説明

自動車用独立空調モジュール及び自動車

【課題】長い熱媒体管による損失または長い空気ダクトによる圧力損失を回避し、車内での重量配分が均一である独立空調モジュールを提供する。
【解決手段】圧縮冷媒回路を経て冷熱が充填され、熱媒体回路を経て冷熱が排出されるように設計された潜在冷熱貯蔵器14と、熱媒体回路の熱媒体から冷却すべき空気に冷熱を伝達することができる熱媒体/空気−熱交換器20とを備え、独立空調モジュール10の形状が最大長さLと最大高さHを有し、独立空調モジュール10の重心Sが少なくともほぼ最大長さLの中央領域内にある、自動車、特に商用車のための独立空調モジュール10において、独立空調モジュール10の重心Sが取付け状態で最大高さHの下側半分内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮冷媒回路を経て冷熱が充填され、熱媒体回路を経て冷熱が排出されるように設計された潜在冷熱貯蔵器と、熱媒体回路の熱媒体から冷却すべき空気に冷熱を伝達することができる熱媒体/空気−熱交換器とを備えた独立空調モジュールであって、独立空調モジュールの形状が最大長さLと最大高さHを有し、独立空調モジュールの重心Sが少なくともほぼ最大長さLの中央領域内にある、自動車、特に商用車のための独立空調モジュール(パーキング空調モジュール、停車時空調モジュール)に関する。
【0002】
本発明は更に、圧縮冷媒回路を経て冷熱が充填され、熱媒体回路を経て冷熱が排出されるように設計された潜在冷熱貯蔵器と、熱媒体回路の熱媒体から冷却すべき空気に冷熱を伝達することができる熱媒体/空気−熱交換器とを備えた独立空調モジュールであって、独立空調モジュールの重心Sが自動車幅Bのほぼ中央にあり、独立空調モジュールが最大高さHを有する、独立空調モジュール、特に請求項のいずれか一項に記載の独立空調モジュールを備えた自動車、特に商用車に関する。
【背景技術】
【0003】
停車状態での車両の車内または運転室の空調または冷房は、乗客の快適性要求の増大に基づいて益々重要になってきている。この場合、車両のエンジン力の利用は法律規定に基づいて許可されないか、または環境の観点から不適切である。更に、特に夜間(仮眠室)において、冷房機能を保証するための車両の駆動エンジンの運転は、機器の寿命を短縮することになる。
【0004】
自動車室内の独立空調に関連して従来、いろいろな解決策が追求または実現された。
【0005】
本発明は、熱的な冷熱貯蔵器、特に潜在冷熱貯蔵器に基づいて作動する、停車時の運転に適した空調システムに関する。潜在冷熱貯蔵器は、敏感な冷熱を利用するだけの貯蔵器と比べて、冷熱がはっきり感じられるという利点のほかに、固相と液相間の相転移の際の「潜在冷熱」を利用し、それによってエネルギー密度が高く、貯蔵損失が少ないという利点がある。潜在冷熱貯蔵器は走行中、冷熱が充填され、停車時に冷熱を放出する。このような空調システムには、走行中に、車両内に設けられた冷房装置からまたは別個の冷房装置から、冷熱を供給または充填することができる。同様に、適当な電源接続部が設けられている場合には、駆動エンジンの停止中に電気エネルギーによって潜在冷熱貯蔵器に冷熱を充填することができる。
【0006】
従来提案された潜在冷熱貯蔵器は一般的に、立方体または直方体の形をし、できるだけ邪魔にならない自動車の場所、例えば運転座席の下等に収納されている。このようなシステムの場合、冷熱は熱媒体回路を経て潜在冷熱貯蔵器から放出され、熱交換器を介して冷却すべき空気に伝達される。
【0007】
このようなシステムの場合、潜在冷熱貯蔵器と熱交換器の間で、比較的に長い熱媒体管が必要であり、これは大きな損失を生じることになる。長い熱媒体管の代わりに、長い空気ダクトを使用すると、圧力損失を生じることになる。更に、例えば運転席の下に潜在冷熱貯蔵器を配置すると、車内で不均一な重量配分が生じ、事情によっては走行状態に不利に作用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底をなす課題は、前述の問題が回避される自動車用独立空調モジュールと独立空調モジュールを備えた自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は独立請求項の特徴によって解決される。
【0010】
本発明の有利な実施形および発展形態は従属請求項から明らかである。
【0011】
本発明は、第1の基本思想に従い、冒頭に述べた技術水準において、独立空調モジュールの重心Sが取付け状態で最大高さHの下側半分内にあることを特徴とする。これは特に、貯蔵媒体が完全に凍結し、それによって完全に膨張している場合についても当てはまる。重心を低い位置に配置することは特に、例えば電動機またはポンプあるいはヒートシンク等のようなきわめて重い部品を、独立空調モジュールの下側範囲に配置することによって達成される。この解決策は、例えば夏に貯蔵器が空になったときに、重心を更に下方に移動させるために寄与するという利点がある。更に下方に移動した独立空調モジュールの重心は、車両の走行特性に有利に作用する。というのは、重心が低い位置にあると、一般的にロードホールディングが改善されるからである。全体配置構造は好ましくは、貯蔵媒体が完全に凍結した際に重心が独立空調モジュールの下側の3分の1内にあるいは更に好ましくは下側の4分1内に位置するように選定される。少なくとも潜在冷熱貯蔵器と熱媒体/空気−熱交換器が統合されて1つのモジュールを形成することにより、冷熱をそれが必要とされるところで発生することができる。すなわち、短い熱媒体管に基づいて、損失の発生が少ない。熱媒体が液体である場合特に塩水が熱媒体として役立つ。空気ダクトも短くすることができ、従って圧力損失も小さい。部品を1個の独立空調モジュールに統合することにより、必要な設置空間が全体としてきわめて小さくなる。独立空調モジュールの重心が最大長さのほぼ中央の範囲内にあることにより、車内の重量配分が均一になるように、車両の走行方向に対して横方向に独立空調モジュールを有利に配置することができる。例えば、後で詳しく説明するように、独立空調モジュールを運転室の背壁に有利に配置することができる。これに関連して、独立空調モジュールが偏平であると、すなわち長さと奥行きの比が非常に大きいと、効果的である。
【0012】
本発明による独立空調モジュールの所定の実施形の場合、熱媒体/空気−熱交換器が潜在冷熱貯蔵器の最大長さLのほぼ中央に配置されている。特に独立空調モジュールが一様な細長い形をしていると、熱媒体/空気−熱交換器のこのような配置は、重量を対称に配分することになる。更に、この配置は多くの場合、空気ダクトの対称的な配置を可能にする。
【0013】
その代わりに、熱媒体/空気−熱交換器を、第1潜在冷熱貯蔵器部分と第2潜在冷熱貯蔵器部分の間に配置することができる。その際、両潜在冷熱貯蔵器部分は、適当な形の管によって接続された2個の別個の潜在冷熱貯蔵器によって形成可能である。構成要素のこのような配置も、対称的な重量配分と短い管長をもたらす。
【0014】
独立空調モジュールの他の構成要素の質量が同様に均等に配分されている場合、前述に関連して、第1潜在冷熱貯蔵器部分と第2潜在冷熱貯蔵器部分が少なくともほぼ同じ質量を有すると有利である。独立空調モジュールの残りの構成要素の質量が均等に配分されていない場合、第1潜在冷熱貯蔵器部分と第2潜在冷熱貯蔵器部分が異なる質量を有することにより、対称性が再び得られる。しかしながら、当業者にとって明らかなように、異なる潜在冷熱貯蔵器部分の製作はコストが高くつく。
【0015】
更に、本発明による独立空調モジュールが冷却された空気を案内するための空気案内手段を備えていると有利である。例えば熱媒体/空気−熱交換器を潜在冷熱貯蔵器の上方におよび空気案内手段の下方に配置することができるので、独立空調モジュールがきわめてコンパクトな構造になる。
【0016】
本発明による独立空調モジュールは、膨張弁装置を備えていることによって有利に発展形成される。この解決策は、膨張プロセスひいては冷熱発生を、潜在冷熱貯蔵器のすぐ近くで行うために有利である。
【0017】
更に、本発明による独立空調モジュールは熱媒体ポンプを備えることができる。必要な熱媒体ポンプを本発明による独立空調モジュールと一体化することにより、独立空調モジュールが一層コンパクトになり、熱媒体管が非常に短くなり、それによって損失が小さくなる。
【0018】
本発明による独立空調モジュールの場合更に、熱媒体リザーブタンクを備えている。この解決策も、本発明による独立空調モジュールのコンパクト化および完備化に寄与する。一般的に、必要な構成要素のできるだけ多くを独立空調モジュールと一体化することが有利であると見なされる。というのは、それによって独立空調モジュールを前もって組み立てることができるので、車両への組込みを簡単かつ迅速に行うことができるからである。
【0019】
本発明の特に有利な実施の形態では、潜在冷熱貯蔵器の少なくとも一部が冷熱貯蔵媒体を充填したマトリックスを備えていることを特徴とする。その際、マトリックスが例えば(900mmまたは108mmまたは1600mm)×500mm×80mmの外形寸法を有する板または集合体を形成すると有利である。適当な数の板を使用する場合、必要な絶縁体を含めて、貯蔵器の全体寸法は、(1300mmまたは1480mm×1640mm)×540mm×128mmとなる。
【0020】
マトリックスはグラファイトマトリックスまたは発泡金属マトリックスである。グラファイトは、きわめて多量の水をその内側表面に付着させることができる安定した材料である。最大付着量は約5.7kg水/kgグラファイトである。この場合、基本材料であるグラファイトは貯蔵器内の熱伝導を大幅に改善し、それによって冷熱チャージ時の効果的な動特性と、貯蔵器からの冷熱放出時の冷房能力制御を保証する。他方では、グラファイトは水の容積膨張を吸収する。貯蔵容器の変形は中空室が存在するために発生しない。同様に、発泡金属を使用することができる。発泡金属はグラファイトマトリックスの充填と比較して、簡単に水を充填可能である。
【0021】
前述のように、冷熱貯蔵媒体の少なくとも一部が水によって形成されていると有利である。その際特に、冷熱貯蔵媒体は純粋な水によって形成されている。例えばグラファイトの質量が水の質量と比べて小さいので、エネルギー密度は先ず第1に水の潜在冷熱によって決定される。
【0022】
本発明による独立空調モジュールのきわめて有利な実施形では、独立空調モジュールが自動車の運転室の背壁に配置されている。この取付け位置は一連の利点を有し、特にモジュール全体が偏平に形成されているときに可能である。例えば寝台が一般的に運転室の背壁領域に配置されているので、独立空調モジュールを介して低温空気を睡眠場所に簡単に供給することができる。本発明による独立空調モジュールの重心が最大長さの中央に位置し、最大長さが車両幅または車内の幅にほぼ一致していると、独立空調モジュールのこのような配置は最適な重量配分をもたらす。
【0023】
その際例えば、自動車の走行方向における独立空調モジュールの奥行きTが、20cmよりも小さく、好ましくは15cmよりも小さいと特に有利であることが判った。
【0024】
第2の基本思想に従って、本発明は、冒頭に述べた技術水準において、独立空調モジュールの重心Sが取付け状態で最大高さHの下側半分内にある自動車を提供する。それによって、本発明による独立空調モジュールに関連して説明した特性および利点が同じ態様でおよび類似の態様で生じる。繰り返しを避けるために、この特性および利点については、対応する説明が参照される。
【0025】
同じことが、本発明による自動車の次の有利な実施形にも当てはまる。これについても繰り返しを避けるために、本発明による独立空調モジュールに関連する説明が参照される。
【0026】
本発明による自動車のきわめて有利な実施形の場合、独立空調モジュールが自動車の走行方向に対して横方向に、自動車の運転室の背壁に配置されている。
【0027】
その際、自動車の走行方向における独立空調モジュールの奥行きTが15cmよりも小さく、特に10cmよりも小さいと、きわめて有利であることが判った。
【0028】
独立空調モジュールを、質量配分の点からできるだけ対称にそして構造の点からできるだけ偏平に形成することが有利であるが、重心をその都度の中央に正確に配置する必要はなく、これに関して少しだけのずれ、例えば10%のずれがあっても、本発明の効果が生じることは当業者に明らかである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、独立空調モジュールの重心Sが取付け状態で最大高さHの下側半分内にあるので、前述の従来の問題を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、添付の図を参照して有利な実施の形態に基づき本発明を例示的に説明する。
【0031】
図において、同じ要素または類似の要素には、全体を通して同じ参照符号、または類似の参照符号が付けてある。繰り返しを避けるために、同じ要素または類似の要素の一部は1回のみ説明する。
【0032】
図1は、本発明の基本思想を具体的に示す概略図である。全体を10で示した独立(パーキング)空調モジュールの、図1に示した全ての要素は、実際の実施の際には、例えば図6に基づいて後で詳しく説明する方法と同じような方法で、できるだけコンパクトに1つのモジュールを形成するようにまとめられている。独立空調モジュール10は、潜在冷熱貯蔵器14を備えている。この潜在冷熱貯蔵器14は、略示した圧縮冷媒回路を経て冷熱をチャージするように設計されている。圧縮冷媒回路16は、駆動エンジンを介して駆動されるコンプレッサを備えた自動車内に存在する圧縮冷媒回路である。しかし、原理的には、圧縮冷媒回路16は例えば電気的に駆動されるコンプレッサを備えた別個の回路であってもよい。ハイブリッドコンプレッサの使用も基本的には可能である。圧縮冷媒回路16は、潜在冷熱貯蔵器14のすぐ隣に配置された膨張弁28を備えているので、圧縮された冷媒の膨張によって生じる冷却作用を、潜在冷熱貯蔵器14に冷熱を充填するために効果的に使用可能である(潜在冷熱貯蔵器14内の管ガイドは特に図2〜4に基づいて次に詳しく説明する)。更に、熱媒体回路18が設けられている。この熱媒体回路18を介して潜在冷熱貯蔵器14から冷熱を排出することができる。熱媒体回路18は、熱媒体ポンプ30と熱媒体/空気−熱交換器20を備えている。ファン42を運転することにより、熱媒体/空気−熱交換器20を経て空気が吸い込まれる。この場合、空気は熱媒体/空気−熱交換器20を通過する際に冷却され、最後に冷却された空気26として供される。矢印によって示すように、冷却された空気26は、空気ダクトの形をした、図1に示していない空気案内手段によって、いろいろな空気出口に分配される。図1から推察されるように、独立空調モジュール10の構造は実質的に対称である。その際、車両の走行方向に対して横向きに取付けるための独立空調モジュール10の形状は、最大長さLを有する。対称の構造により、独立空調モジュール10の重心Sは、少なくともほぼ最大長さLの中央領域内にある。最大長さLが車両室内の幅にほぼ等しい場合には、独立空調モジュール10のこの構造は、最適な対称重量配分をもたらす。更に、重心Sは最大高さHに関して下側半分内に、図示の場合最大高さHに関して下側の4分の1内にある。
【0033】
図2a〜2cは、本発明による独立空調モジュール10の第1実施の形態を異なる方向から見た概略図である。その際、図2aは正面図、図2bは側面図、図2cは底面図である。図2に示した実施の形態の基本構造は図1の基本構造と一致しているので、図1の実施の形態が参照される。図2b、2cには、潜在冷熱貯蔵器14の実際の構造が詳しく示してある。潜在冷熱貯蔵器14は実質的に、4枚のグラファイト板44からなっている。冷媒用伝熱体46を形成する平らな導管と、熱媒体用伝熱体48を形成する導管がグラファイト板を通過している。その際、冷媒用伝熱体46を形成する導管と、熱媒体用伝熱体48を形成する導管は、図2cから明らかなように、交互にかつ互いに隣接して配置されている。導管はほぼU字形である。U字の脚部は図2bの実施の形態の場合、取付け状態でほぼ垂直に延びている。
【0034】
図3a〜3cは、本発明による独立空調モジュール10の第2実施の形態を異なる方向から見た概略図である。図3の実施の形態は、圧縮冷媒回路16と熱媒体回路18のための接続部が共に潜在冷熱貯蔵器14の同じ側から外へ案内されている点が図2の実施の形態と異なっている。それにもかかわらず、熱媒体/空気−熱交換器20は対称に配置されている。図3bの側面図、または図3cの底面図から明らかなように、冷媒用伝熱体46または熱媒体用伝熱体48を形成するU字形導管の脚部が取付け状態で水平に延びているときに、接続部を側方から外へ案内すると特に有利である。
【0035】
図4a〜4cは、本発明による独立空調モジュール10の第3実施の形態を異なる方向から見た概略図である。図4の独立空調モジュール10の構造は、特に図4bの側面図と図4cの底面図から明らかなように、図3の実施の形態にほぼ一致している。この場合、冷媒回路16と熱媒体回路18のための接続部は潜在冷熱貯蔵器14の異なる側から外へ延びている。これは、均一な質量配分に寄与し得る。
【0036】
図5は本発明による独立空調モジュール10の第4実施の形態を概略的に示している。図5に示した実施の形態の場合、潜在冷熱貯蔵器14は第1潜在冷熱貯蔵器部分14aと第2潜在冷熱貯蔵器部分14bによって形成されている。その際、第1潜在冷熱貯蔵器部分14aと第2潜在冷熱貯蔵器部分14bは圧縮冷媒回路16に対して平行に、そして熱媒体回路18に対して直列に接続配置されている。潜在冷熱貯蔵器14を2つの潜在冷熱貯蔵器部分14a,14bに対称に分割することにより、熱媒体/空気−熱交換器20を、第1潜在冷熱貯蔵器部分14aと第2潜在冷熱貯蔵器部分14bの間に配置することができるので、必要な奥行きのほかに、必要な高さも更に小さくすることができる。その際、熱媒体ポンプ30が熱媒体リザーブタンク32とは反対の独立空調モジュール10の側に配置されていることによって、対称性が良好となる。冷却すべき周囲空気22の露点が熱媒体/空気−熱交換器20の冷却リブの温度よりも高いので、運転中この冷却リブに水が凝縮する。この理由から、凝縮水受け皿50が設けられている。凝縮液はこの受け皿から好ましくは図示していない排出通路を経て外部に案内される。
【0037】
図6は図5の独立空調モジュール10の実際の実施の形態の斜視図である。独立空調モジュール10がきわめてコンパクトに形成されていると共に、すべての構成要素が支持フレーム54に固定されている。この支持フレームは適当な固定手段56を備え、この固定手段を介して独立空調モジュール10を運転室の背壁に固定することができる。支持フレーム54は特に第1潜在冷熱貯蔵器部分14aと第2潜在冷熱貯蔵器部分14bを保持する。第2潜在冷熱貯蔵器部分14bがカバーを外して示してあるので、冷媒用伝熱体46と熱媒体用伝熱体48の蛇行形構造が見える。第1潜在冷熱貯蔵器部分14aと第2潜在冷熱貯蔵器部分14bの間には、熱媒体/空気−熱交換器20が配置されている。図6に示していないカバーが組み立て完了状態で熱媒体/空気−熱交換器20の上方の範囲をシールするので、ファン42は冷却すべき空気を、熱媒体/空気−熱交換器20を経て吸い込むことができる。この熱媒体/空気−熱交換器20の下方に凝縮水受け皿50が配置されている。熱媒体/空気−熱交換器20から出る冷却された空気は、適当な出口を有する偏平な空気通路の形をした空気案内手段24を経て更に案内されるので、自動車の全幅にわたって分配可能である。独立空調モジュール10の右側には熱媒体ポンプ30が配置され一方、左側には熱媒体リザーブタンク32が設けられている。独立空調モジュール10の質量配分が対称であるので、独立空調モジュールの重心Sは最大長さLのほぼ中央範囲内にある。これは、運転室の背壁に対称に取り付けた場合、最適な重量配分をもたらす。この場合にも、重心Sは最大高さHの下側の4分の1のところにある。図6に示した独立空調モジュール10は視覚的な理由から好ましくは図示していないカバーを備えているかあるいは運転室の内張りがこの役目をする。
【0038】
図7aは本発明による自動車12の実施の形態の概略図である。その際、本発明による独立空調モジュール10の実施の形態は運転室38の背壁36上に、しかも寝台40の上方に配置されている。本発明による構想により、走行方向における独立空調モジュールの奥行きTは非常に狭く、例えば15cmよりも小さい。
【0039】
図7bは図7aの車両の運転室38の背壁36を示している。図7bから明らかなように、独立空調モジュール10の重心Sは、独立空調システム10の最大長さLの中央にかつ背壁36の幅の中央に(B/2)に位置している。それによって、最適な重量配分が達成される。最大高さHに関して、重心Sは下側の4分の1のところにある。独立空調モジュール10の被覆された前面には、空気出口24のほかに、操作パネル52が設けられている。この操作パネルによって、運転手は独立空調モジュール10の少なくとも若干の機能を制御することができる。
【0040】
上記説明、図面および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個別的にも任意に組み合わせでも本発明を実現するために重要である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の基本思想を具体的に示す概略図である。
【図2】図2a〜2cは本発明による独立空調モジュールの第1実施の形態を異なる方向から見た概略図である。
【図3】図3a〜3cは本発明による独立空調モジュールの第2実施の形態を異なる方向から見た概略図である。
【図4】図4a〜4cは本発明による独立空調モジュールの第3実施の形態を異なる方向から見た概略図である。
【図5】本発明による独立空調モジュールの第4実施の形態の概略図である。
【図6】図5の独立空調モジュールの実際の実施の形態の斜視図である。
【図7】図7aは本発明による自動車の実施の形態の概略図、図7bは図7aの自動車の運転室の背壁を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10…独立空調モジュール、12…自動車/商用車、14…潜在冷熱貯蔵器、14a…潜在冷熱貯蔵器部分、14b…潜在冷熱貯蔵器部分、16…圧縮冷媒回路、18…熱媒体回路、20…熱媒体/空気−熱交換器、22…空気、24…空気案内手段、26…空気、28…膨張弁装置、30…熱媒体ポンプ、32…熱媒体リザーブタンク、36…背壁、38…運転室、40…寝台、42…ファン、44…マトリックス/グラファイト板、46…冷媒用伝熱体、48…熱媒体用伝熱体、50…凝縮水受け皿、52…操作パネル、54…支持フレーム、56…操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮冷媒回路(16)を経て冷熱が充填され、熱媒体回路(18)を経て冷熱が排出されるように設計された潜在冷熱貯蔵器(14)と、熱媒体回路(18)の熱媒体から冷却すべき空気(22)に冷熱を伝達することができる熱媒体/空気−熱交換器(20)と、を備えた独立空調モジュール(10)であって、
独立空調モジュール(10)の形状が最大長さLと最大高さHを有し、独立空調モジュール(10)の重心Sが少なくともほぼ最大長さLの中央領域内にある、自動車(12)、特に商用車(12)のための独立空調モジュール(10)において、
独立空調モジュール(10)の重心Sが取付け状態で最大高さHの下側半分内にあることを特徴とする独立空調モジュール(10)。
【請求項2】
熱媒体/空気−熱交換器(20)が潜在冷熱貯蔵器(14)の最大長さLのほぼ中央に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項3】
熱媒体/空気−熱交換器(20)が、潜在冷熱貯蔵器(14)を構成する第1潜在冷熱貯蔵器部分(14a)と第2潜在冷熱貯蔵器部分(14b)の間に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項4】
第1潜在冷熱貯蔵器部分(14a)と第2潜在冷熱貯蔵器部分(14b)が少なくともほぼ同じ質量を有することを特徴とする請求項3に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項5】
熱媒体/空気−熱交換器(20)によって冷却された空気(26)を案内するための空気案内手段(24)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項6】
圧縮冷媒回路(16)は膨張弁装置(28)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項7】
熱媒体回路(18)は熱媒体ポンプ(30)を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項8】
熱媒体リザーブタンク(32)を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項9】
潜在冷熱貯蔵器(14)の少なくとも一部が冷熱貯蔵媒体を充填したマトリックス(44)を備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項10】
マトリックス(44)がグラファイトマトリックスまたは発泡金属マトリックスであることを特徴とする請求項9に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項11】
冷熱貯蔵媒体の少なくとも一部が水によって形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項12】
自動車(12)の運転室(38)の背壁(36)に配置するためのものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項13】
自動車の走行方向における独立空調モジュール(10)の奥行きTが、20cmよりも小さく、好ましくは15cmよりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の独立空調モジュール(10)。
【請求項14】
圧縮冷媒回路(16)を経て冷熱が充填され、熱媒体回路(18)を経て冷熱が排出されるように設計された潜在冷熱貯蔵器(14)と、熱媒体回路(18)の熱媒体から冷却すべき空気(22)に冷熱を伝達することができる熱媒体/空気−熱交換器(20)とを備えた独立空調モジュール(10)であって、
独立空調モジュール(10)の重心Sが自動車幅Bのほぼ中央にあり、独立空調モジュール(10)が最大高さHを有する、独立空調モジュール(10)、特に請求項1〜13のいずれか一項に記載の独立空調モジュール(10)を備えた自動車、特に商用車(12)において、
独立空調モジュール(10)の重心Sが取付け状態で最大高さHの下側半分内にあることを特徴とする自動車(12)。
【請求項15】
独立空調モジュール(10)が自動車(12)の走行方向に対して横方向に、自動車(12)の運転室(38)の背壁(36)に配置されていることを特徴とする請求項14に記載の自動車(12)。
【請求項16】
自動車(12)の走行方向における独立空調モジュール(10)の奥行きTが15cmよりも小さく、特に10cmよりも小さいことを特徴とする請求項14に記載の自動車(12)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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