説明

自動釣菌装置

【課題】釣菌予定の細菌コロニーに対しての釣菌実績を把握することができる、自動釣菌装置を提供する。
【解決手段】細菌コロニーが含まれたシャーレの画像を撮影するカメラ110と、細菌コロニーを検出し、検出した細菌コロニーを特徴量に基づき分類する、操作部コンピュータ101の細菌コロニー分類処理部と、目的の細菌コロニーを釣菌する釣菌棒111とを備え、釣菌前後のシャーレの画像を比較して、目的の細菌コロニーの釣菌が不十分または未実施の場合、警告を発する自動釣菌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症診断あるいは薬剤感受性診断などの細菌検査のための診断検体前処理において、培地、特にシャーレに混在して培養した複数種の細菌コロニーを撮影し、その撮影画像をもとに細菌コロニーを分類し、特定種類の細菌コロニーを釣菌する自動釣菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症治療において、起炎菌を同定し、抗生剤に対する感受性を迅速に測定し、効果のある薬剤を決定し治療方針をたてることは適正な抗菌薬治療のために重要である。通常は提出された検体を培地に塗布して培養し、形成された細菌コロニーを釣菌して生理食塩水などに浮遊させ菌懸濁液を調製し、同定・薬剤感受性検査装置の測定用デバイスに接種する流れをとる。
【0003】
同定・感受性検査においては、正確な結果を得るためには測定用デバイスへの接種菌量を正確かつ再現性よく所定の濃度(菌量)にすることが必須である。多くの場合、所定の菌量を得るために、シャーレ上に生育した細菌コロニーの中からいくつかの同一種の細菌コロニーを複数選択して釣菌し、それを1つの容器中で生理食塩水などの液体中にて懸濁し、濁りあるいは不透明度を測定して所定の濃度(菌量)に調製する。
【0004】
混合する細菌コロニーの種類は同一でなければならないが、同一のシャーレ上に複数種類の細菌コロニーが生育しているのが普通であり、この中から同一種類の細菌コロニーを選択するにあたっては、検査技師に高い技術が要求されている。また、大小さまざまな大きさの細菌コロニーから複数選択するため、所定の濁度にするためには一旦調製後、細菌コロニーの追加や、希釈のため生理食塩水の添加が必要である。細菌コロニーの追加が必要となった場合は、その検体を再びインキュベータに入れ細菌の成長を待つ必要があるため、煩雑で時間がかかる。大規模な病院などでは、これらの処理を大量に行う必要があり、自動化する装置および手法が求められている。
【0005】
さらに、同定・薬剤感受性検査においても、その他の検体検査同様、検査で使用した菌懸濁液がどのようなプロセスで作成されたかを示すトレーサビリティ情報が求められ、常に遡って確認できるようにしておかなければならない。
【0006】
トレーサビリティ情報の保持および提供については、特許文献1に「作業者が使用できる、試料を自動でピペッティングする装置であって、ピペッティング時に試料を入れる種々の容器に関するデータを記録することによって、実行する分析についてトレーサビリティを完全にできる装置を提供することにある」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−500599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
同定・感受性検査において、大量の検体を効率的に処理し正確な結果を出力するには、細菌検査前処理装置により作成された菌懸濁液が、所望の一菌種を必要量採取して作成されたものであることが前提となる。
【0009】
所望の一菌種を必要量採取したかどうかについては、特許文献1では、分類結果についての履歴を保持している。しかし、採取予定の履歴が残っていても、実際にそれら全てを採取したかどうかはわからない。つまり、「釣菌予定」の細菌コロニーに対しての「釣菌実績」が残されていない。これでは、作成した菌懸濁液の組成を保証することができない。
【0010】
また、同定・薬剤感受性検査の結果、細菌種が特定できなかった場合、釣菌した細菌コロニーがどのようなものであったかを、遡って目視確認したい場合がある。しかし、現在は、菌懸濁液調製のために採取した細菌コロニーがどれであったかがわからないため、原因追究が困難となっている。
【0011】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、「釣菌予定」の細菌コロニーに対しての「釣菌実績」を把握することができる、自動釣菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の自動釣菌装置は、釣菌前後のシャーレの画像を比較して、目的の細菌コロニーの釣菌が不十分または未実施の場合、警告を発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同一シャーレの釣菌前後の画像比較に基づき、釣菌予定の細菌コロニーが実際に採取されたかどうかを確認することができる。また、この結果を保持することで、釣菌結果の信頼性を保証する情報を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、培養した菌を釣菌などの目的で選択する際の操作フローの一例を示す図。
【図3】本発明の実施例に係わるもので、操作部コンピュータ内部の処理を示すブロック図。
【図4】本発明の実施例に係わるもので、判別処理フローの一例を示す図。
【図5】本発明の実施例に係わるもので、釣菌前後の細菌コロニーの画像の一例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係わるもので、保持する履歴情報の構成の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係わるもので、履歴情報を対象検体すべてについて表示させた画面の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例に係わるもので、履歴情報をシャーレごとに表示させた画面の一例を示す図。
【図9】本発明の実施例に係わるもので、履歴情報をシャーレごとに画像とともに表示させた画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するに最良の形態を以下に示す。なお、本形態は発明の理解のために用いるものであり、本実施例の形態に権利範囲を限定するものではない。
【0016】
以下、本発明の一例を示す実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の自動釣菌装置の全体構成を示す図である。被験者の生体試料から採取した検体が塗布され、細菌コロニーが発育した状態のシャーレを、検査技師が検体供給・搬出ユニット105に設置する。このシャーレは、画像撮影ユニット106へ運ばれ、高角照明109及び低角照明115を当てカメラ110でその画像を取る。なお、この際に収集する画像は、高角照明109及び低角照明115の角度や方式を変え、後の画像処理に必要となる複数の画像を収集する。ここで、高角照明109及び低角照明115は両方用いる必要は無く、いずれか一方でもよいし、図示しないが、必要に応じてシャーレの下方に透過型照明を用いてもよい。
【0018】
収集した画像は制御部コンピュータ104から操作部コンピュータ101へ転送される。画像収集を完了したシャーレは、釣菌・菌懸濁液調製ユニット107へ移動する。これと同時に、操作部コンピュータ101では、収集した画像をもとに、シャーレ内に存在する細菌コロニー個々の位置を検出し、分類を行う。分類された結果は、操作コンソール102に表示される。検査技師は、表示された分類結果を見て、釣菌対象細菌コロニーを選択・指示する。操作部コンピュータ101は、検査技師が指定した全ての釣菌対象細菌コロニーの座標を計算し、釣菌・菌懸濁液調製ユニット107にデータを転送する。釣菌・菌懸濁液調製ユニット107では、カメラ113を使って、転送された座標データに従い移動してきたシャーレの位置を決め、釣菌棒111により指定された細菌コロニーを全て釣菌する。釣菌を終えたら、カメラ113で釣菌後のシャーレの画像を撮影する。釣菌後のシャーレは検体供給・搬出ユニット105へ格納する。釣菌棒111に付着させた細菌コロニーを菌懸濁液調製容器112に入れ、所定の濃度に液を調製し菌懸濁液を作成する。図では、菌懸濁液調製容器112が複数個用意されている状態を示している。釣菌・菌懸濁液調製ユニット107に示す矢印は、釣菌棒111の動きを示している。
【0019】
以上の動作のうち、検体供給・搬出ユニット105,画像撮影ユニット106,釣菌・菌懸濁液調製ユニット107の制御は、制御部コンピュータ104により統括的に制御する。また、収集した画像、あるいは細菌コロニー検出座標など、菌懸濁液調製までの過程を示す情報は、履歴保持部103に格納し、必要に応じて外部システム108へ送信する。外部システム108と操作部コンピュータ101は、検体情報などのやり取りも行う。
【0020】
次に、本発明の自動釣菌装置を使用し、検査技師が細菌コロニーを釣菌の目的で選択・指示する際の操作の一例を図2を用いて説明する。
【0021】
まず検査技師は、操作コンソール102を介して自動検出・分類された画像を見て、分類結果が検査技師の見立てと同じかどうかを確認する(S201)。もし、自動分類結果が検査技師の見立てと異なる場合は(S202)、自動分類結果を調整するかどうか判断する(S203)。分類結果を調整する場合は、再分類のための指示を操作コンソール102から入力する(S204)。操作部コンピュータ101は、入力された指示に従い再度結果を表示する。S201からS204の処理を、検査技師の見立てに合うまで繰り返し実行する。しかし、自動分類結果が検査技師の見立てと合わない場合は、再分類を止め、検査技師が一つ一つ釣菌すべき細菌コロニーを画面から選択・指示する場合もある(S205)。
【0022】
このようにして、釣菌対象とする細菌コロニーを選択し終えたら、次に検査技師は、菌懸濁液を作製するのに適切な数(量)の細菌コロニーが存在するかどうかを確認する(S206)。適切な量の細菌コロニーを選択できている場合は、釣菌を指示する(S207)。もし、適切な量の細菌コロニーを選択できていない場合は、釣菌処理をしても無駄なので、再度培養し直すべく、釣菌不実行を指示する(S208)。検査技師は、一連の処理を全検体について行う。
【0023】
次に、操作部コンピュータ101内の処理部の構成を図3により説明する。データ入出力部301は、操作コンソール102,履歴保持部103,制御部コンピュータ104、および外部システム108とのデータ入出力を行う。細菌コロニー画像処理部302は、シャーレの画像から孤立した細菌コロニーを検出したり、個々の細菌コロニーの座標を計算したりする。細菌コロニー分類処理部303は、細菌コロニー画像処理部で検出した全ての細菌コロニーを対象に、特徴量を抽出し、分類を行う。また、表示細菌コロニー数調整処理も行う。釣菌結果判別処理部304は、釣菌予定と釣菌実績を画像比較により行う。これについては、後で詳細に説明する。履歴データ処理部305は、検体ごとの細菌コロニーの分類条件や分類結果,釣菌結果を履歴保持部103に格納する。合わせて、履歴情報を編集し、データ入出力部301を介して、操作コンソール102や外部システム108へ出力する。これについても、後で詳細に説明する。
【0024】
本発明の主要部である釣菌結果判別処理部304について、釣菌前後のシャーレの画像を比較し、シャーレ内の釣菌予定の細菌コロニー一つ一つについて、その釣菌実績を判別する手順を図4を用いて説明する。
【0025】
釣菌処理実施後、釣菌後のシャーレの画像をカメラ113で撮影し、撮影に成功したかどうかを判別する(S401)。成功していない場合には、釣菌形跡の有無判別不可として、終了する。この画像撮影は、カメラ110で釣菌前に撮影したときと同様の照明条件で撮影する。次に、撮影したシャーレの検体情報をもとに、撮影済の釣菌前画像を履歴保持部103より検索する(S402)。ここで、検体情報とは、例えば、検体を特定するIDである。
【0026】
釣菌前の画像データが存在しない場合には、釣菌形跡の有無判別不可として、終了する(S405)。釣菌前の画像データが存在した場合は、シャーレ内の釣菌指示された細菌コロニー一つ一つの座標を元に釣菌後画像を検索する(S403)。この情報は、履歴保持部103に格納されている。
【0027】
まずは、釣菌予定の細菌コロニーの座標を取り出し、釣菌後画像の同じ座標位置周辺の孤立コロニーを抽出できたかどうかを判別する(S404)。このとき、孤立コロニー抽出に失敗した場合は、存在していた細菌コロニーを全て採取できたと見なし、釣菌形跡ありとする(S406)。
【0028】
一方、釣菌後画像より孤立コロニーを抽出できた場合は、特徴量を計算する(S407)。細菌コロニーの場合は、明度や彩度などの色情報、面積や新円の度合いなどの形状や輪郭などを特徴量とする。そして、釣菌前後で、これら特徴量に顕著な差異が生じたかどうかを判断する(S408)。顕著な差異が見られた場合は、釣菌形跡ありとする(S406)。もし、顕著な差異が見られなかった場合は、釣菌していない可能性が高いとみて、警告を付与する(S409)。警告には、特徴量がほぼ一致している場合の「釣菌未実施」や、特徴量のうち面積や新円の度合いが異なる、あるいは輪郭がことなる場合の「一部釣菌」などがある。以上の処理を、全細菌コロニーについて実施する(S410)。
【0029】
ここで、顕著な差異とは、例えば、特徴量毎の差異の量を比較し、閾値以上の差のことである。
【0030】
上記フローにおいて、釣菌予定の細菌コロニーの座標を取り出し、釣菌後画像の同じ座標位置周辺の孤立コロニーを抽出した結果、失敗であった場合(S405)の画像例を図5の座標位置周辺502に示す。図5の座標位置周辺502は釣菌棒111により完全に採取された場合の画像である。もとの細菌コロニーは、501のように確認される。
【0031】
このように、釣菌予定の細菌コロニーの座標に何も存在しない場合は、きれいに細菌コロニーが採取できたと判断することができる。また座標位置周辺503は、釣菌前後で特徴量に顕著な差異が見られた場合の画像の例である。この場合、釣菌形跡ありとする(S406)。座標位置周辺504は、釣菌手段により釣菌された形跡があるが、細菌コロニーがまだ多く残っている状態である。このような場合は、当初の予想通りの釣菌量に達しない場合があるため、「一部釣菌」の警告を付与する(S409)。
【0032】
次に、判別処理の結果、警告を発生させる場合について説明する。釣菌処理実施後、速やかに警告を発する必要がある。警告の発生が遅れると、無駄な菌懸濁液調製を実施してしまう可能性があるためである。警告内容が「一部釣菌」の場合は、菌懸濁液の調製で、規定の濃度のものを作成できる場合もあるが、警告内容が「釣菌未実施」の場合は、菌懸濁液の調製を止めた方が効率が良い。このような場合は、警告情報を制御部コンピュータ104に転送し、釣菌・菌懸濁液調製ユニット107での対象検体の処理中断を指令する。警告を知らせる方法としては、音声による通知,画面上での通知などがある。
【0033】
このようにすることで、釣菌予定の細菌コロニー一つ一つについて、その釣菌結果がどうであったかを判定することができるようになる。そして、釣菌に何かしらの問題がある場合は、警告情報を付与することで、検査技師の判断に寄与し効率を上げることができる。
【0034】
次に、履歴データ処理部305について、図6から図9を用いて説明する。履歴データ処理部305は、検体ごとの細菌コロニーの分類条件や分類結果,釣菌結果を履歴保持部103に格納する。合わせて、履歴情報を編集し、データ入出力部301を介して、操作コンソール102や外部システム108へ出力する。
【0035】
履歴データ処理部305が格納する情報は、検体ごとの細菌コロニーの分類条件や分類結果、そして、釣菌結果判別処理部304で判別した釣菌結果と警告である。図6に履歴情報の構成例を示した。図6の情報は、シャーレ単位のものである。検体情報は、検体全体に関する情報で、主に外部システム108より入力する。
【0036】
分類時の条件に関する分類情報,釣菌指示情報は、いずれも検査技師が分類結果を閲覧し釣菌指示を行う際に確定,格納する。釣菌結果をまとめた釣菌結果情報は、釣菌結果判別処理部304の結果を格納する。釣菌形跡有無は、複数の細菌コロニーのうち、釣菌形跡が一つ以上あれば「有」とする、釣菌率は、(釣菌形跡有の細菌コロニー数/釣菌予定細菌コロニー数)で求めた百分率とする。釣菌警告有無は、複数の細菌コロニーのうち、一つでも警告があれば「有」とする。
【0037】
細菌コロニー情報は、シャーレ内に存在する個々の細菌コロニーに関する情報で、座標のほか、釣菌前情報と釣菌後情報を持つ。釣菌前情報としては、特徴量,釣菌対象か否か、釣菌指定者が自動判定かユーザ指定かの区別を持つ。釣菌後情報としては、特徴量,釣菌形跡有無,釣菌警告内容を保持する。このような構成で、全ての検体について全ての細菌コロニー情報を保持する。また、この情報と関連付けて、釣菌前後の画像データを保持する。
【0038】
ここで、履歴保持部103に格納されている履歴データの加工及び表示例を示す。
【0039】
図7は、検体ごとに履歴データを表示した例である。自動釣菌装置が作成する菌懸濁液がどのような釣菌過程を辿ったかを一覧するのに適した表示である。シャーレごとに、シャーレIDなどの検体識別子と試料作成日時,釣菌予定細菌コロニー数,釣菌率,釣菌警告有無を表示し、どの程度の釣菌実績であったかの概要を知らせる。各タイトル見出し701を押下することで、表の並べ替えもできる。例えば、警告ありのもののみを閲覧したい場合の操作性を良くする。また、検索機能702も備える。これにより、特定の検体の状況を即座に探し出すことが可能となる。詳細ボタン703,画像ボタン704は、次に説明する、シャーレ毎の詳細情報表示画面へ遷移するボタンである。個々のシャーレ内の細菌コロニーについて、詳細情報を見る場合に利用する。
【0040】
図8は、図7で検体を指定し詳細ボタン703を押下した際に表示される画面である。選択されたシャーレ内の全ての細菌コロニーの情報を一覧表示する。検体情報としては、シャーレIDなどの検体識別子,画像取得日時,分類数,分類時の閾値,釣菌日時,釣菌率,釣菌警告有無を表示する。そして、一行につき一つの細菌コロニーの情報を表形式で表示する。801のタイトル見出しは次の通りである。細菌コロニーの座標,釣菌前情報として、釣菌対象か否か、釣菌指定者の別(自動:A,ユーザ指定:U),特徴量(1)〜(N)、釣菌後情報として、釣菌形跡有無,釣菌警告内容,特徴量(1)〜(N)である。このうち、釣菌対象等のタイトルで並べ替えすることで、目的の細菌コロニーを纏めて閲覧することができる。画面中の検体一覧ボタン806は、図7の検体一覧画面に戻るボタンである。画面中の画像ボタン807は、次に説明する画像閲覧画面へ遷移するボタンである。画像データを閲覧しながら、個々の細菌コロニーを検討する場合に利用する。
【0041】
図9は、図7でシャーレを指定し画像ボタン704を押下した際、あるいは、図8で画像ボタン807を押下した際に表示される画面である。選択されたシャーレについて、釣菌前後の画像データを並べて表示する。釣菌前画像には、釣菌対象の細菌コロニーに印をつける。釣菌後画像には、釣菌形跡ありの細菌コロニー位置に印をつける。下部の表には、ユーザがマウスなどで指定した細菌コロニーに関する情報を表示する。この画面では、画像データを閲覧しながら細菌コロニーの属性や釣菌結果を閲覧できるため、同定・薬剤感受性検査で疑念が生じた場合などに、遡ってどのような細菌コロニーをどの程度釣菌したかを、画像と詳細情報を閲覧しながら確認することができる。画面中の検体一覧ボタン903は、図7の検体一覧画面に遷移するボタン、画面中の詳細ボタン904は、図8の詳細画面に遷移するボタンである。
【0042】
本発明により、自動釣菌結果を保証する情報をいつでも提供することが可能となる。万が一、釣菌時に予定と異なる動作をした場合は、警告が発せられるので、ユーザは容易に気付くことができ、信頼性の不確実な菌懸濁液を作成する危険を回避できる。また、どの細菌コロニーを使用して菌懸濁液を作成したか、その詳細データをいつでも提供できるため、検査のトレーサビリティを確保できるようになる。詳細データは、検体全体での一覧、シャーレごとに細菌コロニー全体の一覧、そして、画像データでの比較と段階的に閲覧できるため、操作性が良く、多数の細菌コロニーがシャーレの中に存在していても、容易に個別に追跡できる。
【0043】
なお、本実施例は、図1において、画像撮影ユニット106と釣菌・菌懸濁液調製ユニット107が別個にあるシステム構成で説明したが、これらが一体となった構成での実施も同様に可能である。
【0044】
本発明により、自動釣菌処理時に所望の細菌コロニーを全て釣菌できたかどうかをユーザにアラームとして警告できるようになるので、ユーザの確認作業が容易となる。万が一アラームが出た場合も、不足なのか、予定外のものを釣菌したのかの区別がつくため、その後のユーザの対処判断が容易となる。たとえば、不足の場合は、不足の程度により、再度釣菌する必要がないと判断するかもしれない。また、予定外のものを採取してしまった場合も、その場所によっては、ほかの細菌が存在しない培地を突いた場合などは、そのまま菌懸濁液作成に移って良い場合もある。このような対処判断に有用な情報を提供できるため、作業を軽減させることができる。また、同定・薬剤感受性検査結果の信頼性を保証する情報が提供可能となる。さらに、同定・薬剤感受性検査結果で特定が困難であった場合に、遡って細菌コロニーを確認できるようになり、検査技師の判断を補佐できるようになる。
【符号の説明】
【0045】
101 操作部コンピュータ
102 操作コンソール
103 履歴保持部
104 制御部コンピュータ
105 検体供給・搬出ユニット
106 画像撮影ユニット
107 釣菌・菌懸濁液調製ユニット
108 外部システム
109 照明
110,113 カメラ
111 釣菌棒
112 菌懸濁液調製容器
301 データ入出力部
302 細菌コロニー画像処理部
303 細菌コロニー分類処理部
304 釣菌結果判別処理部
305 履歴データ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌コロニーが含まれたシャーレの画像を撮影する撮影手段と、
細菌コロニーを検出し、検出した細菌コロニーを特徴量に基づき分類する分類手段と、
目的の細菌コロニーを釣菌する釣菌手段と、を備え、
釣菌前後のシャーレの画像を比較して、目的の細菌コロニーの釣菌が不十分または未実施の場合、警告を発することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項2】
細菌コロニーが含まれたシャーレの画像を撮影する撮影手段と、
細菌コロニーを検出し、検出した細菌コロニーを特徴量に基づき分類する分類手段と、
目的の細菌コロニーを釣菌する釣菌手段と、を備え、
釣菌前後のシャーレの画像を比較して、目的の細菌コロニーの釣菌結果を求めることを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項3】
請求項2において、
シャーレ内の細菌コロニーの少なくともいずれかについて、
分類手段による分類時の特徴量,分類結果,釣菌予定の細菌コロニーの座標位置,釣菌結果,釣菌結果に基づく警告の有無,釣菌後の釣菌予定の細菌コロニーの座標位置の特徴量,釣菌前後のシャーレの画像のうち少なくとも一つを比較結果の履歴情報として保持していることを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項4】
請求項2において、
釣菌前の画像と、釣菌後の画像を表示することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項5】
請求項4において、
目的の細菌コロニーの座標位置周辺をマーキングすることを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項6】
請求項4において、
釣菌前の画像と、釣菌後の画像を保存することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項7】
請求項4において、
釣菌前の画像と、釣菌後の画像を、目的の細菌コロニーの座標位置周辺をマーキングして、保存することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項8】
請求項2において、
釣菌後のシャーレ内における、目的の細菌コロニーの座標位置周辺に細菌コロニーが見つからなかった場合、釣菌形跡有り、と判断することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項9】
請求項2において、
釣菌後のシャーレ内における、目的の細菌コロニーの座標位置周辺に細菌コロニーが見つかった場合、釣菌前後の細菌コロニーの特徴量の差異を比較し、差異が特徴量ごとの閾値以上である場合、釣菌形跡有り、と判断することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項10】
請求項2において、
釣菌後のシャーレ内における、目的の細菌コロニーの座標位置周辺に細菌コロニーが見つかった場合、釣菌前後の細菌コロニーの特徴量の差異を比較し、差異が顕著でない場合、警告を発することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項11】
請求項3において、
これまで処理したシャーレについて、履歴情報を表示することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項12】
請求項11において、
シャーレ単位で履歴情報を表示することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項13】
請求項10において、
シャーレ毎に、釣菌予定の細菌コロニー数,釣菌率、及び警告を発したかどうかを表示することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項14】
請求項2において、
シャーレ内の細菌コロニーの少なくともいずれかについて、
分類手段による分類時の特徴量,分類結果,釣菌予定の細菌コロニーの座標位置,釣菌結果,釣菌結果に基づく警告の有無,釣菌後の釣菌予定の細菌コロニーの座標位置の特徴量,釣菌前後のシャーレの画像の少なくともいずれかを表示することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項15】
請求項2において、
シャーレ内の各細菌コロニーについて、
分類手段による分類時の特徴量,分類結果,釣菌予定の細菌コロニーの座標位置,釣菌結果,釣菌結果に基づく警告の有無,釣菌後の釣菌予定の細菌コロニーの座標位置の特徴量,釣菌前後のシャーレの画像の少なくともいずれかを表示することを特徴とする自動釣菌装置。
【請求項16】
請求項2において、釣菌前後のシャーレの画像を比較の履歴を保持することを特徴とする自動釣菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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