説明

自己組織化ブロックコポリマーのベシクル、ならびにその生成および使用法

例えばジブロックコポリペプチドなどの自己組織化ブロックコポリマーのベシクル、ならびに、その生成および使用方法が開示される。本発明のベシクルは、細胞内トランスダクション親水性ドメインと、疎水性ドメインとを有するブロックコポリマーから形成されるシェルを含む。特定の実施形態では、ベシクルは、例えば、診断または治療薬などのカプセル化された活性薬剤を含む。ベシクルは、例えば、診断および治療薬などの活性薬剤の細胞内デリバリを含むさまざまな異なる用途を見出す。

【発明の詳細な説明】
【政府支援の承認】
【0001】
本発明は、全米科学財団により与えられた認可No.CHE−0415275の政府支援によってなされた。本発明の権利は政府が一部保有している。
【関連出願】
【0002】
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2006年12月1日出願の米国特許仮出願第60/872,078号の恩恵を主張し、その開示内容のすべては参照によりここに組み込まれる。
【序文】
【0003】
ポリマーベシクルは、丈夫な封入剤として大いなる可能性を示す比較的新しい種類のナノスケール自己組織化材料である。膜形成のためにポリマーをビルディングブロックとして用いるので安定性、刺激応答性および化学的多様性がリポゾームより高いことからも、ドラッグデリバリ用途に有益であることが立証されよう(Discher,D.E.,Eisenberg,ポリマーベシクル サイエンス297、967−973(2002年))。例えば、リジン−ロイシン(ポリ(L−リジン)60−ブロック−ポリ(L−ロイシン)20,K60L20)またはグルタミン酸塩−ロイシン(ポリ(L−(L−グルタミン酸)60−ブロック−ポリ(Lロイシン)20,E60L20)ジブロックコポリペプチド両親媒性物質が報告されている。(Holowka,E.P.,Pochan,D.J.,Deming,T.J.制御可能な直径を有する荷電ポリペプチドベシクルJ.Amer.Chem.Soc.127,12423−12428(2005年))。これらの小胞状の集合体は、平坦な膜の形成を支持するαヘリカル疎水性セグメントと、これらの膜に溶解性および流動性を与える重荷電親水性セグメントとの結合によって水溶液中に形成される。結果として生じた材料は、50から1000nmにわたる直径を有すように調製され、摂氏80度までは安定し、極性を有する中身を漏出することなく保持し、再現性をもって容易に、大量に調製することができる(上記Holowkaら)。
【0004】
近年、多くのグループがタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を利用してカーゴ(cargo)の細胞内デリバリを向上させている(Rothbard,J.B.,Jessop,T.C.,Wender,P.A.適応トランスロケーション:グアニジウム含有トランスポータの細胞内への取り込みにおける水素結合および膜ポテンシャルの役割、Adv、ドラッグデリバリ、Rev.57、495−504(2005年);Futaki,S.膜−透過性アルギニンが含有ペプチドおよびトランスロケーションメカニズム、Adv、ドラッグデリバリ、Rev.57,559−577(2005年);Brooks,H.,Lebleu,B.,Vives,E.Tatペプチド仲介細胞デリバリ;バックトゥベーシックス、Adv.ドラッグデリバリ、Rev.57,559−577(2005年);および、Wadia,J.S.,owdy,癌治療におけるTAT仲介トランスダクションによるタンパク質およびペプチドの膜貫通デリバリ、Adv.ドラッグデリバリ、Rev.57,579−596(2005年))、よく研究されている例では、HIV−1,HIV−1Tatの転写のトランス活性化因子のアルギニン含有セグメント(残基数49から50)(上記Brooks他)。関連する研究においては、Tat配列は、アルギニンの単一の九量体と置換されうることがわかっている(Calnan,BJ.,Tidor,B.,Biancalana,S.,Hudson,D.,Frankel,A.D.アルギニン仲介RNA認識:アルギニン分岐、サイエンス252、1167−1171(1991年))。アルギニンのグアニジウム残基は、カーゴを細胞内に運び、この配列の能力の必須の成分であることを示している(Mitchell,DJ.,Kim,D.T.,Steinman,L.,Fathman,CG.,Rothbard,J.B.ポリアルギンは、ポリカチオン性ホモポリマーより効率的に細胞に入る。J.Peptide Res.56,318−325(2000);Rothbard,J.B.,Garlington,S.,Lin,Q.,Kirshberg,T.,Kreider,E.,McGrane,L.,Wender,P.A.,Khavari,P.A.アルギニンオリゴマーとシクロスポリンAとの共役は、局所輸送および感染の抑制を容易にする、ネイチャーメディシン6,1253−1257(2000年))。この発見以来、多くのグループがグアニジウム含有PTDと薬品、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ナノ粒子、および、リポゾームとの化学共役を調製しており、生体外および生体内の両方でさまざまなタイプの細胞内に供給することに成功している(上記Rothbard他、上記Futaki他、上記Brooks他、上記Wadia他)。
【0005】
治療学における細胞内デリバリのためにグアニジウム基により機能付与されたリポゾームの使用は、PTDへの直接的な治療上の化学共役において多くの利点をもたらす(Torchilin,V.P.,Rammohan,R.,Weissig,V.,Levchenko,T.S.リポゾームの表面におけるTATペプチドは、低温であり、かつ、代謝阻害剤の存在下にあっても効果的な細胞内デリバリを実現する。Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98,9786−8791(2001年);Tseng,Y−L.,Liu,J−J.,Hong,R−L、ペプチドPenetratinおよびTatを細胞浸透させることによる、癌細胞へのリポゾームのトランスロケーション:kinetic and efficacy study、Mol.Pharmacol.62,864−872(2002年))。治療薬に対し分解可能な化学結合を生成する必要がないだけでなく、ベシクルは、水性ルーメン内にかなり大きなカーゴ、および、複合的治療薬さえ送り込むことができる。脂質ベシクルの主な欠点は、安定性に欠けることであり、PTD配列の付着により安定性はさらに悪くなる可能性がある。PTD機能付与脂質ベシクルは、記憶と同時に、あるいは、PTDを細胞表面に結合させると同時にその中身を失う可能性がある。ポリマーベシクルは、非常に丈夫であり、かつ、親水種および疎水種の両方を封入することができる(上記Discher他、;Bermudez,H.,Brannan,A. K.,Hammer,D.A.,Bates,F.S.,Discher,D.E.ポリマーソームの膜構造、弾性、および、安定性に依存する分子重量、Macromolecules 35,8203−8208 (2002年))しかしながら,ほとんどが不活性高分子という基礎的要素を欠点としており、PTDによる二次的な化学的機能化を要する。
【発明の概要】
【0006】
例えば、ジブロックコポリペプチドなどの自己組織化ブロックコポリマーのベシクル、ならびに、その生成および使用法が提供される。本発明のベシクルは、細胞内トランスダクションの親水性ドメインおよび疎水性ドメインを含むブロックコポリマーで形成されたシェルを有する。細胞内トランスダクション親水性ドメインおよび疎水性ドメインを有する自己組織化ブロックコポリマーも提供される。特定の実施形態では、ベシクルは、例えば、診断または治療薬などのカプセル化された活性薬剤を含む。ベシクルは、例えば、治療または診断薬などの活性薬剤の細胞内デリバリを含むさまざまな用途での使用が見出されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】R6020ベシクルの構成および特性を示す。R6020ベシクルの自己組織化の一案を示す図である。
【図1B】R6020ベシクルの構成および特性を示す。1.0μm押し出されたベシクルのLSCM画像である(バーは5μm)。
【図1C】R6020ベシクルの構成および特性を示す。テキサスレッド色素で標識したデキストランを含むベシクルのLSCM画像である(総溶液濃度は1μm、バーは5μm)。
【図1D】R6020ベシクルの構成および特性を示す。100nmのNucleopore polycarbonate (PC) メンブランフィルタによって押し出されたネガティブ染色ベシクルのTEM画像である。(バーは200nm)。
【図1E】R6020ベシクルの構成および特性を示す。異なるPCメンブレンフィルタによって押し出された後のDLSを用いて決定されたベシクルの直径である(0.1、0.2、0.4、および、1.0μm)。
【0008】
【図2A】バルクメンブレンにおけるポリペプチドベシクルの輸送である。1:1の水性緩衝液(0.5mL;10mM NaHPO,100mM NaCl,pH7.4)/クロロホルム混液中に懸濁した1%(w/v)R6020ベシクルの視覚化LSCM画像である。
【図2B】(B)水性緩衝液/クロロホルム混液+EYPG(10mM)中に懸濁した1%(w/v)R6020ベシクルの視覚化LSCM画像である。
【図2C】水性硫酸ナトリウム溶液に(B)を加えたサンプルからのクロロホルム層の視覚化LSCM画像である。
【図2D】水性緩衝液/クロロホルム混液+EYPC(10mM)中に懸濁した1%(w/v)R6020ベシクルの視覚化LSCM画像である。
【図2E】水性緩衝液/クロロホルム混液+EYPG(10mM)中に懸濁した1%(w/v)R6020ベシクルの視覚化LSCM画像であり、LSCM画像のスケールバーは5μmである。
【図2F】水性緩衝液/クロロホルム混液+EYPG(10mM)中に懸濁したテキサスレッド色素で標識したデキストラン(総溶液濃度は1μM)を含む)1%(w/v)R6020ベシクルの視覚化LSCM画像である。
【0009】
【図3A】生体外でのポリペプチドベシクルの細胞への輸送を示す。血清なし、摂氏37度においてテキサスレッド色素で標識したデキストラン(レッドの総水溶液濃度1μM)を含むR6020ベシクル(グリーン;100μm)で2.5時間のインキュベーションした後のT84細胞のLSCM画像である。
【図3B】生体外でのポリペプチドベシクルの細胞への輸送を示す。血清なし、摂氏37度においてテキサスレッド色素で標識したデキストラン(レッドの総水溶液濃度1μM)を含むR6020ベシクル(グリーン;100μm)で2.5時間のインキュベーションした後のT84細胞のDIC画像である。
【図3C】生体外でのポリペプチドベシクルの細胞への輸送を示す。血清なし、摂氏37度においてテキサスレッド色素で標識したデキストラン(レッド)を含むR6020ベシクル(グリーン;100μm)で2.5時間のインキュベーションした後のHULEC−5A細胞のLSCM画像である。
【図3D】生体外でのポリペプチドベシクルの細胞への輸送を示す。血清なし、摂氏37度においてテキサスレッド色素で標識したデキストラン(レッド)を含むR6020ベシクル(グリーン;100μm)で2.5時間のインキュベーションした後のHULEC−5A細胞のDIC画像である。
【図3E】生体外でのポリペプチドベシクルの細胞への輸送を示す。血清なし、摂氏37度においてテキサスレッド色素で標識したデキストラン(レッド)を含むR6020ベシクル(グリーン)で5時間のインキュベーションした後のT84細胞の三次元LSCM再構築を示す。
【図3F】生体外でのポリペプチドベシクルの細胞への輸送を示す。血清あり、摂氏37度においてテキサスレッド色素で標識したデキストラン(レッド)を含むR6020ベシクル(グリーン)で5時間のインキュベーションした後のT84細胞の三次元LSCM再構築を示す。
【図3G】生体外でのポリペプチドベシクルの細胞への輸送を示す。血清なし、摂氏0度においてテキサスレッド色素で標識したデキストラン(レッド)を含むR6020ベシクル(グリーン)で5時間のインキュベーションした後のT84細胞の三次元LSCM再構築を示す。
【図3H】生体外でのポリペプチドベシクルの細胞への輸送を示す。血清なし、摂氏37度でFITC標識されたR6020ベシクル
【数1】

で5時間のインキュベーションした後のT84細胞のLSCM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例えば、ジブロックコポリペプチドなどの自己組織化ブロックコポリマーのベシクル、ならびに、その生成および使用法が提供される。本発明のベシクルは、細胞内トランスダクション親水性ドメインおよび疎水性ドメインを含むブロックコポリマーで形成されたシェルを有する。また、細胞内トランスダクション親水性ドメインおよび疎水性ドメインを含む自己組織化ブロックコポリマーも提供される。特定の実施形態では、ベシクルは、例えば、診断または治療薬などのカプセル化活性薬剤を含む。ベシクルは、例えば、治療または診断薬などの活性薬剤の細胞内デリバリを含むさまざまな用途での使用が見出されている。
【0011】
本発明をより詳しく説明する前に、本発明は記載されている特定の実施形態に限定されず、変更もあり得るのは言うまでもないことを理解されたい。また、本願明細書中で用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定する意図はないことも理解されたい。本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるものとする。
【0012】
値の範囲が指定される場合、特に説明しない限り、下限の単位の10分の1までは、あるいは、その範囲の上限と下限との間、および、他のいかなる規定されたまたはその規定の範囲内の値は、本発明の範囲であることを理解されたい。それらの小さいほうの範囲の上限および下限は、小さいほうの範囲内に別々に含まれ、規定の範囲内におけるいかなる特別に除外された制限を条件に本発明の範囲内に含まれる。規定された範囲が限界値の1つまたは両方を含む場合、それらの含まれた限界値のいずれかまたは両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0013】
特に定義しない限り、本願明細書中に用いられるすべての技術および科学用語は、当業者の一人によって一般的に理解できるものと同じ意味を有する。本願明細書中に記載されるそれらの用語と同様または等価ないかなる方法および材料も本発明の実施または試験で用いられてよいが、代表として図示される方法および材料が説明される。
【0014】
出版物の引用は、出願日前にその開示をするためであって、本発明が従来の発明によってこのような出版物に先ずる権利がないことを認めたものと解釈されないものとする。さらに、提供される出版物の日付は、実際の出版日とは異なる可能性もあり、個別に確認を要することもありうる。
【0015】
本願明細書中で用いられるような、また、添付の請求項における単数形「a」、および、「an」は、特に明確な説明がない限り、複数のものを含むことに留意されたい。さらに、請求項は、いかなるオプションの要素も排除するよう立案されてよいことを留意されたい。このように、この説明は、請求項の構成要素の説明に関連する「単に」、「のみ」などの排他的用語の使用、または、「否定的な」限定の使用の根拠として役立つことを意図している。
【0016】
本開示を読んだ当業者であれば直ちに理解できるように、本願明細書中に記載されかつ図示される個別の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、他のいくつかの実施形態のいかなるものの特徴とは直ちに区別できる、あるいは、それらの特徴と組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。記載されたいずれの方法も、記載される段階の順序で、あるいは、論理的に可能な他の順序で実行されることができる。
【0017】
本発明のさらなる説明において、本発明のベシクルの実施形態が最初に詳細に検討され、次にベシクルを含む組成の実施形態が採り上げられ、それと同時にベシクルの組成を生成しかつ用いる側面についての検討もなされる。
【0018】
(ベシクル)
本発明の複数の側面は、極性液状媒体をカプセル化するシェルで形成されたベシクルを含む。シェルは、さまざまな構成を有していてよいが、特定の実施形態では、球状である。特定の実施形態では、極性液状媒体は、例えば、水などの水性媒体である。本発明の特定の実施形態のベシクルは、ナノスケールのベシクルであって、特定の実施形態では、ベシクルは、約50から約1000nmまで、例えば、約75から約500nmまでの範囲の直径を有する。本発明のベシクルは、約摂氏80度以上までの温度を含むさまざまな条件下で安定しうる。「安定」とは、ベシクルがそれらの完全性を失わず、少なくともいかなる実質的範囲、例えば、期間が1週間以上、1ヶ月以上、2ヶ月以上、6ヶ月以上になってもそれらの中身が漏れないことを意味する(以下の実験の章で報告されるものと同様の条件下で維持される場合)。さらに、ベシクルは、説明される毒性アッセイを用いて決定されるような毒性をほとんどまたは全く示さないベシクルであること意味する非毒性ベシクルである。
【0019】
本発明の複数の実施形態におけるベシクルのシェル部分は、自己組織化ブロックコポリマーで形成されており、ブロックコポリマー(以下ではコポリペプチドと記載されている)は、両親媒性とみなしてよい。シェルは、自己組織化コポリマーと同種になるように、単一の種類の自己組織化ブロックコポリマーで形成されてよい。あるいは、シェルは、ブロックコポリマーと同種になるように、例えば、3つ以上、4つ以上、5つ以上などの異なる種類のブロックコポリマーを含む2つ以上の異なる種類の自己組織化ブロックコポリマーで形成されてよい。それらの残基配列が少なくとも1つの残基だけ異なる場合、いかなる2つの所定のブロックコポリマーも互いに異なるものとしてみなされる。
【0020】
ベシクルのシェルを形成するコポリマーは、自己組織化ブロックコポリマーである。「自己組織化」とは、コポリマーが適切な条件の下で相互作用することにより、例えば、図1に示される構造のような球状構造などの対象ベシクル構造を生成することができる。
【0021】
自己組織化ブロックコポリマーの複数の側面は、第1の疎水性ドメインと、第2の親水性細胞内トランスダクションドメインとを含む。「細胞内トランスダクションドメイン」とは、ベシクルが細胞内に入るのを促進するまたは容易にする助けとなるコポリマーのドメインを意味する。例えば、以下の実験の章に記載されるアッセイを用いて決定されるような適切な制御と比較して、約2倍以上、約5倍以上、約10倍以上細胞内にベシクルを入れることができる場合に、ドメインは細胞内トランスダクションドメインとしてみなされる。例えば、このような自己組織化ブロックコポリマーは、自己組織化ポリ−L−リジン−ブロック−ポリ−L―ロイシンコポリマーは含まず、コポリマーのようなポリ−L−グルタミン酸塩−ブロック−ポリ−L−ロイシンコポリマーは、細胞内トランスダクションドメインを含まない。
【0022】
特定の実施形態では、自己組織化ブロックコポリマー単独、または第1の疎水性ドメインおよび第2の親水性細胞内トランザクションドメインを含むベシクルとしてなる場合、自己組織化ブロックコポリマーは、最小限細胞障害性である。関連する実施形態では、第2の親水性ドメイン細胞内トランスダクションドメインそれ自体が最小限細胞障害性である。「最小限細胞障害性である」とは、例えば、以下の実験の章に記載されるアッセイを用いて決定されるように、適切な制御と比較して細胞の生存率が維持されることを意図している。
【0023】
特定の実施形態では、第1の疎水性ドメインと、第2の親水性細胞内トランスダクションドメインとを含む自己組織化ブロックコポリマーに関心を宛て、ここでの第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ポリカチオン性である。関連する実施形態では、第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ポリカチオン性であり、それ自体が最小限細胞障害性である。第1の疎水性ドメインと第2の親水性細胞内トランスダクションドメインとを含む自己組織化ブロックコポリマーまたはそのベシクルにも特別な関心が宛てられる。ここでの第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ポリカチオン性であり、自己組織化ブロックコポリマーは、最小限細胞障害性である。
【0024】
第1および第2のドメインの長さは、同じでも異なっていてもよい。特定の実施形態では、第2のドメインの長さは、第1のドメインの長さとは異なっており、第2のドメインは、第1のドメインの長さの約2倍から約8倍、例えば、約2倍から約4倍である。
【0025】
第1および第2のドメインの他に、コポリマーは、複数の、例えば、2以上の追加のドメインを有しても有さなくてもよい。追加のドメインが存在する場合、そのようなドメインは、第1のドメインおよび第2のドメインがコポリマーの第1および第2の終端となるよう、第1のドメインと第2のドメインとの間に配置されてよい。
【0026】
特定の実施形態では、異なるドメインは、ブロックコポリマーがブロックコポリペプチドであるようなポリペプチドドメインである。これらの実施形態では、第1の疎水性ドメインは、ドメインが同一のアミノ酸残基から形成されていることを意味するホモポリペプチドドメインか、または、ドメインが2つ以上の異なるアミノ酸残基から形成されていることを意味するヘテロポリペプチドドメインである。第1のポリペプチド疎水性ドメインの長さは、変化してよく、特定の実施形態では、約5から約50の範囲、例えば、約10から約30、約15から25、さらに例えば20残基であってよい。特定の実施形態では、このドメインは、ラセミ化合物ではない。
【0027】
第1の疎水性領域では、例えば、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、アラニン、メチオニンなどの非極性アミノ酸残基が用いられ、特定の実施形態では、任意の所定のドメインは、これらの残基を1から3以上、統計的にランダムシーケンスで含む。特定の実施形態では、第1の疎水性ドメインは、ポリ−ロイシン(polyL)ドメインである。特定の実施形態では、polyLドメインは、L20となるような20残基長を有する。
【0028】
第1のドメインと同様に、第2の親水性ドメインも、ドメインが同一のアミノ酸残基から形成されていることを意味するホモポリペプチドドメインか、または、ドメインが2つ以上の異なるアミノ酸残基から形成されていることを意味するヘテロポリペプチドドメインである。第2のポリペプチド親水性ドメインの長さも変化してよく、特定の実施形態では、約30から約120の範囲、例えば、約40から約80、約50から80、さらに例えば60残基であってよい。特定の実施形態では、このドメインは、ラセミ化合物ではない。
【0029】
第2の親水性ドメインについては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジン、オルニチンなどの、細胞内トランスダクション特性をベシクルに与えることができる極性アミノ酸残基が用いられる。特定の実施形態では、任意の所定のドメインは、これらの残基の1から3以上をランダムまたはブロックシーケンスで含む。特定の実施形態では、第2の親水性ドメインは、ポリ−アルギニン(polyR)ドメインである。特定の実施形態では、polyRドメインは、R60となるような60残基長を有する。
【0030】
特定の実施形態では、本発明のベシクルのシェル部分は、単一の種類の自己組織化ジブロックコポリペプチドで形成されており、第2のドメインは、第1のドメインの約2倍から4倍の長さを有する。特定の実施形態では、ジブロックコポリペプチドは、R6020である。
【0031】
上述のごとく、ベシクルは、シェル部分に、例えば水性媒体などの極性流動媒体を有する。特定の実施形態では、シェル内に存在する水性媒体は、ベシクルがカプセル化された活性薬剤を一定量含むように活性薬剤を含む。活性薬剤はさまざまであってよく、特定の実施形態では、活性薬剤は、造影剤、蛍光タンパク質などの診断薬であり、他の実施形態では、活性薬剤は、例えば、薬品などの治療薬である。
【0032】
例えば、本発明のベシクルは、医療用途に用いられてよく、その場合、輸送されるカーゴ(荷物)は、薬物分子、治療成分、放射性成分、化学療法薬剤、DNA/RNA、タンパク質、または、MRI造影剤であってよい。デリバリモードは、吸入による肺へのエアゾールデリバリ、皮下注射、経口摂取、例えば、以下で詳しく説明するような経皮的送達(軟膏として)を含んでよい。ベシクルは、他の用途にも用いられることができ、その場合、輸送されるカーゴは、例えば研究試薬(血清タンパク質、成長因子、阻害剤、放射性化合物、DNA/RNA、タンパク質、ステロイド、ステロール、診断薬など)の試薬であってよいか、または、工業試薬(抗菌物質、抗真菌薬、殺虫剤、除草剤、肥料など)であってよい。このような試薬のデリバリモードは、例えば、液体、粉末、エマルジョン、クリーム、スプレーなど、対象のセルを含むのに適したいかなる形状であってよい。
【0033】
このように、さまざまな薬剤が対象となるベシクルに高荷重で共有結合または非共有結合して含まれることができる。結果として生じたベシクルは、さまざまな生体外および生体内用途に用いられることができる(例えば、カーゴデリバリ/対象の薬剤の生体内外の細胞へのペイロード)。例えば、特定の実施形態では、対象の薬剤は、非共有結合的にベシクルに含まれてよく、その場合、薬剤は、極性媒体内に分散されるか、ベシクルの内部または外部表面との非共有的関係によってベシクルと結合するか、ベシクル壁に埋め込まれるか、または、それらの組合せであってよい。他の実施形態では、ベシクルのコポリマーの自己組織化ブロックの1つ以上は、対象の薬剤と非共有結合して改質されてよい。薬剤は、共有結合すると、片側または両側におけるリンカまたはスペーサを含む結合であるジスルフィドまたはエステルなどの生物分解可能な結合によりベシクルの残基に付着してよい。いくつかの実施形態では、ベシクルは、対象の薬剤に共有結合しても非共有結合してもよく、最終用途に応じてペイロードの単複どちらも含みうる。さらに他の実施形態では、ベシクルは、そのカーゴを輸送する特定の場所にベシクルを送るターゲッティングリガンドによって改質されてよい(例えば、親水性細胞内トランスダクションドメインは、特定のレセプタ、細胞、細胞外マトリックス成分、組織、器官などにベシクルを導くターゲッティングリガンドに付着しうる)。
【0034】
上述のごとく、本発明のベシクルは、対象のカーゴを細胞または細胞系に細胞内デリバリするための医療、研究、および、工業的なツールとして活用されることができる。治療および診断薬における使用に加え、例えば、ベシクルは、細胞成長、アポトーシス、分化、鬱血などを調整する試薬を輸送するためのツールとしてもとても適している(例えば、血清タンパク質、成長因子、阻害剤、治療薬などの細胞内デリバリ)。また、細胞ベースのアッセイ(例えば、イオンインジケータ、反応染料および化学物質、造影剤およびコントラスト剤、一次または二次検出および/または定量化成分の細胞内デリバリ)を容易にし、ジェノミクス、プロテオミクス、微生物学、免疫学、生化学、および、一般的な分子および細胞生物学(例えば血球計算、トランスフェクション、染色、細胞培養など)における広範囲な他の細胞ベースの用途にも適する。
【0035】
他の細胞内トランスダクションシステム(例えばTATドラッグ共役体)とは異なり、本発明のブロックコポリマーは、水溶液のような極性媒体にさらされると、ベシクル内で自発的に自己組織化する。ベシクルは非常に安定しており、さまざまな大きさおよび内部/外部表面特性を有するカーゴを含むために調整でき、親水性分子に非共役結合される強靭かつ可逆性複合体を形成しうる。このようなベシクルの顕著な利点は、親水性細胞内トランスダクションドメインが親水性ペイロードとの相互作用と共に、ベシクルのカーゴの取り込みおよび細胞内デリバリのために細胞膜全体におけるベシクルの輸送も促進することである。ベシクルそれ自体も最小限細胞障害性である。
【0036】
本発明のベシクルの他の長所は、例えば、対象の疎水性カーゴと本発明のベシクル内にカプセル化されるのに適した極性媒体に分散または封じ込めるために適切な両親媒性サーファクタントとを共有結合または混合させることにより、ベシクルは、疎水性ペイロード(例えば、ステロイド、ステロール、5−ドデカノイルアミノフルオレセインなどの染料、パクリタキセルなどの薬品)を輸送することができる。この目的のための両親媒性サーファクタントは、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルなどのポリオキシエチレン脂肪酸、および、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸のジエステル(ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸のポリエチレングリコール脂肪酸エステルも)、油およびアルコールの両親媒性エステル交換反応製品、ステロールおよびステロール誘導体、ビタミンA,D,E,Kなどの油溶性ビタミン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステルとの混合物、スクロースモノパルミテート、スクロースモノラウレート、スクロースジステアレートなどの糖の親媒性エステル、低級アルコール(C2からC4)および、脂肪酸(C8からC8)の親媒性エステルなどを含む。
【0037】
本発明のベシクルの一側面は、水溶性カーゴを取り込み、それらを細胞膜を介して環境が整った細胞内へ送達する能力を有することである。特に興味深いのは、ベシクルが水溶性活性薬剤を取り込むことである。「水溶性活性薬剤」とは、水に溶けるか、あるいは、水または水溶液に対して親和性があり、プロドラッグのように通常それ自体所定の活性度を示し、化学修飾が施された化合物のことを指す。このような薬剤は、ペプチド、タンパク質、核酸、治療薬、診断薬などの生物学的に活性な化合物、および、農薬、除草剤、肥料などの非生物学的材料を含んでよい。
【0038】
本発明のベシクルシステムで用いられうる水溶性活性薬剤化合物の例は、さまざまなカテゴリの薬剤によって表される。薬剤は、造影剤または診断薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗寄生虫剤、抗不整脈薬、抗菌剤、抗ウィルス薬、抗凝固剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗かび剤、抗痛風剤、降圧剤、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗悪性腫瘍薬、勃起障害改善薬、免疫抑制剤、抗原虫薬、抗甲状腺薬、抗不安薬、鎮静剤、催眠薬、神経遮断薬、ベータ・遮断薬、強心薬、コルチコステロイド、利尿薬、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体遮断薬、表皮剥離剤、脂質調整剤、抗狭心症薬、Cox−2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド、筋弛緩薬、抗骨粗鬆症剤、抗肥満剤、向知性薬、尿失禁治療薬、栄養油、前立腺肥大治療薬、必須脂肪酸、非必須脂肪酸、および、それらの混合物などを含むが、これらに限定されない。同様に、水溶性活性薬剤は、サイトカイン、ペプチド模倣、ペプチド、タンパク質、トキソイド、血清、抗体、ワクチン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、遺伝物質の一部、核酸、または、それらの混合物であってよい。適切な水溶性活性薬剤は、デンプン、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キサンタンなどの親水性ポリマー、または、部分的に加水分解されたセルロースオリゴマーなども含みうる。
【0039】
治療薬または予防薬として適切な水溶性活性薬剤の例は、以下を含むが特にこれらに限定されない。アカルボース、アシクロビル、アセチル・システイン、塩化アセチルコリン、アラトロフロキサシン、アレンドロネート、アルグルセラーゼ、塩酸アマンタジン、アンベノニウム、アミホスチン、塩酸アミロライド、アミノカプロン酸、アンホテリシンB、抗血友病因子(ヒト)、抗血友病因子(ブタ)、抗血友病因子(リコンビナント)、アプロチニン、アスパラギナーゼ、アテノロール、ベシル酸アトラクリウム、アトロピン、アジスロマイシン、アズトレオナム、BCGワクチン、バシトラシン、ベカプレルミン、ベラドナ(belladona)、塩酸ベプリジル、硫酸ブレオマイシン、カルシトニン(ヒト)、カルシトニン(サケ)、カルボプラチン、カペシタビン、硫酸カプレオマイシン、セファマンドール、セファゾリンナトリウム、セフェピム塩酸塩、セフィキシム、セホニシドナトリウム、セフォペラゾン、セフォテタン二ナトリウム、セフォタキシム、セフォキシチンナトリウム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシムアキセチル、セファレキシン、セファピリン・ナトリウム、コレラ・ワクチン、コリオゴナドトロピン;シドホビル、シスプラチン、クラドリビン、臭化クリジニウム、クリンダマイシンおよびクリンダマイシン誘導体、シプロフロキサシン、クロドロネート、コリスチンメタナトリウム、硫酸コリスチン、コルチコトロピン、コシントロピン、クロモリンナトリウム、シタラビン、ダルテパリンナトリウム、ダナパロイド、デスフェリオキサミン、デニロイキンジフチトクス、デスモプレッシン、ジアトリゾ酸メグルミンおよびジアトリゾ酸ナトリウム、ジサイクロミン、ジダノシン、ジリスロマイシン、塩酸ドパミン、ドルナーゼ アルファ、塩化ドキサクリウム、ドキソルビシン、エチドロン酸二ナトリウム、エナラプリラート、エンケファリン、エノキサパリン、エノキサパリン・ナトリウム、エフェドリン、エピネフリン、エポエチン・アルファ、エリスロマイシン、塩酸エスモロール、第IX因子:ファムシクロビル、フルダラビン、フルオキセチン、ホスカメトソジアム、ガンシクロビル、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージ刺激因子、リコンビナント・ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ゲンタマイシン、グルカゴン、グリコピロレート、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンおよびそれの合成類似体、GnRH、ゴナドレリン、グレパフロキサシン、ヘモフィラスB結合ワクチン、不活性型A型肝炎ウイルスワクチン、不活性型B型肝炎ウイルスワクチン、ヘパリンナトリウム、インジナビル硫酸塩、インフルエンザウイルスワクチン、インターロイキン2、インターロイキン3、インスリン(ヒト)、インスリンリスプロ、インスリン(ブタ)、インスリンNPH、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミール、インターフェロン・アルファ、インターフェロン・ベータ、イプラトロピウムブロミド、イホスファミド、日本脳炎ウイルス・ワクチン、ラミブジン、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レボフロキサシン、リンコマイシンおよびリンコマイシン誘導体、ロブカビル、ロメフロキサシン、ロラカルベフ、マンニトール、はしかウイルスワクチン、髄膜炎菌ワクチン、メノトロピン、臭化メペンゾラート、メサラミン、メテナミン、メトトレキサート、メトスコポラミン、塩酸メトホルミン、メトプロロール、メズロシリンナトリウム、塩化ミバクリウム、耳下腺炎ウィルス・ワクチン、ネドクロミル・ナトリウム、臭化ネオスチグミン、ネオスチグミン硫酸ジメチル、ニューロンチン,ノルフロキサシン、オクトレオチド酢酸塩、オフロキサシン、オルパドロネート、オキシトシン、パミドロン酸二ナトリウム、臭化パンクロニウム、パロキセチン、ペルフロキサシン、ペンタミジンイセチオネート、ペントスタチン、ペントキシフィリン、periciclovir、ペンタガストリン、フェントラミンメシレート、フェニルアラニン、サリチル酸フィゾスチグミン、ペストワクチン、ピペラシリンナトリウム、血小板由来増殖因子、多価肺炎球菌ワクチン、不活性型ポリオウイルス・ワクチン、ポリオウイルス・ワクチン・ライブ(OPV)、硫酸ポリミキシンB、塩化プラリドキシム、プラムリンチド、プレガバリン、プロパフェノン、臭化プロパンテリン、臭化ピリドスチグミン、狂犬病ワクチン、リセドロン酸、リババリン、塩酸リマンタジン、ロータウイルス・ワクチン、キシナホ酸サルメテロール、シンカリド、天然痘ワクチン、ソタロール、ソマトスタチン、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スタブジン、ストレプトキナーゼ、ストレプトゾシン、塩化スキサメトニウム、塩酸タクリン、硫酸テルブタリン、チオペタ、チカルシリン、チルドロネート、チモロール、組織タイプ・プラスミノーゲン活性体、TNFR:Fc、TNK−tPA、トランドラプリル、トリメトレキサート・グルコナート、トロスペクチノマイシン、トロバフロキサシン、塩化ツボクラリン、腫瘍壊死因子、生腸チフスワクチン、尿素、ウロキナーゼ、バンコマイシン、バラシクロ、バルサルタン、生水痘ウイルス・ワクチン、バソプレッシンおよびバソプレッシン誘導体、臭化ベクロニウム、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビタミンB12、ワルファリンナトリウム、黄熱ワクチン、ザルシタビン、ザナミビル、ゾレンドロネート、ジドブジン、薬学的に受け入れられる塩類、異性体およびそれの誘導体、および、その混合物。
【0040】
さまざまな診断薬は、共役結合または非共役結合して対象のベシクルに高荷重で取り込まれることができる。特定の対象の診断薬は、検出可能な標識、または、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)検出システムの成分のような能動および受動レポーターリガンドを含むレポーターリガンド、量子ドット、キレート剤、造影剤、染料、識別用放射性同位元素、ペプチド、核酸、抗体、抗体フラグメントなどを含むがこれらに限定されない。診断薬を取り込むベシクルは、例えば、標準的な分析および/または分離ベースの検出形態(例えば、クロマトグラフィ、酵素免疫測定法(ELISA)など)、および、ガンマシンチグラフィ、磁気共鳴画像およびコンピュータ断層撮影のような侵襲性が少ない形態を含むさまざまな検出およびイメージング形態と共に用いられることができる。
【0041】
例えば、ベシクルは、キレートまたは二機能性キエート剤(例えば、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、または、ホルモンなどのターゲッティング部分、および、金属に対するキレート基に結合された共有結合連鎖群)を取り込み、(選ばれた特定の薬剤および投与の形態に基づいて)用いられることができる。そして、ベシクルは、血管造影(脈管系のX線撮影検査)、尿路造影(尿路のX線撮影検査)、腎盂撮影写真(骨盤、腎臓、尿管)、膀胱造影(膀胱)、気管支造影(肺および気管支のX線撮影検査)、upper Gl seriesまたは"食道造影"(咽頭、食道、十二指腸、小腸のX線撮影検査)、lower Gl seriesまたはバリウム浣腸(大腸(結腸)および直腸のX線撮影検査)、胆嚢造影(胆嚢および胆管の構造の経口または静脈内に造影剤を導入することに従うX線撮影検査)、脊髄造影(脊髄のX線撮影検査)、卵管造影(卵管のX線撮影検査)、子宮卵管造影(子宮および卵管のX線撮影検査)、唾液腺造影(唾液腺および唾液腺管のX線撮影検査)、関節腔造影(関節のX線撮影検査)、ディスコグラフィー(関節および脊椎のX線撮影検査)、脳槽造影(CSFフローパターンのX線撮影検査)、X線体軸断層写真(造影剤が用いられる身体または身体の一部の「断面」への一連のx線写真の解像度の方法としてのコンピュータX線体軸断層撮影)、NMRスキャンまたはMRI(身体または身体の一部の断面への一連の組織の高周波走査の解像度のコンピュータ化された方法としての磁気共鳴画像法。これは、CATスキャンにおける密度とは異なる組織特有のやり方で領域内の組成を視覚化する)。
【0042】
特定の対象の診断薬は、テクネチウムを用いる。(例えば、テクネチウムは、医療診断スキャン全体の85%で用いられ、SHチオール、CO−カルボキシラーゼ、NHアミン、PO−リン酸、CNOHオキシム、OHヒドロキシル、Pホスフィン、および、NCイソニトリルによって示される電気陰性キレート基のような還元剤の存在下では、金属−電子ドナー錯体を簡単に形成し、ガンマカメラによるイメージングに対する良好な性質を有する。また、キレートを合成し、純度を決定し、投与し、最小限の放射露光でイメージングするのに十分な6時間という短い半減期を有する)。
【0043】
例としてあげるキレート剤は、テクネチウムアルブミンなどのテクネチウム系薬剤(例えば、壁運動および駆出率を決定する心臓イメージング、CAD、バイパス手術、心不全、予後移植、心筋症、および、心臓毒性(ドキソルビシン)によるダメージ)、テクネチウムアルブミン凝集体(例えば、塞栓による閉鎖を決定する肺微小循環イメージング)、テクネチウムアルブミンコロイド(例えば、腹部外傷、腫瘍転移、および、肝硬変などでの間機能不全の場合に用いられる肝臓および脾臓の網内系細胞によるコロイドのパーフュージョンおよびクリアランス速度を決定するイメージング)、Tc−Bicisate(発作および病変における脳パーフュージョンを決定するイメージング)、テクネチウムジソフェニン(例えば、肝細胞が製品を受け取った後、胆嚢および共通の胆管、最後に十二指腸に排出し、慢性胆嚢炎から急性胆嚢炎(急性胆嚢炎−胆嚢管がつまって胆汁が胆嚢から供給されなくなる)を区別する、テクネチウムエキサメタジン(例えば、生命維持装置をつけた患者の脳死を決定する、癒着病巣、痴呆、発作、突き止められた腹腔内感染への白血球の放射能標識、および、炎症性腸疾患)メドロン酸テクネチウム(例えば、胸骨への癌転移、前立腺ガン、骨髄炎、パジェット病、骨折、疲労性骨折診断のスキャニングを含む骨格系のイメージング)、テクネチウムメルチアジド(例えば、腎機能および尿流出のイメージング、テクネチウムグルセプタート(例えば、モノクロナール抗体の放射能標識)、テクネチウムペンテト酸(例えば、脳腫瘍および死のイメージング、腎臓検査、および、糸球体濾過率のイメージング),テクネチウムピロリン酸(例えば、通常の心筋酵素による最新MIの診断を決定する心臓イメージング)、テクネチウム標識血液細胞(例えば、活性下部消化管出血の部位を手術前に位置特定する心臓検査におけるイメージング。脾臓組織の損傷診断に加熱しわ細胞が用いられる)、テクネチウムセスタミビ(カーディオライト(商品名))(例えば、心筋パーフュージョンイメージング、副甲状腺アデノーマの手術前位置特定、および、乳癌の早期診断)、テクネシウムサクシマー(例えば、創傷、嚢胞、瘢痕化の場合の機能化腎実質の決定)、過テクネチウム酸ナトリウムTcO4−Na+(例えば、I−へのサイズおよび電荷が同様であり、甲状腺スキャンのために、甲状腺、唾液腺、腎臓、胃、脳の脈絡叢(血液脳関門)で濃縮する、テクネチウム硫黄コロイド(例えば、網内系細胞機能を決定するための骨、肝臓、脾臓のイメージング。GI排出時間およびGER(胃食道逆流)の決定に用いられる主要薬剤)、テクネチウムテトロフォスミン(Myoview(商品名))(例えば、心筋パーフュージョンイメージング)、および、感染部位で好中球と選択的に結合するテクネチウム標識抗CD15モノクロナール抗体を含む。テクネチウム標識抗CD15モノクロナール抗体は、例えば、虫垂炎を検出/イメージングする99mTcFanolesomab(NeutroSpec(商品名))。これは、医師は、ガンマカメラを用いて一時間以下で感染部位の特定の機能的映像を観察することを可能にすると共に、骨髄炎、原因不明熱、術後膿瘍、IBD、および、肺イメージングにも用いることができる。
【0044】
テクネチウム以外の識別用放射性同位元素は、以下を含む。ストロンチウム−イットリウム、亜鉛−銅、ゲルマニウム−ガリウム、ストロンチウム−ルビジウム、クエン酸ガリウム化合物(例えば、炎症および感染部位を特定するためのイメージング)、18F−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(例えば、代謝率を決定するPETスキャニング(ポジトロン断層法);脳、心臓および癌管理など(新生物は、糖分解速度が速い)、ヨウ素識別用放射性同位元素(例えば、機能化神経芽細胞腫および褐色細胞腫をイメージングしかつ見つけるためのイオベングアンスルファート131I;甲状腺イメージングのためのナトリウム123I;甲状腺全摘出術および機能化甲状腺癌の転移性上皮性悪性腫瘍の治療のためのナトリウム131I)、インジウム識別用放射性同位元素(例えば、二機能性キレート剤を介してモノクロナール抗体およびペプチドを放射性同位元素を使って識別するのに利用される;腫瘍、骨髄、および、膿瘍をイメージングするためのFe+3と同様の反応を示す塩化インジウム;モノクロナール抗体を標識付けするインジウムサツモマブペンデチド;より特定化しかつより高画質にすることによってガリウムの識別に用いる放射性同位元素を置換し、感染局在化および血小板研究のために血小板および白血球を標識し(血栓症位置、寿命)、および、腎移植のためのインジウムオキシン(8−ヒドロキシキノリン)、;脊髄管および脳内のCSF空間をイメージングするためのインジウムペンテテート;ソマトスタチンレセプタ含有神経内分泌腫瘍および転移の診断のための全身イメージング用インジウムペントレオチド、タリウム識別用放射性同位元素(例えば、K+によって見られるように組織内に同様に取り込まれる生存可能な心筋の心臓イメージングのための塩化タリウム)、および、遮断された領域を局在化するための吸入および肺スキャンによるキセノンガス133Xn)。
【0045】
追加の診断薬は、以下を含む。ヨウ素系化合物などの放射線造影剤(例えば、ジアトリゾ酸メグルミン、ジアトリゾ酸ナトリウム、イオパノ酸、tryopanoateナトリウム、ヨウ素塩酸ナトリウム、イオタラム酸メグルミン、イオジパミドメグルミン、イオヘキソール、イオパミドール、イオベルソール、イオディキサノール、イソサルファンブルー、ペンテトレオタイド)、MRI造影剤(例えば、パーフレキサン−n−パーフルオロヘキサンガス、および、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC))。
【0046】
適切なカプセル化化合物は、ヘモグロビン、タンパク質、酵素、イムノグロブリン、ペプチド、オリゴヌクレオチド、または、核酸を含むがこれらに限定されない。本願明細書に記載されるベシクルと共に用いられることができるカプセル化酵素は、アルカリホスファターゼ、D−アミノ酸オキシナーゼ、6−アミノレブリン酸デヒドラターゼ、α−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、アスコルビン酸塩、アスパラギナーゼ、ブチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ、キモトリプシン、キモトリプシン、シプロシン、デキストラナーゼ、DNAホトリアーゼ、DNA−(アプリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ、DNAポリメラーゼ、DNase I、エラスターゼ、ラクトバチルス・ヘルベティカスから抽出された酵素、FLAVOURZYME 9、β−フルクトフラノシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルコースオキシダーゼ−インシュリン、グルコース−6−ホスファート−デヒドロゲナーゼ、β−グルクロニダーゼ、ヘキソキナーゼ、β−ラクタマーゼ、クロモバクテリウムビスコスム由来リパーゼ、ルシフェラーゼ、リゾチーム、ニュートラーゼ、ペプシンA、ペルオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ+グルコースオキシダーゼ、ホスファターゼ、シトロバクター由来ホスファターゼ、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD、ホスホリラーゼ、ホスホトリエステラーゼ、t−プラスミノーゲン活性化因子、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ、プロテイナーゼ、プロテイナーゼK、Qoレプリカーゼ/MDV−I RNA、リボヌクレアーゼA、ルラクチン、Sn−グリセロール−3−ホスファート−O−アシルトランスフェラーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、ストレプトキナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ+カタラーゼ、トリプシン、ウレアーゼ、および、尿酸オキシダーゼを含むがこれらに限定されない。
【0047】
本願明細書中に記載されるベシクルと共に用いられることができるカプセル化核酸および核酸配列は、ウィルスから分離された核酸、原核生物、真核生物、バクテリア、植物、動物、哺乳類、および、人間由来のものを含むがこれらに限定されない。他の種類の核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi薬剤、アプタマー、プライマー、プラスミド、リボザイムなどの触媒核酸分子、三重鎖形成分子、および、血管新生を阻害するオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない。さらなる例は、自律増殖プラスミドまたはウィルスのようなベクターに組み込まれるか、または、例えば相同組み換えまたは部位特異的組換えによってゲノムに導入される導入遺伝子、組み換え遺伝子またはDNAフラグメントなどの原核生物または真核生物に取り込まれるか、あるいは、PCR、制限エンドヌクレアーゼ消化、または、化学または生体内合成によって生成されるcDNA、ゲノムまたはDNAフラグメントなどの別々の分子として存在する組み換えDNA分子を含む。有益な核酸は、いかなる自然または非自然発生ポリペプチドもコード化するいかなる組み換えDNA分子も含みうる。他の核酸は、例えば、単離したDNA分子によってコード化されるか、または、化学的に合成されるmRNA分子、および、低分子干渉RNA(すなわちRNAi薬剤)などのRNAを含む。用語「核酸」「ヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」「DNA」および「RNA」は当業者にはよく知られている。これらの用語の定義は、世界知的所有権機関(WIPO)産業財産関係情報及び文献についての手引書Standard ST. 25、本願明細書中に参照により組み込まれた特許明細書(1998年)におけるヌクレオチドおよびアミノ酸配列一覧表の基準(以降WIPO Standard ST.25(1998年)とする)にも記載されている。本願明細書中に記載される特定の側面では、用語「核酸」、「DNA」、および、「RNA」は、誘導体および生物学的機能等価物を含む。用語「核酸」、「核酸配列」、および、「オリゴヌクレオチド」は、互いに交換可能である。これらの用語は、長さが約2から100ヌクレオチドのポリマー、長さが約101から1,000ヌクレオチドのポリマー、長さが約1,001から10,000ヌクレオチドのポリマー、および、長さが10,000ヌクレオチドを超えるポリマーを含む、ヌクレオチドからなるポリマーのことを指す。
【0048】
他の側面では、本願明細書中に記載されるベシクルと共に、タンパク質およびペプチドのようなアミノ酸およびアミノ酸配列が用いられてよい。適切なタンパク質は、インシュリンおよびペプシンを含むがこれらに限定されない。また、カプセル化されたタンパク質およびペプチドは、例えば、GLP−1、CCK、抗菌性ペプチド、および、抗アンギオゲニンなどの分子量が大きい治療用ペプチドおよびタンパク質を含みうる。リポゾームの含まれうるインシュリンなどのタンパク質は、キム等による文献(Int.J.Pharm、180、75−81、1999年)で見ることができ、カプセル化タンパク質およびペプチドは、についてのその教示は参照によって本願明細書に組み込まれる。「アミノ酸」および「アミノ酸配列」という用語は、当業者にはよく知られている。これらの用語の定義は、WIPO Standard ST.25(1998年)でも見ることができる。本願明細書中に記載される特定の側面においては、「アミノ酸」および「アミノ酸配列」という用語は、WIPO Standard ST.25(1998)では特に定義されないDおよびL−アミノ酸を含む誘導体、擬晶、および、類似体を含む。「ペプチド」および「アミノ酸配列」という用語は、本願明細書中では交換可能であり、一般的にペプチド結合によって連結したアミノ酸(ジペプチド以上)のいかなるポリマーのことを指す。「ペプチド」および「アミノ酸配列」という用語は、オリゴペプチド、タンパク小片、類似体、および、nuteinなどを含む。
【0049】
(組成物を含むベシクル)
本発明の側面は、例えば、上記のような、本発明の複数のベシクルを含む組成物をさらに含む。所定の組成物におけるベシクルの濃度は、変化してよく、例えば、約5から約100%、特に約90から約100までの範囲で変化してよい。特定の実施形態では、組成物は、内部のベシクルが低サイズ多分散性であることを特徴とする。「低サイズ多分散性」とは、組成物内のベシクルが約10%以下、特に、約5%以下だけ互いに異なる直径を有するということである。上述のごとく、ベシクルは、例えば、診断または治療薬などの活性薬剤を含んでよい。
【0050】
特定の実施形態では、組成物は、医薬品組成物である。例えば患者などの被験者またはホストに対して本発明の製剤を投与するさまざまな適切な方法も可能である。特定の製剤を投与するために複数の方法を用いることができるが、他の方法と比べて即座により効果的な反応を提供できる特定の方法が存在しうる。便利で薬学的に許容できるいかなる賦形剤を用いてもよい。賦形剤の選択は、特定の組成物、および、当該組成物を投与するのに用いられる特定の方法によっても一部決定されるであろう。したがって、本発明の医薬品組成物の適切な製剤は非常に多く存在する。以下の方法および賦形剤は、単なる例に過ぎず、限定ではない。
【0051】
経口投与に適する製剤は、以下を含むがこれらに限定されない。(a)水、食塩水、または、オレンジジュースのような希釈液中に溶解する有効量の組成物のような液体溶液、(b)予め決められた量の活性成分を固体または顆粒としてそれぞれ含むカプセル、小袋、または、錠剤、(c)適切な液体での懸濁液、(d)適切なエマルジョン。錠剤形態は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトデンプン、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸の1つ以上、および、他の賦形剤、着色剤、希釈液、緩衝剤、給湿剤、防腐剤、香料、および、薬理的に互換性のある賦形剤を含む。錠剤形態は、味のついた活性成分、一般的には、庶糖およびアカシアまたはトラガカントゴム、および、ゼラチンおよびグリセリンなどの不活性なベースに活性成分、または、蔗糖およびアカシアを含むトローチ、または、活性成分に加え、従来技術で知られるような賦形剤などを含むエマルジョン、ジェルなどを含んでよい。
【0052】
本発明の対象の製剤は、吸入によって投与されるべきエアロゾル製剤となってよい。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、および、窒素のような加圧可能な噴霧剤とされてよい。また、これらのエアロゾル製剤は、ネブライザまたはアトマイザで用いられるような非加圧調製用調合薬として調整されてもよい。
【0053】
非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および、患者の血液との製剤等張性を示す溶質を含むことができる水性および非水性の等張性無菌注射液と、懸濁剤、可溶化剤、糊料、安定剤、および、防腐剤を含みうる水性および非水性の無菌懸濁剤とを含む。製剤は、アンプルおよびバイアルのようなマルチドーズ密封容器内にあってよく、例えば、使用直前に、注射用の水などの無菌液体賦形剤を加えることのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥させた)状態で保存されてよい。即席の注射液および懸濁液は、無菌の粉末、顆粒、および、上記の種類の錠剤により調製してよい。
【0054】
局所投与に適した製剤は、活性成分に加え、従来技術において好適とされるキャリアのようなクリーム、ジェル、ペースト、フォームとして示されてよい。
【0055】
坐薬製剤は、乳化基剤または水溶性基剤のようなさまざまな基剤と混合することによって得られる。膣内投与に適した製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、フォームとして示されてよい。
【0056】
シロップ、エリキシル、および、懸濁液のような経口または直腸投与に対する単位用量形態が提供されてよく、例えば、茶さじ一杯、大さじ一杯、錠剤および坐薬などの各用量は、1つ以上の阻害剤を含む予め決められた量の組成物を含む。同様に、注射または静脈注射投与の単位用量形態は、無菌水、通常の食塩水状の溶液、または、他の薬学的に許容できるキャリアとして阻害剤を含んでよい。
【0057】
本願明細書中で用いられるような「単位用量形態」は、ヒトおよび動物を対象にした単位量として適する物理的に独立した単位のことを指す。各単位は、薬学的に許容できる希釈液、キャリア、媒体に関連して所望の効果を生み出すのに十分な量で計算される本発明の予め決められた量の組成物を含む。本発明の新規な単位用量形態のための仕様は、用いられる特定の化合物および得られる効果、さらには、ホストにおける各化合物に関連する薬力学に基づく。
【0058】
当業者であれば、服用レベルは、特定の化合物、輸送媒体の性質などの関数として変化しうることが直ちに理解できよう。所定の化合物の好適な用量は、さまざまな手段を用いて当業者によって直ちに決定されうる。
【0059】
本発明においては、動物、とくにヒトに投与される用量は、適切な時間枠において動物に予防および治療反応を生じさせるのに十分でなければならない。当業者であれば、用量は、用いられる特定の化合物の濃度、動物のコンディション、および、動物の体重に加え、疾患のひどさおよび疾病の段階を含むさまざまな要因に左右されることを理解できよう。用量の大きさは、特定の化合物の投与を伴いうるいかなる副作用の存在、性質、および、程度によって決定される。
【0060】
(生成方法)
本発明の側面は、上記のベシクルを調製する方法をさらに含む。概して、本発明の方法は、上記のような第1の疎水性ドメインおよび第2の親水性細胞内トランスダクションドメインを含む自己組織化ブロックコポリマーを有する流動極性媒体の混合物を提供する段階と、その後、ベシクルを生成するのに十分な条件下で混合物を維持する段階とを備える。特定の実施形態では、混合物は、水性媒体に存在する十分な量のコポリマーを含み、水性媒体は、例えば、上記のような1つ以上の活性薬剤をさらに含む。混合物に存在するコポリマーの量は変えることができる。特定の実施形態では、混合物に存在するコポリマーの量は、約0.1%から約5%の容量当たり重量(weight/volume)、特に約0.5%から3%、さらには約1%から約2%の容量当たり重量(weight/volume)であってよい。水溶性活性薬剤などの活性薬剤が存在する場合、その濃度は、変化してよい。特定の実施形態では、混合物に存在する活性薬剤の濃度は、約1ナノモーラーから約100マイクロモーラー、特に約1マイクロモーラーから約100マイクロモーラーであってよい。この濃度は、活性薬剤の作用強度にも依存するであろう。
【0061】
提供される混合物は、例えば、自己組織化反応条件などの、所望のベシクルを生成するのに十分な条件下で維持される。適切な条件とは、異種のコポリマー原料をベシクルに自己組織化させるかまたは結合させるのに十分な条件である。特定の実施形態では、コポリマーの自己組織化が起きる条件は、生理的条件であるか、または、個別の構成タンパク質が安定している実験室条件である。特定の実施形態では、条件は、約4から10、特に、約6から8のpHレンジングを有する水溶性媒体を含み、その場合、温度範囲は、約摂氏4度から約摂氏100度である。
【0062】
望ましくは、複数のベシクルを含む生成物組成は、ろ過されるか、あるいは、ソートされることにより、組成物中のベシクルのサイズに対して低多分性を有する組成物が生成されてよい。ベシクルを生成する方法の実施形態に関するさらなる詳細は、以下の実験の章で見ることができる。さらに、(Holowka,E.P.,Pochan,D.J.,Deming,T.J.制御可能な直径を有する荷電ポリペプチドベシクルJ.Amer.Chem.Soc.127,12423−12428(2005年))に記載されるプロトコルが用いられてよく、Holowkaらの引例で用いられたコポリマーは、例えば、上記のような本発明で用いられたコポリマーに置き換えられる。
【0063】
(有用性)
例えば、治療または診断薬のようなカプセル化化合物を含みうる開示されたベシクルは、多くの用途を有する。一側面では、患者の疾病を治療するまたは予防する方法が開示され、方法は、上記のようなカプセル化化合物(すなわち活性薬剤)を含む対象のベシクルを投与する段階を備える。カプセル化化合物の選択は、被験者の特定の標的疾病に基づく。
【0064】
所定の被験者に投与されるベシクルの用量または量は、デリバリを生じさせる所望の効果を発揮するのに十分な多さでなければならない。用量は、例えば、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの副作用を生じさせるほど多くてはならない。一般的に、用量は、被験者の年齢、条件、性別、および、疾病の程度で変化するであろうし、当業者によって決定されうる。用量は、いかなる逆の徴候が出た場合も個々の医師によって調整されうる。用量、用量計画表、および、投与の経路は変化してよく、口、鼻、膣、直腸、外眼、筋肉内、皮内、皮下、静脈内、腫瘍内、胸膜内、腹膜内、または、他の実用的な投与経路によって有害反応を防ぎながらも、デリバリを実現させてよい。
【0065】
本願明細書中に記載されるベシクルは、例えば、上記組成物のような医薬品組成を生成する、薬学的に許容できるキャリアと組み合わせて治療用に用いられることができる。
【0066】
一側面では、本願明細書中に記載されるベシクルは、認識された医学的状態から緩和または改善される必要があるヒト、または、動物、あるいは、ヒト以外の霊長類のような被験者に投与され、動物は、齧歯動物、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、羊を含むがこれらに限定されない。ベシクルは、局所または全身治療が望まれているかどうか、および、治療されるべき面積によって多数の方法で被験者に投与されてよい。投与は、局所的に(眼科的に、経膣的に、直腸に、鼻腔内を含む)、吸入によって経口的に、あるいは、例えば、静脈内滴注、皮下、腹膜内または筋肉内注射によって非経口的になされてよい。本願明細書中に記載されるベシクルは、静脈内に、腹膜内に、筋肉内に、皮下に、腫瘍内に、腔内に、あるいは、経皮内に投与されうる。
【0067】
他の側面では、活性についてカプセル化化合物をスクリーニングする方法が開示される。方法は、(a)ベシクルカプセル化化合物の既知の活性または薬理活性を測定する段階と、(b)対応する非カプセル化化合物の既知の活性または薬理活性を測定する段階と、を備える。
【0068】
ベシクルカプセル化化合物がスクリーニングされうる活性は、生物学的活性化合物に関連するいかなる活性も含みうる。本発明のスクリーニング方法で決定されうる多くの活性の部分的なリストを以下に示す。1.レセプタ・アゴニスト/アンタゴニスト活性;見出しうるこれらの活性を測定する特定のスクリーンの例の解説:「レセプタRBI分類および信号トランスダクションのRBIハンドブック」K.J.Watling,J.W.Kebebian,J.L.Neumeyer,Research Biochemicals International,Natick,マサチューセッツ州,1995年、およびその中の引例。分析法は、T.Kenakin「薬品とレセプタとの相互作用」第2版、Raven Press,ニューヨーク,1993年、およびその中の引例;酵素阻害:H.Zollner「酵素阻害のハンドブック」第2版、VCH Weinheim、ドイツ、1989年およびその中の引例;中枢神経系、自律神経系(心血管および消化管)、抗ヒスタミン性、抗炎症性、麻酔、細胞障害性、および、避妊活性:これらの活性を測定する特殊なスクリーンの例の解説は、E.B.Thompson,「薬物バイオスクリーニング」:薬理学における薬物評価技法、VCH出版社、ニューヨーク、1990年、およびその中の引例に記載されている。;抗癌活性:これらの活性を測定する特殊なスクリーンの例の解説は、I.J.FidlerおよびR.J.White「癌治療薬試験モデルの設計」Van Nostrand Reinhold社、ニューヨーク、1982年、およびその中の引例に記載されている。;抗菌および抗ウィルス(特に抗HIV)活性:これらの活性を測定する特殊なスクリーンの例の解説は、「臨床検査医学における抗生剤」第3版、V.Lorian編集、WilliamsおよびWilkens、ボルチモア、1991年およびその中の引例に記載されている。;これらの活性を測定する抗HIVスクリーンの解説は、「HIV第2巻:生化学、分子生物学およびドラッグデリバリ」J.Karn著、IRLプレス、オックスフォード、1995およびその中の引例に記載されている。:これらの活性を測定する特殊なスクリーンの例の解説は、St.Georgiev、「小ペプチドの免疫調節性活性」Trends Pharm. Sci. 1 1,373−378 1990年に記載されている。;薬物動態学的特性:スクリーニング方法において検査される薬理活性は、とりわけ、半減期、溶解度、または、安定性を含む。例えば、薬物動態学的特性を分析しかつ測定する方法は、J.−P.Labaune「薬物動態のハンドブック、化学物質の毒性評価」Ellis Horwood社、チチェスター、1989年およびその中の引例に記載されている。;酵素運搬能力、ヘモグロビンなどの化合物の機能的能力は、生体内および生体外の両方で評価される。分析方法は、Reiss,Chem.改訂版101,2797,200、および、その中の引例に記載されている。;Rabinovici他、循環性ショック、32,1,1990年;方法酵素学、第231および232巻;Proctor,J.Trauma,54,S106,2003およびその中の引例。
【0069】
スクリーニング方法におけるベシクルは、本願明細書中に記載されるベシクルのいかなるものであってもよい。さらに、非カプセル化化合物に対応するカプセル化化合物は、本願明細書中に記載されるいかなるカプセル化化合物であってもよい。
【0070】
このように、本願明細書中で考察されるスクリーニング方法は、カプセル化化合物を有するいかなるベシクル、すなわち、ベシクルカプセル化化合物は、対応する既知の活性を有する非カプセル化化合物と比較されることにより、同じまたは同様の活性を同じまたは異なるレベルで有するかどうかが決定されうる。測定ステップがどのように実行されるかの詳細次第で、本発明のスクリーニング方法は、ステップa)のカプセル化化合物の活性と質的に異なるステップb)の非カプセル化化合物によって示される活性を検出するのに用いられることもできる。
【0071】
また、スクリーニング方法は、同じまたは同様の活性における違いを検出しかつ測定するために用いられてもよい。このように、本願明細書中に記載されるスクリーニング方法は、ベシクルカプセル化化合物の違いによって非カプセル化化合物の生物学的活性を著しく変える状況を考慮している。
【0072】
(システムおよびキット)
本発明の方法に用いられる製剤と共にシステムおよびキットが提供される。製剤は、好都合なことに既知の単位用量形式で提供される。
【0073】
このようなシステムおよびキットには、例えば、単位用量などの製剤形態を含む容器に加え、例えば、被験者の単位用量を用いて細胞増殖症状態を治療する説明書など、本発明の方法における被験者の製剤形態を記載した情報添付文書が含まれてよい。
【0074】
これらの説明書は、本発明のシステムおよびキット内にさまざまな形式で存在してよく、その1つ以上は、キット内に存在してよい。これらの説明書が存在する1つの形式は、例えば、キットを包装する際に、添付文書内における、情報が印刷される紙などの適切な媒体または基板に印刷される情報のようであってよい。別の手段は、例えば、ディスケット、CDなどの、例えば、情報が記録されているコンピュータ可読媒体である。さらなる別の手段は、除去される部位の情報にアクセスすべく、インターネットを介して用いられうるウェブサイトアドレスであってよい。いかなる便利な手段がキットに存在してよい。
【0075】
以下の例は、限定ではなく例示として示される。
【0076】
(実施例)
I.材料および方法
A.合成 すべてのコポリペプチドは、Co(PMe阻害剤を用いて合成され(Deming,TJ.「αアミノ酸−N−カルボキシ無水物の制御された重合のためのコバルトおよび鉄開始剤」Macromolecules 32,4500−4502(1999年)、純化された後、文献の手順に従い、立体排除クロマトグラフィ、Hおよび13C NMR、および、赤外分光法を用いて特徴付けられた(Holowka他、「制御可能な直径を有する荷電ポリペプチドベシクル」J.Amer.Chem.Soc.127,12423−12428(2005年))。上記のようにK6020が調製された。最終的なコポリマーの単離収量は、75%から98%までであった。GPC/LSを用いて決定されたコポリペプチド組成物は、予測値の5%以内であることがわかった。コポリペプチドの鎖長は、1.1から1.3までの範囲のCLD(重量平均長/数平均長)による予測長の8%以内であった。
【0077】
ポリ(ジ−N−ベンジルオキシカルボニル−L−アルギニン0.9−ランダム−N−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン0.160−ブロック−ポリ(L−ロイシン)20,[(Z−R)0.9/(Z−K)0.16020 ドライボックス中窒素雰囲気において、Z−Arg NCA(200 mg、0.42mmol)およびNε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン−N−カルボキシ無水物(Z−Lys NCA(12mg、0.042mmol)がTHF(8mL)中に溶解され、攪拌棒付シンチレーションバイアルに入れた。Co(PMe開始剤溶液(THFにおける0.047μM溶液のうち100μL)が注射器によってバイアルに加えられた。バイアルは、密閉され、摂氏25度のドライボックスの中で4時間攪拌された。4時間後、アリコート(50μL)が取り除かれ、GPC/LS分析用に0.1M LiBrを含むDMFにおいて5mg/mLの濃度まで希釈された(M=26,740;M/M=1.17)。アリコートの残りをFTIRによって分析することにより、Z−Arg NCAおよびZ−Lys NCAがすべて消滅したことを確認した。ドライボックス中にL−ロイシン−N−カルボキシ無水物(Leu NCA)(35mg、0.23mmol)がTHF(0.7mL)中に溶解され、反応バイアルに加えられた。摂氏25度のドライボックス中では攪拌による重合が引き続きさらに3時間行われた。3時間後、アリコート(50μL)が取り除かれ、GPC/LS分析用に0.1M LiBrを含むDMFにおいて5mg/mLの濃度まで希釈された(M=29,230;M/M=1.27)。アリコートの残りをFTIRによって分析することにより、Leu NCAがすべて消滅したことを確認した。ドライボックスの外では、THF溶液をメタノール(50mL)に加えることによってコポリペプチドが沈殿し、遠心分離された。その後、二次遠心の前にポリマーペレットをメタノール(50mL)に2時間浸漬し、数時間真空状態で乾燥させることにより白色粉体の被保護ポリマーを得た(165mg、収率91%)。GPC/LSによって決定されるコポリマーの平均組成は、[(Z−R)0.9/(Z−K)0.16321であった。
【0078】
ポリ(L−アルギニン0.9−ランダム−L−リジン0.160−ブロック−ポリ(L−ロイシン)20:(R0.9/K0.16020 100mLの丸底フラスコに[(Z−R)0.9/(Z−K)0.16020(155mg)およびTFA(8mL)を注入した。フラスコを氷浴させ、15分間攪拌してポリマーを溶解させ、フラスコの中身を摂氏0度まで冷却した。この時点で、HBr(HOAcにおける33%溶液中1.8mL、10等量)が滴下され。溶液を1時間氷浴させ他状態で攪拌した。その後、ジエチルエーテル(20mL)が加えられることにより、生成物が沈殿した。混合物を遠心分離して固体の沈殿物とし、その後生成物をジエチルエーテル(20mL)で数時間洗浄することにより、白色固体を得た。サンプルを空気中で乾燥させた後、無パイロジェン水(10mL)中に再び懸濁させ、LiBr(150mg)を加えて溶液を透析バッグに入れた(MWCO=2000Da)。サンプルをEDTA(無パイロジェン水中に3mM)に対し1日透析し、残留するコバルト開始剤を除去し、さらに2日間無パイロジェン水(水は8時間ごとに交換)に対し透析した。無パイロジェン水は、ミリポアのMilli−Q Biocel A10純粋製造装置によって得られた。透析後、サンプルは凍結乾燥され、白色飛散性散剤を生成物として得た(54mg、収率94%)。
【0079】
6020を得るための(R0.9/K0.16020の(FIFC機能付与) リジンε−アミン基の蛍光標識は、DMSO(10mg/mL)中に溶解されたフルオレセインイソチオシアナート(FITC)を用いてなされた。(R0.9/K0.16020粉末(100mg)を水溶性NaHCO(10mL、0.2M)とTHF(10mL)との混合物中に溶解した。ポリペプチド溶液に対し、鎖毎にFITCの5.4等量(利用可能なリジンアミンの54%に相当する)を加え、16時間攪拌した。サンプルを精製すべく、暗がりで4日間、12時間ごとに取り替えられる無パイロジェン水によって透析した(MWCO=8000Da)。機能付与されたポリマーを乾燥凍結して分離することにより、かすかに黄色い粉末(103mg)を得た。
【0080】
水中でのR6020ベシクル集合体の調製 R6020粉末をTHF中に分散させて1%(w/v)懸濁液を得た。その後、コポリペプチドが均一に分散され、大きい粒状物が観察されなくなるまで、30から45分間、懸濁液を超音波槽に入れた。攪拌棒が加えられ、無パイロジェン水と等量の液滴を加えながら攪拌し続けた。その後攪拌棒を除去し、混合物を30分間超音波槽に入れ、次に混合物を透析バッグに入れ(MWCO=2000Da)、無パイロジェン水に対して24時間透析した。水は、まず5時間ごとに交換し、その後6時間ごとに交換した。アバンティのMini−Extruderを用いて結果として生じたベシクル懸濁液を押し出した。押し出しは、異なる孔サイズを有するワットマンのNucleopore Track−Etch polycarbonate(PC)membranes(1.0μm、0.4μm、0.2μm、0.1μm、0.05μm)を用いて室温で行われた。押し出しの前に、PCmembranesを無パイロジェン水に10分間浸漬させた。Mini−Extruderを2回通過させた後、結果として生じた懸濁液をDIC光学顕微鏡検査法およびDLSによって分析した。すべての細胞研究のために平均直径100nmのベシクルが用いられた。
【0081】
ベシクル押出しによるデキストランカプセル化 上述のごとく、無パイロジェン水中にR6020ベシクルを100μM懸濁したものが調製された。この懸濁液に対し、脱イオン水中のテキサスレッド色素で標識したデキストラン(3000Da、0.250mg/mL)を加えることにより0.125mg/mLの最終的なデキストラン濃度を得た。この懸濁を0.1μmのPCmembranesを介して4回押し出した。結果として生じたサンプルを無パイロジェン水に対して12時間透析させ(MWCO=6000−8000Da)、ベシクルによってカプセル化されていないデキストランを除去した。その後、カプセル化されたデキストランを公開されている手順に従い、分光測光法で定量化した。
【0082】
クロロホルム/水分割 コポリペプチドベシクル懸濁液が2(w/v)%で調製され、試験管内で水性緩衝液(0.5mL;10mM NaHPO、100mM NaCl、pH7.4)によって1(w/v)%に希釈された。クロロホルム−リピド溶液(0.5mL)を調製し(EYPGまたはEYPCの10mM)、試験管中の水性懸濁剤に重ねた。水性層の動乱を最小限にすべく注意を払った。最初のうち、二層系全体としては、水相は濁り、クロロホルム層は透明であった。その後試験管を3000rpmで30分間遠心分離した。サンプルを取り除くと、EYPGサンプルは、透明な水層とEYPGの濁ったクロロホルム層とを有することがわかり、一方、EYPCサンプルに変化はなかった。次に、サンプルをレーザー走査型共焦点顕微鏡法により調べ、EYPGのクロロホルム層にはベシクルが存在し、水層には存在しないことを認めた。EYPCのサンプルについては反対のことが認められた。EYPGサンプルでは、クロロホルム層を除去してNaHSOの水溶液を含む他のバイアルに加えた。攪拌棒を加えてバイアルの中身を一時間静かに攪拌した。サンプルを共焦点顕微鏡観察することにより、水層にはベシクルの存在を認め、クロロホルム層にもわずかに残っていることを認めた。
【0083】
B.材料 リン酸緩衝食塩水(PBS)、ペニシリン−ストレプトマイシン、Dulbecco's modified Eagle's mediumとHam's F12 mediumとの1:1混合物(DMEM/F12)をインビトロジェン社(カリフォルニア州カールズバッド)から購入した。ウシ胎児血清(FBS)は、Hyclone社(ユタ州ローガン)から購入し、L−グルタミンおよび上皮成長因子(EGF)は、Becton− Dickinson社(ニュージャージー州フランクリンレーク)から購入した。他の細胞培養試薬は、すべてSigma社(ミズーリ州セントルイス)から購入した。T84細胞系は、ATCC(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関)(バージニア州マナッサス)から購入し、HULEC−5A細胞系は、疾病管理予防センター(ジョージア州アトランタ)から提供していただき、コールターカウンタ用等張液は、Beckman Coulter社(カリフォルニア州フラートン)から購入した。細胞培養容器は、BD Biosciences社(カリフォルニア州サンノゼ)から購入した。MTT細胞生存分析キットは、Chemicon International社(カリフォルニア州テメキュラ)から購入した。
【0084】
C.レーザー走査型共焦点顕微鏡法 ライカTCS−SP MP共焦多光子倒立顕微鏡(ドイツ、ハイデルベルグ)によって1%(w/v)の水性有機層ベシクルの共焦蛍光画像を撮影した。当該顕微鏡は、アルゴンレーザ(488nm青色励起:JDS Uniphase社)、561nm(グリーン)ダイオードレーザ(DPSS:Melles Griot社)と、Spectra−Physics Millenia X 532nmグリーンダイオードポンプレーザ、および、UV励起に対し768nmで調整されるTsunamiピコ秒チタンサファイヤ赤外線パルスレーザからなる2光子レーザセットアップとを備える。
【0085】
D.透過型電子顕微鏡法 R6020懸濁液(0.1%w/v)は、それぞれ0.05、0.1、0.2、0.4μmのPCmembranesから別々に押し出された。各サンプルの一滴を200メッシュのFormvar膜を被覆した銅グリッド上に載せ、90秒間そのままにした。次にろ紙を用いて残ったサンプルおよび液体を取り除き、20秒間そのままにし、無パイロジェン水を滴下してグリッドを洗浄し、ろ紙の余分な液体を取り去った。結果として生じたサンプルを、室温で80keVのJEOL 100 CX透過型電子顕微鏡を用いて撮像した。
【0086】
E.細胞培養 T84細胞系は、ヒトの大腸癌肺転移に由来する上皮腫瘍細胞である。当該細胞を、二酸化炭素を5%含む摂氏37度、pH7.4の湿気のある環境で、重炭酸ナトリウム13.5mM、FBS5%、ペニシリン100単位/mL、および、ストレプトマイシン100μg/mLを添加したDMEM/F12内で維持した。HULEC−5A細胞系は、肺微小血管系由来であり、SV40腫瘍ウィルス抗原により形質転換したヒトの内皮細胞である。当該細胞を、二酸化炭素を5%含む摂氏37度、pH7.4の湿気のある環境で、重炭酸ナトリウム14mM、FBS10%、ペニシリン100単位/mL、および、ストレプトマイシン100μg/mL、グルタミン10mL、EGF10ng/mL、および、ヒドロコルチゾン1μg/mLを含むMDCB培地内で培養した。
【0087】
F.ポリペプチドベシクルの細胞取り込み 実験を開始する前の12から14時間、T84およびHULEC−5A細胞をそれぞれ1×10および5×10細胞/cmの密度で細胞培養容器上に接種する。接種密度は、細胞サイズおよび増殖速度によってわずかに異なった。接種媒体は細胞培地と同じであることに注目されたい。プリペプチドベシクルを添加する前に、接種媒体を吸い出し、エアインキュベータ内の摂氏37度の湿気のある環境で制御しながら脱イオン水中の100μMのポリペプチドベシクル懸濁、または、テキサスレッド色素で標識したデキストランを含む培地で細胞を5時間培養した。FBSがなく、重炭酸ナトリウムの変わりに20mMのHEPESがあることを除けば、当該培地は細胞培養媒体と同じである。FBSにおける正味の電荷が負のタンパク質は、ポリペプチド−細胞相互作用を妨げる可能性があるので、FBSは最初に培養媒体から除去した。次の検査もFBSの存在下において摂氏0度で行われた。培養期間の後、細胞をPBSで洗浄し、接種媒体と5分間接触させた。当該媒体を吸い出すことにより、観察される蛍光が内在化ベシクルによるものでないことを確認した。最後に、細胞をPBSと接触させ、共焦顕微鏡法を用いて視覚化した。
【0088】
II.結果
規定の手順(Deming, TJ.、構造が定義されたブロックコポリペプチドの容易な合成、ネイチャー390、386−389(1997年))を用いてR6020ブロックコポリペプチドを調製した。これらのサンプルは、K6020の材料と同様の物理的性質を示し、水溶液中でミクロンサイズのベシクルを形成することがわかった(図1AおよびB)(Holowka,E.P.,Pochan,D.J.,Deming,T.J.、制御可能な直径を有する荷電ポリペプチドベシクル、J.Amer.Chem.Soc.127、12423−12428(2005年))。これらのベシクルは、デキストラン(図1C)のような水溶性種内に入り込むことができ、ポリカーボネートフィルタを介して押し出されることにより、直径を50nm(図1D、E)まで小さくするよう制御可能な安定した多分散性ベシクルとなることができる(Discher,B.M.,Hammer,D.A.,Bates,F.S.,Discher,D.E.、さまざまな媒体におけるポリマーベシクル、Curr.Opn.Coll.Interface.Sci.5,125−145(2000年))。ポリペプチドのイメージングを容易にすべく、リジンアミン基に結合するイソチオシアネートによってフルオレセイン染料の結合を容易にするランダムに配置されたリジン残基を10モル%含むようR60セグメントを調製した(図1A)。これらの標識されたサンプルは、標識されていないリジンを含まないサンプルと同じ特性を示し、説明を明確にする目的で、本願明細書中ではR6020と示されている。
【0089】
60セグメントを用いることにより膜界面における輸送が向上するかどうかを知るべく、予めPTD共役を評価するのに用いられたようなポリペプチドベシクルをバルク水/クロロホルム界面で分離する研究をまず行った(Sakai,N.,Matile,S.、液体および二分子膜におけるポリアルギニンのアニオン媒介移送、J.Amer.Chem.Soc,125、14348−14356(2003年);Rothbard,J.B.、Jessop,T.C.,Lewis、R.S.、Murray,B.A.、Wender、P.A.、グルタミン含有ペプチドを細胞に転移させるメカニズムにおける膜電位および水素結合の役割、J.Amer.Chem.Soc、126、9506−9507(2004年))。この研究では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中でポリペプチドベシクルを調製し、それをクロロホルムの脂質溶液の上に重ねた。サンプルを静かに混合し、共焦点顕微鏡法(LSCM)を用いて各相の中身を検査した。PTD共役と同様に、R6020ベシクルは、中性両性イオン性脂質である卵黄ホスファチジルコリン(EYPC)がクロロホルム相にある場合(図2D)は、水相に残留し、アニオン性脂質である卵黄ホスファチジルグリセロール(EYPG)が用いられた場合(図2B)は、さらに有機相に移動することがわかった(上記サカイ他)クロロホルム相に脂質がないか、または、K6020ベシクルを用いると(図2E)、ベシクルは有機相に輸送されず、輸送にはアルギニン残基と結合している対イオンが重要であることが証明された。さらに、テキサスレッド色素で標識したデキストランを含むK6020ベシクルは、輸送中にその中身を失わないことがわかった(図2F)。K6020ベシクルを含有するクロロホルム−EYPG溶液に、リン脂質頭部基より強いグアニジン残基と結合する硫酸イオンを含む新しい水相が重ねられた場合、ベシクルは水相に戻り、これによってベシクルが疎水性環境の内外において膜輸送と類似した輸送能力を有することが実証された。これらの研究における注目すべき所見は、R600ベシクルは界面を輸送される際も崩壊せず、強靭な性質、ならびに、界面を介して漏出せずに大きなカーゴを運搬する能力を示すということがわかったことである。
【0090】
これらの有望な結果を得て、生体外での細胞内デリバリ用R6020ベシクルの可能性を検査することになった。経口および静脈内ドラッグデリバリにおける妥当性をそれぞれ検査すべく、上皮(T84)および内皮(HULEC−5A)細胞系の両方を検討した。両種の細胞の培養は、モデルカーゴであるテキサスレッド色素で標識したデキストラン(3000Da)を含む平均直径100nmを有するR6020ベシクルを用いて5時間、無血清培地で行われた。固定されていない細胞をLSCMを用いて検査した結果、ベシクルおよびその中身ともに両方の細胞系に素早く取り込まれ(図3)、それと同様に少ないオリゴアルギニンPTDの取り込みも観察された(Rothbard,J.B.,Jessop,T.C.,Wender,P.A.、適応性トランスロケーション:グアニジウム含有トランスポータの細胞内取り込みにおける水素結合および巻く電位の役割、Adv.Drug DeNv.Rev.57,495−504(2005年);Wadia,J.S.,Dowdy,S.F.、癌治療におけるTAT媒介トランスダクションによるタンパク質およびペプチド薬剤の膜貫通型輸送、Adv.Drug DeNv.Rev.57,579−596(2005年))。フルオレセイン標識R6020ベシクル(図3H)、および、非カプセル化テキサスレッド色素標識デキストラン(追加情報を参照)による対照実験では、どちらも最小限の細胞取り込みを示し、ポリアルギニンセグメントは、ベシクルの取り込み、および、その中身であるデキストランも内部に取り込む役割をもっていることを検証した。示された画像からの蛍光強度の定量化は、輸送されるR6020ベシクル内にデキストランがない場合と比べ、デキストランがカプセル化されているカーゴの取り込みを非常に向上させた(16倍まで)。
【0091】
LSCM画像スライスを三次元再構築すると、ベシクルならびにその中身のデキストランは、細胞内に斑点状に主に存在し、部分的に共存し、ベシクルとその中身とは一緒にセル内に入ることを示唆した(図3E)。R6020ベシクルを伴う細胞形も取り込みを示し(図3G)、取り込まれるベシクルの数は、短いアルギニンペプチドによる以前の所見同様、摂氏37度での培養と比べてわずかに減少した。(上記Rothbard他)。ベシクルの取り込みは、マクロピノサイトーシスによって起きる可能性があり、PTDの取り込みメカニズムとして提案されており(Wadia,J.S.,Stan,R.V.,Dowdy,S.F.、トランスダクション可能なTAT−HA膜融合ペプチドは、脂質ラフトマクロピノサイトーシス後のTAT融合タンパク質の流出を増進する−Nature Medicine 10,310−315(2004年))、比較的大きい100nmのベシクルがどのように内在化させるかの説明が可能である。R6020ベシクルの迅速な細胞取り込みは、最新の考え(Mitchell,DJ.,Kim,D.T.,Steinman,L.,Fathman,C.G.,Rothbard,J.B.、ポリアルギニンは、他のポリカチオン性のホモポリマーより効率的に細胞内に入る−J. Peptide Res.56,318−325(2000年))に反し、大きいポリアルギニン鎖も、それらが正確に表されている場合は、細胞内デリバリにとって有効でありうることを示している。他のシステムでは、ポリアルギニンセグメントは、溶液内で拡散するのもままならないが、自己組織化ベシクル内で鎖でつながれており、鎖の末端のみが細胞表面と相互作用できるようにすることにより、グアニジン基をいくらか被覆することができる。さらに、オリゴロイシン疎水性相互作用は、ポリアルギニンの細胞相互作用より強いので、細胞結合時にもベシクルは崩壊しない。
【0092】
6020ベシクルの内在化は確認できたが、ポリアルギニン鎖の潜在的毒性に対処する必要があった。ポリペプチドベシクルの毒性は、代謝活性を測定するMTT細胞生存分析を用いてT84およびHULEC−5Aの両方で検査された(Mosmann,T.、細胞成長および生存のための迅速比色定量法:増殖および細胞毒性アッセイへの適用Journal of Immunological Methods 65,55−63(1983年))。R6020ベシクルおよび60Lホモポリマーは、実験経過中(5時間、追加情報参照)ポリペプチドがない細胞と同様に生存可能であることがわかった。K6020ベシクルの細胞障害性も最小限であることがわかった。しかしながら、K60ホモポリマーは、HULEC−5A細胞に対しては、高い毒性を有することがわかった。これらのサンプルについては、ポリカオチン性セグメントの自己組織化がそれらの細胞毒性、特にリジンポリマーに対する細胞毒性を非常に弱めることがわかった。これらは、ポリペプチドを形成するカチオン性ヒドロゲルについて得られる結果と同様であり、細胞表面に対するポリカチオンの自由拡散を防ぐ鎖集合体からおそらく生じる一般的現象であると見られる(Pakstis,L,Ozbas,B.,Nowak,A.P.,Deming,TJ.,Pochan,DJ.、自己組織化ジブロックコポリペプチドヒドロゲルの生体機能性における化学および形態学の効果、Biomacromolecules 5, 312−318(2004年))。このように、R6020ブロックコポリマーのベシクルへの自己組織化は、大きいポリカチオン性セグメントが存在しても、効果的な細胞内デリバリベシクルとしてのそれらの機能を助ける。この点については、T84細胞が血清含有培地でR6020によって培養される場合にさらに実証された。一般的に、ポリアルギニンのようなポリカチオンを結合して沈殿させるアニオン性血清タンパク質が豊富なのにもかかわらず、ベシクルは細胞内に輸送されることがわかった(図3F)(SeIa,M.,Katchalski,E.、ポリαアミノ酸の生物学的特性、Adv.Protein Chem. 14,391−478(1959年))。ポリペプチドからこれらのベシクルを構築することにより、単一の材料内で構造と機能性との相乗効果を得ることができる手段を提供し、設計において広く適用できることを証明し、また、多機能材料を調製できる。
【0093】
III.結論
培地内で安定であり、水溶性種に入り込むことができ、異なるサイズに加工されて大量に調整され得るポリアルギニンおよびポリロイシンセグメントからなるベシクルが調製された。これらの材料の顕著な性質は、ポリアルギニンセグメントがベシクルを形成するための構造を導くと共に、ベシクルの効果的な細胞内デリバリのための機能を提供するということである。ナノスケールの自己組織化と、本来備わっているポリペプチドの機能とのユニークな相乗効果により、ドラッグデリバリ用の多機能材料を設計するための新しいアプローチを提供する。
【0094】
これまで理解を確かなものとすべく、図示および例を用いて本発明のいくつかの詳細を説明してきたが、当業者であれば、本発明の教示に照らし、添付の請求項の趣旨および範囲に逸脱せずに、本発明には特定の変更および修正がなされうることが明らかであろう。
【0095】
したがって、これまでの説明は、本発明の原理を単に例示するに過ぎない。当業者であれば、ここでは明確に記載または示されてはいないが、さまざまなバリエーションを考案することが可能であり、それらが本発明の原理を具現し、本発明の趣旨および範囲に範囲内に含まれることを理解されたい。さらに、本願明細書中に記載されるすべての例および条件付の言い回しは、特に記載された例および条件に制限されることなく、主に、本発明の原理、および、発明者によって寄与される概念を読者が理解し、技術を拡大していく助けとなることを意図されている。さらに、本発明の原理、側面、および、実施形態ならびにその特定の例の記載は、その構造および機能両方の均等物を含むことが意図される。さらに、そのような均等物は、現在知られている均等物、ならびに、将来開発される均等物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行するよう開発される構成要素のどちらも含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、明細書中に示され、記載される例示的実施形態に限定することは意図していない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の請求項によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性流動媒体をカプセル化するシェルを備え、
前記シェルは、第1の疎水性ドメインと第2の親水性細胞内トランスダクションドメインとを有する自己組織化ブロックコポリマーを含む、ベシクル。
【請求項2】
前記シェルは、単一種の自己組織化ブロックコポリマーを含む、請求項1に記載のベシクル。
【請求項3】
前記シェルは、2以上の異なる種の自己組織化ブロックコポリマーを含む、請求項1に記載のベシクル。
【請求項4】
前記自己組織化ブロックコポリマーは、ブロックコポリペプチドである、請求項1に記載のベシクル。
【請求項5】
前記第1の疎水性ドメインは、ホモポリペプチドドメインである、請求項4に記載のベシクル。
【請求項6】
前記第1の疎水性ドメインは、約10から約30残基長にわたる、請求項5に記載のベシクル。
【請求項7】
前記第1の疎水性ドメインは、ポリロイシンドメインである、請求項6に記載のベシクル。
【請求項8】
前記ポリロイシンドメインは、L20である、請求項7に記載のベシクル。
【請求項9】
前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ヘテロポリペプチドドメインである、請求項4に記載のベシクル。
【請求項10】
前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ホモポリペプチドドメインである、請求項9に記載のベシクル。
【請求項11】
前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、約40から約80残基長にわたる、請求項10に記載のベシクル。
【請求項12】
前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ポリアルギニンドメインである、請求項11に記載のベシクル。
【請求項13】
前記ポリアルギニンドメインは、R60である、請求項12に記載のベシクル。
【請求項14】
前記自己組織化ブロックコポリマーは、ジブロックコポリペプチドであり、前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、前記第1の疎水性ドメインの長さの約2から4倍の長さを有する、請求項1に記載のベシクル。
【請求項15】
前記ジブロックコポリペプチドは、R6020である、請求項14に記載のベシクル。
【請求項16】
前記ベシクルは、約50から約1000nmにわたる直径を有する、請求項1に記載のベシクル。
【請求項17】
前記ベシクルは、温度約摂氏80度までは安定している、請求項1に記載のベシクル。
【請求項18】
前記ベシクルは、非毒性である、請求項1に記載のベシクル。
【請求項19】
前記極性流動媒体は、水性媒体である、請求項1に記載のベシクル。
【請求項20】
前記水性媒体は、水溶性活性薬剤を含む、請求項19に記載のベシクル。
【請求項21】
前記水溶性活性薬剤は、診断薬である、請求項20に記載のベシクル。
【請求項22】
前記水溶性活性薬剤は、治療薬である、請求項20に記載のベシクル。
【請求項23】
請求項1に記載のベシクルを複数備える組成物。
【請求項24】
前記組成物の内部に存在するベシクルは低サイズ多分散性を示す、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ベシクルは、活性薬剤を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物は、医薬品組成物である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1に記載のベシクルを調製する方法であって、
(a)第1の疎水性ドメインと第2の親水性細胞内トランスダクションドメインとを有する自己組織化ブロックコポリマーを含む極性流動媒体の混合物を準備する段階と、
(b)前記ベシクルを生成するのに十分な条件下で前記混合物を維持する段階と、
を備える方法。
【請求項28】
前記極性流動媒体は、水性媒体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水性媒体は、水溶性活性薬剤を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
被験者の疾病を治療または予防する方法であって、請求項1から22のいずれかのベシクル、または、請求項23から26のいずれかの組成物を前記被験者に投与する段階を備える、方法。
【請求項31】
極性流動媒体をカプセル化するベシクルを形成することが可能な自己組織化ブロックコポリマーであって、第1の疎水性ドメインと、第2の親水性細胞内トランスダクションドメインとを備える、自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項32】
前記ブロックポリマーは、ブロックコポリペプチドである、請求項31に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項33】
前記第1の疎水性ドメインは、ホモポリペプチドドメインである、請求項32に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項34】
前記第1の疎水性ドメインは、約10から約30残基長にわたる、請求項33に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項35】
前記第1の疎水性ドメインは、ポリロイシンドメインである、請求項34に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項36】
前記ポリロイシンドメインは、L20である、請求項35に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項37】
前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ヘテロポリペプチドドメインである、請求項32に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項38】
前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ホモポリペプチドドメインである、請求項37に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項39】
前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、約40から約80残基長にわたる、請求項38に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項40】
前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、ポリアルギニンドメインである、請求項39に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項41】
前記ポリアルギニンドメインは、R60である、請求項40に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項42】
前記自己組織化ブロックコポリマーは、ジブロックコポリペプチドであり、前記第2の親水性細胞内トランスダクションドメインは、前記第1の疎水性ドメインの長さの約2から4倍の長さを有する、請求項31に記載の自己組織化ブロックコポリマー。
【請求項43】
前記ジブロックコポリペプチドは、R6020である、請求項42に記載の自己組織化ブロックコポリマー。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A−2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【公表番号】特表2010−511630(P2010−511630A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539522(P2009−539522)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/086161
【国際公開番号】WO2008/070571
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(506064119)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア (15)
【Fターム(参考)】