説明

自己結紮式歯科矯正用ブラケットおよび該ブラケットの設置装置

【課題】自己結紮式ブラケットに関する審美性、自己結紮式ブラケットの使用および機能性、ならびに自己結紮式ブラケットのコストおよび製造性が改善された歯科矯正用ブラケットを提供する。
【解決手段】アーチワイヤ18を歯と連結する歯科矯正用ブラケット10は、アーチワイヤ18を中に受けるように構成されたアーチワイヤ用溝穴16を有するブラケット本体12と、ブラケット本体12と係合され、開位置と閉位置との間で動くことのできる可動式部材14とを含む。固定機構は、可動式部材14を少なくとも閉位置に固定するように構成され、突出部分および受容部分を含む。突出部分は、可動式部材14を少なくとも閉位置に固定するように、その中心軸線に対して撓むことのできる概ね細長いピンを含み得る。歯科矯正用組立体は、歯科矯正用ブラケット10と、このブラケットを歯の上で位置決めする整列装置とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連件への相互参照]
本願は、それぞれの開示が全体として参照によって本明細書に援用される、2007年6月28日出願の米国仮特許出願第60/946,842号、および2008年1月22日出願の米国仮特許出願第61/022,570号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、歯科矯正用ブラケットに関し、より詳細には、滑動部または掛け金などの可動式の閉鎖部材を有する自己結紮式の歯科矯正用ブラケット、および該ブラケットを設置する関連工具に関する。
【背景技術】
【0003】
歯科矯正用ブラケットとは、患者の咬み合わせを改善するためのすべての矯正目的の歯科矯正治療法の主な構成要素を指す。従来の矯正治療法では、歯科矯正医または助手が、患者の歯にブラケットを取り付け、それぞれのブラケットの溝穴の中にアーチワイヤを係合する。アーチワイヤは、歯を正しい位置に強制的に動かす矯正する力をかける。小型のエラストマーのOリングまたは精密な金属ワイヤなどの従来の結紮糸が、ブラケットの各溝穴内にアーチワイヤを保持するために用いられる。各ブラケットに個々の結紮糸を取り付けることが困難であるために、ブラケットの溝穴内にアーチワイヤを保持するために掛け金または滑動部などの可動式の部分または部材に頼ることによって結紮糸の必要をなくした、自己結紮式の歯科矯正用ブラケットが開発された。
【0004】
自己結紮式のブラケットは概ね好結果であったが、このようなブラケットの製造業者は、自己結紮式ブラケットに関する審美性、自己結紮式ブラケットの使用および機能性、ならびに自己結紮式ブラケットのコストおよび製造性を改善するよう引き続き努力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/946,842号
【特許文献2】米国仮特許出願第61/022,570号
【特許文献3】米国特許出願第11/685,540号
【特許文献4】米国特許出願第12/147,854号
【特許文献5】米国特許第7,267,545号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、アーチワイヤを歯と連結する歯科矯正用ブラケットは、歯に取り付けられるように構成され、中にアーチワイヤを受けるように構成されたアーチワイヤ用溝穴を有するブラケット本体を含む。可動式部材は、ブラケット本体と係合され、アーチワイヤがアーチワイヤ用溝穴に挿入可能である開位置と、可動式部材がアーチワイヤ用溝穴の中にアーチワイヤを保持する閉位置との間で、ブラケット本体に対して動くことができる。固定機構は、可動式部材を少なくとも閉位置に固定するように構成され、ブラケット本体または可動式部材のうちの一方に突出部分を、ブラケット本体または可動式部材のうちの他方に受容部分を含む。突出部分は、可動式部材を少なくとも閉位置に固定するように、その中心軸線に対して撓み、受容部分と協働することができる概ね細長いピンを含み得る。
【0007】
一実施形態では、細長いピンは、中心軸線に対して概ね半径方向に可撓性である。例として、細長いピンは管状であり、および/または、ピンの半径方向の拡張および収縮を容易にするようにピンの長さの少なくとも一部分だけ延在する溝穴を含み得る。別の実施形態では、細長いピンは中実であり、中心軸線に対して概ね横方向に可撓性であり得る。一実施形態では、突出部分はブラケット本体と関連され、受容部分は、たとえば結紮用滑動部であってよい可動式部材と関連され得る。
【0008】
一実施形態では、受容部分は、細長いピンなどの突出部材を受けるように構成された保持用溝穴を含む。保持用溝穴は、保持用溝穴の第1端部に、第1横断寸法を有する第1拡大部分を含み得る。直線区域部分は、第1拡大部分と連通しており、間の移行部に少なくとも1つの突起部を形成するように、第1横断寸法より小さい第2横断寸法を含む。この少なくとも1つの突起部は、可動式部材が閉位置から離れるように動くのを阻止する。保持用溝穴は、その第2端部に第2拡大部分をさらに含み得る。第2拡大部分は、直線区域部分と連通しており、間の移行部に少なくとも1つの突起部を形成するように、直線区域部分の第2横断寸法より大きい第3横断寸法を有する。この少なくとも1つの突起部は、可動式部材が開位置から離れるように動くのを阻止する。直線区域部分は、開位置と閉位置との間で可動式部材を動かす滑動力を変化させるように先細になっていてよい。別の実施形態では、保持用溝穴は、その端部の、第1中心線を規定する少なくとも1つの偏位部分と、間の移行部に少なくとも1つの突起部を形成するように、偏位部分と連通し、第1中心線から間隔を置いた第2中心線を規定する直線区域部分とを含み得る。
【0009】
様々な実施形態では、可動式部材は、可動式部材が閉位置に向かって動かされる際にアーチワイヤをアーチワイヤ用溝穴に案内する押し要素を、その端部に隣接して含み得る。押し要素は、可動式部材の前縁に隣接して形成される面取り部を含み得る。面取り部は、可動式部材の幅全体に均一であるか、または、可動式部材の側縁部に隣接し、その中心領域から離れるようになるなどの不均一であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、突出部分は、ブラケットのアーチワイヤ用溝穴に対して実質的に直角をなすように向けられてもよい。しかしながら、他の実施形態では、突出部分は、アーチワイヤ用溝穴に実質的に平行になるように向けられてよい。さらに、可動式部材を少なくとも閉位置(およびおそらくは開位置)に固定することに加えて、固定機構は、可動式部材がブラケット本体を外すのを防ぐように、さらに構成され得る。たとえば、可動式部材が開位置にあるとき、細長いピンが保持用溝穴の第1端部を係合し、それによって、可動式部材がブラケット本体を外すのを防ぐことができる。
【0010】
別の実施形態では、アーチワイヤを歯と連結する歯科矯正用ブラケットは、歯に取り付けられるように構成され、中にアーチワイヤを受けるように構成されたアーチワイヤ用溝穴を有するブラケット本体を含む。可動式部材は、ブラケット本体と係合され、開位置と閉位置との間で、ブラケット本体に対して動くことができる。固定機構は、可動式部材を少なくとも閉位置に固定するように構成され、ブラケット本体または可動式部材のうちの一方に突出部分を、ブラケット本体または可動式部材のうちの他方に受容部分を含む。突出部分の少なくとも一部分は、拡張状態と収縮状態との間で動くことができ、突出部分は、拡張状態において第1横断寸法を、収縮状態において第1横断寸法よりも小さい第2横断寸法を規定する。
【0011】
さらに別の実施形態では、アーチワイヤを歯と連結する歯科矯正用ブラケットは、歯に取り付けられるように構成され、中にアーチワイヤを受けるアーチワイヤ用溝穴を有するブラケット本体を含む。ブラケット本体は、歯に取り付けられたときに、対向する顎にある歯に対面するように構成された対面側部をさらに含む。対面側部は、対向する顎にある歯との咬合上の干渉を防ぐような輪郭形状を含む。切除部分が、ブラケット本体の対面側部に形成され、隣接する歯の上にある歯科矯正装置にブラケットを連結する連結部材を受けるように構成される。切除部分は、アーチワイヤ用溝穴と概ね直角をなしブラケットの取り付けられた歯から離れる方向への連結部材の動きを制限する、少なくとも1つの境界面を含む。ブラケットは、臼歯のブラケットおよび/または自己結紮式のブラケットであり、従来の結束用翼状部を有していないものであり得る。
【0012】
さらに別の実施形態では、アーチワイヤを歯と連結する歯科矯正用ブラケットは、歯に取り付けられるように構成され、中にアーチワイヤを受けるアーチワイヤ用溝穴を有するブラケット本体を含む。可動式部材は、ブラケット本体と係合され、開位置と閉位置との間で、ブラケット本体に対して動くことができる。ブラケットは、口腔内の組織(たとえば頬組織)に対面し、口腔内の組織を係合するように構成される滑らかで概ね円弧状の外表面を含む。一実施形態では、可動式部材は、ブラケットの円弧状の表面の相当な部分を形成する外側輪郭部分を含む。円弧状の表面は、たとえば歯肉側/咬合側方向および/または近心側/遠心側方向などの1つまたは複数の比較的大きい曲率半径を特徴とし得る。
【0013】
さらに別の実施形態では、歯科矯正用ブラケットは、歯に取り付けられるように構成され、中にアーチワイヤを受けるように構成されたアーチワイヤ用溝穴を有するブラケット本体を含む。可動式部材は、ブラケット本体と係合され、開位置と閉位置との間で、ブラケット本体に対して動くことができる。第1溝穴がブラケット本体に形成され、第1歯科矯正装置を受けるように構成される。第1溝穴は、アーチワイヤ用溝穴に概ね平行な方向に延在し得る。ブラケット本体は、第2歯科矯正装置を受けるように構成される第2溝穴をさらに含むことができ、第2溝穴は、アーチワイヤ用溝穴と概ね直角をなす方向に延在する。一実施形態では、第1溝穴と第2溝穴とは互いに交差しない。
【0014】
歯科矯正用ブラケットを使用して矯正治療を行うために歯を動かす方法であって、この歯科矯正用ブラケットは、歯に取り付けられるように構成されたブラケット本体と、アーチワイヤを中に受けるように構成されるアーチワイヤ用溝穴と、ブラケット本体に形成され、アーチワイヤ用溝穴に概ね平行な方向に延在する溝穴とを含み、本方法は、歯にブラケットを取り付けるステップと、溝穴を使用して仮取付け装置をブラケットに連結するステップとを含む。一実施形態では、歯は患者の顎骨に連結されていてよく、本方法は、固定された空間点を確立するために、仮固定装置を顎骨に固定するステップと、固定された空間点に対して歯を動かすために溝穴を使用して仮固定装置をブラケットに連結するステップとをさらに含み得る。
【0015】
さらに別の実施形態では、歯科矯正用組立体は、アーチワイヤを歯に取り付ける歯科矯正用ブラケットであって、アーチワイヤを中に受けるアーチワイヤ用溝穴、および、歯に連結するように構成された接合面を含むブラケットと、歯科矯正用ブラケットに解除可能に連結され、歯の上へ歯科矯正用ブラケットを設置するように構成された整列装置とを含む。整列装置は、歯科矯正用ブラケットに解除可能に連結されるように構成された第1部分と、第1部分から偏位され、ブラケットの接合面が歯の表面上に配置されたときに歯の表面に隣接するように構成された第2部分とを含む。第2部分は、歯の上の固定された基準点を使用することなどによって、歯の上でのブラケットの位置決めを容易にするための複数の標識を含み得る。連結された歯科矯正用ブラケットおよび整列装置は、診療室への配達のために予め包装可能である。このようにして、現場での組立てに関連する問題が回避可能である。さらに、整列装置は使い捨てであり得る。
【0016】
一実施形態では、整列装置は第1連結形状構成を含み、歯科矯正用ブラケットは、歯科矯正用ブラケットがアーチワイヤ用溝穴に概ね平行な方向に整列装置に対して動くのを制限するように第1連結形状構成と協働する第2連結形状構成を含む。たとえば、第1連結形状構成は、整列装置上の突出耳部を含み、第2連結形状構成は、ブラケット本体の凹部を含み得る。凹部は、たとえば、開くための工具を用いて自己結紮式の歯科矯正用ブラケットを開くのに使用される工具受け部であり得る。
【0017】
本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示し、上述の本発明の概略の説明および下記の詳細な説明とともに、本発明を説明する役割をする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】結紮用滑動部が開位置にあるのが示されている、本発明の一実施形態による自己結紮式の歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図2】結紮用滑動部が閉位置にあるのが示されている、図1の自己結紮式の歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図3】結紮用滑動部がブラケット本体から外された状態の、図1の自己結紮式の歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図4A】図1に示される結紮用滑動部の前部斜視図である。
【図4B】図1に示される結紮用滑動部の後部斜視図である。
【図5】本発明の別の実施形態による結紮用滑動部の後部斜視図である。
【図6】結紮用滑動部がブラケット本体から外された状態の、本発明の別の実施形態による自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図7】図6に示される歯科矯正用ブラケットに用いられる結紮用滑動部の後部斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態によるばね棒材の斜視図である。
【図9】図8のばね棒材を用いており、結紮用滑動部がブラケット本体から外された状態の、本発明の別の実施形態による自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態による結紮用滑動部の部分的な後部斜視図である。
【図11】図1に示される自己結紮式歯科矯正用ブラケットの側部立面図である。
【図12】図1に示される自己結紮式歯科矯正用ブラケットの後部立面図である。
【図13】結紮用滑動部を開くための工具と係合された、図1に示される自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図14】本発明の別の実施形態による自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図15】図14に示される自己結紮式歯科矯正用ブラケットの側部立面図である。
【図16】本発明の別の実施形態による自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図17】図16に示される自己結紮式歯科矯正用ブラケットの底部立面図である。
【図18】結紮用滑動部がブラケット本体から外された状態の、図16に示される自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図19】図16に示される結紮用滑動部の後部立面図である。
【図20】図16に示される自己結紮式歯科矯正用ブラケットの側部立面図である。
【図21】本発明の別の実施形態による自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図22】本発明の一実施形態による自己結紮式ブラケットおよび整列装置を含む歯科矯正用組立体の側部立面図である。
【図23】図22に示される整列装置の斜視図である。
【図24】結紮用滑動部がブラケット本体から外された、本発明の別の実施形態による自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図25】図24に示される歯科矯正用ブラケットとともに用いられる結紮用滑動部の斜視図である。
【図26】結紮用滑動部がブラケット本体から外された状態の、本発明の別の実施形態による自己結紮式歯科矯正用ブラケットの斜視図である。
【図27】図26に示される歯科矯正用ブラケットとともに用いられる結紮用滑動部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されるが、本発明は、いかなる特定のタイプの自己結紮式歯科矯正用ブラケットにおける実施にも限定されない。本発明の実施形態の説明は、添付の請求項によって規定される本発明の精神および範囲の内に含まれ得る、すべての代替例、修正例および均等構成例に及ぶように意図される。特に、本明細書に説明される本発明の実施形態の構成要素は、複数の異なるやり方に構成可能であることを当業者は認識するであろう。
【0020】
ここで、図面、特に図1および2を参照すると、歯科矯正用ブラケット10は、ブラケット本体12と、ブラケット本体12に連結された可動式の閉鎖部材を含む。一実施形態では、可動式の閉鎖部材は、ブラケット本体12と滑動可能に連結された結紮用滑動部14を含み得る。ブラケット本体12は、矯正目的の力を歯にかけるアーチワイヤ18(仮想線で示す)を受けるように構成される、中に形成されたアーチワイヤ用溝穴16を含む。結紮用滑動部14は、アーチワイヤ18がアーチワイヤ用溝穴16に挿入される開位置(図1)と、アーチワイヤ18がアーチワイヤ用溝穴16の中に保持される閉位置(図2)との間で動くことができる。ブラケット本体12および結紮用滑動部14は、矯正目的の歯科矯正治療に用いられる歯科矯正用ブラケット10をともに形成する。さらに、本明細書には可動式の閉鎖部材は結紮用滑動部として説明されているが、可動式の閉鎖部材は、開位置と閉位置との間で動くことができる他の可動式の構造体(たとえば掛け金、ばねクリップ、扉など)を含んでよいため、本発明はこれに限定されない。
【0021】
特に明記しない限り、歯科矯正用ブラケット10は、下顎の歯の唇側面に取り付けられる基準枠を用いるように本明細書に説明される。結果として、本明細書に用いられる、ブラケット10を説明するために使用される唇側、舌側、近心側、遠心側、咬合側および歯肉側などの用語は、選択された基準枠に対するものである。しかしながら、歯科矯正用ブラケット10は、口腔内において、他の歯の上におよび他の向きで使用され得るため、本発明の実施形態は、選択された基準枠および説明的な用語に限定されない。たとえば、ブラケット10はまた、歯の舌側面に連結可能であり、本発明の範囲内となり得る。基準枠に変更があるとき、本明細書に使用される説明的な用語は、直接的には適用され得ないことを、当業者は認識するであろう。また、本発明の実施形態は、口腔内での位置および向きとは無関係であるように意図され、歯科矯正用ブラケットの実施形態を説明するために使用される相対的な用語は、実施形態の明確な説明を図面において提供するためだけのものである。このように、唇側、舌側、近心側、遠心側、咬合側および歯肉側といった相対的な用語は、本発明を特定の位置または向きにいかようにも限定することはない。
【0022】
患者の下顎についている歯の唇側面に取り付けられたとき、ブラケット本体12は、舌側部20、咬合側部22、歯肉側部24、近心側部26、遠心側部28および唇側部30を有する。ブラケット本体12の舌側部20は、たとえば、適切な歯科矯正用セメントもしくは接着剤によるか、または隣接の歯にバンドを巻くことによるなどの任意の従来の方法で歯に固定されるように構成される。舌側部20は、歯の表面に固定される接合用ベース部を形成するパッド32(図12)をさらに備えることができる。パッド32は、別の部品または要素としてブラケット本体12に連結され得るか、または、代替として、パッド32はブラケット本体12と一体的に形成され得る。たとえば軸33aおよび球状端部33bを有する歯科矯正用フックなどの形態の連結要素が、ブラケット本体12から延在し、ブラケット本体12を、隣接する歯についたバンドまたは他のフックなどの他の歯科矯正用要素と連結するのを容易にすることができる。ブラケット本体12は、近心側部26から遠心側部28へと近心/遠心方向に延在するアーチワイヤ用溝穴16をともに画定する、ベース面34とベース面34から唇側に突出する一対の向かい合う溝穴面36、38とを含む。溝穴面36、38およびベース面34は、ブラケット本体12の材料の中に実質的に封入または埋入される。ブラケット本体12のアーチワイヤ用溝穴16は、任意の適切な方法で歯科矯正用アーチワイヤ18を受けるように構成され得る。
【0023】
図3に示すように、ブラケット本体12は、溝穴面38から概ね歯肉側/咬合側方向に延在する概ね平坦な支持面40をさらに含む。一対の向かい合ったガイド42、44が支持面40に載り、ブラケット本体12の近心側部26および遠心側部28にそれぞれ配置される。ガイド42、44は概ねL字状であり、支持面40から概ね唇側方向に突出する第1脚部をそれぞれ含む。ガイド42、44がともに間隔のあいた関係で支持面40上に部分的に重なるように、ガイド42は、遠心方向に突出する第2脚部を有し、一方、ガイド44は、近心方向に突出する第2脚部を有する。平坦な支持面40およびガイド42、44は、結紮用滑動部14をブラケット本体12内において支持および案内する滑動係合軌道46をともに形成する。
【0024】
図4Aおよび4Bに示すように、結紮用滑動部14は、近心部分48、遠心部分50、および近心部分48と遠心部分50との中間の中央部分52を備える概ね平坦な構造体である。中央部分52の唇側部がガイド42、44の唇側部と実質的に面一になる(図2)ように、ガイド42、44は近心部分48および遠心部分50の上にそれぞれ重なり、中央部分52は唇側方向に突出する。このような構成は、本質的に、結紮用滑動部14の唇側部に歯肉側/咬合側に向いた軌道または溝54、56を形成し、結紮用滑動部14が開位置と閉位置との間で動かされると、ガイド42、44がこの軌道または溝に沿って動く。一実施形態では、溝54、56の歯肉側端部58は、唇側方向に延在し、溝54、56を閉じる停止部分60を含み得る。結紮用滑動部14が閉位置にあるとき(図2)、停止部分60は、ガイド42、44の歯肉側端部62に隣接するか、または当接さえするように構成される(図3)。
【0025】
図3および4Bに示すように、歯科矯正用ブラケット10は、結紮用滑動部14を少なくとも閉位置に固定する固定機構を含む。このために、固定機構は、結紮用滑動部14を少なくとも閉位置に保持するように協働する、ブラケット本体12または結紮用滑動部14のうちの一方にある突出部分、および、ブラケット本体12または結紮用滑動部14のうちの他方にある受容部分を含み、結紮用滑動部14がブラケット本体12から外れるのをさらに防ぐことができる。例示的な一実施形態では、固定機構は、ブラケット本体12に連結された概ね細長い円筒形で管状のばねピン66(図3)と、結紮用滑動部14に形成された保持用溝穴68(図4B)とを含む。この実施形態は、ブラケット本体12に関連するばねピン66、および結紮用滑動部14に関連する保持用溝穴68を備えるように説明されているが、本発明はこのように限定されないことを当業者は認識するであろう。たとえば、図示はされないが、ばねピン66が結紮用滑動部14に連結されてもよく、保持用溝穴68がブラケット本体12に形成されてもよい。
【0026】
図3に示すように、ばねピン66は中心軸線69に沿って延在し、支持面40に形成された穴70の中に受けられる第1部分(図示せず)と、たとえば概ね唇側方向などのアーチワイヤ用溝穴16に対して概ね直角をなす方向に支持面から突出する第2部分とを含む(たとえばばねピン66は概ね唇側/舌側方向に突出する)。ばねピン66は、その目的が以下に説明される、その側壁に形成され、ばねピン66の長さの少なくとも一部分に沿って延在する切除部分またはスリット72を含む。たとえば、スリット72は、ばねピン66の全長にわたって延在してもよい。代替として、スリット72は、少なくとも、支持面40から突出するばねピン66の第2の部分の長さにわたって延在してよい。他のスリット構成もまた可能である。
【0027】
ばねピン66は、たとえば、スリット72を形成するように圧延工程によって形成され得るか、または代替として、スリット72を形成するように管状部材を切削することによって形成され得る。さらに、ばねピン66は、ステンレス鋼、チタン合金、NiTiタイプの超弾性材料、または他の適切な材料を含む材料から形成されてよい。組立ての際、ばねピン66は、穴70の中にプレス嵌めまたは滑り嵌めされ得る、および/または、かしめ、タック溶接、レーザー溶接、接着剤または他の適切な方法を含む様々な工程を使用して、ばねピン66と穴70との間での相互の動きを防ぐように、穴70に固定され得る。
【0028】
図4Bに示すように、保持用溝穴68は、結紮用滑動部14の舌側部74に形成可能であり、結紮用滑動部14の概ね歯肉側/咬合側の動きによって概ね歯肉側/咬合側方向に延在する。保持用溝穴68は、唇側/舌側方向(図示せず)に結紮用滑動部14を完全に介して延在するように形成されるか、または、滑動部14を部分的にのみ介して延在するように形成され、したがって、図4Aおよび4Bに示すように滑動部14の唇側部76からは見えない(すなわちめくら溝穴である)。このようなめくら溝穴の構成は、口腔からの食品または他の物質が溜まるブラケット10の唇側部30の部位を減らし、それによって全体的な衛生状態を改善する。一実施形態では、保持用溝穴68は、溝穴68の歯肉側端部79に、閉じた咬合側端部82を有する直線区域部分80と連通する第1拡大部分78を有する。拡大部分78は、図示のように概ね円形であるか、または他の適切な形状を有することができる。拡大部分78の横断寸法は、間の移行部に一対の向かい合う突起部88を形成するように、直線区域部分80の横断寸法よりも大きい。
【0029】
結紮用滑動部14がブラケット本体12に連結されると、ばねピン66が保持用溝穴68に受けられ、結紮用滑動部14が開位置と閉位置との間で動かされると、保持用溝穴68は、ばねピン66に対して動く。本発明の一態様では、ばねピン/保持用溝穴の固定機構は、結紮用滑動部14を少なくとも閉位置に固定する。このために、ばねピン66のスリット72によって、少なくともスリット部分が概ね半径方向に撓むか、または、その中心軸線69に対して弾性的に変形することができる。本明細書に用いられる半径方向に撓むとは、均一な半径方向の変化だけではなく、弾性のCクリップを締め付ける際に発生する変化などの、不均一なまたは部分的な半径方向の変化も含む。言い換えると、ばねピン66の少なくとも一部分は、(偏倚されていない状態などにおいては)第1有効径または曲率半径を有するが、ばねピン66を締め付けることによるなどして、第1有効径または曲率半径よりも小さい第2有効径または曲率半径を有するように撓むことができる。したがって、ばねピン66は、その上にかかる力に応じて半径方向に拡張または収縮することができる。ばねピン66のスリット72は半径方向の収縮/拡張を可能にするが、このような動きは、他のやり方で達成されてもよい。たとえば、ばねピンは、このようなスリットはないが、半径方向の収縮/拡張がやはり可能である、薄い壁の管状の部材であり得る。ばねピン66のこのような半径方向の収縮および拡張をもたらすさらなる構成を当業者は認識するであろう。
【0030】
作業時には、結紮用滑動部14が閉位置にあるとき(図2)、ばねピン66は、保持用溝穴68の拡大部分78に配設され、ばねピン66が円形部分78の壁を係合するように、半径方向に拡張することができる。ばねピン66は、円形部分78の壁に係合する必要はないが、半径方向に拡張したときに、直線区域部分80の横断寸法より大きい横断寸法(たとえば直径)を少なくとも有さなくてはならないことを当業者は認識するであろう。円形部分78にこのように配設されたとき、突起部88は、閉位置から離れ、開位置に向かう結紮用滑動部14の任意の動きに対する抵抗の限界レベルを与える。しかしながら、十分に大きい開く力が、たとえば歯肉側方向に結紮用滑動部14にかけられると、保持用溝穴68とばねピン66との間の相互作用が、(溝穴68によってかけられる締め付けによって)ピン66を半径方向に収縮させ、それによって、ばねピン66が突起部88を通過し、保持用溝穴68の直線区域部分80へと動く。
【0031】
直線区域部分80に配置されると、ばねピン66がその部分の壁に当たり、そのため、ばねピン66が直線区域部分80を通過する際に、抗力に勝ち、結紮用滑動部14をブラケット本体12に対して動かすためには、開く力よりも小さい、おそらくは開く力よりもかなり小さい限界滑動力をかけなければならない。したがって、一旦開くと、結紮用滑動部14はただ自由には滑らない、または完全に開いた位置には下がらないが、開位置に向かって意図的に動かされなければならない。結紮用滑動部14が部分的にのみ開かれた場合、滑動部14は、滑動部14を開位置に向かって動かし続ける限界滑動力がかけられるまで、(摩擦力によって)ブラケット本体12に対してその位置を保持するように構成され得る。このような構成は、たとえば矯正治療の間に滑動部を誤って閉じる可能性を低減する。結紮用滑動部14が閉位置に向かって動かされると、ばねピン66が拡大部分78に入る際に、ばねピン66はその半径方向に拡張した位置に戻るか、またははね戻り、結紮用滑動部14を閉位置に再度固定する。
【0032】
ばねピン66が直線区域部分80に対して動く際に、限界滑動力に勝つために必要な力の量は、結紮用滑動部14の開位置と閉位置との間の動きの間、異なり得る。一実施形態では、たとえば、直線区域部分80の横断寸法が保持用溝穴68の咬合側端部82の方向に増加するように、直線区域部分80はわずかに先細であってよい。このような構成は、図4Bに仮想線で示される。したがって、ばねピン66と結紮用滑動部14の保持用溝穴68との間の相互の動きに必要とされる滑動力は、結紮用滑動部14が開位置に向かって動かされるにつれて減少し、結紮用滑動部14が閉位置に向かって動かされるにつれて増加する。上述の先細の形状構成に加えて、またはその代わりに、ばねピン66の終端部(図示せず)と相互作用するように、結紮用滑動部14の保持用溝穴68の深さを変化させることによって、可変滑動力が達成され得る。たとえば、保持用溝穴68の深さは、咬合側端部82に隣接する保持用溝穴68の深さと比べて、歯肉側端部79に隣接するところではより小さくなり得る。ばねピン66の終端部と保持用溝穴68の底部またはベース面との間の相互作用のために、ばねピン66と保持用溝穴68との間の相互の動きに必要とされる滑動力は、結紮用滑動部14が開位置に向かって動かされるにつれて減少し、結紮用滑動部14が閉位置に向かって動かされるにつれて増加する。滑動力を変化させる上述の方法は例であり、滑動部が開位置と閉位置との間で動かされる際に結紮用滑動部14の滑動力を変化させる他の方法を当業者は認識するであろう。
【0033】
図4Bに示され、上述された保持用溝穴68は、保持用溝穴68の歯肉側端部79に、結紮用滑動部14を閉位置に固定するように機能する拡大部分78を含む。この実施形態では、保持用溝穴68の咬合側端部82は、このような拡大部分を含まないが、代わりに、直線区域部分80に対する閉じた端部に終端する。しかしながら、代替実施形態において、および同様の参照符号が図4Bにおける同様の特徴を示す図5に示すように、結紮用滑動部14aは、保持用溝穴68aの咬合側端部82に、(拡大部分78と同様の)拡大部分90をやはり含む保持用溝穴68aを含むことができる。上記と同様に、拡大部分90は、直線区域部分80と拡大部分90との間の移行部に突起部92を形成する。このようにして、結紮用滑動部14aを閉位置または開位置からそれぞれ離すような動きを始めるためには、十分に高い開く力または閉じる力が必要となるように、結紮用滑動部14aは、閉位置と開位置の両方において固定され得る。
【0034】
上述の内容と同様に、結紮用滑動部14aが閉位置にあるとき、ばねピン66は拡大部分78に配設されており、ばねピン66を収縮させて、ピン66を突起部88を通過させ、直線区域部分80へと動かすためには、十分に大きい開く力が歯肉側方向に結紮用滑動部14aにかけられなければならない。結紮用滑動部14aが開位置に向かってさらに動かされると、ばねピン66が保持用溝穴68aの咬合側端部82の拡大部分90に入る際に、ばねピン66はその径方向に拡張した位置へはね戻る。拡大した円形部分90にこのように配設されたとき、突起部92は、開位置から離れ、閉位置に向かう結紮用滑動部14aの任意の動きに対する抵抗の限界レベルを与える。十分に大きい閉じる力が、たとえば咬合側方向に結紮用滑動部14aにかけられた後でのみ、ばねピン66は径方向に収縮し、それによって、ばねピン66は、突起部92を通過し、保持用溝穴68aの直線区域部分80へと動く。このような構成は、さらに、アーチワイヤを交換するときなどの処置の際に、結紮用滑動部14aを誤って閉じる可能性を防止または低減し得る。
【0035】
少なくとも閉位置に(およびおそらく開位置および閉位置に)結紮用滑動部14を十分に固定することに加えて、ばねピン/保持用溝穴の固定機構は、また、結紮用滑動部14が開位置にあるときなど、使用時に、結紮用滑動部14がブラケット本体12から偶然にまたは誤って外れることを防止または低減し得る。このために、保持用溝穴68の長さが、ブラケット本体12に対する結紮用滑動部14の歯肉側/咬合側への移動を制限することができる。たとえば、結紮用滑動部14が完全に開位置にあるとき、ばねピン66は、保持用溝穴68の咬合側端部82に当接し得る。咬合側端部82が保持用溝穴68を閉じるので、結紮用滑動部14がブラケット本体12に対して歯肉側方向にさらに動くことが妨げられ、結紮用滑動部14はブラケット本体12から離れるまたは外れることはない。
【0036】
同様に、結紮用滑動部14の完全に閉じた位置においては、ばねピン66は、保持用溝穴68の歯肉側端部79の拡大部分78に配置され、それによって、結紮用滑動部14がブラケット本体12に対して咬合側方向にさらに動くのを妨げることができる。歯科矯正用ブラケット10は、その代わりにまたはそれに加えて、ばねピン/保持用溝穴の固定機構が、結紮用滑動部14がブラケット本体12に対して咬合側方向に動くのを防ぐ、他の特徴を含み得る。したがって、固定機構は、結紮用滑動部14を閉位置に(およびおそらくは開位置にも)固定すること、ならびに、結紮用滑動部14をブラケット本体12とともに保持することという、2つの機能の働きをすることができる。このような2つの機能を行う固定機構は、これらの機能のそれぞれに別々の機構を用いるブラケットにはこれまで見られなかった特定の利益を提供することができる。
【0037】
同様の参照符号が図1〜4の同様の特徴を示す図6および7は、結紮用滑動部14bを少なくとも閉位置に固定する代替の固定機構を示す。この実施形態では、固定機構は、ブラケット本体12に連結された中実の概ね細長い円筒形の保持用ピン94と、結紮用滑動部14bに形成された保持用溝穴96とを含む。この実施形態は、ブラケット本体12に関連する保持用ピン94および結紮用滑動部14bに関連する保持用溝穴96を有するように説明されているが、当業者は、本発明がそのように限定されないことを認識するであろう。たとえば、図示はされないが、保持用ピン94が結紮用滑動部14bに連結され、保持用溝穴96がブラケット本体12に形成されてもよい。
【0038】
図6に示すように、保持用ピン94は、中心軸線97に沿って延在し、支持面40に形成された穴70の中に受けられる第1部分(図示せず)と、そこから概ね唇側方向に突出する第2部分とを含む。この実施形態では、保持用ピン94は、半径方向に収縮および拡張はせず、その代わりに、保持用ピン94がもはや直線状ではなく、たとえば、わずかに湾曲した状態(図示せず)になるように、その中心軸線97に対して横方向に撓むかまたは曲がることができる。保持用ピン94は、ステンレス鋼、チタン合金、NiTiタイプの超弾性材料、または他の適切な材料を含む材料から形成されてよい。さらに、組立ての際、保持用ピン94は、穴70の中にプレス嵌めまたは滑り嵌めされ得る、および/または、かしめ、タック溶接、レーザー溶接、接着剤または他の適切な方法を含む様々な工程を使用して、保持用ピン94と穴70との間でのあらゆる相互の動きを防ぐように、穴70に固定され得る。
【0039】
図7に示すように、保持用溝穴96は、結紮用滑動部14bの舌側部74に形成され、概ね歯肉側/咬合側方向に延在する。上述の実施形態と同様に、保持用溝穴96は、結紮用滑動部14bを完全に介して延在するか、または、めくら溝穴として形成され、したがって、(たとえば図4Aと同様に)結紮用滑動部14bの唇側部76からは見えない。この実施形態では、保持用溝穴96は、溝穴96の歯肉側端部99に、閉じた咬合側端部102を有する直線区域部分100と連通する偏位部分98を含む。偏位部分98の中心線C1は、直線区域部分100の中心線C2に対して近心側/遠心側方向に変位され(図7には遠心側の変位が示されている)、その間の移行部に突起部104を形成する。
【0040】
結紮用滑動部14bがブラケット本体12に連結されると、保持用ピン94が保持用溝穴96に受けられ、結紮用滑動部14bが開位置と閉位置との間で動かされると、この溝穴が保持用ピン94に対して動く。保持用ピン/保持用溝穴の固定機構は、結紮用滑動部14bを少なくとも閉位置に固定する。このために、および上述のように、保持用ピン94は、その中心軸線97に沿って横方向に撓むことができる。言い換えると、保持用ピン94は、(保持用ピン94が本質的に直線状である未偏向位置であり得る)第1位置を有し、わずかに湾曲するように、その中心軸線97から離れるように第1位置から外れて撓むことができる。
【0041】
作業時には、結紮用滑動部14bが閉位置にあるとき、保持用ピン94は、偏位部分98および(たとえば比較的直線状で撓んでいない)その第1位置に配設される。偏位部分98にこのように配設されたとき、突起部104および/または保持用ピン94は、閉位置から離れ、開位置に向かう結紮用滑動部14bの任意の動きに対する抵抗の限界レベルを与える。しかしながら、十分に大きい開く力が、結紮用滑動部14bに歯肉側方向にかけられた場合、保持用溝穴96と保持用ピン94との間の相互作用によって、第1位置から離れ、第2位置に向かってピン94が撓み、それによって、保持用ピン94が、突起部104を通過し、保持用溝穴96の直線区域部分100へと動く。
【0042】
直線区域部分100に配置されると、保持用ピン94が偏向されてその未偏向状態(または偏向の少ない第1位置)に戻り、こうして、保持用溝穴96の近心側の側壁に当たり、そのため、保持用ピン94が直線区域部分100を通過する際に、抗力に勝ち、結紮用滑動部14bをブラケット本体12に対して動かすためには、開く力よりも小さい、おそらくは開く力よりもかなり小さい限界滑動力をかけなければならない。したがって、一旦開くと、結紮用滑動部14bはただ自由には滑らない、または完全に開いた位置には下がらないが、開位置に向かって意図的に動かされなければならない。結紮用滑動部14bが部分的にのみ開かれた場合、滑動部14bは、滑動部14bを開位置に向かって動かし続ける限界滑動力がかけられるまで、(摩擦力によって)ブラケット本体12に対してその位置を保持するように構成され得る。結紮用滑動部14bが閉位置に向かって動かされると、保持用ピン94が偏位部分98に入るにつれて、保持用ピン94はその第1位置に戻るか、またははね戻り、結紮用滑動部14bを閉位置に再度固定する。
【0043】
図には示されていないが、図4Bおよび5に関した上述された実施形態と同様に、代替実施形態では、保持用溝穴96は、また、結紮用滑動部14bが開位置と閉位置との間で動く際に、可変滑動力をもたらすように構成され得る。さらに、結紮用滑動部14bは、溝穴96の歯肉側および咬合側の端部99、102の両方に偏位部分を含むことができる。このようにして、結紮用滑動部14bは、図5に関して上述された方式と同様の方式で、開位置および閉位置の両方において十分に固定可能である。
【0044】
結紮用滑動部14bを少なくとも閉位置(およびおそらくは開位置および閉位置)において十分に固定することに加えて、保持用ピン/保持用溝穴の構成はまた、使用時に結紮用滑動部14bがブラケット本体12から偶然にまたは誤って外れることを防止し得る。このために、保持用溝穴96の長さが、ブラケット本体12に対する結紮用滑動部14bの歯肉側/咬合側への移動を制限することができる。たとえば、結紮用滑動部14bが完全に開位置にあるとき、保持用ピン94は溝穴96の咬合側端部102に当接し得る。溝穴96の咬合側端部102が閉じられるので、結紮用滑動部14bがブラケット本体12に対して歯肉側方向にさらに動くことが妨げられ、結紮用滑動部14bはブラケット本体12から離れるまたは外れることはない。
【0045】
同様に、結紮用滑動部14bの完全な閉位置においては、保持用ピン94は、保持用溝穴96の歯肉側端部99の偏位部分98に配置され、結紮用滑動部14bがブラケット本体12に対して咬合側方向にさらに動くことが妨げられ得る。ブラケット10は、その代わりにまたはそれに加えて、保持用ピン/保持用溝穴の固定機構が、結紮用滑動部14bがブラケット本体12に対して咬合側方向に動くのを防ぐ、他の特徴を含み得る。したがって、固定機構は、結紮用滑動部14bを閉位置に(およびおそらくは開位置にも)固定すること、ならびに、結紮用滑動部14bをブラケット本体12とともに保持することという、2つの機能の働きをすることができる。
【0046】
同様の参照符号が図1〜4の同様の特徴を示す図8および9は、結紮用滑動部14を少なくとも閉位置に固定する別の代替固定機構を示す。この実施形態では、固定機構は、ブラケット本体12に連結されたばね棒材106と、図4Bに示すように、結紮用滑動部14に形成された保持用溝穴68とを含む。この実施形態は、ブラケット本体12に関連するばね棒材106、および結紮用滑動部14に関連する保持用溝穴68について説明されているが、当業者は、本発明がそのように限定されないことを認識するであろう。たとえば、図示はされないが、ばね棒材106が結紮用滑動部14に連結され、保持用溝穴68がブラケット本体12に形成されてもよい。
【0047】
ばね棒材106は、支持面40に形成された穴70の中に受けられる第1部分(図示せず)と、概ね唇側方向にそこから突出する第2部分とを含む。この実施形態では、ばね棒材106の第2部分は、端面114、116を互いの方へ向かって締め付けることによるなどして、互いの方へ向かって撓まされ得る向かい合う接触端面114、116を有する一対のばねアーム110、112として構成される。ばね棒材106は、ステンレス鋼、チタン合金、NiTiタイプの超弾性材料、または他の適切な材料を含む材料から形成されてよい。さらに、組立ての際、ばね棒材106は、穴70の中にプレス嵌めまたは滑り嵌めされ得る、および/または、かしめ、タック溶接、レーザー溶接、接着剤または他の適切な方法を含む様々な工程を使用して、ばね棒材106と穴70との間でのあらゆる相互の動きを防ぐように、穴70に固定され得る。図9に示すように、ばね棒材106は、以下にさらに詳細に説明されるように、保持用溝穴68とともに作用するように、端面114、116が近心側/遠心側方向に向くように、穴70の中に配置され得る。
【0048】
結紮用滑動部14がブラケット本体12に連結されると、ばね棒材106は保持用溝穴68に受けられ、結紮用滑動部14が開位置と閉位置との間で動かされると、この溝穴がばね棒材106に対して動く。ばね棒材/保持溝穴の固定機構は、結紮用滑動部14を少なくとも閉位置に固定する。このために、および上述のように、ばね棒材106のばねアーム110、112が、端面114と端面116との間で寸法を変化させる(たとえば拡張および収縮する)ように、弾性的に撓むことができる。言い換えると、ばね棒材106は、(未偏向の状態などの)第1寸法を規定し、第1寸法より小さい第2寸法を規定するように、端面114と端面116とを互いに締め付けることなどによって撓まされ得る。したがって、ばね棒材106は、ばね棒材106にかけられる偏向に応じて、寸法(たとえば近心側/遠心側の寸法)を拡張および収縮することができる。
【0049】
作業時には、結紮用滑動部14が閉位置にあるとき、ばね棒材106は、保持用溝穴68の拡大部分78に配設され、ばねアーム110、112の端面114、116が拡大部分78の壁を係合するように拡張することができる。端面114、116は拡大部分78の壁を係合する必要はないが、少なくとも、直線区域部分80の横断寸法よりも大きい寸法を有さなければならないことを当業者は認識するであろう。拡大部分78にこのように配設されたとき、突起部88は、閉位置から離れ、開位置に向かう結紮用滑動部14の動きに対する抵抗の限界レベルを与える。しかしながら、十分に大きい開く力が、たとえば歯肉側方向に結紮用滑動部14にかけられた場合、保持用溝穴68とばね棒材106との間の相互作用によって、(突起部88のところで溝穴68と接触することによってかけられる締め付けのために)端面114と端面116との間の寸法が減少または収縮し、それによって、ばね棒材106が、突起部88を通過し、保持用溝穴68の直線区域部分80へと動く。
【0050】
直線区域部分80に配置されると、端面114、116がその壁に当たり、そのため、ばね棒材106が直線区域部分80を移動する際に、抗力に勝ち、結紮用滑動部14をブラケット本体12に対して動かすためには、開く力よりも小さい、おそらくは開く力よりもかなり小さい限界滑動力をかけなければならない。したがって、一旦開くと、結紮用滑動部14は、完全に開いた位置まで自由には滑らない、または下がらないが、開位置に向かって意図的に動かされなければならない。結紮用滑動部14が部分的にのみ開かれた場合、滑動部14は、滑動部を開位置に向かって動かし続ける限界滑動力がかけられるまで、(摩擦力によって)ブラケット本体12に対するその位置を保持するように構成され得る。結紮用滑動部14が閉位置に向かって動かされると、ばね棒材106が拡大部分78に入るにつれて、ばね棒材106の端面114、116がその拡張した寸法へと戻るかまたははね戻り、結紮用滑動部14を閉位置に再度固定する。
【0051】
代替実施形態では、保持用溝穴68は、結紮用滑動部14が開位置と閉位置との間で動く際に可変滑動力をもたらすように構成され得る。さらに、結紮用滑動部14は、その歯肉側および咬合側の端部に拡大部分を設け得る。このようにして、結紮用滑動部14は、上述の方式と同様の方式で、開位置と閉位置の両方において固定可能である。
【0052】
結紮用滑動部14を少なくとも閉位置(およびおそらく開位置および閉位置)において十分に固定することに加えて、ばね棒材/保持用溝穴の固定機構は、また、使用時に、結紮用滑動部14がブラケット本体12から偶然にまたは誤って外れることを防止し得る。このために、保持用溝穴68の長さが、ブラケット本体12に対する結紮用滑動部14の歯肉側/咬合側への移動を制限することができる。たとえば、結紮用滑動部14が完全に開位置にあるとき、ばね棒材106は溝穴68の咬合側端部82に当接し得る。溝穴68が咬合側端部82で閉じられているので、結紮用滑動部14がブラケット本体12に対して歯肉側方向にさらに動くことが妨げられ、結紮用滑動部14はブラケット本体12から離れるまたは外れることはない。
【0053】
同様に、結紮用滑動部14の完全な閉位置においては、ばね棒材106は、保持用溝穴68の歯肉側端部79の円形部分78に配置され、結紮用滑動部14がブラケット本体12に対して咬合側方向にさらに動くことが妨げられ得る。ブラケット10は、その代わりにまたはそれに加えて、ばね棒材/保持用溝穴の固定機構が、結紮用滑動部14がブラケット本体12に対して咬合側方向に動くのを防ぐ、他の特徴を含み得る。したがって、固定機構は、結紮用滑動部14を閉位置に(およびおそらくは開位置にも)固定すること、ならびに、結紮用滑動部14をブラケット本体12とともに保持することという、2つの機能の働きをすることができる。
【0054】
ブラケットの正しい操作を達成するために、自己結紮式ブラケットは、可動部材(滑動部、掛け金、ばねクリップなど)がブラケット本体とは独立して動けるようにするので、多くの従来の自己結紮式ブラケットは、可動部材を閉位置に固定またはロックすることによってアーチワイヤ用溝穴にアーチワイヤを保持するために1つの機構を提供し、可動部材がブラケット本体から外れるのを防ぐために、典型的に第1の機構とは別の異なる第2の機構をさらに提供する。これらの態様を行うために別々の機構を用いる結果、意図された目的通りに機能する歯科矯正用ブラケットにはなるが、ロック機能を行う(すなわち可動部材を少なくとも閉位置に保持する)こと、および、可動部材がブラケット本体から外れるのを防ぐことの両方を行う単一のコンパクトな機構を有することが望まれる。このような構成は、現在の自己結紮式ブラケットを使用してこれまで見ることのできなかった特定の利益を提供することができる。たとえば、このようなコンパクトで、2つの機能を行う設計による1つの利益は、歯科矯正用ブラケットの全体的なサイズが縮小されることであろう。これが、患者の「金属製の口」の外見を緩和することによって、歯科矯正の外見を改善する。さらに、部品および/または組立てステップの数が、そのような設計を用いることで減り、それによって、ブラケットの全体的な製造コストを縮小することができる。上述のように、本明細書に含まれる特定の実施形態は、上述の利益を提供し得る2つの機能を行う機構を含む。
【0055】
上述の様々な固定機構に加えて、歯科矯正用ブラケット10は、ブラケットの構成および/または矯正治療の際のブラケットの使用に対する利益をもたらす、他のいくつかの特徴を含み得る。例として、アーチワイヤの最初の取付けまたは交換の際などの矯正治療の際に、アーチワイヤがブラケットのアーチワイヤ用溝穴からわずかに突出することは、珍しくない。したがって、結紮用滑動部をブラケット上で閉じるためには、歯科矯正医は、一方の手で別の工具を用いるなどして、アーチワイヤ用溝穴の中にアーチワイヤを押し込み、次に、他方の手で可動部材を閉じなければならない。このような工程は、特に口腔内のすべてのブラケットに対して繰り返されるとき、煩雑または厄介となり得る。
【0056】
このようなシナリオに対処するために、および図4Bに示すように、一実施形態では、結紮用滑動部14は、アーチワイヤ用溝穴の中へアーチワイヤを案内する押し要素を含むことができる。この点に関して、結紮用滑動部14は、結紮用滑動部14の舌側部74上および咬合側縁部118(たとえば前縁)に隣接して形成される面取り部117を含み得る。面取り部117は、結紮用滑動部14が閉位置に向かって動かされる際に、アーチワイヤ18をアーチワイヤ用溝穴16に案内するかまたは押すように構成される。このようにして、たとえば、結紮用滑動部14を閉じる工程が、また、アーチワイヤ用溝穴16の中にアーチワイヤ18を配置する(たとえば押す)。したがって、単一の操作(たとえば結紮用滑動部を閉じること)が、両方の作業を達成し、歯科矯正医の手順を単純化する。
【0057】
面取り部117は、図4Bに示すように、均一であり、結紮用滑動部14の咬合側縁部118の全体にわたって延在してよい。しかしながら、代替実施形態では、面取り部は、咬合側縁部118の少なくとも一部に沿って、不均一に形成され得る。例として、図10に示すように、面取り部117aは、それぞれ第1の面取り構成を有する近心側部分および遠心側部分117b、117cと、第1の面取り構成とは異なり得る第2の面取り構成を有する中央部分117dとを含み得る。近心側部分、遠心側部分および中央部分117b〜117dの(非常に小さい面取り部または面取り部が全くないことも含む)面取り構成は、特定の用途に応じて互いに異なり得ることを、当業者は認識するであろう。さらに、図に示すように、アーチワイヤ18をアーチワイヤ用溝穴16の中へ押すことは、面取り部によって達成可能であるが、他の押し要素も可能である。たとえば、結紮用滑動部14の咬合側縁部118は、結紮用滑動部14が閉位置に動かされる際にアーチワイヤ18をアーチワイヤ用溝穴16に案内するように丸みをつけられたまたは丸みを与えられた部分(図示せず)を含むことができる。
【0058】
歯科矯正用ブラケット10の製造上の態様を改善し得る別の特徴は、結紮用滑動部14とブラケット本体12との間の整合用の形状構成を含む。図3に最もよく示されているように、結紮用滑動部14は、特定の角度を有してブラケット本体12を係合する。図15に(臼歯のブラケットに関して)示すように、この角度は、アーチワイヤ用溝穴16のベース面34、および、少なくとも部分的に滑動係合軌道46を形成する支持面40を使用して定量化され得る。歯科矯正用ブラケット10が口腔内のどこに配置されるかによって、この角度は変化し得る。例として、一実施形態では、この角度は、前歯の歯科矯正用ブラケットでは約2度から約10度の間の任意の角度であり得る。ブラケット本体12および結紮用滑動部14は、典型的に別々の製造工程で作製されるので、特定の角度の設計を有するブラケット本体12は、同じ角度の設計を有する結紮用滑動部14と確実に整合することが望まれる(たとえば2度のブラケットは、2度の結紮用滑動部と整合する)。
【0059】
このために、および一実施形態では、結紮用滑動部14の舌側面74が、たとえば咬合側/歯肉側方向に延在する1つまたは複数の隆条部119aを含み得る(図4Bおよび5)。さらに、ブラケット本体12の支持面40は、結紮用滑動部14がブラケット本体12と係合されるときに、隆条部119aを受けるように構成される、中に形成された対応する数の溝119bを含み得る(図3)。隆条部119aの数および結紮用滑動部14の隆条部の位置(およびしたがってブラケット本体12の溝119bの位置)は、異なる角度によって変化し得る。このようにして、ブラケット本体と同じ角度の設計を有する結紮用滑動部のみが、組立て時に、ブラケット本体に嵌ることができる。したがって、たとえば、2度の結紮用滑動部は、2度のブラケット本体と整合され、結紮用滑動部とブラケット本体との整合を誤ることに関連する問題が回避され得る。正しい結紮用滑動部が特定のブラケット本体に確実に対応するようにする他の整合用システムを、当業者は認識するであろう。
【0060】
歯科矯正用ブラケット10の機能性および使用を向上し得る別の態様または特徴は、ブラケットによって与えられるトルクの量を示す標示を含む。従来の歯科矯正治療では、アーチワイヤによって歯にかけられるトルクの量は、ブラケット本体12の構成によって制御される。特に、トルクは、ブラケット(またはパッド32)の舌側部20とアーチワイヤ用溝穴16のベース面34との間の角度を操作することによって制御され得る。ブラケットは、様々な輪郭の範疇で歯科矯正医に提供され得る。たとえば、ブラケットは、i)低トルク、ii)標準トルク、またはiii)高トルクを有して、歯科矯正医に供給され得る。トルクの量は特定の処置に依存し、したがって歯科矯正医によってケースバイケースで行われる。いずれにしても、現在のブラケットは、どのトルクの範疇にブラケットが属するかを示す標識は提供しない。したがって、このような判定は、典型的にブラケットの目視検査によって行われており、これは困難であり、誤ったまたは望まれないブラケットが処置に用いられることにつながりかねない。
【0061】
このような状況に対処するために、および図1および3に最もよく示されるように、歯科矯正用ブラケット10は、ブラケット10のトルクの範疇を示す標示120を含むことができる。たとえば、一実施形態では、標示は、高トルクのブラケットにはプラス記号(+)、低トルクのブラケットにはマイナス(−)記号を含み、標準トルクのブラケットには印をつけないことができる。プラスおよびマイナスの記号が本明細書において述べられているが、歯科矯正医に対してブラケットのトルク範疇を指示するために、任意の記号のセット(または記号のないこと)が使用され得るので、本発明はそのようには限定されない。たとえば、トルク範疇を示す文字が使用されてもよい。トルクを示す文字の使用(高トルクにはH、低トルクにはL)は、2007年3月13日出願の同じ権利者の米国特許出願第11/685,540号に開示され、その開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。このようにして、歯科矯正医は、トルク範疇を容易に判定でき、誤ったトルク判定によってブラケットを交換するというコストおよび悪化を回避することができる。
【0062】
歯科矯正用ブラケット10の機能性および使用を向上し得るさらなる特徴は、ブラケット本体12に形成される水平方向の溝穴を含む。図1〜3に示すように、ブラケット本体12は、アーチワイヤ用溝穴16と概ね平行に整列され、取り外し可能なフック(図示せず)などの仮取付け装置を受けるように構成された、水平方向の溝穴122を含み得る。これまで、溝穴(典型的に垂直方向の溝穴)が、トルクばね、補助アーチワイヤ、および一般により恒久的なタイプの装置などの従来の歯科矯正装置をブラケットに連結するためにブラケットに設けられていた。一実施形態では、水平方向の溝穴122は、1つの連続的な水平方向の溝穴を形成するように、ブラケット本体12の近心側部26から遠心側部28まで延在する。しかしながら、代替実施形態では、相互間で連通することなく、第1溝穴がブラケット本体12の近心側部26に対して開き、第2溝穴がブラケット本体12の遠心側部28に対して開いてよい。
【0063】
水平方向の溝穴122は、仮固定装置に関して追加の利点を提供することができる。歯科矯正治療における最近の傾向は、口腔内に固定された基準点を確立し、歯の処置を行うためにその基準点を使用して歯に力をかけることである。この点に関して、固定された基準点は、どの歯列弓が処置されているかによって下顎および/または上顎に取り外し可能に連結された骨ねじなどのアンカーを含む仮固定装置によって確立可能である。アンカーは、口腔内における仮固定装置の位置を固定する。仮固定装置は、次に、所望の位置および/または向きに歯を動かすように、ブラケットなどの他の歯科矯正装置に連結される。たとえば、仮固定装置と歯科矯正用ブラケットとの間の連結は、時折困難であり、連結を達成するためにその場しのぎの手法を必要とすることがある。有利な態様において、ブラケット本体12の水平方向の溝穴122は、歯科矯正用ブラケット10を仮固定装置に連結する都合のよい方式を提供する。仮固定装置とそのような連結を行う、ブラケット10の水平方向の溝穴122の使用は、当技術においてこれまで認識または評価されていなかった。しかしながら、このような連結は、そのような仮固定装置を使用することに関する問題およびその場しのぎの手法の多くを克服する。
【0064】
上述のように、歯科矯正治療の審美面を改善するために、歯科矯正用ブラケットのサイズを縮小することが望まれるであろう。上述の改善された固定機構は、ブラケットが縮小されたサイズを有することができるようにする。たとえば、いくつかの実施形態では、歯肉側/咬合側方向の歯科矯正用ブラケット10のサイズは約0.124インチであり得るが、従来のブラケットは、典型的に約0.144インチである。ブラケットのサイズを縮小することが望ましいが、この縮小が歯科矯正用ブラケットの他の機能面および望ましい面に悪影響を及ぼすことなく達成されることが好ましい。例として、歯科矯正用ブラケットは、結紮糸、弾性バンド、または当技術で既知の他の連結部材を使用してブラケットを他の隣接する歯科矯正装置に連結することを容易にする、ブラケット本体12の咬合側部および/または歯肉側部から典型的に延在する結束用翼状部を含み得る。ブラケットのサイズを縮小することは、結束用翼状部の高さまたは広がりを潜在的に縮小することになり、それによって、結紮糸または他の連結部材を結束用翼状部に固定する能力が問題となる。
【0065】
したがって、歯科矯正用ブラケット10のさらなる態様では、結束用翼状部の機能面を維持しながら、歯肉側/咬合側方向などのブラケットのサイズを縮小できる。このために、同様の参照符号が図1〜4の同様の特徴を示す図11および12に示すように、ブラケット本体12の舌側部20は、図11に示すように、歯(図示せず)またはパッド32に連結する突出部分124を含む。突出部分124は、たとえば、咬合側面126、歯肉側面128、近心側面130、遠心側面132、および、パッド32に連結する舌側面134を含む。突出部分124は、図12に示すように、結束用翼状部136を効果的に使用できるように構成される。この点に関して、突出部分124の歯肉側/咬合側の広がりまたは高さは、結束用翼状部136の使用を容易にするように、近心側/遠心側方向に変化することができる。
【0066】
図12に示すように、突出部分124は、ブラケット本体12のより唇側の部分の近心側/遠心側の寸法と実質的に等しい近心側/遠心側の寸法を有する。たとえば、図12に示すように、突出部分124の近心側面130を含むブラケット本体12の近心側部26は、概ね滑らかで連続的である。同様に、遠心側面132を含むブラケット本体12の遠心側部28も、また、概ね滑らかで連続的である(図11)。しかしながら、結束用翼状部136は、ブラケット本体12の咬合側部22および歯肉側部24に沿って配置され、概ねそこから延在するので、図11に示すように、結束用翼状部136を有するブラケット本体12のより口唇側の部分に対して、突出部分124の歯肉側/咬合側の寸法が縮小する。図12にR1によって示されるこのような縮小は、結束用翼状部をベースとした歯科矯正用ブラケットの性質による。
【0067】
さらに、典型的な結束用翼状部のブラケットは、概ね、ブラケット本体の近心側部および遠心側部に隣接して結束用翼状部を配置する。したがって、一実施形態によれば、結束用翼状部136の作用高さを効果的に増すように、近心側および遠心側の面130、132に隣接する突出部分124の歯肉側/咬合側の寸法が、さらに縮小され得る。このさらなる縮小は、図12にR2で示されている。この図に示すように、突出部分124は、近心側面130と遠心側面132との中間の歯肉側/咬合側の寸法Aと、寸法Aより小さい、近心側および遠心側の面130、132に隣接する歯肉側/咬合側の寸法Bとを有する。寸法Aは、強度、剛性、構造上の健全性、または他の要因などの設計上の考慮事項によって決定され得る。しかしながら図12にさらに示されるように、中間の寸法Aに対する近心側および遠心側の面130、132に隣接する寸法Bの縮小は、結束用翼状部136の作用高さWを効果的に増し、それによって、その機能の向上をもたらす。
【0068】
一実施形態では、たとえば、結束用翼状部136の作用高さWのこのような増加(代替として突出部分124の歯肉側/咬合側の高さのさらなる縮小)は、咬合側および歯肉側の面126、128に面取り部を形成することによって達成可能である。特に、および図12に示すように、突出部分124の咬合側面126は、面取り部138を形成するように、近心側/遠心側の中間位置からその近心側/遠心側の面130、132へと歯肉側方向に傾斜し得る。同様の方式で、突出部分124の歯肉側面128は、面取り部140を形成するように、近心側/遠心側の中間位置からその近心側/遠心側の面130、132へと、咬合側方向に傾斜し得る。面取り部138、140の長さ、角度および他の特徴は、特定の用途に応じて(ともにまたは互いに)変化し得ることを当業者は認識するであろう。結束用翼状部136の作用高さWを増すように、中間の寸法に対する歯肉側/咬合側の寸法を縮小する他の構成を、当業者はさらに認識するであろう。
【0069】
歯科矯正用ブラケット10のさらに別の態様において、固定機構の一部としてばねピン66を用いる様々な実施形態では、ブラケット本体12のばねピン66と穴70との間での相互の回転を防ぐことが望まれるであろう。この理由の1つは、たとえば、ばねピン66が所望の方式で拡張および収縮する能力を低減し得る、ばねピン66のスリット72が、保持用溝穴68の突起部88と整列されることを防ぐためである。これは、上述の様々な工程(たとえばかしめ、溶接、接着剤など)を使用して達成可能であるが、別の実施形態では、および図12に最もよく示されるように、概ね円形の穴70に平坦部142を形成することによって穴70に対するばねピン66の回転が防止され得る。図12に示すように、スリット72が平坦部42と整列されるように、ばねピン66は穴70に挿入される。結果として、穴70に対してばねピン66を回転させようとすると、スリット72を形成する縁部が平坦部142に接触し、それによって、ばねピン66と穴70との間でのすべての相互の回転を防ぐことになる。
【0070】
歯科矯正用ブラケット10の機能性および使用を向上し得るさらなる特徴は、結紮用滑動部14を改善された方式で閉位置から離し、開位置に向かって動かす工具と協働する工具受け部を含む。図2および13を参照すると、ブラケット本体12の唇側部30は、咬合側の壁146、近心側の壁148および遠心側の壁150を形成する工具受け部144を含み得る。しかしながら、受け部144は、結紮用滑動部14の少なくとも一部分に接近できるようにするためにその歯肉側端部に沿って開いている。たとえば、工具受け部144は、結紮用滑動部14の咬合側縁部118に対して開いていてよい。図13に示すように、工具受け部144は、以下に説明する方式で結紮用滑動部14を開くのを容易にする工具156の先端部154を受けるように構成され得る。広範囲にわたるねじ回しタイプの装置が結紮用滑動部14を開くために使用可能であるが、その全体が参照によって本明細書に援用される、代理人適用番号ORM−315USを有する「Self−Ligating Orthodontic Bracket, Tools for use with a Self−Ligating Orthodontic Bracket, and Methods for Using such Tools」という表題の2008年6月28日に出願された同じ権利者の米国特許出願第12/147,854号に開示される工具のような工具が、結紮用滑動部14を開くために使用され得ることが企図される。
【0071】
作業時には、工具156の先端部154が、工具受け部144に挿入され、時計回りまたは反時計回りの方向のいずれかに回転される(図13には時計回りを示す)。その結果、先端部154の一部分が、受け部144の咬合側の壁146に当たり、先端部154の別の部分が、結紮用滑動部14の咬合側の縁部118に当たる。使用者によるなどして工具156にかけられるトルクは、上述のように、固定機構によって加えられる開く力を克服するのに十分であり、それによって、結紮用滑動部14が開位置に向かってブラケット本体12に対して歯肉側方向に動く。工具156は、工具156が受け部144内でその元の位置から約90度回転されるまで、結紮用滑動部14を動かし続けることができる。
【0072】
この実施形態による一態様では、工具156の先端部154の最大長158は、ブラケット本体12に対する結紮用滑動部14の移動の長さを超えてはならない。したがって、上述の様々な実施形態では、たとえば、先端部154の長さ158は、結紮用滑動部14の保持用溝穴68の長さを超えてはならない。このようにすると、たとえば、工具156がその完全な90度の位置まで回転されたとき、ばねピン66は保持用溝穴68の咬合側端部82にまだ達していない。このような構成は、トルクを与える工具156によってばねピン66を剪断変形する、欠く、または損傷すること、および歯科矯正用ブラケット10を潜在的に使用不能にすることを回避する。
【0073】
上述の実施形態は、工具受け部144を実質的にブラケット本体12内に形成されるものとして示すが、本発明はそのようには限定されない。たとえば、工具受け部は、たとえば、工具受け部の咬合側端部が開くように、実質的に結紮用滑動部内に形成されてもよく、中に挿入される工具は、ブラケット本体12の歯肉側縁部と接触してもよい(たとえば図27を参照)。別の代替実施形態では、工具受け部の一部分がブラケット本体に形成されてもよく、工具受け部の一部分が結紮用滑動部に形成されてもよい(図示せず)。
【0074】
上述のような、および、代理人適用番号ORM−315USを有する「Self−Ligating Orthodontic Bracket, Tools for use with a Self−Ligating Orthodontic Bracket, and Methods for Using such Tools」という表題の2008年6月 日に出願された同じ権利者の米国特許出願第 号により完全に説明されている工具受け部144が、いくつかの利点を提供し得る。たとえば、上述のような工具受け部144を含む歯科矯正用ブラケット10、および、結紮用滑動部14を開くための工具156を使用する方法によって、患者の歯に伝達される力を低減できる。特に、工具受け部144は、開くための工具156を結紮用滑動部14およびブラケット本体12に接触させるので、そうでなければ患者の歯に伝達される力が、ブラケット本体12に伝達され得る。本質的に、結紮用滑動部14を開く際に、歯科矯正用ブラケット10に全体としてかかる力が互いに効果的に相殺し合い、それによって、ごくわずかな正味の力が患者の歯に伝達される。結紮用滑動部14を開く際にかかる力がこのように釣り合うことによって、患者の歯へ力が伝達されることにかかわる不快感が防止または低減される。
【0075】
歯科矯正用ブラケット10の別の態様において、および図11に最もよく示されるように、結紮用滑動部14は、アーチワイヤ用溝穴16を「行き過ぎる」ように、特に溝穴面36を行き過ぎるように構成され得る。このために、溝穴面36より上に延在し、結紮用滑動部14が閉位置にあるときに結紮用滑動部14の舌側部74を係合するように構成されるレッジ162を形成する溝穴面36に隣接するブラケット本体12の唇側部30に、切除部分160が形成され得る。このような行き過ぎ量を設けることで、閉位置にあるときにアーチワイヤ用溝穴16を覆うように結紮用滑動部14とブラケット本体12との連結の際の許容公差を緩和する(たとえば正確な公差が必要ない)が、滑動部14の咬合側縁部118が切除部分160の咬合側の壁164に当接し得ない可能性を与える。
【0076】
臼歯への従来の自己結紮式ブラケットの使用は、歯科矯正医および歯科矯正用ブラケットの製造業者に対していくつかの難題を示していた。たとえば、従来の自己結紮式ブラケットのサイズは、ブラケットと対向する顎の歯との間に咬み合わせの問題を生じ得る。別の問題は、従来の自己結紮式ブラケットが、ブラケット本体を下から係合し、歯肉側/咬合側の面に実質的に平行であるブラケット本体のガイドに沿って移動する結紮用滑動部を有することである。さらに、開位置にあるとき、結紮用滑動部の底縁部がブラケット本体の下に延在する。したがって、従来の自己結紮式ブラケットが、たとえば下顎の臼歯に取り付けられた場合、結紮用滑動部の底縁部が歯茎の組織(歯肉)と接触して、患者に不快感を引き起こし得る。さらに、このような状況では、結紮用滑動部との歯肉の干渉がかなり大きくなり、滑動部が、アーチワイヤを受けるために完全に開くことができなくなり、したがって、自己結紮式ブラケットの利点を無効にし得る。
【0077】
これらの不利益の多くに対処する臼歯用の自己結紮式歯科矯正用ブラケットの設計が、同じ譲り受け人の米国特許第7,267,545号に提案されており、この開示は全体が参照によって本明細書に援用される。この特許により完全に開示されるように、滑動部が開位置と閉位置との間で動かされる際の、結紮用滑動部と歯肉との接触を防止するために、結紮用滑動部は、ブラケット本体に対してある角度をなし得る。この点に関して、結紮用滑動部が開位置に向かって歯肉側方向に動かされると、結紮用滑動部の歯肉側縁部が、口唇側方向に、および歯肉から離れるように動く。さらに、ブラケット本体の咬合側部と対向する顎の歯との間の接触を防止するために、ブラケットの咬合側部は、歯が互いに合わされたときに、ブラケットと対向する顎の歯との間の干渉がないような輪郭または外形にされ得る。
【0078】
しかしながら、様々な矯正治療の際に、結紮線、弾性バンド、または当技術で既知の他の連結部材を使用して臼歯のブラケットを隣接する歯科矯正装置に連結することが望まれ得る。たとえば、矯正治療の実施のために比較的強いアンカーをもたらすように、第1大臼歯のブラケットを第2大臼歯のブラケットに連結することが望まれ得る。口腔の後部の空間的な制限、ならびに、歯肉と対向する歯との接触を防ぐ要求によって、結束用翼状部は、典型的に臼歯のブラケットから省かれる。したがって、ブラケットは全体として、結紮糸、バンドなどをそこに固定するために使用され得る。
【0079】
しかしながら、結紮糸または弾性バンドを臼歯の自己結紮式ブラケットに固定することが、いくつかの不利益をもたらす。特に、このようなブラケットは、結紮糸または弾性バンドを受け、結紮糸またはバンドをブラケットに対して比較的固定された位置に保持するのに適切な取付け点がない。これは特に、たとえば、臼歯のブラケットの咬合側部に沿った場合に起こり得る。上述のように、臼歯の自己結紮式ブラケットの咬合側部は、(たとえば下顎に取り付けるとき)歯肉側方向に下方へ向けることなどによって、対向する顎の歯との接触を防ぐような輪郭にされ得る。対向する歯との接触を防ぐのに有効である一方で、このような輪郭によって、ブラケットの回りに固定された結紮糸またはバンドが、ブラケットの咬合側部に沿って滑るようになる。このような結紮糸またはバンドの動きは望ましくなく、治療の有効性を減少させ得る。
【0080】
米国特許第7,267,545号に開示されるブラケットのような、臼歯の自己結紮式ブラケットに対する改善は、したがって、このような欠点に対処することにとって望ましい。図14および15に示すように、自己結紮式臼歯ブラケット210は、図1〜4に示される特徴と同様の特徴を有し、これらの特徴は同様の参照符号を有するが、前に数字2がついている。米国特許第7,267,545号の開示によれば、およびこれらの図に明らかに示されているように、結紮用滑動部214は、アーチワイヤ用溝穴216のベース面234に対してある角度をなす滑動係合軌道246に沿って動く。この点に関して、係合軌道246は、概ね、ベース面234に関連されたベース面234aに対してある角度をなす移動面246aに沿って延在する。さらに、ブラケット本体212の咬合側部222は、概ね、咬合側部222の少なくとも一部分を唇側/歯肉側の方向に向ける(すなわち図面の基準枠では下方へ傾斜する)輪郭にされ得る。
【0081】
結紮糸、弾性バンドなどの使用に対する臼歯の自己結紮式ブラケット210の機能性および使用を改善するために、ブラケット本体212の咬合側部222は、その舌側部220に隣接して切除部分300を含み得る。切除部分300は、図15に仮想線で概略的に示される結紮糸またはバンド304などの連結部材を受けるように構成される溝302を形成する。使用時にブラケット本体212に対して結紮糸またはバンド304が動く可能性を防止または低減するために、溝302は唇側/舌側方向に限られている。たとえば、溝302はV型であるか、U型であるか、または結紮糸またはバンドを中で捕獲するのを容易にする他のいくつかの形状を有していてよい。一実施形態では、図15に示すように、溝302は、咬合側部222の傾斜した境界面306によって唇側方向に限られていてよく、パッド232によって舌側方向に限られていてよい。境界面306は、概ね歯に面するような角度にされてよく(すなわち歯の方へ向いた直角面を有し)、一方、咬合側部222の残りの部分は、概ね歯から離れる方向に面する(すなわち歯から離れる方に向いた直角面を有する)。このような構成は、結紮糸またはバンド304を、ブラケット本体212に対して比較的固定された位置に保持し、特に、結紮糸またはバンド304が、使用時に、ブラケット210の咬合側部222に沿って歯から離れるように唇側方向に滑るのを防ぐ。
【0082】
咬合側部222に対する改善に加えて、歯科矯正用ブラケット210は、前の実施形態に開示されるような他の特徴を組み込むことができる。例として、ブラケット210は、上述の固定機構、トルク標示、水平方向の溝穴、工具受け部、結紮用滑動部の咬合側端部の面取りもしくは丸みを与えられた形状構成、結紮用滑動部とブラケット本体との間の整合システム、および/または、上記により完全に説明された他の特徴のうちの1つを組み込んでよい。したがって、歯科矯正用ブラケット10について説明される態様は、また、臼歯のブラケットに対する利益も提供し得る。さらに、結紮用滑動部214は、米国特許第7,267,545号により完全に開示される他の特徴を含み得る。例として、アーチワイヤ用溝穴216が、(図示の)アーチワイヤの断面形状により密接に従うように、結紮用滑動部214の舌側部274が、咬合側縁部に隣接してある角度をなし得る。この点に関して、一実施形態では、結紮用滑動部214が閉位置にあるとき、結紮用滑動部214は、概ね長方形のアーチワイヤ用溝穴216を形成するようにブラケット本体212と協働する。
【0083】
歯科矯正用ブラケットの製造業者は、さらなる快適性およびさらなる信頼性をもたらすブラケット設計に対する改善を探求し続けている。たとえば、多くの従来の歯科矯正用ブラケットは、凹凸のあるまたは不連続である唇側面を含む。いくつかの状況においては、たとえば、口腔の軟組織はブラケットの唇側面を繰り返し係合するので、この凹凸が、患者に不快感を引き起こし得る。口腔の組織は、口腔のより前方部分に対して概ね堅くなるため、この不快感または刺激は、特に、口腔の後方部分(たとえば臼歯上のブラケット)に対して激しくなり得る。さらに、多くの従来のブラケットは、整った、概ね平坦な外面を含む。咀嚼の際、口腔内の食品または他の物質が、この表面に対して衝撃を与える。この表面は、物質をブラケットから離すようにそらす代わりに、咀嚼力の相当な部分が、歯科矯正用ブラケットへ伝達されるように配置される。ブラケットへ伝達される力を増加することは、ブラケットを破壊する可能性またはブラケットの正しい作用を阻害するおそれを増加させる。
【0084】
図16は、これらおよび他の欠点に対処するように設計された歯科矯正用ブラケット410を示す。ブラケット410は、図1〜4に示される特徴と同様の特徴を有し、これらの特徴は同様の参照符号を有するが、前に数字4がついている。図に示すブラケット410は、上側の大臼歯用として構成および説明される。しかしながら、上述のように、下記に説明するブラケット410の特徴は、他の歯、異なる向き、および/または口腔内の異なる領域のブラケットに適用可能であることを当業者は理解するであろう。
【0085】
この実施形態による一態様では、患者の快適性を向上させるために、歯科矯正用ブラケット410の唇側部430は、比較的滑らかで連続的であるように構成される。例として、ブラケット410に対する滑らかで連続的な形状構成は、ブラケット410の隣接する側部同士の間に概ね大きい曲率半径の表面および/または移行部を使用して達成され得る。このような構成は、主に、結紮用滑動部414の設計を修正することによって達成され得る。しかしながら、快適性の改善を達成するために、ブラケット本体412の設計がまた修正されてもよい。一実施形態では、ブラケット本体412は、結紮用滑動部414のためのT形の滑動係合軌道446をともに形成する、概ね平坦な支持面440と一対の向かい合ったガイド442、444とを含む。しかしながら、前の実施形態とは異なり(たとえば図1および16とは対照的に)、ガイド442、444は、結紮用滑動部414の唇側面476に重ならない。
【0086】
代わりに、図17および19に示すように、結紮用滑動部414は、ブラケット本体412を係合する係合部分500と、歯科矯正用ブラケット410の唇側部430の相当な部分を形成する外側輪郭部分502とを有する。係合部分500は、中で動くことができるように、ブラケット本体412の滑動係合軌道446の近心側/遠心側の横断寸法よりもわずかに小さい近心側/遠心側の横断寸法を有する頭部504を形成するT形の構成を有する。係合部分500は、中で動くことができるように、頭部504の近心側/遠心側の横断寸法より小さい近心側/遠心側の横断寸法を有し、ガイド442とガイド444との間の近心側/遠心側の間隔よりわずかに小さいネック部506をさらに含む。
【0087】
図17に最もよく示されるように、輪郭部分502は、ネック部506の寸法より大きい近心側/遠心側の横断寸法を有し、ブラケット本体412の近心側部426から遠心側部428まで実質的に延在する。輪郭部分502の舌側部508は、ガイド442、444に重なり、それによって、ガイド442、444はブラケット410の唇側部430から見たときには見えない(図16)。輪郭部分502は、概ね滑らかであり、従来のブラケットの凹凸のある構成とは対照的な輪郭である唇側部476をさらに含む。この点に関して、唇側部476は、概ね円弧状であり、比較的大きい曲率半径を特徴とし得る。たとえば、比較的大きい曲率半径は、近心側/遠心側の湾曲および/または咬合側/歯肉側の湾曲に適用されてもよい。
【0088】
一実施形態では、たとえば、近心側/遠心側方向の唇側部476の相当な部分の曲率半径は、近心側部426から遠心側部428まで単一の値を有する(たとえば円の一部を形成する)ことができる。この実施形態では、曲率半径は、約0.125インチから約0.375インチの間の範囲であってよい。たとえば、曲率半径は約0.200インチであり得る。近心側/遠心側方向の曲率半径は、複数の別々の値を含むことができ、上述の範囲などのようにそれぞれの値が比較的大きいことを、当業者は認識するであろう。
【0089】
歯肉側/咬合側方向の曲率半径は、また、1つまたは複数の値を含み得る。図20に示すように、たとえば、歯肉側/咬合側方向では、唇側部476は、歯肉側縁部522に隣接する概ね平坦な部分520(たとえば非常に大きい曲率半径)と、約0.020インチから約0.075インチの間の曲率半径を有する移行部分524とを含み得る。(図20に示す)概ね平坦な部分は、代替として、たとえば近心側/遠心側方向に上述のような曲率半径を有する湾曲したまたは円弧状の表面として形成され得ることを、当業者は認識するであろう。
【0090】
したがって、主唇側面と、ブラケット410の近心側部426および遠心側部428ならびに/または咬合側部422および歯肉側部424からブラケット410の唇側部430への(あれば)移行部とが、急または凸凹でなく、滑らかで緩やかである。このような構成は、口腔組織がブラケット410に接触したときの患者の不快感の源を除去または低減し、さらに、ブラケット410上での口腔の軟組織の動きを容易にし、その結果、歯科矯正用ブラケット410の快適性を全体的に改善する。
【0091】
上側の歯のブラケット、および特に上側の大臼歯のブラケットは、このようなブラケットによって典型的に必要とされる高い負のトルクによって、比較的大きい咬合側部または咬合側面を有する傾向がある。さらに、従来のブラケットでは、この大きい咬合側部は、歯の咬合面に実質的に平行になるように向けられる傾向がある。したがって、大きい咬合側部およびその典型的な向きの結果、かかる咀嚼力が大きくなり、それが、ブラケットと歯との接合の信頼性を低下させる傾向がある。しかしながら、この実施形態によるさらなる態様では、歯科矯正用ブラケット410の咬合側部422は、接合不良の可能性を低減するような輪郭または外形にされ得る。
【0092】
この点について、および、図16および20に最もよく示されるように、一実施形態では、結紮用滑動部414の咬合側部530は、上述の移行部分524のような、結紮用滑動部414の唇側部476と滑らかに移行する、概ね平坦な部分532(たとえば非常に大きい曲率半径)を含み得る。従来のブラケットとは対照的に、咬合側部530は、概ね歯肉側方向に、および歯(図示せず)の咬合面に対して、ある角度をなすか、または傾斜され得る。さらに、結紮用滑動部414が閉位置にあるとき、結紮用滑動部414およびブラケット本体412が、咬合側部422に沿って比較的面一または滑らかになるように、ブラケット本体412の咬合側部422(たとえばガイド442、444の咬合側部)が、また、歯肉側方向に傾斜するか、または輪郭をつけられる。
【0093】
したがって、咀嚼の際などに、口腔内の食品または他の物質が歯科矯正用ブラケット410の咬合側部422と接触すると、この食品または物質が、口唇側方向にそらされ得る。結果として、ブラケット410にかかる力が低減され、ブラケット410と歯との接合の信頼性が向上する。滑動部414の咬合側部530は概ね平坦な部分532を有するものとして説明されてきたが、この部分は、また、近心側/遠心側方向または歯肉側/咬合側方向のうちの一方または両方に湾曲していてもよい。
【0094】
上述のようなブラケット410の唇側部430および咬合側部422に対する改善に加えて、歯科矯正用ブラケット410は、上述の実施形態に開示されるような他の特徴を組み込んでもよい。例として、ブラケット410は、上述の固定機構、トルク標示、水平方向の溝穴、工具受け部、結紮用滑動部の端部の面取りもしくは丸みを与えられた形状構成、結紮用滑動部とブラケット本体との間の整合システム、および/または、上記により完全に説明された他の特徴のうちの1つを組み込んでよい。
【0095】
たとえば、図18および19に示すように、歯科矯正用ブラケット410は、ブラケット本体412に関連するばねピン466と、結紮用滑動部414に形成された保持用溝穴468とを含む固定機構を含み得る。サイズ上の制限および他の設計上の考慮事項のために、保持用溝穴468は、結紮用滑動部414の輪郭部分502の舌側部508に形成され得る。保持用溝穴468は係合部分500の中へ延在する(図19)ので、係合部分500はU形の切除部分540を含み、それによって、ばねピン466が保持用溝穴468に接近できるようになる。
【0096】
さらに、(支持面440と保持用溝穴468との間の距離が増すことで)ばねピン466が長さ方向または横方向に曲がるまたは撓むのを防ぐために、ブラケット本体412は、支持面440から唇側に延在するボスまたはピン支持部542を含み得る。ピン支持部542は、切除部分540に対応する形状を有し、結紮用滑動部414が開位置と閉位置との間で動かされる際に、U形の切除部分540に受けられる。ばねピン466および保持用溝穴468は、少なくとも閉位置に結紮用滑動部414を固定するように上述の方式と基本的に同じ方式で作用する。さらに、ばねピン466および保持用溝穴468は、より完全に上述されるように、結紮用滑動部414がブラケット本体412から外れるのを防ぐことができる。
【0097】
図21を参照すると、図1〜3に示される歯科矯正用ブラケット10は、ブラケットの使用および機能性を改善する別の特徴を含み得る。上述のように、ブラケット10は、様々な歯科矯正装置を固定する(たとえば概ね近心側/遠心側方向に向けられた)水平方向に向いた溝穴122を含む。いくつかの用途では、ブラケットに追加の取付け点を与えるか、または異なる向きの取付け点を与えることが望まれるであろう。したがって、水平方向の溝穴122に加えて、または溝穴122の代わりに、歯科矯正用ブラケット10は、(たとえば概ね歯肉側/咬合側方向に向けられた)垂直方向の溝穴600を含み得る。垂直方向の溝穴600は、たとえば、図21に示すように、取り外し可能なフック602などの様々な仮取付け装置を受けるように構成され得る。矯正治療を行うために垂直方向の溝穴600とともに使用され得る他の恒久的なまたは仮の歯科矯正装置を当業者は認識するであろう。
【0098】
水平方向および垂直方向の溝穴122、600は、両者が歯科矯正用ブラケット10に用いられるとき、互いに干渉しないように構成され得る。したがって、水平方向の溝穴122は結束用翼状部136に隣接して配置され得るが、一実施形態では、垂直方向の溝穴600は突出部分124に配設され得る。より詳細には、突出部分124は、突出部分124の咬合側部126の第1開口部(図示せず)と突出部分124の歯肉側部128の第2開口部606とを有する、概ね歯肉側/咬合側に向いた通路604を含む。さらに、通路604は突出部分124の材料の中に完全に埋め込まれ得るが、図示の例示的な実施形態では、通路604がパッド32によって少なくとも部分的に画定されるまたは限られるように、垂直方向の溝穴600は、ブラケット本体12の舌側部20に隣接して配設され得る。垂直方向の溝穴600は、その代わりに、ブラケット本体12の他の部分に配設されてよい、および/またはパッド32の任意の部分によって必ずしも画定されなくてよいことを当業者は理解するであろう。さらに、追加の溝穴が歯科矯正用ブラケット10に形成され得ることを当業者は理解するであろう。たとえば、追加の垂直方向の溝穴(図示せず)が、突出部分124に形成されてもよい。
【0099】
歯の矯正治療は、歯の表面にブラケットを正しく配置することによって向上され得る。たとえば、ブラケットを歯肉側/咬合側方向に歯の上に正しく配置することが望まれる。これは、たとえば、歯の上の固定された基準点を用いることによって、およびこの固定された基準点からのブラケットの正しい位置決めを確実にする様々な測定値を基礎として、行われ得る。いくつかの技術では、たとえば、歯の咬合側縁部が、固定された基準点として使用される。従来は、固定された基準点に対してブラケットを歯の上で位置決めするために工具が使用される。この工具は、典型的に、歯科矯正用ブラケットとは別に歯科矯正医に供給される別の構成要素である。したがって、歯科矯正医は、ブラケットを歯の表面上に正しく位置決めするように、何らかのやり方で、および診療室の環境において、ブラケットを工具に連結しなければならない。このタイプの現場での組立工程は、困難であり、いらだたしく、退屈であり、時間がかかることがある。
【0100】
本発明の実施形態による別の態様は、従来の方法論におけるこのような欠点に対処する。同様の参照符号が図1〜3と同様の特徴を示す図22および23を参照すると、歯科矯正用組立体650は、歯654の上への歯科矯正用ブラケット10の設置および取付けを容易にするように、自己結紮式歯科矯正用ブラケット10に連結された整列装置652を含む。組立体650は、たとえば、予め包装されており、(図示のように)連結されたまたは組み立てられた状態で歯科矯正医に提供され得る。したがって、歯科矯正医は、歯の上でのブラケットの正しい位置決めを容易にする工具に対してブラケットを現場で組み立てる必要はもはやない。さらに、整列装置652は使い捨てであるように設計され得る。したがって、ブラケット10が歯の上に正しく配置された後、整列装置652は、ブラケット10から分離されて、単に廃棄可能である。この点に関して、整列装置652は、廃棄処分を実現可能にする費用効果がよい方式で形成され得ることが企図される。
【0101】
図23を参照して、整列装置652は、細長い柄部分656と、柄部分656から偏位し、柄部分656から延在するブラケット連結部分658とを含む。柄部分656は、歯科矯正医が組立体650を把持して、患者の口の中および歯654の上へブラケット10を設置するために用いる把持部分を提供することによって、歯654の上へのブラケット10の設置を容易にする。さらに、柄部分656は、歯654に対して咬合側/歯肉側方向へのブラケット10の位置決めを容易にする。より詳細には、柄部分656は、使用者が歯654の上の所望の咬合側/歯肉側の位置にブラケット10を正確に配置することができるようにする、たとえば隆条部660の形の1つまたは複数の標識要素を含む。例示的な隆条部660は、所定の距離(たとえば1mm)だけ互いから間隔を置かれ、また、それぞれ、アーチワイヤ用溝穴16の中心軸線662から所定の距離だけ間隔をあけられている。したがって、使用者は、たとえば、隆条部660の一方が歯654の咬合側縁部664と整列するように、咬合側/歯肉側位置にブラケット10を配置することができる。こうして、この位置決めによって、歯654に対するブラケット10の咬合側/歯肉側の位置に関する確信を使用者に与える。
【0102】
図22を特に参照して、柄部分656の設計、およびより詳細には、ブラケット連結部分658に対するその位置が、上述の位置決めを容易にする。より具体的には、ブラケット連結部分658が接合面を有するブラケット10に連結され、接合面が歯654の表面を係合すると、柄部分656もまた歯654の表面に隣接するように、柄部分656は設計される。たとえば、柄部分656とブラケット連結部分658との間の偏位した関係が、使用時に、柄部分656を歯654に隣接して位置決めするのを容易にする。この構成によって、使用者は、歯654に対する隆条部660の位置をより正確に確かめることができる。この点に関して、柄部分656の設計は、歯654の上への歯科矯正用ブラケット10の設置の際の、特に、たとえば口腔の後部における、視差誤差の低減または防止を容易にする。
【0103】
図22および23の例示的な実施形態を続いて参照すると、整列装置652は、ブラケット10と固定的に連結するように構成され得る。たとえば、整列装置652は、ブラケット10と整列装置652との間の近心側/遠心側方向への相互の動きを防止または低減するように構成され得る。この点に関して、整列装置652は、近心側/遠心側方向への相互の動きを防ぐために、ブラケット10上の第2の連結形状構成と協働する第1の連結形状構成を含み得る。一実施形態では、第1の連結形状構成は耳部666を含み、第2の連結形状構成はたとえば工具受け部144(図21)などの凹部を含み得る。整列装置652が歯科矯正用ブラケット10に連結されると、耳部666はブラケット10の工具受け部144にきっちりと嵌る。したがって、歯科矯正用ブラケット10に対する整列装置652の近心側/遠心側への動きを制限するまたは限るように、工具受け部144の近心側/遠心側の壁148、150は、耳部666の露出面に当接し得る。このタイプの連結によって、整列装置652とブラケット10とが互いに対して近心側/遠心側に移動する懸念なく、歯654の上へのブラケット10の設置ができるようになる。さらに、整列装置652の耳部666と工具受け部144との連結によって、1つの向きおよび位置でのみ装置652をブラケット10に連結できるようになり、これは、たとえば、歯科矯正用組立体650の組立て時に望まれるであろう。
【0104】
整列装置652は、ブラケット10と整列装置652との間の歯肉側/咬合側方向への相互の動きを防止または低減するようにさらに構成され得る。この点に関して、ブラケット連結部分658は、アーチワイヤ用溝穴16の長さの少なくとも一部分にわたって延在し、ブラケット10の整列装置652との摩擦係合を容易にするようにアーチワイヤ用溝穴16の中にきっちりと嵌る脚部668を含む。脚部668は、アーチワイヤ用溝穴16の溝穴面36に当接する咬合側面670と、アーチワイヤ用溝穴16の向かい合う溝穴面38に当接する歯肉側面672とを含む。さらに、歯肉側および咬合側の面670、672は、これらの面のアーチワイヤ用溝穴16のそれぞれの溝穴面36、38との摩擦係合を強化する隆条部674を含み得る。脚部668とアーチワイヤ用溝穴16との間の相互作用は、歯科矯正用ブラケット10に対する整列装置652の歯肉側/咬合側への動きを制限するまたは限る。したがって、整列装置652とブラケット10とが互いに対して歯肉側/咬合側に移動する懸念なく、ブラケット10は歯654の上に設置可能である。
【0105】
一実施形態では、整列装置652は、適切なプラスチック材料から、たとえば成形工程によって形成され得る。一実施形態では、整列装置は、たとえばポリプロピレンを含むポリマーから成形され得る。整列装置652を形成する他の適切な材料、ならびに整列装置652を形成する他の適切な工程を、当業者は認識するであろう。材料は、少なくとも脚部668がいくぶん変形可能であるかまたは圧縮可能であるように選択され得る。このようにして、たとえば、整列装置652とブラケット10との間の連結を容易にするために、アーチワイヤ用溝穴16の中にあるとき、脚部668はわずかに変形または圧縮され得る。さらに、一実施形態では、整列装置652は、装置652が連結され得るただ1つのタイプのブラケット10を使用者または製造業者が同定できるような目に見える特徴を有することができる。たとえば、限定することなく、整列装置652の一部分または全体が、特定のタイプのブラケット10に対応する色を有してよい。代替として、整列装置652は、歯科矯正用ブラケット10の標示と一致する標示(たとえば英数字、記号など)を含んでよい。
【0106】
上述の固定機構の一部としてばねピン66を含む様々な実施形態では、ばねピン66は、アーチワイヤ用溝穴16と概ね直角をなすように向けられていた。したがって、たとえば、ばねピン66は唇側/舌側方向に概ね突出していた。ばねピン66の他の向きが可能であるので、本発明の態様はこのようには限定されない。たとえば、ばねピン66は、アーチワイヤ用溝穴16に概ね平行な方向に向けられてもよい。図1〜4に示される特徴と同様の特徴が同様の参照符号を有するが、前に数字7がついた図24および25は、概ね近心側/遠心側方向に向けられたばねピン766を有する自己結紮式ブラケット710を示す。
【0107】
この点に関して、歯科矯正用ブラケット710は、結紮用滑動部714を受ける滑動係合軌道746を形成する支持面740に間隔のあいた関係で重なる一対のガイド742、744を含むブラケット本体712を含む。それぞれのガイド742、744は、ばねピン766がアーチワイヤ用溝穴716に対して概ね平行になり、滑動係合軌道746全体に延在するように、ばねピン766の一部分を中に受ける穴800、802をそれぞれ含む。図24に示される実施形態は両方のガイド742、744の中へ延在するばねピン766を示すが、代替実施形態では、ばねピン766はガイド742、744の一方からのみ延在し得ることを認識されたい。穴800、802の少なくとも一方は、組立て時に、穴800、802の中にばねピン766を挿入するように近心側部726または遠心側部728が開いていてよい。
【0108】
図25に示すように、保持用溝穴804は、結紮用滑動部714の舌側部774に形成され得、概ね歯肉側/咬合側方向に延在する。一実施形態では、保持用溝穴804はまた、結紮用滑動部714の近心側/遠心側の広がり全体に延在する。しかしながら、代替実施形態では、保持用溝穴804は、結紮用滑動部714の近心側/遠心側の広がりの一部分に延在し得る。保持用溝穴804は、ばねピン766と協働し、結紮用滑動部714を少なくとも閉位置においてブラケット本体712に対して固定するように、歯肉側/咬合側方向の形にされる。この点に関して、保持用溝穴804は、歯肉側端部779に隣接する第1の円弧形状の凹部806と、咬合側端部782に隣接する第2の円弧形状の凹部808とを含む。第1および第2の円弧形状の凹部806、808の中間は、高くなった隆条部分810である。
【0109】
作業時には、結紮用滑動部714が閉位置にあるとき、ばねピン766(たとえばその横方向の表面)は、保持用溝穴804の第1の円弧形状の凹部806に配設され、ばねピン766が凹部806の壁を係合するように径方向に拡張することができる。ばねピン766は、第1の円弧形状の凹部806の壁を係合する必要はないが、結紮用滑動部714が開位置に向かって動かされると、ばねピン766が隆条部分810を係合するような横断寸法を、径方向に拡張したときに少なくとも有さなければならないことを当業者は認識するであろう。第1の円弧形状の凹部806にこのように配設されたとき、高くなった隆条部810は、閉位置から離れ、開位置に向かう結紮用滑動部714の任意の動きに対する抵抗の限界レベルを与える。しかしながら、十分に大きい開く力が、たとえば歯肉方向に結紮用滑動部714にかけられた場合、ばねピン766が高くなった隆条部810に沿って動くように、保持用溝穴804とばねピン766との間の相互作用が、(高くなった隆条部810によってかけられる締め付けによって)ピン766を径方向に収縮させる。
【0110】
高くなった隆条部810に配置されると、ばねピン766がその舌側面に当たり、そのため、ばねピン766が高くなった隆条部810を移動する際に、抗力に勝ち、結紮用滑動部714をブラケット本体712に対して動かすためには、開く力よりも小さい、おそらくは開く力よりもかなり小さい限界滑動力をかけなければならない。したがって、一旦開くと、結紮用滑動部714は、完全に開いた位置までただ自由には滑らない、または下がらないが、開位置に向かって意図的に動かされなければならない。結紮用滑動部714が部分的にのみ開かれた場合、滑動部714は、滑動部714を開位置に向かって動かし続ける限界滑動力がかけられるまで、(摩擦力によって)ブラケット本体712に対するその位置を保持するように構成され得る。結紮用滑動部714が閉位置に向かって動かされると、ばねピン766が第1の円弧形状の凹部806に入るにつれて、ばねピン766はその半径方向に拡張した位置へと戻るかまたははね戻り、結紮用滑動部714を閉位置に再度固定する。
【0111】
ばねピン766が高くなった隆条部810に対して動く際に、限界滑動力に勝つために必要な力の量は、結紮用滑動部714の開位置と閉位置との間の動きの間、異なり得る。一実施形態では、たとえば、高くなった隆条部810が、保持用溝穴804(図示せず)の咬合側端部782の方向に大きくなるようにわずかに先細になった高さを有することができる。したがって、ばねピン766と結紮用滑動部714の保持用溝穴804との間の相互の動きに必要とされる滑動力は、結紮用滑動部714が開位置に向かって動かされるにつれて減少し、結紮用滑動部714が閉位置に向かって動かされるにつれて増加する。滑動部が開位置と閉位置との間で動かされるにつれて結紮用滑動部714の滑動力を変化させる他のやり方を当業者は認識するであろう。
【0112】
図5と同様に、図25に示す実施形態は、咬合側端部782に隣接する第2の円弧形状の凹部808を含む。このようにして、開位置から離れ、閉位置に向かう結紮用滑動部714の動きを始めるためには十分に高い閉じる力を必要とするように、結紮用滑動部714が開位置に固定可能である。この点に関して、結紮用滑動部714が閉位置にあるとき、ばねピン766は、第1の円弧形状の凹部806に配設され、ばねピン766を収縮し、ピン766を高くなった隆条部810の上へと動かすためには、十分に大きい開く力が歯肉側方向に結紮用滑動部714にかけられなければならない。結紮用滑動部714が開位置に向かってさらに動かされると、ばねピン766が、保持用溝穴804の咬合側端部782の第2の円弧形状の凹部808に入るにつれて、ばねピン766はその半径方向に拡張した位置へとはね戻る。凹部808の中にこのように配設されたとき、高くなった隆条部810は、開位置から離れ、閉位置に向かう結紮用滑動部714の任意の動きに対する抵抗の限界レベルを与える。十分に大きい閉じる力が咬合側方向に結紮用滑動部714にかけられた後でのみ、ばねピン766が径方向に収縮し、それによって、ばねピン766は保持用溝穴804の高くなった隆条部810の上へと動く。
【0113】
アーチワイヤ用溝穴に概ね平行になるように向けられたばねピンを有する別の実施形態が図26および27に示され、ここでは図1〜4で示される特徴と同様の特徴が同様の参照符号を有するが、数字9が前につけられる。この点に関して、歯科矯正用ブラケット910は、結紮用滑動部914を受ける滑動係合軌道946を形成する支持表面940に対して間隔のあいた関係で重なる一対のガイド942、944を含むブラケット本体912を含む。それぞれのガイド942、944は、ばねピン966がアーチワイヤ用溝穴916に概ね平行になり、滑動係合軌道946全体に延在するように、ばねピン966の一部分を中に受ける穴1002(一方が示されている)を含む。図25に示される実施形態は両方のガイド942、944の中へ延在するばねピン966を示すが、代替実施形態では、ばねピン966はガイド942、944の一方からのみ延在し得ることを認識されたい。ガイド942、944の穴のうちの少なくとも一方は、組立て時に、ばねピン966を中に挿入するように、近心側部926または遠心側部928で開いていてよい。
【0114】
図27に示すように、および図16〜20に示される結紮用滑動部と同様に、結紮用滑動部914は、ブラケット本体912を係合する係合部分1004と、歯科矯正用ブラケット910の唇側部930の一部を形成する外側の部分1006とを含む。係合部分1004は、中で動くことができるように、ブラケット本体912の滑動係合軌道946の近心側/遠心側の横断寸法よりわずかに小さい近心側/遠心側の横断寸法を有する頭部1008を形成するT形の構成を有する。係合部分1004は、頭部1008の近心側/遠心側の横断寸法より小さい近心側/遠心側の横断寸法を有し、中で動くことができるように、ガイド942とガイド944との間の近心側/遠心側の間隔よりもわずかに小さいネック部1010をさらに含む。さらに、外側の部分1006は、近心側/遠心側方向にアーチワイヤ用溝穴916の相当な部分を覆い、また、上述のように工具を受け、結紮用滑動部914を開く工具受け部1011を形成するように構成されるY形の構成を有する。
【0115】
保持用溝穴1012が、結紮用滑動部914に形成され、概ね歯肉側/咬合側方向に延在する。保持用溝穴1012は、少なくとも係合部分1004のネック部1010に配置され、たとえば、ネック部1010の近心側部からネック部1010の遠心側部まで延在する貫通溝穴として形成されてよい。保持用溝穴1012はまた、めくら溝穴としてネック部1010に形成され得ることを当業者は認識するであろう。保持用溝穴1012は、ばねピン966と協働し、ブラケット本体912に対して結紮用滑動部914を少なくとも閉位置に固定するような形状にされる。この点に関して、保持用溝穴1012は、図4Bに示されるものと同様の直線区域部分1018と連通する保持用溝穴1012の歯肉側端部1016に隣接して第1拡大部分1014を含む。保持用溝穴1012は、図5に示されるものと同様に、咬合側端部1022に隣接して第2拡大部分1020をさらに含み得る。
【0116】
作業時には、結紮用滑動部914が閉位置にあるとき、ばねピン966(たとえばその横方向の表面)は、保持用溝穴1012の第1拡大部分1014の中に配設され、ばねピン966が拡大部分1014の壁を係合するように径方向に拡張することができる。ばねピン966は、第1拡大部分1014の壁を係合する必要はないが、直線区域部分1018の横断寸法よりも大きい横断寸法を、径方向に拡張したときに少なくとも有さなければならないことを当業者は認識するであろう。第1拡大部分1014の中にこのように配設されたとき、第1拡大部分1014と直線区域部分1018との間の移行部にある突起部が、閉位置から離れ、開位置に向かう結紮用滑動部914の任意の動きに対する抵抗の限界レベルを与える。しかしながら、十分に大きい開く力が、たとえば歯肉側方向に結紮用滑動部914にかけられた場合、ばねピン966が突起部を通過し、直線区域部分1018へと動くように、保持用溝穴1012とばねピン966との間の相互作用が、(溝穴によってかけられる締め付けによって)ピン966を半径方向に収縮させる。
【0117】
直線区域部分1018に配置されると、ばねピン966がその壁に当たり、そのため、ばねピン966が直線区域部分1018を移動する際に、抗力に勝ち、結紮用滑動部914をブラケット本体912に対して動かすためには、開く力よりも小さい、おそらくは開く力よりもかなり小さい限界滑動力をかけなければならない。したがって、一旦開くと、結紮用滑動部914は、完全に開いた位置までただ自由には滑らない、または下がらないが、開位置に向かって意図的に動かされなければならない。結紮用滑動部914が部分的にのみ開かれた場合、滑動部914は、滑動部914を開位置に向かって動かし続ける限界滑動力がかけられるまで、(摩擦力によって)ブラケット本体912に対するその位置を保持するように構成され得る。結紮用滑動部914が閉位置に向かって動かされると、ばねピン966が拡大部分1014に入るにつれて、ばねピン966はその半径方向に拡張した位置へと戻るかまたははね戻り、結紮用滑動部914を閉位置に再度固定する。
【0118】
ばねピン966が直線区域部分1018に対して動く際に、限界滑動力に勝つために必要な力の量は、直線区域部分1018の横断寸法の変化によるなど、結紮用滑動部914の開位置と閉位置との間の動きの間、異なり得る。滑動部が開位置と閉位置との間で動かされるにつれて結紮用滑動部914の滑動力を変化させる他のやり方を当業者は認識するであろう。
【0119】
図5と同様に、図27に示される実施形態は、咬合側端部1022に隣接する第2拡大部分1020を含む。このようにして、開位置から離れ、閉位置に向かう結紮用滑動部914の動きを始めるためには十分に高い閉じる力を必要とするように、結紮用滑動部914は開位置に固定可能である。この点に関して、結紮用滑動部914が閉位置にあるとき、ばねピン966は、第1拡大部分1012に配設され、ばねピン966を収縮し、ピン966を直線区域部分1018へと動かすためには、十分に大きい開く力が歯肉側方向に結紮用滑動部914にかけられなければならない。結紮用滑動部914が開位置に向かってさらに動かされると、ばねピン966が、保持用溝穴1012の咬合側端部1022の第2拡大部分1020に入るにつれて、ばねピン966はその半径方向に拡張した位置へとはね戻る。第2拡大部分1020の中にこのように配設されたとき、第2拡大部分1020と直線区域部分1018との間の移行部にある突起部が、開位置から離れ、閉位置に向かう結紮用滑動部914の任意の動きに対する抵抗の限界レベルを与える。十分に大きい閉じる力がたとえば咬合側方向に結紮用滑動部914にかけられた後でのみ、ばねピン966が半径方向に収縮し、それによって、ばねピン966が保持用溝穴1012の直線区域部分1018へと動く。
【0120】
本発明は様々な好ましい実施形態の説明によって示され、これらの実施形態はいくつかの詳細において説明されてきたが、添付の特許請求の範囲の範囲をそのような詳細に制限またはいかようにも限定することは、発明者の意図するところではない。追加の利点および修正例は、当業者に容易に明らかになるであろう。本発明の様々な特徴は、使用者の必要および好みによって単独でまたは任意の組合せで使用され得る。
【符号の説明】
【0121】
10 歯科矯正用ブラケット
12 ブラケット本体
14 結紮用滑動部
14a 結紮用滑動部
14b 結紮用滑動部
16 アーチワイヤ用溝穴
18 アーチワイヤ
20 舌側部
22 咬合側部
24 歯肉側部
26 近心側部
28 遠心側部
30 唇側部
32 パッド
33b 球状端部
34 ベース面
36、38 溝穴面
40 支持面
42、44 ガイド
46 滑動係合軌道
48 近心部分
50 遠心部分
52 中央部分
54、56 溝
58 歯肉側端部
60 停止部分
62 歯肉側端部
66 ばねピン
68 保持用溝穴
68a 保持用溝穴
69 中心軸線
70 穴
72 スリット
74 舌側部
76 唇側部
78 拡大部分
79 歯肉側端部
80 直線区域部分
82 咬合側端部
88 突起部
90 拡大部分
92 突起部
94 保持用ピン
96 保持用溝穴
97 中心軸線
98 偏位部分
99 歯肉側端部
100 直線区域部分
102 咬合側端部
104 突起部
106 ばね棒材
110、112 ばねアーム
114、116 端面
117 面取り部
117a 面取り部
117b 近心側部分
117c 遠心側部分
117d 中央部分
118 咬合側縁部
119a 隆条部
122 溝穴
124 突出部分
126 咬合側面
128 歯肉側面
130 近心側面
132 遠心側面
134 舌側面
136 結束用翼状部
138 面取り部
140 面取り部
142 平坦部
144 工具受け部
146 咬合側の壁
148 近心側の壁
150 遠心側の壁
154 先端部
156 工具
158 最大長
160 切除部分
162 レッジ
164 咬合側の壁
210 自己結紮式ブラケット
212 ブラケット本体
214 結紮用滑動部
216 アーチワイヤ用溝穴
220 舌側部
222 咬合側部
232 パッド
234 ベース面
234a ベース面
246 滑動部係合軌道
246a 移動面
274 舌側部
300 切除部分
302 溝
304 結紮糸
306 境界面
410 歯科矯正用ブラケット
412 ブラケット本体
414 結紮用滑動部
422 咬合側部
424 歯肉側部
426 近心側部
428 遠心側部
430 唇側部
440 支持面
442、444 ガイド
446 滑動係合軌道
466 ばねピン
468 保持用溝穴
476 唇側部
500 係合部分
502 外側輪郭部分
504 頭部
506 ネック部
508 舌側部
522 歯肉側縁部
520 平坦な部分
524 移行部分
530 咬合側部
532 平坦な部分
540 切除部分
542 ピン支持部
600 溝穴
602 かぎ
604 通路
606 第2開口部
650 歯科矯正用組立体
652 整列装置
656 柄部分
654 歯
658 ブラケット連結部分
660 隆条部
662 中心軸線
664 咬合側縁部
666 耳部
668 脚部
670 咬合側面
672 歯肉側面
674 隆条部
710 歯科矯正用ブラケット
712 ブラケット本体
714 結紮用滑動部
716 アーチワイヤ用溝穴
726 近心側部
728 遠心側部
740 支持面
742、744 ガイド
746 滑動係合軌道
766 ばねピン
774 舌側部
779 歯肉側端部
782 咬合側端部
800、802 穴
804 保持用溝穴
806 凹部
808 凹部
810 隆条部分
910 歯科矯正用ブラケット
912 ブラケット本体
914 結紮用滑動部
916 アーチワイヤ用溝穴
926 近心側部
928 遠心側部
930 唇側部
940 支持表面
942、944 ガイド
946 滑動係合軌道
966 ばねピン
1002 穴
1006 外側の部分
1004 係合部分
1008 頭部
1010 ネック部
1011 工具受け部
1012 保持用溝穴
1014 第1拡大部分
1016 歯肉側端部
1018 直線区域部分
1020 第2拡大部分
1022 咬合側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチワイヤを歯と連結する歯科矯正用ブラケットにおいて、
前記歯に取り付けられるように構成されたブラケット本体であって、中に前記アーチワイヤを受けるように構成されたアーチワイヤ用溝穴を含み、係合軌道を画定する一対のガイドをさらに含む、ブラケット本体と、
外側輪郭部分と、前記ブラケット本体において前記一対のガイドを係合する内側係合部分と、を有する可動式部材であって、前記外側輪郭部分が前記一対のガイドを覆う、可動式部材と、
を備え、
前記可動式部材は、前記アーチワイヤが前記アーチワイヤスロット内に挿入可能である開位置と、前記可動式部材が前記アーチワイヤスロット内に前記アーチワイヤを保持する閉位置との間で前記ブラケット本体に対して動くことができ、
少なくとも閉位置において、前記可動式部材を固定するように構成された固定機構をさらに備えることを特徴とする、歯科矯正用ブラケット。
【請求項2】
前記ブラケット本体は近心側部及び遠心側部を含み、前記外側輪郭部分が前記近心側部から前記遠心側部まで実質的に延在することを特徴とする、請求項1に記載の歯科矯正用ブラケット。
【請求項3】
唇側部をさらに備えており、前記外側輪郭部分が前記唇側部の相当な部分を形成することを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ブラケット。
【請求項4】
前記外側輪郭部分の実質的な部分は、近心―遠心方向において曲率半径を有することを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ブラケット。
【請求項5】
前記曲率半径が、約0.125インチから約0.375インチの範囲であることを特徴とする、請求項4に記載の歯科用ブラケット。
【請求項6】
前記可動式部材は、咬合側部さらに含み、前記咬合側部は、前記外側輪郭部分の外側表面に対して90°以上の角度を形成することを特徴とする請求項1に記載の歯科用ブラケット。
【請求項7】
前記一対のガイドのそれぞれは咬合側部を含み、前記一対のガイドのそれぞれにおける前記咬合側部は、前記可動式部材の前記咬合側部の角度と一致する角度を形成することを特徴とする、請求項5に記載の歯科用ブラケット。
【請求項8】
前記係合部分は、頭部及びネック部を画定するT字状の構成を有し、前記頭部は、前記ネック部の近心側/遠心側の横断寸法より大きい近心側/遠心側の横断寸法を有することを特徴とする、請求項5に記載の歯科用ブラケット。
【請求項9】
前記固定機構は、前記ブラケット本体における突出部分と、前記可動式部材の内側表面における受容部分と、を含み、
前記突出部分はピンを含み、前記ピンは、前記ピンの少なくとも1部に沿って形成されたスロットを有し、前記ピンの少なくとも1部は、前記可動式部材を少なくとも前記閉位置に固定するように、その中心軸線に対して略半径方向に拡張または収縮し、前記受容部分と協働することができることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ブラケット。
【請求項10】
前記ブラケット本体は、
前記歯に取り付けられたときに、対向する顎にある歯に対面するように構成された対面側部であって、前記対向する顎にある歯との咬合上の干渉を防ぐような輪郭形状を含む対面側部と、
前記ブラケット本体の前記対面側部に形成され、隣接する歯の上にある歯科矯正装置に前記ブラケットを連結する連結部材を受けるように構成される切除部分であって、前記アーチワイヤ用溝穴と概ね直角をなし前記ブラケットの取り付けられた前記歯から離れる方向への前記連結部材の動きを制限する、少なくとも1つの境界面を含む切除部分と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−39382(P2013−39382A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−201275(P2012−201275)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2010−515176(P2010−515176)の分割
【原出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(599025972)オルムコ コーポレイション (35)
【Fターム(参考)】