説明

自動車用内装部品

【課題】衝突時において乗員の安全を図るエネルギーの吸収特性を維持しながら、高い反発力を備えて大きな衝撃に対応できる自動車用内装部品を提供する。
【解決手段】車両のドアトリム11に衝撃吸収部材20を取り付けてなる自動車用内装部品であって、衝撃吸収部材20が、上面部21と該上面部21の外周より垂れ下がる周囲壁部22を有して一面が開放された箱体24と、箱体24の内部に上面部21から開口23側に延びる柱状部25を備え、かつ、ドアトリム11に柱状部25の先端部分外周を囲って配設される囲い壁部32を備える構造にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の側突時に衝撃エネルギーを吸収して乗員を保護する自動車用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員室内部には、衝突の衝撃から乗員を保護するために、様々な安全装置が配備されている。また、乗員室の内部は、居室としての快適性を確保するために内装部材が装着されており、安全装置は、一般的に、内装部材と車体パネルの間に配置されている。
【0003】
特許文献1には、車両の側面から衝撃を受けた場合にエネルギーを吸収して変形し、乗員が受ける衝撃を緩和して安全を確保するための衝撃吸収部材を設けた車両用内装部品が記載されている。この衝撃吸収部材は、車両用ドアトリムと車体パネルの間に配置され、衝撃を受けて潰れることにより乗員の腰部や肩などに加わるエネルギーを吸収するようになっている。
【0004】
図8は、特許文献1に記載された衝撃吸収部材60を設けた自動車用ドアトリム51(以下、「ドアトリム51」という)を示した模式図である。同図において、ドアトリム51は、室内側に膨出し、車体パネル52の乗員室側の内面に装着されている。一方、衝撃吸収部材60は、車体パネル52に対向するドアトリム51の内側に固着して配置されている。配置位置はドアトリム51の下部であり、シートに座った乗員の腰部に対応する位置である。
【0005】
図9は、衝撃吸収部材60を模式的に示した斜視図である。衝撃吸収部材60は、図中の下面61が開口した箱体であり、衝撃吸収性能を有するポリプロピレン(PP)樹脂にエチレンプロピレンラバー(EPR)を配合したエラストマー材料を用いて射出成形により形成されている。また、箱体の上面62の四隅にはコーナカット部63が形成されている。
【0006】
衝撃吸収部材60は、上面62をドアトリム51に固着して配置され、下面61の方向から衝撃により加えられる荷重により変形して衝撃を吸収する。この際、荷重が所定値を超えると、側面64がつながる稜線部65がコーナカット部63を起点として裂けることにより荷重が吸収され、衝撃のエネルギーを緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−338627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の衝撃吸収部材は単純な箱体であるために、吸収するエネルギーの大きさに限界があるという問題があった。すなわち、大きなエネルギーを吸収させるためには、高い反力を持たせる必要があるが、そのような設計を行うと箱体のサイズが大きくなり、車両内装部材と車体パネルの間に収容できなくなる。また、材質の強度を上げて反力を持たせると、衝撃を緩和できずに、乗員に大きな衝撃エネルギーが伝わる場合がある。
【0009】
さらに、衝撃を受けた際に、箱体が垂直に潰れずに横倒れ状態で変形する場合があり、衝撃のエネルギーを十分に吸収することができない場合があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の問題を鑑みて、衝突時において乗員の安全を図るエネルギーの吸収特性を維持しながら、高い反発力を備えて大きな衝撃に対応できる自動車用内装部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動車用内装部品は、車両の側壁パネルに衝撃吸収部材を取り付けてなる自動車用内装部品であって、前記衝撃吸収部材は、上面部と該上面部の外周より垂れ下がる周囲壁部を有して一面が開放された箱体と、該箱体の内部に前記上面部から開放部側に延びる柱状部と、前記側壁パネルに前記柱状部の先端部分外周を囲って配設される囲い壁部とを備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、箱体の内部に設けた柱状部により、変形時の反力を上げることができ、大きな衝撃に対応することが可能となる。また、柱状部の先端部分は、側壁パネルに設けられている囲い壁部で囲まれて配置されているので、衝撃を受けた際に、柱状部が囲い壁部で支えられて横倒れすることがなく、箱体及び柱状部がそれぞれ垂直に潰れて衝撃のエネルギーを十分に吸収することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る自動車用衝撃吸収装置において、前記側壁パネルと前記衝撃吸収部材の間に、先端部に係止爪を有するフック部と該フック部が挿入されて前記係止爪が裏面側で係止される係合孔を有する係止部とよりなる係止手段を備え、前記係止手段により前記側壁パネルと前記衝撃吸収部材を固定するようにしたことを特徴とする。これによれば、係止手段における係止フックを係止部の係合孔に挿入させ、係止フックの係止爪を係止部の裏面に係合させると、衝撃吸収部材を側壁パネルに簡単に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、衝突時において乗員の安全を図るエネルギーの吸収特性を維持しながら、高い反発力を備えて大きな衝撃に対応できる自動車用衝撃吸収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した自動車用ドアトリムの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上ドアトリムに衝撃吸収部材を取り付けた状態で示す自動車用内装部品の要部拡大図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】同上自動車用内装部品における係止手段の拡大分解斜視図である。
【図5】自動車用内装部品の斜視図であり、(a)はドアトリムに衝撃吸収部材を取り付ける前の状態で示す図、(b)はドアトリムに衝撃吸収部材を取り付けた状態で示す図である。
【図6】同上自動車用内装部品の衝突時における状態を説明する図である。
【図7】同上自動車用内装部品のエネルギー吸収特性を従来の自動車用内装部品のエネルギー吸収特性と比較して示す図である。
【図8】従来の自動車用ドアトリムを示す斜視図である。
【図9】従来の衝撃吸収部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1〜図3は本発明を適用した自動車用内装部品としてのドアトリム11を示し、図1はそのドアトリム11の斜視図、図2は乗員室の外側からドアトリムの要部を見た拡大平面図、図3は図2のA−A線拡大断面図である。
【0018】
同図において、ドアトリム11は、室内側に膨出し、車体パネル12の乗員室側を向いている内面に装着されており、また本発明において側壁パネルに相当しているものである。ドアトリム11と車体パネル12の間には、図1及び図3に示すように衝撃吸収部材20がドアトリム11の内側に固着して配置されている。配置位置はドアトリム11の下部であり、シートに座った乗員の腰部に対応する位置である。
【0019】
衝撃吸収部材20は、平面視概略四角形をした上面部21と該上面部21の四辺外周からそれぞれ垂れ下がる4つの周囲壁部22を有し、かつドアトリム11に向けて配設される一面に開放部としての開口23(以下、「開放部23」という)を設けてなる中空の箱体24と、該箱体24の内部に上面部21の中央部分から開放部23側に向かって該開放部23の直ぐ内側まで延びるようにして該箱体24と一体に形成されている中空円筒状の柱状部25を有している。
【0020】
衝撃吸収部材20は、衝撃吸収性能を有する、例えばポリプロピレン(PP)樹脂にエチレンプロピレンラバー(EPR)を配合したエラストマー材料を用いて射出成形により形成されているが、これに限定されるものではない。
【0021】
箱体24の周囲壁部22の内面と柱状部25の外周面との間は、図3に示すように、成形完了後に金型からの離型を容易とするために、上面部21から開放部23に向かって拡開するテーパー状に形成されている。また、柱状部25の底面には孔26が形成されている。
【0022】
さらに、箱体24の上面部21の四隅にはコーナカット部27が形成され、開放部23の3つの外周部分には、箱体24から外側に向かって開放部23とほぼ水平に延びる係止部28が形成されている。その係止部28には、図4に示すように上下方向に貫通して係合孔29が設けられている。
【0023】
衝撃吸収部材20が取り付けられるドアトリム11の乗員室外側を向いている外面には、先端部に係止爪30を有してなるフック部31が係止部28の係合孔29に対応して3本設けられているともに、柱状部25に対応してリブ状に立設されてなる環状の囲い壁部32が設けられている。
【0024】
ドアトリム11のフック部31は、衝撃吸収部材20をドアトリム11に固着するための係止手段33を、衝撃吸収部材20の係止部28と共に構成しているものである。図4はその係止手段33の構成を、係止部28とフック部31を係合させる前の状態で示す係止手段の拡大分解斜視図である。そして、この係止手段33は、図4及び図5(a)に示すように、各フック部31に各係止部28の係合孔29を対応させて、衝撃吸収部材20をドアトリム11に押し付けて行くと、フック部31が弾性変形されながら係合孔29に挿入され、また係止爪30が貫通し終わると、該係止爪30が係止部29の裏面側に係合して抜け止めされ、この係合により衝撃吸収部材20がドアトリム11に固着できるようになっている。
【0025】
一方、ドアトリム11の囲い壁部32は、衝撃吸収部材20がドアトリム11に固着された際、図3に示すように衝撃吸収部材20の柱状部25の先端部分が挿入され、その柱状部25の先端部分の外周を包み込んで外側から支えて保持可能に形成されている。なお、本実施例での囲い壁部32は、環状に形成されている構造を示しているが、柱状部25の先端部分の外周を包み込んで外側から支えられる構造であれば、一つの環として繋がった状態で形成されていてもよいし、部分的に離して形成されていてもよい。
【0026】
上述したように、係止手段33の係合を介してドアトリム11に取り付けられた衝撃吸収部材20は、車体パネル12との間に配置される。そして、側方、例えば図6の矢印方向から衝撃を受けて上面部21と車体パネル12が当たり、この衝撃の荷重が上面部21から加えられた場合には、周囲壁部22及び柱状部25が撓んでエネルギーを吸収する。この際、柱状部材25及び囲い壁部32が設けられていることにより、従来の衝撃吸収体に比べて反力が大きくなる。
【0027】
しかも、撃吸収部材20の柱状部25の先端部分が囲い壁部32内に挿入されて、その柱状部25の先端部分の外周が外側から支えられて保持されているので、柱状部25が横倒れすることなく、図6に示すように箱体24及び柱状部25がそれぞれ垂直に潰れて衝撃のエネルギーを十分に吸収することになる。
【0028】
また、本実施例に係る衝撃吸収部材20は、上面部21の四角形の四隅において、2つの周囲壁部22と上面部21の一部が面取りされたコーナカット部27を設けているので、所定の荷重以上の力が加わった場合に周囲壁部22の接続辺である稜線部34が裂け、乗員の安全を確保するための好適なエネルギー吸収特性を有するようになる。
【0029】
図7は、本実施例に係る自動車用内装部品のエネルギー吸収特性を従来の自動車用内装部品のエネルギー吸収特性と比較して示す図である。図7は横軸に侵入量(mm)、縦軸に荷重(kN)を示している。図中に実線で示すエネルギー吸収特性は本実施例(本発明)における自動車用内装部品のエネルギー吸収特性であり、一点鎖線で示すエネルギー特性は柱状部及び囲い壁部を持たない従来における自動車用内装部品のエネルギー吸収特性を示している。
【0030】
すなわち、図7に示すエネルギー吸収特性において、一点鎖線で示す従来における自動車用内装部品の場合は、外部からの衝撃を受けると徐々に吸収荷重が増大されて行く。これに対して、実線で示す本発明の場合は、衝撃吸収部材20の柱状部25の先端部分が囲い壁部32により外側から支えられていることにより、柱状部25が横倒れすることなく全体が撓み変形することになるので、同図中に範囲aで示す範囲において侵入量の少ない段階から大きな反力を発生させてその範囲a全体にわたって大きな吸収荷重が得られる。すなわち、本発明に係る自動車用内装部品の場合は、大きな反力を有し、乗員の安全を確保するための好適なエネルギー吸収特性を得ることができ、より大きな衝撃に対応できることを示している。
【0031】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明に係る自動車用内装部品は上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の用紙の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0032】
例えば、柱状部25は、円柱に限られるものではなく、多角形等の任意の形状とすることが可能である。
【0033】
また、係止手段33は係止爪30を有するフック部31と係合孔29を有する係止部28とで構成された係止構造に限られるものではなく、ドアトリム11に衝撃吸収部材20を固定して取り付けることができる構造であれば、これ以外の係止構造にすることも可能である。
【0034】
さらに、衝撃吸収部材20は、ドアトリム11に取り付けた構造に限られるものではなく、車体パネル12側に取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0035】
11 ドアトリム
12 車体パネル
20 衝撃吸収部材
21 上面部
22 周囲壁部
23 開口(開放部)
24 箱体
25 柱状部
28 係止部
29 係合孔
30 係止爪
31 フック部
32 囲い壁部
33 係止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側壁パネルに衝撃吸収部材を取り付けてなる自動車用内装部品であって、
前記衝撃吸収部材は、
上面部と該上面部の外周より垂れ下がる周囲壁部を有して一面が開放された箱体と、
該箱体の内部に前記上面部から開放部側に延びる柱状部と、
前記側壁パネルに前記柱状部の先端部分外周を囲って配設される囲い壁部と、を備えることを特徴とする自動車用内装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−230603(P2011−230603A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101329(P2010−101329)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)