自動追尾式飼犬先導車
【課題】 肉体的弱者である女性や高齢者が飼犬を散歩させるとき、直接手で犬鎖や犬紐を握って犬を先導しなくても良いようにする。
【解決手段】 先行者Hである飼主が携行する送信機30から送信される誘導信号を受信する左右一対の受信機25,26を備え、その各受信機が受信する誘導信号の強弱とその差によって送信機30の位置と方向を検知し、前輪27を左右に操舵し且つ後輪16a,16bの駆動速度を自動制御して、先行者Hと一定の距離を保って追尾する飼犬先導車Wによって、それに犬鎖9を介して繋着した飼犬Dを先導し、労力をかけずに安全に飼犬を散歩させることができる。
【解決手段】 先行者Hである飼主が携行する送信機30から送信される誘導信号を受信する左右一対の受信機25,26を備え、その各受信機が受信する誘導信号の強弱とその差によって送信機30の位置と方向を検知し、前輪27を左右に操舵し且つ後輪16a,16bの駆動速度を自動制御して、先行者Hと一定の距離を保って追尾する飼犬先導車Wによって、それに犬鎖9を介して繋着した飼犬Dを先導し、労力をかけずに安全に飼犬を散歩させることができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、犬の飼主(特に女性や高齢者等の弱者)が携行する送信機から送信される誘導信号に追従して走行移動して、飼犬の散歩を先導する自動追尾式飼犬先導車に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高齢化社会が進み、社会的のみならず、政治的あるいは経済的にも、この問題は無視できなくなりつつある。他方ペットブームもその進展が著しく、独身女性や高齢者等の体力的弱者が犬等のペットを飼うケースも着実に増えて来ている。
【0003】犬を飼う場合には、その犬を毎朝晩散歩させる必要があり、それが飼い主の健康保持にも役立つことになる。しかし、中・大型犬になると成長するに従って力が強くなり、女性や高齢者が散歩させる場合に直接犬鎖や犬紐を手に保持して、犬の歩行速度や移動方向コントロールするのは体力的に困難になってくる。
【0004】また、散歩中に犬が何かの異変に驚いて暴走したり、子供や飼い主自身が飼犬に噛みつかれて噛み死されたり深い傷を追ったりする事例も増加してきている。しかしながら、このよな労力や危険性を伴わずずに飼犬を安全に散歩させ得るような有効な散歩補助手段がないのが現状である。
【0005】一方、ゴルフ場などでは既に、ゴルファが携行する送信機からの電波信号をゴルフバッグ運搬車上に設置した受信機で受信し、その送信機の移動方向にゴルフバッグ運搬車を追尾させるようなもの提案され、試用されているようである。
【0006】しかしながら、ゴルフコースの場合は、一般道路のように平坦ではなく、芝生で覆われた地面も比較的軟弱であるためと、車輌自体がゴルフバッグ等の重量物を積載するために重いため、車輪に負荷がかかり、操舵(ステアリング)にも比較的強い動力が必要になるため、左右2つの後輪を2個の別々の駆動モータで回転させ、操舵も同じ駆動モータにそれぞれ制動を加えて、2つの車輪の回転速度差によって方向転換させる、後輪駆動・後輪操舵の方式が採用されている。したがって、このようなゴルフバッグ運搬車は、大型で高価であり操作も面倒であり、飼犬を散歩させるための先導車として転用できるようなものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、体力的に弱者である女性や高齢者等でも、比較的力の強い中・大型犬であっても、小さな発信機を携行するだけで、直接犬鎖や犬紐を手で保持することなく、安全に犬を散歩させることができるような飼犬先導車を提供することを目的とする。また、犬がある程度の範囲では自由に動くことができるようにし、場合によってその先導車を手動で走行させることも可能にしたり、異常状態の発生時には緊急停止するようにすることなども目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するため、先行者が携行する送信機から送信される誘導信号に追従して移動可能な自動追尾式飼犬先導車を提供するものであり、それを次のように構成したことを特徴とするものである。
【0009】すなわち、車輌走行用の後輪と操舵用の前輪とを備えた車体と、その車体の両側方の対称な位置に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記誘導信号を受信する一対の受信機と、上記後輪を駆動する走行用駆動モータと、上記前輪を操舵するステアリングモータを含むステアリング機構と、上記走行用駆動モータ及びステアリングモータに給電する電源用バッテリーと、上記一対の各受信機がそれぞれ受信する前記誘導信号の強弱及びその差により、先行する送信機の位置と移動方向を検出して、その検出位置に応じて走行用駆動モータの起動,停止あるいは加減速を自動制御し、その移動方向に応じて操舵用のステアリングモータを自動制御するモータ制御手段と、犬の首輪に一端が繋着された犬鎖又は犬紐の他端を前記車体に繋留するための回転自在なリングとを備えている。
【0010】そして、先行者が携行する送信機からの誘導信号を、上記1対の受信機により所定の受信領域内で受信して、上記送信機の位置と移動方向を検出しながらその誘導信号に追従して走行し、上記犬鎖又は犬紐を介して飼い犬の散歩を先導することことができる自動追尾式飼犬先導車である。
【0011】さらに、この自動追尾式飼犬先導車の車体に、収納および引き出し可能であり、少なくとも走行用駆動モータの起動および停止用スイッチを備えた手押しハンドルを設けるとよい。そうすれば、狭い道路や障害物のある路上などでは、その手押しハンドルを引き出して、手動操蛇で運行することも可能になる。
【0012】また、上記走行用駆動モータの駆動による車体の走行速度の標準値を、段階的にあるいは無段階に予め可変設定する手段を設けるとよい。それによって、飼い主が自分の歩行速度に合わせて、その車体の走行速度の標準値(通常の走行速度)を設定しておくことができる。
【0013】さらにまた、車体の表面の形状に合わせた形状をなし、車体に着脱可能な荷物運搬用籠を設けることもできる。それによって、買い物等の荷物をその籠内に収納して、自動追尾方式あるいは手押しハンドルによる手動操舵で運ぶことができ、飼犬の散歩以外にも利用可能になる。
【0014】また、犬鎖又は犬紐を介して繋留される犬の体格及び索引力の差異に応じて車体の重量を変化させ得るように、車体に着脱可能な各種重量の重りを設けることもできる。それによって、小型犬の場合は重量を軽くして、電源用バッテリの電力消費を節減でき、大型犬の場合には重量を重くして、犬の引っ張り力によって車輌が倒れたり引き動かされたりする恐れがないようにすることができる。
【0015】そして、犬鎖又は犬紐の他端を前記車体に繋留するための回転自在なリングを車体に保持する部材(実施例ではセンタポール)が予め設定した値を超える引っ張り力を受けたときに、それを感知して走行用駆動モータを停止させ、緊急停車させる手段を設けるのが望ましい。それによって、飼犬が異変等に驚いて急に暴れ出したり暴走しようとして犬鎖又は犬紐を強く引っ張ると、回転自在なリングを車体に保持する部材が設定値を超える力を受け、その緊急停止手段がその部材の弾性変形等によってそれを感知して車輌を非常停止させるので、安全性が高くなる。
【0016】さらに、次の(a)乃至(f)のいずれかの時にも、それを検知して作動する緊急停車させる手段を設けるようにすれば、この自動追尾式飼犬先導車は一層安全性の高いものとなる。
【0017】(a)送信機の電源が切られた時、(b)車体が受信機による送信機からの誘導信号の予め設定された受信可能領域を外れて走行を始めるか、あるいは送信機の位置に近接し過ぎるか、該送信機から離れ過ぎた時、(c)車体の先端に設けた緩衝用バンパが動物又は物体に衝突した時、(d)上り坂登坂中等に設定限度以上の負荷が走行用駆動駆動モータにかかった時、(e)下り坂降坂中等に設定限度以上の速度で走行用駆動モータが回転を始めた時、(f)送信機又は飼犬先導車に何らかの故障が発生した時、
【0018】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。図1は、この発明による自動追尾式飼犬先導車を使用して飼犬を散歩させている状態を示す概要図である。
【0019】先行者(飼い主など)Hがバンド等によって送信機30を身体に装着して歩行し、自動追尾式飼犬先導車(以下単に「飼犬先導車」という)Wが、略一定の距離だけ離れて追従走行する。この飼犬先導車Wの車体1の中央部に設けた円盤型ヘッド5の下側のセンタポール6に、回転自在に嵌挿された犬鎖繋留用リング8に、飼犬Dの首輪Rに一端を繋着した長さ1.5メートル前後の市販の犬鎖(犬紐でもよい)9の他端を繋着して、飼犬Dを車体1に繋留している。
【0020】犬鎖繋留用リング8は円椎型のフットカバー7の上に乗せられる形でセンタポール6に嵌挿されているため、非常に円滑に回転できるので、飼犬Dは車体1に繋留された状態でも、この先導車輌Wの周りをある程度自由に回遊できる。この飼犬先導車Wの車体1は、飼犬Dがその周囲で動き回っても犬鎖9がもつれたり、車輪へのまき込みや引掛りがが発生することがないように、その表面に突起などがない単純な曲面状の車体カバー2で覆われている。
【0021】この車体1の両側方のセンタポール6を中心として対称な位置に、先行者Hが携行する送信機30から送信される誘導信号を受信する一対の受信機25,26を備えている。また、この車体1の下部には、車両走行用の左右2個の後輪16a,16bと、操舵用の1個の前輪27とを備えている。
【0022】そして、この飼犬先導車Wは、先行者Hが携行する送信機30からの誘導信号を、1対の受信機25,56により所定の受信領域内で受信して、送信機30の位置と移動方向を検出しながらその誘導信号に追従して走行し、犬鎖9又は犬紐を介して飼い犬Dの散歩を先導する。これは、公園内や道路上で使用することができる。
【0023】このような飼犬先導車では、前述した自動追尾式ゴルフバッグ運搬車のように、重量物運搬型で制御が複雑な、左右2個の後輪駆動モータで操舵も兼用させる方式ではなく、車輌走行用の駆動は後輪で、操舵は前輪でそれぞれ別に行なうように単純化している。
【0024】そして、車体1上の左右両側に1台ずつ配置した受信機25,26が別々に受信する送信機30からの誘導信号の強弱とその差にによって、送信機の位置と移動方向を検知して、その位置と移動方向に応じて、後輪駆動用のモータと前輪操舵用のモータとを自動制御して、常に先行者から略一定の距離だけ遅れて、先行者の歩行に追従して走行するようにしている。すなわち、この飼犬先導車Wは先行者Hの歩行速度にほぼ合致する一定の速度範囲内で自動追尾して走行する。
【0025】次に、この飼犬先導車Wの構造例を詳細に説明する。図2はこの飼犬先導車Wの内部構成を透視した斜視図、図3はその側面図、図4はその平面図である。
【0026】これらの図に示すように、この飼犬先導車Wの車体1は、全体を突起のない曲面状の車体カバー2で覆われている。その車体カバー2の上面には保守点検用の前蓋3及び制御ボックス開閉用の後蓋4が、夫々蝶番3b及び4b(図3参照)によって車体1に一片を蝶着され、止めネジ3a及び4aによって車体1に固定されており、その止めネジ3a及び4a取り外すことによって開蓋される。前蓋3は、バッテリー21や前輪操舵用のステアリングモータ22を含むステアリング機構21等の保守点検や、図示を省略しているが車輌重量調節用の重りを車体カバー2の内側に脱着する時に利用され、後蓋4は、制御ボックス38(図3)及び走行用駆動モータ17等の保守点検時に利用される。
【0027】車体1の中央部には円盤型ヘッド5とそれを支持するセンタポール6が下端部を車体シャーシ1a(図3)に固定されて垂直に立設されている。その円盤型ヘッド5からは、車体1の両側方(車幅方向)に向けて、受信機支持バー25s及び26sが張り出し、その先端部に受信アンテナ内蔵の受信機25及び26がそれぞれセンタポール6を中心に左右対称な位置に配設されている。
【0028】円盤型ヘッド5と車体カバー2の上面との間のセンタポール6の露出部は、下部が円椎型フットカバー7で覆われ、その上に犬鎖(又は犬紐)9を繋留する犬鎖繋留用リング(以下単に「リング」という)8が回転自在に嵌挿されている。このセンタポール6は、犬鎖9によってリング8が強い力で一方向に引張られ、どちらかの方向に多少傾くと、そのすぐ下部に同ポールを囲むように設けられたリング型スイッチ24(図3)に接触してそれをONにする。それによって、後述する電源回路の給電路が遮断され、この飼犬先導車Wの走行用駆動モータ17が停止してが緊急停車する。
【0029】車体カバー2の先端には緩衝用バンパ10が装着され、動物又は物体との衝突時に直ちにマイクロスイッチが働らき、それによっても緊急停車するようになっている。その緩衝用バンパ10のすぐ上部には、夜間走行時に点灯されるヘッドライト11が設けられ、車体1の後面には追突防止用として左右2箇所に反射型尾灯12が装着されている。
【0030】また、車体1の後部には、手押しハンドル13がそのハンドルバー15を車体上に頭出しした状態で収納されており、この手押しハンドル13をハンドルバー15を掴んで仮想線で示すように上方に引き出すと、送信機30からの誘導信号によって作動する自動操舵制御回路がOFFになり、ハンドルバー15上に付設された起動用スイッチ14aを押せば走行用駆動モータ17を起動させて手動操舵による動力走行が可能になり、停止用スイッチ14bを押せば走行用駆動モータ17を停止させて停車できる。
【0031】なお、走行用駆動モータ17およびステアリングモータ22、ならびに制御ボックス38等は、周囲を壁で囲んで埃りや雨水などが入らないようにするのが望ましい。つぎに、図2乃至図4に破線で示されている車体内部の構成及びその機能について説明する。
【0032】車輌の走行駆動用モータ17は、バッテリ28の直流電源によって駆動するDCモータであり、後述するモータ制御回路によって自動制御されるか、前述したスイッチ14a,14bによって起動・停止される。このモータ17の軸回転はカウンタプーリ18を介して後輪駆動プーリ19にベルト伝動機構によって伝えられて、そのプーリ19と一体をなす車軸20及びタイヤ付き両後輪16a及び16bを同時に回転させて車輌を走行させる。このモータ17の回転駆動力の後輪16a,16bへの伝達には、ベルト伝動機構に代えて、チェーン伝動機構やギア伝動機構などを用いるようにしてもよい。
【0033】車輌の走行方向を転換させる操舵は、この実施形態ではキャスタタイプの前輪27を先行者が携行する発信機30からの誘導信号を車体1の両側部の対称な位置に配設された2個の受信機25及び26によって別々に捕捉し、常にその受信信号が強い受信機側の方向にタイヤ付き前輪27を旋回させるような操舵制御によって行なわれる。
【0034】その前輪27の操舵は、ステアリングモータ22によって行なわれる。この例では、ステアリングモータ22として、後述するモータ制御部からの正転逆転信号と駆動パルス信号によってステップ回転するステッピングモータを使用している。このステアリングモータ22の正・逆転回転を前輪27に伝達するために、その回転軸に取り付けたモータプーリ22aと前輪27の垂直回転軸27に取り付けたステアリングプーリ27aとの間にタイミングベルト23を張装してなるステアリング機構21を備えている。
【0035】図5はこのステアリング機構21を明示する斜視図、図6はその側面図、図7はその正面図である。これらの図に示されるように、ステアリングモータ22の回転軸22bは、中間支持板29bを貫通して上部支持板29aとの間でモータプーリ22aが円滑に回転するよう中間支持板31bに嵌着されたベアリング22cによって支持されている。
【0036】一方、前輪27はそのフォーク27cと一体に設けた垂直回転軸27bを上部支持板29aと中間支持板29bの両方を垂直に貫通させ、上部支持板29aと中間支持板29bの間でステアリングプーリ27aを嵌着しており、その垂直回転軸27bが円滑に回転するように、各支持板29a,29bの貫通箇所に嵌着されたベアリング27d,27eによって回転自在に支持している。
【0037】このステアリング機構21によれば、後述するモータ制御部からステアリングモータ22に対して正転・逆転指令と駆動パルス信号による回転の度合い(回転角度)指令が出されると、このステアリング22は回転軸22bを右又は左に駆動パルス数に応じた角度丈け回転させ、その回動はモータプーリ22aからタイミングベルト23およびステアリングプーリ27aを介して、キャスタータイプのタイヤ付き前輪27の垂直回転軸27b及びフォーク27cに伝達され、前輪27を操舵できるようになっている。
【0038】ここで、この飼犬先導車における操舵機能について、その原理を図8を参照して説明する。図8に示すように、飼犬先導車Wの中心線の両側の対称位置に配設された一対の受信機25と26とを結ぶ線Lを底辺として、先行者Hが携行する送信機30を頂点として、その送信機30と受信機25と結ぶ直線と、受信機26と結ぶ直線とによって形成される三角形が(B)に示すような2等辺三角形を維持している場合は、送信機30から送信される誘導信号の電波は各受信機25及び26に対し同じ強さで到達する。
【0039】この場合、各受信機25,26から出力される誘導信号電圧は等しく、それが後述するモータ制御部で増幅され、電位差計を通して比較処理された後の電圧はゼロになり、ステアリングモータ(ステッピングモータ)22への駆動信号は発生されない。従って、飼犬先導車Wの前輪27は真正面に向いたまま送信機30に向って真直に前進を続ける。
【0040】しかしながら、送信機30を携行する先行者Hが歩行進路を左方向に変更した場合は、上述した三角形の2等辺形状が崩れ、図8の(A)に示すように、送信機30と左側の受信機25との距離xが、送信機30と右側の受信機26との距離yより短かくなり、受信機25の受信電波の強さが受信機26の受信電波の強さを上廻る。
【0041】この場合、受信機25から出力される誘導信号電圧の方が受信機26から出力される誘導信号電圧より大きくなり、前述のように比較処理された後の電圧はその信号電圧の差に応じた正又は負の電圧となり、ステアリングモータ22に対して左方向すなわち受信機25側への回転方向指令と、その電圧差の大きさに応じて異なる数の駆動パルス信号から成るモータ回転駆動信号が出力される。この信号によってステアリングモータ22が回転駆動し、前述のステアリング機構21によって、前輪27を送信機30の方向に追尾するよう左方向に操舵する。
【0042】逆に、送信機30を携行する先行者Hが歩行進路を右方向に変更した場合は、図8の(C)に示すように、送信機30と右側の受信機26との距離yが、送信機30と左側の受信機25との距離xより短くなり、受信機26の受信電波の強さが受信機25の受信電波の強さを上廻る。
【0043】この場合は、受信機26から出力される誘導信号電圧の方が受信機25から出力される誘導信号電圧より大きくなり、前述のように比較処理された後の電圧はその信号電圧の差に応じた(A)の場合とは反対極性の電圧となり、ステアリングモータ22に対して右方向すなわち受信機26側への回転方向指令と、その電圧差の大きさに応じて異なる数の駆動パルス信号から成るモータ駆動信号が出力される。この信号によってステアリングモータ22が回転駆動し、前述のステアリング機構21によって、前輪27を送信機30の方向に追尾するよう右方向に操舵する。
【0044】このように前輪27が操舵されると、飼犬先導車Wは再び送信機30の方向に直進する態勢に戻り、その車体1上の一対の受信機25及び26が夫々受信する誘導信号の受信電波の強さが等しくなると、図8の(B)に示す状態に戻り、前輪27は送信機30に向かって真直ぐに追尾し続けるように、真正面に向いた中立位置になる。
【0045】図9は、先行者Hが携行する送信機30の簡単な回路構成を示すブロック回路図である。この送信機30の大きさは、大人が着用するズボンなどの後ポケット内に収められる程度のものである。
【0046】この送信機30は図9に示すように、水晶発振子31およびトランジスタ等を含む発振回路32、電源電池を含む制御回路33、増幅器34、および可変コンデンサ35aやアンテナコイル35b等を含むアンテナ回路35などから構成されており、所定の周波数を有する誘導信号の電磁波を一定の出力で送信する。これは、公知の単純な一定信号を送信する送信機を使用できるので、詳細な説明は省略する。
【0047】図10は、車体1の左右両側方の中心線に対して対称な位置に配設された一対の受信機25及び26の回路構成を示すブロック回路図である。この受信機25と26は同一仕様であるため、ここでは受信機25について、その概略構成を説明する。この受信機25は図10に示すように、送信機30からの誘導信号の電磁波を受信する受信アンテナ25a、チューニングコンデンサ25b、バッファ増幅器25c、水晶発振器25d及び増幅器25eから構成されている。
【0048】そして、先行する送信機30から送信される特定周波数の電磁波に共振(同調)する受信アンテナ25aとチューニングコンデンサ25bとによって誘導信号を受信し、その信号電圧を水晶発振器に余分な負荷をかけないようにバッファ増幅器25cを通して水晶発振器25dに供給し、その水晶発振器25dから増幅器25eを介して特定周波数の信号のみを、図12に示すモータ制御部40に、電気的ノイズを受けにくい通信用シールドケーブル25fを通して伝達される。もう一つの受信機26からも、同一周波数の信号が同様に通信用シールドケーブル26fを通してモータ制御部40にパラレルに伝達される。
【0049】図11は、この飼犬先導車Wの電力供給経路を示す電源回路図である。電源であるバッテリ28と、そのバッテリから電力供給盤80への給電路に介挿された、電源スイッチを兼ねた回路遮断器75などによって電源回路70を構成している。回路遮断器75は、バッテリ28の陽極及び陰極から電力供給盤80への給電路を形成する導線78,79の途中に介挿された一対のスイッチ72,73と、電源スイッチ釦71およびソレノイド74からなる。電源スイッチ釦71は、車体1の外部から操作できるように設けられる。
【0050】電源スイッチ釦71が押圧されると、一対のスイッチ72,73を連動してONにし、図示しないロック機構によりその状態に保持され、再び押されると、そのロックが解除されて一対のスイッチ72,73がOFFになり、電源スイッチ釦71が元の位置に復帰する。ソレノイド74は通電により励磁されると、上記ロック機構のロックを解除させて一対のスイッチ72,73を強制的にOFFにする。
【0051】この電源回路70のバッテリ28からソレノイド72への通電回路に、車体1の先端に装備した緩衝用バンパ10に物体が衝突した時にONになるマイクロスイッチ76と、車輌1中央のセンタポール6に挿入された犬鎖繋留用のリング8が犬の暴立や暴走などにより強い力で引っ張ぱられた時にONになるセンタポール6を取巻くリング型スイッチ24とが並列に挿入されている。
【0052】したがって、回路遮断器75の一対のスイッチ72,73がONになって電力供給盤80へ給電しているときに、マイクロスイッチ76かリング型スイッチ24のいずれかが作動してONになると、ソレイド72に通電して励磁するため、スイツチ72,73がOFFになり、電力供給盤80への電力供給が断たれる。それによって車輌が緊急停車する。
【0053】スイツチ72,73がOFFになると、ソレノイド74が励磁されなくなるが、その後は電源スイッチ釦71が再び押圧されるまで、スイッチ72,73がONになることはない。したがって、マイクロスイッチ76又はリング型スイッチ24が短時間ONになった後OFF状態に戻っても、スイッチ72,73はOFFのままになる。77はパイロットランプで、保護抵抗Rを介して導線78,79に接続されており、スイッチ72,73がONになって電力供給盤80に入電された時に点灯して、電気的エネルギーの入力を目視できるようにする。
【0054】この電源回路70から出力される電力は、導線78,79を通して電力供給盤80に供給され、そこで各種の異なる電圧の電源が用意され、複数の出力線81を通して受信機25,26と、走行用駆動モータ17及びステアリングモータ22を駆動制御するモータ制御部40に給電される。82はバッテリ電圧低下表示回路であり、バッテリ28の蓄電量が減少してその出力電圧が低下し、充電を必要とする状態になると、それを検出して表示ランプ83を点灯させて警告する。
【0055】なお、車体1の重量が軽く、しかも概して平坦な道路上を歩行速度程度の低速で走行するため、走行用駆動モータ17およびステアリングモータ22とも小型モータで良く、消費電力も少ないため、バッテリ28は12Vタイプのモータバイク用バッテリーで充分である。しかし、搭載モータの種類によって24V電源を必要とする場合には、12Vタイプのバッテリを2台直列に接続して使用することも可能である。この種のバッテリ用の充電器は低価格で市販されており、家庭で簡単に充電することができる。
【0056】図12は、図3に示した制御ボックス38内に設けられるモータ制御部の回路構成を示すブロック回路図である。受信機25及び26から通信用シールドケーブル25f,26fを介して送られてくる信号は、このモータ制御部40内でそれぞれ増幅器41a及び41bで増幅され、コンデンサ42a及び42bを経て直流分がカットされ、検波回路43a及び43bで検波される。それにより、入力信号の振幅の大きさに比例したDC電圧V1 及びV2 に変換される。このDC電圧V1 及びV2 は夫々検波回路43a及び43bの出力側に接続された抵抗器44a,44bと可動接点がアースされた可変抵抗器45とからなるレベル調整回路によって、図8の(B)の状態のときに、DC電圧V1 とV2 が同電位になるようにレベル調整される。
【0057】このDC電圧V1 ,V2 はそれぞれ常閉のスイッチ46a,46bを介して出力され、抵抗器47a,47bを介して差動増幅器48の非反転入力端子と反転入力端子にそれぞれ入力する。それによって差動増幅器48は、入力される電圧V1 とV2 の差に応じた大きさ(絶対値)で、いずれが大きいかによって異なる極性の電圧信号Vs(Vs=V1 −V2 )を出力する。この電圧信号Vsは、図8で説明した受信機25と26の送信機との距離の差に応じた大きさでその片寄り方向に応じた極性になる。
【0058】この電圧信号Vsをバッファ増幅器49を介してステッピングモータ駆動制御回路50に入力させ、ステッピングモータであるステアリングモータ22を駆動制御させる。
【0059】このステッピングモータ駆動制御回路50は、一般的にはIC化されて市販されているが、パルス信号発振器,励磁相制御部,電力増幅部等の外、始動・停止,発振周波数可変等の機能が組込まれている。そして、バッファ増幅器49を介して入力する電圧信号Vsの極性に応じてモータの回転方向(正転又は逆転)を決め、その大きさに応じて回転角度を設定して駆動パルス数を決定し、位相の異なる複数の駆動パルスをステアリングモータ22へ送って、それを回転駆動制御する。その駆動パルスの周波数によって回転速度を制御することもできる。
【0060】このようにして、図8によって前述した原理でステアリングモータ22によって前輪27を操舵し、先行者Hの歩行する方向に飼犬先導車Wの走行方向を変えることができる。なお、車輌の蛇行をなくすように、作動増幅器48からの電圧信号Vsの変化量及び変化方向に応じてステッピングモータ駆動制御回路50がステアリングモータ22を回転させるようにしてもよい。あるいは、上記電圧信号Vsがゼロになると、前輪27を車体1の長手方向に平行な直進位置に自動的に復帰させるように、弱いスプリング等によって復帰力を与えておくようにするとよい。
【0061】検出されたDC電圧V1 ,V2 はまた、抵抗器51a,51bを介して加算増幅器52の非反転入力端子に入力され、加算増幅器52はそれを加算した電圧信号Vd(Vd=V1 +V2 )を出力する。その電圧信号Vdをバッファ増幅器53を介してDCモータ駆動制御回路54へ入力させ、DCモータである走行用駆動モータ(以下「DCモータ」という)17を駆動制御させる。
【0062】このDCモータ駆動制御回路54も、DCモータ17に付属して販売される一般の制御器を利用することができる。このDCモータ17の回転軸にはタコゼネレータ55が取り付けられており、DCモータ17の回転数に応じた電圧を発生し、それをDCモータ駆動制御回路54にフィードバックする。
【0063】図1に示した送信機30を携行して歩行する先行者Hの平均的歩行速度で、飼犬先導車Wが追従走行するようにするには、その走行速度のときにタコゼネレータ55がが発生する電圧Vfに相当する電圧を、抵抗器56と可変抵抗器57による分圧回路によって発生させ、それを標準速度電圧V0 としてDCモータ駆動制御回路54に設定しておく。それによって、バッファ増幅器53から入力する電圧信号Vdが後述する基準電圧Vxと一致している場合には、タコゼネレータ55がが発生する電圧Vfが標準速度電圧V0 と一致する(Vf=V0 となる)ように、DCモータ17に流す電流値を調整してその回転を制御する。
【0064】一方、加算増幅器52から出力されてバッファ増幅器53を介して入力される電圧信号Vdは、図1R>1における送信機30と飼犬先導車Wに取り付けられた一対の受信機25と26の中間点とを結ぶ距離が長い程小さく、それが短かい程大きくなる。そこで、例えば送信機30と受信機25と26の中間点とを結ぶ距離が2メートル(任意の距離に設定する)の場合に、電圧信号Vdを、基準電圧VxとしてDCモータ駆動制御回路54内に設定しておく。
【0065】それよって、上記距離が2メートルより短かくなる(飼犬先導車Wが先行者Hに近づく)と、入力する電圧信号Vdが基準電圧Vxより大きくなるので、その差分だけ先に設定した標準速度電圧V0 から減算することにより、DCモータ22の目標回転速度を下げ、飼犬先導車Wの走行速度を減速することができる。
【0066】これとは逆に、上記距離が2メートルより長くなる(飼犬先導車Wが先行者Hから離れる)と、入力する電圧信号Vdが基準電圧Vxより小さくなるので、その差分だけ先に設定した標準速度電圧V0 に加算することにより、DCモータ22の目標回転速度を上げ、飼犬先導車Wの走行速度を加速することができる。
【0067】上記距離が2メートルになって、入力する電圧信号Vdが基準電圧Vxと等しくなれば、再び標準速度電圧V0 によってDCモータ17の回転速度を制御する状態に戻る。このようにして、飼犬先導車Wを先行者Hとの距離を略一定に保って、先行者Hの平均的な歩行速度に合わせて追従走行させることができる。
【0068】加算増幅器52から出力される電圧信号Vdはまた、近接制止回路58及び遠離制止回路59にも入力される。近接制止回路58は、入力される電圧信号Vdが予め設定した先行者と車輌との接近限に相当するレベルを超えたとき、停止信号S1 を出力する。遠離制止回路57は、入力される電圧信号Vdが予め設定した先行者と車輌との遠離限(離れる限界)に相当するレベルを下回ったとき、停止信号S2 を出力する。
【0069】また、タコゼネレータ55がが発生する電圧Vfは加減速停止回路60にも入力される。それによって、加減速停止回路60は、タコゼネレータ55が発生するDCモータ17の回転数に応じた電圧Vfが、下り坂等で異常に高くなったり、或は上り坂等でモータMDに負荷がかかり過ぎて以上に低くなった場合に停止信号S3 を出力する。
【0070】これらの各停止信号S1,S2,S3 は、ORゲート61及び逆流防止用のダイオード62を介してDCモータ駆動制御回路54に入力し、DCモータ17の回転を停止させると共に、DCモータ17に組込まれたブレーキを作動させる。それによって、飼犬先導車Wを急停車させる。コンデンサ63は、極めて短時間の停止信号はノイズ成分として吸収するために設けられている。
【0071】このように構成することにより、この飼犬先導車が予め設定された送信機からの電波受信領域を外れて走行を始めたり、送信機の位置に近接し過ぎるか、又は離れ過ぎた時や、何らかの故障が送信記か車輌側に発生した時、並びに上り坂や下り坂で走行用駆動モータ17に負荷がかかり過ぎたり、モータの回転速度が設定限度以上に加速し始めた時には、安全のためにこの飼犬先導車を緊急停車させることができる。
【0072】加算増幅器52から出力される電圧信号Vdはまた、DCモータ駆動制御回路54の起動信号としても用いられ、ステッピングモータ駆動制御回路50にも入力して、その起動信号としても用いられる。すなわち、図1に示した送信機30の電源スイッチがOFFになっている場合には、誘導信号が送信されず、受信機25,26は何も受信できないので、上記電圧信号Vdはゼロである。この状態ではDCモータ駆動制御回路54はDCモータ17への給電回路を遮断し、ステッピングモータ駆動制御回路50もステアリングモータ22への駆動パルス送出回路を遮断している。
【0073】送信機30の電源スイッチがONになって、送信機30が起動して誘導信号を送信し始めると、受信機25,26がそれを受信するので、上記電圧信号Vdが出力される。それがあるレベル以上になると、DCモータ駆動制御回路54はDCモータ17への給電回路を起動させ、ステッピングモータ駆動制御回路50もステアリングモータ22への駆動パルス送出回路を起動させる。このようにすれば、安全性を高め、且つ無駄な電力消費を防ぐことができる。
【0074】さらに、DCモータ駆動制御回路54には、図2乃至図4に示した手押しハンドル13の引き出し及び格納に伴なう信号と、起動用スイッチ14a,停止用スイッチ14bにON/OFF信号も入力されている。そして、手押しハンドル13を引き出すと、図示しないスイッチのON等による信号によって、DCモータ駆動制御回路54が図12におけるスイッチ46a,46bをOFFにして、自動追尾機能を無効にする。そして、起動用スイッチ14aのONによってDCモータ17を起動させ、停止用スイッチ14bのONによって、DCモータ17を停止させる。
【0075】次に、この発明による飼犬先導車に車輌重量調整用の重りを車体の外部に装着する例を、図13及び図14によって説明する。図13は飼犬先導車に重りを装着した状態の正面図、図14は側面図である。
【0076】この例では、一対の重り90,90を2本の平ゴムベルト91で互いに接続して、車体1の両側面に振り分け式に装着する。2本の平ゴムベルト91は、図14に示すようにセンタポール6の周囲のフットカバー7をはさんで前後において車体カバー2の上面に密着し、各重り90の下端部には引っ掛け用フックを備えており、平ゴムベルト91を幾分引き延ばした状態で、その各フックを車体カバー2の下縁に引っ掛けて固定する。
【0077】この重り90は鉛あるいは鋳物で作られ、その車体カバー2に接する側の面は、車体カバー2の表面に密着する曲面に形成され、滑り止めと車体カバー2の表面の損傷を防ぐためにその内面がゴム又はプラスチックシートなどで覆われ、外側の表面は犬鎖が引っ掛かったりしないように滑らかな流線形に形成されている。この一対の重りの重量を散歩させる犬の大きさや引っ張り力に応じて選択することにより、どのような犬を散歩させる場合にも、この飼犬先導車Wが犬の力で倒されたり引きずられたりすることなく、安全に使用できる。
【0078】次に、この発明による飼犬先導車に荷物運搬用籠を装着する例を、図15及び図16によって説明する。図15は飼犬先導車に荷物運搬用籠を装着した状態を示す正面図、図16は側面図である。
【0079】この例では、荷物運搬用籠100を車体1の上部に、円盤型ヘッド及びそこから左右に伸びる一対の受信機支持バー25s,26sをまたぐように装着し、4本の脚部101の下端部102をそれぞれ車体カバー2の表面に密着する曲面形状に形成し、その車体カバー2と接する面にゴム等による滑り止めを貼り付けて、車体カバー2の表面が傷つくことも防いでいる。この各脚部101をさらにフック付き平ゴム紐などによって車体1の下方に引っ張って固定するようにしてもよい。このように、荷物運搬用籠100を装着することにより、この飼犬先導車Wを飼犬の散歩の先導だけでなく、買い物などの運搬にも利用することができる。
【0080】
【発明の効果】以上説明してきたように、この飼犬先導車に犬鎖又は犬紐を介して飼犬を繋着して使用すれば、飼犬を耐えず先導して誘導し、飼主は犬鎖や犬紐を介することなく一定の距離を保って犬を散歩させることが可能になる。そのため、犬が物事に驚いて突発的に暴れ出したり、犬鎖を飼主の手から振り切って暴走したり、興奮して人を襲ったりすることも防止することができる。
【0081】また、この発明による飼犬先導車は、前輪操舵・後輪駆動方式の採用により、構造及び電気制御系統を単純化し、安価に提供することができる。そして、先行する飼い主の携帯する送信機から送信する誘導信号を車輌両側の左右対称な位置に配設された一対の受信機で受信し、その受信信号の強弱及び差にによって先行する送信機の方向と距離を検出し、前輪の操舵と後輪の駆動速度を調節して、常時発信機の方向にその移動速度ど略同じ速度で追尾することができる。
【0082】また、この飼犬先導車は、狭い道路や橋の上や路上の障碑物を避けるために、手押しハンドルを車体から引き出す丈けで手動操舵走行に切り変わり、手動操舵で動力駆動による走行を簡単に実現できる。なお、この発明の飼犬先導車体上に、そのの凹凸に適合する荷物積載用籠を装着すれば、買い物等を近くのスーパー等から自宅に運ぶ動力運搬車として活用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による自動追尾式飼犬先導車を使用して飼犬を散歩させている状態を示す概要図である。
【図2】図1における飼犬先導車の内部構成を透視した斜視図である。
【図3】同じくその側面図である。
【図4】同じくその平面図である。
【図5】図2乃至図4に示した飼犬先導車におけるステアリング機構を明示する斜視図である。
【図6】同じくその側面図である。
【図7】同じくその正面図である。
【図8】この発明による飼犬先導車における操舵原理を説明するための図である。
【図9】図1において先行者が携行する送信機の簡単な回路構成を示すブロック回路図である。
【図10】図2乃至図4に示した飼犬先導車の車体の左右両側方の対称な位置に配設された一対の受信機の回路構成を示すブロック回路図である。
【図11】この発明による飼犬先導車の電力供給経路を示す電源回路図である。
【図12】図3に示した制御ボックス38内に設けられるモータ制御部の回路構成を示すブロック回路図である。
【図13】この発明による飼犬先導車に車輌重量調節用の重りを装着した状態を示す正面図である。
【図14】同じくその側面図である。
【図15】この発明による飼犬先導車に荷物運搬用の籠を装着した状態を示す正面図である。
【図16】同じくその側面図である。
【符号の説明】
H:先行者 W:飼犬先導車 D:飼犬
1:車体 2:車体カバー 5:円盤型ヘッド
6:センタポール 7:フットカバー
8:犬鎖繋留用リング 9:犬鎖(犬紐)
10:緩衝用パンパ 11:ヘッドライト
12:反射型尾灯 13:手押しハンドル
14a:起動用スイッチ 14b:停止用スイッチ
15:ハンドルバー 16a,16b:後輪
17:走行用駆動モータ 21:ステアリング機構
22:スイアリングモータ(ステップモータ)
24:リング型スイッチ 25,26:受信機
27:前輪 28:バッテリ 30:送信機
38:制御ボックス 40:モータ制御回路
43a,43b:検波回路 48:差動増幅器
49,53:バッファ増幅器
50:ステッピングモータ駆動制御回路
52:加算増幅器 54:DCモータ駆動制御回路
55:タコジェネレータ 56:近接制止回路
57:遠離制止回路 58:加減速停止回路
70:電源回路 75:回路遮断器
71:電源スイッチ釦 72,73:スイッチ
74:ソレノイド 76:マイクロスイッチ
80:電力供給盤 81:出力線
82:低バッテリ電圧表示回路 90:重り
91:平ゴムベルト 92:引っ掛け用フック
100:荷物運搬用籠 101:脚部
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、犬の飼主(特に女性や高齢者等の弱者)が携行する送信機から送信される誘導信号に追従して走行移動して、飼犬の散歩を先導する自動追尾式飼犬先導車に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高齢化社会が進み、社会的のみならず、政治的あるいは経済的にも、この問題は無視できなくなりつつある。他方ペットブームもその進展が著しく、独身女性や高齢者等の体力的弱者が犬等のペットを飼うケースも着実に増えて来ている。
【0003】犬を飼う場合には、その犬を毎朝晩散歩させる必要があり、それが飼い主の健康保持にも役立つことになる。しかし、中・大型犬になると成長するに従って力が強くなり、女性や高齢者が散歩させる場合に直接犬鎖や犬紐を手に保持して、犬の歩行速度や移動方向コントロールするのは体力的に困難になってくる。
【0004】また、散歩中に犬が何かの異変に驚いて暴走したり、子供や飼い主自身が飼犬に噛みつかれて噛み死されたり深い傷を追ったりする事例も増加してきている。しかしながら、このよな労力や危険性を伴わずずに飼犬を安全に散歩させ得るような有効な散歩補助手段がないのが現状である。
【0005】一方、ゴルフ場などでは既に、ゴルファが携行する送信機からの電波信号をゴルフバッグ運搬車上に設置した受信機で受信し、その送信機の移動方向にゴルフバッグ運搬車を追尾させるようなもの提案され、試用されているようである。
【0006】しかしながら、ゴルフコースの場合は、一般道路のように平坦ではなく、芝生で覆われた地面も比較的軟弱であるためと、車輌自体がゴルフバッグ等の重量物を積載するために重いため、車輪に負荷がかかり、操舵(ステアリング)にも比較的強い動力が必要になるため、左右2つの後輪を2個の別々の駆動モータで回転させ、操舵も同じ駆動モータにそれぞれ制動を加えて、2つの車輪の回転速度差によって方向転換させる、後輪駆動・後輪操舵の方式が採用されている。したがって、このようなゴルフバッグ運搬車は、大型で高価であり操作も面倒であり、飼犬を散歩させるための先導車として転用できるようなものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、体力的に弱者である女性や高齢者等でも、比較的力の強い中・大型犬であっても、小さな発信機を携行するだけで、直接犬鎖や犬紐を手で保持することなく、安全に犬を散歩させることができるような飼犬先導車を提供することを目的とする。また、犬がある程度の範囲では自由に動くことができるようにし、場合によってその先導車を手動で走行させることも可能にしたり、異常状態の発生時には緊急停止するようにすることなども目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するため、先行者が携行する送信機から送信される誘導信号に追従して移動可能な自動追尾式飼犬先導車を提供するものであり、それを次のように構成したことを特徴とするものである。
【0009】すなわち、車輌走行用の後輪と操舵用の前輪とを備えた車体と、その車体の両側方の対称な位置に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記誘導信号を受信する一対の受信機と、上記後輪を駆動する走行用駆動モータと、上記前輪を操舵するステアリングモータを含むステアリング機構と、上記走行用駆動モータ及びステアリングモータに給電する電源用バッテリーと、上記一対の各受信機がそれぞれ受信する前記誘導信号の強弱及びその差により、先行する送信機の位置と移動方向を検出して、その検出位置に応じて走行用駆動モータの起動,停止あるいは加減速を自動制御し、その移動方向に応じて操舵用のステアリングモータを自動制御するモータ制御手段と、犬の首輪に一端が繋着された犬鎖又は犬紐の他端を前記車体に繋留するための回転自在なリングとを備えている。
【0010】そして、先行者が携行する送信機からの誘導信号を、上記1対の受信機により所定の受信領域内で受信して、上記送信機の位置と移動方向を検出しながらその誘導信号に追従して走行し、上記犬鎖又は犬紐を介して飼い犬の散歩を先導することことができる自動追尾式飼犬先導車である。
【0011】さらに、この自動追尾式飼犬先導車の車体に、収納および引き出し可能であり、少なくとも走行用駆動モータの起動および停止用スイッチを備えた手押しハンドルを設けるとよい。そうすれば、狭い道路や障害物のある路上などでは、その手押しハンドルを引き出して、手動操蛇で運行することも可能になる。
【0012】また、上記走行用駆動モータの駆動による車体の走行速度の標準値を、段階的にあるいは無段階に予め可変設定する手段を設けるとよい。それによって、飼い主が自分の歩行速度に合わせて、その車体の走行速度の標準値(通常の走行速度)を設定しておくことができる。
【0013】さらにまた、車体の表面の形状に合わせた形状をなし、車体に着脱可能な荷物運搬用籠を設けることもできる。それによって、買い物等の荷物をその籠内に収納して、自動追尾方式あるいは手押しハンドルによる手動操舵で運ぶことができ、飼犬の散歩以外にも利用可能になる。
【0014】また、犬鎖又は犬紐を介して繋留される犬の体格及び索引力の差異に応じて車体の重量を変化させ得るように、車体に着脱可能な各種重量の重りを設けることもできる。それによって、小型犬の場合は重量を軽くして、電源用バッテリの電力消費を節減でき、大型犬の場合には重量を重くして、犬の引っ張り力によって車輌が倒れたり引き動かされたりする恐れがないようにすることができる。
【0015】そして、犬鎖又は犬紐の他端を前記車体に繋留するための回転自在なリングを車体に保持する部材(実施例ではセンタポール)が予め設定した値を超える引っ張り力を受けたときに、それを感知して走行用駆動モータを停止させ、緊急停車させる手段を設けるのが望ましい。それによって、飼犬が異変等に驚いて急に暴れ出したり暴走しようとして犬鎖又は犬紐を強く引っ張ると、回転自在なリングを車体に保持する部材が設定値を超える力を受け、その緊急停止手段がその部材の弾性変形等によってそれを感知して車輌を非常停止させるので、安全性が高くなる。
【0016】さらに、次の(a)乃至(f)のいずれかの時にも、それを検知して作動する緊急停車させる手段を設けるようにすれば、この自動追尾式飼犬先導車は一層安全性の高いものとなる。
【0017】(a)送信機の電源が切られた時、(b)車体が受信機による送信機からの誘導信号の予め設定された受信可能領域を外れて走行を始めるか、あるいは送信機の位置に近接し過ぎるか、該送信機から離れ過ぎた時、(c)車体の先端に設けた緩衝用バンパが動物又は物体に衝突した時、(d)上り坂登坂中等に設定限度以上の負荷が走行用駆動駆動モータにかかった時、(e)下り坂降坂中等に設定限度以上の速度で走行用駆動モータが回転を始めた時、(f)送信機又は飼犬先導車に何らかの故障が発生した時、
【0018】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。図1は、この発明による自動追尾式飼犬先導車を使用して飼犬を散歩させている状態を示す概要図である。
【0019】先行者(飼い主など)Hがバンド等によって送信機30を身体に装着して歩行し、自動追尾式飼犬先導車(以下単に「飼犬先導車」という)Wが、略一定の距離だけ離れて追従走行する。この飼犬先導車Wの車体1の中央部に設けた円盤型ヘッド5の下側のセンタポール6に、回転自在に嵌挿された犬鎖繋留用リング8に、飼犬Dの首輪Rに一端を繋着した長さ1.5メートル前後の市販の犬鎖(犬紐でもよい)9の他端を繋着して、飼犬Dを車体1に繋留している。
【0020】犬鎖繋留用リング8は円椎型のフットカバー7の上に乗せられる形でセンタポール6に嵌挿されているため、非常に円滑に回転できるので、飼犬Dは車体1に繋留された状態でも、この先導車輌Wの周りをある程度自由に回遊できる。この飼犬先導車Wの車体1は、飼犬Dがその周囲で動き回っても犬鎖9がもつれたり、車輪へのまき込みや引掛りがが発生することがないように、その表面に突起などがない単純な曲面状の車体カバー2で覆われている。
【0021】この車体1の両側方のセンタポール6を中心として対称な位置に、先行者Hが携行する送信機30から送信される誘導信号を受信する一対の受信機25,26を備えている。また、この車体1の下部には、車両走行用の左右2個の後輪16a,16bと、操舵用の1個の前輪27とを備えている。
【0022】そして、この飼犬先導車Wは、先行者Hが携行する送信機30からの誘導信号を、1対の受信機25,56により所定の受信領域内で受信して、送信機30の位置と移動方向を検出しながらその誘導信号に追従して走行し、犬鎖9又は犬紐を介して飼い犬Dの散歩を先導する。これは、公園内や道路上で使用することができる。
【0023】このような飼犬先導車では、前述した自動追尾式ゴルフバッグ運搬車のように、重量物運搬型で制御が複雑な、左右2個の後輪駆動モータで操舵も兼用させる方式ではなく、車輌走行用の駆動は後輪で、操舵は前輪でそれぞれ別に行なうように単純化している。
【0024】そして、車体1上の左右両側に1台ずつ配置した受信機25,26が別々に受信する送信機30からの誘導信号の強弱とその差にによって、送信機の位置と移動方向を検知して、その位置と移動方向に応じて、後輪駆動用のモータと前輪操舵用のモータとを自動制御して、常に先行者から略一定の距離だけ遅れて、先行者の歩行に追従して走行するようにしている。すなわち、この飼犬先導車Wは先行者Hの歩行速度にほぼ合致する一定の速度範囲内で自動追尾して走行する。
【0025】次に、この飼犬先導車Wの構造例を詳細に説明する。図2はこの飼犬先導車Wの内部構成を透視した斜視図、図3はその側面図、図4はその平面図である。
【0026】これらの図に示すように、この飼犬先導車Wの車体1は、全体を突起のない曲面状の車体カバー2で覆われている。その車体カバー2の上面には保守点検用の前蓋3及び制御ボックス開閉用の後蓋4が、夫々蝶番3b及び4b(図3参照)によって車体1に一片を蝶着され、止めネジ3a及び4aによって車体1に固定されており、その止めネジ3a及び4a取り外すことによって開蓋される。前蓋3は、バッテリー21や前輪操舵用のステアリングモータ22を含むステアリング機構21等の保守点検や、図示を省略しているが車輌重量調節用の重りを車体カバー2の内側に脱着する時に利用され、後蓋4は、制御ボックス38(図3)及び走行用駆動モータ17等の保守点検時に利用される。
【0027】車体1の中央部には円盤型ヘッド5とそれを支持するセンタポール6が下端部を車体シャーシ1a(図3)に固定されて垂直に立設されている。その円盤型ヘッド5からは、車体1の両側方(車幅方向)に向けて、受信機支持バー25s及び26sが張り出し、その先端部に受信アンテナ内蔵の受信機25及び26がそれぞれセンタポール6を中心に左右対称な位置に配設されている。
【0028】円盤型ヘッド5と車体カバー2の上面との間のセンタポール6の露出部は、下部が円椎型フットカバー7で覆われ、その上に犬鎖(又は犬紐)9を繋留する犬鎖繋留用リング(以下単に「リング」という)8が回転自在に嵌挿されている。このセンタポール6は、犬鎖9によってリング8が強い力で一方向に引張られ、どちらかの方向に多少傾くと、そのすぐ下部に同ポールを囲むように設けられたリング型スイッチ24(図3)に接触してそれをONにする。それによって、後述する電源回路の給電路が遮断され、この飼犬先導車Wの走行用駆動モータ17が停止してが緊急停車する。
【0029】車体カバー2の先端には緩衝用バンパ10が装着され、動物又は物体との衝突時に直ちにマイクロスイッチが働らき、それによっても緊急停車するようになっている。その緩衝用バンパ10のすぐ上部には、夜間走行時に点灯されるヘッドライト11が設けられ、車体1の後面には追突防止用として左右2箇所に反射型尾灯12が装着されている。
【0030】また、車体1の後部には、手押しハンドル13がそのハンドルバー15を車体上に頭出しした状態で収納されており、この手押しハンドル13をハンドルバー15を掴んで仮想線で示すように上方に引き出すと、送信機30からの誘導信号によって作動する自動操舵制御回路がOFFになり、ハンドルバー15上に付設された起動用スイッチ14aを押せば走行用駆動モータ17を起動させて手動操舵による動力走行が可能になり、停止用スイッチ14bを押せば走行用駆動モータ17を停止させて停車できる。
【0031】なお、走行用駆動モータ17およびステアリングモータ22、ならびに制御ボックス38等は、周囲を壁で囲んで埃りや雨水などが入らないようにするのが望ましい。つぎに、図2乃至図4に破線で示されている車体内部の構成及びその機能について説明する。
【0032】車輌の走行駆動用モータ17は、バッテリ28の直流電源によって駆動するDCモータであり、後述するモータ制御回路によって自動制御されるか、前述したスイッチ14a,14bによって起動・停止される。このモータ17の軸回転はカウンタプーリ18を介して後輪駆動プーリ19にベルト伝動機構によって伝えられて、そのプーリ19と一体をなす車軸20及びタイヤ付き両後輪16a及び16bを同時に回転させて車輌を走行させる。このモータ17の回転駆動力の後輪16a,16bへの伝達には、ベルト伝動機構に代えて、チェーン伝動機構やギア伝動機構などを用いるようにしてもよい。
【0033】車輌の走行方向を転換させる操舵は、この実施形態ではキャスタタイプの前輪27を先行者が携行する発信機30からの誘導信号を車体1の両側部の対称な位置に配設された2個の受信機25及び26によって別々に捕捉し、常にその受信信号が強い受信機側の方向にタイヤ付き前輪27を旋回させるような操舵制御によって行なわれる。
【0034】その前輪27の操舵は、ステアリングモータ22によって行なわれる。この例では、ステアリングモータ22として、後述するモータ制御部からの正転逆転信号と駆動パルス信号によってステップ回転するステッピングモータを使用している。このステアリングモータ22の正・逆転回転を前輪27に伝達するために、その回転軸に取り付けたモータプーリ22aと前輪27の垂直回転軸27に取り付けたステアリングプーリ27aとの間にタイミングベルト23を張装してなるステアリング機構21を備えている。
【0035】図5はこのステアリング機構21を明示する斜視図、図6はその側面図、図7はその正面図である。これらの図に示されるように、ステアリングモータ22の回転軸22bは、中間支持板29bを貫通して上部支持板29aとの間でモータプーリ22aが円滑に回転するよう中間支持板31bに嵌着されたベアリング22cによって支持されている。
【0036】一方、前輪27はそのフォーク27cと一体に設けた垂直回転軸27bを上部支持板29aと中間支持板29bの両方を垂直に貫通させ、上部支持板29aと中間支持板29bの間でステアリングプーリ27aを嵌着しており、その垂直回転軸27bが円滑に回転するように、各支持板29a,29bの貫通箇所に嵌着されたベアリング27d,27eによって回転自在に支持している。
【0037】このステアリング機構21によれば、後述するモータ制御部からステアリングモータ22に対して正転・逆転指令と駆動パルス信号による回転の度合い(回転角度)指令が出されると、このステアリング22は回転軸22bを右又は左に駆動パルス数に応じた角度丈け回転させ、その回動はモータプーリ22aからタイミングベルト23およびステアリングプーリ27aを介して、キャスタータイプのタイヤ付き前輪27の垂直回転軸27b及びフォーク27cに伝達され、前輪27を操舵できるようになっている。
【0038】ここで、この飼犬先導車における操舵機能について、その原理を図8を参照して説明する。図8に示すように、飼犬先導車Wの中心線の両側の対称位置に配設された一対の受信機25と26とを結ぶ線Lを底辺として、先行者Hが携行する送信機30を頂点として、その送信機30と受信機25と結ぶ直線と、受信機26と結ぶ直線とによって形成される三角形が(B)に示すような2等辺三角形を維持している場合は、送信機30から送信される誘導信号の電波は各受信機25及び26に対し同じ強さで到達する。
【0039】この場合、各受信機25,26から出力される誘導信号電圧は等しく、それが後述するモータ制御部で増幅され、電位差計を通して比較処理された後の電圧はゼロになり、ステアリングモータ(ステッピングモータ)22への駆動信号は発生されない。従って、飼犬先導車Wの前輪27は真正面に向いたまま送信機30に向って真直に前進を続ける。
【0040】しかしながら、送信機30を携行する先行者Hが歩行進路を左方向に変更した場合は、上述した三角形の2等辺形状が崩れ、図8の(A)に示すように、送信機30と左側の受信機25との距離xが、送信機30と右側の受信機26との距離yより短かくなり、受信機25の受信電波の強さが受信機26の受信電波の強さを上廻る。
【0041】この場合、受信機25から出力される誘導信号電圧の方が受信機26から出力される誘導信号電圧より大きくなり、前述のように比較処理された後の電圧はその信号電圧の差に応じた正又は負の電圧となり、ステアリングモータ22に対して左方向すなわち受信機25側への回転方向指令と、その電圧差の大きさに応じて異なる数の駆動パルス信号から成るモータ回転駆動信号が出力される。この信号によってステアリングモータ22が回転駆動し、前述のステアリング機構21によって、前輪27を送信機30の方向に追尾するよう左方向に操舵する。
【0042】逆に、送信機30を携行する先行者Hが歩行進路を右方向に変更した場合は、図8の(C)に示すように、送信機30と右側の受信機26との距離yが、送信機30と左側の受信機25との距離xより短くなり、受信機26の受信電波の強さが受信機25の受信電波の強さを上廻る。
【0043】この場合は、受信機26から出力される誘導信号電圧の方が受信機25から出力される誘導信号電圧より大きくなり、前述のように比較処理された後の電圧はその信号電圧の差に応じた(A)の場合とは反対極性の電圧となり、ステアリングモータ22に対して右方向すなわち受信機26側への回転方向指令と、その電圧差の大きさに応じて異なる数の駆動パルス信号から成るモータ駆動信号が出力される。この信号によってステアリングモータ22が回転駆動し、前述のステアリング機構21によって、前輪27を送信機30の方向に追尾するよう右方向に操舵する。
【0044】このように前輪27が操舵されると、飼犬先導車Wは再び送信機30の方向に直進する態勢に戻り、その車体1上の一対の受信機25及び26が夫々受信する誘導信号の受信電波の強さが等しくなると、図8の(B)に示す状態に戻り、前輪27は送信機30に向かって真直ぐに追尾し続けるように、真正面に向いた中立位置になる。
【0045】図9は、先行者Hが携行する送信機30の簡単な回路構成を示すブロック回路図である。この送信機30の大きさは、大人が着用するズボンなどの後ポケット内に収められる程度のものである。
【0046】この送信機30は図9に示すように、水晶発振子31およびトランジスタ等を含む発振回路32、電源電池を含む制御回路33、増幅器34、および可変コンデンサ35aやアンテナコイル35b等を含むアンテナ回路35などから構成されており、所定の周波数を有する誘導信号の電磁波を一定の出力で送信する。これは、公知の単純な一定信号を送信する送信機を使用できるので、詳細な説明は省略する。
【0047】図10は、車体1の左右両側方の中心線に対して対称な位置に配設された一対の受信機25及び26の回路構成を示すブロック回路図である。この受信機25と26は同一仕様であるため、ここでは受信機25について、その概略構成を説明する。この受信機25は図10に示すように、送信機30からの誘導信号の電磁波を受信する受信アンテナ25a、チューニングコンデンサ25b、バッファ増幅器25c、水晶発振器25d及び増幅器25eから構成されている。
【0048】そして、先行する送信機30から送信される特定周波数の電磁波に共振(同調)する受信アンテナ25aとチューニングコンデンサ25bとによって誘導信号を受信し、その信号電圧を水晶発振器に余分な負荷をかけないようにバッファ増幅器25cを通して水晶発振器25dに供給し、その水晶発振器25dから増幅器25eを介して特定周波数の信号のみを、図12に示すモータ制御部40に、電気的ノイズを受けにくい通信用シールドケーブル25fを通して伝達される。もう一つの受信機26からも、同一周波数の信号が同様に通信用シールドケーブル26fを通してモータ制御部40にパラレルに伝達される。
【0049】図11は、この飼犬先導車Wの電力供給経路を示す電源回路図である。電源であるバッテリ28と、そのバッテリから電力供給盤80への給電路に介挿された、電源スイッチを兼ねた回路遮断器75などによって電源回路70を構成している。回路遮断器75は、バッテリ28の陽極及び陰極から電力供給盤80への給電路を形成する導線78,79の途中に介挿された一対のスイッチ72,73と、電源スイッチ釦71およびソレノイド74からなる。電源スイッチ釦71は、車体1の外部から操作できるように設けられる。
【0050】電源スイッチ釦71が押圧されると、一対のスイッチ72,73を連動してONにし、図示しないロック機構によりその状態に保持され、再び押されると、そのロックが解除されて一対のスイッチ72,73がOFFになり、電源スイッチ釦71が元の位置に復帰する。ソレノイド74は通電により励磁されると、上記ロック機構のロックを解除させて一対のスイッチ72,73を強制的にOFFにする。
【0051】この電源回路70のバッテリ28からソレノイド72への通電回路に、車体1の先端に装備した緩衝用バンパ10に物体が衝突した時にONになるマイクロスイッチ76と、車輌1中央のセンタポール6に挿入された犬鎖繋留用のリング8が犬の暴立や暴走などにより強い力で引っ張ぱられた時にONになるセンタポール6を取巻くリング型スイッチ24とが並列に挿入されている。
【0052】したがって、回路遮断器75の一対のスイッチ72,73がONになって電力供給盤80へ給電しているときに、マイクロスイッチ76かリング型スイッチ24のいずれかが作動してONになると、ソレイド72に通電して励磁するため、スイツチ72,73がOFFになり、電力供給盤80への電力供給が断たれる。それによって車輌が緊急停車する。
【0053】スイツチ72,73がOFFになると、ソレノイド74が励磁されなくなるが、その後は電源スイッチ釦71が再び押圧されるまで、スイッチ72,73がONになることはない。したがって、マイクロスイッチ76又はリング型スイッチ24が短時間ONになった後OFF状態に戻っても、スイッチ72,73はOFFのままになる。77はパイロットランプで、保護抵抗Rを介して導線78,79に接続されており、スイッチ72,73がONになって電力供給盤80に入電された時に点灯して、電気的エネルギーの入力を目視できるようにする。
【0054】この電源回路70から出力される電力は、導線78,79を通して電力供給盤80に供給され、そこで各種の異なる電圧の電源が用意され、複数の出力線81を通して受信機25,26と、走行用駆動モータ17及びステアリングモータ22を駆動制御するモータ制御部40に給電される。82はバッテリ電圧低下表示回路であり、バッテリ28の蓄電量が減少してその出力電圧が低下し、充電を必要とする状態になると、それを検出して表示ランプ83を点灯させて警告する。
【0055】なお、車体1の重量が軽く、しかも概して平坦な道路上を歩行速度程度の低速で走行するため、走行用駆動モータ17およびステアリングモータ22とも小型モータで良く、消費電力も少ないため、バッテリ28は12Vタイプのモータバイク用バッテリーで充分である。しかし、搭載モータの種類によって24V電源を必要とする場合には、12Vタイプのバッテリを2台直列に接続して使用することも可能である。この種のバッテリ用の充電器は低価格で市販されており、家庭で簡単に充電することができる。
【0056】図12は、図3に示した制御ボックス38内に設けられるモータ制御部の回路構成を示すブロック回路図である。受信機25及び26から通信用シールドケーブル25f,26fを介して送られてくる信号は、このモータ制御部40内でそれぞれ増幅器41a及び41bで増幅され、コンデンサ42a及び42bを経て直流分がカットされ、検波回路43a及び43bで検波される。それにより、入力信号の振幅の大きさに比例したDC電圧V1 及びV2 に変換される。このDC電圧V1 及びV2 は夫々検波回路43a及び43bの出力側に接続された抵抗器44a,44bと可動接点がアースされた可変抵抗器45とからなるレベル調整回路によって、図8の(B)の状態のときに、DC電圧V1 とV2 が同電位になるようにレベル調整される。
【0057】このDC電圧V1 ,V2 はそれぞれ常閉のスイッチ46a,46bを介して出力され、抵抗器47a,47bを介して差動増幅器48の非反転入力端子と反転入力端子にそれぞれ入力する。それによって差動増幅器48は、入力される電圧V1 とV2 の差に応じた大きさ(絶対値)で、いずれが大きいかによって異なる極性の電圧信号Vs(Vs=V1 −V2 )を出力する。この電圧信号Vsは、図8で説明した受信機25と26の送信機との距離の差に応じた大きさでその片寄り方向に応じた極性になる。
【0058】この電圧信号Vsをバッファ増幅器49を介してステッピングモータ駆動制御回路50に入力させ、ステッピングモータであるステアリングモータ22を駆動制御させる。
【0059】このステッピングモータ駆動制御回路50は、一般的にはIC化されて市販されているが、パルス信号発振器,励磁相制御部,電力増幅部等の外、始動・停止,発振周波数可変等の機能が組込まれている。そして、バッファ増幅器49を介して入力する電圧信号Vsの極性に応じてモータの回転方向(正転又は逆転)を決め、その大きさに応じて回転角度を設定して駆動パルス数を決定し、位相の異なる複数の駆動パルスをステアリングモータ22へ送って、それを回転駆動制御する。その駆動パルスの周波数によって回転速度を制御することもできる。
【0060】このようにして、図8によって前述した原理でステアリングモータ22によって前輪27を操舵し、先行者Hの歩行する方向に飼犬先導車Wの走行方向を変えることができる。なお、車輌の蛇行をなくすように、作動増幅器48からの電圧信号Vsの変化量及び変化方向に応じてステッピングモータ駆動制御回路50がステアリングモータ22を回転させるようにしてもよい。あるいは、上記電圧信号Vsがゼロになると、前輪27を車体1の長手方向に平行な直進位置に自動的に復帰させるように、弱いスプリング等によって復帰力を与えておくようにするとよい。
【0061】検出されたDC電圧V1 ,V2 はまた、抵抗器51a,51bを介して加算増幅器52の非反転入力端子に入力され、加算増幅器52はそれを加算した電圧信号Vd(Vd=V1 +V2 )を出力する。その電圧信号Vdをバッファ増幅器53を介してDCモータ駆動制御回路54へ入力させ、DCモータである走行用駆動モータ(以下「DCモータ」という)17を駆動制御させる。
【0062】このDCモータ駆動制御回路54も、DCモータ17に付属して販売される一般の制御器を利用することができる。このDCモータ17の回転軸にはタコゼネレータ55が取り付けられており、DCモータ17の回転数に応じた電圧を発生し、それをDCモータ駆動制御回路54にフィードバックする。
【0063】図1に示した送信機30を携行して歩行する先行者Hの平均的歩行速度で、飼犬先導車Wが追従走行するようにするには、その走行速度のときにタコゼネレータ55がが発生する電圧Vfに相当する電圧を、抵抗器56と可変抵抗器57による分圧回路によって発生させ、それを標準速度電圧V0 としてDCモータ駆動制御回路54に設定しておく。それによって、バッファ増幅器53から入力する電圧信号Vdが後述する基準電圧Vxと一致している場合には、タコゼネレータ55がが発生する電圧Vfが標準速度電圧V0 と一致する(Vf=V0 となる)ように、DCモータ17に流す電流値を調整してその回転を制御する。
【0064】一方、加算増幅器52から出力されてバッファ増幅器53を介して入力される電圧信号Vdは、図1R>1における送信機30と飼犬先導車Wに取り付けられた一対の受信機25と26の中間点とを結ぶ距離が長い程小さく、それが短かい程大きくなる。そこで、例えば送信機30と受信機25と26の中間点とを結ぶ距離が2メートル(任意の距離に設定する)の場合に、電圧信号Vdを、基準電圧VxとしてDCモータ駆動制御回路54内に設定しておく。
【0065】それよって、上記距離が2メートルより短かくなる(飼犬先導車Wが先行者Hに近づく)と、入力する電圧信号Vdが基準電圧Vxより大きくなるので、その差分だけ先に設定した標準速度電圧V0 から減算することにより、DCモータ22の目標回転速度を下げ、飼犬先導車Wの走行速度を減速することができる。
【0066】これとは逆に、上記距離が2メートルより長くなる(飼犬先導車Wが先行者Hから離れる)と、入力する電圧信号Vdが基準電圧Vxより小さくなるので、その差分だけ先に設定した標準速度電圧V0 に加算することにより、DCモータ22の目標回転速度を上げ、飼犬先導車Wの走行速度を加速することができる。
【0067】上記距離が2メートルになって、入力する電圧信号Vdが基準電圧Vxと等しくなれば、再び標準速度電圧V0 によってDCモータ17の回転速度を制御する状態に戻る。このようにして、飼犬先導車Wを先行者Hとの距離を略一定に保って、先行者Hの平均的な歩行速度に合わせて追従走行させることができる。
【0068】加算増幅器52から出力される電圧信号Vdはまた、近接制止回路58及び遠離制止回路59にも入力される。近接制止回路58は、入力される電圧信号Vdが予め設定した先行者と車輌との接近限に相当するレベルを超えたとき、停止信号S1 を出力する。遠離制止回路57は、入力される電圧信号Vdが予め設定した先行者と車輌との遠離限(離れる限界)に相当するレベルを下回ったとき、停止信号S2 を出力する。
【0069】また、タコゼネレータ55がが発生する電圧Vfは加減速停止回路60にも入力される。それによって、加減速停止回路60は、タコゼネレータ55が発生するDCモータ17の回転数に応じた電圧Vfが、下り坂等で異常に高くなったり、或は上り坂等でモータMDに負荷がかかり過ぎて以上に低くなった場合に停止信号S3 を出力する。
【0070】これらの各停止信号S1,S2,S3 は、ORゲート61及び逆流防止用のダイオード62を介してDCモータ駆動制御回路54に入力し、DCモータ17の回転を停止させると共に、DCモータ17に組込まれたブレーキを作動させる。それによって、飼犬先導車Wを急停車させる。コンデンサ63は、極めて短時間の停止信号はノイズ成分として吸収するために設けられている。
【0071】このように構成することにより、この飼犬先導車が予め設定された送信機からの電波受信領域を外れて走行を始めたり、送信機の位置に近接し過ぎるか、又は離れ過ぎた時や、何らかの故障が送信記か車輌側に発生した時、並びに上り坂や下り坂で走行用駆動モータ17に負荷がかかり過ぎたり、モータの回転速度が設定限度以上に加速し始めた時には、安全のためにこの飼犬先導車を緊急停車させることができる。
【0072】加算増幅器52から出力される電圧信号Vdはまた、DCモータ駆動制御回路54の起動信号としても用いられ、ステッピングモータ駆動制御回路50にも入力して、その起動信号としても用いられる。すなわち、図1に示した送信機30の電源スイッチがOFFになっている場合には、誘導信号が送信されず、受信機25,26は何も受信できないので、上記電圧信号Vdはゼロである。この状態ではDCモータ駆動制御回路54はDCモータ17への給電回路を遮断し、ステッピングモータ駆動制御回路50もステアリングモータ22への駆動パルス送出回路を遮断している。
【0073】送信機30の電源スイッチがONになって、送信機30が起動して誘導信号を送信し始めると、受信機25,26がそれを受信するので、上記電圧信号Vdが出力される。それがあるレベル以上になると、DCモータ駆動制御回路54はDCモータ17への給電回路を起動させ、ステッピングモータ駆動制御回路50もステアリングモータ22への駆動パルス送出回路を起動させる。このようにすれば、安全性を高め、且つ無駄な電力消費を防ぐことができる。
【0074】さらに、DCモータ駆動制御回路54には、図2乃至図4に示した手押しハンドル13の引き出し及び格納に伴なう信号と、起動用スイッチ14a,停止用スイッチ14bにON/OFF信号も入力されている。そして、手押しハンドル13を引き出すと、図示しないスイッチのON等による信号によって、DCモータ駆動制御回路54が図12におけるスイッチ46a,46bをOFFにして、自動追尾機能を無効にする。そして、起動用スイッチ14aのONによってDCモータ17を起動させ、停止用スイッチ14bのONによって、DCモータ17を停止させる。
【0075】次に、この発明による飼犬先導車に車輌重量調整用の重りを車体の外部に装着する例を、図13及び図14によって説明する。図13は飼犬先導車に重りを装着した状態の正面図、図14は側面図である。
【0076】この例では、一対の重り90,90を2本の平ゴムベルト91で互いに接続して、車体1の両側面に振り分け式に装着する。2本の平ゴムベルト91は、図14に示すようにセンタポール6の周囲のフットカバー7をはさんで前後において車体カバー2の上面に密着し、各重り90の下端部には引っ掛け用フックを備えており、平ゴムベルト91を幾分引き延ばした状態で、その各フックを車体カバー2の下縁に引っ掛けて固定する。
【0077】この重り90は鉛あるいは鋳物で作られ、その車体カバー2に接する側の面は、車体カバー2の表面に密着する曲面に形成され、滑り止めと車体カバー2の表面の損傷を防ぐためにその内面がゴム又はプラスチックシートなどで覆われ、外側の表面は犬鎖が引っ掛かったりしないように滑らかな流線形に形成されている。この一対の重りの重量を散歩させる犬の大きさや引っ張り力に応じて選択することにより、どのような犬を散歩させる場合にも、この飼犬先導車Wが犬の力で倒されたり引きずられたりすることなく、安全に使用できる。
【0078】次に、この発明による飼犬先導車に荷物運搬用籠を装着する例を、図15及び図16によって説明する。図15は飼犬先導車に荷物運搬用籠を装着した状態を示す正面図、図16は側面図である。
【0079】この例では、荷物運搬用籠100を車体1の上部に、円盤型ヘッド及びそこから左右に伸びる一対の受信機支持バー25s,26sをまたぐように装着し、4本の脚部101の下端部102をそれぞれ車体カバー2の表面に密着する曲面形状に形成し、その車体カバー2と接する面にゴム等による滑り止めを貼り付けて、車体カバー2の表面が傷つくことも防いでいる。この各脚部101をさらにフック付き平ゴム紐などによって車体1の下方に引っ張って固定するようにしてもよい。このように、荷物運搬用籠100を装着することにより、この飼犬先導車Wを飼犬の散歩の先導だけでなく、買い物などの運搬にも利用することができる。
【0080】
【発明の効果】以上説明してきたように、この飼犬先導車に犬鎖又は犬紐を介して飼犬を繋着して使用すれば、飼犬を耐えず先導して誘導し、飼主は犬鎖や犬紐を介することなく一定の距離を保って犬を散歩させることが可能になる。そのため、犬が物事に驚いて突発的に暴れ出したり、犬鎖を飼主の手から振り切って暴走したり、興奮して人を襲ったりすることも防止することができる。
【0081】また、この発明による飼犬先導車は、前輪操舵・後輪駆動方式の採用により、構造及び電気制御系統を単純化し、安価に提供することができる。そして、先行する飼い主の携帯する送信機から送信する誘導信号を車輌両側の左右対称な位置に配設された一対の受信機で受信し、その受信信号の強弱及び差にによって先行する送信機の方向と距離を検出し、前輪の操舵と後輪の駆動速度を調節して、常時発信機の方向にその移動速度ど略同じ速度で追尾することができる。
【0082】また、この飼犬先導車は、狭い道路や橋の上や路上の障碑物を避けるために、手押しハンドルを車体から引き出す丈けで手動操舵走行に切り変わり、手動操舵で動力駆動による走行を簡単に実現できる。なお、この発明の飼犬先導車体上に、そのの凹凸に適合する荷物積載用籠を装着すれば、買い物等を近くのスーパー等から自宅に運ぶ動力運搬車として活用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による自動追尾式飼犬先導車を使用して飼犬を散歩させている状態を示す概要図である。
【図2】図1における飼犬先導車の内部構成を透視した斜視図である。
【図3】同じくその側面図である。
【図4】同じくその平面図である。
【図5】図2乃至図4に示した飼犬先導車におけるステアリング機構を明示する斜視図である。
【図6】同じくその側面図である。
【図7】同じくその正面図である。
【図8】この発明による飼犬先導車における操舵原理を説明するための図である。
【図9】図1において先行者が携行する送信機の簡単な回路構成を示すブロック回路図である。
【図10】図2乃至図4に示した飼犬先導車の車体の左右両側方の対称な位置に配設された一対の受信機の回路構成を示すブロック回路図である。
【図11】この発明による飼犬先導車の電力供給経路を示す電源回路図である。
【図12】図3に示した制御ボックス38内に設けられるモータ制御部の回路構成を示すブロック回路図である。
【図13】この発明による飼犬先導車に車輌重量調節用の重りを装着した状態を示す正面図である。
【図14】同じくその側面図である。
【図15】この発明による飼犬先導車に荷物運搬用の籠を装着した状態を示す正面図である。
【図16】同じくその側面図である。
【符号の説明】
H:先行者 W:飼犬先導車 D:飼犬
1:車体 2:車体カバー 5:円盤型ヘッド
6:センタポール 7:フットカバー
8:犬鎖繋留用リング 9:犬鎖(犬紐)
10:緩衝用パンパ 11:ヘッドライト
12:反射型尾灯 13:手押しハンドル
14a:起動用スイッチ 14b:停止用スイッチ
15:ハンドルバー 16a,16b:後輪
17:走行用駆動モータ 21:ステアリング機構
22:スイアリングモータ(ステップモータ)
24:リング型スイッチ 25,26:受信機
27:前輪 28:バッテリ 30:送信機
38:制御ボックス 40:モータ制御回路
43a,43b:検波回路 48:差動増幅器
49,53:バッファ増幅器
50:ステッピングモータ駆動制御回路
52:加算増幅器 54:DCモータ駆動制御回路
55:タコジェネレータ 56:近接制止回路
57:遠離制止回路 58:加減速停止回路
70:電源回路 75:回路遮断器
71:電源スイッチ釦 72,73:スイッチ
74:ソレノイド 76:マイクロスイッチ
80:電力供給盤 81:出力線
82:低バッテリ電圧表示回路 90:重り
91:平ゴムベルト 92:引っ掛け用フック
100:荷物運搬用籠 101:脚部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 先行者が携行する送信機から送信される誘導信号に追従して移動可能な自動追尾式飼犬先導車であって、車輌走行用の後輪と操舵用の前輪とを備えた車体と、その車体の両側方の対称な位置に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記誘導信号を受信する一対の受信機と、前記後輪を駆動する走行用駆動モータと、前記前輪を操舵するステアリングモータを含むステアリング機構と、前記走行用駆動モータ及び前記ステアリングモータに給電する電源用バッテリと、前記一対の各受信機がそれぞれ受信する前記誘導信号の強弱及びその差により、先行する送信機の位置と移動方向を検出して、その検出位置に応じて前記走行用駆動モータの起動,停止あるいは加減速を自動制御し、その移動方向に応じて前記操舵用のステアリングモータを自動制御するモータ制御手段と、犬の首輪に一端が繋着された犬鎖又は犬紐の他端を前記車体に繋留するための回転自在なリングとを備え、前記先行者が携行する送信機からの誘導信号を、前記1対の受信機により所定の受信領域内で受信して、前記送信機の位置と移動方向を検出しながらその誘導信号に追従して走行し、前記犬鎖又は犬紐を介して飼い犬の散歩を先導することを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項2】 請求項1記載の自動追尾式飼犬先導車において、前記車体に収納および引き出し可能であり、少なくとも前記走行用駆動モータの起動および停止用スイッチを備えた手押しハンドルを設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項3】 請求項1及び2記載の自動追尾式飼犬先導車において、前記走行用駆動モータの駆動による車体の走行速度の標準値を予め可変設定する手段を設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動追尾式飼犬先導車において、前記車体の表面の形状に合わせた形状をなし、該車体に着脱可能な荷物運搬用籠を設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自動追尾式飼犬先導車において、犬鎖又は犬紐を介して繋留される犬の体格及び索引力の差異に応じて車体の重量を変化させ得るように、該車体に着脱可能な各種重量の重りを設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動追尾式飼犬先導車において、犬鎖又は犬紐の他端を前記車体に繋留するための回転自在なリングを前記車体に保持する部材が予め設定した値を超える引っ張り力を受けたときに、それを感知して前記走行用駆動モータを停止させ、緊急停車させる手段を設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動追尾式飼犬先導車において、次の(a)乃至(f)のいずれかの時に、それを検知して前記走行用駆動モータを停止させ、緊急停車させる手段を設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
(a)前記送信機の電源が切られた時、(b)前記車体が前記受信機による前記送信機からの誘導信号の予め設定された受信可能領域を外れて走行を始めるか、あるいは前記送信機の位置に近接し過ぎるか、該送信機から離れ過ぎた時、(c)前記車体の先端に設けた緩衝用バンパが動物又は物体に衝突した時、(d)上り坂登坂中等に設定限度以上の負荷が前記走行用駆動駆動モータにかかった時、(e)下り坂降坂中等に設定限度以上の速度で前記走行用駆動モータが回転を始めた時、(f)送信機又は飼犬先導車に何らかの故障が発生した時、
【請求項1】 先行者が携行する送信機から送信される誘導信号に追従して移動可能な自動追尾式飼犬先導車であって、車輌走行用の後輪と操舵用の前輪とを備えた車体と、その車体の両側方の対称な位置に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記誘導信号を受信する一対の受信機と、前記後輪を駆動する走行用駆動モータと、前記前輪を操舵するステアリングモータを含むステアリング機構と、前記走行用駆動モータ及び前記ステアリングモータに給電する電源用バッテリと、前記一対の各受信機がそれぞれ受信する前記誘導信号の強弱及びその差により、先行する送信機の位置と移動方向を検出して、その検出位置に応じて前記走行用駆動モータの起動,停止あるいは加減速を自動制御し、その移動方向に応じて前記操舵用のステアリングモータを自動制御するモータ制御手段と、犬の首輪に一端が繋着された犬鎖又は犬紐の他端を前記車体に繋留するための回転自在なリングとを備え、前記先行者が携行する送信機からの誘導信号を、前記1対の受信機により所定の受信領域内で受信して、前記送信機の位置と移動方向を検出しながらその誘導信号に追従して走行し、前記犬鎖又は犬紐を介して飼い犬の散歩を先導することを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項2】 請求項1記載の自動追尾式飼犬先導車において、前記車体に収納および引き出し可能であり、少なくとも前記走行用駆動モータの起動および停止用スイッチを備えた手押しハンドルを設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項3】 請求項1及び2記載の自動追尾式飼犬先導車において、前記走行用駆動モータの駆動による車体の走行速度の標準値を予め可変設定する手段を設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動追尾式飼犬先導車において、前記車体の表面の形状に合わせた形状をなし、該車体に着脱可能な荷物運搬用籠を設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自動追尾式飼犬先導車において、犬鎖又は犬紐を介して繋留される犬の体格及び索引力の差異に応じて車体の重量を変化させ得るように、該車体に着脱可能な各種重量の重りを設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動追尾式飼犬先導車において、犬鎖又は犬紐の他端を前記車体に繋留するための回転自在なリングを前記車体に保持する部材が予め設定した値を超える引っ張り力を受けたときに、それを感知して前記走行用駆動モータを停止させ、緊急停車させる手段を設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動追尾式飼犬先導車において、次の(a)乃至(f)のいずれかの時に、それを検知して前記走行用駆動モータを停止させ、緊急停車させる手段を設けたことを特徴とする自動追尾式飼犬先導車。
(a)前記送信機の電源が切られた時、(b)前記車体が前記受信機による前記送信機からの誘導信号の予め設定された受信可能領域を外れて走行を始めるか、あるいは前記送信機の位置に近接し過ぎるか、該送信機から離れ過ぎた時、(c)前記車体の先端に設けた緩衝用バンパが動物又は物体に衝突した時、(d)上り坂登坂中等に設定限度以上の負荷が前記走行用駆動駆動モータにかかった時、(e)下り坂降坂中等に設定限度以上の速度で前記走行用駆動モータが回転を始めた時、(f)送信機又は飼犬先導車に何らかの故障が発生した時、
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図15】
【図12】
【図14】
【図16】
【図2】
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【図12】
【図14】
【図16】
【公開番号】特開平10−171533
【公開日】平成10年(1998)6月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−327216
【出願日】平成8年(1996)12月6日
【出願人】(596047171)コスモ・イーシー株式会社 (12)
【公開日】平成10年(1998)6月26日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)12月6日
【出願人】(596047171)コスモ・イーシー株式会社 (12)
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