説明

自動車ドア用蝶番

【課題】標準ドアを有する自動車の場合に、また他の種類の開扉運動、すなわち自動車の長手軸に対して垂直に延在する略水平な軸のまわりにおけるドアの旋回を可能にする蝶番を提供する。
【解決手段】 自動車ドア用蝶番と取り替えられる蝶番が、車体構造に取り付けられる蝶番部分と、ドアに取り付けられる蝶番部分とを含む。1対のリンク機構を有する連結装置が、前記1対の蝶番部分間に配置される。第1のリンク機構は、ドアがドア枠から離れるまで、該ドアを工場標準の態様で開くことを可能にする。次に、第2のリンク機構が、ドアを水平軸のまわりにおいて上方に旋回させることを可能にし、これによって自動車ドアを「ガルウイング」ドアと同じ態様で開かれうるように再構成することが可能になる。前記1対の軸のまわりにおける運動は、ドアと車体構造との間における接触が回避されるように制約されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドア用蝶番に関する。
【背景技術】
【0002】
ほぼ、いかなる場合も、自動車ドアは、自身の前縁部に近接して配置される蝶番上において吊着されて、該ドアを垂直軸のまわりにおいて旋回させることにより開かれうるようになっている。蝶番軸が自身の後縁部に形成されたドアも以前は一般的であった。このようなドアは、自動車の後ドアとして再び当世風になってきた。
【0003】
一部のスポーツカーは、ドアの上縁部を横切って、かつ自動車の長手軸に沿って延在する水平軸のまわりにおいて旋回させることにより開かれうるドアを有する。このようなドアは、「ガルウイングドア」とも呼ばれる。
【0004】
最近、自動車の長手軸に対して垂直に延在する水平軸のまわりにおいて旋回させることにより開かれうるドアも知られるようになってきた。このようなドアは、開かれたときに横方向にあまり遠くまで揺動突出しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、標準ドアを有する自動車の場合に、また他の種類の開扉運動、すなわち自動車の長手軸に対して垂直に延在する略水平な軸のまわりにおけるドアの旋回を可能にする蝶番を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載の特徴を有する蝶番を提案するものである。本発明の態様は、従属請求項に網羅されている。
【発明の実施の形態】
【0007】
自動車において標準工場装備として供給される標準ドア蝶番は、ドアがそのまわりにおいて旋回せしめられうる単一軸を形成するため、本発明は、1対のリンク機構を形成する連結装置を有する蝶番を提案する。この1対のリンク機構は、組み合わされて単一構造とされうる。ドアは、言うまでもなく、該ドアを取り巻くドア枠内に配置されるため、連結装置上の1対のリンク機構を用いることにより、ドアが開き始めるときに、ドアの開扉運動を工場標準の運動にしたがうように設計することが可能になる。シールと、さらにまた、必要な場合は、ドアが開扉または閉扉されるときに作動せしめられることになっているスイッチとが、このドア枠内に配置される。ドアは、該ドアを関連ある工場標準蝶番により定められるある一定の方向に沿って並進させることによってのみ、ドア枠から外方に移動されうる。当然ながら、前記と同じことがドアの閉扉にも当てはまる。ドアは、該ドアが車体構造から離れるほどドア枠から外方に十分に遠くまで移動せしめられるまで、前記連結装置の第2のリンク機構を用いてまた別の方向に沿って並進せしめられ得ない。
【0008】
本発明のひとつの態様に基づくと、前記1対の旋回軸は、交差しないこととされ得、これによって、ドアが後にそのまわりにおいて旋回せしめられるリンク機構の軸もまた、ドアが開き始めるときにドア枠から外方に移動せしめられることになる。
【0009】
本発明によれば、前記蝶番のひとつの態様に基づくと、前記蝶番は、少なくとも部分的に前記連結装置の運動を制約して、旋回が前記運動のある一定の部分にわたって前記1対の軸の一方のみのまわりにおける旋回に限定されるようにする案内部を有し得、これによって使用者が実質的に自動的にドアの適正な開扉運動を行ないうることを意図している。前記開扉運動が開始されると、以ってドアは従来の自動車ドアと同じ態様で移動せしめられるとともに、該ドアが車体構造から離れるまで第2のリンク機構軸のまわりにおいて旋回することはなく、特に上方に旋回することはない。この第2の運動時において、前記案内部は、ドアが第1の軸のまわりにおいてもはや内方に旋回することができないようにし、これによって前記ドアは車体構造と接触せしめられうる。必要があれば、前記案内部は、前記2つの運動間に生じる遷移領域内において両方の運動が同時に生じうるように構成されうる。
【0010】
本発明によれば、前記蝶番は、その連結装置とともに、ドアが閉じられている場合に対応する中立位置と、ドアが完全に開かれている場合に対応する終点位置とを有しうる。前記中立位置は、ドアが閉じられている場合に対応しており、この場合、ドアはすでに中立位置を有しているため、連結装置の中立位置を特に定義する必要はない。
【0011】
本発明によれば、本発明のある態様に基づくと、前記案内部は、前記中立位置を始点として、前記連結装置が最初に、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分と相互に関連する軸のまわりにおける旋回を可能にして、ドアがドア枠から完全に離れるまで外方に移動するように構成されうる。
【0012】
本発明のさらに他の態様に基づくと、前記案内装置は、ドアが完全に開かれている場合に対応する前記終点位置を始点として、可能な唯一の旋回が、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分と相互に関連する軸のまわりにおける旋回となるように構成されうる。
【0013】
本発明は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分と相互に関連するリンク機構軸を、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分に対して略平行に延在させることを提案する。この軸は、ドアが該ドアの製造時においてどのように処理されたかによって、たとえば垂直または略垂直とされうる。
【0014】
本発明により提案される蝶番を、ドアおよび車体構造に関するさまざまな製造許容差にも対応しうるように設定するために、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分と相互に関連するリンク機構軸の配向は、その蝶番部分に対して調節可能とされて、これによって前記蝶番部分がその中立位置にあるときにドアを整合させてドアとドア枠との間における間隙の幅がドアのまわり全体にわたって同じになるようにすることを可能にすることとされうる。
【0015】
本発明のひとつの態様に基づくと、前記連結装置が車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分と相互に関連するリンク機構軸のまわりかつ/またはドアに取り付けられることを意図される蝶番部分と相互に関連するリンク機構軸のまわりにおいて旋回しうる角度範囲は、少なくとも一方の末端部において制約されることとされうる。ドアは、ドア枠内において明確な閉扉位置を有するため、連結装置が旋回しうる角度範囲が正確に制約される必要はない。
【0016】
本発明は、さらにまた、この角度範囲に対する制約は、調節されうるように構成されることを提案する。
【0017】
本発明により提案される蝶番は、そのドアが通常的に互いに上下方向に配置される1対の蝶番により正位置に保持される自動車に後付けされうるため、本発明は、さらに、本発明のひとつの態様に基づいて、前記連結装置からある距離に配置される支持装置が前記蝶番に取り付けられることを提案する。この支持装置の目的は、前記連結装置がその中立位置にあるときに、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分の上においてドアに取り付けられることを意図される蝶番部分を支持することにある。ドアを持ち上げる旋回軸が可能な限り遠く上方に配置されるべきであるため、前記連結装置は、蝶番の最上部に配置されることが有利でありうるが、前記支持装置は、前記蝶番の最下部に取り付けられる。さらにまた、前記支持装置は、連結装置の中立位置に対応する、ドアが閉扉位置にあるときにのみ、作用することが必要である。
【0018】
前記支持装置が、これもまた本発明により本発明のひとつの実施可能な構成として提案されるように、連結機構の形態をとって構成される場合が特に好ましく、その場合は、前記支持装置は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分と相互に関連する軸のまわりにおける旋回のみが行なわれるドアの開扉運動部分においてリンク機構としても作用し得、この場合、前記リンク機構は、第1のリンク機構の軸の同軸延長部を構成する、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分と相互に関連する軸を有する。
【0019】
本発明によれば、本発明のひとつの態様に基づくと、前記支持装置または第3のリンク機構は、前記連結装置が自身の中立位置にあるときにのみリンク機構として作用するとともに、後者がその中立位置を離れると係合解除されることとされうる。
【0020】
たとえば、前記支持装置は、ソケット内に挿入されうるヘッド部を有しうる。このようなリンク機構は、一般に、一種のボールソケット形リンク機構の形態に構成される。しかしながら、ボールソケット形リンク機構とは対照的に、この特定の場合に用いられる構成は、該リンク機構のヘッド部がソケットから引き抜かれうるように選択される。さらにまた、いくつかの軸のまわりにおける旋回は、不必要であるだけではなしに望ましくもなく、このことは、円筒状ソケット内に配置される一種の円筒状ヘッド部もまた実施可能であることを意味する。しかし、球形状を有する構成要素が、容易に商業的に入手可能であるとともに、この目的に用いられうる。
【0021】
本発明は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分が、平面的な構成要素の形態に構成されることを提案する。
【0022】
ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分の場合は、連結装置が自身の中立位置にあるときに、一方が車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分と同じ平面上に位置する1対の角形部分を有することとされうる。車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分は、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分の対応する部分を受ける切欠部も有しうる。
【0023】
車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分は、掛金機構を有して、ドアをその開扉位置において拘束しうる。ドアの開扉を容易にするガスばねを取り付けることは、本発明により、本発明のひとつの態様に基づいて提案されるさらにまた他の方策である。
【0024】
本発明により提案される蝶番は、略垂直な軸のまわりにおいて外方に旋回せしめられるドアに用いられることを意図されることは、すでに述べた。したがって、本発明は、本発明のひとつの態様に基づいて、前記蝶番は、1対の蝶番部分間において作用するとともに、ドアをその閉扉位置において閉扉状態に固定して、これによりドアがその閉扉状態にあるときに一般に前記位置に存在する下部ドア蝶番を擬する掛金機構を自身の下縁部に配置されて有することを提案する。この掛金機構は、ドアが垂直軸のまわりにおいて外方に旋回せしめられるやいなや係合解除されて、前記ドアが次に水平軸のまわりにおいて上方に旋回せしめられうるように構成されることが有利である。
【0025】
たとえば、この掛金機構は、一方の蝶番部分上に突起部を、他方の蝶番部分上に嵌め合い切欠部を有しうる。両方の構成要素、すなわち前記突起部と前記切欠部との両方は、前記固定を達成するために、切下げ縁部を有することが有利である。この掛金機構は、さらにまた、水平旋回軸のまわりにおけるドアのわずかな旋回さえも防止する。
【0026】
本発明のさらに他の態様に基づくと、前記蝶番は、案内部を有して、ドアの上方旋回の最初に車体構造にドアが衝突することを、または接触することをも防ぎうる。この案内部は、たとえば蝶番の上部に近接して配置される一種のゲートの形態に設けられうる。
【0027】
本発明のその他の特徴と詳細と利点とは、その記載内容が本明細書の一体的部分とされる特許請求の範囲および要約書と、本発明の好適な実施形態の以下の説明と図面とから明らかになろう。
【実施例】
【0028】
図1に、本発明にしたがった蝶番の1対の基本構成要素の全体図が示されている。この蝶番は、自動車の車体構造上にボルト止めされる蝶番部分1を含み、この蝶番部分は、以下では、「車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分」とも呼ばれる。その下端部2に近接する位置において、長手軸が垂直方向に配向されるいくつかのスロット3が配置される。これもまた長手軸が垂直方向に配向されるいくつかのスロット3は、前記蝶番部分の上端部に近接して配置される。後者のスロット3は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分が、工場標準蝶番を車体構造にボルト止めするために設けられる位置において車体構造にボルト止めされうるように構成される。これらの細長スロットは、ドア上において前記蝶番部分を整合させるのを容易にする。
【0029】
車体構造に取り付けられることを意図される前記蝶番部分1は、一定の厚さを有する平面状構成要素の形態に構成されるとともに、細長間隙4を残存させるような形状とされる。図1に示される図に示されている平面状構成要素の形態に構成される部分を含む、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5は、この間隙内に収容される。図平面に対して垂直方向に配向される、ドアの本体の前縁部にボルト止めされる垂直板6は、前記図に示されるドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5の前記部分に取り付けられる。この板6もまた、垂直方向に配向されるスロットを有して、ドア上において整合せしめられうる。ドアに取り付けられることを意図される蝶番の前記部分5と、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番の前記部分1とが、これらの部分が同じ平面上に位置するように配置される図示された位置において、前記1対の蝶番部分は、図1には図示されない連結装置を用いて互いに取り付けられる。この連結装置は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1上にボルト止めされる。4個のねじ穴7が、この目的のために設けられる。
【0030】
支持装置を収容する受容部8は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1の下端部2に近接して配置される。この受容部8は、前記蝶番部分1上の切欠部9内に挿入されるとともに、車体構造、すなわち、車両の前方に向かって取り付けられることを意図される蝶番部分1の平面状上面から突出する。
【0031】
ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5は、自身の上端部に近接して、リンク機構軸を形成する軸を収容するために設けられるねじ穴10を有する。このリンク機構軸は、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5が以下に説明される連結装置を用いてそのまわりを旋回しうる軸を形成する。
【0032】
車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1は、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5の隣において、案内要素が螺入せしめられうるまた他のねじ穴11を間隙4の縁部付近に配置されて含む。自身の突出端部に近接して、この案内要素は、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5が当接しうる回転自在な玉を含む。一方の端部上に玉を有するねじ付き棒であるこの案内要素の高さは、調節されて、関連ある特定のドアの最大開扉角度に対応しうる。
【0033】
図2に、前記1対の蝶番部分1、5を連結する連結装置の一部分の図が、図1の図と比較して拡大されて示されている。この連結装置は、U字形状とされるとともに、第1のリンク機構軸を形成する軸の支持構造を形成する第1の取付要素12を含む。図2には図示されていないこの軸は、前記取付部12の1対の平行脚部上において支持されるとともに、図示されているリンク機構軸13上において略整合せしめられる。前記取付部12の前記1対の脚部の各々は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1のねじ穴7内に螺入せしめられるボルトが挿入されうる1対のスロット14を有する。車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1のスロット3の長手軸は、垂直方向に配向される一方で、スロット14の長手軸は、対照的に略水平方向に配向されて、これによりリンク機構軸の横方向一を調節することが可能になる。
【0034】
前記取付部12は、前記軸のまわりにおいて回転自在な支持ブロック15を担持する。この支持ブロック15が旋回しうる角度範囲は、相対的に狭い。支持ブロック15は、自身がその上において回転する、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5の前記ねじ穴10内に軸が配置されるピボット継手を収容する貫通穴16を有する。支持ブロック15のさらなる詳細は、図2に示される線III−IIIに沿った前記支持ブロック15の縦断面図が示されている図3から明らかになろう。前記支持ブロックがその上において旋回する軸を収容するための穿孔穴17は、図3において見られうる。ねじが螺入せしめられうるねじ穴18は、前記ピボット継手を収容する貫通穴16の反対側の、支持ブロック15の端部上に形成される。このねじは、図3において該ねじが支持ブロック15内に上方から螺入せしめられるため、取付部12と車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1とに対する支持ブロック15の旋回を制約する。この旋回が制約される程度は、前記ねじの自由端部が支持ブロック15の裏側19からどれだけ突出するかによる。
【0035】
支持ブロック15が、前記軸のまわりにおいて取付部12の範囲外に旋回せしめられると、ピボット継手を収容する貫通穴16は、上方に、図平面の範囲外に傾斜する。
【0036】
図4に、前記支持装置が示されている。この支持装置は、断面において略球形の凹部を図4の右手側に有する受容部8を含む。この凹部は、一種のソケット20を形成する。前記受容部8は、取付要素22を貫通するねじが螺入せしめられうるねじ穴21を、前記ソケット20の下に配置されて有する。受容部8の取付要素22に対する位置、以ってさらにまた車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分に対する位置は、これにより調節されうる。これらの調節は、逆の順序でも行なわれうる。ねじ付き棒24の端部に取り付けられる玉状ヘッド部23は、前記ソケット20に係合する。前記ねじ付き棒24は、めねじ付きスリーブ25内に螺入せしめられる。この組立体の長さは、ねじ付き棒24がめねじ付きスリーブ25内に螺入せしめられる程度を変化させることによって調節されうる。前記めねじ付きスリーブは、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5の下端部上においてタブ26上に溶接される。前記スリーブの長手軸は、受容部8の前面に対して垂直になるように配向される。図4には、図1の下方から見た構成が示されている。
【0037】
前記構成は、蝶番が自身の中立位置にあるとき、すなわちドアが閉扉状態にある場合に対応する位置にあるときに、玉状ヘッド部23がソケット20内に位置するように選択される。玉状ヘッド部23は、生じる唯一の回転が前記軸のまわりにおけるものであれば、ドアが開かれてもソケット20内に維持される。しかしながら、取付部12内に配置される軸のまわりにおける回転ではなしに、貫通穴16内の前記ピボット継手の軸のまわりにおける回転が生じると、玉状ヘッド部23は、ソケット20から引き抜かれる。前記支持装置は、さらにまた、ドア用の掛金機構と微調節(プレテンション)機構とを形成する。前記支持装置の高さもまた調節可能である。
【0038】
次に、完全に組み立てられた蝶番が示されている図6を参照する。車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分と、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分とは、この場合は、これらの蝶番部分が連結装置により連結されていることを除いて、図1の図と同じ位置において図示されている。玉状ヘッド部31を有する案内要素30は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分内に螺入せしめられる。取付部12の上部から突出する、第1のリンク機構軸を形成する軸の上端部32は、前記軸の、見られうる唯一の端部である。取付部12の上側脚部の自由端部内に螺入せしめられて、自身の先端部が前記脚部の裏側から突出するようになっているねじ33が見られうる。前記ねじの先端部は、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5の上端部の外側縁部の反対側に配置される。前記玉状ヘッド部は、受容部8内に挿入される。ドアを開くためには、ドアを、該ドアに取り付けられる蝶番部分5とともに、第1のリンク機構軸を形成する前記軸のまわりにおいて旋回させる。この旋回の結果が、図7に示されている。支持ブロック15が回転して、貫通穴16とピボット継手とが、取付部12の範囲外に揺動している。支持ブロック15の他方の端部は、今では車体構造に取り付けられる蝶番部分1の表面に当接している。この第1のリンク機構軸のまわりにおける旋回は、これにより、その移動行程の終点に達した。
【0039】
その後の運動に用いられうる残された唯一の自由度は、支持ブロック15の貫通穴16内に挿入される軸のまわりにおける旋回である。ドアは、該ドアに取り付けられる蝶番部分5とともに、該ドアが図8に示される終点位置に達するまで、この第2のリンク機構軸のまわりにおいて旋回せしめられる。玉状ヘッド部23は、この運動が開始されるやいなや、ソケット20から引き抜かれる。残りの運動中に、ドアに取り付けられる前記蝶番部分の後面は、ねじ付き棒の端部上の玉に当接する。図示される終点位置において、ねじ33の端部は、ドアに取り付けられる蝶番部分5の外縁部に当接し、これによって、この運動の場合も、その移動行程が制約される。この制約は、ドアを車体構造に衝突させないために実際的であり、かつ必要でもある。
【0040】
図9および10に示される実施形態は、前記の実施形態とわずかに異なっているだけであるため、関連ある相違点だけを説明して、繰返しを避けることとする。支持装置から上に小距離をおいて、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1の一体的部分を形成するとともに、前記蝶番部分とともに単一の板から製作される突起部41が、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1の、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5と対向する縁部40上に形成される。このため、この突起部41は、いかなる部分においても、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1と同じ厚さを有する。この突起部41の幅は、自身が突出する前記縁部40からの距離とともに増加し、すなわち前記突起部は切下げを有する。
【0041】
前記突起部41と係合する嵌め合い切欠部42は、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5上において、同じ位置に切り込まれる。図9に示される位置において、ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5の水平旋回軸のまわりにおける旋回は、たとえ蝶番の上端部に近接する位置での旋回が可能になっても阻止される。このように、切欠部42に係合する前記突起部41は、上側の水平旋回軸からはるかに離れた位置に配置される追加の掛金機構を形成し、これによりドアが閉扉位置において確実に固定されることとなる。しかしながら、ドアが開かれる場合、すなわち最初に鎖線により示されるリンク機構軸43のまわりにおいて外方に旋回せしめられる場合には、前記切欠部42は、突起部41の平面から脱出し、これによりこの特定の対をなす構成要素により形成される前記掛金機構が解除される。
【0042】
当然ながら、逆の構成、すなわち前記突起部41を車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1上ではなしにドアに取り付けられることを意図される蝶番部分5上に配置するとともに、前記切欠部42を車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分1上に機械加工することも実施可能である。
【0043】
前記突起部41および/または前記切欠部42は、さらにまた、それぞれの蝶番部分の前面および/または後面上に設けられ得、前記突起部および/または切欠部の形状もまた改変されうる。
【0044】
こうして、ドアに取り付けられる蝶番部分5とドアとを上方に旋回させることが可能になった場合は、前記の案内要素30と玉31とが共同でドアを案内する。図9からわかるように、ドアに取り付けられる蝶番部分5の上縁部44の部分43は、案内要素30の外面に当接するか、または前記外面から狭い隙間をあけて分離されるかのいずれかとなる。この案内要素30の外形は、玉軸受31が最終的にドアに取り付けられる蝶番部分5の後面に当接するようになる時点まで、ドアに取り付けられる蝶番部分5の上縁部44の前記部分43が、前記ドアが開かれるときに前記案内要素の上において滑動するように構成され得、これによって、ドアを最初にドア枠の外に正確に移動させるとともに、次に、いかなる位置においても車体構造と接触させることなしに、上方に移動させることが可能になる。
【0045】
反対の方向に操作されるときは、前記案内要素30は、ドアの適正な閉扉を可能にするように作用する。ドアの閉扉時において、前記案内要素は、一部の状況下で閉扉位置に到達するドアが不適切な角度に配向されることにつながりかねない、ドアが過剰に早くドア枠内へと摺動することが起こりえなくする。たとえこうしたことが起こっても、前記案内部30は、ドアがドアの掛金に達するとともに、適正に配置され、かつ配向されるようにする。
【0046】
図11〜13に、図4および5において詳細に示された支持装置の代わりに用いられうるまた他の実施可能な支持装置が示されている。後者の支持装置は、前記1対の蝶番部分上において前者の支持装置と同じ位置に設けられるため、以下では、これらの蝶番部分のいかなる詳細な説明も行なわれない。
【0047】
この場合は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分は、ソケット20を有する受容部8の代わりに、矩形の切欠部を有する受容部108を有する。この受容部108は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分に対向する長い方の脚部109(図13も参照)と、この長い方の脚部109に対して平行に延在する短い方の脚部110とを含む。
【0048】
前記受容部108の長い方および短い方の脚部109、110間の前記切欠部に係合するヘッド部123は、蝶番が自身の閉位置にある場合に対応する、図4に示された実施形態のねじ付き棒24に対応するねじ付き棒123の自由端部上に配置される。蝶番を開くことは、短い方の脚部110の縁部111のまわりにおいて前記ヘッド部が旋回することと、それに付随して同時に長い方の脚部109の内面112上において前記ヘッド部が滑動することとを伴う。この開き動作は、図11および12を比較することにより明らかになろう。
【0049】
ドアが閉じられるときに、ヘッド部の先端部113は、長い方の脚部109の内面112に接近するとともに、前記脚部に沿って、前記1対の脚部109、110間において嵌め合い受容部内へと確実に滑動する。
【0050】
図11〜13に示される実施形態は、閉扉状態において、ドアがドア表面に対して垂直をなす外向きの移動方向に沿って非常に確実な固定が達成されるという利点を有する。係合状態は、図4に示された玉状ヘッド部の態様の場合も良好であるが、図11〜13に示される実施形態は、非常に高い負荷が関与する場合および許容差に対応することを可能にするために好ましい。
【0051】
図13に、支持装置の構成要素、すなわちリンク機構上における受容部108とヘッド部123とがどのように蝶番に取り付けられるかを図示する、蝶番の平面図が示されている。
【0052】
図6〜8を参照することにより、玉状ヘッド部31を有する前記案内装置が蝶番部分5の案内にどのように寄与するかを説明した。図14〜16には、案内装置30が回転自在なころ軸受50を含む実施形態が示されている。このころ軸受50は、車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分に取り付けられる支持ブロック51上において、自身が回転自在となるように担持される。前記支持ブロックは、前記ころ軸受50が回転自在となるように軸支される軸52により自身の脚部が連結される略U字形のヨークの形態に構成される。図14〜16に示される概略図の場合は、支持ブロック51を形成する前記ヨークは、蝶番部分1に固定される。整合のために、前記ヨークおよび支持ブロック51は、さらにまた、前記蝶番部分において整合しうるように前記蝶番部分上にボルト止めされる別途の構成要素に固定されうる。
【0053】
前記ころ軸受50に当接する垂直板53は、他方の蝶番部分、すなわちドアに取り付けられる蝶番部分に溶接される。前記板53は、前記蝶番部分の下縁部54とともに、所望の案内が正確に達成されるように設計されうる。
【0054】
図16に、ドアまたは蝶番がすでに開かれるとともに、上方に旋回し始めるときの状態が示されている。この段階において、前記蝶番部分の旋回により、前記蝶番部分は、ころ軸受50の表面上において滑動するように案内され、これによってドアの開扉運動全体にわたって軽い動きが達成される一方で、それにもかかわらず優れた支持作用が得られて、作用する全ての力が蝶番に加わることがなくなる。
【0055】
ドアの、以って該ドアに取り付けられる蝶番部分の上方旋回は、当然ながら水平運動ではないため、図16は、単なる略図と見なされるべきである。前記の機会に前記ころ軸受を自身の支持ブロック51を用いて整合させることにより、その後に、この案内部を個別の場合において整合させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】連結装置を省略して示される、蝶番を形成する1対の蝶番部分の平面図である。
【図2】車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分に取り付けられる連結装置の図である。
【図3】図2に示されている線III−IIIに沿って断面が取られた連結装置の構成要素の断面図である。
【図4】支持装置の構成要素の略図である。
【図5】図4に示される支持装置の構成要素の端面図である。
【図6】ドアが閉扉状態にある場合に対応する中立位置にある蝶番の斜視図である。
【図7】ドアが若干開かれた場合の、図6の図に対応する図である。
【図8】連結装置が自身の完全伸張状態にある場合の蝶番の斜視図である。
【図9】若干改変された蝶番の、図1に示された図と同様の平面図である。
【図10】図9に示された蝶番の斜視図である。
【図11】前記図に示された実施形態に対して改変された支持装置の実施形態の図である。
【図12】前記図に示された実施形態に対して改変された支持装置の実施形態の図である。
【図13】図11および12に示された支持装置の蝶番上における構成の図である。
【図14】案内装置のみを示す、改変された案内装置の図である。
【図15】図14に示されている線XII−XIIに沿った案内装置の部分断面図である。
【図16】蝶番が部分的に開かれた場合の、図15の断面図に対応する断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)と、
ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分(5)と、
前記2個の蝶番部分(1、5)を互いに取り付ける連結装置であって、
前記車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)と相互に関連する軸を有する第1のリンク機構と、
前記ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分(5)と相互に関連する軸を有する第2のリンク機構とからなる連結装置とを有し、
前記第2のリンク機構の前記軸の配向は、前記第1のリンク機構が移動すると変化する自動車ドア用蝶番。
【請求項2】
前記2個のリンク機構の前記軸は、交差しない請求項1に記載の蝶番。
【請求項3】
前記2個のリンク機構の前記軸は、互いに角度をなし、特に互いに直交する請求項1または請求項2に記載の蝶番。
【請求項4】
少なくとも部分的に、前記連結装置の動作を制約して、旋回が、何らかのある瞬間にのみ単一軸のまわりにおける旋回に限定されるようにする案内部を有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項5】
前記連結装置は、前記ドアが閉じられている場合に対応する中立位置と、前記ドアが完全に開かれている場合に対応する終点位置とを有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項6】
前記案内部は、前記ドアの旋回が、前記連結装置の中立位置を始点として、最初に前記車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)と相互に関連する軸のまわりにおける旋回に制限されるように構成される請求項4または請求項5に記載の蝶番。
【請求項7】
前記案内部は、前記ドアの旋回が、前記連結装置の終点位置を始点として、最初に前記ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分(5)と相互に関連する軸のまわりにおける旋回に制限されるように構成される請求項4〜6のいずれかに記載の蝶番。
【請求項8】
前記車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)と相互に関連する前記軸は、前記蝶番に対して略平行である前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項9】
前記車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)と相互に関連する前記軸の配向は、前記蝶番部分に対して調節可能である前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項10】
前記連結装置が、前記車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)と相互に関連する前記軸および/または前記ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分(5)と相互に関連する前記軸のまわりにおいて旋回しうる角度範囲は、該範囲の少なくとも一方の極限において制約される前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項11】
前記角度範囲に対する前記制約は、調節されうる請求項10に記載の蝶番。
【請求項12】
前記連結装置からある距離に配置されて、前記連結装置が自身の中立位置にあるときに前記ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分(5)を支持する支持装置を有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項13】
前記支持装置は、リンク機構の形態に構成される請求項12に記載の蝶番。
【請求項14】
前記リンク機構は、前記第1のリンク機構の前記軸の同軸延長部を構成する、前記車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)と相互に関連する軸を有する請求項13に記載の蝶番。
【請求項15】
前記支持装置/第3のリンク機構は、前記連結装置が自身の中立位置にあるときにのみリンク機構として作用するとともに、前記連結装置が自身の中立位置を離れると、係合解除される請求項5〜14のいずれかに記載の蝶番。
【請求項16】
前記支持装置は、ソケット(20)内に挿入されうるヘッド部(23)を有する請求項12〜15のいずれかに記載の蝶番。
【請求項17】
前記車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)は、平面状である前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項18】
前記ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分(5)は、前記連結装置が自身の中立位置にあるときに、一方が前記車体構造に取り付けられることを意図される蝶番部分(1)と同じ平面上に位置する1対の角形部分を有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項19】
前記開扉運動を補助するガスばねを有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項20】
前記ドアが開かれているときに前記ドアを拘束する移動止め装置を有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項21】
前記2個の蝶番部分(1、5)の間に配置されて、前記ドアの下側部分を閉扉位置において固定する有効な掛金機構を有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項22】
前記掛金機構は、一方の蝶番部分(1)上の突起部(41)と、他方の蝶番部分(5)上の嵌め合い切欠部(42)とを有する請求項21に記載の蝶番。
【請求項23】
前記掛金機構は、前記ドアに取り付けられることを意図される蝶番部分(5)が自身の旋回軸のまわりにおいて旋回することを防ぐ請求項21または請求項22に記載の蝶番。
【請求項24】
前記ドアが上側のドア枠に衝突することを防ぐ案内部を有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項25】
前記案内部(30)は、ころ軸受(50)の形態に構成される案内要素を有する前記請求項のいずれかに記載の蝶番。
【請求項26】
前記ころ軸受(50)は、他方の蝶番部分の平面状部分から突出する板(53)、タブまたは類似物とともに作用する請求項25に記載の蝶番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−529655(P2007−529655A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503293(P2007−503293)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002866
【国際公開番号】WO2005/090724
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506291944)