説明

自動車用空調装置

【課題】前席用の空調のみならず後席用の空調を備えた自動車用空調装置と前席用の空調のみの自動車用空調装置とを共用化するため、空調ケースを同一の金型を用いて制作できるような構成にしたこと。
【解決手段】仕切板7により空調ケース2内を前席用の空調用と後席用の空調用に分け、前席用の空調制御のための前席用エアミックスドア12は、移動する前席用ヒータ流入風閉鎖部12aと、これに従動する後席用空調通路閉鎖部12bとより成り、該前席用エアミックスドア12の開度により温調制御が行われる。それから、前記後席用空調通路閉鎖部12bに開口部14が形成され、該エアミックスドア12の特定の開度で、前記開口部14から冷風が後席用空調通路9に流れるように構成する。そして、前席用の空調装置のみの場合には、後席用の空調をキャンセルするため前記エアミックスドア12の開口部14を無くすと共に、後席用吹出開口30を無くす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用空調装置に関し、前席用の空調装置と、前席及び後席用の空調装置を一つの共通の装置で対応出来るようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、前席側のインストルメントパネル下に配され、前席側にのみ空調空気を吹出すものや、同じく前席側のインストルメントパネル下に配され、前席側ばかりでなく後席にも空調空気を導くものがある。したがって前席用空調装置と前席と後席共に空調する空調装置とは、別々に設計し別々の装置を採用していた。即ち2つの装置を作り出していた。
【0003】
しかし、近年製造コストの低減の要請は大きく、空調装置の共通化を図ることが出来れば、一つの空調装置で良くなり、大幅にコストの引き下げに寄与出来るものであり、そのような考えから、特許文献1に示すような発明が提案されている。
【0004】
特許文献1にも前席用ばかりでなく、後席用の空調を行うもので、まず前席のみならず後席用の空調装置の基本的な構成は、特許文献2や、特許文献3に示されている。
【特許文献1】特開2001−10329号公報
【特許文献2】実用新案登録第2528404号公報
【特許文献3】特開2001−63346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前席のみならず後席用の空調を行う自動車用空調装置は、特許文献2,3にあっては、後席用空調装置は、前席用空調装置とは独立に、冷風がヒータコアを有するコアをバイパスする後席用冷風バイパス通路を形成すると共に、導入の冷風の一部をヒータコアを通過させて温風化し、この温風と冷風とを混合して調温し、後席吹出用開口より後席に導き、後席側に吹出させている。
【0006】
前記特許文献1は、前席と後席共に空調する空調装置であるが、下部ケース11cの採用時は後席用空調装置を持ち、そして下部ケース11dの採用時は冷風バイパス通路32は無く、前席用空調装置のみが提供でき、一個の部品11c,11dの取り換えで、空調装置の共通化が図れることが記述されている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1にあっては、取り換え部品は比較的大きいという欠点を持っていた。
【0008】
このため、この発明は、変更部分を少なくして、前席用の空調装置と、前席及び後席用の空調装置が同じ金型にて制作出来るようにすると共に、それに伴い生じる不都合の解消を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る自動車用空調装置は、エバポレータを通過した冷風が加熱されるヒータコアを有する前席用空調通路と、前記ヒータコアを迂回する前席用冷風バイパス通路と、前記ヒータコアに流れる冷風量とバイパスする量の割合を調量する前席用エアミックスドアと、前記ヒータコアからの温風と前記前席用冷風バイパス通路からの冷風とを混合した温調空気を吹出す前席用吹出用開口とを備え、また、前記エバポレータを通過した冷風が加熱されるヒータコアを有する後席用空調通路と、前記ヒータコアを迂回する後席用冷風バイパス通路と、前記ヒータコアに流れる冷風量とバイパスする量の割合を調量する後席用エアミックスドアと、前記ヒータコアからの温風と前記後席用冷風バイパス通路からの冷風とを混合した温調空気を吹出す後席用吹出し開口とを備え、前記前席用エアミックスドアは、前席用ヒータ流入風閉鎖部と、後席用空調通路閉鎖部とから成り、前記後席用空調通路閉鎖部に開口部が形成可能に構成されたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
これにより、前席用エアミックスドアの後席用空調通路閉鎖部に形成される開口部の有無で、前席用空調としたり、後席用空調も併せて採用できる空調装置を作り出すことが出来る。
【0011】
前記前席用エアミックスドアは、前記後席用空調通路閉鎖部に開口が形成され、前記後席用エアミックスドアの位置が最大冷房時においても、該後席用空調通路閉鎖部に形成した開口部から空調風が後席用空気通路に流れるようにしている(請求項2)。
【0012】
これにより、前席用空調のみならず後席空調も独立して同時に行うことが出来る。即ち、この前席用空調装置にあって、最大冷房時にあっては、前席用エアミックスドアが前記ヒータコアを全閉するように移動され、前席用バイパス通路に流れると共に、その一部が前席用エアミックスドアの開口部を介して後席用空調通路に流すことができ、後席用空調を独立して行うことが出来る。
【0013】
さらに、前席用エアミックスドアの移動により、ヒータコアにも冷風が流れるようになり、冷風と温風との混合による吹出風の温調が行われる。そして、選択される吹出モードに応じて下記のように制御される。前席ベントモード時では、ベントドアが動き、前席用ベント吹出用開口が開かれる。前席バイレベルモード時では、ベントドアとフットドアが動き、前席用ベント吹出用開口及び前席用足元開口が開かれる。前席ヒートモード時では、ベントドアが動き、前席用ベント吹出用開口が閉じ、前席用足元用開口が開かれる。
【0014】
デフロストモード時では、デフロスタドアが動き、デフロスタ吹出用開口が開かれ、他のベント吹出用開口、足元用開口は閉じられる。そして、後席エアミックスドアが動いて後席用温風通路が開くと共に開閉ドアが閉じられる。これにより、後席用空調通路も利用して冷風の全量が加熱され温風となってデフロスタ吹出用開口に送られる。
【0015】
前記した前席用空調に対し、後席用空調は、必要時に後席空調用開閉ドアが開位置に切換えられる。最大冷房時は、冷風が前席エアミックスドアに形成の開口部から導入され、冷風バイパス通路を流れ、後席用吹出開口から後席に冷風が送られる。
【0016】
エアミックス時は、後席用エアミックスドアが動いて、冷風の一部がヒータコアに流れて温風化され、その温風と前記冷風バイパス通路を流れてきた冷風とが混合されて調温され、後席に送られる。
【0017】
最大暖房時は、後席用エアミックスドアが動いて、冷風の全部がヒータコアに流れて温風化され、その温風が後席用吹出開口から後席に送られる。
【0018】
そして、後席用空調が作動時でも、前席空調が最大デフモード時に設定されると、前述したごとく、後席用エアミックスドアが動いて、冷風の全量がヒータコアに流れて温風化され、その温風は、後席用空調開閉ドアが閉じられると共に連動する切換ドアが動くことで、前席用空調の前席用空調通路内に流れる温風と混合し、デフロスタ吹出開口から全量が吹出される。
【0019】
前記前席用エアミックスドアは、駆動軸を支点として回動する前席用ヒータ流入風閉鎖部と、前記前席用ヒータ流入風閉鎖部に連結して折れ曲がる前記後席用空調通路閉鎖部を備えるようにし(請求項3)、回動時の前席用エアミックスドアの半径方向寸法を短くする利点を持っている。
【0020】
前記後席用空調を有しない仕様であっては、前記前席用エアミックスドアの後席用空調通路閉鎖部に形成の開口部を形成しないようにしたことを特徴としている(請求項4)。これにより、前席用のみならず後席用の空調を行っていた同一の自動車用空調装置を前席専用の空調装置として利用することが出来る。
【0021】
前記前席用エアミックスドアは駆動軸を支点として回動する前記前席用ヒータ流入風閉鎖部と、前記前席用ヒータ流入風閉鎖部に連結して折れ曲がる前記後席用空調通路閉鎖部を備えていることを特徴として(請求項5)、回動時の前席用エアミックスドアの半径方向寸法を短くする利点を持っている。また前記前席用エアミックスドアの前記後席用空調通路閉鎖部は、該前席用エアミックスドア位置が最大冷房時において、前記後席用空調通路を完全に塞ぐ位置に配置されることを特徴として(請求項6)、後席用空調通路を流れる空気を遮断し、後席用に用いる通路から温風が出ないようにしている。
【0022】
具体的には、前記前席用エアミックスドアの後席用空調通路閉鎖部の開口部の有無は、前席用エアミックスドアの金型又に対し、該金型に嵌め込んで使用する部分的な金型(入れ子)を用いて成形することができ(請求項7)、金型投資削減に寄与し、しかも部品の共用化や加工も容易となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、この発明によれば、前記前席用エアミックスドアの前記後席用空調通路閉鎖部に開口部を形成可能に構成したことから、開口部の形成の有無で、前席のみならず、後席にも空調を行うことが出来るようになる(請求項1)。後席用空調は前席用のエバポレータ及びヒータコアを利用するもので、このために、前席用エアミックスドアに開口部を形成して、後席用空調のために冷風の導入を図り、しかも後席用エアミックスドアを動かして温度を制御すると共に、最大デフロスト時に後席用空調通路をも使用することで風量アップが図られる(請求項2)。
【0024】
後席用空調を有しない仕様は、前記前席用エアミックスドアに開口部を形成しないことで対応でき、コストの上昇を防ぐことが出来る(請求項4)。その具体的な例は前席用エアミックスドアの金型に対し該金型の中に嵌め込んで使用する部分的な金型(入れ子)を用いて成形することで可能であり、その対応も容易で、前述したように製造コストの低減に寄与することが出来る(請求項7)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1において、自動車用空調装置1が示され、車両のインストルメントパネル下に設けられ、車両の左右方向の中央に位置するセンターコンソールの奥のエンジンルーム側に配置されるもので、図示しないブロワから送られてきた空気を、冷却又は加熱して所望の温度に温調し、且つ所望の吹出モードに応じて選定された吹出開口より車室内に吹出させている。
【0027】
この自動車用空調装置1は、内部に空調通路が形成された空調ケース2内に、導入口3を介して図示しない送風機より送られてきた空気が導入され、該空調通路にエバポレータ4が縦方向に配置されている。このエバポレータ4の空気流れ下流側にヒータコア5が下記するように配置されている。
【0028】
前記エバポレータ4は、コンデンサ、コンプレッサ等の機器と冷凍サイクルを構成するもので、冷媒の蒸発潜熱を通過する空気から吸熱して冷却し、冷風とするものである。
【0029】
また、前記ヒータコア5は、前記エバポレータ4からの冷風を加熱するものであって、その内部にエンジンからの高温の冷却水が流れ、その熱源にて空気を加熱するものである。
【0030】
このヒータコア5の前方で中程から前記エバポレータ4の近傍まで伸びると共に、後方にも伸びる仕切壁7が延設され、前席用空調通路8と後席用空調通路9とに分けられている。
【0031】
この前席用空調通路8内にあって、前記ヒータコア5は配されているが、その上部には該ヒータコア5をバイパスして流れる前席用冷風バイパス通路11が形成されている。この冷風バイパス通路11のヒータコア5側で、前記エバポレータ4との間に前席用エアミックスドア12が配置されている。
【0032】
前席用エアミックスドア12は、図2に示すように、駆動軸13に固着の平板状の前席用ヒータ流入風閉鎖部12aと、これに連結された従動する後席用空調通路閉鎖部12bとより成り、この後席用空調通路閉鎖部12bに貫通する複数の開口部14を形成している。
【0033】
したがって、駆動軸13が図示しない外部に設けられたアクチュエータ等からの回転力で回動され、前席用エアミックスドア12は所望する開度θに制御され、前記ヒータコア5と冷風バイパス通路11に流れる冷風量比を適宜選択されることから、所望する温度に調温する作用を有している。
【0034】
また、前席用エアミックスドア12は、その後席用空調通路閉鎖部12bが前記前席用ヒータ流入風閉鎖部12aに回動自在に連結され、折れ曲がって動くことから、半径方向の寸法を短くでき、ヒータコアとエバポレータ間の隙間(寸法)を少なくすることができる。なお、後席用空調通路閉鎖部12bは、該後席用空調通路閉鎖部12bに突設のガイドピン15により図示されていないガイド溝に添って動かされる。
【0035】
さらに、前席用エアミックスドア12は、図1に示す状態にあると、前記ヒータコア5の前面を完全に閉じ(全閉状態)、冷風が流れ込まないようになると共に、後席用空調通路閉鎖部12bが前記後席用空調通路9の前面を覆っている。この場合に、冷風はほとんど前席用バイパス通路11内を流れるが、一部の冷風は、前席用エアミックスドア12の開口部14により前記後席用空調通路9にも流れる。
【0036】
前記したヒータコア5の下流には、セラミックヒータ(PTCヒータ)17が並設され、前記ヒータコアの熱源不足時に用いられる。ヒータコア5を通過により冷風は温風化され、この温風は前記前席用冷風バイパス通路11からの冷風と混合され、所望する温度に調温される。
【0037】
前記空調用通路8の最も終端に、吹出モードにより開閉される前席用吹出用開口であるベント吹出用開口19、足元吹出用開口20及びデフロスタ吹出用開口21が形成されている。そして、その各吹出口用開口19,20,21に、ベントドア22、フットドア23及びデフロスタドア24が設けられている。
【0038】
前記後席用空調通路9は、前記仕切壁7により作られ、その後席用空調通路9内にヒータコア5の下部を配し、内部を流れる冷風を温風化するものと、この後席用空調通路9から分岐し、ヒータコア5の下部を迂回する後席用冷風バイパス通路26とを有し、前記分岐部位に後席用エアミックスドア27を有し、再結合部位に切換ドア28を配している。
【0039】
後席用エアミックスドア27は、後席用空調通路9と後席用冷風バイパス通路26に流れる冷風量比を適宜選択して、所望する温度に調温する作用を有している。また切換ドア28は、前記ヒータコア5からの温風を、前記後席用冷風バイパス通路26に流すのを制御する板状ドア28aと、後席用吹出開口30を開閉する開閉ドア28bとより成っている。この切換ドア28は前記後席用エアミックスドア27と下記するように連動制御されている。
【0040】
上述の構成において、図3に示すベントモード時には、前席空調は、ベントドア22が動いてベント吹出用開口19を開き、前記前席用エアミックスドア12は全閉状態で、冷風は、矢印のように前席用冷風バイパス通路11を流れ、ベント吹出用開口19から吹出される。そして、後席用空調は、後席用エアミックスドア27が切換わり、後席冷風バイパス通路26にのみ、前記前席用エアミックスドアの開口部14から冷風が取り込まれ、矢印のように流れ、後席用吹出開口30より吹出される。
【0041】
図4に示すバイレベルモード時には、前席空調は、ベントドア22は動いてベント吹出用開口19が開き、フットドア23が動いて足元吹出用開口20を開くと共に、前席用エアミックスドア12もその開度を大きくし、略半分程の開度となっている。したがって、冷風は矢印のようにヒータコア5に流れ温風化され、また、前席用冷風バイパス通路11にも流れて、温冷二層化して、比較的冷たい風は矢印のように前記ベント吹出用開口19から吹出され、比較的温かい風は前記足元吹出用開口20から吹出される。
【0042】
そして、後席用空調は、後席用エアミックスドア27が中間開度となり、冷風が矢印のように後席用空調通路9に流れて温風となり、また冷風が矢印のように後席用冷風バイパス通路26に流れて、後方で温風と混合して温調され、後席用吹出開口30より吹出される。
【0043】
図5に示すヒートモード時には、前席用空調は、フットドア23が動いて、足元吹出用開口20が開と共に、前席用エアミックスドア12は全開となっている。したがって、冷風は矢印のようにヒータコア5に流れて温風化され、該温風の全量が矢印のように足元吹出用開口20より吹出される。
【0044】
また、後席用空調は、後席用エアミックスドア27が動いて、後席用冷風バイパス通路26が閉じられ、冷風が矢印のように全量ヒータコア5に流れて温風化され、後席用吹出開口30から吹出される。
【0045】
図6に示すデフロストモード時には、前席用空調は、デフロスタドア24が動いて、デフロスタ吹出用開口21が開き、切換ドア28は切換わり、後席用吹出開口30は閉じられる。そして、前席用エアミックスドア12は全開状態で、冷風は全量ヒータコア5に流れ、温風化され、温風は矢印のように流される。それと共に、後席用ミックスドア27は後席用冷風バイパス通路26を閉じ、後席用空調通路9が全開となり、冷風は矢印のように流れて、ヒータコア5にて温風化され、温風は矢印のように流れる。そして、温風は前記前席用空調の温風と混合され、デフロスタ時には温風が最大の流量となる。
【0046】
前述したように、吹出モードにより、前席空調と後席空調との作用を詳細に説明したごとく、前席空調に連動して後席空調も行われ、車室内全体の空調のアンバランス化を防いでいる。しかし、後席空調も、図7から図10に示すように、前席とは独立して制御することも出来る。
【0047】
即ち、図7に示すように、後席空調を不要とするクローズ時は、切換ドア28が動き、後席吹出開口30を閉じる。また後席空調の必要時において、最大冷房時では、後席用エアミックスドア27が動いて、冷風を後席用冷風バイパス通路26内に全て流すことで行われる(図8参照)。さらに、エアミックス時では、後席用エアミックスドア27が中間位置とされ、冷風がヒータコア5にも、後席用冷風バイパス通路26にも共に流れ、作り出される温風と冷風との混合の割合から所望する温度に調温されることで行われる(図9参照)。それから最大暖房時では、後席用エアミックスドア27が動いて、冷風をヒータコア5に全て流すことで行われる(図10参照)。このようにして、後席空調が後席側からも自由に行われる。
【0048】
前述の後席空調の制御時に、後席用エアミックスドア27と切換ドア28との関係は、図11に示す作動特性線図のようになっている。
【0049】
以上説明した自動車用空調装置1は、前席空調のみならず後席用空調も出来るものであるが、前席用空調のみ仕様の場合にも、同じ金型を用いて製造することが出来る。即ち図12に示すような相違点を有する構成を作り出し、対応している。まず、前席用エアミックスドア12はそれに形成の開口部14を閉じたものを用いる。それから、後席用エアミックスドア27を取り外し、後席冷風バイパス通路26に冷風が入らないように、冷風バイパス通路側の仕切壁33を延長し、また、切換ドア28を取り外すと共に、後席用吹出開口30を閉じる構成にしている。
【0050】
その具体的方法は、前席用エアミックスドア12にあっては、図13に示すような、前述した前席用エアミックスドア12の金型32(一部のみを示す)に形成の穴34にaに示すような入れ子35を嵌めることで、開口部14を作り出すことが出来るが、bのような入れ子36に入れ換えることで開口部14の無い構成とすることが出来る。仕切壁7も同時に入れ子を用いて冷風バイパス通路側の仕切壁33を延長している。さらに、後席吹出開口30は、図14に示すような前述した空調ケース2の金型38(一部のみ示す)に形成の穴39にaに示すような入れ子40を嵌めることで、後席吹出開口を作り出すことが出来るが、bのような入れ子41を金型に嵌めることで開口の無い構成とすることが出来る。即ち、前席用空調のみの使用の要求にも金型を共用して空調ケース2を作り出すことが出来る。
【0051】
前記した例では、前席用エアミックスドア12を駆動軸13を支点として回動する例を示しているが、これに限らず平板状の部材で構成し、ヒータコア5の前面をスライド移動するようにしても本願発明は適用出来ることは勿論である。
【0052】
また、前席用エアミックスドア12は、図15に示すように、1枚の平板状としても良く、駆動軸13に近い側に前席用ヒータ流入風閉鎖部12aが、遠い側に後席用空調通路閉鎖部12bがそれぞれ設けられている。さらに、図15に示すように、左右独立温調用の空調装置に用いられる前席用エアミックスドア12においては、中央に分割壁が入るために、左右それぞれ分離した構成とすると共に、駆動軸13に近い側に前席用ヒータ流入風閉鎖部12aが、遠い側に後席用空調通路閉鎖部12bがそれぞれ設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施例を示し、前席用空調のみならず後席用空調を行う自動車用空調装置の断面図である。
【図2】同上に用いられる前席用エアミックスドアの斜視図である。
【図3】同上の自動車用空調装置のVENT時の作動状態を示す断面図である。
【図4】同上の自動車用空調装置のB/L時の作動状態を示す断面図である。
【図5】同上の自動車用空調装置のHEAT時の作動状態を示す断面図である。
【図6】同上の自動車用空調装置のDEF時の作動状態を示す断面図である。
【図7】同上の自動車用空調装置にあって、後席用空調の制御を表し、closed時の作動状態を示す断面図である。
【図8】同上の自動車用空調装置にあって、後席用空調の制御を表し、full cold時の作動状態を示す断面図である。
【図9】同上の自動車用空調装置にあって、後席用空調の制御を表し、mixed時の作動状態を示す断面図である。
【図10】同上の自動車用空調装置にあって、後席用空調の制御を表し、full hot時の作動状態を示す断面図である。
【図11】後席用空調状態時の切換ドアと後席用エアミックスドアとの関係を表した特性線図である。
【図12】この発明の実施例を示し、前席用空調仕様の自動車用空調装置の断面図である。
【図13】前席エアミックスドアの成形用の金型で、後席用空調通路閉鎖部付近が示され、金型に形成の穴とそれに嵌合して仕様される入れ子(部分的な金型)を示し、aは開口部を作り出す入れ子が穴に嵌合している概略図、bは開口部を無くすための入れ子が穴に嵌合している概略図である。
【図14】空調ケースの成形用の金型で、後席用吹出開口付近が示され、金型に形成の穴とそれに嵌合して仕様される入れ子(部分的な金型)を示す説明図である。 aは後席吹出開口を作り出す入れ子の概略図、bは後席吹出開口の無い構成とする入れ子の概略図である。
【図15】前席エアミックスドアの他の実施例の斜視図である。
【図16】左右独立用空調装置に用いられる前席エアミックスドアの実施例の斜視図で、aは前席用ヒータ流入風閉鎖部と後席用空調通路閉鎖部が折れ曲がっている例、bは逆に平板的な例である。
【符号の説明】
【0054】
1 自動車用空調装置
2 空調ケース
4 エバポレータ
5 ヒータコア
7 仕切壁
8 前席用空調通路
9 後席用空調通路
11 前席用冷風バイパス通路
12 前席用エアミックスドア
12a 前席用ヒータ流入風閉鎖部
12b 後席用空調通路閉鎖部
13 駆動軸
14 開口部
19 ベント吹出用開口
20 足元吹出用開口
21 デフロスタ吹出用開口
22 ベントドア
23 ベントドア
24 デフロスタドア
26 後席用冷風バイパス通路
27 後席用エアミックスドア
28 切換ドア
30 後席用吹出開口
38 金型
40 入れ子(部分的な金型)
41 入れ子(部分的な金型)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エバポレータを通過した冷風が加熱されるヒータコアを有する前席用空調通路と、前記ヒータコアを迂回する前席用冷風バイパス通路と、前記ヒータコアに流れる冷風量とバイパスする量の割合を調量する前席用エアミックスドアと、前記ヒータコアからの温風と前記前席用冷風バイパス通路からの冷風とを混合した温調空気を吹出す前席用吹出用開口とを備え、
また、前記エバポレータを通過した冷風が加熱されるヒータコアを有する後席用空調通路と、前記ヒータコアを迂回する後席用冷風バイパス通路と、前記ヒータコアに流れる冷風量とバイパスする量の割合を調量する後席用エアミックスドアと、前記ヒータコアからの温風と前記後席用冷風バイパス通路からの冷風とを混合した温調空気を吹出す後席用吹出し開口とを備え、
前記前席用エアミックスドアは、前席用ヒータ流入風閉鎖部と、後席用空調通路閉鎖部とから成り、前記後席用空調通路閉鎖部に開口部を形成可能に構成したことを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項2】
前記前席用エアミックスドアは、前記後席用空調通路閉鎖部に開口部が形成され、前記前席用エアミックスドアの位置が最大冷房時においても、該後席用空調通路閉鎖部に形成した開口部から空調風が後席用空調通路に流れるようにしたことを特徴とした請求項1記載の自動車用空調装置。
【請求項3】
前記前席用エアミックスドアは、駆動軸を支点として回動する前記前席用ヒータ流入風閉鎖部と、前記前席用ヒータ流入風閉鎖部に連結して折れ曲がる前記後席用空調通路閉鎖部を備えていることを特徴とする請求項2記載の自動車用空調装置。
【請求項4】
後席用空調を有しない仕様にあっては、前記前席用エアミックスドアの前記後席用空調通路閉鎖部に開口部を形成しないようにしたことを特徴とする請求項1記載の自動車用空調装置。
【請求項5】
前記前席用エアミックスドアは駆動軸を支点として回動する前記前席用ヒータ流入風閉鎖部と、前記前席用ヒータ流入風閉鎖部に連結して折れ曲がる前記後席用空調通路閉鎖部を備えていることを特徴とする請求項4記載の自動車用空調装置。
【請求項6】
前記前席用エアミックスドアの前記後席用空調通路閉鎖部は、該前席用エアミックスドア位置が最大冷房時において、前記後席用空調通路を完全に塞ぐ位置に配置されることを特徴とする請求項5記載の自動車用空調装置。
【請求項7】
前記前席用エアミックスドアの前記後席用空調通路閉鎖部の開口部の有無は、該前席用エアミックスドアの金型に対し、該金型の中に嵌め込んで使用する部分的な金型(入れ子)を用いて成形することを特徴とする請求項1記載の自動車用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−265595(P2008−265595A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112793(P2007−112793)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】