説明

自動車用成形天井およびその製造方法

【目的】 吸音性、成形性にすぐれた繊維質基材と、非通気性の樹脂フィルムを積層した成形天井、およびその製造方法。
【構成】 低融点の熱可塑性樹脂繊維を含む2種以上の繊維を絡めて形成した一定値以上の通気度のある繊維質基材と非通気性の樹脂フィルムとを熱可塑性樹脂ウェブを介して積層し、成形してなる自動車用成形天井、および繊維質基材に熱可塑性樹脂ウェブを重ねてを熱風加熱し、さらに非通気性の樹脂フィルムを重ねて押圧、基材の成形と同時に各層を一体化する製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車の内装用の成形天井の通気止めに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車の室内、天井側のパネルに天井内装材を敷設して室内を装飾している。これはパネル鋼板をおおうことによって自動車室内を装飾するとともに、防音材の役割も果たすものである。この種の天井の大半は、いわゆる成形天井であって、一般に熱可塑成分やバインダーを含んだ基材を加熱した上で、天井パネルに合った形状に成形して敷設するものである。この種の自動車用成形天井の中に、たとえば実願昭55−87995号に示されるような(複数種の)繊維を(ニードリングによって)絡めて基材を成形した繊維質の成形天井があった。繊維質基材の成形天井は吸音性にすぐれ、軽量で、用途に適したものである。また低融点の熱可塑性樹脂繊維を混繊することによって加熱成形性が得られる。たとえば、実公昭47−12060号には低融点の熱可塑繊維と、より小さい直径を有する高融点繊維との混繊ウェブに対してニードリングと熱処理をほどこした不織布マットが示されている。この種の繊維構成体に関しては、実公昭53−46382号、特公昭58−37427号などにも示されている。
【0003】繊維質基材の特性(吸音性等)を活かすのに、一定の嵩高さが必要となる。嵩高、低密度である通気性基材を成形に先立ち加熱するにはサクションヒーターを用いた熱風加熱が好ましい(たとえば米国特許4424250号等にこの種の熱風加熱処理が示されている)。遠赤ヒーター等の輻射型のヒーターでは嵩高い基材の内部までは熱が伝わりにくいため、基材の加熱に時間がかかり、また外表面と内奥部の温度差が生じやすい(表面の繊維が熱で損傷したり、内奥部が加熱不足になる)。例として図3に厚さ10mm、みかけ密度0.095g/cm3 、通気度(50cm3 /cm2 /s)の繊維質基材をサクションヒーターで熱風加熱した場合と、輻射加熱(遠赤ヒーター)した場合の基材表面と基材内奥部の温度の上昇状態を示す。目標温度200℃の設定に対して、熱風加熱(流速1.0m/s)では60秒以内に基材表面と内奥部までほぼ均一に昇温がなされるのに対して、輻射加熱では180秒以上かかり、しかも基材表面と内奥部に最大30℃以上の温度差が生じていることがわかる。
【0004】一方でこの種の天井基材では通気止めが要求されることがある。自動車の使用状態では、エアーコンディショナーの送風や、ドアの開閉の作用により車両室内に空気の流れが惹起される。この際、天井材が通気性の素材である場合は、空気の流れの中には天井材の表面側より裏面側に通過する気流も含まれる。この天井材表面側より裏面側にいたる空気の流れには空気中に浮遊する微小の塵等を天井材の表面側に引きつける作用がある。長期間にわたってこのような状態が継続した後では、天井材の表面が薄汚れた外観を呈するので、これを嫌って通気性のある天井材に対して通気止めのフィルムを貼着付与する場合がある。このような通気止めフィルムの付与は、先に述べた熱風加熱を不可能にするので、加熱を輻射加熱にかえるか、フィルムの貼着を別工程にする必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、低融点の熱可塑性樹脂繊維を含む2種以上の繊維を絡めてなる基材を熱風加熱するとともに、非通気性のフィルムを付与してなる成形天井と、その合理的な製造方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】課題を解決する本発明の手段は、少なくとも低融点の熱可塑性樹脂繊維を含む2種以上の繊維を絡めて形成した通気度が0.3cm3 /cm2 /s以上ある繊維質基材と、非通気性の樹脂フィルムとを熱可塑性樹脂ウェブを介して積層し成形してなる自動車用成形天井により、また、この繊維質基材と熱可塑性樹脂ウェブを重ね、十分に高温の熱風によって加熱し、繊維質基材に含まれる低融点熱可塑性樹脂繊維と熱可塑性樹脂ウェブを軟化させた上で、繊維質基材の熱可塑性樹脂ウェブを重ねた側に、非通気性の樹脂フィルムを重ね、繊維質基材方向に押圧して積層一体化するとともに、繊維質基材を所要の形状に成形する自動車用成形天井の製造方法による。繊維質基材には、通気度が0.3cm3 /cm2 /s以上あるために熱風加熱することによって表面から内部まで均一に加熱することが可能であり、また非通気性の樹脂フィルムによって通気止め作用が与えられる。繊維質基材と非通気性樹脂フィルムの積層に熱可塑性樹脂ウェブを介することによって(熱可塑性樹脂ウェブが軟化溶融して)接着剤の作用をなすので、基材の加熱後に非通気性のフィルムを重ねて積層すると同時に押圧し、基材の成形と同時にフィルムを積層一体化することができる。この際、熱可塑性樹脂ウェブが通気性であることから、基材と同時に加熱して軟化溶融させることができ合理的である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、図面をもとに本発明の好適な実施の形態を説明する。図1は本発明による成形天井10の断面図である。繊維質基材11と非通気性の樹脂フィルム12が間に熱可塑性樹脂ウェブ13を介して一体的に積層成形されている。繊維質基材は、複数種の繊維を相互に絡めて形成してなり、少なくとも1種の繊維は低融点の熱可塑性樹脂繊維11aであり(融点110〜200℃)他の繊維11bはこの低融点繊維よりも高融点の熱可塑性樹脂繊維や、綿などの非熱可塑性の繊維である。この基材を構成する繊維の繊維径と繊維長はそれぞれ2〜15デニール、50〜100mmが好ましい。繊維の混合比率は、目標とする基材の成形形状や密度によって10:90〜50:50に設定するのが好ましい。
【0008】以下、図2を参照して、本発明の成形天井の好ましい製造方法を説明する。繊維質基材11は、所定比率で混合した各繊維塊を開繊混合して均一化した後、カード機によって繊維をひきそろえ、ニードリングをおこなって各繊維を絡み合わせ繊維マットに形成し、ロール111に巻き取って製造工程に供給される。基材の密度は0.09〜0.5g/cm3 、目付400〜1500g/m2 、通気度0.3〜1000cm3 /cm2 /s(JIS−L1096−A法)が好ましい。特に通気度に関しては、0.3cm3 /cm2 /s以上が必要で、0.3cm3 /cm2 /s未満では熱風による均一加熱が困難になる。次に基材11の表面に熱可塑性樹脂ウェブ13を重ねる。この熱可塑性樹脂ウェブは、融点が80〜140℃、目付量10〜120g/cm2 のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の通気性のある薄いウェブである。あらかじめ別工程で形成し、ロール113に巻き取って製造工程に供給される。基材の上面に重ね置くことで、または軽いニードリングをもって基材に積層される。
【0009】熱可塑性樹脂ウェブを重ねた基材はサクションヒーター20によって加熱する。サクションヒーターの供給口21から所定温度の熱風を吹き込み、排出口22に吸引する。加熱の条件は、温度を200℃に設定し、流速0.4〜3.0m/sが適する。好ましい加熱時間は120〜180秒である。この温度条件下で、基材は含まれる低融点の熱可塑性樹脂繊維が軟化状態になり、基材全体に可塑性がでて成形可能な状態になる。また熱可塑性樹脂ウェブも軟化して、接着性のある状態に入る。基材(および熱可塑性樹脂ウェブ)がサクションヒーターから出てただちに、ロール112から非通気性フィルム12を基材の熱可塑性樹脂ウェブのある側に供給し、積層をおこなう。非通気性フィルムとして必要な特性は、25%以上の延伸性がある薄いフィルム(0.01〜0.03mm)が適する。たとえば高密度ポリエチレン樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、線状低密度ポリエチレン樹脂フィルム等である。基材との接着性を高めるため、フィルムの基材(熱可塑性樹脂ウェブ)と接着する面に薄い不織布(スパンボンド)をあらかじめラミネート接着しておくこともできる。基材の上方にこのフィルムを配して重ねプレス成形型30によって一体的に成形、積層圧着し成形天井10が得られる。
【0010】
【発明の効果】本発明によって加熱成形性があり、軽量で吸音性にすぐれた繊維質基材の成形天井が得られる。通気止め用のフィルムをもってなり、このフィルムは基材の成形と同時に積層一体化され、工程が合理化される。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車用成形天井の断面図
【図2】自動車用成形天井の製造工程を示す
【図3】加熱時の成形天井基材の温度変化を示す
【符号の説明】
10・・・成形天井
11・・・繊維質基材
11a・・低融点の熱可塑性樹脂繊維
11b・・その他の繊維
12・・・非通気性の樹脂フィルム
13・・・熱可塑性樹脂ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも低融点の熱可塑性樹脂繊維を含む2種以上の繊維を絡めて形成した通気度が0.3cm3 /cm2 /s以上ある繊維質基材と、非通気性の樹脂フィルムとを熱可塑性樹脂ウェブを介して積層し成形してなることを特徴とする自動車用成形天井。
【請求項2】 少なくとも低融点の熱可塑性樹脂繊維を含む2種以上の繊維を絡めて形成した通気度が0.3cm3 /cm2 /s以上ある繊維質基材と熱可塑性樹脂ウェブを重ね、十分に高温の熱風によって加熱し、繊維質基材に含まれる低融点熱可塑性樹脂繊維と熱可塑性樹脂ウェブを軟化させた上で、繊維質基材の熱可塑性樹脂ウェブを重ねた側に、非通気性の樹脂フィルムを重ね、繊維質基材方向に押圧して積層一体化するとともに、繊維質基材を所要の形状に成形することを特徴とする自動車用成形天井の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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