説明

自動2輪車のフレ―ム

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、エアクリーナーを兼ねたモノコック構造部分を有する自動2輪車のフレームに関する。
【0002】
【従来の技術】自動2輪車のフレームとして、その一部または全体を薄肉中空状のモノコック構造で形成することが行なわれている。この種の従来のフレーム構造は、例えば、特開昭63−269792号公報に開示されている。また、このモノコック構造を有する自動2輪車のフレームにおいては、スペースの有効活用の観点から、モノコック構造の部分を利用してエンジン吸気のエアクリーナーを形成することが提案されている。エアクリーナーとして使用されるフレーム構造は、例えば、実公昭46−17289号公報に開示されている。ところで、エアクリーナーを兼ねる自動2輪車のフレームでは、クリーナーエレメントの掃除や交換等のメインテナンスの観点から、前記モノコック構造部分にクリーナーエレメント出し入れ用の開口を設ける必要がある。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】しかし、従来のエアクリーナーを兼ねたモノコック構造部分を有する自動2輪車のフレームにあっては、モノコック構造の一部にクリーナーエレメント出し入れ用の開口を設けるとその部分の剛性や強度が低下するので、前記開口の回りに大掛かりな補強部材を追加する必要が生じ、車体の小型軽量化が難しいという解決すべき課題がある。
【0004】本考案はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本考案の目的は、フレーム自体でエアクリーナーを形成してクリーナーエレメントのろ過面積を充分に確保できるとともに、フレームの内部スペースの有効活用による構造の簡単化、小型軽量化及び部品点数の削減を図ることができ、さらに、フレームの剛性低下を招くことなく、クリーナーエレメントのメインテナンス性を向上させることができる自動2輪車のフレームを提供することである。
【0005】
【課題解決のための手段】上記目的を達成するため、本願考案は、ステアリングヘッドからエンジンの上方を通過した後に下方へ曲がってエンジン後側の車体中央部へ延びるフレーム前部が1本の薄肉中空状のモノコック構造で形成され、前記モノコック構造の前部に空気導入用の吸入ダクトが接続される空気入口が形成され、前記モノコック構造の後部にエンジンへの吸気通路が接続される空気出口が形成され、前記モノコック構造の前記空気入口と前記空気出口との間の部分の上面には該モノコック構造を横断する所定幅の開口が形成されるとともに該開口の前後の縁部には相対向する挟持部が形成され、空気ろ過性のエレメント部材と該エレメント部材の周囲に固着された縁部材と該縁部材の上辺に固定されたスペーサーとから成るクリーナーエレメントを前記開口からモノコック構造内へ挿入することにより該モノコック構造内部を前側のダーティーサイドと後側のクリーンサイドに仕切り、前記スペーサーを前記挟持部の間に挟んだ状態でボルト締結することにより前記クリーナーエレメントを前記モノコック構造内に位置決め固定することを特徴とする。
【0006】
【実施例】以下、図面を参照して本考案を具体的に説明する。図1は本考案を適用したフレームの一実施例を備えた自動2輪車の模式的側面図である。図1において、自動2輪車は、フレーム1の前端上部のステアリングヘッド2に軸支された前フォーク3に前車輪4を取り付け、フレーム1の中央下部のスイングアームブラケット5に軸支されたスイングアーム6に後車輪7を取り付け、フレーム1の前下部に取り付けたエンジン8で前記後車輪7を駆動するとともに前記前フォーク3の上端部に固定したハンドル9で操向するように構成されている。
【0007】前記スイングアーム6とフレーム1の後上部との間には後輪荷重を支持するためのリヤサスペンション10が装着され、フレーム1の後上部には運転者のシート11が装着されている。図1において、12は車体前部を覆うためのカウリング、13はフレーム1の前記シート11の下方に装着された燃料タンク、14はエンジン8から車体下部を通して車体後部へ延びる排気管を示す。
【0008】図2は図1中のフレーム1の構成を示す模式的斜視図である。図1および図2において、前記フレーム1は、前記ステアリングヘッド2と、該ステアリングヘッド2から前記エンジン8の上方を通して車体中央部へ延びるフレーム前部15と、車体中央部に配設され前記フレーム前部15の後端部に接続される箱部材16と、車体中央部から後方へ延びるフレーム後部17と、前記箱部材16に固定された左右の前記スイングアームブラケット5と、を溶接等で一体化した構造をしている。このフレーム1は、アルミ系合金または鉄系合金のプレス成形品やパイプ材を溶接、接着またはボルト締結などで一体的に組み付けた構造を有している。
【0009】前記フレーム前部15はエンジン8の上方を通る1本の薄肉中空状のモノコック構造で構成されている。前記フレーム後部17は、略水平に後方へ延びる左右2本のシートレール18と、車体中央部の下部から後上がりに延びて前記各シートレール18の後端部または中間部に結合される左右2本の補強メンバー19とで形成されている。図示の例では、左右のシートレール18の前端は箱部材16に固定され、左右の補強メンバー19の前端は左右のスイングアームブラケット5を介して箱部材16に固定されている。なお、前記シートレール18および前記補強メンバー19は、直接的に前記箱部材16に接続してもよく、また、スイングアームブラケット5などの他の部材を介して前記箱部材16に接続してもよい。
【0010】薄肉中空状のモノコック構造で構成された前記フレーム前部15は、エンジン8上方を通過した後の後半部分が下方へ曲がった湾曲形状をしており、その後端下部が前記箱部材16の上面に結合されている。このモノコック構造部分(フレーム前部)15はエンジン吸気のエアクリーナーを兼ねており、その前部の側面に形成された入口20には空気導入用の吸入ダクト21(図1)が接続され、その後部の傾斜部の下面に形成された出口22には気化器23(図1)を含むダウンドラフトタイプの吸気通路30(図1)が接続されている。前記吸入ダクト21の他端はカウリング12の前面に開口しており、空気吸入のために走行時のラム圧を利用できるように構成されている。エアクリーナーを兼ねる前記モノコック構造(フレーム前部)15の内部には、クリーナーエレメント24(図1)が着脱可能に装着されている。
【0011】図1および図2において、前記箱部材16は横長の直方体の中空体で形成されており、その両側端面(左右の端面)は開口している。この箱部材16の内部スペースは、バッテリー、アンティロックブレーキユニット、オイルタンク、冷却水タンクなどの比較的重量のある装備品のうちの1個または複数個(図示の例ではバッテリー)25(図1)を収納保持するために使用される。前記箱部材16の両側の開口端面には、ボルト等の締結手段によって蓋部材26、26が着脱可能に固定されている。前記箱部材16内の装備品25は、前記蓋部材26、26のいずれかを取り外すことにより、出し入れすることができる。なお、前記箱部材16の片側面のみに開口を設け、該開口に蓋部材26を着脱可能に締結する構造にしてもよく、また、該箱部材16の内部には、比較的重量物の他、所望の小型軽量の装備品を収納してもよい。
【0012】図3は前記モノコック構造部分15によって構成されたエアクリーナーの要部縦断面図であり、図4R>4は図3中の線4−4に沿った断面図である。図2〜図4R>4において、前記モノコック構造(フレーム前部)15の内部は、着脱可能に装着された前記クリーナーエレメント24によって、ダーティーサイド31とクリーンサイド32に仕切られている。前記入口20(図1、図2R>2)はダーティーサイド31に形成され、前記出口22(図1、図2)はクリーンサイド32に形成されている。
【0013】前記クリーナーエレメント24は、空気ろ過性のエレメント部材33と、該エレメント部材33の周囲に固着された縁部材34と、該縁部材34の一辺(上辺)に固定されたスペーサー36とで構成されている。このクリーナーエレメント24は、前記モノコック構造15の装着部分の断面に対応した形状(図示の例では四角形)の平盤状をしている。
【0014】一方、前記モノコック構造(フレーム前部)15の上面には、前記クリーナーエレメント24を着脱可能に装着するための開口37(図2)が形成され、さらに、該開口37を前後方向に挟んで対向する位置には、一対の挟持部38、39(図2、図3)が一体的に形成されている。本実施例では、図1および図2に示すように、前記クリーナーエレメント24をモノコック構造15内で前下方へ傾斜した姿勢で装着するように構成されている。前記一対の挟持部38、39はクリーナーエレメント24を固定するためのものである。
【0015】すなわち、前記クリーナーエレメント24は、これをモノコック構造15内に挿入した後、前記スペーサー36を前記挟持部38、39で挟み、該挟持部38、39および該スペーサー36をボルト40(図2R>2)で共締め締結することにより、モノコック構造15内に装着される。モノコック構造15の内部の両側面には、クリーナーエレメント24を装着する際にその両側の縁部材34を案内するための溝状のガイド部材41、42(図4)が固定されている。また、モノコック構造15の内部の底面には、挿入されたクリーナーエレメント24の下端が当接することにより、前記ダーティーサイド31と前記クリーンサイド32を密封するためのスポンジまたはゴム状弾性材等から成る密封部材43が固着されている。
【0016】本実施例では、前記クリーナーエレメント24のスペーサー36を締結するための挟持部38、39は、図3に示すように、前側の挟持部38はモノコック構造15の一部を外側へ折り曲げた耳部で形成され、後側の挟持部39は開口37に沿って溶接で固定された別の部材で形成されている。また、図2に示すように、前記スペーサー36を締結するために4本のボルト40が使用されており、したがって、前側の挟持部38およびスペーサー36のそれぞれには4箇所にボルト挿通孔が形成され、後側の挟持部39の対応する4箇所には各ボルト40をねじ込むための雌ねじが形成されている。なお、これらの雌ねじに代えて、ボルト挿通孔とナット(ウエルディングナット等)を設けてもよい。
【0017】図5は本考案を適用した自動2輪車のフレームの他の実施例におけるモノコック構造の要部を模式的に示す縦断面図である。本実施例においては、クリーナーエレメント24はモノコック構造(フレーム前部)15の内部を略直角に横切る方向に装着されており、スペーサー36を挟んで締結するための前後の挟持部38、39はいずれもモノコック構造15の一部を折り曲げた耳部で形成されている。本実施例は、これらの点で前述の実施例と相違するが、その他の部分では前述の実施例と実質上同じ構成を有している。したがって、それぞれ対応する部分を同一符号で示し、それらの詳細説明は省略する。
【0018】以上説明した各実施例によれば、フレーム1のモノコック構造15の部分にクリーナーエレメント24を出し入れするための開口37を設けるに際し、該開口37の相対向する位置にモノコック構造15と一体的の挟持部38、39を形成し、クリーナーエレメント24を装着する時に、該クリーナーエレメント24に設けたスペーサー36を前記挟持部38、39で挟みかつこれらをボルト40で共締め締結するように構成したので、モノコック構造15の前記開口37による剛性の低下を無くすことが可能となった。
【0019】また、フレーム1のモノコック構造15内にエアクリーナーを構成するので、余分のスペースを要することなく吸入空気の濾過面積を充分に大きく取ることが可能となり、濾過性能の向上および吸気抵抗の低減を図ることができた。さらに、モノコック構造をエアクリーナーボックスとして利用するので、部品点数の減少および車両の軽量化が可能となり、クリーナーエレメント24のメインテナンス性の向上も可能となった。
【0020】なお、以上の実施例では、フレーム1のモノコック構造15に対して、上方からクリーナーエレメント24を出し入れするように構成したが、このクリーナーエレメント24の出し入れ方向、したがって、開口37を形成する位置は、その他の方向(位置)に選定することもできる。
【0021】
【考案の効果】以上の説明から明らかなごとく、本考案の自動2輪車のフレームによれば、ステアリングヘッドからエンジンの上方を通過した後に下方へ曲がってエンジン後側の車体中央部へ延びるフレーム前部が1本の薄肉中空状のモノコック構造で形成され、前記モノコック構造の前部に空気導入用の吸入ダクトが接続される空気入口が形成され、前記モノコック構造の後部にエンジンへの吸気通路が接続される空気出口が形成され、前記モノコック構造の前記空気入口と前記空気出口との間の部分の上面には該モノコック構造を横断する所定幅の開口が形成されるとともに該開口の前後の縁部には相対向する挟持部が形成され、空気ろ過性のエレメント部材と該エレメント部材の周囲に固着された縁部材と該縁部材の上辺に固定されたスペーサーとから成るクリーナーエレメントを前記開口からモノコック構造内へ挿入することにより該モノコック構造内部を前側のダーティーサイドと後側のクリーンサイドに仕切り、前記スペーサーを前記挟持部の間に挟んだ状態でボルト締結することにより前記クリーナーエレメントを前記モノコック構造内に位置決め固定する構成としたので、フレーム自体でエアクリーナーを形成してクリーナーエレメントのろ過面積を充分に確保できるとともに、フレームの内部スペースの有効活用による構造の簡単化、小型軽量化及び部品点数の削減を図ることができ、さらに、フレームの剛性低下を招くことなく、クリーナーエレメントのメインテナンス性を向上させることができる自動2輪車のフレームが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案を適用したフレームの一実施例を備えた自動2輪車の模式的左側面図である。
【図2】本考案を適用した自動2輪車のフレームの一実施例の模式的斜視図である。
【図3】図2のフレームのモノコック構造の部分の縦断面図である。
【図4】図3中の線4−4に沿った断面図である。
【図5】本考案を適用した自動2輪車のフレームの他の実施例におけるモノコック構造の部分の縦断面図である。
【符号の説明】
1 フレーム
2 ステアリングヘッド
5 スイングアームブラケット
6 スイングアーム
8 エンジン
15 モノコック構造(フレーム前部)
16 箱部材
17 フレーム後部
18 シートレール
19 補強メンバー
20 エンジン吸気の入口
22 エンジン吸気の出口
23 気化器
24 クリーナーエレメント
30 吸気通路
31 ダーティーサイド
32 クリーンサイド
33 エレメント部材
34 縁部材
36 スペーサー
37 開口
38 挟持部
39 挟持部
40 締結手段(ボルト)
41 ガイド部材
42 ガイド部材
43 密封部材

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ステアリングヘッド(2)からエンジン(8)の上方を通過した後に下方へ曲がってエンジン後側の車体中央部へ延びるフレーム前部(15)が1本の薄肉中空状のモノコック構造で形成され、前記モノコック構造(15)の前部に空気導入用の吸入ダクト(21)が接続される空気入口(20)が形成され、前記モノコック構造(15)の後部にエンジン(8)への吸気通路(30)が接続される空気出口(22)が形成され、前記モノコック構造(15)の前記空気入口(20)と前記空気出口(22)との間の部分の上面には該モノコック構造を横断する所定幅の開口(37)が形成されるとともに該開口(37)の前後の縁部には相対向する挟持部(38、39)が形成され、空気ろ過性のエレメント部材(33)と該エレメント部材の周囲に固着された縁部材(34)と該縁部材の上辺に固定されたスペーサー(36)とから成るクリーナーエレメント(24)を前記開口(37)からモノコック構造(15)内へ挿入することにより該モノコック構造内部を前側のダーティーサイド(31)と後側のクリーンサイド(32)に仕切り、前記スペーサー(36)を前記挟持部(38、39)の間に挟んだ状態でボルト締結することにより前記クリーナーエレメント(24)を前記モノコック構造(15)内に位置決め固定することを特徴とする自動2輪車のフレーム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【登録番号】第2512878号
【登録日】平成8年(1996)7月9日
【発行日】平成8年(1996)10月2日
【考案の名称】自動2輪車のフレ―ム
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−92281
【出願日】平成3年(1991)10月15日
【公開番号】実開平5−34094
【公開日】平成5年(1993)5月7日
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【参考文献】
【文献】特開昭60−229882(JP,A)
【文献】特開昭55−164765(JP,A)