説明

自然木を使用したパズルの製造方法とパズル

【課題】 廃棄処理されるような自然木を利用して、ジグソウパズルを作る。
【解決手段】 自然木12の軸芯14を横断するように、輪切りをして、全体としてほぼ均等な厚みの略円盤16を得る。円盤に外力を加えて歪みを与え、前記軸芯14もしくは軸芯14の近傍から外皮18に達する複数の略放射状の割れを生じさせて、複数の略扇形の木片20を含む木片20群を得る。以上の工程で、自然木12を使用したパズルを製造する。廃棄処理されるものや、部分的にひび割れが自然発生した乾燥した自然木を使用することが好ましい。このひび割れに沿って割れを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然木を使用したパズルの製造方法と自然木を使用したパズルに関する。
【背景技術】
【0002】
図画を描いた厚紙を複雑な曲線に沿って切断し、多数の紙片に分割したジグソウパズルは、玩具として広く愛用されている。材質としては、厚紙が主として使用されるが、木材も使用され、立体的なパズルも多種提供されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
部分的にひび割れが発生した自然木は、建築用その他の資材として利用することが困難で、廃棄処分をしなければならない。また、森林全体を保護するために一部の自然木を伐採することが行われている。しかし、これらの廃棄処分のために多大な費用が発生する。しかも、焼却をするのは排出ガスの増大に結びつく。
本発明は、主としてこうした廃棄物にされるような自然木を使用した、パズルの製造方法と自然木を使用したパズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
自然木の軸芯を横断するように、輪切りをして、全体としてほぼ均等な厚みの略円盤を得る工程と、上記円盤に盤面を湾曲させるような外力を加えて歪みを与え、上記軸芯もしくは軸芯の近傍から外皮に達する複数の略放射状の割れを生じさせて、複数の略扇形の木片を含む木片群を得る工程とを備えたことを特徴とする、自然木を使用したパズルの製造方法。
【0005】
自然木を利用するので、廃棄物の有効利用ができる。全体としてほぼ均等な厚みにして、複数の木片に分割するので、ジグソウパズルのように使用できる。自然木の輪切りであるから、略円盤状で、自然の形をそのまま生かした個性のあるパズルになる。円盤に外力を加えて歪みを与えた結果、割れを生じさせるようにするので、それぞれ固有の割れ断面となり、パズルの面白みを増す。自然木の性質上、軸芯もしくは軸芯の近傍から外皮に達するように割れが生じるものが多い。従って、それぞれ略扇形の木片が主体になるから、デザイン的にも、バランスがよい。
【0006】
〈構成2〉
上記自然木は、部分的にひび割れが自然発生した、乾燥した自然木であって、当該ひび割れに沿って割れを生じさせて、複数の略扇形の木片を含む木片群を得ることを特徴とする、構成2に記載の自然木を使用したパズルの製造方法。
【0007】
乾燥して部分的にひび割れが自然発生したものを使用する。通常は廃棄対象となるような材木が材料として適するので、自然保護の効果がある。ひび割れに沿って割れを生じさせるので、固有の複雑な割れ断面が得られる。
【0008】
〈構成3〉
自然木の軸芯を横断するように輪切りされ、全体としてほぼ均等な厚みの略円盤から得られたものであって、上記軸芯もしくは軸芯の近傍から外皮に達する複数の略放射状の割れにより得られた、複数の略扇形の木片を含む木片群からなることを特徴とする、自然木を使用したパズル。
【0009】
〈構成4〉
上記複数の略扇形の木片はいずれも、それぞれ固有の割れ断面を備えたことを特徴とする構成3に記載の自然木を使用したパズル。
【0010】
〈構成5〉
上記自然木は、部分的にひび割れが自然発生した、乾燥させた自然木であることを特徴とする構成3または4に記載の自然木を使用したパズル。
【0011】
〈構成6〉
上記自然木は、年輪がないかもしくは目立たないものであることを特徴とする構成3乃至5に記載の自然木を使用したパズル。
【0012】
〈構成7〉
上記略円盤の少なくとも一方の面に、粘着シートが貼り付けられていることを特徴とする構成3乃至6に記載の自然木を使用したパズル。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、自然木を輪切りにして、木片群による平面的なパズルを製造する。特に、枯れた自然木や森林の保護管理のために伐採された自然木の用途を提供する。以下、本発明の実施の形態を実施例ごとに詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1のバズルの製造方法を示す説明図である。
例えば、図のような熱帯産の自然木12を材料に使用する。この自然木12は、既に枯れていて、廃棄処理されるようなものを利用する。この自然木12を、図のように、軸芯14を横断するように、輪切りをして、全体としてほぼ均等な厚みの略円盤16を得る。次に、この円盤16に外力を加えて歪みを与え、軸芯14もしくは軸芯14の近傍から外皮18に達する複数の略放射状の割れを生じさせる。こうして、複数の略扇形の木片20を含む木片群を得る。この木片群を、自然木12を使用したパズルとして販売する。
【0015】
上記自然木12は、部分的にひび割れが自然発生した、乾燥した自然木12が最も好ましい。手で掴んで折り曲げるような外力を加えると、ひび割れに沿って割れが生じる。円盤の盤面を湾曲させるように外力を加える。これにより、複数の略扇形の木片20を含む木片群を得る。固有の複雑な割れ断面26が得られる。自然木12は、年輪がないかもしくは目立たないものが、好ましい。強度もあり、適度に割れやすい。
【0016】
図2は、本発明によるパズルの具体例を示す斜視図である。
図のように、円盤16は、外力を加えることにより、図の(a)から(b)に示すように、複数の木片20に分割されている。その割れ断面26は、微妙に湾曲して、それぞれ固有の曲面を形成している。これをバラバラにすると、図の(c)に示すように、再配列するのにしばらく思案と試行錯誤を要するパズルになる。手で掴む程度の外力を加えたときにどんどん割れるようでは、玩具として長期間愛用されることがない。しかし、ある程度小片化すると、それ以上は簡単に割れない。また、上手に割れたものだけを、商品として出荷すればよい。
【実施例2】
【0017】
図3は、パズルを分割する方法の説明図である。
図の(a)ように、略円盤16に予め、ひび割れ等が生じていると、そのひび割れが拡大して、外皮18に達する割れが生じる。略円盤16に対して、(b)のように、その盤面に垂直な方向の力を表面と裏面から加える。こうして、盤面を湾曲させると、図の(c)に示すような木片になる。この後で、さらにもう一度外力を加えて、もう少し不規則な形状になるまで割るとよい。このような作業は、プレス装置等を用いて連続して自動的にできる。多数の円盤を割って分割し、適当な形に割れたものを選別して出荷するとよい。なお、予め略円盤16に粘着シート2を貼り付けた状態で外力を加えると、割れた後の木片群が散らばらず、そのまま製品として出荷できる。出荷可能かどうかの検査も容易である。その後の梱包も容易である。粘着シートだから、使用時には剥がせばよい。実際には、直径が約10cm程度のものから、30cm程度のものまで様々なパズルを製造することができた。
【0018】
自然木を使用して、自然な割れを生じさせることで、割れ断面が立体的で、かつ、画一的でないパズル状の木片が得られる。輪切りをして、全体としてほぼ均等な厚みの略円盤を得るので、厚みの違いにより各木片の位置関係が容易にわかるということがなく、パズル用として適する。なお、美麗な割れ断面を生じさせるには、乾燥させた自然木を使用することが好ましい。部分的にひび割れが発生した自然木は、建築用その他の資材として利用することが困難で、廃棄処分をしなければならない。しかし、廃棄処分のためのコストが増大するし、焼却をするのは排出ガスの増大に結びつく。従って、新たな用途を開発することで、廃棄物を減少させるとともに、産地に対して新たな産業を生み出す効果がある。
【0019】
自然木の軸芯を垂直に横断するように輪切りをすると、真円に近い円盤が得られる。軸芯を斜めに横断するように輪切りをすると、楕円の円盤が得られる。いずれでもよいが、真円に近い円盤のほうが、扇形の木片の半径方向の長さが均等に揃い、パズルを難しくできる。年輪がない自然木を使用することが好ましい。年輪がない自然木は四季のない熱帯地域等で得られる。年輪があるものは、年輪の間隔の違いを観察すると、比較的容易に各木片の位置関係が判断できる。年輪がないものはそれがないので、面白みが増して好ましい。
【0020】
軸芯から外皮に達する放射状の割れを生じさせて、複数の略扇形の木片を得ると、各木片の左右両方の割れ断面に複雑な立体的な凹凸が形成される。同じ割れ断面が生じることがない。木片ごとに固有の割れ断面が形成される。しかも、一見しただけではその割れ断面の特徴を認識することは難しい。これが、各木片の位置関係を見つける作業を難しくしており、パズルの面白さを増している。適度な外力を加えることによりさらに細片に分割できる。略扇形以外の形状の木片も混じる。しかし、パズルとして配列するのが困難になるほど小片にはしない。比較的木質の固いものを選択すると、図の実施例の程度に適当なサイズにに分割することができ、それ以上は壊れない。
【0021】
自然木を乾燥させると円周方向に内部応力が加わるので、軸芯から外皮に達する放射状のひび割れが自然に発生する。そのひび割れを上手に利用して、割れ断面を形成するとよい。なお、年輪があると、年輪に沿って割れを生じやすく、製品化するには補強処理が必要になる。年輪のない木では、その必要がない。刃物を用いて切断をするのは好ましくない。刃物を使うと断面が単調になる。また、乾燥していない自然木を無理に割ると、断面が毛羽立つ。
【0022】
既知のジグソウパズルは、各木片を裏返して使用することはない。即ち、表面に模様が印刷されていて、それを手がかりに表裏が明確になっている。一方、上記の木片は表裏の区別がない。従って、各木片について、円周方向の位置を決定したり、断面を付き合わせたり、さらに表裏を決定したりする作業が要求され、パズルが難しくなる。さらに、年輪がない自然木を使用すると、一般のジグソウパズルのように模様の連続性が利用できない。従って、各木片の位置関係を決定するのが難しく、パズルの面白さを増大させる効果がある。また、一部でも同じ形状の木片を持つ製品はできないので、複数組の木片群を混ぜて、例えば、5枚の円盤を完成させるといった難しいパズルも可能である。従って、従来のジグソウパズルとは異なる遊び方ができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1のバズルの製造方法を示す説明図である。
【図2】本発明によるパズルの具体例を示す斜視図である。
【図3】パズルを分割する方法の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
12 自然木
14 軸芯
16 略円盤
18 外皮
20 木片
26 割れ断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然木の軸芯を横断するように、輪切りをして、全体としてほぼ均等な厚みの略円盤を得る工程と、
前記円盤に盤面を湾曲させるような外力を加えて歪みを与え、前記軸芯もしくは軸芯の近傍から外皮に達する複数の略放射状の割れを生じさせて、複数の略扇形の木片を含む木片群を得る工程とを備えたことを特徴とする、自然木を使用したパズルの製造方法。
【請求項2】
前記自然木は、部分的にひび割れが自然発生した、乾燥した自然木であって、当該ひび割れに沿って割れを生じさせて、複数の略扇形の木片を含む木片群を得ることを特徴とする、請求項2に記載の自然木を使用したパズルの製造方法。
【請求項3】
自然木の軸芯を横断するように輪切りされ、全体としてほぼ均等な厚みの略円盤から得られたものであって、
前記軸芯もしくは軸芯の近傍から外皮に達する複数の略放射状の割れにより得られた、複数の略扇形の木片を含む木片群からなることを特徴とする、自然木を使用したパズル。
【請求項4】
前記複数の略扇形の木片はいずれも、それぞれ固有の割れ断面を備えたことを特徴とする請求項3に記載の自然木を使用したパズル。
【請求項5】
前記自然木は、部分的にひび割れが自然発生した、乾燥させた自然木であることを特徴とする請求項3または4に記載の自然木を使用したパズル。
【請求項6】
前記自然木は、年輪がないかもしくは目立たないものであることを特徴とする請求項3乃至5に記載の自然木を使用したパズル。
【請求項7】
前記略円盤の少なくとも一方の面に、粘着シートが貼り付けられていることを特徴とする請求項3乃至6に記載の自然木を使用したパズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−314620(P2006−314620A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141408(P2005−141408)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(301037752)株式会社植藤 (5)
【Fターム(参考)】