説明

自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置

【課題】自動車運搬車両における被運搬自動車の車輪を簡単、かつ確実に荷台に固定するための車輪固定装置を提供する。
【解決手段】車輪固定装置10は、荷台12上の孔あき板14と、被運搬自動車の車輪20に掛けられる固縛ベルト22と、この固縛ベルト20の一端が連結された巻締め装置16と他端が連結された固定具18とを有し、固定具18は、固縛ベルト22が巻き掛けられるガイドローラ42と、ガイドローラ42を回転自在に支持するシャックル部44と、基端がシャックル部44に連結され、掛止孔15に挿通可能な軸部材46と、軸部材46の先端に一体的に取り付けられたロック部材48と、軸部材46の基端と先端との間に、該軸部材46に対して、軸線方向に摺動自在、且つ、軸廻りに回転自在に嵌合された押え部材50と、軸部材46と押え部材50との間に装架され、押え部材50を、軸部材46の先端方向に付勢するばね52と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車運搬車両において、被運搬車の車輪を荷台に固定するための車輪固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車運搬車両の荷台に被運搬車を固定する手段としては、従来、先端にフックが設けられたワイヤを、被運搬車の両側に配置し、該フックを車両のフレーム等に引掛けて、ワイヤを緊縛するようにしたものがある。
【0003】
このような装置は、被運搬車の搬送中に、被運搬車のサスペンションのばね力に抗して被運搬車を引張る状態となるので、サスペンションに与える影響を考慮すると必ずしも最善のものではなかった。
【0004】
これに対して、特許文献1に記載されるように、荷台上に形成された複数の貫通孔のいずれかにタイヤストッパを当接させ、車輪が移動できないように固定する装置が提案されている。また、必ずしも公知ではないが、タイヤストッパに当接させた車輪に対して両端にフックまたはターンシャックルを取り付け、その間に巻締め装置を配置して、車輪にベルトをかけた状態で巻締め装置によりベルトを緊縛して車輪を固定する装置が提案されている。なお、フックは荷台の掛止孔に引掛けられ、また、ターンシャックルは予め、定められた個所にボルト締めされる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−98767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載のタイヤストッパでは、車輪を固縛するものではないので、安定して固定できないという問題点がある。また、ベルトの両端にフックを設けたものは、フックが、これが引っ掛けられる孔内で移動しやすく、車輪を安定して固定できないという問題点があり、更にまた、ターンシャックルの場合は、荷台への取付位置が制限されてしまうという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な操作で車輪を確実、且つ安定して固縛することができる自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、以下の各実施例により上記課題を解決することができる。
【0009】
(1)自動車運搬車両の荷台に、設けられた孔あき板と、この孔あき板に、車両前後方向及び幅方向に複数列形成された多数の掛止孔と、前記孔あき板上に載置される被運搬車の車輪に上方から巻き掛け可能な固縛ベルトと、この固縛ベルトの一端に連結され、且つ、前記掛止孔に着脱自在の固定具と、この固定具に対して、前記車輪の反対側で、前記掛止孔に着脱自在に係止され、且つ、前記固縛ベルトの他端に連結され、ラチェット機構により巻戻りしないように前記固縛ベルトを巻き締め可能な巻締め装置と、を有してなり、前記掛止孔は、車両前後方向よりも車両幅方向に長く形成され、前記固定具は、前記固縛ベルトが巻き掛けられるガイドローラと、このガイドローラを回転自在に支持するシャックル部と、基端が、前記シャックル部に連結され、前記掛止孔に挿通可能な軸部材と、この軸部材の先端に一体的に取り付けられたロック部材と、前記軸部材の基端と先端との間に、軸部材の軸線方向に摺動自在、且つ、軸廻りに回転自在に嵌合された押え部材と、前記軸部材と押え部材との間に装架され、押え部材を、軸部材の先端方向に付勢するばねと、を有し、前記押え部材は、前記掛止孔よりも大きく、これを挿通不能に形成され、前記ロック部材は、前記掛止孔の車両前後方向の寸法よりも長く、且つ、車両幅方向の寸法よりも短い長さ、及び、掛止孔の車両前後方向の寸法よりも短い幅とされていることを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【0010】
(2)請求項1において、前記シャックル部は、丸棒を略U字形状とした第1シャックル及び第2シャックルと、板材をコ字形状に形成した第3シャックルとから構成され、前記第1シャックルは、U字形本体における2本の軸部先端が、前記軸部材側に溶着され、前記第2シャックルは、前記第1シャックルに、両者のU字形本体の底部においてチェーン状に、2次元的に揺動可能に組合せされ、この第2シャックルの、U字の先端の2本の軸部の間には、略U字形状の第3シャックルの基端を貫通するユニバーサルピンが溶着されて、第3シャックルと第2シャックルとは、ユニバーサルピンの中心軸線廻りに相互に回転自在に連結されていて、前記第3シャックルの解放端(U字の先端)には、前記ガイドローラが回転自在に支持されるローラ軸が取付けられていることを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【0011】
(3)自動車運搬車両の荷台に、設けられた孔あき板と、この孔あき板に、車両前後方向及び幅方向に複数列形成された多数の掛止孔と、前記孔あき板上に載置される被運搬車の車輪に上方から巻き掛け可能な固縛ベルトと、この固縛ベルトの一端に連結されると共に前記孔あき板に着脱可能とされ、且つ、前記固縛ベルトの一端を巻き取り、巻き戻し可能な巻き取りロール及びこの巻き取りロールの巻き戻し方向の回転を規制するラチェット機構を含む巻締め装置と、前記固縛ベルトの他端に連結され、且つ、前記掛止孔に着脱自在の固定具と、を有してなり、前記巻締め装置は、前記巻き取りロールを回転可能に支持すると共に、前記孔あき板上に載置可能なベース部材と、直線部とその先端のフック部からなる略J字形状の棒状部材であって、前記直線部が前記ベース部材に垂直に固定され、前記フック部が前記ベース部材から、前記直線部と反対方向に突出し、且つ、フック部先端が前記巻き取りロールの軸線方向と平行方向に向けられた固定係止部材と、この固定係止部材に対して前記巻き取りロールの軸線方向に離間した位置で前記ベース部材に支持された、前記固定係止部材と同様の直線部とその先端のフック部からなる略J字形状の棒状部材からなる回転係止部材と、前記直線部に係合され、前記回転係止部材を前記ベース部から突出する方向に移動可能及び前記直線部の軸線廻りに回転駆動する駆動レバーと、を有してなり、前記回転係止部材は、直線部が前記ベース部材に垂直に、且つ、その軸線廻りに少なくとも90°の範囲で揺動可能、直線部の軸線に沿って移動可能に設けられ、前記フック部の直線部と直交する方向の長さが、前記掛止孔の車両前後方向の長さよりも短く、且つ、前記掛止孔の車両幅方向の長さよりも長く、前記直線部の外径は、前記掛止孔の車両幅方向の長さよりも小さくされ、前記固定係止部材と前記回転係止部材との巻き取りロール軸方向の距離は、固定係止部材のフック部が、一つの掛止孔の、車両幅方向の端部に掛止めされるとき、該掛止孔の、車両幅方向に隣接又は複数ピッチ離れた他の掛止孔に上方から挿入可能とされたことを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【0012】
(4)前記巻き取りロールと平行に、且つ、前記ベースに対して巻き取りロールよりも高い位置において、前記ベースに一体的に設けられたタイヤストッパを有してなり、このタイヤストッパは、前記固定係止部材におけるフック部と反対側の軸端部を一体的に支持すると共に、前記回転係止部材における前記直線部の端部が挿入される支持孔を有し、これにより回転係止部を回転自在、且つ、一定範囲で軸方向移動自在に支持する構成とされたことを特徴とする(3)に記載の自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【0013】
(5)前記駆動レバーは、前記回転係止部材におけるフック部が、前記掛止孔の車両幅方向に向けられているとき、前記タイヤストッパの下側に位置されることを特徴とする(4)に記載の自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【0014】
(6)前記回転係止部材は、ばねにより前記ベース内に戻る方向に付勢され、且つ、前記駆動レバーは、前記回転係止部材を前記ばねの付勢力に抗して前記ベース部から突出する方向に移動可能及び前記直線部の軸線廻りに回転駆動可能とされたことを特徴とする(3)乃至(5)のいずれかに記載の自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【発明の効果】
【0015】
この発明においては、自動車運搬車両の荷台上に載置された被運搬車の車輪に巻き掛けた固縛ベルトの一端を、簡単な操作で、荷台上の孔あき板に着脱し、固縛ベルトによって車輪を確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置10は、自動車運搬車両(図示省略)の荷台12に、下側に空間をもって設けられた孔あき板14と、この孔あき板14に着脱自在の巻締め装置16及び、固定具18と一端が前記巻締め装置16に連結され、他端が前記固定具18に連結されて、且つ被運搬車(図示省略)の車輪20に上方から巻き掛けられる固縛ベルト22と、を備えて構成されている。
【0018】
前記孔あき板14には、車両前後方向及び幅方向に複数列の掛止孔15が形成されている。この掛止孔15は、各々が車両幅方向に長い長孔形状とされている。又、孔あき板14は、荷台12の一部としてもよい。又、掛止孔15は、各々が車両前後方向に長い長孔形状としてもよい。
【0019】
前記巻締め装置16は、図2、図3に示されるように、固縛ベルト22の一端を巻き取り、且つ巻き戻し可能な巻き取りロール24及び巻き取りロール24の巻き戻し方向の回転を規制するラチェット機構26と、巻き取りロール24を回転可能に支持すると共に、孔あき板14上に載置可能なベース部材28と、このベース部材28に取り付けられた固定係止部材30及び回転係止部材32と、ベース部材28に、巻き取りロール24よりも高い位置で、且つ車輪20側となる位置に、巻き取りロール24と平行に固定されたタイヤストッパ34とを備えて構成されている。図3の符号25は、固縛ベルト22の一端を差込むことができるように、巻き取りロール24に形成された長孔を示す。
【0020】
固定係止部材30は、フック部30Aと直線部30Bとからなる略J字形状の棒状部材であって、J字のフック部30Aが、ベース部材28から巻き取りロール24と反対方向(図3、4において下方)に突出してその先端が巻き取りロール24の軸方向と平行方向に向くように、直線部30Bがベース部材28と直交して固定されている。固定係止部材30の直線部30Bは、その上端部が円筒状のタイヤストッパ34内に下方から垂直に突出してここで固定されている。
【0021】
回転係止部材32は、固定係止部材30に対して巻き取りロール24の軸線方向に離間した位置でベース部材28に支持された、固定係止部材30と同様にフック部32Aと直線部32Bを含む略J字形状の棒状部材から構成されている。
【0022】
この回転係止部材32は、J字の直線部32Bにおいて、ベース部材28と直交する方向に一定範囲で摺動自在に支持され、J字の先端のフック部32Aが、図3においてベース部材28の下側に突出して配置されている。
【0023】
又、直線部32Bは、その上端が、タイヤストッパ34に下方から挿入され、一定範囲で上下動自在、且つ、軸線廻りに回転自在に支持されている。
【0024】
又、直線部32Bには、図4に示されるように、タイヤストッパ34の下側円周面に接触する凹面部33A及びこれと直交する方向の凹面部33Bを上端に有する軸ストッパ33が取り付けられ、この軸ストッパ33の凹面部がタイヤストッパ34の下側の円周面に当接することによって、直線部32Bの軸線廻りの回転止め及び上方への移動を規制するストッパとなっている。
【0025】
又、この軸ストッパ33とベース部材28との間には、圧縮コイルばね32Cが装架され、直線部32B、即ち回転係止部材32全体を図3において上方に付勢している。
【0026】
更に、軸ストッパ33及び直線部32Bを貫通して、駆動レバー32Dが設けられている。この駆動レバー32Dを手動操作することによって、直線部32Bを圧縮コイルばね32Cの付勢力に抗して押し下げ、且つ直線部32Bをその軸線廻りに90°回転駆動することができる。
【0027】
図2及び3における符号36は、ベース部材28の裏面に取り付けられ、巻締め装置16を孔あき板14に固定する際に、該孔あき板14の上面に接触する緩衝部材を示す。又、符号26Aは、ラチェット機構26におけるラチェットホイール、26Bはラチェット爪、26Cはラチェットホイール26A駆動のためのレンチ(図示省略)が係合されるボルトをそれぞれ示す。
【0028】
ここで、掛止孔15のサイズ、ピッチと、固定係止部材30、回転係止部材32におけるフック部30A、32Aの長さ、及び直線部30B、32Bの直径との関係について説明する。
【0029】
フック部30A、32Aの、直線部30B、32Bと直交する方向の長さは、掛止孔15の車両前後方向の長さよりも短く、且つ、掛止孔15の車両幅方向の長さよりも長くされ、直線部30B、32Bの外径は、掛止孔15の車両幅方向の長さよりも小さくされている。
【0030】
又、固定係止部材30と回転係止部材32との、巻き取りロール24の軸方向の距離は、固定係止部材30のフック部30Aが、1つの掛止孔15の、車両幅方向の端部に掛止めされるとき、該掛止孔15の、車両幅方向に隣接又は複数ピッチ離れた他の掛止孔に上方から挿入可能とされている。
【0031】
次に、図5及び図6を参照して固定具18について説明する。なお、図5、図6は固定具18を孔あき板14に固定した状態を示す。
【0032】
固定具18は、固縛ベルト22が巻き掛けられるガイドローラ42と、このガイドローラ42を回転自在に支持するシャックル部44と、基端がシャックル部44に連結され、掛止孔15に挿通可能な軸部材46と、この軸部材46の先端に一体的に取り付けられたロック部材48と、軸部材46の基端と先端との間に、該軸部材46に対して、その軸線方向に摺動自在、且つ、軸廻りに回転自在に嵌合された押え部材50と、軸部材46と押え部材50との間に装架され、押え部材50を、軸部材46の先端方向に付勢するばね52と、を備えて構成されている。
【0033】
押え部材50は、掛止孔15よりも大きく、これを挿通不可に形成され、ロック部材48は、掛止孔15の車両前後方向の寸法よりも長く、車両幅方向の寸法よりも短い長さ、及び、掛止孔15の車両前後方向の寸法よりも短い幅とされている。
【0034】
シャックル部44は、丸棒を略U字形状とした第1シャックル44A及び第2シャックル44Bと、板材をコ字形状に形成した第3シャックル44Cとから構成されている。
【0035】
軸部材46の図5、図6において上端には、横材45が一体的に溶着されていて、第1シャックル44Aは、U字形本体における2本の軸部先端が、横材45の上面に溶着され、第2シャックル44Bは、第1シャックル44Aに、両者のU字形本体の底部においてチェーン状に、2次元的に揺動可能に組合せされている。
【0036】
この第2シャックル44Bの、U字の先端の2本の軸部の間には、略U字形状の第3シャックル44Cの基端を貫通するユニバーサルピン44Dが溶着されて、第3シャックル44Cと第2シャックル44Bとは、図5、図6においてユニバーサルピン44Dの中心軸線廻りに相互に回転自在に連結されている。
【0037】
第3シャックル44Cの解放端(U字の先端)には、ローラ軸42Aが、シャックル機構あるいはU−ロックにおける横材あるいはシャックルピンとなるように取付けられていて、ここに、ガイドローラ42が回転自在に支持されている。
【0038】
次に、上記車輪固定装置10によって、車輪20を固定する過程について説明する。
【0039】
その概略は、巻締め装置16を孔あき板14に固定し、ここに、被運搬自動車(図示省略)の車輪20を、巻締め装置16のタイヤストッパ34に当てて係止させる。次に、巻締め装置16から固縛ベルト22を巻き出して、車輪20の上から巻きかけ、先端の固定具18を、孔あき板14に固定し、この状態で、巻締め装置16の巻き取りロール24によって固縛ベルト22を巻き取って、引っ張り力をあたえて、車輪20を固定する。
【0040】
詳細には、まず、固縛ベルト22の一方の端部に連結された巻締め装置16の、孔あき板14への固定作業は、先ず巻締め装置16における、回転係止部材32を、そのフック部32Aの先端を、図2、図3において実線で示される位置から、直線部32Bの周りに90°回転させ、固定係止部材30のフック部30Aと同一方向に向く2点鎖線の状態とする。
【0041】
この状態では、駆動レバー32Dはタイヤストッパ34と直交し、且つ先端が、タイヤストッパ34の下側から突出した状態となる。
【0042】
上記方向の揃ったフック部30A、32Aは、孔あき板14の掛止孔15の長手方向(車両幅方向)に移動させれば、掛止孔15に容易に挿入され、かつ、フック部30Aが、図3に示されるように、一つの掛止孔15の長手方向の一方の端部の裏側に掛け止めされ、フック部32Aは、該掛止孔15から二つ目の掛止孔15内に入り込むことになる。
【0043】
この状態では、ベース部材28の裏側に設けられた緩衝部材36が、ベース部材28の上面に接触した状態で安定している。
【0044】
次に、駆動レバー32Dを操作して、回転係止部材32を、圧縮コイルばね32Cのばね力に抗して押し下げて、かつ直線部32Bの中心軸線周りに90°回転させると、図2、図3で実線で示されるように、フック部32Aが孔あき板14の裏面に掛止めされてロック状態となる。
【0045】
駆動レバー32Dを開放すれば、回転係止部材32は圧縮コイルばね32Cによって図3において実線で示されるように上方に付勢されて、軸ストッパ33の凹面部33Bが、タイヤストッパ34の円周面に下方から接触し、図4に示されると同様な状態となる。
【0046】
この状態では、図4における凹球面33Aと直行する方向の凹球面33Bがタイヤストッパ34の下側の円周面に接触されていて、駆動レバー32Dはタイヤストッパ34の下側で、これと平行になる。また、フック部32Aは、その上面が孔あき板14の裏面と接触する状態となる。
【0047】
上記のように、巻締め装置16の、孔あき板14へのロック状態では、駆動レバー32Dはタイヤストッパ34の下側にこれと平行に収まっているので、固縛ベルト22と干渉したりすることがない。
【0048】
巻締め装置16を孔あき板14から取り外す場合は、図3の実線で示される状態となっている駆動レバー32Dを、圧縮コイルばね32Cに抗して駆動して、回転係止部材32を押し下げ、かつ90°回転させれば、回転係止部材32及び固定係止部材30は容易に孔あき板14から取り外すことができる。
【0049】
被運搬自動車(図示省略)を、孔あき板14上で、車輪20がタイヤストッパ34に当接する位置に停止させる。次に、車輪20の上から、巻締め位置16から巻き出した固縛ベルト22を車輪20に巻き掛ける。このとき、車輪20はホイルハウス(図示省略)内にあるので、固縛ベルト22をホイルハウスと車輪20との隙間から差し入れて巻き掛けることになる。
【0050】
次に、固縛ベルト22の他端に連結された固定具18により、該他端を孔あき板14に固定する過程について説明する。
【0051】
図5、図6に示される状態はロック状態であるので、予め、ロック部材48を、図7に示されるように、軸部材46の軸線周りに90°回転させて、ロック部材48が掛止孔15を挿通できるようにしておく。
【0052】
この時、ロック部材48と軸部材46は第1シャックル44Aと一体であるので、第2シャックル44Bと共に、図5、図6に示された状態から90°回転した状態となるが、この回転は、ユニバーサルピン44Dと第3シャックル44Cとの相対回転によって吸収される。
【0053】
ロック部材48を掛止孔15に挿通したとき、押え部材50は掛止孔15よりも大きくて挿通不可であるので、図5〜図7に示されるように、押え部材50は掛止孔15に対して蓋状となって孔あき板14の上面に接触する。
【0054】
この状態で、第1、第2シャックル44A、44Bをユニバーサルピン44Dを中心として90°回転させると、ロック部材48も軸部材46と一体的に90°回転して、図5、図6に示されるような状態となる。ロック部材48は図6に示されるように、掛止孔15の幅方向の寸法より大きいので、掛止孔15から抜け出ることができず、この状態で、軸部材46の押し下げを開放すれば、ばね52によってロック部材48が孔あき板14の下側面に圧接されることになる。すなわち、固定部18が孔あき板14にロックされたことになる。
【0055】
巻締め装置16および固定具18を孔あき板14に固定した後は、巻締め装置16のラチェット機構26によって、巻き取りロール24を駆動し、固縛ベルト22を巻き上げて、該固縛ベルト22によって、車輪20を固縛する。
【0056】
上記のように、この実施形態におけるシャックル部44は、ガイドローラ42を支持する第3シャックル44Cが、ユニバーサルピン44Dを中心軸として、第2シャックル44Bに対して回転自在となり、このユニバーサルピン44Dと一体の第2シャックル44Bは、第1シャックル44Aに対して、第1シャックル44AのU字の円形部を中心とする、第1シャックル44AのU字の面内及び第2シャックル44BのU字の面内の、相直交する2軸を中心とする揺動が可能であり、更に、第1シャックル44Aし、押え部材50に対して、軸部材46の中心軸線廻りに揺動自在とされている。
【0057】
従って、押え部材50に対して、ガイドローラ42は、4軸廻りに姿勢変化可能に支持されている。これによって、固縛ベルト22の引張り方向がどのような場合でも対応して、これをガイドすることができる。
【0058】
車輪20を開放する場合は、ラチェット機構26におけるラチェット爪をラチェットホイール26Aから開放すれば固縛ベルト22を車輪20から取り外すことができる状態となる。固定部18を孔あき板14から取り外す過程は上記と逆方向に操作することになる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の例に係る車輪固定装置を示す斜視図
【図2】同車輪固定装置における巻締め装置を示す側面図
【図3】同巻締め装置を孔あき板に固定した状態を示す一部断面とした正面図
【図4】同巻締め装置の回転係止部材上端近傍を示す断面図
【図5】車輪固定装置における固定具を示す一部断面とした正面図
【図6】同側面図
【図7】上記固定具を孔あき板に挿入する際の状態を示す一部断面とした側面図
【符号の説明】
【0060】
10…車輪固定装置
12…荷台
14…孔あき板
15…掛止孔
16…巻締め装置
18…固定具
20…車輪
22…固縛ベルト
24…巻き取りロール
26…ラチェット機構
26A…ラチェットホイール
26B…ラチェット爪
26C…ボルト
28…ベース部材
30…固定係止部材
32…回転係止部材
30A、32A…フック部
30B、32B…直線部
32C…圧縮コイルばね
32D…駆動レバー
33…軸ストッパ
33A…凹面部
34…タイヤストッパ
36…緩衝部材
42…ガイドローラ
44…シャックル部
44A…第1シャックル
44B…第2シャックル
44C…第3シャックル
44D…ユニバーサルピン
46…軸部材
48…ロック部材
50…押え部材
52…ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車運搬車両の荷台に設けられた孔あき板と、この孔あき板に、車両前後方向及び幅方向に複数列形成された多数の掛止孔と、前記孔あき板上に載置される被運搬車の車輪に上方から巻き掛け可能な固縛ベルトと、この固縛ベルトの一端に連結され、且つ、前記掛止孔に着脱自在の固定具と、この固定具に対して、前記車輪の反対側で、前記掛止孔に着脱自在に係止され、且つ、前記固縛ベルトの他端に連結され、ラチェット機構により巻戻りしないように前記固縛ベルトを巻き締め可能な巻締め装置と、を有してなり、
前記掛止孔は、車両前後方向よりも車両幅方向に長く形成され、
前記固定具は、前記固縛ベルトが巻き掛けられるガイドローラと、このガイドローラを回転自在に支持するシャックル部と、基端が、前記シャックル部に連結され、前記掛止孔に挿通可能な軸部材と、この軸部材の先端に一体的に取り付けられたロック部材と、前記軸部材の基端と先端との間に、軸部材の軸線方向に摺動自在、且つ、軸廻りに回転自在に嵌合された押え部材と、前記軸部材と押え部材との間に装架され、押え部材を、軸部材の先端方向に付勢するばねと、を有し、
前記押え部材は、前記掛止孔よりも大きく、これを挿通不能に形成され、
前記ロック部材は、前記掛止孔の車両前後方向の寸法よりも長く、且つ、車両幅方向の寸法よりも短い長さ、及び、掛止孔の車両前後方向の寸法よりも短い幅とされていることを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記シャックル部は、丸棒を略U字形状とした第1シャックル及び第2シャックルと、板材をコ字形状に形成した第3シャックルとから構成され、
前記第1シャックルは、U字形本体における2本の軸部先端が、前記軸部材側に溶着され、前記第2シャックルは、前記第1シャックルに、両者のU字形本体の底部においてチェーン状に、2次元的に揺動可能に組合せされ、この第2シャックルの、U字の先端の2本の軸部の間には、略U字形状の第3シャックルの基端を貫通するユニバーサルピンが溶着されて、第3シャックルと第2シャックルとは、ユニバーサルピンの中心軸線廻りに相互に回転自在に連結されていて、前記第3シャックルの解放端(U字の先端)には、前記ガイドローラが回転自在に支持されるローラ軸が取付けられていることを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【請求項3】
自動車運搬車両の荷台に設けられた孔あき板と、この孔あき板に、車両前後方向及び幅方向に複数列形成された多数の掛止孔と、前記孔あき板上に載置される被運搬車の車輪に上方から巻き掛け可能な固縛ベルトと、この固縛ベルトの一端に連結されると共に前記孔あき板に着脱可能とされ、且つ、前記固縛ベルトの一端を巻き取り、巻き戻し可能な巻き取りロール及びこの巻き取りロールの巻き戻し方向の回転を規制するラチェット機構を含む巻締め装置と、前記固縛ベルトの他端に連結され、且つ、前記掛止孔に着脱自在の固定具と、を有してなり、
前記巻締め装置は、前記巻き取りロールを回転可能に支持すると共に、前記孔あき板上に載置可能なベース部材と、直線部とその先端のフック部からなる略J字形状の棒状部材であって、前記直線部が前記ベース部材に垂直に固定され、前記フック部が前記ベース部材から、前記直線部と反対方向に突出し、且つ、フック部先端が前記巻き取りロールの軸線方向と平行方向に向けられた固定係止部材と、この固定係止部材に対して前記巻き取りロールの軸線方向に離間した位置で前記ベース部材に支持された、前記固定係止部材と同様の直線部とその先端のフック部からなる略J字形状の棒状部材からなる回転係止部材と、前記直線部に係合され、前記回転係止部材を前記ベース部から突出する方向に移動可能及び前記直線部の軸線廻りに回転駆動する駆動レバーと、を有してなり、
前記回転係止部材は、直線部が前記ベース部材に垂直に、且つ、その軸線廻りに少なくとも90°の範囲で揺動可能、直線部の軸線に沿って移動可能に設けられ、前記フック部の直線部と直交する方向の長さが、前記掛止孔の車両前後方向の長さよりも短く、且つ、前記掛止孔の車両幅方向の長さよりも長く、前記直線部の外径は、前記掛止孔の車両幅方向の長さよりも小さくされ、前記固定係止部材と前記回転係止部材との巻き取りロール軸方向の距離は、固定係止部材のフック部が、一つの掛止孔の、車両幅方向の端部に掛止めされるとき、該掛止孔の、車両幅方向に隣接又は複数ピッチ離れた他の掛止孔に上方から挿入可能とされたことを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記巻き取りロールと平行に、且つ、前記ベースに対して巻き取りロールよりも高い位置において、前記ベースに一体的に設けられたタイヤストッパを有してなり、
このタイヤストッパは、前記固定係止部材におけるフック部と反対側の軸端部を一体的に支持すると共に、前記回転係止部材における前記直線部の端部が挿入される支持孔を有し、これにより回転係止部を回転自在、且つ、一定範囲で軸方向移動自在に支持する構成とされたことを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記駆動レバーは、前記回転係止部材におけるフック部が、前記掛止孔の車両幅方向に向けられているとき、前記タイヤストッパの下側に位置されることを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかにおいて、
前記回転係止部材は、ばねにより前記ベース内に戻る方向に付勢され、且つ、前記駆動レバーは、前記回転係止部材を前記ばねの付勢力に抗して前記ベース部から突出する方向に移動可能及び前記直線部の軸線廻りに回転駆動可能とされたことを特徴とする自動車運搬車両における被運搬車の車輪固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−248742(P2009−248742A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98997(P2008−98997)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000236551)株式会社浜名ワークス (11)