説明

自己抗体抗原結合を阻害するためのペプチド試薬及び方法

本発明は、アナライトと反応性の内因的に産生された自己抗体を潜在的に含有している検査サンプル中の対象タンパク質を検出または定量するためのイムノアッセイ及びキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査サンプル中の対象タンパク質を検出するための方法及びキット、特に内因性抗アナライト抗体を含有しているかもしれないヒト検査サンプル中のタンパク質を検出するための方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイ技術はここ数十年間知られており、現在生体サンプル中の標的アナライトを検出するための各種診断目的で医療で通常使用されている。イムノアッセイは抗体のその対応する抗原への非常に特異的な結合を利用しており、前記抗原が標的アナライトである。典型的には、抗体または抗原の定量は幾つかの形態の標識法(例えば、放射性または蛍光標識法)を用いて達成される。サンドイッチイムノアッセイは、サンプル中の標的アナライトを(しばしば、固体支持体に結合されている)抗体部位に結合させ、標識抗体を捕捉されているアナライトに結合させ、次いで結合した標識抗体の量を測定することを含み、アナライトがサンプル中に存在しないならば標識抗体は結合しないので標識は標的アナライトの濃度に比例してシグナルを発生する。
【0003】
この一般的アプローチの問題は、多くの患者が臨床対象のアナライトに対する循環内因性抗体、すなわち「自己抗体」を有していることである。例えば、心臓トロポニン、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び他の臨床上重要なアナライトに対する自己抗体が記載されてい。自己抗体は2つ以上のアナライト特異的抗体から構成される典型的なサンドイッチイムノアッセイにおいて干渉を生ずる。例えば、心臓トロポニン反応性自己抗体は通常の中間断片特異的イムノアッセイを用いるcTnIの測定を干渉する恐れがある。よって、自己抗体からの干渉により、誤った結果が特に臨床診断のために確立されているカットオフ値の近くで生じ得、偽陰性の診断結果のリスク及び個人が適時に診断を得られないリストが高まり得る。
【0004】
この問題に取り組むための1つのアプローチは、自己抗体と反応するアナライトエピトープと異なる特定エピトープに結合するアナライト特異的抗体を選択することである。この一般的アプローチの後、努力は自己抗体からの干渉を避けるために2、3及び4個のアナライト特異的抗体の数千の各種組合せの使用の探究に集中している。しかしながら、この努力の大部分は失敗した。複雑なタンパク質アナライトに対する自己抗体は多分特定サンプル内でポリクローナルであり、さまざまの個人由来のサンプルの中でより多様であることさえあることが今明らかである。多様なポリクローナル自己抗体からの干渉は、アナライトタンパク質配列の25%以下の少数しかアナライト特異的抗体に結合しないという所見を説明し得、よってこのアプローチを用いた失敗を説明し得る。
【0005】
サンプル中の自己抗体による干渉を相殺する新しいイムノアッセイ方法、特にアナライト検出または捕捉抗体の再設計を伴うことなく前記干渉を相殺する前記方法に対する要望が当業界にある。
【発明の概要】
【0006】
1つの実施形態では、本発明は、検査サンプル中の少なくとも1つのタンパク質の存在または量を測定するためのイムノアッセイにおいて使用するための試薬に関し、前記試薬は少なくとも5連続アミノ酸残基を含み、前記タンパク質から誘導される少なくとも1つのペプチドを含み、更に前記試薬は内因性抗体と検査サンプル中のタンパク質間の相互作用を阻止するために使用される。
【0007】
ある実施形態では、試薬が誘導されるタンパク質は、心臓トロポニンI(配列番号1)、心臓トロポニンT(配列番号2)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)(配列番号3)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)(配列番号4)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)(配列番号5)、前立腺特異抗原(PSA)(配列番号6)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)(配列番号7)、ミオシン軽鎖2(配列番号8)、ミオシン−6(配列番号9)及びミオシン−7(配列番号10)からなる群から選択され得る。
【0008】
ペプチドは、例えば試薬が誘導されるタンパク質のアミノ酸配列由来の5連続アミノ酸残基〜15連続アミノ酸残基のアミノ酸配列を有し得る。1つの実施形態では、例えば試薬が誘導されるタンパク質は心臓トロポニンIであり、試薬は心臓トロポニンIの完全アミノ酸配列(配列番号1)由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有する。ある実施形態では、ペプチド試薬は、
【0009】
【化1】

からなる群から選択される配列、または少なくとも5連続アミノ酸残基からなるその配列を有する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、検査サンプル中の心臓トロポニンIの存在または量を測定するためのイムノアッセイにおいて使用するための試薬に関し、前記試薬は
【0011】
【化2】

からなる群から選択される配列由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドを含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質を検出する方法に関し、前記方法は、
a.少なくとも1つの対象タンパク質を含有すると疑われる検査サンプル、及び(1)対象抗体に結合する前記タンパク質から誘導される少なくとも5連続アミノ酸残基を含む少なくとも1つのペプチドであり、(2)検査サンプル中の内因性抗体と抗原間の相互作用を破壊する少なくとも1つの試薬を含む第1混合物を作成するステップ;
b.第1混合物、及び対象タンパク質と結合して第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体を形成する抗体を含む第1特異的結合パートナーを含む第2混合物を作成するステップ;
c.第2混合物を、検出可能標識にコンジュゲートされている抗体を含み、更に第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体に結合して第1特異的結合パートナー−タンパク質−第2特異的結合パートナー複合体を形成する第2特異的結合パートナーと接触させるステップ;
d.検出可能標識より発生するまたは検出可能標識から放出されるシグナルを測定し、検査サンプル中の対象タンパク質を検出するステップ;
を含む。
【0013】
上記した方法において、タンパク質は、例えば心臓トロポニンI、心臓トロポニンT、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、ミオシン軽鎖2、ミオシン−6及びミオシン−からなる群から選択され得る。
【0014】
上記した方法において、検査サンプルは全血、血清または血漿であり得る。
【0015】
方法の1つの実施形態では、第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体の形成前またはその後に、第1特異的結合パートナーを固相に固定化してもよい。加えて、第1特異的結合パートナー−タンパク質−第2特異的結合パートナー複合体の形成前またはその後に、第2特異的結合パートナーを固相に固定化してもよい。
【0016】
上記した方法において、検出可能標識は放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識及びイムノポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択され得る。
【0017】
方法の1つの実施形態では、検出可能標識はアクリジニウム化合物である。アクリジニウム化合物を使用する場合、方法は更に
a.第2特異的結合パートナーと接触している第2混合物に対して過酸化水素源を生成または供給し;
b.ステップ(a)の混合物に塩基性溶液を添加し;及び
c.ステップ(b)で発生または放出される光シグナルを測定し、サンプル中の対象タンパク質を検出する
ことを含み得る。
【0018】
上記した方法において任意のアクリジニウム化合物を使用し得る。例えば、アクリジニウム化合物は、式I:
【0019】
【化3】

(式中、
及びRは各々独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキサミドであり得る。
【0020】
或いは、アクリジニウム化合物は、式II:
【0021】
【化4】

(式中、
はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルであり;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルであり得る。
【0022】
上記した方法において、試薬は5連続アミノ酸〜15連続アミノ酸の長さを有するペプチドであり得る。
【0023】
方法の1つの実施形態では、ペプチドが誘導されるタンパク質は心臓トロポニンIであり、ペフチドは
【0024】
【化5】

からなる群から選択される配列由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含む配列を有する。
【0025】
上記した方法は、更に対象タンパク質についての標準曲線を使用するかまたは参照標準と比較することによりステップ(c)におけるシグナルの量を検査サンプル中の1つ以上の対象タンパク質の量と相関づけることにより検査サンプル中の対象タンパク質の量を定量するステップを含み得る。
【0026】
上記した方法を自動システムまたは半自動システムにおいて使用するためにアレンジしてもよい。
【0027】
更に別の実施形態では、本発明は、検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質を検出及び/または定量するためのキットに関し、前記キットは上記ペプチド試薬、対象タンパク質に結合する抗体を含む捕捉試薬、及び検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質を検出及び/または定量するための使用説明書を含む。
【0028】
上記したキットは、更に検出可能標識にコンジュゲートされている抗体を含むコンジュゲートを含み得る。
【0029】
キットの1つの実施形態では、検出可能標識は放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識及びイムノポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択され得る。
【0030】
上記したキット中に使用される検出可能標識はアクリジニウム化合物であり得る。任意のアクリジニウム化合物を使用し得る。例えば、アクリジニウム化合物は、式I:
【0031】
【化6】

(式中、
及びRは各々独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキサミドであり得る。
【0032】
或いは、アクリジニウム化合物は、式II:
【0033】
【化7】

(式中、
はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルであり;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルであり得る。
【0034】
上記したキット中の検出可能標識としてアクリジニウム化合物を配合する場合、キットは場合により更に塩基性溶液を含む。塩基性溶液は、例えば少なくとも約10のpHを有する溶液であり得る。
【0035】
上記キットは更に過酸化水素源を含み得、過酸化水素源はバッファー、過酸化水素を含有する溶液または過酸化水素を生成する酵素であり得る。過酸化水素を生成する酵素を含有するキットでは、酵素は(R)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、(S)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、(S)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、3−aci−ニトロプロパン酸オキシダーゼ、3−ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ、4−ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ、6−ヒドロキシニコチン酸デヒドロゲナーゼ、アブシシンアルデヒドオキシダーゼ、アシル−CoAオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ(銅含有)、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)、アリールアルコールオキシダーゼ、アリールアルデヒドオキシダーゼ、カテコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、コランバミンオキシダーゼ、シクロヘキシルアミンオキシダーゼ、シトクロームcオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−アスパラギン酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸(D−アスパラギン酸)オキシダーゼ、ジヒドロベンゾフェナントリジンオキシダーゼ、ジヒドロオロット酸オキシダーゼ、ジヒドロウラシルオキシダーゼ、ジメチルグリシンオキシダーゼ、D−マンニトールオキシダーゼ、エクジソンオキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルタチオンオキシダーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、グリオキシル酸オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ、インドール−3−アセトアルデヒドオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、L−アスパラギン酸オキシダーゼ、L−ガラクトノラクトンオキシダーゼ、L−グルタミン酸オキシダーゼ、L−グロノラクトンオキシダーゼ、L−リシン6−オキシダーゼ、L−リシンオキシダーゼ、長鎖アルコールオキシダーゼ、L−ピペコリン酸オキシダーゼ、L−ソルボースオキシダーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、メタンチオールオキシダーゼ、モノアミノ酸オキシダーゼ、N−メチルリシンオキシダーゼ、N−アシルヘキソサミンオキシダーゼ、NAD(P)Hオキシダーゼ、ニトロアルカンオキシダーゼ、N−メチル−L−アミノ酸オキシダーゼ、ヌクレオシドオキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ポリアミンオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、ポリビニルアルコールオキシダーゼ、プレニルシステインオキシダーゼ、タンパク質−リシン6−オキシダーゼ、プトレシンオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ピリドキサール5’−リン酸シンターゼ、ピリドキシン4−オキシダーゼ、ピロロキノリン−キノンシンターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ(CoA−アセチル化)、レチクリンオキシダーゼ、レチナールオキシダーゼ、リファマイシンBオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、第2級アルコールオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドレダクターゼ、テトラヒドロベルベリンオキシダーゼ、チアミンオキシダーゼ、トリプトファンα,β−オキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ、尿酸オキシダーゼ)、バニリルアルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ及びその組合せからなる群から選択され得る。
【0036】
1つの実施形態では、上記したキットは、心臓トロポニンI、心臓トロポニンT、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、ミオシン軽鎖2、ミオシン−6及びミオシン−7からなる群から選択されるタンパク質から誘導される試薬を含む。
【0037】
上記したキットにおいて、試薬は5連続アミノ酸〜15連続アミノ酸の長さを有するペプチドであり得る。
【0038】
上記したキットの1つの実施形態では、試薬が誘導されるタンパク質は心臓トロポニンIであり、ペプチドは
【0039】
【化8】

からなる群から選択される配列由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含む配列を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】心臓トロポニンIのアミノ酸配列を示す。
【図2】心臓トロポニンTのアミノ酸配列を示す。
【図3】甲状腺刺激ホルモン(TSH)のアミノ酸配列を示す。
【図4】ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ−サブニット(β−HCG)のアミノ酸配列を示す。
【図5】ミエロペルオキシダーゼ(MPO)のアミノ酸配列を示す。
【図6】前立腺特異抗原(PSA)のアミノ酸配列を示す。
【図7】ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)のアミノ酸配列を示す。
【図8】ミオシン軽鎖2のアミノ酸配列を示す。
【図9A】ミオシン−6のアミノ酸配列を示す。
【図9B】ミオシン−6のアミノ酸配列を示す。
【図9C】ミオシン−6のアミノ酸配列を示す。
【図10A】ミオシン−7のアミノ酸配列を示す。
【図10B】ミオシン−7のアミノ酸配列を示す。
【図10C】ミオシン−7のアミノ酸配列を示す。
【図11】5つの異なるペプチド試薬の各々及びその組合せについての濃度(nmol/mL)に対するシグナル/低コントロールの比(S/LC)のグラフを示す。
【図12】5つの異なるペプチド試薬の各々及びその組合せについての濃度(nmol/mL)に対するシグナル/低コントロールの比(S/LC)のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、検査サンプル中の対象タンパク質を検出するためのイムノアッセイ方法及びキット、特に対象タンパク質に対する内因性抗体を含有しているかもしれないヒト検査サンプル中のタンパク質を検出するための方法及びキットに関する。具体的には、本発明者らは、サンプル中の臨床上重要なアナライトの免疫検出における自己抗体による干渉の問題を解決するための代替アプローチを発見した。前記アナライトは自己抗原、例えば心臓トロポニン、ミエロペルオキシダーゼ、前立腺特異抗原及び甲状腺刺激ホルモンを含む。より具体的には、代替アプローチは、対象のタンパク質、特に自己抗原から誘導されるペプチド試薬の使用を含む。ペプチド試薬は自己抗体のタンパク質への結合を阻害し、よって自己抗体によるタンパク質の免疫検出の干渉を防ぐ。このアプローチにより、特定の検出抗体または捕捉抗体を再設計する必要なくサンプル中に存在しているかもしれない自己抗体の存在が相殺され、余分な抗ヒトIgG検出コンジュゲートを使用する必要がなく、問題のサンプルを同定するための第2アッセイの必要が避けられる。
【0042】
A.定義
本セクション及び本明細書中の全開示内容中に使用されているセクションヘッダーは限定的と意図されない。
【0043】
本明細書中で使用されている単数形“a”、“an”及び“the”は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り複数形を含む。本明細書中の数値範囲の記述について、同程度の精度でその間に介在する各数が明白に考えられる。例えば、範囲6〜9の場合6及び9に加えて数7及び8が考えられ、範囲6.0〜7.0の場合数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0が明白に考えられる。
【0044】
a)アシル(及び他の化学構造基の定義)
本明細書中で使用されている用語「アシル」は、−C(O)R基(ここで、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)を指す。アシルの代表例には、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書中で使用されている用語「アルケニル」は、2〜10個の炭素を含有し且つ2個の水素の除去により形成される少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素を意味する。アルケニルの代表例には、エテニル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、2−ヘプテニル、2−メチル−1−ヘプテニル及び3−デセニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で使用されている用語「アルキル」は、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖炭化水素を意味する。アルキルの代表例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル及びn−デシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書中で使用されている用語「アルキルラジカル」は、直鎖または分岐鎖炭化水素から誘導される一連の一般式C2n+1の一価の基を意味する。
【0048】
本明細書中で使用されている用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に結合している本明細書中に定義されているアルキル基を意味する。アルコキシの代表例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ及びヘキシルオキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書中で使用されている用語「アルキニル」は、2〜10個の炭素原子を含有し且つ少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味する。アルキニルの代表例には、アセチレニル、1−プロピニル、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ペンチニル及び1−ブチニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書中で使用されている用語「アミド」は、カルボニル基(ここで、用語「カルボニル基」は−C(O)−基を指す)を介して親分子部分に結合しているアミノ基を指す。
【0051】
本明細書中で使用されている用語「アミノ」は、−NR(ここで、R及びRは水素、アルキル及びアルキルカルボニルからなる群から独立して選択される)を意味する。
【0052】
本明細書中で使用されている用語「アルアルキル」は、本明細書中に定義されているアルキル基を介して親分子部分に結合しているアリール基を意味する。アリールアルキルの代表例には、ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル及び2−ナフタ−2−イルエチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書中で使用されている用語「アリール」は、フェニル基、或いは縮合環の1つ以上がフェニル基である二環式または三環式縮合環系を意味する。二環式縮合環系として、フェニル基がシクロアルケニル基、シクロアルキル基または別のフェニル基に縮合されているものが例示される。三環式縮合環系として、二環式縮合環系に本明細書中に定義されているシクロアルケニル基、シクロアルキル基または別のフェニル基に縮合されているものが例示される。アリールの代表例には、アントラセニル、アズレニル、フルオレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル及びテトラヒドロナフチルが含まれるが、これらに限定されない。本発明のアリール基は、場合によりアルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロ及びヒドロキシルからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい。
【0054】
本明細書中で使用されている用語「カルボキシ」または「カルボキシル」は−COHまたは−COを指す。
【0055】
本明細書中で使用されている用語「カルボキシアルキル」は−(CHCOHまたは−(CHCO基(ここで、nは1〜10である)を指す。
【0056】
本明細書中で使用されている用語「シアノ」は−CN基を意味する。
【0057】
本明細書中で使用されている用語「シクロアルケニル」は3〜10個の炭素原子及び1〜3個の環を有する非芳香族環式または二環式環系を指し、各5員環は1個の二重結合を有し、各6員環は1または2個の二重結合を有し、各7〜8員環は1〜3個の二重結合を有し、各9〜10員環は1〜4個の二重結合を有する。シクロアルケニル基の代表例には、シクロヘキセニル、オクタヒドロナフタレニル、ノルボルニレニル等が含まれる。シクロアルケニル基は場合によりアルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロ及びヒドロキシルからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい。
【0058】
本明細書中で使用されている用語「シクロアルキル」は3〜12個の炭素原子を有する飽和単環式、二環式または三環式炭化水素環系を指す。シクロアルキル基の代表例には、シクロプロピル、シクロペンチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、アダマンチル等が含まれる。本発明のシクロアルキル基は場合によりアルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロ及びヒドロキシルからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい。
【0059】
本明細書中で使用されている用語「シクロアルキルアルキル」は−R基(ここで、Rはアルキレン基であり、Rはシクロアルキル基である)を意味する。シクロアルキルアルキル基の代表例はシクロヘキシルメチル等である。
【0060】
本明細書中で使用されている用語「ハロゲン」は−Cl、−Br、−Iまたは−Fを意味する。用語「ハライド」は、1つのパートがハロゲン原子であり、他のパートがハロゲンよりも余り電気的陰性でない元素(例えば、アルキルラジカル)である二元化合物を意味する。
【0061】
本明細書中で使用されている用語「ヒドロキシル」は−OH基を意味する。
【0062】
本明細書中で使用されている用語「ニトロ」は−NO基を意味する。
【0063】
本明細書中で使用されている用語「オキソアルキル」は−(CHC(O)R(ここで、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルであり、nは1〜10である)を指す。
【0064】
本明細書中で使用されている用語「フェニルアルキル」はフェニル基で置換されているアルキル基を意味する。
【0065】
本明細書中で使用されている用語「スルホ」は−SOH基を意味する。
【0066】
本明細書中で使用されている用語「スルホアルキル」は−(CHSOHまたは−(CHSO基(ここで、nは1〜10である)を指す。
【0067】
b)アニオン
本明細書中で使用されている用語「アニオン」は無機または有機酸のアニオンを指し、前記酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、マンデル酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ホスフェート、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸及びフルオロスルホン酸、並びにその組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
c)抗体
本明細書中で使用されている用語「抗体」は、実質的に免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によりエンコードされる1つ以上のポリペプチドから構成されるタンパク質を指し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及びその断片、並びに免疫グロブリン遺伝子配列から工学操作された分子を包含する。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、並びにミリアド免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεとして分類され、これらはそれぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。
【0069】
d)過酸化水素を生成する酵素
本明細書中で使用されている用語「過酸化水素を生成する酵素」は、反応生成物として分子式Hを有する化合物、すなわち過酸化水素を生成し得る酵素を指す。過酸化水素を生成する酵素の非限定例を以下の表1にリストする。
【0070】
【表1】



【0071】
e)自己抗体
本明細書中で使用されているフレーズ「自己抗体」は、アナライトに結合する抗体であって、該抗体が産生される被験者において内因的に産生されるものを指す。
【0072】
f)特異的結合パートナー
本明細書中で使用されているフレーズ「特異的結合パートナー」は特異的結合対のメンバー、すなわち分子の1つが化学的または物理的手段を介して第2分子に特異的に結合する2つの別々の分子である。従って、一般的イムノアッセイの抗原及び抗体特異的結合対に加えて、他の特異的結合対にはビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター及び受容体分子、補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素等が含まれ得る。更に、特異的結合対には、元の特異的結合対のアナログであるメンバー、例えばアナライトアナログが含まれ得る。免疫反応性特異的結合メンバーには、組換えDNA分子により形成されるものを含めた抗原、抗原断片、モノクローナル及びポリクローナルの両方の抗体及び抗体断片、並びにその複合体が含まれる。
【0073】
g)特異的結合パートナー−タンパク質複合体
本明細書中で使用されているフレーズ「特異的結合パートナー−タンパク質複合体」は、対象タンパク質である抗原と抗体の組合せを指し、抗体とタンパク質は抗体上の抗原組合せ部位と抗原エピトープ間の特異的非共有相互作用により結合されている。
【0074】
h)検出可能標識
本明細書中で使用されている用語「検出可能標識」は、カップリングさせた1つ以上の分子の状態の変化の光学的、電気的または他の物理的インジケーションにより測定可能なシグナルを発生する部分を指す。前記物理的インジケーターは分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電磁気的、放射化学的及び化学的手段を包含し、非限定的に蛍光、化学蛍光、化学発光等が例示される。好ましい検出可能標識には、本明細書中の以下のセクションBに記載されている式Iに記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキサミド及び本明細書中の以下のセクションBに記載されている式IIに記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキシレーシアリールエステルのようなアクリジニウム化合物が含まれる。
【0075】
i)被験者
本明細書中で使用されている用語「被験者」及び「患者」は、被験者が任意の形の治療を受けたかまたは現在受けているかに関係なく互換可能に使用されている。本明細書中で使用されている用語「被験者」は脊椎動物を指し、脊椎動物には哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、家兎、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット及びマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルのようなサル、チンパンジー等)、及びヒト)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、被験者はヒトである。
【0076】
j)検査サンプル
本明細書中で使用されている用語「検査サンプル」は、一般的には対象タンパク質について検査する及び/または対象タンパク質を含有すると疑われ、対象タンパク質に対する自己抗体も含んでいるかもしれない生体材料を指す。生体材料は任意の生体ソースから誘導され得るが、好ましくは対象タンパク質を含有していそうな体液である。生体材料の例には、便、全血、血清、血漿、赤血球、血小板、間質液、唾液、眼内液、脳脊髄液、汗、尿、腹水、粘液、鼻汁、唾液、滑液、腹腔液、膣液、月経分泌物、羊水、精液、土壌等が含まれるが、これらに限定されない。検査サンプルは生体ソースから入手したまま直接使用しても、またはサンプルの特性を修飾するために前処理した後使用してもよい。例えば、前処理には血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈等が含まれる。前処理方法には、濾過、沈殿、希釈、蒸留、混合、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加、溶解等も含まれ得る。前処理方法を検査サンプルに対して使用する場合、前処理方法は対象タンパク質を未処理検査サンプル(例えば、すなわち、前処理方法にかけられていない検査サンプル)中の濃度に比例した濃度で検査サンプル中に残存させるような方法である。
【0077】
B.ペプチド試薬
自己抗原には、被験者において特定の病的状態または損傷に関連して内因的に産生されることが公知の多数のタンパク質が含まれる。自己抗体が同定されている自己抗原には、トロポニン、すなわち心臓トロポニンI(配列番号1)及び心臓トロポニンT(配列番号2);甲状腺刺激ホルモン(TSH)(配列番号3);ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ−サブニット(β−HCG)(配列番号4);ミエロペルオキシダーゼ(MPO)(配列番号5);前立腺特異抗原(PSA)(配列番号6);ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)(配列番号7);ミオシン軽鎖2(配列番号8);ミオシン−6(配列番号9)及びミオシン−7(配列番号10)が含まれる。
【0078】
本発明のペプチド試薬は標的自己抗原のアミノ酸配列から誘導され、自己抗原に対する自己抗体による干渉を防ぐためにイムノアッセイフォーマットで使用され得る。より具体的には、ペプチド試薬は自己抗原と検査サンプル中に存在しているかもしれない自己抗原に対する自己抗体間の相互作用を阻止するために使用される。各ペプチド試薬は単独で、または標的タンパク質から誘導される1つ以上の他のペプチド試薬と一緒に使用され得る。同一標的タンパク質から誘導される異なるペプチド試薬を組み合わせると、相乗的阻止効果が得られると考えられる。
【0079】
ペプチド試薬は標的自己抗原のアミノ酸配列由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含む。1つの実施形態では、ペプチド試薬は標的自己抗原のアミノ酸配列由来の5〜15連続アミノ酸残基を含む。例えば、心臓トロポニンIを標的自己抗原として考えれば、ペプチド試薬は心臓トロポニンIのアミノ酸配列(図1;配列番号1)中のどこかに由来するの5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。例えば、ペプチド試薬は以下のアミノ酸配列:ADGSS(残基1−5)、KFFES(残基205−209)またはKKKSKISASRKLQLK(残基35−49)、或いは心臓トロポニンIのアミノ酸配列(配列番号1)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の他の配列を含み得る。表2には、心臓トロポニンI(配列番号1)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表2中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号1由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0080】
【表2】


【0081】
心臓トロポニンT(配列番号2)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬は心臓トロポニンTのアミノ酸配列(配列番号2)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表3には、心臓トロポニンT(配列番号2)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表3中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号2由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0082】
【表3】


【0083】
甲状腺刺激ホルモン(TSH)(配列番号3)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬はTSHのアミノ酸配列(配列番号3)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表3には、TSH(配列番号3)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表4中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号3由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0084】
【表4】


【0085】
ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ−サブニット(β−HCG)(配列番号4)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬はβ−HCGのアミノ酸配列(配列番号4)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表5には、β−HCG(配列番号4)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表5中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号4由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0086】
【表5】



【0087】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)(配列番号5)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬はMPOのアミノ酸配列(配列番号5)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表6には、MPO(配列番号5)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表6中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号5由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0088】
【表6】




【0089】
前立腺特異抗原(PSA)(配列番号6)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬はPSAのアミノ酸配列(配列番号6)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表6には、PSA(配列番号6)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表7中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号6由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0090】
【表7】




【0091】
ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)(配列番号7)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬はhBNPのアミノ酸配列(配列番号7)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表8には、hBNP(配列番号7)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表8中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号7由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0092】
【表8】



【0093】
ミオシン軽鎖2(配列番号8)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬はミオシン軽鎖2のアミノ酸配列(配列番号8)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表9には、ミオシン軽鎖2(配列番号8)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表9中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号8由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0094】
【表9】



【0095】
ミオシン−6(配列番号9)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬はミオシン−6のアミノ酸配列(配列番号9)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表10には、ミオシン−6(配列番号9)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表10中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号9由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0096】
【表10】





【0097】
ミオシン−7(配列番号10)が標的自己抗原である場合、ペプチド試薬はミオシン−7のアミノ酸配列(配列番号10)中のどこかに由来する5〜15連続アミノ酸残基の配列を含む。表11には、ミオシン−7(配列番号10)由来の5連続アミノ酸残基から構成される典型的ペプチド試薬についてのアミノ酸配列がリストされている。追加のペプチド試薬は、表11中にリストされている5アミノ酸長配列のいずれか1つ+前記5アミノ酸長配列に(タンパク質アミノ配列内のいずれかの側から)連続する配列番号10由来の多くとも全部で10個の追加連続アミノ酸残基を含む多くとも15アミノ酸残基の長さを有し得る。
【0098】
【表11】




【0099】
ペプチド試薬のいずれか1つが場合によりN末端及び/またはC末端で修飾されてもいてもよい。N末端修飾には、例えばアセチル化[Ac]、ベンジルオキシカルボニル[Cbz]、ビオチン[Btn]、シンナモイル化[Cinn]、ダブシル[Dabc]、ダブシル[Dabs]、シンナモイル化[Cinn]、ダブシル[Dabc]、ダブシル[Dabs]、ダンシル[Dans]、ジニトロフェニル[Dnp]、フルオレセイン[Flc]、FMOC[Fmoc]、ホルミル化[Form]、リサミンローダミン[Liss]、ミリストイル化[Myrs]、N−メチル[Nme]、パルミトイル化[Palm]、ステロイル化[Ster]及び7−メトキシクマリン酢酸[Mca]が含まれる。C末端修飾には、例えばアミド[NH2]、4−Branch MAP樹脂[MAPC]及びヒドロキシル[OH]が含まれる。
【0100】
そこからペプチド試薬を誘導しようとするタンパク質、よって出発アミノ酸配列を考えると、一方または両方の末端に対する修飾を有するペプチドを含めたペプチドまたは複数のペプチドのライブラリーは容易に商業的に利用可能な外注ペプチド合成サービスにより作成され得る。前記サービスは、現在例えばSigma−Genosys(PEPscreen(登録商標)として)、Invitrogen及びGeneTel Laboatoriesからルーチンに利用可能である。
【0101】
本発明に記載のペプチド試薬は、当業者が認識している幾つかの検出方法のいずれかにより自己抗体の標的タンパク質に対する結合の阻害について試験し得る。典型的には、ペプチド試薬は濃度の異なる幾つかの溶液を調製するために希釈剤を用いて作成される。各溶液を選択した量の公知量の自己抗体及び標的タンパク質を含有する検査サンプルと組み合わせる。検出可能標識及び標的タンパク質に対する特異的結合パートナー(すなわち、抗体)を含む検出コンジュゲートも添加する。検出コンジュゲートより発生するシグナルを使用して、ペプチド試薬の各希釈物の標的タンパク質に対する自己抗体の結合に関する相対的阻害活性を定量し得る。
【0102】
例えば、各々が標的タンパク質から誘導される異なるアミノ酸配列を有する各ペプチド試薬の等モル量の出発溶液を得、次いで予め選択した異なる濃度(典型的には、nmol/mL範囲)の溶液を得るために適当なプレインキュベーション希釈剤を用いて希釈し得る。標的タンパク質(典型的には、組換えタンパク質)をマイクロプレート上に適当なバッファー溶液を用いてコーティングし、標的タンパク質をプレートに結合させるのに十分な条件下で、例えば38℃で約1時間維持し得る。次いで、タンパク質にウシ血清アルブミン及びスクロースのPBS中溶液を順次用いてオーバーコーティングし得る。マウス抗ヒトIgGを当業界で公知の標識法に従って検出可能標識で標識することにより検出コンジュゲートを作成し得る。例えば、検出可能標識は化学発光化合物(例えば、アクリジニウム化合物)であり得るが、これに限定されない。
【0103】
次いで、阻害剤ペプチド試薬の各希釈物を標的自己抗原に対する内因性自己抗体を公知量含有する検査サンプルと好ましくは約1:1の容量比で混合する。生じた溶液をマイクロプレート中に配置し、密封し、ペプチド試薬の自己抗体に対する結合を得るのに十分な条件で、例えば室温で約6〜24時間維持する。ポジティブ及び低コントロールである検査サンプルを適当なプレインキュベーション希釈剤で希釈し、マイクロプレートに例えば3組配置する。プレートを結合を得るのに十分な条件で、例えば37℃で少なくとも約2時間インキュベートし、プレートを適当なバッファー(例えば、ARCHITECT(登録商標)洗浄バッファー)で洗浄する。次いで、検出コンジュゲートをプレートに添加する。例えば、検出コンジュゲートは検出可能標識にコンジュゲートされているマウス抗ヒトIgG特異的モノクローナル抗体であり得る。プレートを再び検出コンジュゲートを標的自己抗原に結合させるのに十分な条件で、例えば37℃で約1時間インキュベートした後、洗浄バッファーを用いて最終洗浄する。
【0104】
検出のために、マイクロプレートを選択した具体的標識及び検出方法に適した方法に従って処理する。例えば、アクリジニウム化合物が検出可能標識である検出コンジュゲートを用いる場合には、マイクロプレートをマイクロプレートリーダー(例えば、Mithrasマイクロプレートリーダー,Berthold Technologies Inc,テネシー州オークリッジ)に充填し、適当な温度(例えば、28℃)で平衡化する。プレトリガー溶液及びトリガー溶液を順次添加した後、各ウェルからの化学発光シグナルを数秒間記録する。次いで、生じた化学発光シグナルを記録する。シグナルのデータ分析は、各ペプチド試薬による阻害の相対強度を示すために各ペプチド試薬の濃度に対するシグナル対低コントロールの比(S/LC)のプロットとしてシグナルを比較することを含み得る。
【0105】
C.検査サンプル中の対象タンパク質を検出するためのイムノアッセイ
本発明は、標的タンパク質に対する自己抗体が存在するか存在しないかもしれない検査サンプル中の対象のタンパク質アナライトを検出するためのイムノアッセイにおける本明細書中に開示されているペプチド試薬の使用方法にも関する。対象のタンパク質アナライトは典型的には自己抗原である。本明細書中の他の所に記載されているように、それに対する自己抗体が発表されているタンパク質である自己抗原の例には、心臓トロポニン、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中に記載されているペプチド試薬及び関連方法は、まだそれに対する自己抗体は発表されていないが、その自己抗体がタンパク質の免疫検出を干渉する恐れがある診断対象の他のタンパク質の検出にも適用され得る。
【0106】
本発明の方法は、被験者から検査サンプルを採取し、その後サンプル中に存在しているかもしれないアナライトに対する自己抗体の存在を相殺しながら、免疫検出を用いて対象タンパク質、特に臨床対象の自己抗原の存在を検出することを含む。これは、サンプル中に存在しているかもしれない自己抗体のタンパク質への結合を阻害するタンパク質から誘導されるペプチド試薬を提供することにより部分的に達成される。
【0107】
イムノアッセイ方法
本発明の方法が多様のフォーマットで実施されるイムノアッセイに適用され得ることは認識されている。各種イムノアッセイフォーマットが対象タンパク質の検出そのもの及びペプチド試薬の阻害強度を評価するための本明細書中に開示されているペプチド試薬の検査の両方に対して適用され得る。イムノアッセイの概説は、全文を参照により本明細書に組み入れるMEHODS IN CELL BIOLOGY,VOLUME 37:ANTIBODIES IN CELL BIOLOGY,Asai編,Academic Press Inc.,New York(1993)、及びBASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY,第7版,Stites & Terr編(1991)中にある。
【0108】
本発明に記載のペプチド試薬は、タンパク質に対する自己抗体が存在しているかもしれない検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質(抗原)の免疫検出を助ける。本明細書中の他の所に記載されているように、ペプチド試薬が誘導されるタンパク質は、例えば心臓トロポニンI、心臓トロポニンT、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、ミオシン軽鎖2、ミオシン−6及びミオシン−7からなる群から選択され得る。典型的には、検査サンプルは例えば全血、血清または血漿であるが、対象タンパク質に対する自己抗体をも含み得る対象タンパク質を含有していると疑われる任意の生体材料、好ましくは体液であり得る。
【0109】
使用に際し、本明細書中に開示されている少なくとも1つのペプチド試薬を検査サンプルと組合せて、第1混合物を形成する。よって、第1混合物は少なくともペプチド試薬を含み、ある量の標的タンパク質及び標的タンパク質に対する自己抗体を含有しているかもしれない。標的タンパク質及び該タンパク質に対する内因性自己抗体がサンプル中に存在している場合、ペプチド試薬は検査サンプル中の自己抗体とタンパク質間の相互作用を破壊し、すなわち阻止して、別の結合パートナーと特異的に結合しない標的タンパク質が残る。次いで、前記方法を典型的なサンドイッチイムノアッセイフォーマットに従って進行させる。例えば、次いで第1混合物を第1特異的結合パートナー(すなわち、対象タンパク質と特異的に結合する抗体)と組み合わせることにより第2混合物を作成する。タンパク質及び抗体対が第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体を形成する。次いで、第2混合物に検出コンジュゲート(すなわち、検出可能標識にコンジュゲートされている抗体)を導入する。検出コンジュゲートの抗体もタンパク質の特異的結合パートナー(すなわち、第2特異的結合パートナー)である。検出コンジュゲートの抗体は第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体に結合して、第1特異的結合パートナー、タンパク質及び第2特異的結合パートナーを含む免疫検出複合体を形成する。ペプチド試薬がサンプル中に存在している自己抗体の標的タンパク質に対する結合を防ぐので、ペプチド試薬により自己抗体が免疫検出複合体の形成を干渉するのが防止される。シグナルが検出コンジュゲート上の検出可能標識より発生しまたは検出可能標識から放出され、シグナルは検査サンプル中の対象タンパク質の存在を検出するために使用する。検出コンジュゲートより発生したシグナルは、免疫検出複合体の形成速度(k1)対免疫検出複合体の解離速度(k2)より調べられる対象タンパク質の濃度に比例する。
【0110】
方法は、例えばアクリジニウム化合物の検出可能標識としての使用を含み得る。アクリジニウム化合物を使用する場合、方法は更に第2混合物に対して過酸化水素源を生成または供給し、生じた混合物に塩基性溶液を添加し、発生または放出される光シグナルを測定し、サンプル中の対象タンパク質を検出することを含む。過酸化水素源はバッファー、過酸化水素を含有する溶液または過酸化水素を生成する酵素であり得る。塩基性溶液は例えば少なくとも約10のpHを有する溶液である。
【0111】
方法は場合により固相の使用を含み得る。例えば、第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体を形成する前またはその後に、第1特異的結合パートナーを固相上に固定化してもよい。第1特異的結合パートナー−タンパク質−第2特異的結合パートナー複合体を形成する前またはその後に、第2特異的結合パートナーを固相上に固定化してもよい。使用する場合、固相は使用しようとする抗体を結合させるのに十分な表面親和性を有する適当な材料であり得、多数の形態、例えば磁気粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、水晶、フィルム、濾紙、ディスクまたはチップの形態をとり得る。有用な固相材料には、天然高分子炭水化物及びその合成的に修飾、架橋または置換した誘導体、例えば寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換及び架橋グアーガム、セルロースエステル、特に硝酸及びカルボン酸とのセルロースエステル、混合セルロースエステル及びセルロースエーテル;窒素を含有する天然ポリマー、例えば架橋または修飾ゼラチンを含めたタンパク質及び誘導体;天然炭化水素ポリマー、例えばラテックス及びゴム;合成ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル及びその部分加水分解誘導体を含めたビニルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、上記重縮合物のコポリマー及びターポリマー(例えば、ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタンまたはポリエポキシドのような他のポリマー);無機材料、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムを含めたアルカリ土類金属及びマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、アルミニウム及びマグネシウムのケイ酸塩;及びアルミニウムまたはケイ素の酸化物または水和物、例えばクレー、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲルまたはガラス(これらの材料は上記ポリマー材料と一緒にフィルターとして使用され得る);並びに上記クラスの混合物またはコポリマー、例えば既存の天然ポリマーに対する合成ポリマーの重合を開始することにより得られるグラフトコポリマーが含まれる。これらの材料はすべて適当な形状(例えば、フィルム、シート、チューブ、粒子またはプレート)で使用され得、または適切な不活性担体(例えば、紙、ガラス、プラスチックフィルム、ファブリック等)上にコーティング、結合またはラミネートしてもよい。ニトロセルロースはモノクローナル抗体を含めた各種の試薬に対して優れた吸収及び吸着特性を有している。ナイロンも類似の特性を有しており、適当である。
【0112】
或いは、固相はミクロ粒子を構成し得る。本発明において有用なミクロ粒子は適当なタイプの粒状材料から当業者により選択され得、ポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、または類似の材料から構成されるものが含まれる。更に、ミクロ粒子は磁性または常磁性ミクロ粒子、例えばカルボキシル化磁性ミクロ粒子であり得る。本発明の方法は、固相がミクロ粒子からなる自動及び半自動システムを含めたミクロ粒子テクノロジーを利用するシステムにおいて使用するためにアレンジされ得る。前記システムには、それぞれ欧州特許出願公開Nos.EP 0 425 633及びEP 0 424 634に対応する係属中の米国特許出願No.425,651及び米国特許No.5,089,424、並びに米国特許No.5,006,309に記載されている
【0113】
特定実施形態では、固相は1つ以上の電極を含む。抗体を1つ以上の電極に対して直接または間接的に固定し得る。1つの実施形態では、例えば、第1特異的結合パートナーの抗体を磁性または常磁性ミクロ粒子に固定し得、その後マグネットを用いて電極表面の近傍に配置する。1つ以上の電極が固相として働くシステムは、検出が電気化学的相互作用に基づいている場合に有用である。このタイプの典型的システムは、例えば米国特許No.6,887,714(2005年5月3日発行)に記載されている。基本的方法を電気化学的検出に関して更に以下に記載する。
【0114】
固相の選択に影響を与える他の考慮すべき要件には、標識実体の非特異的結合を最小限とする能力及び使用する標識化システムとの適合性が含まれる。例えば、蛍光標識と一緒に使用される固相はシグナル検出できるように十分に低いバックグラウンド蛍光を有していなければならない。
【0115】
よって、本発明によれば、対象タンパク質の存在を検出するための本発明のイムノアッセイは固体支持体であり得る固相を用いる不均一アッセイである。イムノアッセイは、例えば外因性抗体を固相上に固定化することにより実施され、前記外因性抗体が対象タンパク質上の少なくとも1つのエピトープと反応性であり、第1特異的結合パートナーとして機能する。ペプチド試薬を検査サンプルに導入する。次いで、第1特異的結合パートナーを対象タンパク質へ特異的結合させ、よって固相に結合されている第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体を形成するのに十分な条件下で検査サンプルを第1特異的結合パートナーと接触させる。検査サンプルが少なくとも1つのタンパク質に対する自己抗体を含有している場合、ペプチド試薬は対象タンパク質と自己抗体間の相互作用を阻止する。固相に結合した第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体を、検査サンプル中に存在している対象タンパク質に対して検出コンジュゲートを特異的結合させるのに十分な条件下で検出コンジュゲートと接触させる。こうして、第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体及び検出コンジュゲートを含む免疫検出複合体が形成される。
【0116】
典型的には、検出コンジュゲートは検出可能標識を含む。使用する検出アプローチに応じて、免疫検出複合体の光学的、電気的または状態変化シグナルを測定する。よって、免疫検出複合体は典型的には、形成されると物理的検出及び/または定量を受けやすいシグナルを発生する分子のコンフィギュレーションである。イムノアッセイは例示の目的で一連のステップを含むと上記されているが、検査サンプルを第1(捕捉)抗体及び第2(検出)抗体と同時に、または任意の順序で逐次接触させてもよい。接触順序に関係なく、自己抗体がサンプル中に存在しているならば、ペプチド試薬は対象タンパク質の検査サンプル中に存在している自己抗体との相互作用を阻止する。
【0117】
本発明に記載のサンドイッチイムノアッセイの1つのフォーマットでは、検出は第1特異的結合パートナー、対象タンパク質及び第2特異的結合パートナー(検出コンジュゲート)を含む固相固定した免疫検出複合体からのシグナルを検出することを含む。1つの実施形態では、免疫検出複合体を典型的には洗浄により固相から分離し、結合した標識からのシグナルを検出する。本発明に記載のサンドイッチイムノアッセイの別のフォーマットでは、免疫検出複合体は固相固定した複合体を残しており、その後検出される。
【0118】
抗体
本発明に記載のイムノアッセイでは、第1特異的結合パートナーはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、親和性成熟した抗体または抗体断片を含めた抗体であり得る。同様に、第2抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、親和性成熟した抗体または抗体断片であり得る。
【0119】
モノクローナル抗体はタンパク質/抗原に対して非常に特異性であるが、好ましくはポリクローナル抗体ができるだけ多くのタンパク質/抗原を固定化するための捕捉(第1)抗体として使用され得る。この後、タンパク質/抗原に対して本質的により高い結合特異性を有するモノクローナル抗体を検出(第2)抗体として使用し得ることが好ましい。いずれの場合も、第1特異的結合パートナーとして働く抗体及び第2特異的結合パートナーとして働く抗体は、好ましくは1つの抗体の妨害または1つの抗体による他の抗体により認識されるエピトープとの干渉を避けるためにタンパク質上の2つの非重複エピトープを認識する。各抗体が他の抗体の結合を干渉することなく、使用する複数の抗体が対象タンパク質上の異なるエピトープに同時に結合できることが好ましい。
【0120】
ポリクローナル抗体は、免疫原を適当な非ヒト哺乳動物(例えば、マウスまたは家兎)に注射(例えば、皮下または筋肉内注射)することにより産生される。一般的に、免疫原は標的抗原(対象タンパク質)に対して比較的高い親和性を有する高力価の抗体の産生を誘導しなければならない。
【0121】
所望ならば、抗原を当業界で公知のコンジュゲーション技術により担体タンパク質にコンジュゲートしてもよい。通常使用されている担体には、キーホールインペットヘモシアニン(KLH)、サイログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)及び破傷風トキソイドが含まれる。次いで、コンジュゲートは動物を免疫化するために使用される。
【0122】
次いで、動物から採取した血液サンプルから抗体を得る。ポリクローナル抗体を産生するために使用される技術は、文献(例えば、Methods of Enzymology,“Production of Antisera With Small Doses of Immunogen:Multiple Intradermal Injections”,Langoneら編(Acad.Press,1981)を参照されたい)に広く記載されている。動物より産生されたポリクローナル抗体を、例えば標的抗原が結合しているマトリックスに結合させ、マトリックスから溶離させることにより更に精製してもよい。当業者はポリクローナル及びモノクローナル抗体を精製及び/または濃縮するために免疫学分野で一般的な各種技術を知っている(例えば、Coliganら(1991)Unit 9,Current Protocols in Immunology,Wiley Interscienceを参照されたい)。
【0123】
多くの用途に対して、モノクローナル抗体(mAb)が好ましい。mAbを分泌するハイブリドーマを産生するために使用される一般的方法は公知である(Kohler and Milstein(1975)Nature,256:495)。簡単に説明すると、Kohler and Milsteinが記載しているように、技術はメラノーマ、奇形癌、或いは頸部、グリオームまたは肺の癌を有する5人の別々の癌患者の限局排出リンパ節からリンパ球を単離し、細胞をプールし、細胞をSHFP−1と融合することを含む。癌細胞株に結合する抗体の産生についてハイブリドーマをスクリーニングする。mAbの中での特異性の確認は、対象mAbの基本的反応パターンを調べるためにELISAのようなルーチンのスクリーニング技術を用いて実施され得る。
【0124】
本明細書中で使用されている用語「抗体」は、ファージディスプレーテクノロジーを用いて産生/選択され得る抗原に結合する抗体断片、例えば一本鎖抗体(scFvまたはその他)を包含する。細菌(バクテリオファージまたはファージ)を感染させるウイルスの表面上で抗体断片を発現する能力により、例えば1010以上の非結合クローンのライブラリーから単一結合抗体断片を単離することができる。ファージ(ファージディスプレー)の表面上で抗体断片を発現させるために、抗体断片遺伝子をファージ表面タンパク質をエンコードする遺伝子(例えば、pIII)に挿入し、抗体断片−pIII融合タンパク質をファージ表面上で提示する(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554;Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res.,19:4133−4137)。
【0125】
ファージの表面上の抗体断片は機能性であるので、ファージを有する抗原結合抗体断片を抗原親和性クロマトグラフィーにより非結合ファージから分離し得る(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。抗体断片の親和性に応じて、1回の親和性選択で20〜1,000,000倍の濃縮係数が得られる。しかしながら、細菌を溶離ファージで感染させることにより、より多くのファージが増殖し、別の回の選択にかけられ得る。このようにして、1回で1000倍の濃縮が2回の選択で1,000,000倍になり得る(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。よって、濃縮が低くても(Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597)、複数回の親和性選択によりまれなファージが単離され得る。抗原に対するファージ抗体ライブラリーの選択により濃縮が生ずるので、選択回数が3〜4回くらいの少数の後でも大部分のクローンが抗原に結合する。よって、比較的少数(数百)のクローンのみを抗原に対する結合について分析すればすむ。
【0126】
ヒト抗体は、ファージに対して比較的大きく多様なV遺伝子レパートリーを提示することにより前免疫化することなく産生され得る(Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597)。1つの実施形態では、ヒト末梢血リンパ球中に存在する天然VH及びVLレパートリーをPCRにより非免疫化ドナーから単離する。V遺伝子レパートリーはPCRを用いてランダムに一緒にスプライスすると、scFv遺伝子レパートリーが生成され得、これをファージベクターにクローン化すると3000万個のファージ抗体のライブラリー(Id.)が作成される。単一「ナイーブ」ファージ抗体ライブラリーから、ハプテン、多糖及びタンパク質を含めた17以上の異なる抗原に対する結合抗体断片が単離された(Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597;Marksら(1993)Bio/Technology,10:779−783;Griffithsら(1993)EMBO J.,12:725−734;Clacksonら(1991)Nature,352:624−628)。ヒトサイログロブリン、免疫グロブリン、腫瘍壊死因子及びCEAを含めた自己タンパク質に対する抗体が産生された(Griffithsら(1993)EMBO J.,12:725−734)。抗体断片は選択のために使用される抗原に対して非常に特異的であり、1nM〜100nMの範囲の親和性を有する(Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597;Griffithsら(1993)EMBO J.,12:725−734)。大型ファージ抗体ライブラリーにより、大部分の抗原に対してより高い結合親和性を有する抗体がより多く単離される。
【0127】
当業者は容易に認識しているように、抗体は多数の商用サービス(例えば、Berkeley Antibody Laboratories,Bethyl Laboratories,Anawa、Eurogenetec等)により作成され得る。
【0128】
検出システム−概説
先に検討したように、本発明に記載のイムノアッセイは、典型的には対象タンパク質に対して特異的な抗体を含む第2特異的結合パートナーを用いる。ある実施形態では、第2特異的結合パートナーは抗体にコンジュゲートされている検出可能標識を含み、検出コンジュゲートとして機能する。
【0129】
検出コンジュゲート中に使用するのに適した検出可能標識には、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出され得る部分を有する化合物または組成物が含まれる。前記標識には、例えば放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識及びイムノポリメラーゼ連鎖反応標識が含まれる。
【0130】
よって、例えば光学シグナルを用いるイムノアッセイでは、光学シグナルを化学発光、蛍光、燐光、電気化学発光、紫外吸収、可視吸収、赤外吸収、屈折、表面プラズモン共鳴のタンパク質濃度依存変化として測定する。電気シグナルを用いるイムノアッセイでは、電気シグナルを電流、抵抗、電位、質量電荷比またはイオンカウントのタンパク質濃度依存変化として測定する。状態変化シグナルを用いるイムノアッセイでは、状態変化シグナルをサイズ、溶解度、質量または共鳴のタンパク質濃度依存変化として測定する。
【0131】
より具体的には、標識は例えば酵素、オリゴヌクレオチド、ナノ粒子化学発光団、蛍発光団、蛍光クエンチャー、化学発光クエンチャーまたはビオチンであり得る。本発明に記載の有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標));蛍光染料(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質)等(例えば、Molecular Probes,米国オレゴン州ユージーンを参照されたい);化学発光化合物、例えばアクリジニウム(例えば、アクリジニウム−9−カルボキサミド)、フェナントリジニウム、ジオキセタン、ルミノール等;放射標識(例えば、H、125I、35S、14Cまたは32P);触媒、例えば酵素(例えば、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びELISAにおいて通常使用されているその他);及び比色標識、例えば金コロイド(例えば、直径40〜80nmの大きさの金粒子は高い効率で緑色光を散乱する)、または着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズが含まれる。前記標識の使用を教示する特許には、米国特許Nos.3,817,837、3,850,752、3,939,350、3,996,345、4,277,437、4,275,149及び4,366,241が含まれる。
【0132】
生体サンプルと接触させる前、その間またはその後に、標識を検出抗体に結合して検出コンジュゲートを形成してもよい。所謂「直接標識」は、アッセイに使用する前に直接検出抗体に結合または取り込まれる検出可能標識である。直接標識は当業者に公知の多数の手段により検出抗体に結合または取り込まれ得る。
【0133】
対照的に、所謂「間接標識」は、典型的にはアッセイ中の幾つかの時点で検出抗体に結合させる。多くの場合、間接標識を使用前に検出剤に結合または取り込まれる部分に結合させる。よって、例えば、アッセイで使用する前に検出抗体をビオチニル化し得る。アッセイ中、アビジンコンジュゲートした蛍発光団はビオチンを有する検出剤に結合して、容易に検出される標識を形成する。
【0134】
間接標識法の別の例では、免疫グロブリン定常領域に特異的に結合し得るポリペプチド(例えば、ポリペプチドAまたはポリペプチドG)も抗体を検出するための標識として使用され得る。これらのポリペプチドはストレプトコッカス細菌の細胞壁の通常成分である。これらは、各種種由来の免疫グロブリン定常領域と強い非免疫原反応性を示す(一般的に、Kronvalら(1973)J.Immunol.,111:1401−1406、及びAkerstrom(1985)J.Immunol.,135:2589−2542を参照されたい)。よって、前記ポリペプチドを標識し、アッセイ混合物に添加し得、ここで捕捉及び検出抗体、並びに自己抗体に結合し、すべてが標識され、サンプル中に存在しているタンパク質及び自己抗体に寄与する複合シグナルが与えられる。
【0135】
本発明において有用な幾つかの標識は、検出可能なシグナルを発生させるために1つ以上の追加の試薬を使用しなければならないことがある。ELISAでは、例えば酵素標識(例えば、β−ガラクトシダーゼ)は検出可能なシグナルを発生させるために基質(例えば、X−gal)の添加を必要とする。直接標識としてアクリジニウム化合物を用いるイムノアッセイ検出方法では、塩基性溶液及び過酸化水素源を添加する。
【0136】
検出システム−典型的フォーマット
化学発光イムノアッセイ:典型的実施形態では、上記した方法において検出コンジュゲートの一部としての直接標識として化学発光化合物を使用する。化学発光化合物はアクリジニウム化合物であり得る。アクリジニウム化合物を検出可能標識として使用する場合、上記した方法は更に、検査サンプルを第1特異的結合パートナー及び第2特異的結合パートナーと接触させると生ずる混合物(検出コンジュゲート)に過酸化水素源を生成または供給し、光シグナルを発生させるために混合物に少なくとも1つの塩基性溶液を添加することを含み得る。次いで、混合物により発生または放出された光シグナルを測定して、検査サンプル中の対象タンパク質を検出する。
【0137】
過酸化水素源は、バッファー溶液または過酸化水素を含有する溶液、或いは検査サンプルに添加したとき過酸化水素を生成する酵素であり得る。過酸化水素を生成する酵素は、例えば(R)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、(S)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、(S)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、3−aci−ニトロプロパン酸オキシダーゼ、3−ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ、4−ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ、6−ヒドロキシニコチン酸デヒドロゲナーゼ、アブシシンアルデヒドオキシダーゼ、アシル−CoAオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ(銅含有)、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)、アリールアルコールオキシダーゼ、アリールアルデヒドオキシダーゼ、カテコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、コランバミンオキシダーゼ、シクロヘキシルアミンオキシダーゼ、シトクロームcオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−アスパラギン酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸(D−アスパラギン酸)オキシダーゼ、ジヒドロベンゾフェナントリジンオキシダーゼ、ジヒドロオロット酸オキシダーゼ、ジヒドロウラシルオキシダーゼ、ジメチルグリシンオキシダーゼ、D−マンニトールオキシダーゼ、エクジソンオキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルタチオンオキシダーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、グリオキシル酸オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ、インドール−3−アセトアルデヒドオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、L−アスパラギン酸オキシダーゼ、L−ガラクトノラクトンオキシダーゼ、L−グルタミン酸オキシダーゼ、L−グロノラクトンオキシダーゼ、L−リシン6−オキシダーゼ、L−リシンオキシダーゼ、長鎖アルコールオキシダーゼ、L−ピペコリン酸オキシダーゼ、L−ソルボースオキシダーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、メタンチオールオキシダーゼ、モノアミノ酸オキシダーゼ、N−メチルリシンオキシダーゼ、N−アシルヘキソサミンオキシダーゼ、NAD(P)Hオキシダーゼ、ニトロアルカンオキシダーゼ、N−メチル−L−アミノ酸オキシダーゼ、ヌクレオシドオキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ポリアミンオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、ポリビニルアルコールオキシダーゼ、プレニルシステインオキシダーゼ、タンパク質−リシン6−オキシダーゼ、プトレシンオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ピリドキサール5’−リン酸シンターゼ、ピリドキシン4−オキシダーゼ、ピロロキノリン−キノンシンターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ(CoA−アセチル化)、レチクリンオキシダーゼ、レチナールオキシダーゼ、リファマイシンBオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、第2級アルコールオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドレダクターゼ、テトラヒドロベルベリンオキシダーゼ、チアミンオキシダーゼ、トリプトファンα,β−オキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ、尿酸オキシダーゼ)、バニリルアルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ及びその組合せからなる群から選択され得る。
【0138】
塩基性溶液はトリガー溶液として役立ち、少なくとも1つの塩基性溶液及び検出可能標識を添加する順序は臨界的でない。方法において使用される塩基性溶液は少なくとも1つの塩基を含有し、10以上、好ましくは12以上のpHを有する溶液である。塩基性溶液の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及び炭酸水素カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。検査サンプルに添加される塩基性溶液の量はアッセイで使用する塩基性溶液の濃度に依存する。使用する塩基性溶液の濃度に基づいて、当業者は本明細書に記載されている方法において使用しようとする塩基性溶液の量を容易に決定することができる。
【0139】
検出可能標識としてアクリジニウム化合物を用いる本発明に記載の化学発光イムノアッセイにおいて、好ましくはアクリジニウム化合物はアクリジニウム−9−カルボキサミドである。具体的には、アクリジニウム−9−カルボキサミドは、式I:
【0140】
【化9】

(式中、
及びRは各々独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有する。
【0141】
アクリジニウム9−カルボキサミドの製造方法は、Mattingly,P.G.,J.Biolumin.Chemilumin.,6,107−14(1991);Adamczyk,M.,Chen,Y.−Y.,Mattingly,P.G.,Pan,Y.,J.Org.Chem.,63,5636−5639(1998);Adamczyk,M.,Chen,Y.−Y.,Mattingly,P.G.,Moore,J.A.,Shreder,K.,Tetrahedron,55,10899−10914(1999);Adamczyk,M.,Mattingly,P.G.,Moore,J.A.,Pan,Y.,Org.Lett.,1,779−781(1999);Adamczyk,M.,Chen,Y.−Y.,Fishpaugh,J.R.,Mattingly,P.G.,Pan,Y.,Shreder,K.,Yu,Z.,Bioconjugate Chem.,11,714−724(2000);Mattingly,P.G.,Adamczyk,M.,Luminescence Biotechnology:Instruments and Applications,Dyke,K.V.編,CRC Press,Boca Raton,p.77−105(2002);Adamczyk,M.,Mattingly,P.G.,Moore,J.A.,Pan,Y.,Org.Lett.,5,3779−3782(2003);並びに米国特許Nos.5,468,646,5,543,524及び5,783,699(前記製造方法に関する教示のために各々の全文を参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0142】
或いは、アクリジニウム化合物はアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルであり得る。アクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルは式II:
【0143】
【化10】

(式中、
はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルであり;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有し得る。
【0144】
本発明において使用され得る上記式IIを有するアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルの例には、10−メチル−9−(フェノキシカルボニル)アクリジニウムフルオロスルホネート(ミネソタ州アナーバーに所在のCayman Chemicalから入手可能)が含まれるが、これに限定されない。アクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルの製造方法は、McCapra,F.ら,Photochem.Photobiol.,4,1111−21(1965);Razavi,Z.ら,Luminescence,15:245−249(2000);Razavi,Z.ら,Luminescence,15:239−244(2000);及び米国特許No.5,241,070(前記製造方法に関する教示のために各々の全文を参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0145】
少なくとも1つのアクリジニウム化合物に加えて、インジケーター溶液は少なくとも1つの界面活性剤を含み得る。本発明では、水に溶解させたとき水の表面張力を低下させ、有機化合物の溶解度を上昇させる界面活性剤が使用され得る。使用され得る界面活性剤の例は1つ以上の非イオン性またはイオン性界面活性剤(例えば、アニオン性、カチオン性または双イオン性界面活性剤)である。使用され得る非イオン性界面活性剤には、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(トリトンX−100,Sigma Aldrich,ミズーリ州セントルイス)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(トゥイーン20)、ノニルフェノールポリオキシエチレンエーテル(ノニデットP 10)、デシルジメチルホスフィンオキシド(APO−10)、シクロヘキシル−n−エチル−β−D−マルトシド、シクロヘキシル−n−ヘキシル−β−D−マルトシド、シクロヘキシル−n−メチル−β−D−マルトシド、n−デカノイルスクロース、n−デシル−β−D−グルコピラノシド、n−デシル−p−D−マルトピラノシド、n−デシル−β−D−チオマルトシド、ジギトニン、n−ドデカノイルスクロース、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、ポリオキシエチレン(10)ドデシルエーテル(ゲナポールC−100)、イソトリデカノールポリグリコールエーテル(ゲナポールX−80)、イソトリデカノールポリグリコールエーテル(ゲナポールX−100)、ヘプタン−1,2,3−トリオール、n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコピラノシド及びその組合せ含まれるが、これらに限定されない。使用され得るイオン性界面活性剤の例には、コール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、コール酸、デヒドロコール酸、ドクサートナトリウム、ドクサートナトリウム塩、グリココール酸水和物、グリコデオキシコール酸一水和物、グリコリチオコール酸エチルエステル、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、N−ラウロイルサルコシン、ドデシル硫酸リチウム、プロピオン酸カルシウム、1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩、1−ブタンスルホン酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム水和物、1−デカンスルホン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム一水和物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、グリコケノデオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム水和物、1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム、ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1−ノナンスルホン酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ペンタンスルホン酸ナトリウム、1−プロパンスルホン酸ナトリウム水和物、タウロデオキシコール酸ナトリウム水和物、タウロヒドロキシコール酸ナトリウム水和物、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム塩水和物、タウロリチオコール酸3−スルフェートジナトリウム塩、トリトン(登録商標)X−200、トリトン(登録商標)QS−15、トリトン(登録商標)QS−44、トリトン(登録商標)XQS−20、トリズマ(登録商標)ドデシルスルフェート、ウルソデオキシコール酸、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、アンプロリウム塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、水酸化ベンゼトニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、コリンp−トルエンスルホネート塩、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジラール試薬、臭化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ヘキサデシルピリジニウム一水和物、塩化ヘキサデシルピリジニウム一水和物、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ハイアミン(登録商標)1622、塩化メチルベンゼトニウム、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム、臭化オキシフェノニウム、Ν,Ν’,Ν’−ポリオキシエチレン(10)−N−タロー−1,3−ジアミノプロパン、臭化テトラヘプチルアンモニウム、臭化テトラキス(デシル)アンモニウム、臭化トソゾニウム、並びにルビカット(商標)FC370、ルビカット(商標)HM 552、ルビカット(商標)HOLD、ルビカット(商標)MS 370、ルビカット(商標)PQ 11PN及びその組合せ(すべてミズーリ州セントルイスに所在のSigma Aldrichから入手可能)が含まれる。
【0146】
場合により、少なくとも1つの塩基性溶液、過酸化水素源及び検出可能標識の1つ以上を添加する前に検査サンプルを処理してもよい。前記処理には、希釈、限外濾過、抽出、沈殿、透析、クロマトグラフィー及び消化が含まれ得る。前記処理は、本明細書中に先に検討したように検査サンプルが受け得るまたは検査サンプルに施され得る前処理に加えてまたは別になされ得る。更に、前記処理方法が検査サンプルに対して使用されるならば、処理方法は対象タンパク質が検査サンプル中に未処理の検査サンプル(例えば、すなわち、前記処理方法が施されていない検査サンプル)の濃度に比例した濃度で残存するような方法である。
【0147】
本明細書中に先に簡単に記述したように、検査サンプル、少なくとも1つの塩基性溶液、過酸化水素源及び検出可能標識を添加して混合物を形成する時期及び順次は臨界的でない。加えて、少なくとも1つの塩基性溶液、過酸化水素源及び検出可能標識により形成される混合物を場合によりある時間インキュベートしてもよい。例えば、混合物を約1秒〜約60分間インキュベートしてもよい。具体的には、混合物を約1秒〜約18分間インキュベートしてもよい。
【0148】
化学発光検出可能標識を使用する場合には、少なくとも1つの塩基性溶液、過酸化水素源及び検出可能標識を検査サンプルに添加した後、検出可能なシグナル、すなわち化学発光シグナルが発生する。混合物より発生したシグナルを一定時間検出する。好ましくは、混合物を形成すると同時にシグナルを検出する。検出期間は約0.01〜約360秒間、より好ましくは約0.1〜約30秒間、最も好ましくは約0.5〜約5秒間の範囲であり得る。発生した化学発光シグナルは当業者に公知のルーチンの技術を用いて検出され得る。
【0149】
よって、本発明に記載の化学発光イムノアッセイでは、化学発光検出可能標識を使用し、検査サンプルに添加し、塩基性溶液及び検出可能標識を添加した後に発生する化学発光シグナルは検査サンプル中の対象タンパク質の存在を示し、そのシグナルを検出し得る。検査サンプル中の対象タンパク質の量または濃度は発生したシグナルの強度に基づいて定量され得る。具体的には、検査サンプル中に含まれる対象タンパク質の量は発生したシグナルの強度に比例する。具体的には、存在する対象タンパク質の量は、発生した光の量を対象タンパク質についての標準曲線との比較に基づいて、または参照標準に対する比較により定量され得る。標準曲線は公知濃度の対象タンパク質に対する連続希釈物または溶液を用いて質量分光法により、重量測定により、当業界で公知の他の技術により作成し得る。
【0150】
蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA):典型的実施形態では、本発明に記載の蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)では蛍光標識を使用する。一般的に、蛍光偏光技術は、特徴的波長の平面偏光により励起されたとき蛍光標識は別の特徴的波長で所与の媒体での標識の回転率に反比例する入射光に対する偏光度を保持している光(すなわち、蛍光)を放出するという原理に基づいている。この性質の結果、強制回転を有する標識(例えば、比較的少ない回転率を有する別の溶液成分に結合する標識)は溶液中に遊離しているときよりも放出された光の比較的高い蛍光度を保持する。
【0151】
この技術は本発明に記載のイムノアッセイにおいて、例えば蛍光標識した実体が所与の平面で放出される光の強度の変化が検出され得るように大きさが十分に異なる複合体を形成するように試薬を選択することにより使用され得る。例えば、標識した心臓トロポニン抗体(すなわち、第2特異的結合パートナー)が第1特異的結合パートナーに結合した1つ以上の心臓トロポニン抗原により結合されると、結合が容易に検出される遊離の標識心臓トロポニン抗体に比して生じた複合体は十分に大きく、その回転は十分に制約される。
【0152】
FPIAにおいて有用な蛍発光団には、フルオレセイン、アミノフルオレセイン、カルボキシフルオレセイン等、好ましくは5−及び6−アミノメチルフルオレセイン、5−及び6−アミノフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、チオウレアフルオレセイン及びメトキシトリアジノリル−アミノフルオレセイン、並びに類似の蛍光誘導体が含まれる。蛍光偏光アッセイを実施し得る市販の自動計器の例には、IMxシステム、TDxシステム及びTDxFLxシステム(すべて、イリノイ州アボットパークに所在のAbbott Laboratoriesから入手可能)が含まれる。
【0153】
走査プローブ顕微鏡法(SPM):イムノアッセイのための走査プローブ顕微鏡法(SPM)の使用も本発明のイムノアッセイ方法を容易にアレンジできるテクノロジーである。SPMでは、特に原子間力顕微鏡法では、自己抗体を結合できるだけでなく、走査に適した表面を有している固相に捕捉抗体を固定させる。捕捉抗体を例えばプラスチックまたは金属表面に吸着させ得る。或いは、捕捉抗体を誘導化プラスチック、金属、シリコーンまたはガラスに対して当業者に公知の方法に従って共有結合させてもよい。捕捉抗体を結合させた後、検査サンプルを固相と接触させ、走査プローブ顕微鏡を使用して固相固定した複合体を検出し、定量する。SPMを使用すると、イムノアッセイシステムにおいて典型的に使用されている標識の必要が排除される。前記システムは参照により本明細書に組み入れる米国特許出願No.662,147に記載されている。
【0154】
微小電気機械システム(MEMS):本発明に記載のイムノアッセイは微小電気機械システム(MEMS)を用いても実施され得る。MEMSは、対象タンパク質を都合良く検出できるように機械素子、光学素子及び純流体素子をエレクトロニクスと組合せたシリコーン上に集積化した顕微鏡構造である。本発明において使用するのに適した典型的なMEMSデバイスはProtiverisのマルチカンチレバアレーである。このアレーは、特別に設計したシリコーンマイクロカンチレバを化学機械的に作動させ、その後マルチカンチレバ偏向を光学的に検出することに基づく。一方の側を結合パートナーでコーティングすると、マイクロカンチレバは相補的分子を含有する溶液に曝したとき曲がる。この曲がりは結合事象による表面エネルギーの変化に起因する。曲がり(偏向)の程度を光学的に検出すると、マイクロカンチレバに結合した相補的分子の量を測定することができる。
【0155】
電気化学的検出システム:他の実施形態では、本発明に記載のイムノアッセイは電気化学的検出を用いて実施され、この技術は当業者に公知である。電気化学的検出は、多くの場合電流を測定し、記録するデバイスに接続させた1つ以上の電極を使用する。この技術は、携帯式電気化学的検出器具及び内蔵アッセイ特異的試薬カートリッジを含む多数の市販されているデバイス、例えばI−STAT(登録商標)(Abbott Laboratories,イリノイ州アボットパーク)システムにおいて実現され得る。例えば、本発明では、基本的トリガー溶液は内蔵ヘモグロビン試薬カートリッジ中に収容され得、検査サンプルを添加すると検査サンプル中のヘモグロビンの量に比例する電流が少なくとも1つの電極で発生する。電気化学的検出のための基本的手順は、例えばHeinemanとその同僚が記載している。これは、一次抗体(Ab,ラット抗マウスIgG)を免疫化し、その後抗原(Ag,マウスIgG)、酵素標識にコンジュゲートされている二次抗体(AP−Ab,ラット抗マウスIgG及びアルカリホスファターゼ)、及びp−アミノフェニルホスフェート(PAPP)を含有する一連の溶液に曝すことを伴っていた。APはPAPPをp−アミノフェノール(PAP,“R”は還元形態を酸化形態PAPo、キノンイミンと区別するために意図される)に変換し、これはAPが最適活性を示すpH9.0で酸素及び水の還元を干渉しない電位で電気化学的に可逆的である。その前駆体のフェニルホスフェートがしばしば酵素基質として使用されているフェノールとは異なり、PAPは電極汚損を生じない。PAPは空気及び光酸化を受けるが、これらは小規模で短い時間枠で容易に防止される。20μl〜360μLの範囲のPAPP容量を用いるミクロ電気化学的イムノアッセイでPAPについてのピコモル検出限界及びIgGについてのフェムトグラム検出限界が達成されたと既に報告されている。電気化学的検出を用いるキャピラリーイムノアッセイでは、今までに報告されている最低検出限界は70μLの容量及び30分または25分のアッセイ時間を用いて3000分子のマウスIgGである。
【0156】
本発明に記載の電気化学的検出を用いる典型的実施形態では、対象タンパク質と反応する第1特異的結合パートナーとして働く抗体を固相である電極の表面に固定化し得る。次いで、電極を例えばヒト由来の検査サンプルと接触させる。サンプル中のタンパク質は第1特異的結合パートナー(例えば、抗体)に結合して、固相固定した複合体を形成する。ペプチド試薬により、サンプル中に存在している自己抗体が標的タンパク質と相互作用し、よって標的タンパク質の第1特異的結合パートナーへの結合を干渉するのが防止される。固相固定化した複合体を検出可能標識を含む検出コンジュゲートと接触させる。第1特異的結合パートナー、タンパク質及び検出コンジュゲートを含む免疫検出複合体が形成されると、検出可能標識によりシグナルが発生し、次いでシグナルを検出する。
【0157】
各種電気化学的検出システムが米国特許No.7,045,364(2006年5月16日発行;参照により本明細書に組み入れる)、米国特許No.7,045,310(2006年5月16日発行;参照により本明細書に組み入れる)、米国特許No.6,887,714(2005年5月3日発行;参照により本明細書に組み入れる)、米国特許No.6,682,648(2004年1月27日発行;参照により本明細書に組み入れる)、米国特許No.6,670,115(2003年12月30日発行;参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0158】
D.キット
本発明は、自己抗体を含有しているかもしれない検査サンプルを対象タンパク質の存在についてアッセイするためのキットをも提供する。本発明に記載のキットは、1つ以上の本発明に記載のイムノアッセイを実施するために有用な1つ以上の試薬を含む。キットは通常1つ以上の別々の組成物として、または場合により複数の試薬が相容性の場合には混合物として試薬を収容する1つ以上の容器を含むパッケージを含む。検査キットはユーザーの視点から望ましい他の材料、例えばバッファー、希釈剤、標準物質、及び/またはサンプルプロセッシング、洗浄またはアッセイの他のステップを実施する際に有用な他の材料をも含む。
【0159】
ある実施形態では、検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質を検出及び/または定量するための検査キットは、対象タンパク質に結合する抗体を含む捕捉試薬;及び検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質を検出及び/または定量するための使用説明書を含む。キットは更に検出可能標識にコンジュゲートされている抗体を含むコンジュゲートを含み得る。
【0160】
ある実施形態では、検査キットは対象タンパク質に対して特異的なヒト化モノクローナル抗体を含み得る。この成分は本発明に記載のイムノアッセイにおいてポジティブコントロールとして使用され得る。所望ならば、この成分を検査キット中に複数の濃度で配合して、検査サンプル中で検出されるシグナルを比較し得る標準曲線の作成を容易とし得る。或いは、標準曲線はキット中に設けられている1つのヒト化モノクローナル抗体溶液の希釈物を調製することにより作成され得る。
【0161】
本発明に記載のキットは、対象タンパク質から誘導される配列を有する1つ以上のペプチド試薬、対象タンパク質上の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体(第1特異的結合パートナー)、第1特異的結合パートナーを結合し得る固相、対象タンパク質上の少なくとも1つのエピトープに結合する第2抗体、及び対象タンパク質を検出または定量するための使用説明書を含み得る。ある実施形態では、本発明に記載の検査キットは固相を磁気粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、水晶、フィルム、濾紙、ディスクまたはチップのような材料として含み得る。
【0162】
本発明に記載の検査キットは、第1及び第2特異的結合パートナーとして、例えば対象タンパク質に対する非ヒトモノクローナル抗体を含み得る。キットは、第2特異的結合パートナーとして、検出コンジュゲートを与えるべく抗体にコンジュゲートされ得るまたはコンジュゲートされている検出可能標識をも含み得る。
【0163】
ある実施形態では、検査キットは、少なくとも1つの直接標識として、酵素、オリゴヌクレオチド、ナノ粒子化学発光団、蛍発光団、蛍光クエンチャー、化学発光クエンチャーまたはビオチンであり得る検出可能標識を含む。幾つかの実施形態では、直接標識はアクリジニウム化合物、例えば式I:
【0164】
【化11】

(式中、
及びRは各々独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載のアクリジニウム−9−カルボキサミドである。
【0165】
或いは、アクリジニウム化合物は、式II:
【0166】
【化12】

(式中、
はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルであり;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルであり得る。
【0167】
本発明に記載のアクリジニウム化合物を含む検査キットは塩基性溶液をも含み得る。例えば、塩基性溶液は少なくとも約10のpHを有する溶液であり得る。ある実施形態では、本発明に記載の検査キットは更に過酸化水素源、例えばバッファー溶液、過酸化水素を含有する溶液または過酸化水素を生成する酵素を含み得る。例えば、検査キットはある量の(R)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、(S)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、(S)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、3−aci−ニトロプロパン酸オキシダーゼ、3−ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ、4−ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ、6−ヒドロキシニコチン酸デヒドロゲナーゼ、アブシシンアルデヒドオキシダーゼ、アシル−CoAオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ(銅含有)、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)、アリールアルコールオキシダーゼ、アリールアルデヒドオキシダーゼ、カテコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、コランバミンオキシダーゼ、シクロヘキシルアミンオキシダーゼ、シトクロームcオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−アスパラギン酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸(D−アスパラギン酸)オキシダーゼ、ジヒドロベンゾフェナントリジンオキシダーゼ、ジヒドロオロット酸オキシダーゼ、ジヒドロウラシルオキシダーゼ、ジメチルグリシンオキシダーゼ、D−マンニトールオキシダーゼ、エクジソンオキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルタチオンオキシダーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、グリオキシル酸オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ、インドール−3−アセトアルデヒドオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、L−アスパラギン酸オキシダーゼ、L−ガラクトノラクトンオキシダーゼ、L−グルタミン酸オキシダーゼ、L−グロノラクトンオキシダーゼ、L−リシン6−オキシダーゼ、L−リシンオキシダーゼ、長鎖アルコールオキシダーゼ、L−ピペコリン酸オキシダーゼ、L−ソルボースオキシダーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、メタンチオールオキシダーゼ、モノアミノ酸オキシダーゼ、N−メチルリシンオキシダーゼ、N−アシルヘキソサミンオキシダーゼ、NAD(P)Hオキシダーゼ、ニトロアルカンオキシダーゼ、N−メチル−L−アミノ酸オキシダーゼ、ヌクレオシドオキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ポリアミンオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、ポリビニルアルコールオキシダーゼ、プレニルシステインオキシダーゼ、タンパク質−リシン6−オキシダーゼ、プトレシンオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ピリドキサール5’−リン酸シンターゼ、ピリドキシン4−オキシダーゼ、ピロロキノリン−キノンシンターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ(CoA−アセチル化)、レチクリンオキシダーゼ、レチナールオキシダーゼ、リファマイシンBオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、第2級アルコールオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドレダクターゼ、テトラヒドロベルベリンオキシダーゼ、チアミンオキシダーゼ、トリプトファンα,β−オキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ、尿酸オキシダーゼ)、バニリルアルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ及びその組合せから選択される過酸化水素を生成する酵素を含み得る。
【0168】
ある実施形態では、本発明に記載の検査キットは対象の特定アナライト、すなわち心臓トロポニン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、ミオシン軽鎖2、ミオシン−6及びミオシン−7の1つを検出または定量するために構成される。前記実施形態では、検査キットは対象タンパク質から誘導される配列を有する少なくとも1つのペプチド試薬、各々が選択した対象タンパク質上のエピトープに結合する第1抗体及び第2抗体、すなわち各々が心臓トロポニン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、ミオシン軽鎖2、ミオシン−6及びミオシン−7の1つの上のエピトープに結合する第1抗体及び第2抗体を含む。
【0169】
好ましくは、本発明に記載の検査キットは1つ以上の本発明のイムノアッセイを実施するための使用説明書を含む。本発明のキット中に含まれている使用説明書は包装材料に貼り付けても、添付文書として挿入してもよい。使用説明書は典型的には筆記または印刷した文書であるが、それらに限定されない。使用説明書を保存し、最終使用者に通知し得る媒体が本発明により考えられる。媒体には電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)等が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で使用されている用語「使用説明書」は使用説明書を伝えるインターネットサイトのアドレスを含み得る。
【0170】
E.本発明の方法のアレンジ
本発明は、例えばTnI、CKMB及びBNPを含めた幾つかの心臓マーカーについてサンドイッチイムノアッセイを実施する共有するAbbott Point of Care(i−STAT(商標))電気化学イムノアッセイシステムに対して適用され得る。イムノセンサー及び使い捨て検査デバイスでのその操作方法は、各々を参照により本明細書に組み入れる共有する特許公開Nos.US 20030170881、US 20040018577、US 20050054078及びUS 20060160164に記載されている。電気化学的及び他のタイプのイムノセンサーの製造についての追加バックグラウンドは参照により本明細書に組み入れる共有する米国特許No.5,063,081中に見つけることができる。
【0171】
非限定的例として、本発明の実施例を提示する。
【実施例】
【0172】
[実施例1]
心臓トロポニンIに対する抗cTnI自己抗体結合の阻害(ELN Ref E000777−253)
阻害剤作業溶液:表12にリストされている(Sigma−Genosys,PEPスクリーンカスタムライブラリーから入手した)ペプチドを240nmol/mL〜0nmol/mLの範囲の溶液を与えるためにAxSYM(登録商標)トロポニンI ADVプレインキュベーション希釈剤で希釈した。表12にリストされているペプチドの等モル混合物を調製し、希釈して、240nmol/mL〜0nmol/mLの範囲の溶液を与えた。
【0173】
【表12】

【0174】
マイクロプレート作成:白色高結合性平底96ウェルポリスチレンマイクロプレート(Costar)をリン酸バッファー(100μL,0.2M,pH8,4μg/mL)中組換えヒト心臓トロポニンI(cTnI,BiosPacific,カリフォルニア州エメリビル)で38℃で1時間コーティングした後、ウシ血清アルブミン及びPBS中2% wt/v スクロースで順次オーバーコーティングした。
【0175】
化学発光検出コンジュゲート:マウス抗ヒトIgG(サブタイプIgG2b,κ)を化学発光アクリジニウム−9−カルボキサミドで標識した。この抗体はヒトIgMまたはIgA、或いは家兎、ヒツジまたはヤギIgGに対して有意な反応性を有さないが、すべてのヒトIgGサブタイプを認識した。
【0176】
サンプル:高レベルの心臓トロポニンIに対する内因性抗体を含有しているヒト血清サンプルを各阻害剤希釈物と1:1混合した。溶液を黒色ポリプロピレンマイクロプレートに配置し、密封し、周囲温度で一晩保存した。
【0177】
アッセイプロトコル:サンプル、ポジティブ及び低コントロール(10μL)をAxSYM(登録商標)トロポニンI ADVプレインキュベーション希釈剤(90μL)で希釈し、マイクロプレートに3組配置した。37℃で2時間インキュベートした後、プレートをARCHITECT(登録商標)洗浄バッファー(6×,350μL)で洗浄した。次いで、マウス抗ヒトIgG特異的モノクローナル−アクリジニウムコンジュゲート(100μL)を添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした後、ARCHITECT(登録商標)洗浄バッファー(6×,350μL)で最終洗浄した。
【0178】
化学発光検出:マイクロプレートを28℃で平衡化したMithrasマイクロプレートリーダー(Berthold Technologies Inc,テネシー州オークリッジ)に充填した。ARCHITECT(登録商標)プレトリガー溶液(100μL)及びARCHITECT(登録商標)トリガー溶液(100μL)を順次添加した後、各ウェルからの化学発光シグナルを2秒間記録した。
【0179】
シグナル対低コントロールの比(S/LC)のプロット(図11)は、ペプチド#5がマイクロプレート上のcTnI抗原に対する内因性抗体の結合を最大に阻害するが、ペプチドの混合物も相乗的阻害効果を与えたことを示した。
【0180】
[実施例2]
心臓トロポニンIに対する抗cTnI自己抗体結合の阻害(ELN Ref E000777−272)
実施例1の手順を表13にリストされているペプチドを用いて繰り返した。
【0181】
【表13】

【0182】
シグナル対低コントロールの比(S/LC)のプロット(図12)は、この実験でペプチド#5がマイクロプレート上のcTnI抗原に対する内因性抗体の結合を最大に阻害するが、ペプチドの混合物も相乗的阻害効果を与えたことを示した。
【0183】
当業者は、ペフチド試薬及び関連方法は目的を実施し、先に挙げた目的及び作用効果及び本発明において固有の目的及び作用効果を得るためにうまくアレンジされることを容易に認識している。本明細書中に記載されている分子複合体、方法、手順、処理、分子、特定化合物は今のところ好ましい実施形態の代表であり、典型であり、本発明の範囲を限定するとして意図されない。本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく本明細書中に開示されている本発明に対して各種置換及び修飾を加え得ることは当業者には容易に自明である。
【0184】
明細書中に挙げている特許及び刊行物はすべて本発明が属する業界の当業者のレベルを示す。すべての特許及び刊行物は、各刊行物が具体的且つ個別に参照により組み入れると指示されていたのと同程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0185】
本明細書中に例示的に記載されている本発明は、本明細書中に具体的に開示されていない1つ以上の要素、1つ以上の限定なしに実施され得る。よって、例えば、本明細書中の各々の場合、用語“comprising”、“consisting essentially of”及び“consisting of”は2つの他の用語のいずれかで置換され得る。使用されている用語及び表現は記載の点で非限定的に使用され、示し、記載されている要件またはその一部の均等物を除外する用語及び表現の使用を意図しないが、各種修飾は特許請求されている本発明の範囲内で可能であることが認識される。よって、本発明を好ましい実施形態及び任意の要件により具体的に開示してきたが、本明細書中に開示されている概念の修飾及び変更は当業者により行われ得ること及び前記修飾及び変更は添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内であると考えられると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査サンプル中の少なくとも1つのタンパク質の存在または量を測定するためのイムノアッセイにおいて使用するための試薬であって、前記試薬は少なくとも5連続アミノ酸残基を含み、前記タンパク質から誘導される少なくとも1つのペプチドを含み、更に前記試薬は内因性抗体と検査サンプル中のタンパク質間の相互作用を阻止するために使用される前記試薬。
【請求項2】
タンパク質は心臓トロポニンI(配列番号1)、心臓トロポニンT(配列番号2)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)(配列番号3)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)(配列番号4)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)(配列番号5)、前立腺特異抗原(PSA)(配列番号6)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)(配列番号7)、ミオシン軽鎖2(配列番号8)、ミオシン−6(配列番号9)及びミオシン−7(配列番号10)からなる群から選択される請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
ペプチドは5連続アミノ酸〜15連続アミノ酸の長さを有する請求項1に記載の試薬。
【請求項4】
タンパク質は心臓トロポニンIであり、ペプチドは
【化1】

からなる群から選択される配列由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含む配列を有する請求項1に記載の試薬。
【請求項5】
検査サンプル中の心臓トロポニンIの存在または量を測定するためのイムノアッセイにおいて使用するための試薬であって、前記試薬は
【化2】

からなる群から選択される配列由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含む配列を有するペプチドを含む前記試薬。
【請求項6】
検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質の検出方法であって、
a.少なくとも1つの対象タンパク質を含有していると疑われる検査サンプル、及び(1)対象抗体に結合する前記タンパク質から誘導される少なくとも5連続アミノ酸残基を含む少なくとも1つのペプチドであり、(2)検査サンプル中の内因性抗体と抗原間の相互作用を破壊する少なくとも1つの試薬を含む第1混合物を作成するステップ;
b.第1混合物、及び対象タンパク質と結合して第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体を形成する抗体を含む第1特異的結合パートナーを含む第2混合物を作成するステップ;
c.第2混合物を、検出可能標識にコンジュゲートされている抗体を含み、更に第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体に結合して第1特異的結合パートナー−タンパク質−第2特異的結合パートナー複合体を形成する第2特異的結合パートナーと接触させるステップ;及び
d.検出可能標識より発生したシグナルまたは検出可能標識から放出されたシグナルを測定し、検査サンプル中の対象タンパク質を検出するステップ;
を含む検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質の前記検出方法。
【請求項7】
タンパク質は心臓トロポニンI、心臓トロポニンT、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、ミオシン軽鎖2、ミオシン−6及びミオシン−7からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
検査サンプルは全血、血清または血漿である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
第1特異的結合パートナー−タンパク質複合体を形成する前またはその後に、第1特異的結合パートナーを固相に固定化する請求項6に記載の方法。
【請求項10】
第1特異的結合パートナー−タンパク質−第2特異的結合パートナー複合体を形成する前またはその後に、第2特異的結合パートナーを固相に固定化する請求項6に記載の方法。
【請求項11】
検出可能標識は放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識及びイムノポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項12】
検出可能標識はアクリジニウム化合物である請求項6に記載の方法。
【請求項13】
更に、
a.第2特異的結合パートナーと接触している第2混合物に対して過酸化水素源を生成または供給し;
b.ステップ(a)の混合物に塩基性溶液を添加し;
c.ステップ(b)で発生するまたは放出される光シグナルを測定し、サンプル中の対象タンパク質を検出する
ことを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アクリジニウム化合物は、式I:
【化3】

(式中、
及びRは各々独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキサミドである請求項12に記載の方法。
【請求項15】
アクリジニウム化合物は、式II:
【化4】

(式中、
はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルであり;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルである請求項12に記載の方法。
【請求項16】
試薬は5連続アミノ酸〜15連続アミノ酸の長さを有するペプチドである請求項6に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質は心臓トロポニンIであり、ペプチドは
【化5】

からなる群から選択される配列由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含む配列を有する請求項6に記載の方法。
【請求項18】
更に、対象タンパク質についての標準曲線を使用するかまたは参照標準と比較することによりステップ(d)におけるシグナルの量を検査サンプル中の1つ以上の対象タンパク質の量に関連づけることにより検査サンプル中の対象タンパク質の量を定量するステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項19】
方法を自動システムまたは半自動システムにおいて使用するためにアレンジする請求項7に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の試薬、対象タンパク質に結合する抗体を含む捕捉試薬、及び検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質を検出及び/または定量するための使用説明書を含む検査サンプル中の少なくとも1つの対象タンパク質を検出及び/または定量するためのキット。
【請求項21】
更に、検出可能標識にコンジュゲートされている抗体を含むコンジュゲートを含む請求項20に記載のキット。
【請求項22】
検出可能標識は放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識及びイムノポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択される請求項21に記載のキット。
【請求項23】
検出可能標識はアクリジニウム化合物である請求項22に記載のキット。
【請求項24】
アクリジニウム化合物は、式I:
【化6】

(式中、
及びRは各々独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキサミドである請求項23に記載のキット。
【請求項25】
アクリジニウム化合物は、式II:
【化7】

(式中、
はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルであり;
〜R15は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルアルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハライド、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル及びオキソアルキルからなる群から選択され;
場合により、Xが存在するならばアニオンである)
に記載の構造を有するアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルである請求項23に記載のキット。
【請求項26】
更に、塩基性溶液を含む請求項23に記載のキット。
【請求項27】
塩基性溶液は少なくとも約10のpHを有する溶液である請求項26に記載のキット。
【請求項28】
更に、過酸化水素源を含む請求項23に記載のキット。
【請求項29】
過酸化水素源はバッファーまたは過酸化水素を含有する溶液からなる請求項28に記載のキット。
【請求項30】
過酸化水素源は過酸化水素を生成する酵素からなる請求項28に記載のキット。
【請求項31】
過酸化水素を生成する酵素は、(R)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、(S)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、(S)−6−ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、3−aci−ニトロプロパン酸オキシダーゼ、3−ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ、4−ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ、6−ヒドロキシニコチン酸デヒドロゲナーゼ、アブシシンアルデヒドオキシダーゼ、アシル−CoAオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ(銅含有)、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)、アリールアルコールオキシダーゼ、アリールアルデヒドオキシダーゼ、カテコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、コランバミンオキシダーゼ、シクロヘキシルアミンオキシダーゼ、シトクロームcオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−アラビノノ−1,4−ラクトンオキシダーゼ、D−アスパラギン酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸オキシダーゼ、D−グルタミン酸(D−アスパラギン酸)オキシダーゼ、ジヒドロベンゾフェナントリジンオキシダーゼ、ジヒドロオロット酸オキシダーゼ、ジヒドロウラシルオキシダーゼ、ジメチルグリシンオキシダーゼ、D−マンニトールオキシダーゼ、エクジソンオキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルタチオンオキシダーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、グリオキシル酸オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ、インドール−3−アセトアルデヒドオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、L−アスパラギン酸オキシダーゼ、L−ガラクトノラクトンオキシダーゼ、L−グルタミン酸オキシダーゼ、L−グロノラクトンオキシダーゼ、L−リシン6−オキシダーゼ、L−リシンオキシダーゼ、長鎖アルコールオキシダーゼ、L−ピペコリン酸オキシダーゼ、L−ソルボースオキシダーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、メタンチオールオキシダーゼ、モノアミノ酸オキシダーゼ、N−メチルリシンオキシダーゼ、N−アシルヘキソサミンオキシダーゼ、NAD(P)Hオキシダーゼ、ニトロアルカンオキシダーゼ、N−メチル−L−アミノ酸オキシダーゼ、ヌクレオシドオキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ポリアミンオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、ポリビニルアルコールオキシダーゼ、プレニルシステインオキシダーゼ、タンパク質−リシン6−オキシダーゼ、プトレシンオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ピリドキサール5’−リン酸シンターゼ、ピリドキシン4−オキシダーゼ、ピロロキノリン−キノンシンターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ(CoA−アセチル化)、レチクリンオキシダーゼ、レチナールオキシダーゼ、リファマイシンBオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、第2級アルコールオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドレダクターゼ、テトラヒドロベルベリンオキシダーゼ、チアミンオキシダーゼ、トリプトファンα,β−オキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ、尿酸オキシダーゼ)、バニリルアルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ及びその組合せからなる群から選択される請求項30に記載のキット。
【請求項32】
タンパク質は心臓トロポニンI、心臓トロポニンT、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−HCG)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、ミオシン軽鎖2、ミオシン−6またはミオシン−7である請求項20に記載のキット。
【請求項33】
試薬は5連続アミノ酸〜15連続アミノ酸の長さを有するペプチドである請求項20に記載のキット。
【請求項34】
タンパク質は心臓トロポニンIであり、ペプチドは
【化8】

からなる群から選択される配列由来の少なくとも5連続アミノ酸残基を含む配列を有する請求項33に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2013−513107(P2013−513107A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542067(P2012−542067)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/056943
【国際公開番号】WO2011/068676
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】