説明

自動車のリヤウインドガラスの取付構造

【課題】ハイマウントストップランプが車室内に取り付けられた場合に、後方視界をより確保できる、自動車のリヤウインドガラスの取付構造を提供することを課題とする。
【解決手段】自動車の後部ドア11のリヤウインドガラスを固着する窓枠として機能するパネルフランジ16は、ハイマウントストップランプ14近傍において、車両上方側に切り欠かれている。パネルフランジ16の先端は、リヤウインドガラス12が取付けられる側に、折り曲げられて折り曲げ先端部16aを形成している。パネルフランジHMSL部16bおよびパネルフランジ一般部16cの表面には接着剤が塗布され、リヤウインドガラスが、パネルフランジ16と所定の取付幅をもって取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のリヤウインドガラスの取付構造に係り、とくに、リヤウインドガラスの内側の車室内にストップランプ装置が配置されている、リヤウインドガラスの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
後続車からの視認性向上のため、ストップランプを自動車後部の上方に設けた、いわゆるハイマウントストップランプ(以下、HMSLと称す)付き車両がある。HMSL付き車両の中には、リヤウインドガラスの内側にHMSLを設けたものがある。例えば、特許文献1には、このようなHMSLを備えた発明が開示されている。この発明によれば、HMSLのハウジングの上部に膨出部を設けて、この部分を車体に直接取り付けることにより、HMSLの取付位置を高くして、室内空間をより確保しようとしている。
【0003】
図5及び6には、リヤウインドガラスの内側にHMSLが設けられた車両における、従来のリヤウインドガラスの取付構造が示されている。
図5は、車室内から車両後方を見た図である。跳ね上げ式後部ドア1には取付けられたリヤウインドガラス2の上部中央付近の車室内には、リヤシート3越しに、HMSL4が配置されている。
また、図6は、リヤウインドガラス2の上部中央の周辺構造を示す断面図である。後部ドア1には、リヤウインドガラス2で覆われる開口部5が設けられ、その周囲には、リヤウインドガラス2を後部ドア1に取り付けるためのパネルフランジ6が形成されている。パネルフランジ6の先端は、折り曲げられて折り曲げ先端部6aが形成され、その内側には接着剤7が塗布されている。この接着剤7によりリヤウインドガラス2がパネルフランジ6に固着されている。
また、リヤウインドガラス2には、接着剤7が車両外部後方から見えないようにするため、黒色のガラスセラミック8が塗布されている。一方、HMSL4は、その発光部4aがガラスセラミック8の下側に来るように配置されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−244523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示したような車室内天井後端に配置するHMSLは、特に後続車から直接視認されるHMSLの発光部(レンズ部)4aについて、その視認性を考慮すると、一定面積以上を確保し、上下幅も一定値以上に設定する必要がある。したがって、HMSL付き車両自身の車室内からの後方を見た場合、HMSL4により車両の後方視界が遮られるという問題を有する。特に、前述の従来技術にも開示されているように、車室内に配置されるHMSLには、発光体として光量にまさるバルブ(電球)式が多用されている。HMSLの発光部4aの上下幅は、バルブ自体のサイズにプラスアルファを加えた上下幅となるため、発光体自身が相対的に大きなバルブ式HMSLでは、発光部の上下幅も大きくなり、後方視界の遮られる範囲が大きくなってしまう。
【0006】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、HMSLが車室内に取り付けられた場合に、後方視界をより確保できるリヤウインドガラスの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る自動車のリヤウインドガラスの取付構造は、リヤウインドガラスと、このリヤウインドガラスの周縁を覆う遮蔽部と、この遮蔽部の車室内側に設けられリヤウインドガラスの周縁を、接着剤を介して固着するための所定の取付幅をもつパネルフランジと、リヤウインドガラスの車室内側であって、前記リヤウインドガラスの周縁に近接して配置されるストップランプ装置とを備え、ストップランプ装置の近傍におけるパネルフランジの取付幅が、パネルフランジの他の部分の取付幅よりも狭く設定されていることを特徴とするものである。
ストップランプ装置の近傍におけるパネルフランジの取付幅が狭くなっているので、ストップランプ装置は、パネルフランジと干渉することなく、その発光部を遮蔽部に近接する位置に配置でき、ストップランプ装置全体をリヤウインド外縁に寄せられることから、車室内からの後方視界を広げるように配置することができる。
【0008】
また、パネルフランジは、その先端が、リヤウインドガラス側に向かって湾曲し、樋状の凹部をなす形状を有するとともに、ストップランプ装置の近傍においては、前記樋状凹部の幅が狭くなるように形成しても良い。パネルフランジの湾曲した形状の内側に塗布した接着剤がはみ出しにくくなるとともに、ストップランプ装置の近傍では、ストップランプ装置によって車室内から接着剤が見えることはない。
また、パネルフランジは、その先端が、リヤウインド側に向かって湾曲して形成されるとともに、前記ストップランプ装置の近傍においては、湾曲した前記先端が切り欠れているように形成しても良い。この場合は、従来と同じパネルフランジにて、HMSLに相当する部位を切り欠くだけでよく、製造が容易である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ストップランプ装置をウインドガラスの周縁側に配置できるので、車室内からの後方視界をより確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
ここでは、この発明に係る自動車のリヤウインドガラスの取付構造を、跳ね上げ式の後部ドアを有する車両に適用した場合を例に説明する。
図1は、車両の後部ドア11を車両後方から見た図であり、後部ドア11には、リヤウインドガラス12で覆われる開口部15が設けられている。この開口部15の周囲には、破線で示すパネルフランジ16が後部ドア11のパネル本体から延びて形成され、リヤウインドガラス12が取り付けられている。リヤウインドガラス12の上部中央付近には、リヤウインドガラス12の内側、すなわち車室内に、ストップランプ装置であるHMSL14が配置され、リヤウインドガラス12越しにHMSL14が車両後方から見えている。また、リヤウインドガラス12の周縁には、遮蔽部として、黒色のガラスセラミック18がハッチングで示す範囲に塗布されている。なお、ガラスセラミック18が塗布された部分については、車室内側が見えないように構成されている。
【0011】
次に、HMSL14付近のパネルフランジ16の構造について図2を用いて説明する。
図2は、HMSL14付近のパネルフランジ16の構造を、図1のII−II線に沿った断面を含む斜視図で示している。説明の便宜のため、リヤウインドガラス12が取り付けられていない図となっている。
後部ドア11のパネルフランジ16は、開口部15の周囲に四方から張り出した板形状であり、リヤウインドガラス12を固着する窓枠としての機能を果たしている。パネルフランジ16の先端は、リヤウインドガラス12が取付けられる側に、折り曲げられて折り曲げ先端部16aを形成している。パネルフランジ16の張り出しの縁となる、この折り曲げ先端部16aは、HMSL14近傍になると、滑らかな線を描きながら車両上側に変化している。すなわち、パネルフランジ16により形成される樋のごとき凹形状は、HMSL14近傍において、その幅が狭くなるように形成されている。
【0012】
以下、パネルフランジ16のうち、HMSL14近傍でその形状が変化し、パネルフランジ16の張り出し量が小さい部分をパネルフランジHMSL部16b、HMSL14から離れた張り出し量が大きい部分をパネルフランジ一般部16cと呼ぶ。
パネルフランジHMSL部16bおよびパネルフランジ一般部16cの表面には接着剤17(図3参照)が塗布され、リヤウインドガラス12(図3参照)が、パネルフランジ16と所定の取付幅をもって取り付けられる。ここで、所定の取付幅とは、リヤウインドガラス12とパネルフランジ16とが重なり合って取り付けられる、パネルフランジ16の幅のことをいう。
【0013】
図3には、リヤウインドガラス12がパネルフランジ16に固着される構造の詳細が示されている。この図には、図1のII−II線に沿った断面が示されている。
後部ドア11からパネルフランジHMSL部16bが張り出し、その車室外側には、折り曲げ先端部16aまで接着剤17が塗布されている。この接着剤17により、リヤウインドガラス12がパネルフランジHMSL部16bと固着されている。また、リヤウインドガラス12に塗布されている黒色のガラスセラミック18の塗布範囲は、パネルフランジHMSL部16bが車両外部後方から見えない位置まで及んでいる。パネルフランジHMSL部16bの下方には、HMSL14の発光部14aが配置されている。
【0014】
なお、この図において、破線で示す形状は、従来のリヤウインドガラスの取付構造におけるHMSLの位置を示す。
【0015】
以上に説明したように、パネルフランジ16は、HMSL14近傍における取付幅が他の部分の取付幅よりも狭くなるように、設定されている。予め接着剤の塗布されたパネルフランジ16にリヤウインドガラス12を組付ける時に、塗布された状態から接着剤17が潰れ、その幅が所定のバラツキの範囲で広がることが知られている。そのため、従来の構造では、広がった接着剤が美観を損ねないように、最大限接着剤が広がったとしても、車外側はガラスセラミックにより、社内側はパネルフランジにより、その様子が遮られるように、ガラスセラミックの幅とパネルフランジの取付幅は、余裕を持って設定されていた。一方、HMSLは、車室内への光漏れを抑えるため、通常、リヤウインドガラスに近接又は密接して配置される。このため、従来の構造では、HMSLがパネルフランジと干渉し、HMSLの発光部(レンズ部)をガラスセラミックの端まで近接して配置することが出来なかった。本実施形態では、HSML14がパネルフランジ16と干渉することなく、HSML14の発光部をガラスセラミック18の端にごく近接する位置まで移動させることができ、HSML14全体を車室内のさらに上方に取り付けることができるので、車室内からの後方視界がより一層確保される。
また、このような構成にすれば、HMSL14の発光部14aの位置が上方に移動しても、その面積自体に変更は無い為、後続車からの視認性を損なうことがない。
一方、張出幅が狭くなったパネルフランジHMSL部16bでは、リヤウインドガラス12のパネルフランジ16への取付時に、接着剤17が潰れ、折り曲げ先端部16aからはみ出して、車室内側からの美観を損ねる懸念がある。しかしながら、仮に接着剤17が折り曲げ先端部16aから多少はみだしたとしても、パネルフランジHMSL部16b付近では、HMSL14のカバーにより隠されてしまい、はみ出した接着剤17が車室内側から見えることはない。一方、ガラスセラミック18の塗布範囲は、従来と変わらないため、接着剤は車外から見えることはない。
【0016】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係るリヤウインドガラスの取付構造を説明する。尚、この実施の形態において、実施の形態1の図1〜3の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
実施の形態2に係るリヤウインドガラスの取付構造は、実施の形態1に対して、パネルフランジの形状を変更したものである。
図4に示されるように、後部ドア11から張り出すパネルフランジ26は、HMSL14付近において、上方に切り欠かれているものの、実施の形態1において設けられているものと同じ折り曲げ先端部26aは設けられていない。すなわち、HMSL14から離れたパネルフランジ一般部26cには折り曲げ先端部26aが形成されているが、HMSL14近傍の、リヤウインドガラス12を取り付ける幅が狭くなったパネルフランジHMSL部26bは、平坦面となっている。
【0017】
実施の形態1でも説明したように、HMSL14付近では、パネルフランジ26に塗布した接着剤がパネルフランジ26からはみだしても、HMSL14により隠れてしまい、車室内からの美観に影響しない。このため、接着剤がパネルフランジHMSL部26bからはみだし易くなったとしても、ガラスセラミック18で車両外部から見えない範囲であれば、車室外からの美観にも影響を与えない。
一方、HMSL14付近におけるパネルフランジ26を、この実施の形態のように、折り曲げ先端部16aもなく単に上方に切り欠かれている形状にすれば、パネルフランジ26の製造も容易でかつ安価にすることができる。例えば、従来からあるような、HMSL14付近とその他の部分との間で取付幅が変わらず、かつ全体にわたって直線状の折り曲げ先端部26aを有するパネルフランジを流用して、HMSL14付近に相当する部分をカットするだけで、パネルフランジ26を製造することができる。
【0018】
実施の形態1及び2では、後部ドアが開閉式のタイプの車両に適用されるリヤウインドガラスの取付構造を説明したが、この発明はこのようなタイプの車両に限定されることはない。HMSLが車室内に配置されている車両であればよく、例えば、後部の開閉ドアを有しない、いわゆるセダンタイプの車両であってもよい。
ストップランプ装置であれば、ハイマウントストップランプと呼ばれるストップランプ装置に限定されるものではない。
また、リヤウインドガラスの車室内側に配置されるストップランプ装置であれば、リヤウインドガラスの上方に配置されるものに限定されない。例えば、セダンタイプの車両の場合、リヤシートの後方のシェルフ上であって、リヤウインドガラスの下部にHMSLが配置されていることがある。この場合、下部のパネルフランジをHMSL近傍で下方に切り欠くことによって、HMSLをより下側に取り付けることができ、リヤウインドガラス越しの視界を損なうことが少なくなる。
なお、実施の形態1及び2で用いたリヤウインドガラスの用語は、無機ガラス製が一般的であるため用いた用語であり、リヤウインドガラスは、無機ガラス製に限定されるものではなく、ポリカーボネート等の樹脂でできた透明な部材であればよい。
また、遮蔽部は、車両外部からの目隠しになるものであれば、黒色やガラスセラミックには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に係るリヤウインドガラスの取付構造が用いられる車両の後部ドアを、車両後方から見た斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面を含む、HMSL付近のパネルフランジの構造を説明する斜視図である。
【図3】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図4】実施の形態2に係るリヤウインドガラスの取付構造に用いられる、HMSL付近のパネルフランジの構造を説明する斜視図である。
【図5】従来のリヤウインドガラスの取付構造が用いられた車両の室内から車両後方を見た図である。
【図6】従来のリヤウインドガラスの取付構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
12 リヤウインドガラス、14 HMSL(ストップランプ装置)、16 26 パネルフランジ、16b 26b パネルフランジHMSL部、16c 26c パネルフランジ一般部、17 接着剤、18 ガラスセラミック(遮蔽部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側にストップランプ装置が配置される、自動車のリヤウインドガラスの取付構造であって、
リヤウインドガラスと、
このリヤウインドガラスの周縁を覆う遮蔽部と、
この遮蔽部の車室内側に設けられ、前記リヤウインドガラスの周縁を、接着剤を介して固着するための所定の取付幅をもつパネルフランジと、
前記リヤウインドガラスの車室内側であって、前記リヤウインドガラスの周縁に近接して配置されるストップランプ装置と
を備え、
前記ストップランプ装置の近傍における前記パネルフランジの前記取付幅が、前記パネルフランジの他の部分の前記取付幅よりも狭くなるように、前記パネルフランジが設定されていることを特徴とする自動車のリヤウインドガラスの取付構造。
【請求項2】
前記パネルフランジは、その先端が、前記リヤウインド側に向かって湾曲し、樋状の凹部を形成するとともに、前記ストップランプ装置の近傍においては、前記樋状凹部の幅が狭くなるように形成されている請求項1に記載の自動車のリヤウインドガラスの取付構造。
【請求項3】
前記パネルフランジは、その先端が、前記リヤウインド側に向かって湾曲し、樋状の凹部を形成するとともに、前記ストップランプ装置の近傍においては、湾曲した前記先端が切り欠かれている請求項1に記載の自動車のリヤウインドガラスの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−205980(P2006−205980A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23242(P2005−23242)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)