説明

自動車用電気接続箱

【課題】 電気接続箱に収容されたバスバーの端子部と電線端末のボルト締め端子との電気接続信頼性をたかめる。
【解決手段】 ケースに収容されるバスバーに、該ケースの一側縁に沿って並列状態で位置させる複数の端子部を設け、これら並列させた端子部にそれぞれ電線端末に接続されたボルト締め端子を重ね、前記端子部から突設したボルトにナットを締め付けて結合している自動車用電気接続箱において、前記ケースの上壁には、前記各端子部をそれぞれ露出させる複数の切欠部を間隔をあけて並設し、各切欠部は前記ボルト締め端子を嵌め込む形状とし、かつ、前記ケースの上壁から、前記各切欠部を囲む保護壁を設け、該保護壁の隣接する切欠部間に位置する側壁部はボルト先端より突出させ、かつ、該保護壁より各切欠部の周縁に向けてボルト締め端子を誘い込む複数のガイドリブを突設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電気接続箱に関し、詳しくは、電気接続箱の上面側の一側に並設した複数のバスバーの端子部に、電線端末に接続されたボルト締め端子をそれぞれ結合するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2004−80874号公報等に開示されているように、電気接続箱に電力を供給する電源線の端末に接続される端子は、大型端子となるため強い結合力が必要であり、よって、インパクトレンチでねじ締めを行うボルト締め端子が用いられる。このボルト締め端子は電気接続箱の内部回路を形成するバスバーの端子部に重ね合わせて、ボルトとナットとで締結される。
図5に示されるように、バスバーの端子部1を載置するハウジング2側にナットNを埋設しておき、前記バスバー端子部1aに電線側に接続したボルト締め端子3を重ね、ボルトBをとおして、インパクトレンチを用いてナットNと締結している。
【0003】
前記ナットをハウジング側に固定しておき、ボルトをインパクトレンチで締め付ける方法に変えて、ボルトをバスバーの端子部から突設しておき、ボルト締め端子のボルト穴に前記ボルトを通してバスバーの端子部に重ね合わせ、インパクトレンチでナットを保持してボルトと締結する場合もある。
【0004】
前記のように、バスバー側からボルトを突設しておく場合、バスバーの端子部を並設して、ボルトも並設された場合、インパクトレンチを不注意で落下させて複数のボルトに接触させると、ショートを発生させる恐れがある。
また、バスバーの端子部にボルト締め端子を重ねてインパクトレンチによってナットを締め付けている際に、ボルト締め端子がバスバーの端子部上の正規位置に重ねられていなと、ナットの締め付けがなされた場合に、バスバーの端子部との間に接触不良が生じる問題がある。例えば、図6に示すように、ボルトBの軸部B1に対してボルト締め端子3’の端子穴3a’がクリアランスをあけて嵌合されるため、若干の位置ずれが発生し、ボルト締め端子3’が周縁のハウジング上面2a’に上に乗り上げた状態となる場合があり、この場合には前記問題が発生する。
【特許文献1】特開2004−80874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、ボルトが並設して突出した場合においてインパクトレンチ等によりショートの発生を防止し、かつ、ボルト締め端子をバスバーの端子部上の正規位置に確実に位置決めして、接触不良を発生させないことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ケースに収容されるバスバーに、該ケースの一側縁に沿って並列状態で位置させる複数の端子部を設け、これら並列させた端子部にそれぞれ電線端末に接続されたボルト締め端子を重ね、前記端子部から突設したボルトにナットを締め付けて結合している自動車用電気接続箱において、
前記ケースの上壁には、前記各端子部をそれぞれ露出させる複数の切欠部を間隔をあけて並設し、各切欠部は前記ボルト締め端子を嵌め込む形状とし、かつ、
前記ケースの上壁から、前記各切欠部を囲む保護壁を設け、該保護壁の隣接する切欠部間に位置する側壁部はボルト先端より突出させ、かつ、該保護壁より各切欠部の周縁に向けてボルト締め端子を誘い込む複数のガイドリブを突設していることを特徴とする自動車用電気接続箱を提供している。
【0007】
前記構成とすると、並設したボルトの間に設ける保護壁の側壁部をボルトの上端より突出させているため、インパクトレンチ等が落下しても側壁部上で受け止められて、ボルト間にショートが発生するのを防止できる。
かつ、ボルト締め端子を、前記ガイドリブにより前記切欠部に誘い込んで正確に嵌合できるようにしているため、該ボルト締め端子のボルト穴にバスバーの端子部から突設したボルト軸部を自動的に貫通させることができると共に、バスバーの端子部上の正規位置にボルト締め端子を位置させることができ、よって、間に接触不良を発生させない。さらに、該ガイドリブによって、保護壁自体も補強されるため、インパクトレンチ等が落下しても損傷や破壊を発生させないようにすることができる。
【0008】
前記保護壁は、電線端末のボルト締め端子の挿入側は開口して前記各切欠部を囲むよう平面視コ字形状とし、その前記側壁部を前記ボルト先端より突出させていると共に、該保護壁の少なくとも2辺の内面から複数の前記ガイドリブを突設し、かつ、これらのガイドリブは保護壁の上部から下向きに突出するテーパ形状に形成し、突出させた下側端面を前記切欠部の周縁と一致させている。
【0009】
前記構成によれば、ガイドリブを保護壁の上端から下向きに突出するテーパ形状としているため、ボルト締め端子はガイドリブに沿って前記切欠部に嵌め込まれる。其の際、ガイドリブはコ字形状の保護壁のすくなくとも2辺から突出させた複数本としているため、ボルト締め端子を正確に切欠部に誘い込みことができる。なお、保護壁の3辺から突出させてもよいが、設置スペースがない場合が多いため、2辺からリブを突出させるだけでも、ボルト締め端子を正規位置へと誘いこむことができる。かつ、該ガイドリブはテーパ状として上部空間を広げているため、ボルト締め端子の挿入が容易であると共に、ナット締め工程で邪魔にならない。
【0010】
前記保護壁の側壁部は前記ケースの上壁先端より側方に突出させ、ケース周壁の下端側まで延在させて突設している支持部と連続させていることが好ましい。
前記構成によれば、保護壁を前記支持部と連続させて突設することにより、保護壁の強度をさらに向上させることができる。
また、ボルト締め端子がケース上面から側面に沿って配置されるL型端子である場合には、隣接するボルト締め端子同士を支持部により確実に絶縁することができ、かつ、ボルト締め端子を支持により外部干渉材から保護することもできる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、並設するボルトを隔絶する保護壁を設け、該保護壁の側壁部の高さをボルトより高くしているため、落下物は保護壁上面に受け止めてボルトに接触させず、よって、ボルト間のショート発生を防止できる。
また、保護壁から切欠部の周縁に向けてガイドリブを突出させているため、ボルト締め端子のボルト穴をバスバーの端子部から突設したボルト軸部に通してながら、バスバーの端子部上の正規位置に自動的に配置することができる。よって、ナットによる締結時にボルト締め端子とバスバーの端子との間に接触不良を発生させず、電気接続信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本実施形態の電気接続箱10を示す。該該電気接続箱10はバスバーを収容したアッパーケース11aとロアケース11bとからなるケース本体11に、コネクタ18を収容したロアカバー15を取り付けると共に、アッパーカバー16も取り付けている。前記ロアカバー15の内部にはコネクタ18を収容係止しておき、この状態でケース本体11よりボルト17を用いてケース本体11の下面にコネクタ18を固定し、ケース本体11内のバスバーから突設したタブをコネクタ18に挿入した構成としている。
【0013】
前記ケース本体11では、図2に示すように、リレー収容部やヒューズ収容部を設けたアッパーケースの上壁11cの内面側に沿って配置したバスバー12、13、14を、ケース本体11の一側方へと延在させ、電源入力用の端子部12a、13a、14aをケース本体11の側端に沿って並列配置している。図3に示すように、これら端子部12a〜14aにはそれぞれボルトBの基部Bbを固定し、ボルト軸部Baを上向きに突出させている。
【0014】
前記端子部12a、13a、14aの配置部分の上壁11aには、これら端子部12a〜14aの上面に重ねるボルト締め端子6(6A、6B、6C)の外形に沿った切欠部20(20A、20B、20C)を設け、これら切欠部20を通して端子部12a〜14aを表面に露出させている。これら端子部12a〜14aの上面に、図4(C)に示すように、それぞれボルト締め端子6A〜6Cを、そのボルト穴6aにボルトBを通して、切欠部20A〜20Cにはめ込んで重ね合わせ、この状態でナットNを締結して、バスバーの端子部12a〜14aにそれぞれボルト締め端子6A〜6Cを電気接続する構成としている。なお、前記ボルト締め端子6(6A〜6C)は図1に示すように、L型端子として、電源線wの端末と圧着接続している。
【0015】
アッパーケースの上壁11cから、各切欠部20A〜20Cをそれぞれコ字状に囲む保護壁25(25A〜25C)を突設している。該保護壁25の側壁部25−1を隣接する切欠部20A〜20Cの間に位置させ、かつ、側壁部25ー1は前記ボルトBの上端より上方に突出させている。
【0016】
前記各切欠部20A〜20Cをそれぞれ囲む各保護壁25(25A〜25C)には、その中央連結壁部25−2と一方側の側壁部25−1の2辺の内面には、上端より下向きに拡幅するテーパ形状のガイドリブ27を、各切欠部20(20A〜20C)に向けて複数本突設している。各ガイドリブ27の下側端面27aは切欠部20(20A〜20C)の周縁と一致させている。
【0017】
また、保護壁25の両側壁部25−1はアッパーケースの上壁11cの側端より外方に突出させ、該突出部分は、アッパーケースの周壁11dの下端側まで延在させて突設した支持部28と連続させている。
【0018】
次に、電源線Wの端末に圧着されたボルト締め端子6(6A〜6C)をケース本体11に収容したバスバーの端子部12a〜14aに締結固定する作業について説明する。
図4(A)に示すように、まず、ボルト締め端子6のボルト穴6aをボルト軸部Baに貫通させる。この際、貫通作業性を考慮してボルト穴6aの内径はボルト軸部Baの外径よりも若干大きくなるようにクリアランスを設けているので、ボルト締め端子6はボルト軸線に対して直交方向に遊びがある状態となっている。しかし、ガイドリブ27を下向きに拡幅するテーパ状とし、且つ、その下側端面27aの位置を切欠部20の周縁と一致させたいるため、ガイドリブ27がボルト締め端子6を切欠部20へ誘いこみ、そのボルト穴6aをボルト軸部Baと一致させて、ボルト穴6aにボルト軸部Baを通すと共に、図4(B)に示すように、切欠部20に正確にはめ込む。即ち、ボルト締め端子6の端縁がガイドリブ27に位置決め保持されるため、ボルト締め端子6の端縁が切欠部20の周縁を越えて上壁11c上に乗り上げることがない。
【0019】
この状態から、インパクトレンチ(図示せず)を用いてナットNをボルト軸部20aに締結することで、ボルト締め端子6がバスバーの端子部12a〜14aと確実に平面密着して固定される。したがって、バスバーの端子部12a〜14aとボルト締め端子6A〜6Cとの接触不良が防止され、電気接続信頼性が向上する。
【0020】
さらに、前記ナット締結作業時に、インパクトレンチを落下させても、インパクトレンチは保護壁25の側壁部25−1の上面で受け止めて、ボルト軸部Baと接触させないため、ボルト間のショート発生を防止できる。其の際、保護壁25にガイドリブ27を突設していると共に、支持部28とも連結して保護壁25を補強しているため、保護壁25に損傷を発生させない。 かつ、前記L型端子からなるボルト締め端子6は、前記支持部28により互いに離間されているため、この部分でのショート発生も防止できる。
【0021】
上述したように、本発明の電気接続箱では、バスバーの電源入力用の端子部を並設し、これら端子部に電源線端末に接続されたボルト締め端子を締結する際に、該ボルト締め端子をバスバーの端子部の正規位置に正確に重ね合わせることができる。かつ、並設したバスバーの端子部から突設したボルト同士をインパクトレンチ等の外部干渉材によりショートが発生することも確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る電気接続箱の斜視図である。
【図2】図1の電気接続箱の要部拡大上面図である。
【図3】図2の部分の電気接続箱の側面図である。
【図4】(A)(B)(C)はボルト締め端子の取り付け工程を示す要部断面図である。
【図5】従来例を示す断面図である。
【図6】問題点を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
6(6A〜6C) ボルト締め端子
6a ボルト穴
10 電気接続箱
11 ケース本体
11c アッパーケースの上壁
11d アッパーケースの周壁
12〜14 バスバー
12a〜14a 端子部
15 ロアカバー
16 アッパーカバー
20(20A〜20C)切欠部
25(25A〜25C)保護壁
25−1 側壁部
27 ガイドリブ
28 支持脚部
B ボルト
N ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに収容されるバスバーに、該ケースの一側縁に沿って並列状態で位置させる複数の端子部を設け、これら並列させた端子部にそれぞれ電線端末に接続されたボルト締め端子を重ね、前記端子部から突設したボルトにナットを締め付けて結合している自動車用電気接続箱において、
前記ケースの上壁には、前記各端子部をそれぞれ露出させる複数の切欠部を間隔をあけて並設し、各切欠部は前記ボルト締め端子を嵌め込む形状とし、かつ、
前記ケースの上壁から、前記各切欠部を囲む保護壁を設け、該保護壁の隣接する切欠部間に位置する側壁部はボルト先端より突出させ、かつ、該保護壁より各切欠部の周縁に向けてボルト締め端子を誘い込む複数のガイドリブを突設していることを特徴とする自動車用電気接続箱。
【請求項2】
前記保護壁は、電線端末のボルト締め端子の挿入側は開口して前記各切欠部を囲むよう平面視コ字形状とし、その前記側壁部を前記ボルト先端より突出させていると共に、該保護壁の少なくとも2辺の内面から複数の前記ガイドリブを突設し、かつ、これらのガイドリブは保護壁の上部から下向きに突出するテーパ形状に形成し、突出させた下側端面を前記切欠部の周縁と一致させている請求項1に記載の自動車用電気接続箱。
【請求項3】
前記保護壁の側壁部は前記ケースの上壁先端より側方に突出させ、ケース周壁の下端側まで延在させて突設している支持部と連続させている請求項1または請求項2に記載の自動車用電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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