説明

自己点検装置

【課題】制御手段によるシーケンス制御の状態を確認することができ、異常が発生してシーケンスが停止した場合においても、どの状態で停止したかを確認することができ、故障箇所の特定を行うことができる自己点検装置を提供する。
【解決手段】点検開始信号が入力されると点検対象となる機関4,5,6,7,10,13に対して動作信号を出力しこの動作信号に基づく動作状態を示す信号がフィードバックされる制御手段14を備え、制御手段14は、入力された点検開始信号を保持し動作状態を示す信号が入力されるとこの信号を保持するとともに各動作状態をカウントし、カウントしたデータに基づいて次の動作信号出力することにより次の点検に遷移するシーケンス制御を実行し、各動作状態を示すメッセージを表示しこのメッセージの内容を履歴として保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用ガスタービン操縦装置などにおいて、異常個所の有無を点検するための自己点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、船舶用ガスタービン及び可変ピッチプロペラにより推進する船舶の操縦装置においては、異常個所の有無を点検のために、自己点検をシーケンス制御し、乗員がその状態を各表示計器にて目視確認することを行っていた。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、このようなシーケンス制御を行うためのシーケンサの構成が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−033506号公報
【特許文献2】特開昭60−225906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の操縦装置においては、乗員が各表示計器を目視にて確認するしかシーケンスの状態を確認する方法がなかった。特に、異常が発生してシーケンスが停止した場合などは、どの状態で停止したかが履歴として残らなかったため、故障箇所の特定が難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、制御手段によるシーケンス制御の状態を確認することができ、異常が発生してシーケンスが停止した場合においても、どの状態で停止したかを確認することができ、故障箇所の特定を行うことができる自己点検装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を有するものである。
【0008】
本発明に係る自己点検装置は、点検開始信号が入力されると点検対象となる機関に対して動作信号を出力しこの動作信号に基づく動作状態を示す信号がフィードバックされる制御手段を備え、制御手段は、入力された点検開始信号を保持し動作状態を示す信号が入力されるとこの信号を保持するとともに各動作状態をカウントし、カウントしたデータに基づいて次の動作信号出力することにより次の点検に遷移するシーケンス制御を実行し、各動作状態を示すメッセージを表示しこのメッセージの内容を履歴として保持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る自己点検装置においては、制御手段は、シーケンス制御を実行しつつ、各動作状態を示すメッセージを表示し、このメッセージの内容を履歴として保持するので、異常が発生したときには、履歴を確認することにより、どの段階で異常が発生したかを確認することができる。
【0010】
したがって、この自己点検装置においては、どの段階で異常が発生したかをすばやく判断することができ、また、故障箇所が特定し易くなり、故障原因の探求も容易となる。
【0011】
すなわち、本発明は、制御手段によるシーケンス制御の状態を確認することができ、異常が発生してシーケンスが停止した場合においても、どの状態で停止したかを確認することができ、故障箇所の特定を行うことができる自己点検装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る自己点検装置が適用される機関の例を示すブロック図である。
【0014】
本発明に係る自己点検装置は、図1に示すように、制御対象となる機関を操縦するための操縦装置1に組み込まれて使用される。操縦装置1は、各種操作スイッチからの入力信号を受け、この入力信号に応じて、制御信号を機関に対して出力する。
【0015】
この実施の形態において、操縦装置1により制御される機関は、第1及び第2の機械室2,3に設置された1号乃至4号ガスタービンエンジン(以下及び図面において「GT」と記す。)4,5,6,7と、1号及び2号GT4,5によりクラッチ8,9を介して駆動される第1の可変ピッチプロペラ(以下及び図面において「CPP」と記す。)変節装置10と、3号及び4号GT6,7によりクラッチ11,12を介して駆動される第1の可変ピッチプロペラ(以下及び図面において「CPP」と記す。)変節装置13とから構成されている。
【0016】
図2は、本発明に係る自己点検装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
自己点検装置は、図2に示すように、制御手段となる演算制御装置14を有している。この演算制御装置14には、操縦装置1の各種ボタン及びスイッチ15から、各種の操作信号及び点検開始信号が入力される。
【0018】
演算制御装置14は、点検開始信号が入力されると、点検対象となる各GT4,5,6,7及び各CPP変節装置10,13に対して動作信号を出力する。演算制御装置14は、各GT4,5,6,7に対しては、動作信号として、起動操作信号、停止操作信号及び出力設定指令信号を出力する。また、演算制御装置14は、各CPP変節装置10,13に対しては、動作信号として、CPP指令信号を出力する。
【0019】
そして、各GT4,5,6,7及び各CPP変節装置10,13からは、演算制御装置14に対して、各動作信号に対応して、動作状態を示す信号がフィードバックされる。
【0020】
演算制御装置14は、入力された点検開始信号を保持し、動作状態を示す信号が入力されると、この信号を保持するとともに、各動作状態をカウントする。そして、演算制御装置14は、カウントしたデータに基づいて、次の動作信号出力することにより、次の点検に遷移するシーケンス制御を実行する。
【0021】
また、演算制御装置14は、操縦装置1に設けられたモニタ等表示用信号出力装置により、各動作状態を示すメッセージを表示し、このメッセージの内容を履歴として保持する。
【0022】
図3は、本発明に係る自己点検装置の動作を示すフローチャートである。
【0023】
すなわち、演算制御装置14は、図3のフローチャートに示すように、点検開始信号が入力されると、ステップst1で点検を開始し、ステップst2に進み、各CPP変節装置10,13を自動にて作動させる指令信号を出力する。ステップst3で、指令値に対してフィードバック値が追従するか否かを確認する。
【0024】
そして、ステップst4に進み、各CPP変節装置10,13の動作を停止させる。ステップst5に進み、操縦装置1の表示用信号出力装置により、ステップst3における確認結果に応じて、「正常」か「異常」かを表示する。
【0025】
次に、ステップst6に進み、各GT4,5,6,7の起動及び停止スイッチを操作すべく、メッセージを表示する。メッセージにしたがって、起動及び停止スイッチが操作されると、ステップst7に進む。ステップst7では、操作された起動及び停止スイッチに応じた動作信号を出力するとともに、フィードバック信号を確認する。
【0026】
次に、ステップst8では、各GT4,5,6,7の出力設定を自動にして作動させる指令信号を出力する。ステップst9で、指令値に対してフィードバック値が追従するか否かを確認する。
【0027】
そして、ステップst10に進み、出力設定の作動を停止させる。ステップst11に進み、操縦装置1の表示用信号出力装置により、ステップst9における確認結果に応じて、「正常」か「異常」かを表示する。そして、ステップst12で、点検を終了する。
【0028】
演算制御装置14は、前述したように、表示したメッセージの内容を履歴として保持するようになっている。そして、保持されたメッセージの履歴は、必要に応じて、現在のメッセージから遡って確認することができる。
【0029】
この自己点検装置においては、操縦装置1の表示用信号出力装置16には、機関の各部の点検項目と、各点検項目の状態(「正常」、「異常」、または、「未確認」)が表示されるとともに、点検操作、点検項目及び点検結果を示すメッセージが表示される。このメッセージは、履歴として保持され、現在のメッセージから遡って確認することができる。過去のメッセージを確認することにより、どの段階で異常が発生したかをすばやく確認することができ、故障箇所の特定が容易となり、故障原因の探求も容易となる。
【0030】
図4は、本発明に係る自己点検装置の制御手段の動作をアナログ回路の構成で示した回路図である。
【0031】
なお、本発明に係る自己点検装置における演算制御装置14は、マイクロコンピュータであって、前述した所定の動作を行うプログラムを実行するものとすることができるが、図4に示すように、アナログ回路によって構成することもできる。
【0032】
すなわち、この演算制御装置18においては、操作ボタンにより点検開始信号が入力されると、この点検開始信号は、フリップフロップ回路19により保持され、カウンタ20によりカウントされる。このカウンタ値に応じて、メッセージ表示用信号が表示用信号出力装置16に出力されるとともに、一定のスケジュール21に応じて、各機関(GT、CPP変節装置)に動作指令信号(所定の模擬信号)22が出力される。
【0033】
各機関(GT、CPP変節装置)からのフィードバック信号は、次のフリップフロップ回路23に入力され、保持される。入力信号が保持されると、カウンタ20によりカウントされ、カウンタ値に応じて、メッセージ表示用信号が表示用信号出力装置16に出力され、スケジュール21に応じて、各機関(GT、CPP変節装置)に次の動作指令信号(模擬信号)22が出力される。
【0034】
このようにして、順次、複数のフリップフロップ回路24,25が動作することにより、各点検項目に応じた動作指令信号が次々と出力されるシーケンス制御が行われる。そして、操ボタンにより、停止信号27が入力され、フリップフロップ回路26により保持されると、シーケンス制御が終了する。
【0035】
なお、本発明に係る自己点検装置は、前述のようなGT及びCPP変節装置を有する機関に限定されず、種々の状態、例えば、位置、温度や、圧力等を監視して点検しなければならない種々の機関に対して、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る自己点検装置が適用される機関の例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る自己点検装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る自己点検装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る自己点検装置の制御手段の動作をアナログ回路の構成で示した回路図である。
【符号の説明】
【0037】
1 操縦装置
4 1号GT
5 2号GT
6 3号GT
7 4号GT
10 第1のCPP変節装置
13 第2のCPP変節装置
14 演算制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検開始信号が入力されると、点検対象となる機関に対して動作信号を出力し、この動作信号に基づく動作状態を示す信号がフィードバックされる制御手段を備え、
前記制御手段は、入力された前記点検開始信号を保持し、前記動作状態を示す信号が入力されると、この信号を保持するとともに、各動作状態をカウントし、カウントしたデータに基づいて次の動作信号出力することにより、次の点検に遷移するシーケンス制御を実行し、各動作状態を示すメッセージを表示し、このメッセージの内容を履歴として保持する
ことを特徴とする自己点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−117296(P2010−117296A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291905(P2008−291905)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】