説明

自動車用ガラスの装飾プリント構造

【課題】自動車用ガラスに文字や図形等の装飾プリント層を印刷して被覆することにより、その剥離性を抑えるとともに、運転者による車内からの後方視界を確保し、さらには、装飾プリント層としての意匠性及び車外からの視認性をそれぞれ高める。
【解決手段】セラミック塗料の着色により印刷される文字や図形等の装飾プリント層12、22をリアウィンドガラス10、クォーターウィンドガラス20に印刷するにあたって、この装飾プリント層12、22を、当該ガラス10、20の車体内側面に塗布されるセラミック層11、21の塗布領域100、200内、又は当該ガラス10、20の透明領域と比較して塗布領域100、200に大きな占有面積で設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字や図形等の装飾プリント層を自動車用ガラスに印刷する装飾プリント構造に係り、特に、運転者による車内からの後方視界を確保するとともに、車外からの装飾プリントの視認性を高めた自動車用ガラスの装飾プリント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の後部側窓ガラスを利用した広告装置として、広告を印刷した孔明きプラスチックフィルムの汚れや損傷が少なく、長期間に亘って鮮明な広告面を表示することができると共に、取付け、取外し作業が容易な自動車後部窓ガラス用広告装置が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この自動車後部窓ガラス用広告装置によれば、広告板を後部窓ガラスに内側から取り付けて、明るい外部からは車内の広告板が鮮明に見え、暗い車内からは後方の景色が貫通孔を通して透けて見えるので、運転者の後方安全確認を行うことができる。
【0004】
また、広告板は、その周囲だけが後部窓ガラスの支持枠に固定され、中間部は撓んで窓ガラスとの間に隙間が生じて密着しないので、熱線からの熱影響が少ない。
【0005】
さらに、広告板は、予め工場で広告面を印刷した孔明きプラスチックフィルムを透明なプラスチック板に貼付したものを、後部窓ガラス枠に固定するだけなので、取付け作業が短時間で行なえ、また別の広告板に交換する場合もワンタッチで外すことができ作業性に優れている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−10195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術に記載した特許文献1の自動車後部窓ガラス用広告装置において使用される自動車後部窓ガラスは、その周縁部が透明性を有する当該ガラスと思料される。このようなガラスを使用するにあたっては、熱線用の端子ターミナルや銅条打ち抜き材(バスバー)等の構造物を遮蔽することができず、車外から容易に見えてしまい美観性が低下する虞があった。
【0008】
そこで、現況の市場で流通している自動車後部窓ガラスの一例としては、その周縁部に例えば、黒色又は灰色のセラミック層が車体内側面に予め塗布されているため、このセラミック層の塗布領域と広告板上における文字や図形等の印刷領域とが干渉すると、車外からの広告板の視認性が低下する虞があった。
【0009】
また、背景技術の別の態様として、図5(A)、(B)にそれぞれ示すように、その周縁部に例えば、黒色又は灰色のセラミック層510が車体内側面に予め塗布されている自動車後部窓ガラス500を使用するにあたっては、a−a断面、b−b断面で表される当該ガラス500の車体内側面及び車体外側面にそれぞれ、文字や図形等が予め印刷されたカッティングシールや樹脂板から成る広告プリント511を貼り付けることができる。
【0010】
しかしながら、背景技術の別の態様として使用される自動車後部窓ガラス500の車体内側面には、通常、結露防止用の熱線プリント層512が設けられており、この熱線プリント層512にて発生する熱の影響によって、図5(A)に示す広告プリント511が容易に剥がれる虞があった。
【0011】
同様に、背景技術の別の態様として使用される自動車後部窓ガラス500の車外下方部には、通常、ワイパーや洗浄液の吹出口等が設けられている。そのため、これらの部位の動作時や洗車時において、図5(B)に示す広告プリント511が容易に剥がれる虞があった。
【0012】
本発明は、これらの難点を解消するためになされたもので、自動車用ガラスに文字や図形等の装飾プリント層を印刷して被覆することにより、その剥離性を抑えるとともに、運転者による車内からの後方視界を確保し、さらには、装飾プリント層としての意匠性及び車外からの視認性をそれぞれ高めた自動車用ガラスの装飾プリント構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成するため、本発明の第1の態様である自動車用ガラスの装飾プリント構造は、車体のリアウィンドガラスと、リアウィンドガラスの車体内側面に塗布されるセラミック層と、セラミック塗料の着色によりリアウィンドガラスの車体内側面に印刷される文字や図形等の装飾プリント層とを備えている。装飾プリント層は、セラミック層によりリアウィンドガラスに被覆されるものである。
【0014】
第1の態様である自動車用ガラスの装飾プリント構造によれば、セラミック塗料の着色により印刷される文字や図形等の装飾プリント層をリアウィンドガラスに印刷することができ、この装飾プリント層は、セラミック層によって当該ガラスに被覆されるため、剥がれることはない。
【0015】
また、本発明の第2の態様である自動車用ガラスの装飾プリント構造は、車体のクォーターウィンドガラスと、クォーターウィンドガラスの車体内側面に塗布されるセラミック層と、セラミック塗料の着色によりクォーターウィンドガラスの車体内側面に印刷される文字や図形等の装飾プリント層とを備えている。装飾プリント層は、セラミック層によりクォーターウィンドガラスに被覆されるものである。
【0016】
第2の態様である自動車用ガラスの装飾プリント構造によれば、セラミック塗料の着色により印刷される文字や図形等の装飾プリント層をクォーターウィンドガラスに印刷することができ、この装飾プリント層は、セラミック層によって当該ガラスに被覆されるため、剥がれることはない。
【0017】
また、本発明の第3の態様である自動車用ガラスの装飾プリント構造は、本発明の第1の態様又は第2の態様において、セラミック層は、当該ガラスの周縁部に塗布領域を有している。装飾プリント層は、塗布領域内に設けられるものである。
【0018】
第3の態様である自動車用ガラスの装飾プリント構造によれば、セラミック塗料の着色により印刷される文字や図形等の装飾プリント層をリアウィンドガラス又はクォーターウィンドガラスに印刷するにあたり、この装飾プリント層は、セラミック層の塗布領域以外には印刷されず、当該ガラスの透明領域を占有することがないため、運転者による車内からの後方視界を十分に確保することができる。
【0019】
また、本発明の第4の態様である自動車用ガラスの装飾プリント構造は、本発明の第1の態様又は第2の態様において、セラミック層は、当該ガラスの周縁部に塗布領域を有している。装飾プリント層は、当該ガラスの透明領域と比較して塗布領域に大きな占有面積を有するものである。
【0020】
第4の態様である自動車用ガラスの装飾プリント構造によれば、セラミック塗料の印刷により印刷される文字や図形等の装飾プリント層をリアウィンドガラス又はクォーターウィンドガラスに印刷するにあたり、この装飾プリント層が当該ガラスの透明領域と比較してセラミック層の塗布領域に大きな占有面積を有し、当該透明領域を占有する割合が低く抑えられるため、運転者による車内からの後方視界を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自動車用ガラスの装飾プリント構造によれば、セラミック塗料の着色により印刷される文字や図形等の装飾プリント層をリアウィンドガラス、クォーターウィンドガラスに印刷するにあたって、この装飾プリント層を、当該ガラスの車体内側面に塗布されるセラミック層の塗布領域内、又は当該ガラスの透明領域と比較して塗布領域に大きな占有面積で設けることができる。
【0022】
これにより、リアウィンドガラス、クォーターウィンドガラスの透明領域に占める装飾プリント層の印刷面積が無くなる、又は低く抑えられるため、運転者による車内からの後方視界が十分に確保され、この状態で車外からの装飾プリント層の視認性も高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明による自動車用ガラスの装飾プリント構造を適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1(A)は、本発明の実施例による装飾プリント構造を有する自動車の側面図であり、図1(B)は、その自動車を後方から見た斜視図である。また、図2(A)は、図1(B)に示す自動車のリアウィンドガラス10を示す拡大図であり、図2(B)は、このリアウィンドガラス10を、車体1の車幅方向であるA−A面で切断したときの概略断面図である。さらに、図2(C)は、図1(A)に示す自動車のクォーターウィンドガラス20を示す拡大図であり、図2(D)は、このクォーターウィンドガラス20を、車体1の前後方向であるB−B面で切断したときの概略断面図である。
【0025】
図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10には、当該ガラス10の車体内側面(の表面)に例えば、ウレタン(ポリウレタン)系の接着剤で塗布される黒色又は灰色のセラミック層(以下、第1のセラミック層という。)11と、セラミック塗料の着色により当該ガラス10にスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷される文字や図形等の装飾プリント層(以下、第1の装飾プリント層という。)12と、第1のセラミック層11の車体内側に設けられる結露防止用の熱線プリント層13とが備えられており、この熱線プリント層13は、通常、複数の熱線が車体1の車幅方向で平行した位置に配設されるものである。
【0026】
また、図2(C)、(D)にそれぞれ示すクォーターウィンドガラス20には、当該ガラス20の車体内側面(の表面)に例えば、ウレタン(ポリウレタン)系の接着剤で塗布される黒色又は灰色のセラミック層(以下、第2のセラミック層という。)21と、前述の第1の装飾プリント層12と同様、セラミック塗料の着色により当該ガラス20にスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷される文字や図形等の装飾プリント層(以下、第2の装飾プリント層という。)22と、第2のセラミック層21の車体内側に設けられる無線通信用のアンテナプリント層23とが備えられている。
【0027】
なお、図2(C)、(D)にそれぞれ示すクォーターウィンドガラス20において、アンテナプリント層23は任意な構成部であって、不備にすることもできる。また、アンテナプリント層23は、図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10において、第1のセラミック層11の車体内側に設けることもできる(図示せず)。
【0028】
ここで、前述のセラミック塗料とは、主成分としてセラミック粉末を含む塗料を示すものであって、例えば、白系、黒・灰色系、緑系、青系等の各種の色パターンを有しており、このような主成分を有する同質の材料で第1、第2の各セラミック層11、21、第1、第2の各装飾プリント層12、22、熱線プリント層13、アンテナプリント層23をそれぞれ形成することで、高い親和性を確保することができる。
【0029】
また、前述のスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷の具体的な態様としては、プレーン印刷、ライン印刷、ドット印刷等の各種の手段が好適とされ、これら手段のうち単一の当該手段、又は組み合わせで文字や図形等の印刷(プリント)面を形成することができる。
【0030】
次に、図2(A)、(B)において、第1のセラミック層11は、例えば、熱線プリント層13用の端子ターミナルや銅条打ち抜き材(バスバー)等の構造物を、車外から見えないようにする隠蔽機能を備えており、リアウィンドガラス10の周縁部に当該第1のセラミック層11の塗布領域(以下、第1の塗布領域という。)100を有している。また、第1のセラミック層11は、熱線プリント層13にて発生する熱を高精度で吸収することができる。
【0031】
図2(A)、(B)において、第1の装飾プリント層12は、前述のスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷による具体的な工程として、セラミック塗料を加熱し、リアウィンドガラス10に焼き付けて印刷することができる。また、第1の装飾プリント層12は、第1のセラミック層11により車体内側から当該ガラス10に被覆されるため、従来例のようなカッティングシールや樹脂印刷から成る広告プリント(装飾プリント層と同意。)と比較して、より高い耐久性や耐摩耗性を有している。
【0032】
次に、図2(C)、(D)において、第2のセラミック層21は、例えば、アンテナプリント層23用の端子ターミナルや銅条打ち抜き材(バスバー)等の構造物を、車外から見えないようにする隠蔽機能を備えており、クォーターウィンドガラス20の周縁部に当該第2のセラミック層21の塗布領域(以下、第2の塗布領域という。)200を有している。
【0033】
図2(C)、(D)において、第2の装飾プリント層22は、前述のスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷による具体的な工程として、前述の第1の装飾プリント層12と同様、セラミック塗料を加熱し、クォーターウィンドガラス20に焼き付けて印刷することができる。また、第2の装飾プリント層22は、前述の第1の装飾プリント層12と同様、第2のセラミック層21により車体内側から当該ガラス20に被覆されるため、より高い耐久性や耐摩耗性を有している。
【0034】
さらに、図2(A)、(B)、(C)、(D)にそれぞれ示す第1、第2の各装飾プリント層12、22において、その意匠は、セラミック塗料の色パターンに大きく起因した多様性を有しており、車外からの照射光の眩しさを低下させることがばかりでなく、この照射光により発生する熱の車内への伝導を防止することもできる。
【0035】
なお、本発明の実施例においては、クォーターウィンドガラス20の設置態様として、図1(A)、(B)、図2(C)、(D)にそれぞれ示すように、車体1の後部左右側にそれぞれ設けた自動車を適用しているが、この態様に限定されるものではない。例えば、車体1の後部左右側の何れか一方の側に設けた場合であってもよく、また、当該ガラス20の形状は同一に限定されず、任意な形状で異なるものであってもよい。
【0036】
以下、具体的な装飾プリント工程について説明する。ここでは、第1、第2の各装飾プリント層12、22の印刷(プリント)面として、「KANTO」の文字(文字列)が形成されるものとする。
【0037】
第1の装飾プリント工程として、図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10において、第1の塗布領域100内であり、図3(A)に示すように、車体1の車幅方向に左右対称で第1の装飾プリント層12を印刷するにあたっては、セラミック塗料に着色してスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷し、左右対称となる当該ガラス10の位置に焼き付けて形成される第1の装飾プリント層12を、第1のセラミック層11で被覆する。
【0038】
次に、第2の装飾プリント工程として、図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10において、第1の塗布領域100内であり、図3(B)に示すように、車体1に上下対称で第1の装飾プリント層12を印刷するにあたっては、セラミック塗料に着色してスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷し、上下対称となる当該ガラス10の位置に焼き付けて形成される第1の装飾プリント層12を、第1のセラミック層11で被覆する。
【0039】
また、前述までの第1、第2の各装飾プリント工程において、第1のセラミック層11の車体内側には、図2(A)、(B)にそれぞれ示すように熱線プリント層13が設けられている。これにより、図3(A)、(B)にそれぞれ示すように、第1の塗布領域100内においては、熱線プリント層13にて発生する熱を、第1のセラミック層11が高精度で吸収するため、この熱の影響で第1の装飾プリント層12が剥がれることはない。一方、第1の塗布領域100以外のリアウィンドガラス10の透明領域においては、第1の装飾プリント層12が何ら印刷されておらず熱の影響も無く、熱線プリント層13による高精度な結露防止作用を有することになる。
【0040】
なお、前述までの第1、第2の各装飾プリント工程によれば、図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10において、第1の塗布領域100内であり、車体1の車幅方向に左右対称{図3(A)を参照。}、車体1に上下対称{図3(B)を参照。}で第1の装飾プリント層12を印刷するように、第1の装飾プリント層12を対称配置させたが、この態様に限定されるものではない。例えば、上下左右のうち何れか1箇所や、上下左右のうち選択した少なくとも2箇所のように、任意の位置に第1の装飾プリント層12を印刷した後、第1のセラミック層11で被覆することができるばかりでなく、その印刷(プリント)面としては、「KANTO」の文字(文字列)に限定されず、多種・多様な文字や図名等で形成することもできる。
【0041】
次に、第3の装飾プリント工程として、図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10において、図3(C)に示すように、当該ガラス10の透明領域と比較して第1の塗布領域100に大きな占有面積を有し、車体1の車幅方向に左右対称で第1の装飾プリント層12を印刷するにあたっては、セラミック塗料に着色してスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷し、左右対称となる当該ガラス10の位置に焼き付けて形成される第1の装飾プリント層12を、第1のセラミック層11で被覆する。
【0042】
次に、第4の装飾プリント工程として、図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10において、図3(D)に示すように、当該ガラス10の透明領域と比較して第1の塗布領域100に大きな占有面積を有し、車体1に上下対称で第1の装飾プリント層12を印刷するにあたっては、セラミック塗料に着色してスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷し、上下対称となる当該ガラス10の位置に焼き付けて形成される第1の装飾プリント層12を、第1のセラミック層11で被覆する。
【0043】
また、前述までの第3、第4の各装飾プリント工程において、第1のセラミック層11の車体内側には、図2(A)、(B)示す熱線プリント層13が設けられている。これにより、図3(C)、(D)にそれぞれ示すように、第1の塗布領域100内においては、熱線プリント層13にて発生する熱を、第1のセラミック層11が高精度で吸収するため、この熱の影響で第1の装飾プリント層12が剥がれることはない。一方、第1の塗布領域100以外のリアウィンドガラス10の透明領域には、第1の装飾プリント層12が一部印刷されているものの、その占有面積が第1の塗布領域100における占有面積と比較して小さいため、熱の影響も少なく剥がれ難く、熱線プリント層13による高精度な結露防止作用を有することになる。
【0044】
なお、前述までの第3、第4の各装飾プリント工程によれば、図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10において、当該ガラス10の透明領域と比較して第1の塗布領域100に大きな占有面積を有し、車体1の車幅方向に左右対称{図3(C)を参照。}、車体1に上下対称{図3(D)を参照。}で第1の装飾プリント層12を印刷するように、第1の装飾プリント層12を対称配置させたが、この態様に限定されるものではない。例えば、上下左右のうち何れか1箇所や、上下左右のうち選択した少なくとも2箇所のように、任意の位置に第1の装飾プリント層12を印刷した後、第1のセラミック層11で被覆することができるばかりでなく、その印刷(プリント)面としては、「KANTO」の文字(文字列)に限定されず、多種・多様な文字や図名等で形成することもできる。
【0045】
前述までの第1乃至第4の各装飾プリント工程によれば、図2(A)、(B)にそれぞれ示すリアウィンドガラス10において、第1の塗布領域100以外、すなわち、図3(A)、(B)にそれぞれ示す当該ガラス10の透明領域にはみ出して第1の装飾プリント層12が印刷されない、又は、図3(C)、(D)にそれぞれ示すように当該ガラス10の透明領域にはみ出しても、その占有面積が小さいため、運転者による後方視界を十分に確保することができる。また、第1の装飾プリント層12において、文字や図形等の印刷(プリント)面は、リアウィンドガラス10の透明領域に接しているため、車外からの視認性を十分に確保することができる。さらに、第1の装飾プリント層12は、当該ガラス10の車体内面側に印刷されるため、通常、車外下方部に設けられるワイパーや洗浄液の吹出口等の動作時や洗車時において剥がれることもない。
【0046】
次に、第5の装飾プリント工程として、図2(C)、(D)にそれぞれ示すクォーターウィンドガラス20において、第2の塗布領域200内であり、図4(A)に示すように、車体1の前後方向に左右対称で第2の装飾プリント層22を印刷するにあたっては、セラミック塗料に着色してスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷し、左右対称となる当該ガラス20の位置に焼き付けて形成される第2の装飾プリント層22を、第2のセラミック層21で被覆する。
【0047】
次に、第6の装飾プリント工程として、図2(C)、(D)にそれぞれ示すクォーターウィンドガラス20において、第2の塗布領域200内であり、図4(B)に示すように、車体1に上下対称で第2の装飾プリント層22を印刷するにあたっては、セラミック塗料に着色してスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷し、上下対称となる当該ガラス20の位置に焼き付けて形成される第2の装飾プリント層22を、第2のセラミック層21で被覆する。
【0048】
なお、前述の第5、第6の各プリント工程によれば、図2(C)、(D)にそれぞれ示すクォーターウィンドガラス20において、第2の塗布領域200内であり、車体1の前後方向に左右対称{図4(A)を参照。}、車体1に上下対称{図4(B)を参照。}で第2の装飾プリント層22を印刷するように、第2の装飾プリント層22を対称配置させたが、この態様に限定されるものではない。例えば、上下左右のうち何れか1箇所や、上下左右のうち選択した少なくとも2箇所のように、任意の位置に第2の装飾プリント層22を印刷した後、第2のセラミック層21で被覆することができるばかりでなく、その印刷(プリント)面としては、「KANTO」の文字(文字列)に限定されず、多種・多様な文字や図名等で形成することもできる。
【0049】
次に、第7の装飾プリント工程として、図2(C)、(D)にそれぞれ示すクォーターウィンドガラス20において、図4(C)に示すように、当該ガラス20の透明領域と比較して第2の塗布領域200に大きな占有面積を有し、車体1の前後方向に左右対称で第2の装飾プリント層22を印刷するにあたっては、セラミック塗料に着色してスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷し、左右対称となる当該ガラス20の位置に焼き付けて形成される第2の装飾プリント層22を、第2のセラミック層21で被覆する。
【0050】
次に、第8の装飾プリント工程として、図2(C)、(D)にそれぞれ示すクォーターウィンドガラス20において、図4(D)に示すように、当該ガラス20の透明領域と比較して第2の塗布領域200に大きな占有面積を有し、車体1に上下対称で第2の装飾プリント層22を印刷するにあたっては、セラミック塗料に着色してスクリーン印刷、例えば、シルクスクリーン印刷し、上下方向で対称となる当該ガラス20の位置に焼き付けて形成される第2の装飾プリント層22を、第2のセラミック層21で被覆する。
【0051】
なお、前述までの第7、第8の各装飾プリント工程によれば、図2(C)、(D)にそれぞれ示すクォーターウィンドガラス20において、当該ガラス20の透明領域と比較して第2の塗布領域200に大きな占有面積を有し、車体1の車幅方向に左右対称{図4(C)を参照。}、車体1に上下対称{図4(D)を参照。}で第2の装飾プリント層22を印刷するように、第2の装飾プリント層22を対称配置させたが、この態様に限定されるものではない。例えば、上下左右のうち何れか1箇所や、上下左右のうち選択した少なくとも2箇所のように、任意の位置に第2の装飾プリント層22を印刷した後、第2のセラミック層21で被覆することができるばかりでなく、その印刷(プリント)面としては、「KANTO」の文字(文字列)に限定されず、多種・多様な文字や図名等で形成することもできる。
【0052】
前述までの第5乃至第8の各装飾プリント工程によれば、図2(C)、(D)に示すクォーターウィンドガラス20において、第2の塗布領域200以外、すなわち、図4(A)、(B)にそれぞれ示す当該ガラス20の透明領域にはみ出して第2の装飾プリント層22が印刷されない、又は、図4(C)、(D)にそれぞれ示すように当該ガラス20の透明領域にはみ出しても、その占有面積が小さいため、運転者による斜め後方視界を十分に確保することができる。また、第2の装飾プリント層22において、文字や図形等の印刷(プリント)面は、当該ガラス20の透明領域に接しているため、車外からの視認性を十分に確保することができる。さらに、第2の装飾プリント層22は、当該ガラス20の車体内面側に印刷されるため、通常、車外下方部に設けられるワイパーや洗浄液の吹出口等の動作時や洗車時において剥がれることもない。
【0053】
前述までの説明から明らかように、本発明の実施例による自動車用ガラスの装飾プリント構造においては、セラミック塗料の着色により印刷される文字や図形等の(第1、第2の)装飾プリント層12、22をリアウィンドガラス10、クォーターウィンドガラス20にそれぞれ印刷するにあたり、この装飾プリント層12、22を、当該ガラス10、20の車体内側面に塗布される(第1、第2の)セラミック層11、21の(第1、第2の)塗布領域100、200内に設ける、又は、当該ガラス10、20の透明領域と比較して当該塗布領域100、200に大きな占有面積で設けることができる。これにより、リアウィンドガラス10、クォーターウィンドガラス20の透明領域に占める当該装飾プリント層12、22の占有面積が無くなる、又は低く抑えられるため、運転者による車内からの後方視界が十分に確保され、この状態で車外からの当該装飾プリント層12、22の視認性も高められる。
【0054】
なお、本発明による自動車用ガラスの装飾プリント構造においては、特定の実施の形態をもって説明してきたが、この形態に限定されるものでなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成の当該装飾プリント構造であっても採用できるということはいうまでもないことである。
【0055】
具体的に、本発明の実施例によれば、前述の装飾プリント構造を有する自動車用ガラスとして、リアウィンドガラス10及びクォーターウィンドガラス20をそれぞれ有する自動車を適用したが、この態様に限定されるものではない。例えば、クォーターウィンドガラス20が不備とされる一方、リアウィンドガラス10を有する車体形状の自動車であってもよく、その形状としては、所謂、セダン型、ハードトップ型、クーペ型、バン(ミニバン)型等を問わず適用することができる。
【0056】
また、リアウィンドガラス10及びクォーターウィンドガラス20としては、前述の当該装飾プリント構造を有する限り、固定式に限定されるものではなく、例えば、ヒンジを有する開閉可能なハッチ・オン・ハッチ(ガラスハッチと同意。)式を適用することもできる。
【0057】
また、第1、第2の各セラミック層11、21として、銀色(銀灰色)のセラミックを適用し、リアウィンドガラス10、クォーターウィンドガラス20の各外周部に塗布することにより、耐候(天候)性が要求される外装用材料としての例えば、ステンレス鋼から成る高価なモール材の代替とすることが可能であって、製造コストを低く抑えることができる。
【0058】
また、第1、第2の各装飾プリント層12、22として、車名を示す文字や図形等を印刷することにより、通常、車体後部のバンパー等に取り付けられるエンブレムが不要となり、製造コストを低く抑えることができる。
【0059】
さらに、第1、第2の各装飾プリント層12、22として印刷される文字として、例えば、ヘアライン等による装飾加工が予め施された文字を使用することにより、当該装飾プリント層12、22としての意匠性を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1(A)は、本発明の実施例による装飾プリント構造を有する自動車の側面図であり、図1(B)は、その自動車を後方から見た斜視図である。
【図2】図2(A)は、図1(B)に示す自動車のリアウィンドガラスを示す拡大図であり、図2(B)は、リアウィンドガラスを、車体の車幅方向であるA−A面で切断したときの概略断面図である。また、図2(C)は、図1(A)に示す自動車のクォーターウィンドガラスを示す拡大図であり、図2(D)は、クォーターウィンドガラスを、車体の前後方向であるB−B面で切断したときの概略断面図である。
【図3】図3(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ、本発明の実施例による自動車用ガラスの装飾プリント構造において、リアウィンドガラスに印刷される装飾プリント層の具体的な態様を示す図である。
【図4】図4(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ、本発明の実施例による自動車用ガラスの装飾プリント構造において、クォーターウィンドガラスに印刷される装飾プリント層の具体的な態様を示す図である。
【図5】図5(A)、(B)はそれぞれ、背景技術の別の態様として適用される装飾プリント構造として、自動車用窓ガラス(リアウィンドガラス)を、車体の車幅方向であるa−a面、b−b面で切断したときの概略断面図、及び自動車用窓ガラス(リアウィンドガラス)に印刷される広告プリントの具体的な態様を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1……車体
10……リアウィンドガラス
100……第1の塗装領域(塗装領域)
11……第1のセラミック層(セラミック層)
12……第1の装飾プリント層(装飾プリント層)
20……クォーターウィンドガラス
200……第2の塗装領域(塗装領域)
21……第2のセラミック層(セラミック層)
22……第2の装飾プリント層(装飾プリント層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のリアウィンドガラスと、前記リアウィンドガラスの車体内側面に塗布されるセラミック層と、セラミック塗料の着色により前記リアウィンドガラスの車体内側面に印刷される文字や図形等の装飾プリント層とを備え、
前記装飾プリント層は、前記セラミック層により前記リアウィンドガラスに被覆されることを特徴とする自動車用ガラスの装飾プリント構造。
【請求項2】
車体のクォーターウィンドガラスと、前記クォーターウィンドガラスの車体内側面に塗布されるセラミック層と、セラミック塗料の着色により前記クォーターウィンドガラスの車体内側面に印刷される文字や図形等の装飾プリント層とを備え、
前記装飾プリント層は、前記セラミック層により前記クォーターウィンドガラスに被覆されることを特徴とする自動車用ガラスの装飾プリント構造。
【請求項3】
前記セラミック層は、前記ガラスの周縁部に塗布領域を有し、
前記装飾プリント層は、前記塗布領域内に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動車用ガラスの装飾プリント構造。
【請求項4】
前記セラミック層は、前記ガラスの周縁部に塗布領域を有し、
前記装飾プリント層は、当該ガラスの透明領域と比較して前記塗布領域に大きな占有面積を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動車用ガラスの装飾プリント構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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