説明

自動車用パワウインドウの制御方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車におけるパワウインドウの制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電動モータの正転,逆転で自動車の窓ガラスの開閉を行うパワウインドウ装置において、従来ロック(窓ガラスの全閉,全開時のロック及び人体等の挟み込みによるロック)の検出は、負荷電流が設定値を越えたことを検出する方法で行っていた(例えば特開昭61−64982号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】自動車用窓ガラスの開閉作動負荷は、例えば冬季と夏季とでは負荷状態が変化し特に夏季では負荷が軽くなる等、負荷電流は同一の窓ガラスであっても決して一定値ではなく、その値は作動の度に変化する。
【0004】従って上記従来の方法では、仮に負荷が重い状態(例えば冬季)を基準にしてロック検出の為の負荷電流の設定値を決定すると、負荷が軽い状態(例えば夏季)では必要以上の過電流が必要となるばかりか人体等を挟み込んだ場合の影響が大きくなり、逆に負荷が軽い状態を基準にして設定値を決定すると、負荷が重い状態では若干の負荷変動でロックと誤判断し、例えば窓ガラスがウエザストリップに充分に圧接しないうちに(全閉に至らないうちに)駆動が停止する場合が生じるという課題を有している。
【0005】本発明は上記従来の課題に対処することを主目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、窓ガラスの全閉ロック及び全開ロックの検出を、例えばリミットスイッチのような位置検出手段を用いないで、電動モータの負荷電流値で行うようにした自動車用パワウインドゥ装置において、窓ガラス開閉作動毎に、負荷駆動開始から第1の設定時間t0 が経過した後、第2の設定時間t1 内にサンプリングした負荷電流Iからその平均値を求めてこれを基準負荷電流i1 とし、第2の設定時間t1 経過後にサンプリングした負荷電流Iが上記基準負荷電流i1 に設定値Δi1 を加えた値以上となったときロックと判断して電動モータの負荷駆動を停止させるという制御を行うことを第1の特徴とし、上記第2の設定時間t1内では、サンプリングした負荷電流Iが、前回の開閉作動時に求めた前回の基準負荷電流i1 ′に設定値Δi1 を加えた値以上となったときロックと判断して電動モータの負荷駆動を停止させるという制御を行うことを第2の特徴とするものである。
【0007】
【作用】上記第1の特徴により、負荷の状態にかかわらず常に一定の検出レベルで窓ガラスの全閉ロック及び全開ロックの検出を的確に行うことができ、又第2の特徴により作動途中で例えば人体を挟み込んだような場合でも、人体への影響を軽減できる。
【0008】
【実施例】以下本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0009】図1は本発明において用いる電動モータMの駆動制御回路の一例を示すブロック図であり、駆動制御回路ECUは、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)及びA/D変換器を有し主に演算を行う制御部と、スイッチ入力を電気信号に変換し上記制御部に入力する入力インタフェイスと、上記制御部からの信号に基づき負荷駆動を行う駆動回路と、負荷電流を検出し電気信号に変換した後に制御部のA/D変換器に入力する電流検出回路と、それら各々に電源を供給する電源回路とから構成され、制御部は以下に述べるような制御を行う。
【0010】図2の(A),(B)及び(C)は窓ガラス開閉作動時の負荷電流特性の3つのパターンをそれぞれ示す図である。
【0011】図2の(A)は、例えば全開状態から窓ガラスが閉作動し全閉状態に至る間の通常作動における負荷電流Iの変化を示しており、実線示は負荷が小なる場合,点線示は負荷が大なる場合を示している。
【0012】図2(A)のパターンにおいて、スイッチ操作により例えばアップ信号が入力インタフェイスを介して制御部に入力され、該制御部からの信号により駆動回路を介して電動モータMが回転駆動をはじめると、電流検出回路が負荷電流を検出し制御部のA/D変換器に入力し、制御部は駆動開始から第1の設定時間toが経過した後、負荷電流Iのサンプリングを行う。上記第1設定時間toは、負荷駆動開始時に発生する突入電流を回避する為の時間である。
【0013】第2の設定時間t1 経過後t1 時間内にサンプリングした負荷電流Iの平均値を求め、それを基準負荷電流i1 とし、この基準負荷電流i1 に設定値△i1 を加えた値i1 +△i1 と、以後電流検出回路が検出した負荷電流Iとを比較し、I≧i1 +△i1 となったときロックと判断して作動停止信号を発し、電動モータMの駆動を停止させる。
【0014】又上記において基準負荷電流i1 はメモリされ、そのメモリした値は次回の負荷駆動時、前回の基準負荷電流i1 ′として使用される。即ち次回の負荷駆動時は、to時間経過後サンプリングされた負荷電流Iは先ず前回の基準負荷電流i1 ′と比較され、I≦i1 ′であれば前回の場合と同様t1 時間内にサンプリングした負荷電流Iの平均値を求めてそのときの基準負荷電流i1 とし、以後I≧i1 +△i1 となったとき作動停止信号を発する。
【0015】図2(A)において、例えば実線示の前回作動時に比し今回は点線示のように負荷が大となったとすると、今回t1 時間内にサンプリングした負荷電流IはI>i1 ′となる。このような場合はそのサンプリングした負荷電流Iと前回の基準負荷電流i1 ′に設定値△i1 を加えた値i1 ′+△i1 とを比較し、I<i1 ′+△i1 であった場合は前回同様t1 時間内にサンプリングしたIの平均値を今回の基準負荷電流i1 とし、I≧i1 +△i1 となったとき作動停止信号を発する。
【0016】このようにIがそのときの基準負荷電流i1 に△i1 を加えた値以上となったときロックと判断することにより、負荷の大小の変化にかかわらず一定状態でロック検出を行うことができる。
【0017】例えば窓ガラスが少し開いている状態から窓ガラスを全閉とするようなとき、図2の(B)に示すように第2設定時間t1 の途中で窓ガラスが全閉となることがある。又例えば全閉又は全閉の極く近傍状態で閉作動させたときは図2の(C)に示すようなパターンとなる。更に又窓ガラスの閉作動の途中又は閉作動開始直後に異物(人体等)を挟み込んだときも上記図2の(B)又は(C)のパターンとなり、いずれの場合もt1 時間内にサンプリングした負荷電流Iが前回の基準負荷電流i1 ′より大きく、且つI≧i1 ′+△i1 となる。
【0018】このようにt1 時間内にサンプリングした負荷電流Iが前回の基準負荷電流i1 ′に設定値△i1 を加えた値以上となったときはロックと判断し、作動停止信号を発して電動モータMの駆動を停止する。
【0019】図2(A)の実線示から点線示のようにそのときの基準負荷電流i1 を求めた場合は、新たに求めた基準負荷電流i1 を次回用のi1 ′としてメモリの書きかえを行い、図2の(B)及び(C)のようにそのときの基準負荷電流i1 を求めなかった場合はメモリの書きかえは行わず、前回のi1 ′はそのまゝ継続して記憶される。
【0020】上記の図2の(A),(B)及び(C)における制御をまとめてフローチャートで表わすと、図3に示すようになる。
【0021】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、窓ガラス開閉作動毎に通常動作時の負荷電流の平均値を求めてこれをそのときの基準負荷電流とし、これを基準値としてロックの判断を行う方法を採ることにより、負荷の状態にかかわらず常に一定の検出レベルでロック検出を行うことができる。
【0022】又上記開閉作動毎に求めた基準負荷電流の値を記憶し、次の開閉作動時基準負荷電流を求めるまでの間は記憶している前回の基準負荷電流を基準値としてロックの判断を行う方法を採っているので、作動途中で例えば人体を挟み込んだ場合にも人体への影響を軽減できるという効果を奏するもので、これらの制御はソフトウエアに依存するのでコストにはほとんど影響しないことと相俟って実用上極めて有効なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において使用する電動モータ駆動制御回路の一例を示すブロック図である。
【図2】窓ガラス開閉作動時の負荷電流特性を(A),(B),(C)の3つのパターンで示すものである、
【図3】本発明の制御方法の一実施例を示すフロチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動モータにて窓ガラスの開閉を行う自動車用パワウインドゥ装置であって窓ガラスの全閉時及び全開時のロックを電動モータの負荷電流値で検出するものにおいて、電動モータの負荷駆動開始から第1の設定時間t0 が経過した後、第2の設定時間t1 内にサンプリングした負荷電流Iからその平均値を求めてこれを基準負荷電流i1 とし、それ以後サンプリングした負荷電流Iと基準負荷電流i1 に設定値Δi1 を加えた値i1 +Δi1 とを比較し、Iがi1 +Δi1 以上となったときロックと判断して電動モータの負荷駆動を停止させることを特徴とする自動車用パワウインドゥの制御方法。
【請求項2】 請求項1に記載の自動車用パワウインドゥの制御方法において、第2の設定時間t1 内にサンプリングした負荷電流Iと、前回の開閉作動時に求めた前回の基準負荷電流i1 ′に設定値Δi1 を加えた値i1 ′+Δi1 とを比較し、Iがi1 ′+Δi1 以上となったときロックと判断して電動モータの負荷駆動を停止させることを特徴とする自動車用パワウインドゥの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3273045号(P3273045)
【登録日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【発行日】平成14年4月8日(2002.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−94792
【出願日】平成3年4月1日(1991.4.1)
【公開番号】特開平4−306387
【公開日】平成4年10月29日(1992.10.29)
【審査請求日】平成10年3月25日(1998.3.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【復代理人】
【識別番号】100102510
【弁理士】
【氏名又は名称】白濱 國雄 (外1名)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−185625(JP,A)
【文献】特開 昭59−221769(JP,A)