説明

自律測位に用いる重力ベクトルを補正する携帯装置、プログラム及び方法

【課題】自律測位機能を有する携帯装置について、その装置を保持する態様の個人差に関係なく、重力ベクトルを補正する携帯装置、プログラム及び方法を提供する。
【解決手段】地磁気センサから出力された所定期間内の複数の地磁気データを蓄積する地磁気バッファ手段と、自律測位手段から出力された所定期間内の複数の推定方位角dを蓄積する推定方位角バッファ手段と、推定方位角バッファ手段に蓄積された複数の推定方位角dが、一様分布であるか否かを判定する方位角分布検定手段と、方位角分布検定手段によって一様分布であると判定された際に、地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、その円錐の中心軸となる重力ベクトルを算出し、該重力ベクトルを自律測位手段へ出力する重力ベクトル算出手段とを有する。これによって、自律測位手段は、重力ベクトル算出手段から入力した重力ベクトルを用いて、推定方位角dを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律測位に用いる重力ベクトルを補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正確な端末姿勢を推定するために、重力ベクトルを補正する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、携帯装置は、角速度センサ及び加速度センサを有し、角速度データ及び加速度データから重力方向を逐次算出する。重力ベクトルは、角速度データに基づいて算出される。最初に、その重力ベクトルを、加速度ベクトルの方向へ近づくように補正する。次に、端末が所定の運動をする場合に、その重力ベクトルを、加速度データ及び角速度データの予め定義された関係から推定される重力方向へ近づくように補正する。最後に、その重力ベクトルを、所定期間における加速度ベクトルの平均の方向へ近づくように補正する。このように補正された重力ベクトルを用いて、正確な端末姿勢を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、携帯装置に、少なくとも角速度センサを搭載する必要がある。また、加速度データと角速度データとの関係を予め定義しておく必要があり、携帯装置を保持する態様の個人差には対応できない。
【0005】
そこで、本発明は、自律測位機能を有する携帯装置について、その装置を保持する態様の個人差に関係なく、重力ベクトルを補正することができる携帯装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
3軸の加速度データを出力する加速度センサと、
3軸の地磁気データを出力する地磁気センサと、
加速度データ及び地磁気データを用いて、自律的に測位した推定方位角dを出力する自律測位手段と
を有する携帯装置であって、
地磁気センサから出力された所定期間内の複数の地磁気データを蓄積する地磁気バッファ手段と、
自律測位手段から出力された所定期間内の複数の推定方位角dを蓄積する推定方位角バッファ手段と、
推定方位角バッファ手段に蓄積された複数の推定方位角dが、一様分布であるか否かを判定する方位角分布検定手段と、
方位角分布検定手段によって一様分布であると判定された際に、地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、その円錐の中心軸となる重力ベクトルを算出し、該重力ベクトルを自律測位手段へ出力する重力ベクトル算出手段と
を有し、
自律測位手段は、重力ベクトル算出手段から入力した重力ベクトルを用いて、推定方位角dを補正することを特徴とする。
【0007】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、方位角分布検定手段は、推定方位角dを所定角度区間毎に分割し、所定角度区間i毎の推定方位角dの観測度数Oiが一様分布であるか否かを判定することも好ましい。
【0008】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、
方位角分布検定手段は、χ検定によって判定するものであって、
所定角度区間iの数kを自由度とした場合に、所定有意水準値を満たす基準χ値を予め記憶しており、
以下の式によってχ値を算出し、
【数1】

E=N/k
N:全観測度数
k:所定角度区間の数
算出されたχ値が、基準χ値よりも小さい場合、一様分布であると判定することも好ましい。
【0009】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、
重力ベクトル算出手段は、地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、以下の式によって重力ベクトルを算出する
【数2】

G:重力ベクトル
m:地磁気ベクトル
ことも好ましい。
【0010】
本発明によれば、
3軸の加速度データを出力する加速度センサと、
3軸の地磁気データを出力する地磁気センサと、
を有する携帯装置に搭載されたコンピュータを機能させるものであって、
加速度データ及び地磁気データを用いて、自律的に測位した推定方位角dを出力する自律測位手段としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
地磁気センサから出力された所定期間内の複数の地磁気データを蓄積する地磁気バッファ手段と、
自律測位手段から出力された所定期間内の複数の推定方位角dを蓄積する推定方位角バッファ手段と、
推定方位角バッファ手段に蓄積された複数の推定方位角dが、一様分布であるか否かを判定する方位角分布検定手段と、
方位角分布検定手段によって一様分布であると判定された際に、地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、その円錐の中心軸となる重力ベクトルを算出し、該重力ベクトルを自律測位手段へ出力する重力ベクトル算出手段と
を有し、
自律測位手段は、重力ベクトル算出手段から入力した重力ベクトルを用いて、推定方位角dを補正する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0011】
本発明の携帯装置用のプログラムにおける他の実施形態によれば、方位角分布検定手段は、推定方位角dを所定角度区間毎に分割し、所定角度区間i毎の推定方位角dの観測度数Oiが一様分布であるか否かを判定するようにコンピュータを更に機能させることも好ましい。
【0012】
本発明の携帯装置用のプログラムにおける他の実施形態によれば、
方位角分布検定手段は、χ検定によって判定するものであって、
所定角度区間iの数kを自由度とした場合に、所定有意水準値を満たす基準χ値を予め記憶しており、
以下の式によってχ値を算出し、
【数3】

E=N/k
N:全観測度数
k:所定角度区間の数
算出されたχ値が、基準χ値よりも小さい場合、一様分布であると判定する
ようにコンピュータを更に機能させることも好ましい。
【0013】
本発明の携帯装置用のプログラムにおける他の実施形態によれば、
重力ベクトル算出手段は、地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、以下の式によって重力ベクトルを算出する
【数4】

G:重力ベクトル
m:地磁気ベクトル
ようにコンピュータを更に機能させることも好ましい。
【0014】
本発明によれば、
3軸の加速度データを出力する加速度センサと、
3軸の地磁気データを出力する地磁気センサと、
を有する携帯装置における重力ベクトルの補正方法であって、
加速度データ及び地磁気データを用いて重力ベクトルを算出すると共に、自律的に測位した推定方位角dを出力する自律測位機能と、
地磁気センサから出力された所定期間内の複数の地磁気データを蓄積する地磁気バッファ機能と、
自律測位手段から出力された所定期間内の複数の推定方位角dを蓄積する推定方位角バッファ機能と
を有し、
推定方位角バッファ機能に蓄積された複数の推定方位角dが、一様分布であるか否かを判定する第1のステップと、
一様分布であると判定された際に、地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、その円錐の中心軸となる重力ベクトルを算出し、該重力ベクトルを自律測位機能へ出力する第2のステップと、
自律測位機能が、重力ベクトル算出手段から入力した重力ベクトルを用いて、推定方位角dを補正する第3のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の携帯装置、プログラム及び方法によれば、一様分布の地磁気データが得られたタイミングで、蓄積された推定方位角から重力ベクトルを算出し、その重力ベクトルを用いて自律測位機能を補正することによって、その装置を保持する態様の個人差に関係なく、重力ベクトルを補正することができる。即ち、本発明によれば、角速度センサを必要とせず、その装置を保持する態様の個人差によって、重力ベクトルの誤差が異なる場合であっても、これを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における携帯装置の機能構成図である。
【図2】正しい重力ベクトルGと地磁気ベクトルMとの関係を表すユーザ座標系である。
【図3】誤った重力ベクトルGと地磁気ベクトルMとの関係を表すユーザ座標系である。
【図4】全方位角360°を8区間に区分した説明図である。
【図5】観測度数Oiが一様分布でない場合の説明図である。
【図6】観測度数Oiが一様分布である場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明における携帯装置の機能構成図である。
【0019】
携帯装置1は、ユーザに所持されるものであって、例えば携帯電話機又はスマートフォンのようなものである。図1によれば、携帯装置1は、加速度センサ101と、地磁気センサ102とを有する。
【0020】
加速度センサ101は、加速度、即ち単位時間当たりの速度の変化を検出する。携帯装置の傾きを検出することができる3軸タイプの場合、3次元の加速度を検出でき、地球の重力(静的加速度)の計測にも対応できる。
【0021】
地磁気センサ102は、3軸方向(前後方向、左右方向及び上下方向)の地磁気の方向を測定する。地磁気センサ102は、ホール素子を分離し、分離したホール素子からそれぞれ検出された値を出力する。
【0022】
また、携帯装置1は、自律測位部111と、方位角バッファ部112と、地磁気バッファ部113と、方位角分布検定部114と、重力ベクトル算出部115と、アプリケーション処理部116とを有する。アプリケーション処理部116は、自律測位部111から導出された推定方位角dを用いて、様々なサービスをユーザに提供する。これら機能構成部は、携帯装置1に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、自律測位における重力ベクトルの検出方法としても理解できる。
【0023】
自律測位部111は、加速度データ及び地磁気データを用いて重力ベクトルを算出すると共に、自律的に測位した推定方位角d(°)を出力する。自律測位部111は、既存のデッドレコニング(Dead Reckoning:DR)技術(自律推測航法技術)に基づくものであって、屋内のように測位電波を受信できない場所にあっても、その位置を自律的に測位することができる。デッドレコニング技術は、エンコーダや慣性センサを利用した相対的自己位置推定技術をいい、一般に、既知の初期値(位置と姿勢)に対して、地磁気データ又は角速度データ(ジャイロスコープ)及び加速度データを足し合わせて、その後の位置及び姿勢を算出する。そのために、デッドレコニング技術のみでは、誤差が蓄積していくことなる。即ち、重力ベクトルの誤差も蓄積していくこととなる。
【0024】
図1によれば、自律測位部111は、重力ベクトル算出部115から重力ベクトルGを入力する。自律測位部111は、重力ベクトル算出部115から重力ベクトルGを入力した際に、自らの推定重力ベクトルを、その重力ベクトルGに再設定(リセット)する。これによって、自律測位に基づく推定重力ベクトルの誤差を補正することができ、その後の自律測位の精度を向上させることができる。
【0025】
推定方位角バッファ部112は、自律測位部111から出力された所定期間内の複数の推定方位角dを蓄積する。所定期間内とは、例えば重力ベクトル算出部115が重力ベクトルGを自律測位部111へ出力する毎であってもよいし、任意の所定時間期間毎であってもよい。蓄積された推定方位角dは、方位角分布検定部114によって参照される。
【0026】
地磁気バッファ部113は、地磁気センサ102から出力された所定期間内の複数の地磁気データを蓄積する。ここで、地磁気バッファ部113に蓄積された地磁気データの時間期間と、推定方位角バッファ部112に蓄積された推定方位角dの時間期間とは、一致することが好ましい。即ち、その時間期間は、例えば重力ベクトル算出部115が重力ベクトルGを自律測位部111へ出力する毎であることが好ましい。
【0027】
図2は、正しい重力ベクトルGと地磁気ベクトルMとの関係を表すユーザ座標系である。
【0028】
図2によれば、正しい重力ベクトルGによって推定された進行方位角θが表されている。ここで、重力ベクトルGは、多数の地磁気ベクトルmの群からなる円錐の中心軸に位置する。
【0029】
地磁気は、南から北へ向けて到来しており、地磁気ベクトルは、地域によって固有の伏角φを伴って、北(磁北)方向を示すベクトルとなる。地磁気ベクトルの伏角φは、重力ベクトルGに対する角度を表す。また、重力ベクトルGに対して垂直な平面(地表面)への射影ベクトルは、北向きベクトルを表す。北向きベクトルから前向きベクトルへの回転角θは、進行方向方位角を表す。角度は、北から時計回りで表される。
【0030】
図2からも明らかなとおり、地磁気ベクトルは、重力ベクトルを軸とした円錐表面に分布する。即ち、全方位360°の地磁気ベクトルを収集することができれば、その円錐の中心軸は、重力ベクトルであると決定することができる。
【0031】
図3は、誤った重力ベクトルGと地磁気ベクトルMとの関係を表すユーザ座標系である。
【0032】
図3によれば、重力ベクトルにオフセットがかかることによって、重力ベクトルを基準とした座標系では、地磁気ベクトルの群が、本来あるべき位置から回転して見える。そのような重力ベクトルGによって推定された進行方位角θも、誤ることとなる。特に、自律測位によって推定される重力ベクトルは、時間経過と共に誤差を生じてくる。図3によれば、重力ベクトルが誤差を含むことによって、正しい進行方位角θを推定することができなくなっている。
【0033】
しかしながら、図2のように、全方位360°の地磁気ベクトルを確実に収集することは難しい。一般的には、その携帯端末を保持するユーザに、全方位360°を向いて(円周方向に一周回って)もらうような所定の行為をさせる必要が生じる。重力ベクトルを補正する毎に、このような行為をユーザに強いることは、極めて違和感がある。
【0034】
そこで、方位角分布検定部114によって、推定方位角バッファ部112に蓄積された推定方位角dの分布が、全方位に対して一様となっているタイミングを検出する。このタイミングで、地磁気バッファ部113に蓄積されている地磁気ベクトルデータm群から、円錐の中心軸を算出することによって、重力ベクトルを検出することができる。その重力ベクトルは、自律測位部111へ出力される。自律測位部111は、自律測位における推定重力ベクトルを、入力された重力ベクトルGに再設定することによって補正することができる。
【0035】
[方位角分布検定部114]
方位角分布検定部114は、推定方位角バッファ部112に蓄積された複数の推定方位角dが、一様分布であるか否かを判定する。重力ベクトルを推定するには、地磁気ベクトルが、円錐表面上に、できる限り均一に分布している必要がある。方位角分布検定部114は、重力ベクトルを推定するために十分な地磁気データがバッファされているか否かを、推定方位角の分布から算出する。
【0036】
方位角分布検定部114は、例えば以下の2つの条件を共に満たした際に、重力ベクトル算出部115へ重力ベクトルを算出するべく指示する。
(条件1)推定方位角バッファ部112に蓄積された推定方位角の数が、所定閾値N(例えば300)以上である。
(条件2)推定方位角バッファ部112に蓄積された推定方位角が、一様分布である。
以下では、条件2について詳細に説明する。
【0037】
方位角分布検定部114は、推定方位角dを所定角度区間毎に分割し、所定角度区間i毎の推定方位角dの観測度数Oiが一様分布であるか否かを判定する。
【0038】
図4は、全方位角360°を8区間に区分した説明図である。
【0039】
図4によれば、全方位角360°を8区間に分割し、所定角度区間を、例えば45°としている。そして、推定方位角バッファ部112に蓄積された推定方位角の数を、所定角度区間毎に、「観測度数」として集計する。
【0040】
図5は、観測度数Oiが一様分布でない場合の説明図である。
【0041】
図5によれば、区間毎の観測度数Oiが一様分布でないために、その地磁気ベクトルにおける円錐の中心軸となる重力ベクトルも誤ったものとなる。
【0042】
図6は、観測度数Oiが一様分布である場合の説明図である。
【0043】
図6によれば、その所定角度区間毎に、推定方位角バッファ部112に蓄積された推定方位角の数(観測度数)が表されている。区間毎の観測度数Oiが一様分布であることによって、その地磁気ベクトルにおける円錐の中心軸となる重力ベクトルも正しいものとなる。
【0044】
方位角分布検定部114は、χ検定によって判定する。「χ検定」とは、推定統計学における確率分布の一種である。本発明によれば、χ値を以下の式によって算出する。
【数5】

E=N/k
N:全観測度数
k:所定角度区間の数
これは、「観測度数Oiを、平均μiで分散σiの正規分布に従う、k個の独立なランダム変数とすると、統計量はχに従う」ことを意味する。χ検定は、kという1個の母数をもつ。これは観測度数Oiの自由度に等しい正の整数である。観測度数Oiと平均E(期待度数)とのずれが偶然であるならば、χ値は、自由度k−1のχ検定に従う。
【0045】
ここで、方位角分布検定部114は、所定角度区間iの数kを自由度とした場合に、所定有意水準値を満たす基準χ値を予め記憶している。そして、算出されたχ値が、基準χ値よりも小さい場合、一様分布であると判定する。
算出されたχ値<基準χ値 : 一様分布である
【0046】
具体的な数値を用いて説明する。
図6の例の場合、k=8、N=361であり、χ=5.21となる。
また、基準χ値として、以下の値(χ分布表)を記憶しているとする。
自由度7、有意水準0.05の場合、基準χ0.05=14.067
そうすると、以下のように、データが一様分布であるという帰無仮説を棄却できない。
χ<χ0.05
従って、推定方位角バッファ部112に蓄積された推定方位角の群は、一様分布であると判定される。
【0047】
[重力ベクトル算出部115]
重力ベクトル算出部115は、方位角分布検定部114によって一様分布であると判定された際に、地磁気バッファ部113に蓄積された地磁気データから、その円錐の中心軸となる重力ベクトルを算出する。
【0048】
重力ベクトル算出部115は、地磁気バッファ部113に蓄積された地磁気データmから、以下の式によって重力ベクトルを算出する。
【数6】

G:重力ベクトル
m:地磁気ベクトル
【0049】
そして、重力ベクトル算出部115は、算出した重力ベクトルGを、自律測位部111へフィードバックする。これによって、自律測位部111は、自ら推定していた重力ベクトルを、フィードバックされた重力ベクトルGに置き換える。
【0050】
以上、詳細に説明したように、本発明の携帯装置、プログラム及び方法によれば、一様分布の地磁気データが得られたタイミングで重力ベクトルを算出し、その重力ベクトルを用いて自律測位機能を補正することによって、その装置を保持する態様の個人差に関係なく、重力ベクトルを補正することができる。即ち、本発明によれば、角速度センサを必要とせず、その装置を保持する態様の個人差によって、重力ベクトルの誤差が異なる場合であっても、これを補正することができる。
【0051】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0052】
1 携帯装置
101 加速度センサ
102 地磁気センサ
103 GPS測位部
111 自律測位部
112 推定方位角バッファ部
113 地磁気バッファ部
114 方位角分布検定部
115 重力ベクトル算出部
116 アプリケーション処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸の加速度データを出力する加速度センサと、
3軸の地磁気データを出力する地磁気センサと、
前記加速度データ及び前記地磁気データを用いて、自律的に測位した推定方位角dを出力する自律測位手段と
を有する携帯装置であって、
前記地磁気センサから出力された所定期間内の複数の地磁気データを蓄積する地磁気バッファ手段と、
前記自律測位手段から出力された前記所定期間内の複数の推定方位角dを蓄積する推定方位角バッファ手段と、
前記推定方位角バッファ手段に蓄積された複数の推定方位角dが、一様分布であるか否かを判定する方位角分布検定手段と、
前記方位角分布検定手段によって一様分布であると判定された際に、前記地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、その円錐の中心軸となる重力ベクトルを算出し、該重力ベクトルを前記自律測位手段へ出力する重力ベクトル算出手段と
を有し、
前記自律測位手段は、前記重力ベクトル算出手段から入力した前記重力ベクトルを用いて、前記推定方位角dを補正することを特徴とする携帯装置。
【請求項2】
前記方位角分布検定手段は、前記推定方位角dを所定角度区間毎に分割し、所定角度区間i毎の推定方位角dの観測度数Oiが一様分布であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
前記方位角分布検定手段は、χ検定によって判定するものであって、
前記所定角度区間iの数kを前記自由度とした場合に、所定有意水準値を満たす基準χ値を予め記憶しており、
以下の式によってχ値を算出し、
【数1】

E=N/k
N:全観測度数
k:所定角度区間の数
算出されたχ値が、前記基準χ値よりも小さい場合、一様分布であると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の携帯装置。
【請求項4】
前記重力ベクトル算出手段は、前記地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データmから、以下の式によって重力ベクトルを算出する
【数2】

G:重力ベクトル
m:地磁気ベクトル
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯装置。
【請求項5】
3軸の加速度データを出力する加速度センサと、
3軸の地磁気データを出力する地磁気センサと、
を有する携帯装置に搭載されたコンピュータを機能させるものであって、
前記加速度データ及び前記地磁気データを用いて、自律的に測位した推定方位角dを出力する自律測位手段としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記地磁気センサから出力された所定期間内の複数の地磁気データを蓄積する地磁気バッファ手段と、
前記自律測位手段から出力された前記所定期間内の複数の推定方位角dを蓄積する推定方位角バッファ手段と、
前記推定方位角バッファ手段に蓄積された複数の推定方位角dが、一様分布であるか否かを判定する方位角分布検定手段と、
前記方位角分布検定手段によって一様分布であると判定された際に、前記地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、その円錐の中心軸となる重力ベクトルを算出し、該重力ベクトルを前記自律測位手段へ出力する重力ベクトル算出手段と
を有し、
前記自律測位手段は、前記重力ベクトル算出手段から入力した前記重力ベクトルを用いて、前記推定方位角dを補正する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする携帯装置用のプログラム。
【請求項6】
前記方位角分布検定手段は、前記推定方位角dを所定角度区間毎に分割し、所定角度区間i毎の推定方位角dの観測度数Oiが一様分布であるか否かを判定するようにコンピュータを更に機能させることを特徴とする請求項5に記載の携帯装置。
【請求項7】
前記方位角分布検定手段は、χ検定によって判定するものであって、
前記所定角度区間iの数kを前記自由度とした場合に、所定有意水準値を満たす基準χ値を予め記憶しており、
以下の式によってχ値を算出し、
【数3】

E=N/k
N:全観測度数
k:所定角度区間の数
算出されたχ値が、前記基準χ値よりも小さい場合、一様分布であると判定する
ようにコンピュータを更に機能させることを特徴とする請求項6に記載の携帯装置。
【請求項8】
前記重力ベクトル算出手段は、前記地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データmから、以下の式によって重力ベクトルを算出する
【数4】

G:重力ベクトル
m:地磁気ベクトル
ようにコンピュータを更に機能させることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の携帯装置。
【請求項9】
3軸の加速度データを出力する加速度センサと、
3軸の地磁気データを出力する地磁気センサと、
を有する携帯装置における重力ベクトルの補正方法であって、
前記加速度データ及び前記地磁気データを用いて重力ベクトルを算出すると共に、自律的に測位した推定方位角dを出力する自律測位機能と、
前記地磁気センサから出力された所定期間内の複数の地磁気データを蓄積する地磁気バッファ機能と、
前記自律測位手段から出力された前記所定期間内の複数の推定方位角dを蓄積する推定方位角バッファ機能と
を有し、
前記推定方位角バッファ機能に蓄積された複数の推定方位角dが、一様分布であるか否かを判定する第1のステップと、
一様分布であると判定された際に、前記地磁気バッファ手段に蓄積された地磁気データから、その円錐の中心軸となる重力ベクトルを算出し、該重力ベクトルを前記自律測位機能へ出力する第2のステップと、
前記自律測位機能が、前記重力ベクトル算出手段から入力した前記重力ベクトルを用いて、前記推定方位角dを補正する第3のステップと
を有することを特徴とする重力ベクトルの補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208069(P2012−208069A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75308(P2011−75308)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)