説明

自己収縮低減剤

【課題】 自己収縮を効果的に低減できる自己収縮低減剤を提供する。
【解決手段】 材齢5日後の自己収縮低減率が15%以上であり、式(1)で示される少なくとも一のイソプレンアルコールのアルキレンオキサイド付加体及び式(2)で示される少なくとも一の不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体成分を、疎水性連鎖移動剤を用いて、共重合することにより得られたポリカルボン酸系共重合体を必須成分として含む、自己収縮低減剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己収縮低減剤に関するものである。特に、本発明は、水結合材比(W/B:水と結合材との質量比)が40%未満のセメントに対して水が少ない水硬性材料の自己収縮を有効に低減できる自己収縮低減剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水硬性材料は、強度や耐久性に優れた硬化物を与えることから、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に広く用いられており、土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このような水硬性材料のうち、水結合材比(W/B:水と結合材との質量比)を少なくするほど高強度の水硬性材料が得られるため、このような高強度の水硬性材料の実現が求められているが、W/Bが40%未満のセメントに対して水が少ない水硬性材料では、材料内部で硬化(水和)ムラが生じやすくなり、硬化した部分に残った未反応水が硬化の不十分な部分へ移動する際に、硬化により形成された毛管表面と水との引張り力が発生し、これに起因すると考えられる自己収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じることがしばしば問題となっている。このひび割れは、養生中あるいは養生後1ヶ月以内の初期段階で起こるひびわれであり、構造物の強度低下や構造物の美観を損なうばかりでなく、長期的に見ると、ひび割れ部分を通して空気(特に炭酸ガス)や雨水(特に酸や塩化物イオン)等の劣化要因が浸入して鉄筋の腐食やコンクリートの中性化が起こるなど、多くの複合劣化の誘因となることが指摘されている。このように、近年、これらコンクリート構造物の早期劣化が社会的問題となり、ひび割れを抑制し、耐久性に優れた構造物への要求が高まってきていることから、現在、これら土木・建築構造物等の自己収縮の進行を抑制する重要性が認識され、技術革新が盛んに行なわれている。
【0003】
このような背景から、多くの収縮に関する研究報告がなされており、収縮を低減する(ひいてはひび割れを抑制する)方法としては、膨脹材を用いる方法、乾燥収縮低減剤を使用する方法、及び自己収縮低減性が十分でない場合には膨脹材及び乾燥収縮低減剤を併用する方法がとられている。この際、併用される乾燥収縮低減剤としては、様々な化合物が使用されている(例えば、特許文献1〜4参照)。上記公報のうち、特許文献6には、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの付加重合体を含むセメントの乾燥収縮防止剤が開示されている。また、特許文献2には、ジフェニルメタン誘導体のアルキレンオキシド付加物を含む乾燥収縮低減剤が開示されている。
【特許文献1】特開昭59−21557号公報
【特許文献2】特開昭62−61450号公報
【特許文献3】特開昭59−3430号公報
【特許文献4】特許第2825855号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、膨脹材や乾燥収縮低減剤はいずれもコンクリート組成物への混和量を多くする必要があること、また、乾燥収縮低減剤においてはその製品価格も高いことから、このような乾燥収縮低減剤の混和はコンクリート単位容量当たりの単価の著しい高騰につながる。このような問題は、乾燥収縮低減剤が市場に普及しない一因となっている。さらに、これらの混和材(剤)を使用しても、自己収縮を低減し、初期のひび割れを抑制することは困難である。
【0005】
このように、自己収縮を有効に低減できかつ十分な流動性/分散性をコンクリート部材等に付与できる添加剤に対する要求は強く存在するものの、このような添加剤は得られていない。
【0006】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、自己収縮を効果的に低減できる自己収縮低減剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく様々な化合物の自己収縮低減性について鋭意研究を行った結果、イソプレンアルコールのアルキレンオキサイド付加体及び不飽和カルボン酸系単量体という特定の単量体を含む単量体成分を疎水性連鎖移動剤を用いて、共重合することにより得られたポリカルボン酸系共重合体が優れた自己収縮低減性を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記目的は、材齢5日後の自己収縮低減率が15%以上であり、
下記式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;xは、0〜2の整数であり;ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;yは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびRは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される少なくとも一のイソプレンアルコールのアルキレンオキサイド付加体及び
下記式(2):
【0011】
【化2】

【0012】
ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOZ’基を表し、この際、Z’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、およびqは、0〜2の整数であり;ならびにZは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、COOZ’及びCOOZが2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい、
で示される少なくとも一の不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体成分を、疎水性連鎖移動剤を用いて、共重合することにより得られたポリカルボン酸系共重合体を必須成分として含む、自己収縮低減剤によって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自己収縮低減剤を使用することにより、水硬性材料の水和による硬化過程において発生する自己収縮が低減に優れた効果があり、特に40%未満と水結合材比(W/B)が低いことにより問題となる初期のひび割れを抑制することにより、耐久性を向上させることができる。
【0014】
このため、本発明の自己収縮低減剤は、耐久性に優れたセメント比の低い高強度の水硬性材料の施工に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
本発明は、材齢5日後の自己収縮低減率が15%以上であり、
下記式(1):
【0017】
【化3】

【0018】
ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;xは、0〜2の整数であり;ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;yは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびRは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される少なくとも一のイソプレンアルコールのアルキレンオキサイド付加体及び
下記式(2):
【0019】
【化4】

【0020】
ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOZ’基を表し、この際、Z’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、およびqは、0〜2の整数であり;ならびにZは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、COOZ’及びCOOZが2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい、
で示される少なくとも一の不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体成分を、疎水性連鎖移動剤を用いて、共重合することにより得られたポリカルボン酸系共重合体を必須成分として含む、自己収縮低減剤を提供するものである。
【0021】
本発明に係る上記式(1)のイソプレンアルコールのアルキレンオキサイド付加体(本明細書中では、単に「IPN付加体」とも称する)及び上記式(2)の不飽和カルボン酸系単量体(本明細書中では、単に「不飽和カルボン酸系単量体」とも称する)を疎水性連鎖移動剤の存在下で共重合することにより得られたポリカルボン酸系共重合体(本明細書中では、単に「共重合体」とも称する)が自己収縮を抑制できる明確な機構は不明であるが、以下のようにして、本発明による共重合体が自己収縮を抑制するものと考えられる。すなわち、自己収縮は、W/Bが40%未満のセメントに対して水が少ない水硬性材料において特に顕著になると言われている現象であり、硬化の際に、材料内部で硬化(水和)ムラが生じやすくなり、硬化した部分に残った未反応水が硬化の不十分な部分に移動する際に、硬化により形成された毛管表面と水との間に生じた引張り力により生じるものである。特に、W/Bが低い場合には、分散性を良くするために高性能AE減水剤が使われるが、通常の高性能AE減水剤では時間の経過に伴い、分散したセメント粒子同士が再凝集することにより、セメント粒子が均一に分散できなくなり、硬化に必要な水が局在化し、硬化ムラが生じ易くなる。これに対して、本発明による共重合体は、疎水性連鎖移動剤を使用することにより末端に導入されたアルキル基により、分散されたセメント粒子の再凝集を防ぎ、セメント粒子が均一に分散する状態を維持させることにより、水の局在化を抑制し、硬化の際の材料内部での硬化ムラを生じ難くさせることにより、内部の水の移動を少なくし、これにより自己収縮を低減できるものと考えられる。さらに、セメント粒子表面に疎水基を導入することにより、内部の水の移動により生じる硬化体内部の毛管表面と水との引張り力を低減できることも考えられる。また、上記共重合体において、IPN付加体由来の構成単位(本明細書中では、単に「構成単位(I)」とも称する)は、共重合体に水溶性を付与し、共重合体がセメント粒子に吸着した時点で、セメント粒子を適度に分散させる作用を有し、また、不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位(本明細書中では、単に「構成単位(II)」とも称する)は、共重合体をセメント粒子に吸着させる作用を有する。したがって、本発明の自己収縮低減剤は、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石膏などのセメント以外の水硬性材料に、自己収縮を効果的に低減する目的で好適に使用される。
【0022】
本発明による自己収縮低減剤は、材齢5日後の自己収縮低減率が15%以上であることが必須である。この際、材齢5日後の自己収縮低減率が上記範囲内であれば、工業レベルでの実施可能性が十分満足でき、かつ硬化後のセメントの自己収縮を有効に抑制できるため、鉄筋などの経時的に形状変化を起さない構造物に使用しても、セメント硬化体との間に歪を生じないので、ひび割れなどの問題が起こらない。これに対して、材齢5日後の自己収縮低減率が15%未満であると、十分な自己収縮抑制効果が得られず、例えば、鉄筋コンクリート構造物に使用された場合には、養生中あるいは養生後1ヶ月程度の初期段階でセメント硬化体の収縮による体積変化が現れ、鉄筋との間に拘束による歪が生じて、ひび割れなどの現象を引き起こす。好ましくは、自己収縮低減剤の材齢5日後の自己収縮低減率は、20%以上、より好ましくは30%以上である。なお、本明細書において、「材齢5日後の自己収縮低減率」は、下記実施例に記載された条件および手順に従って測定された値を意味する。
【0023】
本発明の自己収縮低減剤の必須の構成成分であるポリカルボン酸系共重合体は、式(1)のIPN付加体及び式(2)の不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体成分を、疎水性連鎖移動剤を用いて、共重合することにより得られるものであり、一般的には、下記式(3):
【0024】
【化5】

【0025】
で示される少なくとも一のIPN付加体由来の構成単位(I)、及び下記式(4):
【0026】
【化6】

【0027】
で示される少なくとも一の不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位(II)を有する。なお、本発明においては、式(1)のIPN付加体及びIPN付加体由来の構成単位(I)は、単一のIPN付加体及び単一の構成単位(I)からなってもあるいは2種以上のIPN付加体及び2種以上の構成単位(I)を組合わせて構成されてもよく、同様にして、式(2)の不飽和カルボン酸系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位(II)は、単一の不飽和カルボン酸系単量体及び単一の構成単位(II)からなってもあるいは2種以上の不飽和カルボン酸系単量体及び2種以上の構成単位(II)を組合わせて構成されてもよい。それぞれ、後者の場合には、各構成単位は、それぞれ、ブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
【0028】
上記式(1)及び(3)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、好ましくはR及びRの少なくとも一方は水素原子を表す。この際、R、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。xは、0〜2の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(1)及び(3)中、yが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。構成単位(I)として1種類の構成単位のみを用いる場合には、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、さらに50モル%以上はオキシエチレン基であることが好ましい。また、yは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。yが300を超えると、得られる共重合体が過度の分散性を発揮してしまい、これにより任意の量を添加できなくなり、所望の自己収縮低減性を得ることが困難になる。さらに、yが300を超えると、空気連行性が高くなり、空気量の調整が困難となり、強度低下や耐凍結融解性の低下の原因となる。yは、30以上(30〜300)であることがより好ましい。このような場合には、良好な分散性及び空気連行性が得られるという効果が達成できるからである。さらに好ましくは、yは、30〜270、30〜250、30〜220の順で好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。このような炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5−トリメチルヘキシル基、4−エチル−5−メチルオクチル基及び2−エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−,m−若しくはp−トリル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基などが挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる構成単位(I)を与えるIPN付加体としては、ビニルアルコールまたはイソプレンアルコール等のアルコール類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの付加物等が挙げられる。なお、上記IPN付加体は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0030】
IPN付加体の具体例としては、(ポリ)エチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、ポリ)ブチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル等が挙げられる。この際、これらのIPN付加体または構成単位(I)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0031】
上記式(2)及び(4)において、R、R及びRは、水素原子、メチル基または−(CHCOOZ’基を表す。この際、R、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。Zは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)または有機アミン基を表わす。また、式:−(CHCOOZ’において、Z’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。この際、置換基「Z」及び「Z’」を表わす一価金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。なお、置換基「Z」および/または「Z’」が二価金属である場合には、2個の−COO−で無水物の形態をとる。有機アミン基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及びフェニルアミン等の第一級アミン由来の基;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン及びジフェニルアミン等の第二級アミン由来の基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン及びトリフェニルアミン等の第三級アミン由来の基;およびエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の基が挙げられる。これらのうち、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が好適に挙げられる。これらのうち、Zおよび/またはZ’は、水素原子、ナトリウムまたはカルシウムであることが特に好ましい。また、qは、0〜2の整数、好ましくは0または1、特に0である。なお、COOZ’が2個または3個存在する場合には、これらのCOOZ’は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、COOZ及びCOOZ’が合わせて2個以上存在する場合は、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい。
【0032】
本発明で用いられる構成単位(II)を与える不飽和カルボン酸系単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。又、不飽和ジカルボン酸系単量体として、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が、さらにこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。中でも、R15、R16及びR17が、それぞれ独立に水素原子又はメチル基の場合に相当する、不飽和モノカルボン酸系単量体が好ましく、とりわけ(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。この際、これらの不飽和カルボン酸系単量体または構成単位(II)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0033】
本発明に係る単量体成分は、上記式(1)のIPN付加体及び不飽和カルボン酸系単量体を必須の構成成分として含むものであるが、上記に加えて、少なくとも1種の他の異なる単量体(本明細書中では、単に「他の単量体」とも称する)を含んでもよい。このような場合において、得られる共重合体は、さらに当該他の単量体由来の構成単位(以下、単に「構成単位(III)」とも称する)を有することになるが、このような場合にも、これらの構成単位(I)、(II)及び(III)はブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
【0034】
このような他の構成単位(III)を与える他の単量体としては、単量体成分であるIPN付加体及び不飽和カルボン酸系単量体と共重合可能な単量体があり、このような単量体の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド;前記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート、等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのエステル;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;2−アクリロイロキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルホスフェートなどの不飽和リン酸エステル類等を挙げることができる。この際、これらの他の単量体または当該他の単量体由来の構成単位(III)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0035】
本発明において、上記IPN付加体、不飽和カルボン酸系単量体及び他の単量体の組成は、所望の共重合体の構成単位(I)、(II)及び(III)の比率によって適宜選択され、優れたセメント硬化体の自己収縮低減・抑制効果を発揮できるものであれば特に制限されない。自己収縮低減・抑制効果などを考慮すると、構成単位(I)と構成単位(II)と必要であれば構成単位(III)との比率(構成単位(I)/構成単位(II)/構成単位(III))(質量比)は、好ましくは99.5〜0.5/0.5〜35/0〜64.5、より好ましくは99〜15/1〜35/0〜50、特に好ましくは98〜35/2〜35/0〜30である。このような範囲であれば、共重合体は、優れた自己収縮低減性を発揮できる。また、ポリカルボン酸系共重合体における構成単位(I)と構成単位(II)との合計の比率(質量%)としては、ポリカルボン酸系共重合体全体の50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0036】
本発明では、上記したような単量体成分を、疎水性連鎖移動剤を用いて、共重合する。疎水性連鎖移動剤の使用によって、得られる共重合体の分子量を適宜調節することができる。このような連鎖移動剤としては、特に制限されないが、好ましくは炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の疎水性連鎖移動剤を使用することが好ましい。これは、アルキルメルカプタン系の連鎖移動剤を用いると、共重合体末端にアルキルメルカプタン基が導入されるが、このアルキルメルカプタン基がセメント粒子等の水硬性材料が近づきあわないようにこれらの材料間の距離を維持して、空隙にある水の表面張力を低下させ、水の移動を抑制し、これにより、自己収縮がより有効に低減できるからである。このような炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の疎水性の連鎖移動剤としては、特に制限されないが、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。この際、疎水性連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0037】
この際、疎水性連鎖移動剤の添加量は、得られる共重合体を所望の分子量になるように調節でき、共重合体末端にアルキルメルカプタン基を適切に導入できる量であれば特に制限されないが、好ましくは、単量体成分の合計モルに対して、0.01〜15モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である。この際、疎水性連鎖移動剤の添加量が0.01モル%未満であると、十分なアルキルメルカプタン基が共重合体末端に導入されずに、セメント粒子等の水硬性材料間の距離を適切な状態に維持することができず、十分な自己収縮低減性が達成できないだけでなく、また、このような場合には得られる共重合体の分子量が大きくなりすぎるため、分散性が低下したり、重合反応中にゲル化したりしてしまう可能性がある。逆に、疎水性連鎖移動剤の添加量が15モル%を超えても、添加に見合う効果は得られず、経済的でなく、また、得られる共重合体の分子量が小さく、十分な分散性が得られないという可能性がある。
【0038】
上記連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、連続してあるいは段階的に滴下する方法のいずれでもよいが、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することが好ましい。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入してもよく、上記したIPN付加体、不飽和カルボン酸系単量体及び他の単量体、さらには溶媒等とあらかじめ混合しておいてもよい。
【0039】
本発明による共重合体を製造する方法は、特に制限されず、公知の重合方法が使用できるが、一般的には、重合開始剤を用いて前記単量体成分を重合させればよい。単量体成分の重合方法は、特に制限されず、公知の重合方法が同様にあるいは修飾されて使用できるが、重合は、例えば、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。溶媒中での重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物等が挙げられる。原料単量体及び得られる共重合体の溶解性並びにこの共重合体の使用時の簡便さを考慮すると、水及び炭素原子数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、炭素原子数1〜4の低級アルコールがより好ましく、特にメチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等が有効である。
【0040】
水媒体中で重合を行なう場合に使用される重合開始剤は、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用でき、例えば、アンモニウム又はアルカリ金属の過硫酸塩あるいは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケトン化合物を溶媒とする重合を行なう場合に使用される重合開始剤もまた、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用できるが、具体的には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合開始剤の添加量は、特に制限されず、公知の重合方法で使用される量と同様の量が使用できる。また、重合条件も、特に制限されず、公知の重合条件と同様の条件が使用できるが、例えば、重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常、0〜120℃の範囲内で行なわれる。
【0041】
また、塊状重合の場合においても、その方法、使用される重合開始剤の種類や量、重合条件などは、特に制限されず、公知の方法などが使用できる。例えば、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が使用できる。また、塊状重合は、例えば、50〜200℃の温度範囲内で行なわれる。
【0042】
このようにして得られた共重合体は、そのまま自己収縮低減剤に用いられてもよいが、有機溶媒を含まない水溶液の形で取り扱ってもよく、このような場合には、共重合体をさらに一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等(好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一価金属の水酸化物)のアルカリ性物質で中和して、共重合体塩の形態として自己収縮低減剤に使用してもよい。
【0043】
また、このようにして製造された本発明による共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリエチレングリコール換算で5,000〜1,000,000の範囲が適当である。5,000〜500,000の範囲がより好ましく、5,000〜200,000の範囲がさらにより好ましく、7,000〜200,000の範囲が特に好ましい。なお、本明細書において、共重合体の重量平均分子量は、特記しない限り、下記GPC測定条件によって測定された値である。
【0044】
<GPC分子量測定条件>
使用カラム:東ソー社製、TSK guard column SWXL+TSK ge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液を用いる
打込み量:100μL
サンプル濃度:0.5重量%
溶離液流速:0.8mL/sec
カラム温度:35℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
検出器:日本Waters社製、示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製、MILLENNIUM Ver.2.18。
【0045】
本発明の自己収縮低減剤は、水硬性材料など、広範な用途に適用可能であるが、特に水硬性材料に好適に使用される。
【0046】
本発明の自己収縮低減剤は、上記したような共重合体1種のみから構成されてもあるいは上記した2種以上の共重合体から構成されるものであってもよい。
【0047】
また、本発明の自己収縮低減剤は、他の乾燥収縮低減剤と組合わせて組成物の形態で使用されてもよい。これにより、乾燥収縮低減性をさらに付与することができる。使用できる乾燥収縮低減剤としては、特に制限されないが、本発明に係る自己収縮低減剤との組合わせのしやすさ、自己/乾燥収縮低減性の制御の容易さ、ならびに空気量及び分散性の制御の容易さなどを考慮すると、(ア)側鎖(1)として、炭素原子数4〜30の炭化水素基を必須成分として有するポリアミン化合物(以下、単に、「側鎖(1)含有ポリアミン化合物」または「側鎖含有ポリアミン化合物」とも称する);(イ)ポリアルキレングリコール/ポリアルキレングリコールアルキルエーテル;(ウ)下記式(9):
【0048】
【化7】

【0049】
ただし、式中、D、D及びDは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOX基を表し、この際、Xは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または炭化水素基を表し、pは、0〜2の整数であり;およびDは、炭素原子数4〜30の炭化水素基を表す、
で示される少なくとも1種の構成単位(A)を必須成分として含み、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力が25〜50mN/mである重合体を含む乾燥収縮低減剤;及び(エ)ポリアルキレンイミンエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物(以下、単に「ポリアルキレンイミンEO・PO付加物」と称する)などが特に好ましく挙げられる。
【0050】
以下、上記好ましい(ア)〜(エ)の乾燥収縮低減剤について説明する。
【0051】
(ア)側鎖(1)含有ポリアミン化合物
本発明において収縮低減剤として好ましく使用される側鎖含有ポリアミン化合物は、乾燥収縮低減性及び流動性/分散性双方を発揮する。なお、本明細書中では、上述したように、炭素原子数4〜30の炭化水素基が導入された後のポリアミン化合物を、「側鎖(1)含有ポリアミン化合物」または「側鎖含有ポリアミン化合物」と称し、また、当該側鎖(1)を導入する前のポリアミン化合物を、「ポリアミン化合物(I)」と称する。側鎖(1)含有ポリアミン化合物が乾燥収縮を抑制できる明確な機構は不明であるが、以下のように考えられる。すなわち、水分が多い(例えば、W/Bが40%以上である)場合には、コンクリート硬化後にコンクリート硬化体表面から水分が蒸発していくが、この水分の蒸発に伴い、硬化体内部に形成された毛管内で水の移動が生じる。その際毛管表面と水との間で引張り力が発生するために収縮が起こるといわれている。このため、水の表面張力を下げることにより毛管表面と水との間の引張り力を低減することが乾燥収縮低減剤の目的であり、側鎖(1)含有ポリアミン化合物においては、必須成分である炭素原子数4〜30の炭化水素基が疎水性基として作用して、この疎水性基部分が、当該側鎖(1)含有ポリアミン化合物が水に溶解する際に、水の表面張力を下げる効果を発現し、これにより乾燥収縮が抑制されると考えられる。
【0052】
側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、下記に詳述するように、上記側鎖(1)に加えて、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基;−COOA(ただし、Aは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または−(QO)−Qを表し、この際、QOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し、nは、オキシアルキレン基(QO)の平均付加モル数を表し、1〜500の数であり、Qは、水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を表す);及び−SOW(ただし、Wは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す)からなる群より選択される少なくとも一種の基をさらに側鎖(2)として有することが好ましい。本明細書中では、上記側鎖(1)及び(2)を有する化合物を、単に「側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物」とも称する。側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、乾燥収縮を有効に低減できかつ流動性(分散性)を水硬性材料組成物に付与できる。側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物が優れた乾燥収縮低減性及び流動性(分散性)を示す明確な機構は不明であるが、以下のようにして考えられる。すなわち、乾燥収縮低減性に関しては、上記と同様、ポリアミン化合物中に炭素原子数4〜30の炭化水素基という疎水性基を側鎖として導入することによって、毛管表面と水との界面張力を下げ、乾燥収縮の原因である水の引張り応力を低減し、その結果乾燥収縮を抑制できると考えられる。また、側鎖(2)として、オキシアルキレン、カルボン酸またはその塩、及びスルホン酸またはその塩由来の基が導入されることによって、セメント表面に吸着した際にセメント表面が疎水化され、水との間の引張り力を低減する効果が発揮され、これによって乾燥収縮低減性がさらに増大されると考えられる。上記利点に加えて、流動性/分散性に関しては、側鎖(1)は、必須成分である側鎖(1)の疎水性基部分の導入によって、AE剤のような一種の界面活性剤としての機能が発現し、水硬性材料組成物に良質な空気を連行することにより、ボールベアリング的な作用により、水硬性材料組成物に良好な分散性/流動性を付与すると考えられる。また、側鎖(2)の導入により、ポリアミン化合物のセメント粒子への吸着が起こり、その結果、上記側鎖(1)による分散性/流動性をさらに向上すると考えられる。
【0053】
さらに、側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、下記に詳述するように、上記側鎖(1)または側鎖(1)及び(2)に加えて、−COOA’(ただし、A’は、1〜3の炭化水素基を表す)を、側鎖(3)として有することが好ましい。本明細書中では、このような化合物を、単に「側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物」とも称する。この際、側鎖(3)は、側鎖(1)1個に対して、2.4個以下の割合で導入されることが特に好ましい。このような特定量の側鎖(3)が導入された側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、乾燥収縮を有効に低減できかつ流動性(分散性)を水硬性材料組成物に付与できる。側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物が優れた乾燥収縮低減性及び流動性(分散性)を示す明確な機構は不明であるが、以下のようにして考えられる。すなわち、側鎖(3)の導入によって、ポリアミン化合物のセメント粒子への吸着が起こり、硬化体表面を疎水化するため、硬化体と水との引張り力を下げ、これにより乾燥収縮低減効果をより増大させることができ、さらに上記側鎖(1)による分散性/流動性をさらに向上できると考えられる。
【0054】
このため、このような側鎖(1)含有ポリアミン化合物を含む自己収縮低減剤は、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石膏などのセメント以外の水硬材料に、乾燥収縮を効果的に低減する目的で、また、流動性(分散性)を水硬性材料に付与する目的で、好適に使用される。
【0055】
ポリアミン化合物(I)は、その分子内に第1級および/または第2級アミノ基を有する化合物である。このようなポリアミン化合物(I)としては、その分子内に第1級および/または第2級アミノ基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、このような基を有するアミン類またはその誘導体がある。これらのうち、アミン類としては、例えば、エチレンイミンの重合によって得られるポリエチレンイミンなど、アルキレンイミン(例えば、エチレンイミン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン等)の重合または共重合によって得られるポリアルキレンイミン;上記したようなポリアルキレンイミンおよび/またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの(ポリ)アルキレンポリアミンと、硫酸、リン酸、アジピン酸などの多塩基酸との縮合によって得られるポリアミドポリアミン;ポリアルキレンイミンおよび/またはアルキレンイミンと、尿素との反応によって得られるポリウレアポリアミン;アルキレンイミンと無水フタル酸などの酸無水物との共重合によって得られるポリアミドポリエステルポリアミン;およびアリルアミン、ジアリルアミンおよび/またはその塩酸塩の重合によって得られるポリアリルアミン、ジアリルアミンおよび/またはその塩酸塩と二酸化硫黄との共重合によって得られるポリジアリルアミン−二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミンおよび/またはその塩酸塩とマレイン酸との共重合によって得られるジアリルアミン−マレイン酸共重合体などが挙げられる。また、ポリアミン誘導体としては、前記ポリアミンに、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、及びアクリルアミドなどのα,β−不飽和アミド化合物等を付加反応させた化合物などが挙げられる。なお、ポリアミン化合物(I)は、上記したように重合や付加反応によって製造されてもよいが、市販品を使用してもよい。市販品としては、エポミン(ポリエチレンイミン) SP−003、SP−006、SP−012、SP−018、SP−200、SP−110、P−1000(株式会社日本触媒)、ポリアリルアミン PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15B、PAA−10C、PAA−25(日東紡株式会社)、ジアリルアミン・マレイン酸共重合体 PAS−410、PAS−410SA(日東紡株式会社)などが挙げられる。これらのうち、ポリアルキレンイミン、ポリアミドポリアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンとアジピン酸との縮合物、トリエチレンテトラミンとアジピン酸との縮合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合体が好ましく、ポリアルキレンイミン、ポリアミドポリアミン、ポリアリルアミンが特に好ましい。ポリアミン化合物(I)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0056】
また、ポリアミン化合物(I)の数平均分子量は、特に制限されないが、300〜500,000であることが好ましい。この際、数平均分子量が300未満であると、側鎖(1)の付加量が少なく、十分な分散性や乾燥収縮低減性、特に乾燥収縮低減性が得られないおそれがある。逆に、数平均分子量が500,000を超えると、ポリアミン化合物(I)が大きくなりすぎて、ポリアミン化合物(I)に側鎖(1)及び必要であれば側鎖(2)/(3)を導入させた後のポリアミン化合物の分子量が過剰に大きくなり、分散性を逆に低下させるおそれがある。ポリアミン化合物(I)の数平均分子量は、乾燥収縮低減性及び流動性(分散性)を考慮すると、より好ましくは300〜300,000、さらにより好ましくは300〜100,000、最も好ましくは300〜20,000である。なお、本明細書において、「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された数平均分子量(Mn)を意味する。この際、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、市販のポリエチレングリコールを標準試料として検量線を作製した際に、狭くても1000から100000の範囲で、3次式で近似でき、その近似式の相関係数(r)が0.99以上となるものを用いることが好ましい。より好ましくは、0.999以上であり、更に好ましくは、0.9999以上である。移動相は、試料を溶解させるものを選択する。検量線は、正確に分子量を計算するにはできるだけ多くの標準試料を用いて描くのが好ましく、その目的のために5点以上の標準試料を用いる。この際、得られる分子量が信頼性をもつために、分子量1500以下と、分子量15万以上を必ず1点ずつ含むこととする。
【0057】
また、側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、ポリアミン化合物(I)中に側鎖(1)として炭素原子数4〜30の炭化水素基を導入したものである。なお、側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、単一の側鎖(1)をポリアミン化合物(I)中に導入したものであってもあるいは2種以上の側鎖(1)をポリアミン化合物(I)中に共存させたものであってもよい。この際、側鎖(1)の導入方法は、公知の方法によって達成でき、特に制限されないが、一般的には、ポリアミン化合物(I)を、下記式(5):
【0058】
【化8】

【0059】
で示される化合物(本明細書中では、「化合物(II)」と称する)と反応させることによって導入できる。このような化合物(II)は、ポリアミン化合物(I)との反応により、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素が化合物(II)の疎水性基(上記式(5)中の基Q)で置換されて、ポリアミン化合物(I)に側鎖(1)としてこの疎水性基が導入される。この疎水性基の導入によって、水に溶解されると、水の表面張力を下げる効果が発現して、これにより硬化後の乾燥の際、硬化体内部の水の移動により生じる硬化体表面と水との引張り力を低減して、その結果乾燥収縮を効果的に抑制させる効果が側鎖(1)含有ポリアミン化合物に付与される。
【0060】
上記式(5)において、Qは、炭素数4〜30の炭化水素基を表わす。このような炭化水素基としては、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の炭素数4〜30の直鎖及び分岐鎖のアルキル基;シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基及びアルキル基を有するこれらのアリール基((アルキル)アリール基);上記アリール基の少なくとも一部を水添させた水添アリール基及びアルキル基を有するこれらの水添アリール基((アルキル)水添アリール基);およびベンジル、メチルベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等の(アルキル)アラルキル基などを挙げることができる。また、Xは、アミノ基と反応しうる官能基を有する原子団を表す。このような原子団としては、アミノ基と反応しうる官能基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、グリシジルエーテル、エポキシ、イソシアネート、チオイソシアネート、(メタ)アクリレート、アルデヒドケトン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル、カルボン酸、カルボン酸無水物由来の基などが挙げられる。これらのうち、好ましくはグリシジルエーテル、エポキシ、イソシアネート、(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキル、カルボン酸であり、特に好ましくはエポキシ、(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル、ハロゲン化アルキル、カルボン酸である。
【0061】
このような化合物(II)の具体例としては、オクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルなどの高級アルコールのグリシジルエーテル類;オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルフェニルグリシジルエーテル、ステアリルフェニルグリシジルエーテルなどのアルキルフェノールのグリシジルエーテル類;オクチルシクロペンチルグリシジルエーテル、オクチルシクロヘキシルグリシジルエーテル、ノニルシクロペンチルグリシジルエーテル、ノニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルシクロペンチルグリシジルエーテル、ラウリルシクロヘキシルグリシジルエーテル、ステアリルシクロペンチルグリシジルエーテル、ステアリルシクロヘキシルグリシジルエーテルなどのアルキルシクロアルカノールのグリシジルエーテル類;オクチルベンジルグリシジルエーテル、ノニルベンジルグリシジルエーテル、ラウリルベンジルグリシジルエーテル、ステアリルベンジルグリシジルエーテルなどのアルキルベンジルアルコールのグリシジルエーテル類;エポキシヘキサン、炭素数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド、炭素数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド、炭素数20〜28の混合物であるα−オレフィンエポキシド、炭素数30以上の混合物であるα−オレフィンエポキシドなどの1,2−エポキシアルカン類;オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネートなどのアルキルイソシアネート類;オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール類とトリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類との反応により得られるモノイソシアネート化合物類;オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール類の末端水酸基を塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子置換したハロゲン化物類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸類;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などの不飽和脂肪酸類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの化合物(II)は、単独であるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。2種以上の化合物(II)を使用する場合には、少なくとも1種の化合物(II)がエポキシ、イソシアネート、チオイソシアネート、アルデヒドケトン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシルからなる群より選ばれるアミノ基と反応しうる官能基Xを有する化合物であることが好ましい。また、化合物(II)の使用量(即ち、側鎖(1)の導入量)は、ポリアミン化合物(I)中に十分量の側鎖(1)が導入できる(即ち、十分な乾燥収縮低減性が達成できる)量であれば特に限定されないが、ポリアミン化合物(I)との反応性を考慮すると、化合物(II)の量は、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素1個あたり、0.01〜0.90モル、0.05〜0.90モル、0.10〜0.85モル、0.17〜0.80モル、0.23〜0.80モルの量の順で好ましい。
【0062】
ポリアミン化合物(I)と化合物(II)とを反応させて、ポリアミン化合物(I)に側鎖(1)として炭素原子数4〜30の炭化水素基を付加・導入することにより、側鎖(1)含有ポリアミン化合物を得るものであるが、この際のポリアミン化合物(I)と化合物(II)との反応条件は、当該反応が進行して十分量の側鎖(1)がポリアミン化合物(I)中に導入できる条件であれば特に制限されない。例えば、ポリアミン化合物(I)と化合物(II)を、そのまま、あるいは必要に応じて溶剤により希釈して、好ましくは溶剤に溶解、分散または懸濁させて、最も好ましくは溶剤に溶解させて、好ましくは常温〜200℃、より好ましくは40〜100℃の温度で、0.5〜10時間、より好ましくは0.5〜6時間、反応する。当該反応は、常圧下、加圧下または減圧下のいずれで行われてもよいが、好ましくは常圧下である。この際、各化合物を溶解/分散/懸濁するのに必要に応じて使用される溶剤は、特に制限されないが、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)または側鎖(1)含有ポリアミン化合物を溶解し得るものであって、かつこれらに対して不活性であることが好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール系;n−ブタン、プロパン、ベンゼン、シクロヘキサン、ナフタレン等の炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル等のエステル系;(ポリ)エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールとその誘導体系などが挙げられ、水、アルコール系、炭化水素系、及びエステル系が好ましく、特に水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサン、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチルが好ましい。なお、これらの溶剤は、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)及び側鎖(1)含有ポリアミン化合物に対して、それぞれ異なる溶剤が使用されてもあるいは同じ溶剤が使用されてもよいが、操作性や後の溶剤除去工程の手間などを考慮すると、同じ溶剤が使用されることが好ましい。また、反応に際して、反応を促進するために、触媒を使用してもよく、このような触媒は、上記反応を促進できるものであれば特に制限されず、公知の触媒が使用できる。具体的には、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン系触媒;塩化第一スズ、オクチル酸スズ、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の酸類などが挙げられる。
【0063】
このようにして得られた側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、上記した反応により生じるものであれば特に制限されないが、具体的には、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド等のポリエチレンイミン/α−オレフィンエポキシド;ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート等のポリエチレンイミン/アルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ドデシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ミリスチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ステアリル(メタ)アクリレートなどがある。
【0064】
また、このようにして得られた側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素が側鎖(1)に置換されて、以下のような構造:
【0065】
【化9】

【0066】
を有する側鎖(1)含有ポリアミン化合物となる。なお、側鎖(1)は完全に活性アミン水素に置換する必要はなく、上記構造のように一部が置換された形態であってもよい。側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、化合物(II)の疎水性基である炭素原子数4〜30の炭化水素基(側鎖(1))の存在により、水に溶解されると、水の表面張力を下げる効果を発現して、これにより硬化体表面と水との間に生じる引張り力を低減することにより、乾燥収縮が抑制できる。また、当該側鎖(1)含有ポリアミン化合物は、AE剤のような一種の界面活性剤としての機能が発現して水硬性材料組成物に良質な空気を連行することにより、ボールベアリング的に作用して、分散性/流動性を向上でき、これによって、優れた乾燥収縮低減性及び流動性/分散性を同時に水硬性材料組成物に付与できるものである。また、側鎖(1)が加水分解によってカルボン酸を発生できる場合、セメント粒子にポリアミン化合物が吸着し、さらに分散性/流動性を向上することができる。したがって、このような側鎖(1)含有ポリアミン化合物を含む水硬性材料用混和剤組成物は、耐久コンクリートの施工に好適に使用することができる。
【0067】
ポリアミン化合物(I)中に、上記側鎖(1)に加えて、側鎖(2)として、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基及び−COOA(ただし、Aは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または−(QO)−Qを表し、この際、QOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し、nは、オキシアルキレン基(QO)の平均付加モル数を表し、1〜500の数であり、Qは、水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を表す);及び−SOW(ただし、Wは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す)からなる群より選択される少なくとも一種の基をさらに側鎖(2)として有することができる。側鎖(2)の導入によって、ポリアミン化合物のセメント粒子への吸着が起こり、硬化体表面を疎水化するため、硬化体と水との引張り力を下げ、これにより乾燥収縮低減効果をより増大させることができ、さらに、側鎖(2)の導入によりセメント粒子にポリアミン化合物が吸着し、これにより上記側鎖(1)による分散性/流動性をさらに向上するからである。なお、本明細書中では、このように側鎖(1)及び(2)お有するポリアミン化合物を、「側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物」と称する。側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、単一の側鎖(2)をポリアミン化合物(I)中に導入したものであってもあるいは2種以上の側鎖(2)をポリアミン化合物(I)中に共存させたものであってもよい。本明細書において、「平均付加モル数」とは、化合物1モル中における繰り返し単位のモル数の平均値を意味する。
【0068】
側鎖(2)の導入は、公知の方法によって達成でき、特に制限されないが、側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、一般的には、上記したようにして製造された側鎖(1)含有ポリアミン化合物を、炭素原子数2〜4のオキシアルキレンおよび/または下記式(6):
【0069】
【化10】

【0070】
で示される化合物(本明細書では、「化合物(III)」と称する)と反応させることによって、製造できる。または、側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、まず、ポリアミン化合物(I)を、炭素原子数2〜4のオキシアルキレンおよび/または上記式(6)の化合物(III)と反応させた後、反応生成物をさらに上記式(5)の化合物(II)と反応させることによって、製造してもよい。このようにして得られた側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物は、側鎖(2)の導入により、セメント表面に吸着した際のセメント表面の疎水化を誘導し、水との間の引張り力を低減する効果を発揮して、これにより乾燥収縮をさらに抑制できる。
【0071】
炭素原子数2〜4のオキシアルキレンとしては、特に制限されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド等が好ましく挙げられる。より好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、さらにより好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドである。これらのオキシアルキレンは、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されてもまたは下記に詳述する化合物(III)と組み合わせて使用されてもよい。
【0072】
また、化合物(III)を表す上記式(6)において、Xは、アミノ基と反応しうる官能基を有する原子団を表し、この基Xがポリアミン化合物(I)の活性アミン水素と反応して、ポリアミン化合物(I)中に側鎖(2)としての基Yが導入される。このような原子団としては、アミノ基と反応しうる官能基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、グリシジルエーテル、エポキシ、イソシアネート、チオイソシアネート、(メタ)アクリレート、アルデヒドケトン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル由来の基などが挙げられる。これらのうち、好ましくはグリシジルエーテル、エポキシ、イソシアネート、(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキルであり、特に好ましくはエポキシ、(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル、ハロゲン化アルキルである。また、Yは、COOAまたはSOW、好ましくはCOOAを表す。置換基「Y」を表す式:SOWにおいて、Wは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)、有機アミン基を表す。この際、一価金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等、好ましくはナトリウム、カリウムが挙げられる。二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等、好ましくはカルシウム、バリウムが挙げられる。有機アミン基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及びフェニルアミン等の第一級アミン由来の基;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン及びジフェニルアミン等の第二級アミン由来の基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン及びトリフェニルアミン等の第三級アミン由来の基;およびエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の基が挙げられる。これらのうち、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が好適に挙げられる。これらのうち、Wは、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基であることが好ましく、一価金属、二価金属、アンモニウム基であることが特に好ましい。また、置換基「Y」を表す式:COOAにおいて、Aは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)、有機アミン基または−(QO)−Qを表す。この際、一価金属、二価金属、及び有機アミン基については、上記置換基「W」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、上記Aを表すもののうち、式:−(QO)−Qにおいて、QOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの置換基「A」中に複数個存在する(即ち、式(6)中、nが2以上である)場合には、一つの置換基「A」中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれに付加形態であってもよい。これらのうち、Aは、水素原子、一価金属、二価金属、−(QO)−Qであることが好ましく、一価金属、二価金属、−(QO)−Qであることが特に好ましい。また、nは、オキシアルキレン基(QO)の平均付加モル数を表し、1〜500の数である。nが500を超えると、過剰な流動性(分散性)を水硬性材料組成物に付与するため、乾燥収縮抑制に必要な量を添加できなくなるおそれがある。nは、好ましくは1〜300、より好ましくは1〜100、最も好ましくは1〜50ある。また、Qは、水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を表す。この際、炭素原子数1〜3の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどが挙げられる。
【0073】
このような化合物(III)の具体例としては、(メタ)アクリル酸;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールマレエート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールマレエートなどが挙げられる。これらの化合物(III)は、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されてもまたは上記に詳述されたオキシアルキレンと組み合わせて使用されてもよい。これらのうち、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールマレエート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールマレエートが好ましく、特にアクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールマレエート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールマレエートが好ましい。
【0074】
また、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)の使用量は、ポリアミン化合物(I)や側鎖(1)含有ポリアミン化合物と反応して側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物を十分形成できる量であれば特に限定されないが、ポリアミン化合物(I)や側鎖(1)含有ポリアミン化合物との反応性を考慮すると、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)の合計使用量が、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素1個あたり、0.01〜0.90モル、より好ましくは0.05〜0.80モル、さらにより好ましくは0.10〜0.70モル、最も好ましくは0.10〜0.60モルとなるようにするのが好ましい。なお、特に化合物(III)が過度に多く存在しないことが好ましい。化合物(III)が多量に存在すると、硬化不良が生じるおそれがあるからである。
【0075】
上記態様では、ポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物と化合物(III)とを反応させて、ポリアミン化合物(I)に側鎖(2)を付加・導入することにより、側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物を得るものであるが、この際のポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物と化合物(III)との反応条件は、当該反応が進行して十分量の側鎖(2)がポリアミン化合物(I)中に導入できる条件であれば特に制限されないが、例えば、ポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物と化合物(II)を、そのまま、あるいは必要に応じて溶剤により希釈して、好ましくは溶剤に溶解、分散または懸濁させて、最も好ましくは溶剤に溶解させて、好ましくは常温〜200℃、より好ましくは40〜100℃の温度で、0.5〜6時間、より好ましくは0.5〜4時間、反応する。当該反応は、常圧下、加圧下または減圧下のいずれで行われてもよいが、好ましくは常圧下である。この際、各化合物を溶解/分散/懸濁するのに必要に応じて使用される溶剤は、特に制限されないが、ポリアミン化合物(I)、/側鎖(1)含有ポリアミン化合物、化合物(III)または側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物を溶解し得るものであって、かつこれらに対して不活性であることが好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール系;n−ブタン、プロパン、ベンゼン、シクロヘキサン、ナフタレン等の炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル等のエステル系;(ポリ)エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールとその誘導体系などが挙げられ、水、アルコール系、炭化水素系、及びエステル系が好ましく、特に水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサン、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチルが好ましい。なお、これらの溶剤は、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)及び側鎖(1)含有ポリアミン化合物に対して、それぞれ異なる溶剤が使用されてもあるいは同じ溶剤が使用されてもよいが、操作性や後の溶剤除去工程の手間などを考慮すると、同じ溶剤が使用されることが好ましい。また、ポリアミン化合物(I)と化合物(II)との反応に使用される溶剤と、上記反応で使用される溶剤は、同一であってもあるいは異なるものであってもいずれでもよいが、操作性や後の溶剤除去工程の手間などを考慮すると、同じ溶剤が使用されることが好ましい。さらに、反応に際して、反応を促進するために、触媒を使用してもよく、このような触媒は、上記反応を促進できるものであれば特に制限されず、公知の触媒が使用できる。具体的には、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン系触媒;塩化第一スズ、オクチル酸スズ、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の酸類などが挙げられる。
【0076】
ポリアミン化合物(I)に、側鎖(1)または側鎖(1)及び(2)に加えて、側鎖(3)として、−COOA’(ただし、A’は、1〜3の炭化水素基を表す)が、側鎖(1)1個に対して、2.4個以下の割合で導入されることが好ましい。なお、本明細書中では、上記側鎖(1)、(3)、及び必要であれば側鎖(2)を有する化合物を、単に「側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物」と称する。このような特定量の側鎖(3)の導入によって、ポリアミン化合物のセメント粒子への吸着が起こり、硬化体表面を疎水化するため、硬化体と水との引張り力を下げ、これにより乾燥収縮低減効果をより増大させることができ、さらに、側鎖(3)の導入により、上記側鎖(1)による分散性/流動性をさらに向上できるからである。なお、側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、単一の側鎖(3)をポリアミン化合物(I)中に導入したものであってもあるいは2種以上の側鎖(3)をポリアミン化合物(I)中に共存させたものであってもよい。
【0077】
側鎖(3)の導入は、公知の方法によって達成でき、特に制限されないが、側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、一般的には、上記したようにして製造された側鎖(1)含有ポリアミン化合物または側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物を、下記式(7):
【0078】
【化11】

【0079】
で示される化合物(本明細書では、「化合物(IV)」と称する)と反応させることによって、製造できる。または、側鎖(1)及び(3)を有する側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、まず、ポリアミン化合物(I)を、上記式(7)の化合物(IV)と反応させた後、反応生成物をさらに上記式(6)の化合物(II)と反応させることによって、製造してもよい。このようにして得られた側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物は、このような特定量のカルボン酸基の導入により、セメント表面に吸着した際の硬化体表面の疎水化を誘導し、水との間の引張り力を低減する効果を発揮して、これにより乾燥収縮をさらに抑制できる。
【0080】
側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物において、側鎖(3)は、側鎖(1)1個に対して、2.4個以下の割合で導入されることが好ましい。これは、側鎖(3)が2.4個を超えてポリアミン化合物(I)中に導入されると、側鎖(1)の導入量が相対的に減ってしまい、また、カルボン酸由来の基が過剰にポリアミン化合物(I)中に導入され、得られる側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物の分散性が上がりすぎてしまうため、乾燥収縮を抑制するために必要な量を添加できず、乾燥収縮低減性が過度に低下してしまうおそれがあるからである。側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物の乾燥収縮低減効果、さらには分散性/流動性を考慮すると、側鎖(3)のポリアミン化合物(I)への導入量は、側鎖(1)1個に対して、0.10〜2.00個、より好ましくは0.15〜1.75個、最も好ましくは0.20〜1.50個である。
【0081】
また、化合物(IV)を表す上記式(7)において、Xは、上記式(6)の置換基「X」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、Y’は、−COOA’を表す。この際、A’は、1〜3の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜3の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル等の環状のアルキル基などが挙げられる。これらのうち、メチル、エチル、プロピル等の直鎖のアルキル基、特にメチル、エチルが好ましい。
【0082】
このような化合物(IV)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルなどが挙げられる。これらの化合物(IV)は、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが好ましい。
【0083】
また、化合物(IV)の使用量は、上記したように、側鎖(1)に対して所定量で存在するように設定され、ポリアミン化合物(I)、側鎖(1)含有ポリアミン化合物または側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物と反応して側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物を十分形成できる量であれば特に限定されないが、上記化合物との反応性を考慮すると、化合物(IV)の使用量は、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素1個あたり、0.01〜0.90モル、より好ましくは0.05〜0.80モル、最も好ましくは0.05〜0.70モルとなるようにするのが好ましい。
【0084】
上記ポリアミン化合物(I)、化合物(II)と、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)とを反応させることにより、側鎖含有ポリアミン化合物を得るものである。なお、本明細書では、側鎖(1)含有ポリアミン化合物、側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物及び側鎖(1,3)含有ポリアミン化合物を一括して、「側鎖含有ポリアミン化合物」と称する。この際、ポリアミン化合物(I)、上記式(5)の化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)の添加順序は、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)が反応して所望の側鎖含有ポリアミン化合物が得られるものであれば特に制限されない。例えば、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)を同時に添加して反応を行なう;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)を反応させた後、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)と反応させる;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)を反応させた後、化合物(IV)と反応させる;ポリアミン化合物(I)をオキシアルキレンおよび/または化合物(III)と反応させた後、化合物(II)を添加して反応を行う;ポリアミン化合物(I)を化合物(IV)と反応させた後、化合物(II)を添加して反応を行う;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)及び化合物(III)を添加して反応を行う;あるいはポリアミン化合物(I)に、化合物(II)及び化合物(IV)を添加して反応を行うなど、いずれでもよい。これらのうち、ポリアミン化合物(I)、化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)を同時に添加して反応を行なう方法;ポリアミン化合物(I)、化合物(II)、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)、および/または化合物(IV)を同時に添加して反応を行なう方法;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)を反応させた後、オキシアルキレンおよび/または化合物(III)と反応させる方法;ポリアミン化合物(I)に、化合物(II)を反応させた後、化合物(IV)と反応させる方法;ポリアミン化合物(I)を化合物(IV)と反応させた後、化合物(II)を添加して反応を行う方法;およびポリアミン化合物(I)をオキシアルキレンおよび/または化合物(III)と反応させた後、化合物(II)を添加して反応を行う方法が好ましく使用される。
【0085】
また、ポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物/側鎖(1,2)含有ポリアミン化合物と、化合物(IV)との反応条件は、当該反応が進行して十分量の側鎖(2)がポリアミン化合物(I)中に導入できる条件であれば特に制限されないが、例えば、上記ポリアミン化合物(I)/側鎖(1)含有ポリアミン化合物と化合物(III)との反応条件が同様にして好ましく使用される。
【0086】
このようにして得られた側鎖含有ポリアミン化合物は、上記した反応により生じるものであれば特に制限されないが、具体的には、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/メチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/ブチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/(メタ)アクリル酸ラウリル/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/エポキシヘキサン/(メタ)アクリル酸ラウリル/(メタ)アクリル酸;
ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル/(メタ)アクリル酸;
ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸ラウリル/(メタ)アクリル酸;
ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/炭素原子数16〜18の混合物であるα−オレフィンエポキシド/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート等のポリエチレンイミン/α−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリレート;
ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸等のポリエチレンイミン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸;
ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ブチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ペンチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/シクロヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ドデシル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ミリスチル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンイミン/ステアリル(メタ)アクリレート/メトキシ(ポリ)エチレンオキサイド(ポリ)プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート等のポリエチレンイミン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリレートがある。上記例示に加えて、ポリエチレンイミンの代わりに、ポリエチレンイミンのエチレンオキサイド付加物(例えば、ポリエチレンイミンのエチレンオキサイド付加物/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸など)、ポリエチレンイミンのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物(例えば、ポリエチレンイミンのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物/炭素原子数12〜14の混合物であるα−オレフィンエポキシド/(メタ)アクリル酸など)を置換したものもまた、側鎖含有ポリアミン化合物に含まれる。
【0087】
(イ)ポリアルキレングリコール/ポリアルキレングリコールアルキルエーテル
本発明において収縮低減剤として好ましく使用されるポリアルキレングリコール/ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、下記式(8):
【0088】
【化12】

【0089】
で示される化合物、ならびにポリアルキレンイミンエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物(以下、単に「ポリアルキレンイミンEO・PO付加物」と称する)であることが特に好ましい。なお、上記収縮低減剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0090】
以下、上記好ましく使用される式(8)の化合物及びポリアルキレンイミンEO・PO付加物について詳細に説明する。
【0091】
第一に、本発明の水硬性材料用混和剤組成物において収縮低減剤として使用できる式(8)の化合物について説明する。上記式(8)において、Q及びQは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。この際、Q及びQは、同一であってもあるいは異なるものであってもいずれでもよい。また、Q及びQで表わされる炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の炭素数4〜30の直鎖及び分岐鎖のアルキル基;シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基及びアルキル基を有するこれらのアリール基((アルキル)アリール基);上記アリール基の少なくとも一部を水添させた水添アリール基及びアルキル基を有するこれらの水添アリール基((アルキル)水添アリール基);およびベンジル、メチルベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等の(アルキル)アラルキル基などが挙げられる。これらのうち、Q及びQは、水素原子、メチル、2−エチルヘキシル等の炭素数1〜18の直鎖及び分岐鎖のアルキル基及び上記したような炭素数4〜12の環状のアルキル基が好ましい。QOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一の式(8)の化合物中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれに付加形態であってもよい。さらに、mは、オキシアルキレン基(QO)の平均付加モル数を表し、2以上の数であり、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜30である。
【0092】
上記式(8)において、全オキシアルキレン基中に占めるオキシエチレン基の割合は、特に制限されず、所望の収縮低減性を考慮して適宜選択できる。しかしながら、Qが炭素原子数4以上の炭素原子数の大きな炭化水素基である場合には、オキシエチレン基の全オキシアルキレン基中に占める割合が高くなると、得られる収縮低減剤の空気連行性が上昇して、水硬性材料と混合する際の泡立ちが顕著になり、このような泡立ちを抑えるために消泡剤の添加を必要とする場合がある。そのため、特にQが炭素原子数4以上の炭化水素基である場合には、オキシエチレン基の付加モル数は、好ましくは、全オキシアルキレン基の付加モル数に対して、60モル%未満、より好ましくは50モル未満である。また、空気連行性を考慮すると、オキシプロピレン基を必須とすることが好ましい。この際、全オキシアルキレン基中に占めるオキシプロピレン基の割合は、特に制限されず、所望の収縮低減性を考慮して適宜選択できるが、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上であり、さらにより好ましくは50モル%以上である。
【0093】
上記収縮低減剤は、上記式(8)中の−(QO)−がオキシエチレン基と炭素原子数3〜18のオキシアルキレン基とを繰り返し単位として有する基を表わし、オキシエチレン基の平均付加モル数と該炭素原子数3〜18のオキシアルキレン基の平均付加モル数との比率が、0/100〜95/5である式(8)の収縮低減剤であることが好ましい。このようにオキシエチレン基の平均付加モル数と炭素原子数3〜18のオキシアルキレン基の平均付加モル数との比率が、0/100〜95/5であることにより、これらの基が有する機能が充分にバランスされて収縮低減作用をより充分に発揮させることができる。この際、95/5を超えると、炭素原子数3〜18のオキシアルキレン基の平均付加モル数の比率が少なくなり過ぎて、セメント分散性能が向上しすぎることにより、材料分離を生じるおそれがある。いずれにしても、上記の範囲を外れると、水硬性材料の分散性や硬化物の強度や耐久性等の性能が過度に低下するおそれがある。オキシエチレン基の平均付加モル数の比率は、より好ましくは、0/100〜90/10であり、最も好ましくは、0/100〜85/15である。
【0094】
上記式(8)の化合物の調製方法は、特に制限されず、公知の合成方法が単独であるいは適宜組み合わせて使用できる。例えば、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを、活性水素原子を有する化合物である水やメチルアルコールに公知の方法で重合することにより調製する方法等を好適に適用することができる。上記アルキレンオキシド及び活性水素原子を有する化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
上記方法において、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドは、所望の式(8)の化合物の種類によって適宜選択される。このため、プロピレンオキシドが含まれることが好ましく、また、必要により共重合可能なブチレンオキシド等が含まれることになる。更に、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシド以外に、スチレンオキシド等の他のアルキレンオキシドが必要により付加的に含まれていてもよい。
【0096】
上記式(8)の化合物の調製における重合方法としては特に限定されず、例えば、汎用性を考慮して公知の重合方法を用いることが好ましい。このような重合方法では、酸触媒又はアルカリ触媒を用いることが好ましい。上記酸触媒としては、例えば、三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒である金属や半金属のハロゲン化合物;塩化水素、臭化水素、硫酸等の鉱酸等が挙げられる。また、上記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記方法において、式(8)で表される化合物と共に式(8)で表される化合物の誘導体を含んでもよく、式(8)で表される化合物の代わりに式(8)で表される化合物の誘導体を含んでもよい。上記式(8)で表される化合物の誘導体としては、例えば、式(8)で表される化合物の末端官能基を変換してなる末端基変換体や、式(8)で表される化合物と、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、ハロゲン基等の基を1分子中に複数個有する架橋剤とを反応させて得られる架橋体等が挙げられる。上記末端基変換体としては、例えば、式(8)で表される化合物の全ての末端又は一部の末端の水酸基を、(1)炭素原子数2〜22の脂肪酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸等のジカルボン酸及び/又はその無水物でエステル化したもの;(2)ハロゲン化アルキルを用いた脱ハロゲン化水素反応でアルコキシル化したもの、すなわちアルコキシポリオキシアルキレン;(3)クロルスルホン酸、無水硫酸、スルファミン酸等の公知の硫酸化剤で硫酸化したもの、すなわちポリオキシアルキレン硫酸(塩)等が挙げられる。
【0097】
上記式(8)で表される化合物の重量平均分子量(Mw)としては特に限定されず、例えば、100〜1000000であることが好ましい。より好ましくは、200〜100000であり、更に好ましくは、300〜50000である。また、分散度としては特に限定されず、例えば、1〜100であることが好ましい。より好ましくは、1.1〜10であり、更に好ましくは、1.1〜3である。尚、本明細書中において、分散度とは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)を意味する。
【0098】
このような式(8)の化合物の具体例としては、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド(EO)・プロピレンオキサイド(PO)付加体、メタノールのEO・PO付加体、C12の第2級アルコールのEO・PO付加体、ポリプロピレンオキサイド、EO・POの共重合体などが挙げられ、これらのうち、特に、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド(EO)2モル・プロピレンオキサイド(PO)10モル付加体、メタノールのEO 1モル・PO 4モル付加体、C12の第2級アルコールのEO 9モル・PO 15モル付加体、平均付加モル数が5〜10のポリプロピレンオキサイドなどが好ましく使用される。
【0099】
(ウ)上記式(1)の構成単位(A)を有する重合体を含む乾燥収縮低減剤
本発明においてとして好ましく使用される収縮低減剤は、下記式(9):
【0100】
【化13】

【0101】
を必須成分として含み、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力が25〜50mN/mである重合体を含む乾燥収縮低減剤である。上記式(9)の構成単位(A)を有する重合体(以下、単に「構成単位(A)含有重合体」とも称する)が乾燥収縮を抑制できる明確な機構は不明であるが、以下のようにして、構成単位(A)含有重合体が乾燥収縮を抑制するものと考えられる。すなわち、乾燥収縮は、乾燥によりセメント硬化体中の毛細管内を水が移動するときに、毛細管内の水と硬化体との界面に働く水の引張り応力により生じるが、重合体は、構成単位(A)由来のDの疎水性基の導入によって、硬化体と水との界面張力を下げ、乾燥収縮の原因である水の引張り応力を低減し、その結果乾燥収縮を抑制できると考えられる。また、上記重合体は、上記構成単位(A)に加えて、下記式(10):
【0102】
【化14】

【0103】
で示される構成単位(B−1)(本明細書中では、単に「構成単位(B−1)」とも称する)及び下記式(11):
【0104】
【化15】

【0105】
で示される構成単位(B−2)(本明細書中では、単に「構成単位(B−2)」とも称する)から選ばれる少なくとも1種の構成単位(II)を必須成分として含有し、さらに下記式(12):
【0106】
【化16】

【0107】
で示される少なくとも1種の構成単位(C)(本明細書中では、単に「構成単位(C)」とも称する)を重合体全体の0〜30質量%含むことが好ましい。上記重合体が乾燥収縮を抑制できる明確な機構もまた不明であるが、以下のようにして、構成単位(A)含有重合体が乾燥収縮を抑制するものと考えられる。すなわち、構成単位(A)含有重合体における構成単位(A)の作用に加えて、特に分散性を発揮させるよう作用する構成単位(C)を、重合体中に、重合体全体の0〜30質量%と低い割合で存在させることによって、分散性は発揮させることなく、水溶性を発揮させることができ、また、分散剤との併用によって、用途や目的に応じた分散性及び乾燥収縮低減性を容易に調節できる。なお、構成単位(C)が、重合体中に30質量%を超えて多く存在すると、酸が重合体中に過剰に組み込まれることになり、得られる重合体はセメントに吸着して分散性を発揮してしまい、さらに硬化の遅延を引き起こす等の問題が生じてしまう。また、上記構成単位のうち、構成単位(II)は、重合体に水溶性を付与するという作用を有する。したがって、この乾燥収縮低減剤は、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石膏などのセメント以外の水硬材料に、乾燥収縮を効果的に低減する目的で好適に使用される。
【0108】
構成単位(A)含有重合体は、構成単位(A)を必須成分として含みかつセメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力が25〜50mN/mである重合体を含むことが必須である。この際、表面張力が上記範囲内であれば、工業レベルでの実施可能性が十分満足でき、かつ硬化後のセメントの収縮を有効に抑制できるため、鉄筋などの経時的に形状変化を起さない構造物に使用しても、セメント硬化体との間に歪を生じないので、ひび割れなどの問題が起こらない。これに対して、重合体の表面張力が50mN/mを超えると、十分な収縮抑制効果が得られず、例えば、鉄筋内で使用されると、セメント硬化体が収縮して、鉄筋とセメント硬化体との間に歪が生じて、ひび割れなどの現象を引き起こす。ここで、表面張力は低ければ低いほど好ましいが、工業レベルでの実施可能性を考慮して、表面張力の下限を25mN/mとしている。構成単位(A)含有重合体の、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力は、好ましくは、25〜46mN/m、より好ましくは25〜42mN/m、特に好ましくは25〜38mN/mである。
【0109】
なお、本明細書において、「セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力」は、下記条件および手順に従って測定された値を意味する。
【0110】
<測定条件>
測定機器:BYK−Chemie製、Dynometer(商品名)
リング:プラチナφ19.5mm
標準液:純水 72.8mN/m(20℃)
テーブル速度:1.5mm/分
測定温度:20℃
<測定手順>
25℃のイオン交換水200質量部を、長さ39mmのスターラーチップの入った300ml容のガラス製ビーカーに入れ、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら、25℃の雰囲気下で調温した太平洋セメント製普通ポルトランドセメント100質量部を投入する。投入後、回転数を700rpmとし、セメント粒子中の水溶性成分が水に十分に溶出するように30分間攪拌した後、10分間静置する。この上澄み液をろ紙(アドバンテック東洋社製、定量ろ紙5C)を用いて吸引濾過した後、さらにこのろ液を孔径0.45μmの水系フィルター(クロマトディスク25A、クラボウ社製、ジーエルサイエンス販売)でろ過してセメント上澄み水溶液を得る。調整したセメント上澄み液は、容器に入れ、窒素封入後、密栓し保管する。
【0111】
一方、上記乾燥収縮低減剤あるいは比較共重合体に25℃のイオン交換水を添加し、固形分濃度が5質量%の水溶液を調製する。この上記乾燥収縮低減剤あるいは比較共重合体を含む水溶液5質量部を、上記セメント上澄み液120質量部に添加し、十分混合して0.2質量%の試料水溶液を調製する。試料水溶液は容器に入れ、窒素封入後、密栓し、20℃に調温する。
【0112】
次に、十分に洗浄したプラチナリングをダイノメーター(Dynometer)に取り付け、20℃に調温した標準液(純水)に3mm沈め、この標準液の置かれたテーブルを1.5mm/分の速度で降下させる。この時、ダイノメーターの示す値が最大となる点を水の表面張力として較正する。次に、20℃に調温した試料溶液に十分に洗浄したプラチナリングを3mm沈め、この水溶液の置かれたテーブルを1.5mm/分の速度で降下させ、ダイノメーターの示す値が最も大きくなる点を、上記乾燥収縮低減剤あるいは比較共重合体の表面張力とする。
【0113】
上記式(9)において、D、D及びDは、水素原子、メチル基または−(CHCOOX基、好ましくは水素原子またはメチル基を表す。この際、D、D及びDは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、式:(CHCOOXにおいて、Xは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)、有機アミン基または炭化水素基を表す。この際、一価金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。なお、Xが二価金属である場合には、2個の−COO−で無水物の形態をとる。有機アミン基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及びフェニルアミン等の第一級アミン由来の基;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン及びジフェニルアミン等の第二級アミン由来の基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン及びトリフェニルアミン等の第三級アミン由来の基;およびエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の基が挙げられる。これらのうち、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が好適に挙げられる。炭化水素基は、例えば、好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは炭素原子数1〜20、特に好ましくは1〜12の炭化水素基である。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基などが挙げられる。これらのうち、Xは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基であることが好ましく、水素原子、ナトリウムまたはカルシウムであることが特に好ましい。また、上記式(9)において、pは、0〜2の整数、好ましくは0または1、特に0である。また、Dは、炭素原子数4〜30炭化水素基を表す。この際、Dの炭素原子数は、3以下であると、所望の乾燥収縮低減性が得られず、また、31以上となると、重合体の親水性と疎水性のバランスがとりにくくなるため、4〜30が好適である。Dの炭素原子数としては、好ましくは4〜30、より好ましくは4〜18さらに好ましくは4〜12、最も好ましくは5〜12の範囲である。このような炭化水素基としては、例えば、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の直鎖、分岐鎖のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基などが挙げられる。これらのうち、セメント硬化体の分散性及び乾燥収縮の低減性を考慮すると、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル等の炭素原子数4〜12のアルキル基が好ましい。
【0114】
構成単位(A)を与える単量体(以下、単に「単量体(a)」とも称する)としては、炭素原子数4〜30のモノオール類、即ち、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素原子数4〜30の飽和脂肪族アルコール類、オレイルアルコール等の炭素原子数4〜30の不飽和脂肪族アルコール類、シクロヘキサノール等の炭素原子数4〜30の脂環族アルコール類、フェノール、フェニルメタノール(ベンジルアルコール)、メチルフェノール(クレゾール)、p−エチルフェノール、ジメチルフェノール(キシレノール)、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、ナフトール等の炭素原子数6〜30の芳香族アルコール類と、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸類、あるいは、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸類とのエステル化合物等が挙げられる。なお、D、D及びDが、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である場合には、以下に詳述する構成単位(II)を与える単量体との共重合性の面から、上記の炭素原子数4〜30のアルコール類と(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル化合物を単量体(a)として用いるのが好ましい。さらに、D、DまたはDの少なくとも一つが−(CHCOOX基を表し、かつXが水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す式(9)の構成単位(A)を有する単量体(a)としては、不飽和モノカルボン酸系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸系単量体として、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が、さらにこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらのうち、不飽和モノカルボン酸系単量体が好ましく、とりわけ(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。なお、上記単量体(a)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0115】
このような単量体(a)の具体例としては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、1−ペンチル(メタ)アクリレート、1−ヘキシル(メタ)アクリレート、1−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の、各種アルキル(メタ)アクリレート類;(ジ)プロピルマレート、(ジ)ブチルマレート、(ジ)2−エチルヘキシルマレート等の、各種アルキルマレート類;(ジ)プロピルフマレート、(ジ)ブチルフマレート、(ジ)2−エチルヘキシルフマレート等の、各種アルキルフマレート類等が挙げられる。この際、これらの単量体(a)または構成単位(A)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上併用してもよい。
【0116】
上記式(10)において、D、D及びDは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくはD及びDの少なくとも一方は水素原子を表す。この際、D、D及びDは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。sは、0〜2の整数、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。DOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(10)中、nが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。構成単位(B−1)として1種類の構成単位のみを用いる場合には、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、さらに50モル%以上はオキシエチレン基であることが好ましい。
【0117】
また、上記式(10)において、uは、オキシアルキレン基(DO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。uが300を超えると、得られる重合体が分散性を発揮してしまい、これにより任意の量を添加できなくなり、所望の乾燥収縮低減性を得ることが困難になる。さらに、uが300を超えると、空気連行性が高くなり、空気量の調整が困難となり、強度低下や耐凍結融解性の低下の原因となる。この際、uは、1〜150、1〜100、1〜80、1〜50、1〜30の順で好ましい。Dは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。このような炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5−トリメチルヘキシル基、4−エチル−5−メチルオクチル基及び2−エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−,m−若しくはp−トリル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基などが挙げられる。
【0118】
構成単位(B−1)を与える単量体(以下、単に「単量体(b)」とも称する)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸又は脂肪酸の脱水素(酸化)反応物への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの付加物、あるいは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素原子数1〜30の飽和脂肪族アルコール類、アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコール等の炭素原子数3〜30の不飽和脂肪族アルコール類、シクロヘキサノール等の炭素原子数3〜30の脂環族アルコール類、フェノール、フェニルメタノール(ベンジルアルコール)、メチルフェノール(クレゾール)、p−エチルフェノール、ジメチルフェノール(キシレノール)、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、ナフトール等の炭素原子数6〜30の芳香族アルコール類のいずれかに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸又はクロトン酸とのエステル化合物等が挙げられるが、式(10)において、Dが炭化水素基となる場合に相当する、アルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸又はクロトン酸とのエステル化合物が好ましい。なお、上記単量体(b)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0119】
単量体(b)の具体例としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メチル−1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ペンチルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−オクチルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−エチル−1−ヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、セチルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、p−エチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジメチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、p−t−ブチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ドデシルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ナフトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、エチレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、プロピレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとブチレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、エチレンオキシドとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとブチレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の2種類以上のアルキレンオキシドを付加させたアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。この際、これらの単量体(b)または構成単位(B−1)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0120】
上記式(11)において、D10、D11及びD12は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、好ましくはD10及びD11の少なくとも一方は水素原子を表す。この際、D10、D11及びD12は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。xは、0〜2の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。D13Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、上記式(10)におけるDOと同様である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(11)中、nが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれに付加形態であってもよい。構成単位(B−2)として1種類の構成単位のみを用いる場合には、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、さらに50モル%以上はオキシエチレン基であることが好ましい。また、yは、オキシアルキレン基(D13O)の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。yが300を超えると、得られる重合体が分散性を発揮してしまい、これにより任意の量を添加できなくなり、所望の乾燥収縮低減性を得ることが困難になる。さらに、yが300を超えると、空気連行性が高くなり、空気量の調整が困難となり、強度低下や耐凍結融解性の低下の原因となる。yは、1〜150、1〜100、1〜80、1〜50、1〜30の順で好ましい。D14は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。なお、式(11)における置換基「D14」の定義は、式(10)における置換基「D」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0121】
構成単位(B−2)を与える単量体(以下、単に「単量体(c)」とも称する)としては、ビニルアルコールまたはイソプレンアルコール等のアルコール類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの付加物等が挙げられる。なお、上記単量体(c)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0122】
単量体(c)の具体例としては、(ポリ)エチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、ポリ)ブチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル等が挙げられる。この際、これらの単量体(c)または構成単位(B−2)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0123】
上記式(12)において、D15、D16及びD17は、水素原子、メチル基または−(CHCOOE’基を表す。この際、D15、D16及びD17は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。この際、E’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。また、qは、0〜2の整数、好ましくは0または1、特に0である。Eは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。この際、置換基「E」及び「E’」の定義は、炭化水素基を表わさない以外は式(9)における置換基「X」の定義と同様である。なお、COOE’が2個または3個存在する場合には、これらのCOOE’は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、COOE及びCOOE’が合わせて2個以上存在する場合は、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい。
【0124】
構成単位(C)を与える単量体(以下、単に「単量体(d)」とも称する)の具体例としては、不飽和モノカルボン酸系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。又、不飽和ジカルボン酸系単量体として、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が、さらにこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。中でも、D15、D16及びD17が、それぞれ独立に水素原子又はメチル基の場合に相当する、不飽和モノカルボン酸系単量体が好ましく、とりわけ(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。この際、これらの単量体(d)または構成単位(C)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0125】
構成単位(A)含有重合体は、構成単位(A)、ならびに構成単位(B−1)および/または構成単位(B−2)を必須の構成単位として含み、構成単位(C)を重合体全体の、0〜30質量%の割合で含むものである。この際、構成単位(A)、(II−a)及び(II−b)、ならびに構成単位(C)は、それぞれ、単一の構成単位であってもあるいは2種以上の構成単位であってもいずれでもよく、また、これらの構成単位(A)、構成単位(B−1)及び構成単位(B−2)、ならびに構成単位(C)は、それぞれ、ブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。また、構成単位(A)含有重合体は、上記構成単位に加えて、他の少なくとも1種の異なる構成単位(以下、単に「構成単位(IV)」とも称する)をさらに有していてもよく、このような場合にも、これらの構成単位はブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
【0126】
このような他の構成単位(IV)を与える単量体(以下、単に「単量体(e)」とも称する)としては、他の単量体成分と共重合可能な単量体があり、このような単量体の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド;前記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート、等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのエステル;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;2−アクリロイロキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルホスフェートなどの不飽和リン酸エステル類等を挙げることができる。この際、これらの単量体(e)または上記単量体(e)由来の構成単位(IV)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0127】
構成単位(A)含有重合体を製造する方法は、特に制限されず、公知の重合方法が使用できるが、一般的には、重合開始剤を用いて前記単量体成分を重合させればよい。単量体成分の重合方法は、特に制限されず、公知の重合方法が同様にあるいは修飾されて使用できるが、重合は、例えば、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。溶媒中での重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物等が挙げられる。原料単量体及び得られる重合体の溶解性並びにこの重合体の使用時の簡便さを考慮すると、水及び炭素原子数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、炭素原子数1〜4の低級アルコールがより好ましく、特にメチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等が有効である。
【0128】
水媒体中で重合を行なう場合に使用される重合開始剤は、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用でき、例えば、アンモニウム又はアルカリ金属の過硫酸塩あるいは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケトン化合物を溶媒とする重合を行なう場合に使用される重合開始剤もまた、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用できるが、具体的には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合開始剤の添加量は、特に制限されず、公知の重合方法で使用される量と同様の量が使用できる。また、重合条件も、特に制限されず、公知の重合条件と同様の条件が使用できるが、例えば、重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常、0〜120℃の範囲内で行なわれる。
【0129】
また、塊状重合の場合においても、その方法、使用される重合開始剤の種類や量、重合条件などは、特に制限されず、公知の方法などが使用できる。例えば、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が使用できる。また、塊状重合は、例えば、50〜200℃の温度範囲内で行なわれる。
【0130】
また、得られる重合体の分子量を調節することを目的として、次亜リン酸(塩)やチオール系連鎖移動剤を併用することもできる。この際に用いられるチオール系連鎖移動剤は、式:HS−D18−E(ただし、式中、D18は、炭素原子数1〜2のアルキル基を表わし、Eは、−OH、−COOM、−COOD19又はSOM基を表わし、この際、Mは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表わし、D19は、炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表わす。)で表わされ、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。さらに、重合体の分子量調整のためには、単量体(e)として(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0131】
このようにして得られた重合体は、そのままでも乾燥収縮低減剤に用いられてもよいが、有機溶媒を含まない水溶液の形で取り扱ってもよく、このような場合には、重合体をさらに一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等(好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一価金属の水酸化物)のアルカリ性物質で中和して、重合体塩の形態として乾燥収縮低減剤に使用してもよい。
【0132】
構成単位(A)含有重合体は、構成単位(A)を必須の構成単位として含む。この際、構成単位(A)の比率は、上述したように、構成単位(A)由来のDの疎水性基の導入によって、硬化体と水との界面張力を下げ、乾燥収縮の原因である水の引張り応力を下げる作用を有するため、乾燥収縮の抑制効果の点で特に重要である。このような作用を考慮すると、構成単位(A)の割合は、重合体全体の、7〜99質量%、7〜70質量%、10〜60質量%、15〜60質量%、15〜50質量%の順で好ましい。この際、構成単位(A)の割合が上記下限を下回ると、十分量の疎水性基が重合体中に導入されないため、水の引張り応力を下げる作用が十分発揮できず、重合体が乾燥収縮の抑制効果に劣ってしまう可能性がある。逆に、構成単位(A)の割合が上記上限を超えると、疎水性基が重合体中に過剰に導入されて、水に不溶性になり、水溶液の形態になれずに、硬化体と水との界面張力を下げられず、十分な乾燥収縮抑制効果が得られないおそれがある。
【0133】
また、構成単位(A)含有重合体は、上記構成単位(A)に加えて、構成単位(B−1)および/または構成単位(B−2)を必須の構成単位として含み、構成単位(C)を重合体全体の、0〜30質量%の割合で含み、さらに必要であれば構成単位(IV)を有することが好ましい。このような場合の、当該重合体における構成単位(A)の比率は上記比率と同様であり、また、他の構成単位(B−1)、(II−b)、(III)及び(IV)の比率は、分散性を発揮せずかつ優れたセメント硬化体の乾燥収縮低減・抑制効果を発揮できるものであれば特に限定されないが、これらの効果などを考慮すると、構成単位(B−1)の割合は、重合体全体の、1〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%であり、構成単位(B−2)の割合は、重合体全体の、1〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%であり;構成単位(C)の割合は、重合体全体の、0〜30質量%であり;さらに、構成単位(IV)の割合は、重合体全体の、0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%であることが好ましい。上記比率のうち、特に構成単位(C)は、重合体全体の、0〜30質量%の割合で重合体中に存在することが必須である。この際、構成単位(C)の割合が30質量%を超えると、酸が重合体中に過剰に組み込まれることになり、得られる重合体はセメントに吸着して分散性を発揮してしまう。さらに構成単位(C)の添加量に比例して、硬化時間が延長していくため、構成単位(C)は、重合体中になるべく少量で存在することが好ましく、このため、構成単位(C)の比率は、重合体全体の、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらにより好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。この際、構成単位(A)、(II−a)、(II−b)、(III)及び(IV)の割合の合計は、100質量%である。また、構成単位(A)含有重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体と構成単位(A)を与える単量体(例えば、単量体(a))とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体のカルボキシル基の少なくとも1部に対して、アルコキシポリアルキレングリコールを直接エステル化して製造してもよい。
【0134】
また、構成単位(A)含有重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリスチレン換算で500〜500,000の範囲が適当であるが、500〜300,000の範囲が好ましく、500〜200,000の範囲がより好ましく、500〜100,000の範囲がさらに好ましく、500〜80,000の範囲が特に好ましい。
【0135】
(エ)ポリアルキレンイミンEO・PO付加物
本発明においてとして好ましく使用される収縮低減剤は、ポリアルキレンイミンEO・PO付加物である。この際、ポリアルキレンイミンEO・PO付加物は、エチレンオキサイド(EO)および/またはプロピレンオキサイド(PO)を有するポリアルキレンイミンであり、このような構造をゆうしかつ収縮低減性を有するものであれば特に限定されない。好ましくは、ポリアルキレンイミンが有する活性水素原子を持つアミノ基やイミノ基の窒素原子にEOおよび/またはPOを付加して得られる化合物である。
【0136】
この際好ましく使用されるポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の炭素原子数2〜8のアルキレンイミンの1種または2種以上を常法により重合して得られる上記アルキレンイミンの単独重合体及び共重合体が挙げられる。上記ポリアルキレンイミンは、単独で使用されてもあるいは2種以上を併用してもいずれでもよい。ここで、ポリアルキレンイミンEO・PO付加物は、このようなポリアルキレンイミンにより付加物のポリアルキレンイミン鎖が形成されてなるが、当該ポリアルキレンイミン鎖は、直鎖状、分枝状、または三次元状のいずれの架橋構造であってもよい。さらに、ポリアルキレンイミンは、上記アルキレンイミンに代えてあるいは上記アルキレンイミンに加えて、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペタミン等を用いて製造されてもよい。このような場合には、ポリアルキレンイミン構造中に、第3級アミノ基に加えて、活性水素原子を持つ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)が存在することになる。これらのうち、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、エチレンジアミンが好ましく使用され、エチレンイミンがポリアルキレンイミン鎖の少なくとも一部を形成することが特に好ましい。この際、ポリアルキレンイミン鎖を形成するアルキレンイミンにおける、エチレンイミンの存在量は、特に制限されず、製造される収縮低減剤の所望の特性に応じて適宜選択されるが、エチレンイミンが、全アルキレンイミンの全モルに対して、50モル%以上(50〜100モル%)、より好ましくは60モル%以上、さらにより好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上を占めることが好ましい。この際50モル%未満であると、ポリアルキレンイミン鎖の親水性が低下する可能性がある。
【0137】
上記ポリアルキレンイミン鎖に付加されるEO及びPOは、それぞれが単独で付加してもあるいは組み合わせた形態で付加されてもよい。後者の場合には、EO及びPOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
【0138】
上記ポリアルキレンイミン鎖に付加されるEO及びPOの量は、特に制限されず、製造される収縮低減剤の所望の特性に応じて適宜選択される。好ましくは、EO及びPOの合計平均付加モル数が、1〜300、より好ましくは2〜270、さらにより好ましくは3〜250、最も好ましくは5〜220である。この際、EO及びPOの平均付加モル数が300を超えると、過剰な分散性/流動性を水硬性材料組成物に付与して、乾燥収縮低減に必要な量を添加することが困難である可能性がある。また、上記範囲を逸脱する場合には、セメント組成物などの流動性及び収縮低減性を向上する効果が十分発揮されない可能性がある。なお、上記「平均付加モル数」とは、付加物を形成することになるポリアルキレンイミンが有する活性水素原子を持つ窒素原子1モルに対して付加するEO/POのモル数の平均値を意味する。
【0139】
上記ポリアルキレンイミンEO・PO付加物の重量平均分子量は、十分な収縮低減性を発揮できる値であれば特に制限されないが、ポリアルキレンイミンEO・PO付加物の重量平均分子量は、300以上、より好ましくは400以上、さらにより好ましくは500以上、特に好ましくは600以上、最も好ましくは1,000以上であることが好ましい。また、ポリアルキレンイミンEO・PO付加物の重量平均分子量は、100,000以下、より好ましくは50,000以下、最も好ましくは30,000以下であることが好ましい。
【0140】
上記他の収縮低減剤に代えてまたは上記他の収縮低減剤に加えて、本発明の自己収縮低減剤は、高性能AE減水剤と組合わせて使用されてもよい。これにより、分散性/流動性を容易に所望のレベルになるように制御できる。ここで、高性能AE減水剤は、分散性/流動性を所望のレベルになるように制御できるものであれば特に制限されず、公知の高性能AE減水剤が使用できる。具体的には、分子内にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系高性能AE減水剤や、分子内にポリキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系高性能AE減水剤などが挙げられる。スルホン酸系高性能AE減水剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系(特開平1−113419号公報参照)等が挙げられる。また、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤としては、例えば、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開昭62−68806号公報に開示されるような、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体などが挙げられる。これらのうち、側鎖含有ポリアミン化合物との組合わせのしやすさ、分散性/流動性の制御の容易さなどを考慮すると、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤が好ましい。
【0141】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、特に制限されず、公知のポリカルボン酸系高性能AE減水剤が使用できるが、上記式(10)で示される構成単位(B−1)及び上記式(12)で示される構成単位(C)を必須の構成単位として含むポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア);上記式(11)で示される構成単位(B−2)及び上記式(3)で示される構成単位(C)を必須の構成単位として含むポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ);特開平7−53645号公報、特開平8−208769号公報、特開平8−208770号公報の如くポリエーテル化合物に不飽和カルボン酸系単量体をグラフト重合した親水性グラフト重合体などが好適である。これらの中でも、上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)及びポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)を用いるのが特に好ましい。
【0142】
以下、上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤の好ましい形態である、上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)について説明する。なお、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)及びポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)は、それぞれ単独で用いても若しくは2種以上の混合物の形態で使用してもまたはポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)及びポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)の1種または2種以上を併用してもよい。
【0143】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)は、上記一般式(10)で表される構成単位(B−1)と構成単位(C)とを必須の構成単位として含む重合体であるが、更にその他の共重合可能な単量体(e)に由来する構成単位を含むものでもよい。ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)におけるこれらの構成単位は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0144】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)における構成単位(B−1)と構成単位(C)との比率(構成単位(B−1)/構成単位(C))(質量%)としては、1〜99/99〜1であることが好ましい。また、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)における構成単位(B−1)と構成単位(C)との合計の比率(質量%)としては、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ア)全体の50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0145】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)は、上記一般式(11)で表される構成単位(B−2)と構成単位(C)とを必須の構成単位として含む重合体であるが、更にその他の共重合可能な単量体(e)に由来する構成単位を含むものでもよい。ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)におけるこれらの構成単位は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0146】
上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)において、構成単位(B−2)と構成単位(C)とが各々全構成単位中の1質量%以上を占め、構成単位(B−2)の占める割合が全構成単位中の50モル%以下であることが好ましい。構成単位(B−2)の割合が1質量%未満では、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)に含まれる(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来のオキシアルキレン基の含有量が少なすぎ、他方、構成単位(C)の割合が1質量%未満では、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)に含まれる不飽和モノカルボン酸系単量体由来のカルボキシル基の含有量が少なすぎ、分散性が低下傾向となる。また、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体の重合性が低いことから、分散性の高いポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)を高収率で得るために、構成単位(B−2)の占める割合が全構成単位中の50モル%以下とするのが好ましい。尚、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)における構成単位(B−2)と構成単位(C)との合計の比率(質量%)としては、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(イ)全体の50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0147】
または、市販のセメント分散剤を使用してもよく、具体的には、ポゾリスNo.70(リグニンスルホン酸化合物ポリオール複合体系分散剤、ポゾリス物産製)、FC−900(ポリカルボン酸系分散剤、株式会社日本触媒製)などが挙げられる。なお、上記公知のセメント分散剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0148】
本発明の(ア)自己収縮低減剤は、上述したように、(イ)他の収縮低減剤および/または(ウ)高性能AE減水剤とを組合わせてもよく、このような組合わせにより、自己収縮低減性に加えて、乾燥収縮低減性、分散性/流動性などを適宜制御することができる。この際の組成は、所望の自己収縮低減性、乾燥収縮低減性及び分散性/流動性によって適宜選択され、特に限定されるものではないが、上記(ア)自己収縮低減剤及び(イ)他の収縮低減剤を組合わせる場合の、(ア)と(イ)の質量比は、好ましくは1〜80:99〜20、より好ましくは1〜50:99〜50である。また、上記(ア)自己収縮低減剤及び(ウ)高性能AE減水剤を組合わせる場合の、(ア)と(ウ)の質量比は、好ましくは99〜1:1〜99、より好ましくは95〜5:5〜95である。さらに、上記(ア)自己収縮低減剤、(イ)他の収縮低減剤及び(ウ)高性能AE減水剤を組合わせる場合の、(ア)、(イ)及び(ウ)の質量比は、好ましくは1〜50:98〜10:1〜40、より好ましくは1〜50:98〜15:1〜35である。
【0149】
本発明の自己収縮低減剤及び上記したような組合わせ(以下、一括して「自己収縮低減剤」と称する)は、水溶液の形態でしてもよいし、又は、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用してもよい。
【0150】
本発明の自己収縮低減剤は、各種水硬性材料、すなわち、セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いることができる。そして、水硬性材料と水と本発明の自己収縮低減剤とを含有し、更に必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスターが好適である。
【0151】
上記水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、そのようなセメント組成物は、本発明の自己収縮低減剤、セメント及び水を必須成分として含んでなることになる。このようなセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0152】
この際使用されるセメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が好適であり、更に、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。また、骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0153】
本発明の自己収縮低減剤における、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比としては、単位水量100〜200kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/結合材比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好ましく、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量270〜800kg/m、水/結合材比(質量比)=0.1〜0.6が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0154】
本発明の自己収縮低減剤の配合割合は、所望の自己収縮低減性を達成できる量であれば特に制限されない。例えば、水硬性セメントを用いるモルタルやコンクリート等の水硬性材料に添加する場合の、本発明の硬性材料用混和剤組成物の量は、水硬性材料100質量部に対して、0.01〜20量部、より好ましくは0.05〜15量部であることが好ましい。上記したような量で、十分な自己収縮低減性能が確保できる。
【0155】
本発明の自己収縮低減剤はまた、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形コンクリート、振動締め固めコンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0156】
更に、本発明の自己収縮低減剤は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
【0157】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルロース、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルロース、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化若しくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0158】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0159】
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖等の単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0160】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0161】
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
【0162】
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0163】
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0164】
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0165】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0166】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
【0167】
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
【0168】
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
【0169】
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
【0170】
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0171】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0172】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0173】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0174】
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0175】
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
【0176】
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0177】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。尚、上記公知のセメント添加剤(材)は、複数の併用も可能である。
【実施例】
【0178】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。尚、本明細書中、特に断わりのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を表わすものとする。また、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0179】
下記実施例において、乾燥収縮低減性、凝結時間、モルタル空気量及びモルタルフロー値は、下記方法に従って評価した。
【0180】
1.材齢5日後の自己収縮低減率
評価用モルタルの混錬は以下のとおり実施した。下記表1に示されるように、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント936.9gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gを、ホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)を用い、モルタルの混錬を行なう。この際、上記セメントに、モルタルフロー値が210±20mmとなるように、ポリカルボン酸系共重合体を、さらに空気量が4.5±2vol%となるように消泡剤を、さらに必要に応じて他の収縮低減剤及びを、イオン交換水で希釈し、この希釈液281.1gを、混合する。より詳細には、練鉢に、セメント936.9gを入れ、5秒空練り後、15秒かけて、イオン交換水及びモルタルフロー値が210±20mmとなるような量のポリカルボン酸系共重合体、及び空気量が4.5±2vol%となるよう量の収縮低減剤及び消泡剤を投入し、さらに10秒混錬した後、混錬を停止する。次に、1350gの砂を30秒間で入れ、この混合物を再度60秒間混錬を行った後、混錬を休止する。20秒間混錬を休止して、掻き落しを行なう。掻き落した後、再度120秒間混錬する。混錬終了後、練鉢からモルタルを取り出し評価を行なう。なお、上記操作において、混錬はすべて、低速(自転速度140±5rpm、公転速度62±5rpm)で行なった。
【0181】
【表1】

【0182】
自己収縮低減性を、以下のようにして、自己収縮ひずみを測定することによって、評価する。
【0183】
ひずみゲージ(型式:KMC−70−120−H4、共和電業社製)を使用して、自己収縮ひずみを測定する。なお、このひずみ測定と同時に、貫入抵抗測定による凝結時間の測定を実施し、凝結開始時間をひずみ測定の起点とした。図1に示されるように、容器は口径×下径×高さ=91×84×127mmのポリプロピレン製の容器を使用した。また、容器内部に予めシリコングリースを塗布して、容器とモルタルの接着を防止し、容易に脱型できるようにした。上記で混錬して得られたモルタルを容器に充填した後、ポリ塩化ビニリデンシートでふたをし、20±2℃で5日間、保管すると同時に、収縮ひずみを測定した。この際、自己収縮低減率は、下記式で示されるように、基準モルタルの収縮量に対して、本発明の自己収縮低減剤の添加時に収縮を低減できた値とし、値が大きいほど収縮を低減できることを示す。また、5%以下では、低減効果がないものとみなす。なお、下記式において、基準モルタルとして、上記表1の評価用配合モルタル組成において、本発明のポリカルボン酸系共重合体の代わりに、製造例3に記載されるのと同様の方法によって製造されるポリカルボン酸系共重合体PP−3を使用し、所定のモルタルフローおよび空気量になるよう調整した供試体を用いた。
【0184】
【数1】

【0185】
2.凝結終結時間差の測定
凝結時間の測定を、温度20±2℃に設定した部屋で、ASTM C 403/C 403M−99に準じて、貫入抵抗値を測定することにより実施した。すなわち、上記1.に記載の方法と同様にして混錬して得られたモルタルを、ポリプロピレン製の容器(口径×下径×高さ=91×84×127mm)に2回に分けて詰め、注水から3または4時間目から貫入測定値の測定を開始した。注水から貫入抵抗値が28.0N/mmになるまでの経過時間を凝結終結時間(分)とし、自己収縮ひずみを測定する起点とした。
【0186】
3.モルタル空気量の測定
モルタル空気量の測定は500mlメスシリンダーを用い、JIS A 1174(まだ固まらないポリマーセメントモルタルの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法))に準拠して実施した。
【0187】
また、モルタルの空気量が4.5±2%になるように、必要に応じて消泡剤またはAE剤を添加した。なお、使用したAE剤および消泡剤としては、それぞれ、マイクロエア775S及びマイクロエア404(それぞれ、ポゾリス物産社製)を使用した。
【0188】
4.モルタルフロー値の測定
モルタルフロー値は、JIS R 5201−1997に記載の方法に準拠して、W/Cが30%の場合には0打でのフロー値を、およびW/Cが44%の場合には15打でのフロー値を、それぞれ、測定した。
【0189】
5.乾燥収縮低減性
モルタルの混錬は以下のとおり実施した。下記表2に示されるように、下記表3及び4に示される量の側鎖含有ポリアミン化合物(表中の重合体)、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(表中のPCシリーズ)、収縮低減剤(表中のDSシリーズ)及び空気量調整剤を、それぞれ、秤量して、水で希釈したもの213.7gと太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント485.8gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gを、ホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)を用い、JIS R 5201−1997に従いモルタルの混錬を行なった。より詳細には、練鉢に、上記下記表3及び4に示される量の側鎖含有ポリアミン化合物(表中の重合体)、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(表中のPCシリーズ)、収縮低減剤(表中のDSシリーズ)及び空気量調整剤を、それぞれ、秤量して、水で希釈した後、これにセメント485.8gを入れ、直ちに低速(自転速度140±5rpm、公転速度62±5rpm)で始動させる。始動させてから30秒後に、1350gの砂を30秒間で入れる。この混合物を、高速(自転速度285±10rpm、公転速度125±10rpm)にてさらに30秒混錬を行った後、混錬を休止する。90秒間混錬を休止して、休止の最初の15秒間に掻落を行なう。休止終了後、混合物を再度高速(自転速度285±10rpm、公転速度125±10rpm)で60秒間混錬する。混錬終了後、練鉢からモルタルを取り出し評価を行なう。
【0190】
【表2】

【0191】
次に、乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(40×40×160mm)の作製を、JIS R 5201に従って実施した。
【0192】
また、型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に、容易に脱型できるようにした。供試体の両端には、長さ変化測定のためのゲージプラグを装着した。混錬して得られたモルタルを型枠に流し込んだ後、密閉容器に入れ20±2℃で48時間、初期養生を行なった。48時間後に脱型し、供試体表面に付着したシリコングリースをたわしを用いて水で洗浄し、続いて20℃の静水中で5日間養生(水中養生)した。
【0193】
長さ変化の測定を、JIS A 1129−3に記載の方法に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用して実施した。静水中で5日間養生した供試体の表面の水を紙タオルでふき取った後、温度20±1℃、湿度60±5%に設定した恒温恒湿室内に3時間保管した後、測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20±1℃、湿度60±5%に設定した恒温恒湿室内に28日間保存し、適時測長した。この際、乾燥収縮低減率は、下記式で示されるように、基準モルタルの収縮量に対して、本発明の組成物の添加時に収縮を低減できた値とし、値が大きいほど収縮を低減できることを示す。また、10%以下では、低減効果がないものとみなす。なお、下記式において、基準モルタルとして、上記表1の評価用配合モルタル組成において、本発明の組成物の代わりに、ポゾリスNo.70(リグニンスルホン酸化合物ポリオール複合体系分散剤、ポゾリス物産製)0.25%添加して作製した供試体を用いた。
【0194】
【数2】

【0195】
製造例1:ポリカルボン酸系共重合体(PP−1)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱イオン水5.1部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加してなるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル単量体(以下、IPN−50と称す)の80%水溶液66.9部および過酸化水素水の30%水溶液0.84部を仕込み、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。次に、IPN−50の80%溶液267.6部、脱イオン水34.7部およびラウリルメルカプタン2.5部の混合液、アクリル酸36.2部および脱イオン水9.0部の混合液を3時間で滴下し、これと同時にL−アスコルビン酸1.1部および脱イオン水19.9部の混合液を3.5時間かけて滴下した。滴下後、引き続き58℃で1.0時間熟成し室温に冷却し、30%の水酸化ナトリウム水溶液でpH6.7に調整して、重量平均分子量30,200のポリカルボン酸系共重合体(PP−1)を得た。
【0196】
製造例2:ポリカルボン酸系共重合体(PP−2)の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、脱イオン水1698部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25)1668部、メタクリル酸332部および脱イオン水500部を混合し、さらに連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸16.7部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調製した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸アンモニウム水溶液184部をそれぞれ4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに10%過硫酸アンモニウム水溶液46部を1時間で滴下した、その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。その後、重合反応温度以下の温度で30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量24,000のポリカルボン酸系共重合体(PP−2)を得た。
【0197】
製造例3:ポリカルボン酸系共重合体(PP−3)の合成
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応器に、脱イオン水76.91部、IPN−50 149.28部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで加熱した。内温が60℃で安定したところで、過酸化水素0.23部と水11.71部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸20.17部を3時間、並びに水40.74部にL−アスコルビン酸0.3部、3−メルカプトプロピオン酸0.79部を溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下後、1時間引き続いて60℃に温度を維持し、重合反応を終了した。重合終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.5にさらに、水で希釈し重合成分の濃度が40質量%になるよう調整して、重量平均分子量は37,000のポリカルボン酸系共重合体(PP−3)を得た。
【0198】
製造例4:収縮低減剤AR−1の合成
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、エポミンSP−018(分子量1,800のポリエチレンイミン、(株)日本触媒製)58.85部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。次に炭素原子数12〜14のα−オレフィンエポキシドAOE X24(ダイセル化学工業(株)製、以下AOE X24と称す)97.1部を2時間かけて滴下した。滴下終了から1.5時間、90℃で熟成した後、50℃に温度を下げ、アクリル酸メチル(和光純薬製)14.1部を0.5時間で滴下、さらに50℃で0.5時間熟成した後、室温まで冷却、酢酸で中和し、さらに脱イオン水を加えて重合成分の濃度が13.6質量%になるように調整して、収縮低減剤AR−1の水溶液を得た。
【0199】
実施例1〜2
製造例1〜3及び4に記載の方法と同様に製造されたPP−1〜3及びAR−1について、上記のようにして、材齢5日後の自己収縮低減率及び凝結終結時間差を評価し、その結果を下記表5に示す。また、PP−1〜3及びAR−1の単量体組成を表3及び4に示す。なお、下記表3において、化合物(II)の添加量は、ポリアミン化合物(I)の活性アミン水素1個あたりの化合物(II)のモル数で表される。また、下記表5において、モルタル物性のフローは、W/Cが30%の場合の0打でのフロー値を表わす。
【0200】
【表3】

【0201】
【表4】

【0202】
【表5】

【0203】
実施例3〜4
製造例1〜3及び4に記載の方法と同様に製造されたPP−1〜3及びAR−1について、上記のようにして、乾燥収縮低減性を評価し、その結果を下記表6に示す。なお、下記表6において、モルタル物性のフローは、W/Cが44%の場合の15打でのフロー値を表わす。
【0204】
【表6】

【0205】
上記表5及び6の結果から、本発明によるPP−1(実施例1、3)は、連鎖移動剤として親水性の連鎖移動剤(3−メルカプトプロピオン酸)を使用した比較例1、2のPP−2に比して、有意に優れた自己収縮低減性及び乾燥収縮低減性を発揮することが分かる。また、本発明によるPP−1を収縮低減剤であるAR−1と組合わせる(実施例2、4)ことによって、自己収縮低減性及び乾燥収縮低減性がさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】材齢5日後の自己収縮低減率の測定に使用される装置を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材齢5日後の自己収縮低減率が15%以上であり、
下記式(1):
【化1】

ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;xは、0〜2の整数であり;ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;yは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびRは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される少なくとも一のイソプレンアルコールのアルキレンオキサイド付加体及び
下記式(2):
【化2】

ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOZ’基を表し、この際、Z’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、およびqは、0〜2の整数であり;ならびにZは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、COOZ’及びCOOZが2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい、
で示される少なくとも一の不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体成分を、疎水性連鎖移動剤を用いて、共重合することにより得られたポリカルボン酸系共重合体を必須成分として含む、自己収縮低減剤。
【請求項2】
式(1)中、yは30〜300の数である、請求項1に記載の自己収縮低減剤。
【請求項3】
該疎水性連鎖移動剤は、炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系連鎖移動剤である、請求項1または2に記載の自己収縮低減剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−76972(P2007−76972A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268385(P2005−268385)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年4月28日 社団法人セメント協会発行の「第59回セメント技術大会 講演要旨 2005」に発表
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】