説明

自動車用ファンユニット

【課題】 インストルメントパネルの吹出し穴を介した空気温度間の差異を最小にするファンユニットを提供する。
【解決手段】 自動車用ファンユニットにおいて、空気通路を有するハウジング(30)が、ダッシュボード内の穴を通して自動車の内部スペースに配装されている。吸出し管(40、50)が、ハウジング内に配置され、吹出し条溝(41、51)を有する。吹出し条溝が、インストルメントパネルの前記穴から流出する空気流に曝されるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ファンユニットであって、インストルメントパネルの穴を通して車両室内に空気を送る空気通路を備えた1つのハウジングからなるものに関する。
【背景技術】
【0002】
この形式の従来のファンユニットまたは空調装置は、加熱用熱交換器内で生成される外部からの温められた空気と冷空気または温度調節済み空気とを混合するように構成されている。冷空気流の速度は一般に暖空気よりも高いが、これは少なくとも一部では、暖空気が加熱用熱交換器内を流れる事実に帰すことができる。そのことから必然的に生じる結果として、冷空気流の調節用冷空気ドアが開いているとき、冷空気の高い速度が総空気流中に成層形成をもたらす。幾つかの事例では、ファンユニットの吹出し穴を介して大きな温度勾配を生じることがある。これが自動車の乗員によって知覚され、不快感を呼び起こすことがある。除霜または曇り除去時、インストルメントパネルを介したこの温度勾配は不均一な除霜を帰結することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、インストルメントパネルの吹出し穴を介した空気温度間の差異を最小にするファンユニットを提供することである。
【発明の実施の形態】
【0004】
本発明の特殊な1実施形態においてインストルメントパネルの吹出し穴を介した温度勾配は例えば約5°F以下である。
【0005】
本発明により提供される自動車用ファンユニットは、インストルメントパネルの穴を通して車両室内に空気を送る空気通路を備えた1つのハウジングからなる。このハウジング内に、インストルメントパネルの前記穴の横で少なくとも1つの吸出し管が配置されている。この少なくとも1つの吸出し管が1つの吹出し条溝を備えており、この吹出し条溝はインストルメントパネルの穴から流出する空気流に曝されるように配置されている。吹出し条溝の脇を流れる空気流が吸出し管の内部に真空または空気流れを発生し、これにより例えば、温空気または暖空気を、吸出し管の外側を流れる冷空気流中に引き入れてこれと混合することが可能になる。
【0006】
この配置が提供する特別な利点として、調節装置の必要性なしに、所要の空気混合が受動的に達成される。付加的部品または可動部品が必要でなく、そのことから整備・作製費の低減が帰結する。
【0007】
好ましい1実施形態において、この少なくとも1つの吸出し管はインストルメントパネルの穴の1つの延長側に沿って配置されている。この配置では、吸出し管の吹出し条溝はインストルメントパネルの穴の縦方向に対して実質平行に延びている。その結果、流出する空気流の大部分は吸出し管から吸い出される温空気と混合することができる。
【0008】
他の1実施形態において2つの吸出し管が設けられ、これらの管はそれぞれインストルメントパネルの穴の反対側の延長側に沿って配置されている。この配置でも、吹出し条溝はインストルメントパネルの穴の縦方向と平行に、但しここではインストルメントパネルの穴の両側で延びている。
【0009】
他の1実施形態において吸出し管の第1末端が空気吸出し穴として設けられる一方、吹出し条溝は軸線方向で吸出し管の1つの側壁に形成される。吹出し条溝は吸出し管の軸線方向長さの少なくとも半分にわたって延設することができる。
【0010】
他の好ましい1実施形態において吹出し条溝は吸出し管の軸線方向に沿って異なる幅を有する。こうして、冷空気流内部での軸線方向位置に依存して、多かれ少なかれ吸い出された空気を冷空気流に添加することができる。
【0011】
本発明のその他の課題、特徴および諸利点は、添付図面と合せて検討されるとき、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0012】
以下、図面を参考に本発明の実施形態についての例が説明される。
【実施例】
【0013】
図1は、自動車室内の暖房および/または冷房用に使用される従来のファンユニットを示す。ファンユニット1が1つのハウジング3を含み、そこで暖空気と冷空気との混合物がインストルメントパネルの穴から流出する。上で述べたように冷空気流と暖空気流との混合は冷空気の速度が高いので不完全であり、その結果、インストルメントパネル2の穴から流出する空気流は層を有する。ユニットから流出する強く成層した空気は知覚可能であり、車両乗員によって感じられることがある。この問題を本発明は扱い、そのことが以下で好ましい実施形態に関連して詳しく述べられる。
【0014】
図2は本発明の好ましい実施形態を断面図で示す。冷空気は空気通路を通して直接ユニット内をインストルメントパネル穴20へと流れる。用語「冷」空気とは相対的に、つまり例えば加熱用熱交換器内を流れない空気、周囲空気、または車両室内から吸い込まれる空気と理解すべきである。別の空気流が、やはり図2によれば加熱用熱交換器内を流れ、そのような空気が本目的にとって「暖」空気と称される。加熱用熱交換器内を流れない空気に対して用語「暖」は相対的にすぎないと理解しなければならない。さらに、本発明が空気の冷却にも加熱にも利用できることを推測できることを専門家なら知っている。
【0015】
ハウジング30は暖空気流と冷空気流をインストルメントパネル穴20へと送るために空気通路を含み、結果として生じる空気流はインストルメントパネル穴から自動車の室内へと流れる。図2と図3を参考にすると、暖空気流と冷空気流はインストルメントパネルの穴から流出する前に互いに混合される。暖空気流と冷空気流とのこの混合は少なくとも1つの吸出し管40によって強められ、この吸出し管はハウジング30内でインストルメントパネル穴20の横に取付けられている。この実施形態において吸出し管40はインストルメントパネル穴の前面の横にあり、1つの吹出し条溝41を含む。
【0016】
吹出し条溝41は、インストルメントパネル穴から流出する空気流に曝されているように配置されている。図3の図示において吹出し条溝41は流出する空気流の右横にあり、そこでは空気が一層冷たい。空気が噴出し条溝41の脇を流れるとき、吸出し管40の内部に空気流れが発生され、この空気流れは吸出し管40の第1末端42に設けられた入口穴から暖空気を吸い出す。こうして、流出する空気流の一層冷たい部分が、吸出し管40を通して横方向で空気流中に(図3で左側から)引き入れられる暖空気と混合される。
【0017】
図2、図3の実施形態において2つの吸出し管(40、50)はインストルメントパネル穴20の延長側に沿って、一方の吸出し管はインストルメントパネル穴の前側、他方の吸出し管は裏側に、配置されている。第2吸出し管50はさらに1つの吹出し条溝51を含み、この吹出し条溝は吹出し穴20から流出する空気流に曝されているように配置されている。条溝51の脇を流れる空気流が発生する空気流れによって、加熱された空気が吸い出される。第1吸出し管40と同様に、第2吸出し管50も第1末端に1つの入口穴52を有し、この入口穴は暖空気流中にある。管およびその入口末端の配置は、図4A、図4Bに示したファンユニットの斜視図からも明らかとなる。
【0018】
吸出し管40、50の吹出し条溝41、51は実質的に軸線方向で各管の1つの側壁に形成されている。条溝41、51は各管の軸線方向全長にわたって、または所要の別のあらゆる軸線方向長さにわたって延設することができる。好ましい1実施形態において条溝41、51は各管40、50の軸線方向長さの少なくとも半分にわたって延設されている。図3に認めることができるように、吹出し条溝41は吸出し管40に沿った軸線方向位置に依存して異なる幅を有することもできる。この特徴によって、特定の軸線方向位置で空気流中に提供される暖空気の量は調整することができる。吹出し条溝の長さおよび幅の確定はその都度の応用に従って、または所定の換気システムが満たさねばならない諸要求に従って行われる。吹出し条溝の寸法および形状は、管の寸法および形状と同様に、暖空気流と冷空気流との混合時に最大の効率を確保するための構想パラメータとして調整できるものと理解することができる。管に関しファンユニット全体の寸法設計後、他の調整はもはや必要でない。
【0019】
さらに、本発明の吸出し管の成形はユニットのハウジングの成形の一体な構成要素であり、このファンユニットの作製時に付加的組立作業は必要でない。
【0020】
本発明の他の利点は吸出し管の使用から結果的に生じる受動的自己調節効果である。冷空気通路用冷空気ドアが開いていると、特に空気流の片側で、図3では例えば空気流の右側で、冷空気の流れ速度が最大となる。吸出し管40の吹出し条溝41の脇を流れる冷空気の最大速度は暖空気の最大空気流れを発生し、その結果として所要の混合効果を生じる。他方で冷空気ドアが閉位置方向に調整されると、冷空気の速度が低下し、それとともに空気流れの速度も低下するが、しかし吸い出される暖空気の需要も小さい。こうして、冷空気流と混合されねばならない暖空気の量が自動的に調節される。
【0021】
本発明の他の1実施形態において吸出し管40、50の第1末端42、52の領域に1つの案内板60が設けられる。この案内板60は僅かな軸線方向広がりを有し、本来なら直接インストルメントパネル穴20に流入するであろう暖空気をそらせて管40、50の入口穴42、52に導くように配置されている。この実施形態において案内板はV形に実施されているが、しかしこの案内板は別の形状を有することもできる。案内板は暖空気がインストルメントパネル穴20に直接流入するのを妨げ、さらに、暖空気を吸出し管の入口穴42、52の領域に導く方向転換板の機能を引き受ける。
【0022】
以上の本発明の説明では特定の実施形態が強調されたが、以上の説明は本発明を実務に転換するために現在最良と見做される方法に限定されたと理解すべきである。本発明をさまざまに変更し、本発明の幾つかの利点またはすべての利点を達成できることが実証される。また本発明は、上で述べた個々のすべての特徴および観点またはそれらの組合せを必要とするように構想されてはいない。多くの場合、特定の特徴および観点は別の特徴および観点の実際的実施にとって本質的意味を持たない。本発明は添付した特許請求の範囲およびその相応物によってのみ限定されるべきである。というのも、別の実施形態および変更態様が特許請求の範囲の本来の範囲に含まれていないとしても、それらも特許請求の範囲はカバーするからである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】暖空気流と冷空気流とを図示した従来のファンユニットを示す。
【図2】本発明の1実施例によるファンユニットの横断面図である。
【図3】図2によるユニットを3‐3切断線に沿って示す断面図である。
【図4A】図2、図3による実施形態の斜視図である。
【図4B】図2、図3による実施形態の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ファンユニットであって、インストルメントパネルの穴を通して車両室内に空気を送る空気通路を備えた1つのハウジングと、インストルメントパネルの前記穴の横でハウジング内に配置される少なくとも1つの吸出し管とからなり、前記少なくとも1つの吸出し管が1つの吹出し条溝を含み、この吹出し条溝が、インストルメントパネルの前記穴から流出する空気流に曝されるように配置されているファンユニット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの吸出し管がインストルメントパネルの穴の1つの延長側に沿って配置されている、請求項1記載のファンユニット。
【請求項3】
ファンユニットがさらに少なくとも1つの付加的吸出し管を含み、この吸出し管がインストルメントパネルの前記穴の第2延長側の横に配置されており、前記少なくとも1つの付加的吸出し管が1つの吹出し条溝を有し、この吹出し条溝がインストルメントパネルの前記穴から流出する空気流に曝されているように配置されている、請求項1記載のファンユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの吸出し管の第1末端が1つの空気入口穴を有する、請求項1記載のファンユニット。
【請求項5】
前記吹出し条溝が軸線方向で前記少なくとも1つの吸出し管の1つの側壁に形成される、請求項1記載のファンユニット。
【請求項6】
前記吹出し条溝が前記少なくとも1つの吸出し管の軸線方向長さの少なくとも半分にわたって延設されている、請求項5記載のファンユニット。
【請求項7】
吹出し条溝が前記少なくとも1つの吸出し管の軸線方向に沿って異なる幅を有する、請求項5記載のファンユニット。
【請求項8】
前記少なくとも1つの吸出し管の第1末端が1つの空気入口穴である、請求項1記載のファンユニット。
【請求項9】
ファンユニットがさらに、吸出し管の第1末端の横に、前記第1末端の入口穴の方向に空気を導くための案内板を含む、請求項8記載のファンユニット。
【請求項10】
前記少なくとも1つの吸出し管、第1入口末端および吹出し条溝が、案内板と一緒に、受動的自己調節式温度成層点検部を提供するように挙動する、請求項9記載のファンユニット。
【請求項11】
自動車用ファンユニットであって、インストルメントパネルの穴を通して車両室内に空気を送る空気通路を備えた1つのハウジングと少なくとも2つの吸出し管とからなり、これらの吸出し管が一体な構成要素としてハウジングに成形され、かつインストルメントパネルの穴によって定義される少なくとも2つの側の横に配置されており、前記少なくとも2つの吸出し管のそれぞれが1つの吹出し条溝を含み、この吹出し条溝が、インストルメントパネルの前記穴から流出する空気流に曝されるように配置されているファンユニット。
【請求項12】
自動車用ファンユニットのためのハウジングであって、空気を受け入れることのできる1つの空気入口と、少なくとも2つの個別の空気通路を定義する少なくとも2つの空気通路と、少なくとも2つの個別の空気通路内を流れる空気を合流させる1つの空気混合領域と、空気混合領域の内部に位置決めされる1つの縦方向溝付き管と、前記空気混合領域内を流れる空気を放出することのできる1つの空気出口とからなり、溝付き管の一方の末端が、前記少なくとも2つの個別の空気通路の一方のみから空気を受け入れることのできる1つの穴を含むハウジング。
【請求項13】
先行請求項の少なくとも1項に記載したファンユニットを備えた暖房装置または空調装置であって、装置が1つのヒータコア、場合によっては1つの蒸発器と空気流制御要素を有し、装置ハウジングの内部に温空気通路が構成されており、温空気通路内を流れる空気がヒータコアによって加熱可能であり、装置ハウジングの内部に冷空気通路が構成されており、温空気通路内を流れる空気が、場合によって存在する蒸発器によって冷却可能であり、温空気と冷空気との混合を可能とするために空気流制御要素が設けられている暖房装置または空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−513010(P2007−513010A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542057(P2006−542057)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004423
【国際公開番号】WO2005/053976
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(503453532)ベール アメリカ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】