説明

自動CPR装置用胸パッド

本発明は、心肺蘇生術(CPR)の際に前胸壁に力を伝えるためのパッド装置に関し、前胸壁表面に位置決めされるように構成される少なくとも2つのパッド要素と、それら少なくとも2つのパッド要素を接続するヒンジ機構と、を有する。それら少なくとも2つのパッド要素は、患者がCPRを受けている際に加えられる力にヒンジ機構が協調的に反応するように、ヒンジ機構に可動的に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、心肺蘇生術(CPR)の際の前胸壁への力の伝達のためのパッド装置、及び、そのようなパッド装置を備えるCPR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
突然の心臓停止(SCA)は、西欧諸国での主要な死因の一つである。SCAの後に結果として生じる全身虚血は、広範囲の細胞プロセスを妨げ、緊急の医療的ケアが利用できなければ、深刻な細胞傷害及び死をもたらす。突然の心臓停止後の生存率は心臓停止1分毎に7〜10%で直線的に低下することが報告されている。
【0003】
心肺蘇生術(CPR)は、患者が突然の心臓停止を起こしたときにはいつでも行われ得る。その手術は、毎分約100回の割合の圧迫で患者の胸骨に規則正しく律動的な胸部圧迫を行うことで構成されるがこれに限定されるものではない。CPRの成功には、胸に圧力がかけられる必要があるが、適切な圧力による一貫した良質の手作業による胸部圧迫を施すことは、極めて困難となり得る。CPRは生存のための鍵となるため、信頼性が低く、頻繁に中断され、制御が困難で、且つ、ときには時間の掛かる手作業によるCPRに取って代わるべく、機械式の自動装置(A−CPR)が開発された。CPRによってもたらされる前壁外傷(anterior wall trauma)は、蘇生術後の生存者に特有の悪い共同因子となり得る。
【0004】
様々な自動CPR装置が市場に導入されている。第1のタイプのCPR装置は、カップを備えた加圧ロッドを患者の胸に押し付けるために空気力学等の技術を用いる。別のタイプの自動CPRは電動であり、胸部圧迫をもたらすために規則的に収縮する、患者の胸の周りの大きなバンドを用いる。圧迫周期は固定であり、良質の胸部圧迫が実現され得るように正確に制御される。
【0005】
米国特許出願公開第2004/0230140号明細書は、患者の胸に加圧パッドが押し付けられるタイプのA−CPRを開示する。そのパッドは小さく、丸形であり、小領域に力を集中させる。そのパッドは、水平に対して角度を形成する胸部で、そのパッドの一部のみを押すことによってさらに力が集中するように、その角度又は形状因子を適応させることはない。この胸部角度のため、その力は半径方向及び接線方向の成分を有し、そのパッドはその胸部に沿ってせん断変形する。さらに、使用中のパッドの移動も起こり得る。
【0006】
自動システムばかりでなく手動システムもしばしば、肋骨又は胸骨の骨折、皮膚損傷、及び、あらゆる種類の内部外傷のような外傷を引き起こす。CPR装置における重要な関心事は、長いセットアップ時間、装置の運転中の低い安定性、並びに、最適性能のためには不十分な力が加えられていることの忠告及び臨床的証拠を含む。既知の自動CPR装置で用いられる比較的“弱い”力の場合でさえ、深刻且つ致命的な被害が報告されている。パッドと前胸壁との間の接触不良、及び、胸の表面における低い安定性と高い局所的圧力によるCPRパッドのずれは、前胸壁及び側胸壁の外傷の高い発生率に関連付けられている。
【0007】
手動CPRについても、これらの問題が多く報告されている。訓練を受けた人たちであっても、効率的に力を伝えるために前胸壁に手を正確に位置付けるのは難しい。弱い力とCPRに関する外傷は何れも蘇生術の結果に大きな影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0230140号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
胸部圧迫の際の圧縮力の伝達を最適化するパッド装置、及び、そのようなパッド装置を備えるCPR装置を開発することが望ましい。
【0010】
また、患者に生じる外傷を最小限にするパッド装置を開発することが望ましい。さらに、CPRの全動作段階を通じて、患者の体の輪郭に密接に従うパッド要素を有する装置を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの関心事及び/又は他の関心事のうちの少なくとも1つに対処するために、本発明による、心肺蘇生術の際に前胸壁に力を伝えるためのパッド装置は、前胸壁表面に位置付けられるように構成される少なくとも2つのパッド要素と、それら少なくとも2つのパッド要素を接続するヒンジ機構と、を有し、それら少なくとも2つのパッド要素は、患者が胸部圧迫を受けている際に加えられる力にヒンジ機構が協調的に反応するように、ヒンジ機構に可動的に取り付けられる。
【0012】
複数のパッド要素を接続するヒンジ機構を有するパッド装置を提供することによって、力の最適な伝達が達成され得る。加えられた力、言い換えれば、圧縮力が加えられたときの前胸壁の反力に対するヒンジ機構の協調的な反応は、CPRの全段階を通じて前胸壁の輪郭にパッド要素が密接に従うのを可能にする。それ故に、ヒンジ機構は、前胸壁が継続的に追従され、蘇生術の途中の胸壁形状における変化を取り込むことを確かなものとする。
【0013】
パッドと前胸壁との間の接触不良が低い安定性及び胸の表面における高い局所圧をもたらす従来技術のシステムとは対照的に、本発明のパッド装置は、パッド要素がCPRの全段階を通じて前胸壁の輪郭に密接に従うのを可能にし、その結果、単位面積あたりの力を低減させる。付随する外傷の増大なく、より大きな力を加えることができる。このことは、顕著に改善し得る蘇生術の結果に決定的な役割を果たす。
【0014】
本発明の一態様において、少なくとも2つのパッド要素は、ヒンジ機構に枢動可能に取り付けられる。パッド要素のヒンジ機構に対する枢動動作が望ましい。圧縮の投与の際には、胸部形状及び胸壁形状における動的変化が起こり得る。パッド要素のヒンジ機構に関する枢動を可能にすることによって、パッド要素は、前胸壁の表面の変化に従うように構成される。
【0015】
本発明の別の態様では、少なくとも2つのパッド要素のうちの一方がヒンジ機構の第1部材に枢動可能に接続され、それら少なくとも2つのパッド要素のうちの他方がヒンジ機構の第2部材に枢動可能に接続される。ヒンジ機構における2つの部材に接続される2つのパッド要素を有することは、パッド要素の独立した枢動を可能にし、それによって、パッド装置が患者の胸の上で使用される場合に胸骨の両側における胸壁の動きをカバーする。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、それら少なくとも2つのパッド要素は、互いに平行な2つの第1ピボットのそれぞれの周りでヒンジ機構に枢動可能に接続される。
【0017】
望ましい態様では、パッド装置は、パッド装置をCPR装置の加力部材又はCPR補助器具に接続するための接続部を含む。そのパッド装置は、自動加力部材を有する自動CPR装置を用いてCPRを行うために使用され得る。また、そのパッド装置は、CPRの一環として胸部圧迫を手作業で行う人によっても使用され得る。そのようなパッドを用いることによって、蘇生術の全段階を通じて、力の伝達が促進され、手作業のCPRに比べて、改善された圧力分布をもたらす。
【0018】
本発明の別の態様では、それら少なくとも2つのパッド要素は、パッド装置の第2ピボットの周りで接続部に枢動可能に取り付けられる。望ましくは、それら少なくとも2つのパッド要素は、パッド装置の第3ピボットの周りで接続部に枢動可能に取り付けられる。接続部は、それらパッド要素がひとまとまりで枢動するのを可能にする二重ヒンジ機構としての役割を果たし、追加的な自由度をパッド装置に付加する。
【0019】
大部分で患者の胸の長手方向に平行な第1ピボットを選ぶことによって、パッド要素は、胸の解剖学的変位(すなわち、胸骨から肋骨への変位)に対応して枢動し、或いは、上下方向にフリップフラップすることができる。大部分で患者の胸の横断方向(中央−側部方向(central lateral direction)とも称する。)に平行な第2ピボット、及び、大部分で患者の胸の長手方向(頭尾方向(cranial caudal direction)とも称する。)に平行な第3ピボットを選ぶことによって、パッド装置が患者の胸の上で動作位置にある場合、胸の表面の全ての動きが密接に追従され得る。
【0020】
言い換えれば、それら少なくとも2つのパッド要素のそれぞれは、蘇生術の際の上下方向へのフリップフラップのためのヒンジ機構に枢動可能に接続され、それによって、圧縮中に加えられる力が、所与の力配分に従って配分され得る。また、それら少なくとも2つのパッド要素の双方は、望ましくは、胸の全ての動きへの追従を可能にする頭尾方向及び中央−側部方向における回転を可能にする共通の第2及び第3ピボットに枢動可能に接続される。
【0021】
当然ながら、より多くのピボット結合を用いてより多くの運動の自由度を追加することが可能である。
【0022】
本発明の望ましい態様では、パッド装置は、中央パッド要素及び2つの側部パッド要素を含む。2つのパッド要素は、ヒンジ機構に枢動可能に接続され、中央パッド要素は、それら2つの側部パッド要素をリンクする。中央パッド要素は、有利的に胸骨のための明確なサポートをもたらし、一方で、2つの側部パッド要素は、両側で肋骨のためのサポートをもたらし得る。
【0023】
本発明は、2つの側部パッド要素とともに説明されたが、より多くの側部パッド要素が提供されてもよい。
【0024】
本発明のさらに別の態様では、中央パッド要素は、一対の細長い或いは長円形のスロットを有し、各スロットは、ピン手段によって2つの側部パッド要素における各穴に接続される。長円形のスロットは、ヒンジ機構における第1及び第2部材の第1及び第2ピボットの周りでそれら側部パッド要素の枢動動作を可能にする。
【0025】
さらに、力配分は、2つのパッド要素を用いるよりも3つのパッド要素を用いた方がより良く選ばれ得る。
【0026】
圧縮パッドと胸壁表面との間のせん断力を低減させることがさらに望ましい。この問題に対処するために、それら少なくとも2つのパッド要素は、患者の胸の表面と接するように設計された表面に減摩手段を含む。このことは、患者の胸の表面に関して直角に力が加えられない場合に特に有用である。望ましい実施例では、接触部分は、患者の胸の表面と直接的に接するように設計される。少なくとも2つのパッド要素の表面の間には、患者の胸の表面とそれら少なくとも2つのパッド要素との間の接触を最大化し且つ圧力の集中を最小化するように設計される粘弾性材料が置かれる。
【0027】
望ましい実施例では、それら少なくとも2つのパッド要素は、少なくとも3つの肋骨の起点をカバーし、且つ、胸骨及び隣接する胸肋結合部/肋骨の双方をカバーするように寸法が決められる。それにより、力の伝達は、大きな表面で達成され、集中点及び高い力密度なしに、胸肋結合部をサポートする。
【0028】
パッドは、様々な胸部及び胸郭の形状に適合性があることが望ましい。この問題及び他の問題は、少なくとも2つのパッド要素が体に適合するように湾曲させられているパッド装置を提供することによって対処される。具体的には、それら少なくとも2つのパッド要素は、女性の胸への適合を可能にするための側部の湾曲、及び、剣状突起における加力を防止するための尾部の湾曲の少なくとも1つを含む。さらに、肝臓及び脾臓等の重要器官に力が集中するのを防止するために、丸められた端部が提供されてもよい。
【0029】
頭尾方向において対称であるパッド装置を提供することによって、パッド装置は、パッド装置が間違って配置され得ないように、そして、その結果、より迅速に用いられるように、2つの方向に適合され得る。
【0030】
最後に、本発明によるパッド装置を備えたCPR装置も考えられる。
【0031】
本発明のこれらの及び他の態様は、本書において以下に記載される実施例を参照して説明され、且つ、それら実施例から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従ったパッド装置の分解組立図を示す。
【図2】本発明の一態様に従ったパッド装置の側面図を示す。
【図3】本発明の一態様に従ったパッド装置の上面図を示す。
【図4】本発明に従った減摩装置の例を示す。
【図5】本発明に従ったパッド装置を備える自動CPR装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
これより、図面に基づいて本発明を説明する。本書で説明する本発明の実施例及び態様は単なる例示であり、請求項の保護範囲を限定するものではない。本発明は、請求項及びそれらの均等物によって定められる。また、ある態様の特徴は、別の一又は複数の態様の特徴と組み合わされ得る。
【0034】
教示されるもの及びそれらの利点の完全な理解のため、これより、図面とともに以下の詳細な説明に対する参照が行われる。
【0035】
図1は、本発明に従ったパッド装置10の分解組立図を示す。パッド装置10は、3つのパッド要素100、200、300を含み、(図の左側にある)第1側部パッド要素100と、(図の右側にある)第2側部パッド要素200とが中央パッド要素300によって接続される。
【0036】
本明細書では、左方向及び右方向が図面に関して定められる。パッド装置が患者の胸の上の動作位置にあるときには、患者の胸に関しても参照が行われる。これは任意的であり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0037】
2つの側部パッド要素100、200は、ヒンジ機構500の上部部材505に枢動可能に取り付けられ、中央パッド要素300は、それら2つの側部パッド要素100、200をリンクする。第1(左)側方パッド要素100は、第1(左)ピボットピンP1によってヒンジ機構500の第1(左)部材510に枢動可能に接続され、第2(右)側方パッド要素200は、第2(右)ピボットピンP1’の周りでヒンジ機構500の第2(右)部材520に枢動可能に接続される。第1(左)ピボットピンP1及び第2(右)ピボットピンP1’は、大部分で互いに平行である。
【0038】
第1(左)側部パッド要素100の内端110は、ピン120によって中央パッド要素300の第1(左)穴310に接続され、第2(右)側部パッド要素200の内端210は、ピン220によって中央パッド要素300の第2(右)穴320に接続される。ピン120、220は、大部分で第1及び第2ピボットピンP1、P1’に平行である。
【0039】
中央パッド要素のスロット310、320は、完全な丸形ではなく、主に長円形である。それら長円形のスロットは、2つの側部パッド要素100、200によるピボットピンP1、P1’のそれぞれの回りの枢動動作を可能にする。中央パッド要素は、2つの側部パッド要素を一緒につなぐ。
【0040】
ヒンジ機構500の第1(左)部材510及び第2(右)部材520は、ヒンジ機構500の中央部分530によってリンクされ、それによって、中央パッド要素300を跨ぐ。記載される実施例では、ヒンジ機構の第1部材及び第2部材並びに中央部分は、ワンピースの単一部材として構成されるが、他の構成も考えられる。
【0041】
中央部分530は、パッド装置の第2ピボットP2の周りで、ピボットピン535によってヒンジ機構500の上部分540に枢動可能にリンクされる。第2ピボットは、大部分で第1ピボットP1、P1’に対して直角である。
【0042】
ヒンジ機構の上部分540は、今度は、ピン600の形をとる接続部に枢動可能に接続される。ピボットピン600は、パッド装置の第3ピボットP3を形成する。
【0043】
パッド装置が自動CPR装置システムで用いられる場合には、ピボットピン600は、パッド装置をCPR装置900の加力部材に接続してもよい。
【0044】
そうでなければ、ピボットピン600は、CPRを直接行う人によってパッド装置が応急処置用品の一部として用いられる場合には、パッド装置を把持部材又はハンドルに接続してもよい。この場合、応急処置を行う人は、胸の表面での位置付け及び力の伝達を改善するためのツールとしてパッド装置を用いてもよい。このことは、CPRを行う人が、CPR処置の十分な訓練及び教育を受けた人であっても、手を正確に位置決めするときに困難を感じ、その人から患者の胸への効率的でない力の伝達により実際に多くのエネルギを浪費する場合があるので、特に役立つ。
【0045】
それ故に、パッド要素は、少なくとも2つのピボットの周りで接続部600に枢動可能に取り付けられ、それらパッド要素がひとまとまりで第2及び第3ピボットに関して枢動するのを可能にする。
【0046】
図1から図3では、パッド装置が患者の胸の上の動作位置にあるときに、第1ピボットは、大部分で患者の胸の長手方向に平行であり、第2ピボットは、大部分で患者の胸の横断方向に平行であり、また、第3ピボットは、大部分で患者の胸の長手方向に平行である。
【0047】
パッド装置が患者の胸の上の動作位置にあるとき、第1ピボットP1、P1’は、側部パッド要素100、200の上下方向の枢動を可能にする。2つの追加的なピボットP2、P3は、大部分で互いに直交し、頭尾方向及び中央−側部方向にある。
【0048】
胸の主な動きは、パッド装置によって密接に追従され得る。本願は3つのピボット結合を用いて説明されるが、より多くの回転自由を備える他の構成も考えられる。少なくとも2つのパッド要素を球形の台に接続することによって、360度の回転能力を得ることも可能である。
【0049】
力の伝達は、望ましくは、第1ピボットP1、P1’によって実現されるが、別々のピボットP1、P1’を介した圧縮力の胸への伝達のために別の構成が採用されてもよい。望ましい構成は、圧縮力の3分の2を、中央パッド要素300のところに配分し、圧縮力の6分の1を、側部パッド要素100、200のそれぞれのところに配分する。他の任意の力配分も考えられ得る。
【0050】
図3で最もよく見られるように、パッド要素100、200、300はまた、様々な胸の形状に適合するように設計される。側部パッド要素100、200は、剣状突起における加力を防止するために外側部の湾曲及び尾部の湾曲を有する。側部の湾曲は、女性の胸を押し退けながら側部パッド要素が女性の胸の辺りに収まるのを可能にする。有利的には、パッド装置は、男性及び女性の双方の前胸形状に適している。
【0051】
概略的な胴(schematic torso)の上にあるパッド装置10を示す図3の上面概略図で見られるように、パッド装置は、望ましくは、少なくとも3つの肋骨をカバーし、且つ、胸骨及び隣接する胸肋結合部/肋骨の双方をカバーするように寸法が決められる。さらに、肝臓及び脾臓等の重要器官への力の集中を避けるために、丸められた端部が提供されてもよい。その結果、そのようなパッド装置は、小領域への力の集中を防止する。
【0052】
パッド装置は、図4で最もよく見られるように、本発明の別の態様において、減摩手段を含む。パッド要素100、200、300は、患者の胸の表面1000と接するように設計される接触部分800を有する。パッド要素と接触部分800との間には粘弾性材料700が置かれる。粘弾性材料層は、パッド要素と胸壁表面との間の接触面積を有利的に最大化する。
【0053】
パッド装置10は、図5で概略的に示すように、自動CPR装置に接続されてもよい。CPR装置900は、力をパッド装置10に伝える自動加力部材905を有する。
【0054】
本書で考察されたもののための開示されたシステムの様々な態様は、そのシステムを製造し且つ使用するための特定の方法の単なる一例である。それ故に、請求項及びそれに続く詳細な説明とともに考慮されるときに、開示されたものの範囲を限定することはない。また、開示されたシステム及び方法の一実施例における特徴は、その開示されたシステム及び方法の別の実施例における特徴と組み合わされてもよい。
【0055】
説明され且つ図示された装置は、潜在的に、院内及び院外の双方において有用である。
【0056】
開示された実施例に関する他の変形例は、図面、明細書、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって、クレームされた発明を当業者が実施する場合に当業者によって理解され且つ達成され得る。特許請求の範囲において、用語“有する”は、他の要素又はステップを除外するものではなく、単数表現は、複数を除外するものでない。単一ユニットが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を実行してもよく、その逆もまた同様である。特定の手段が互いに異なる従属項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に用いられ得ないことを示すものではない。請求項にある何れの参照符号もその範囲を限定するものとして解釈されることはない。
【符号の説明】
【0057】
10・・・パッド装置
100、200、300・・・パッド要素
P1・・・第1(左)ピボットピン
P1’・・・第2(右)ピボットピン
P2・・・第2ピボット
P3・・・第3ピボット
110・・・内端
210・・・内端
120・・・ピボットピン
220・・・ピボットピン
500・・・ヒンジ機構
505・・・上部部材
510・・・第1(左)部材
520・・・第2(右)部材
530・・・中央部分
540・・・上部分
600・・・接続ピン
700・・・粘弾性材料
800・・・接触部分
900・・・CPR装置
905・・・加力部材
1000・・・胸の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心肺蘇生術(CPR)の際に前胸壁に力を伝えるためのパッド装置であって、
前胸壁表面に位置付けられるように構成される少なくとも2つのパッド要素と、
前記少なくとも2つのパッド要素を接続するヒンジ機構と、を有し、
前記少なくとも2つのパッド要素は、患者がCPRを受けている際に加えられる力に前記ヒンジ機構が協調的に反応するように、前記ヒンジ機構に可動的に取り付けられる、
パッド装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つのパッド要素は、前記ヒンジ機構に枢動可能に取り付けられる、
請求項1に記載のパッド装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つのパッド要素のうちの一方は、前記ヒンジ機構の第1部材に枢動可能に取り付けられ、且つ、前記少なくとも2つのパッド要素のうちの他方は、前記ヒンジ機構の第2部材に枢動可能に取り付けられる、
請求項1又は2に記載のパッド装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つのパッド要素は、大部分で互いに平行である2つの第1ピボットのそれぞれの周りで前記ヒンジ機構に枢動可能に接続される、
請求項3に記載のパッド装置。
【請求項5】
前記パッド装置をCPR装置の加力部材に或いは把持部に接続するための接続部を有する、
請求項1乃至4の何れかに記載のパッド装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つのパッド要素は、前記パッド装置の第2ピボットの周りで前記接続部に枢動可能に取り付けられる、
請求項5に記載のパッド装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つのパッド要素は、前記パッド装置の第3ピボットの周りで前記接続部に枢動可能に取り付けられる、
請求項5又は6に記載のパッド装置。
【請求項8】
前記パッド装置が前記患者の胸の上の動作位置にある場合に、前記2つの第1ピボットは、大部分で前記患者の胸の長手方向に平行であり、前記第2ピボットは、大部分で前記患者の胸の横断方向に平行であり、前記第3ピボットは、大部分で前記患者の胸の長手方向に平行である、
請求項7に記載のパッド装置。
【請求項9】
中央パッド要素及び2つの側部パッド要素を含み、
前記2つの側部パッド要素は、前記ヒンジ機構に枢動可能に取り付けられ、
前記中央パッド要素は、前記2つの側部パッド要素をリンクする、
請求項1乃至8の何れかに記載のパッド装置。
【請求項10】
前記中央パッド要素は、一対の細長いスロットを有し、前記スロットのそれぞれは、ピン手段によって前記2つの側部パッド要素のそれぞれの穴に接続される、
請求項9に記載のパッド装置。
【請求項11】
前記少なくとも2つのパッド要素は、前記患者の胸の表面と接するように設計される表面に減摩手段を含む、
請求項1乃至10の何れかに記載のパッド装置。
【請求項12】
前記少なくとも2つのパッド要素と前記減摩手段との間に粘弾性材料を備える、
請求項11に記載のパッド装置。
【請求項13】
前記パッド要素は、少なくとも3つの肋骨をカバーし、且つ、胸骨及び隣接する胸肋結合部/肋骨の双方をカバーするように寸法が決められる、
請求項1乃至12の何れかに記載のパッド装置。
【請求項14】
前記少なくとも2つのパッド要素は、体に適合するように湾曲させられ、
前記少なくとも2つのパッド要素は、女性の胸への適合を可能にする側部の湾曲、及び、剣状突起における加力を避けるための尾部の湾曲のうちの少なくとも1つを含み、
前記パッド装置は、大部分で頭尾方向において対称である、
請求項1乃至13の何れかに記載のパッド装置。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れかに記載のパッド装置を備えるCPR装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−514121(P2013−514121A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543962(P2012−543962)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055767
【国際公開番号】WO2011/073878
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】