説明

自然電位計測用の基準電極の電極構造

【課題】熱交換器の細管の自然電位を極力精度良く計測することができる自然電位計測用の基準電極の電極構造を提供すること。
【解決手段】熱媒Mが内部を通流する金属製の細管2を複数備えた熱交換器HEにおける自然電位計測用の基準電極Psの電極構造であって、一端部が細管2内に位置し、他端部が熱交換器HEの外部に位置する状態で細管2に挿入される細管内電位計測用の挿入体11を備え、挿入体11が、一端部が位置する箇所における細管2内の熱媒Mと、基準電極における電極用金属体9が浸漬する電解質溶液10とを電気的に接続する流動性を備えた電解質材料を、筒状に形成された絶縁性を備えた収容体に充填して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒が内部を通流する金属製の細管を複数備えた熱交換器における自然電位計測用の基準電極の電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒が内部を通流する金属製の細管を複数設けて熱交換器を構成する場合、一般に熱伝導性の良い金属として銅を用いて構成されることが多い。そのため経年変化による腐食が発生しやすく、熱媒が内部を通流する細管で腐食が進行すると、最悪の場合熱媒漏れ等の不具合が発生する。熱交換器の自然電位が高くなると、熱交換器の内部で接触する熱媒で腐食が進行する場合がある。そこで、従来から熱交換器の腐食状態を検査するために、熱交換器の自然電位を計測することが行われている。
従来において熱交換器の自然電位を計測する場合は、熱媒が通流する細管の端部に基準電極を設け、当該細管の端部を計測対象箇所として、自然電位を計測していた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−21682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、基準電極が細管の端部に設けられ、当該細管の端部における自然電位を計測し、それを細管の自然電位として、熱交換器の腐食状態を検査している。しかしながら、その場合、測定しているのは細管端部近傍の自然電位である。そのため、細管の端部と細管の長手方向で内方側箇所の電位が異なる場合は、細管の端部の自然電位を計測しても、細管の長手方向で内方側箇所の自然電位は正確には把握することはできない。そのため、細管の長手方向で内方側箇所において腐食が進行していても、その状態を発見できず、適切な対応が遅れる場合がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、熱交換器の細管の自然電位を極力精度良く計測することができる自然電位計測用の基準電極の電極構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る自然電位計測用の基準電極の電極構造の第1特徴構成は、熱媒が内部を通流する金属製の細管を複数備えた熱交換器における自然電位計測用の基準電極の電極構造において、一端部が前記細管内に位置し、他端部が前記熱交換器の外部に位置する状態で前記細管に挿入される細管内電位計測用の挿入体を備え、前記挿入体が、前記一端部が位置する箇所における細管内の熱媒と、前記基準電極における電極用金属体が浸漬する電解質溶液とを電気的に接続する流動性を備えた電解質材料を、筒状に形成された絶縁性を備えた収容体に充填して構成されている点にある。
【0007】
本特徴構成によれば、電解質材料は、一端部が位置する箇所における細管内の熱媒と、基準電極における電極用金属体が浸漬する電解質溶液とを電気的に接続しており、電解質材料が充填される収容体は絶縁性を備えているので、電解質材料は、収容体の端部以外では収容体の外部と絶縁状態となっている。したがって、挿入体の一端部が位置する箇所と、基準電極における電極用金属体が浸漬する電解質溶液との間での電圧降下による電位差を小さくすることができ、挿入体の一端部が位置する箇所における細管内の熱媒の電位と、基準電極の電極金属体が浸漬する電解質溶液とを略同じ電位とすることができる。そのため、挿入体の一端部を細管の長手方向の内方側箇所に位置させて、その内方側箇所の自然電位を直接的に計測することができることから、細管の長手方向で内方側箇所の自然電位を正確に計測することが可能となる。
このように、本特徴構成によれば、熱交換器の細管の自然電位を精度良く計測することができる。
【0008】
本発明に係る自然電位計測用の基準電極の電極構造の第2特徴構成は、前記挿入体の前記一端部には、非導電性の多孔質材料で形成された細管側封止体が備えられている点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、多孔質材料で形成された細管側封止体により挿入体の一端部において筒状の収容体の開口を封止することで、挿入体の一端部が位置する箇所に存在する熱媒と、収容体の内部の電解質材料とを、電気的に接続した状態を維持しながら、電解質材料が収容体の外への流出することを阻止することができる。そのため、挿入体の内部における電気的特性を維持し易いものとなり、その結果、細管の自然電位を精度良く計測できる。
【0010】
本発明に係る自然電位計測用の基準電極の電極構造の第3特徴構成は、前記挿入体には、前記電解質材料を吸収して保持する電解質材料保持用の芯材が前記電解質材料に浸漬された状態で挿通され、前記芯材は、前記細管側封止体に連結されている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、挿入体の長手方向で一端部から芯材の反対側の端部までの範囲において絶縁状態が発生することを防止できる。すなわち、芯材を電解質材料に浸漬させた状態とすることで芯材の内部に導電性粘性流体の電解質材料が浸潤し、芯材の内部に電解質材料が保持される。芯材に浸潤して保持されている電解質材料により、芯材が存在する範囲では電気的な接続が維持されるので、仮に電解質材料に気泡が発生しても、挿入体の一端部との絶縁状態が発生することはない。
【0012】
本発明に係る自然電位計測用の基準電極の電極構造の第4特徴構成は、前記細管側封止体は、前記収容体の端部から突出する突出部分を有する状態で前記収容体に外嵌され、前記突出部分と前記収容体の端部との双方の外周面に密着する状態で設けられた絶縁性の熱収縮チューブにて保持されている点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、絶縁性の熱収縮チューブを用いることにより、挿入体の一端部の周辺における細管内の電気的特性を極力変動させることなく、細管側封止体を収容体の細管側端部で保持することができる。
【0014】
本発明に係る自然電位計測用の基準電極の電極構造の第5特徴構成は、前記電解質材料は、前記基準電極における前記電解質溶液と同じ電解質物質を含んでいる点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、電解質材料と電解質溶液とで同じ電解質物質を含ませることで、電解質材料と電解質溶液との間で電解質物質が移動しても、電解質溶液の電解質物質の濃度が極力変動しないようにして、基準電極の電極電位の変動を抑制できる。
【0016】
本発明に係る自然電位計測用の基準電極の電極構造の第6特徴構成は、前記基準電極の前記電解質溶液を貯留する貯留部に、前記挿入体の前記他端部が連結され、前記挿入体の前記他端部には、非導電性の多孔質材料で形成された貯留部側封止体が備えられている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、挿入体の他端部には、貯留部側封止体が備えられているので、貯留部に接続された挿入体の他端部から、電解質材料が貯留部に漏れ出ることを防止できる。したがって、貯留部内における電解質溶液の電解質物質の濃度が極力変動しないようにして、基準電極の電極電位の変動を抑制できる。
【0018】
本発明に係る自然電位計測用の基準電極の電極構造の第7特徴構成は、前記熱交換器が、外部の熱を熱媒により吸収する吸熱式熱交換器であり、前記電解質材料が、導電性粘性流体である点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、電解質材料を導電性粘性流体とすることで、収容体内で絶縁空間が形成され難くして、挿入体の細管側端部と貯留部における電解質溶液との電気的接続が切断され難いようにしている。
【0020】
細管の熱媒の温度の上昇に伴って電解質材料の温度が上昇し、電解質材料の気体の溶解度が下がることで、電解質材料に溶解している気体が細かい気泡となった場合に、電解質材料を粘性の低い一般的な電解質水溶液で構成すると、発生した細かい気泡が移動して多数合体することで大きな気泡に成長し、収容体内で大きな絶縁空間が形成され、収容体の内部における電気的接続が長手方向で断絶されるおそれがある。その点、電解質材料を導電性粘性流体とすることで、温度上昇により発生する細かい気泡は移動し難くなるため、これらが移動して多数合体することで大きな気泡に成長することを防止できる。そのため、収容体の内部における電気的接続が長手方向で断絶される事態を防止できる。
【0021】
本発明に係る自然電位計測用の基準電極の電極構造の第8特徴構成は、前記挿入体が、前記細管の長手方向で位置変更自在に設けられている点にある。
【0022】
本特徴構成によれば、挿入体の一端部の細管長手方向の位置を変更することで、挿入体の一端部を細管の内部における長手方向で所望の箇所に位置させることができる。したがて、細管の長手方向で所望の箇所の自然電位を計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】自然電位計測用の基準電極を備えた熱交換器の全体図
【図2】(a)挿入体の細管側の端部の拡大断面図(b)挿入体の容器側の端部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る基準電極の電極構造の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、熱交換器HEに、自然電位計測用の基準電極Psが設けられている。
【0025】
熱交換器HEは、細管2に熱媒としての水Mを通流させることで、細管2の周囲を通流する高温蒸気等から熱を吸収する吸熱式の熱交換器にて構成されており、例えば、排熱回収の用途に用いられている。
熱交換器HEは、上流側水室1aと下流側水室1bとを、並行に配置された複数の銅製の細管2の両端部に接続して構成されている。つまり、熱交換器EHは、熱媒としての水Mが内部を通流する金属製の細管2を複数備えている。上流側水室1aと細管2は、水Mを通流自在に接続されており、下流側水室1bと細管2も同様に水Mを通流自在に接続されている。これにより、上流側水室1aに接続された入水管3から供給された水Mが、複数の細管2の内部を図1の紙面右方向に通流して、下流側水室1bに接続された出水管4から排出されるようになっている。
【0026】
本実施形態では、このように金属製の細管2を複数備えた熱交換器HEにおける自然電位を計測するための自然電位計測用の基準電極の電極構造を備えている。
熱交換器HEの自然電位を計測するための電圧計5は、筐体側端子6と基準電極側端子7との電位差を計測する。筐体側端子6は、熱交換器HEの筐体Cにおけるフランジ部などに接続され基準電極側端子7は基準電極Psに接続されている。熱交換器HEの筐体Cは細管2の他も銅製であり、筐体Cの各箇所は等電位となっている。そのため、基準電極Psを計測対象箇所と電気的に接続することで、対極としての筐体側端子6との電位差から、計測対象箇所の自然電位を計測できる。このようにして、電圧計5は、筐体Cを対極として、計測対象箇所との電位差を計測する。
【0027】
基準電極Psは、電極用金属体9及びこれが浸漬する電解質溶液10を収容する容器8と、細管2に挿入される細管内電位計測用の挿入体11とを備えて構成されている。
【0028】
容器8は、基準電極Psの電解質溶液10を貯留しており、本発明の貯留部に相当する。基準電極Psは銀−塩化銀電極(Ag/AgClの電極)にて構成されており、基準電極Psの電極用金属体9は銀であり、これが浸漬する電解質溶液10は塩化物水溶液である。塩化物水溶液として、本実施形態では、飽和塩化カリウム(KCl)水溶液を用いている。つまり、電解質溶液10は、電解質物質として、カリウムイオン(K+)及び塩化物イオン(Cl-)を含んでいる。
【0029】
基準電極Psは、細管2の内部に挿通自在な挿入体11を備えており、その挿入体11を細管2の内部に挿通させることで、細管2の内部を通流する水Mの通流経路における細管長手方向の各箇所を、電位計測対象箇所とできるようになっている。これにより、細管2の長手方向で内方側箇所まで挿入体11を挿通させることで、その内方側箇所を電位計測対象箇所としてその電位計測対象箇所の自然電位を直接的に計測できる。そのため、細管2の端部の自然電位に基づいて細管2の腐食状態を検査する場合に比べて、細管2の腐食状態を適切に検査できる。なお、銀−塩化銀電極の電極電位は、温度や塩化物イオン(Cl-)の濃度に依存するため、細管2の自然電位を計測するときには、これらの条件をできるだけ揃えて計測することが好ましい。
【0030】
本実施形態における電極構造では、挿入体11の一端部を細管2内に位置させ、挿入体11の他端部を細管2及び熱交換器HEの外部に位置させている。そして、挿入体11の外部側端部が熱交換器HEの外部に配設された容器8に接続されている。挿入体11を細管2に挿入させるに当たり、筐体Cの下流側水室1b側の外側面を形成するパネル材に形成された挿通孔12が設けられており、この挿通孔12を貫通させて細管2に挿入させている。挿通孔12は、複数の細管2のうちで、自然電位を計測する対象となる細管2の延長線上に形成されており、挿入体11は、下流側水室1b内を通過して、その先端部は、細管2の内部にまで達している。
【0031】
図2(a)及び(b)に示すように、挿入体11は、円筒状に形成された絶縁性を備えた収容体13を備えており、その収容体13に流動性を備えた電解質材料14を充填することで、細管側の端部が位置する箇所における細管2内の水Mと、基準電極Psにおける電極用金属体9が浸漬する電解質溶液10とを電気的に接続している。ここで、図2(a)は、挿入体の細管側の端部の拡大断面図であり、図2(b)は、挿入体の容器側の端部の拡大断面図である。このように、収容体13に充填された電解質材料14が容器8内の電解質溶液10と電気的に接続されているため、挿入体11の細管側の端部が位置する箇所を電位計測対象箇所として自然電位を計測することができる。本実施形態では、収容体13としてテフロンチューブを採用しているが、その他の絶縁性材料にて収容体13を構成してもよい。
【0032】
収容体13に充填されている電解質材料14は、飽和塩化カリウム(KCl)水溶液と合成糊とを質量比1:0.4乃至1:1.0の混合比率で混合した導電性粘性流体となっている。つまり、電解質溶液10は、電解質物質として、カリウムイオン(K+)及び塩化物イオン(Cl-)を含んでおり、電解質材料14は、基準電極Psにおける電解質溶液10と同じ電解質物質を含んでいる。本実施形態では、合成糊として、ポリ酢酸ビニルを主成分とする合成糊を採用している。
【0033】
電解質材料14は、電解質溶液10と同じ電解質物質が含まれており、電解質材料14と電解質溶液10との間で電解質物質が移動しても、容器8内における電解質溶液10の塩化物イオン(Cl-)の濃度が極力変動しないようにして、基準電極Psの電極電位の変動を抑制している。
【0034】
また、電解質材料14を導電性粘性流体とすることで、収容体13内で絶縁空間が形成され難くして、挿入体11の細管側端部と容器8における電解質溶液10との電気的接続が切断され難いようにしている。
【0035】
すなわち、水Mの温度の上昇に伴って電解質材料14の温度が上昇し、電解質材料14の気体の溶解度が下がることで、電解質材料14に溶解している気体が細かい気泡となった場合に、電解質材料14が粘性の低い一般的な電解質水溶液であると、発生した気泡が移動して多数合体することで大きな気泡に成長し、収容体13内で大きな絶縁空間が形成され、収容体13内における電解質材料14による電気的接続が長手方向で断絶されるおそれがある。電解質材料14を導電性粘性流体とすることで、温度上昇により細かい気泡が発生しても、それらは移動し難いため、細かい気泡が多数合体して大きな気泡に成長することを防止できる。そのため、収容体13内における電気的接続が長手方向で断絶される事態を防止できる。
【0036】
挿入体11は、挿通孔12に対して摺動自在に支持されており、細管2の長手方向で位置を変更できるように設けられている。これにより、細管2の内部における長手方向で所望の箇所についての自然電位を計測できるようになっている。なお、挿入孔12にはシール材などを設けてあり、熱交換器HEの内部の水Mが外部に漏れ出ないように適切に密封されている。ちなみに、挿入体11の移動操作に連動して基準電極本体の容器8も移動させるようにしてもよいし、容器8を位置固定状態で設けておき、熱交換器HEの外部に位置する部分を変形自在に構成してもよい。
【0037】
図2(a)に示すように、挿入体11の細管側端部には、非導電性の多孔質材料であるセラミックで形成された細管側封止体15が備えられている。多孔質材料であるセラミックで形成された細管側封止体15により挿入体11の細管側端部において収容体13の円形の開口を封止することで、挿入体11の細管側端部の周辺に存在する水Mと、収容体13内部の電解質材料14とを、電気的に接続した状態を維持しながら、電解質材料14が収容体13の外へ流出することを阻止することができる。そのため、挿入体11の内部における電気的特性を維持することができる。
【0038】
細管側封止体15は、収容体13の細管側端部から突出する突出部分15tを有する状態で収容体13に外嵌され、突出部分15tと収容体13の細管側端部との双方の外周面に密着する状態で設けられた絶縁性の熱収縮チューブ16にて保持されている。絶縁性の熱収縮チューブ16を用いることにより、挿入体11の細管側端部の周辺における細管2内の電気的特性を変動させることなく、細管側封止体15を収容体13の細管側端部で保持することができる。本実施形態では、絶縁性の熱収縮チューブ16として、テフロンシュリンクチューブを採用しているが、他の絶縁性材料を用いた熱収縮チューブであってもよい。
【0039】
図2(b)に示すように、挿入体11の外部側の端部は、細管側端部と同様の封止構造を備えている。つまり、挿入体11の外部側端部には、非導電性の多孔質材料としてのセラミックで形成された貯留部側封止体18が備えられている。これにより、容器8に接続された挿入体11の外部側の端部から、電解質材料14が容器8に漏れ出ることを防止できるので、容器8内の電解質溶液10の電気的特性の変動を防止できる。
【0040】
挿入体11には、導電性粘性流体にて構成された電解質材料14を吸収して保持する電解質材料保持用の芯材としての組み紐17が電解質材料14に浸漬された状態で挿通されている。組み紐17は、図2(a)に示すように、一端部が挿入体11において細管側端部に配置された細管側封止体15に連結されており、図2(b)に示すように、他端部が挿入体11において外部側端部に配置された貯留部側封止体18に連結されており、挿入体11の全長に亘って配設されている。組み紐17を電解質材料14に浸漬された状態とすることで組み紐17の内部に導電性粘性流体の電解質材料14が浸潤し、組み紐17の内部に電解質材料14が保持される。組み紐17に浸潤して保持されている電解質材料14により、組み紐17が存在する範囲である挿入体11の全長に亘って電気的な接続が維持される。
【0041】
本実施形態の電極構造によれば、熱交換器HEの細管2の内部における所望の位置を計測対象箇所として、当該箇所の自然電位を精度良く計測することができるので、熱交換器HEの細管2の腐食状態を適切に検査できる。
【0042】
〔別の実施形態〕
以上、発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。以下、本発明の別実施形態を例示する。
【0043】
(1)上記実施形態では、挿入体を細管の長手方向で位置変更自在に設けられたものを例示したが、挿入体を熱交換器に対して固定状態で設けてもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、熱交換器における計測対象の1本の細管に対して挿入体を挿入するものを例示したが、複数の細管を計測対象として、それらの細管の夫々に対して各別に挿入自在に構成してもよい。なお。挿入体は、自然電位を計測する場合に取り付け、通常時は熱交換器に形成された挿入孔を封止しておくようにしてもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、筒状に形成された収容体として、断面形状が円形状の円筒状のものを例示したが、これに限らず、収容体は、断面形状が矩形状や楕円形状のものであってもよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、電解質材料を、電解質水溶液と合成糊との混合物とすることで導電性粘性流体としたが、電解質水溶液と混合させる合成糊は、デンプンを主成分とした天然糊でもよいし、加工デンプンやカルボキシメチルセルロース(CMC)主成分とする半合成糊や、ポリ酢酸ビニルやポリビニルアルコール(PVA)、耐熱性ポリマーなどを主成分とする合成糊などの化学糊でもよい。
【0047】
(5)上記実施形態では、電解質材料を、電解質水溶液と合成糊との混合物とすることで導電性粘性流体としたが、電解質水溶液に硫酸銅結晶を含有させたもの等、各種の方法で導電性粘性流体とすることができる。
【0048】
(6)上記実施形態では、電極構造として、吸熱式の熱交換器における自然電位を計測する場合の基準電極に適用したものを例示したが、これに代えて、例えば、温風送風機などの暖房器具等に用いられる放熱式の熱交換器における自然電位を計測する場合の基準電極に適用することもできる。
【0049】
(7)上記実施形態では、挿入体の他端部に貯留部側封止体が備えられているものを例示したが、挿入体の他端部に貯留部側封止体を備えない構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
熱媒が内部を通流する金属製の細管を複数備えた熱交換器における自然電位を計測する場合の電極に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
HE 熱交換器
M 熱媒
Ps 基準電極
2 細管
8 貯留部
9 電極用金属体
10 電解質溶液
11 挿入体
13 収容体
14 電解質材料
15 細管側封止体
16 熱収縮チューブ
17 芯材
15t 突出部分
18 貯留部側封止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒が内部を通流する金属製の細管を複数備えた熱交換器における自然電位計測用の基準電極の電極構造であって、
一端部が前記細管内に位置し、他端部が前記熱交換器の外部に位置する状態で前記細管に挿入される細管内電位計測用の挿入体を備え、
前記挿入体が、前記一端部が位置する箇所における細管内の熱媒と、前記基準電極における電極用金属体が浸漬する電解質溶液とを電気的に接続する流動性を備えた電解質材料を、筒状に形成された絶縁性を備えた収容体に充填して構成されている基準電極の電極構造。
【請求項2】
前記挿入体の前記一端部には、非導電性の多孔質材料で形成された細管側封止体が備えられている請求項1記載の基準電極の電極構造。
【請求項3】
前記挿入体には、前記電解質材料を吸収して保持する電解質材料保持用の芯材が前記電解質材料に浸漬された状態で挿通され、
前記芯材は、前記細管側封止体に連結されている請求項2記載の基準電極の電極構造。
【請求項4】
前記細管側封止体は、前記収容体の端部から突出する突出部分を有する状態で前記収容体に外嵌され、前記突出部分と前記収容体の端部との双方の外周面に密着する状態で設けられた絶縁性の熱収縮チューブにて保持されている請求項2又は3記載の基準電極の電極構造。
【請求項5】
前記電解質材料は、前記基準電極における前記電解質溶液と同じ電解質物質を含んでいる請求項1〜4のいずれか1項記載の基準電極の電極構造。
【請求項6】
前記基準電極の前記電解質溶液を貯留する貯留部に、前記挿入体の前記他端部が連結され、
前記挿入体の前記他端部には、非導電性の多孔質材料で形成された貯留部側封止体が備えられている請求項5記載の基準電極の電極構造。
【請求項7】
前記熱交換器が、外部の熱を熱媒により吸収する吸熱式熱交換器であり、
前記電解質材料が、導電性粘性流体である請求項1〜6のいずれか1項記載の基準電極の電極構造。
【請求項8】
前記挿入体が、前記細管の長手方向で位置変更自在に設けられている請求項1〜7のいずれか1項記載の基準電極の電極構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−208091(P2012−208091A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75743(P2011−75743)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)