前部側辺の側面が当接されるトリム13と、トリム13から、車体開口部の平坦部311の方向に延ばされるドアリップ11とから構成されている。
【0040】
ドアリップ11は、図2に示すようにドア4を閉じたときに、ドア4のドアパネル41の周縁部に取付けられているウェザーストリップ42が当接するウェザーストリップ当接部111と、ウェザーストリップ当接部111から、車体開口部の傾斜部311の方向に折り曲げられた車体当接部112とから構成されている。そして、さらに、車体当接部112の先端部をガラス支持部材12の方向に折り曲げて、車体当接部の折曲部112aを形成している。そして、車体当接部112は、パラフィンを含有した樹脂で構成し、車体開口部の傾斜部311と当接されたときの滑りをよくしている。
【0041】
また、ドアリップ11の車体当接部112は、その厚さを1mm程度とし、その硬度を70度程度とすることによって、側部窓ガラス2の車体3のガラス取付面32への取付けるときに適度にたわむだけの弾性を与えるとともに、ドア4が閉められて、ドアパネル41に取付けられたウェザーストリップ42によってドアリップ11のウェザーストリップ当接部が押圧されたときに、適度な剛性を発揮できるようにした。
【0042】
また、ガラス支持部材12には、その裏面に、モール1の長さ方向に溝14を設けた。また、ガラス支持部材12の裏面は、パラフィンを含有した樹脂で構成した。そのため仮に、ガラス支持部材12の裏面がガラス取付面32に当接し、ガラス取付面32上を滑ることがあっても、その滑りがよくなるため異音を発することがなくなる。
【0043】
[実施例1のモールを取付けた側部窓ガラスの車体への取付方法]
図3に示すように、モール1のガラス支持部材12の表面に、両面テープ8を貼り付けて、側部窓ガラス2の前部側辺が、モール1のトリム13に当接するように、側部窓ガラス2が両面テープ8上に載置される。
【0044】
側部窓ガラス2を車体3のガラス取付面32に取付けるときには、予め、側部窓ガラス2の周縁部にダムラバー5を両面テープ8で貼り付け、側部窓ガラス2のダムラバー5の外側の周縁部にプライマーを塗り、ガラス側プライマー塗布層71を形成し、ガラス側プライマー塗布層71上にウレタン接着剤6を側部窓ガラス2の周縁部に沿って塗布する。側部窓ガラス2の前部側辺部のモール1が取付けられている領域においては、ガラス側プライマー塗布層71をモール1とダムラバー5とに挟まれる領域に設けている。また、車体3のガラス取付面32にも、側部窓ガラス2の周縁部に合うようにプライマーを塗布し、車体側プライマー塗布層72を形成する。
【0045】
図1は、側部窓ガラス2の前部側辺部に実施例1のモール1を取付けたときの側部窓ガラス2を裏側から見た様子を示したものである。実施例1のモールを取付けた側部窓ガラス2は、図示していない側部窓ガラスの下辺に下辺モール9を挟着しており、さらに、側部窓ガラス2を車体3のガラス取付面32に取付ける際に、位置決めを円滑に行うために、側部窓ガラス2の下辺部の2箇所にロケートピンを接着し、側部窓ガラス2の上辺部の一箇所にファスナー22を接着している。そして、車体3のガラス取付面32には、予め側部窓ガラス2に接着した2箇所のロケートピン22に対応した位置にロケートピン22を挿入するための図示しない位置決め孔を設けてあり、さらに、側部窓ガラス2に接着されているファスナー22に対応した位置に図示しないファスナーを接着させている。
【0046】
そして、側部窓ガラス2を、車体3のガラス取付面32に取付ける際には、まず、側部窓ガラス2に接着されたロケートピン21とファスナー22の位置を、それぞれ、車体3のガラス取付面32に設けられた位置決め孔と、ファスナーとに合わせる。そして、側部窓ガラス2を、なるべく左右に動かさないようにして、真っ直ぐにガラス取付面32に取付ける。
【0047】
このとき、モール1のドアリップ11の車体当接部112が、車体開口部の傾斜部311に当接することになる。車体当接部112は、車体当接部の折曲部112aを形成しているため、車体当接部112が車体開口部の傾斜部311に当接し、車体の内側の方向へ押されていくときに、車体当接部112が、車体開口部の傾斜部311から受ける力によってモール1のガラス支持部材12と側部窓ガラス2とが剥がれる方向の力が生じることを防ぐことができる。さらに、車体当接部112は適度な柔軟性が得られるようにその硬度と厚さが調整されており、かつパラフィンを含有する材料で形成されているため、車体開口部の傾斜部311に沿って車体の内側の方向へ押されていくときに、滑りがよくなり、円滑に側部窓ガラス2の車体3のガラス取付面32への取付作業を行うことができる。
【0048】
図2は本発明の実施例1のモールを取付けた側部窓ガラス2を車体3のガラス取付面32に取付けたときの様子を示したモール1付近の断面図である。図2から、側部窓ガラス2を車体3のガラス取付面32に取付けたとき、ウレタン接着剤6が、側部窓ガラス2とガラス取付面32とで挟まれるため、左右に広がり、その一部が、モール1のガラス支持部材12の裏側に設けられた溝14に入り込み、溝に入り込んだ接着剤部61を形成する。溝に入り込んだ接着剤部61が固まると、モール1は、溝14で溝に入り込んだ接着剤部61に引っ掛かるため、モール1に、矢印dの方向に力が加わったとしても、側部窓ガラス2から外れることを防止することができる。
【0049】
[実施例1のモールのドアリップに設けられた車体当接部の効果]
図2に示すように、モール1を取付けた側部窓ガラス2を取付けると、ドア4を閉めたときに、ドア4のドアパネル41の周縁部に取付けられたウェザーストリップ42が、モール1のドアリップ11のウェザーストリップ当接部111に当接し、矢印aの方向に力を加えることとなる。
【0050】
ウェザーストリップ当接部111に矢印aの方向に力が加わると、モール1には、矢印cのような回転を生じる力が働くため、モール1のガラス支持部材12には、車内側に曲げこまれる力が生じ、ガラス支持部材12が、側部窓ガラス2の前部側辺部の下面から剥がれようとする。また、ドアリップ11も車内側に曲げこまれようとするため、それに伴って、トリム13と側部窓ガラス2の間に隙間が生じようとする。
【0051】
しかしながら、ドアリップ11の車体当接部112が、車体開口部の傾斜部311に当接し、矢印bの方向に力を加えるため、矢印b’の方向に反力が生じる。この反力によって、矢印cとは逆方向の矢印c’の方向の回転が生じるため、ガラス支持部材12が、側部窓ガラス2の前部側辺部の下面から剥がれようとするのを抑えるとともに、トリム13と側部窓ガラス2の前部側辺部の側面との間に隙間が生じようとするのを抑えることとなる。
【0052】
以上好適な実施の形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【0053】
<従来例>
図4は従来例のモールを取付けた側部窓ガラス2を車体3のガラス取付面32に取付けたときの様子を示したモール1付近の断面図である。図4に示すようにモール1のドアリップ11に車体当接部112が設けられていない場合、ウェザーストリップ当接部111に矢印aの方向に力が加わると、モール1には、矢印cのような回転を生じる力が働くため、モール1のガラス支持部材12には、車内側に曲げこまれる力が生じ、ガラス支持部材12が、側部窓ガラス2の前部側辺部の下面から剥がれようとする。また、ドアリップ11も車内側に曲げこまれようとするため、それに伴って、トリム13と側部窓ガラス2の前部側辺部の側面との間に隙間が生じようとする。
【0054】
そのため、ドアの開閉を繰り返すうちに、モール1のガラス支持部材12と側部窓ガラス2との間に力が加わったり、力が加わらなくなったりすることを繰り返すため、ガラス支持部材12と側部窓ガラス2との間の接着力が弱くなってしまい、次第に前記接着力が失われ、モール1が側部窓ガラス2から外れてしまい、脱落してしまう可能性が生じる。また、トリム13は、矢印cの回転を生じる力によって、側部窓ガラス2の前部側辺とトリム13との間に隙間を生じさせ、美観を損ねてしまうという問題も生じさせる可能性がある。
【符号の説明】
【0055】
1 モール
11 ドアリップ
111 ウェザーストリップ当接部
112 車体当接部
112a 車体当接部の折曲部
12 ガラス支持部材
13 トリム
14 溝
2 側部窓ガラス
21 ロケートピン
22 ファスナー
3 車体
31 車体開口部
311 車体開口部の傾斜部
312 車体開口部の平坦部
32 ガラス取付面
4 ドア
41 ドアパネル
42 ウェザーストリップ
5 ダムラバー
6 ウレタン接着剤
61 溝に入り込んだ接着剤部
71 ガラス側プライマー塗布層
72 車体側プライマー塗布層
8 両面テープ
9 下辺モール
a ドアを閉めたときにウェザーストリップがドアリップを押圧するときの押圧力の向き
b ウェザーストリップがドアリップを押圧したときの押圧力によって、ドアリップの車体当接部が車体開口部の傾斜部を押す力の向き
b’ ドアリップの車体当接部が、車体開口部の傾斜部を押したときに生じる反力の向き
c ウェザーストリップがドアリップを押圧したときの押圧力によって、モールに生じる回転の方向
c’ ドアリップの車体当接部が、車体開口部の傾斜部を押したときに生じる反力によってモールに生じる回転の方向
d モールを引っ張る方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の側部窓ガラス(2)の前部側辺部に取付けられ、前記側部窓ガラス(2)の下面と側面のみに当接されるモール(1)であり、前記側部窓ガラス(2)が取付けられる前記自動車の車体(3)のガラス取付面(32)と前記自動車のドア(4)が取付けられる車体開口部(31)の平坦部(312)との間の車体開口部(31)の傾斜部(311)を覆うドアリップ(11)が設けられているモール(1)において、
前記モール(1)の前記ドアリップ(11)の先端部が前記車体開口部(31)の傾斜部(311)側に折り曲げられ、車体当接部(112)を形成していることを特徴とするモール。
【請求項2】
前記モール(1)の前記車体当接部(112)の先端部を、前記側部窓ガラス(2)の位置する方向に折り曲げて、車体当接部の折曲部(112a)としたことを特徴とする請求項1に記載のモール。
【請求項3】
前記側部窓ガラス(2)の前部側辺部の裏面を接着させる前記モールのガラス支持部材(12)の裏面に、前記モールの長さ方向に溝(14)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のモール。
【請求項4】
請求項3に記載のモール(1)を取付けた前記側部窓ガラス(2)を、前記車体(3)のガラス取付面(32)に取付けたときに、前記側部窓ガラス(2)の裏面に塗布した接着剤(6)が、前記側部窓ガラス(2)と前記ガラス取付面(32)とで押されて広がり、前記接着剤(6)の一部が、前記モールの前記ガラス支持部材(12)に設けた前記溝(14)に入り込むことを特徴とする前記モールを取付けた側部窓ガラスの取付方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載のモール(1)を取付けた前記側部窓ガラス(2)を、前記車体(3)のガラス取付面(32)に取付けたときに、前記モール(1)のドアリップ(11)に、前記ドア(4)のドアパネル(41)の周縁部に取付けられているウェザーストリップ(42)が当接したときに、前記ドアリップ(11)に設けられた前記車体当接部(112)が、前記車体開口部(31)の傾斜部(311)に当接することで、前記車体開口部(31)の傾斜部(311)から受ける反力により、前記モール(1)の前記ガラス板支持部材(12)が、前記側部窓ガラス(2)から剥がれることを防止できることを特徴とする前記モールを取付けた側部窓ガラスの取付方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載のモール(1)を取付けた前記側部窓ガラス(2)を、前記車体(3)のガラス取付面(32)に取付けたときに、前記モール(1)のドアリップ(11)に、前記ドア(4)のドアパネル(41)の周縁部に取付けられているウェザーストリップ(42)が当接したときに、前記ドアリップ(11)に設けられた前記車体当接部(112)が、前記車体開口部(31)の傾斜部(311)に当接することで、前記車体開口部(31)の傾斜部(311)から受ける反力により、前記モール(1)のトリム(13)と前記側部窓ガラス(2)の前部側辺部の側面との間に隙間を生じることを防止できることを特徴とする前記モールを取付けた側部窓ガラスの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−32108(P2013−32108A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169386(P2011−169386)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)